上記の特許文献1に開示された装置による場合は、大豆の粉砕手段を備えていないため、別途、専用の器具を準備しなければならない。そして、家庭において手軽に使用できるようにするには、抽出容器と圧力容器を着脱可能に構成し、濾過手段の清掃や回収した抽出液をそのまま配膳できるように使い勝手を向上し、何よりもコンパクトである必要があるが、かかる要求は容易に満たすことができるものではなく、また、豆乳のみを生成する専用の装置となっている。
一方、抽出容器と圧力容器を着脱可能に構成した特許文献2の装置で液状食品の抽出液を抽出する場合は、圧力容器103の気密性を維持することが重要な課題となる。即ち、コーヒーのように粘性の低い抽出液の場合は重力の作用も伴い濾過が容易であるが、豆乳やスープのように微粒化した食材が含まれる抽出液は粘性が高いため、抽出容器102からの回収を十分に行うには圧力容器103による強い吸引力が必要となることから、圧力容器103の高い気密性が要求される。
このため、上記構成の装置では図30に示すように、粉砕籠107の外周に接着剤で取り付けたシール材106のシール片106aが抽出容器102の内壁と接触して気密性が保たれるようにしている。一方、抽出容器102の底部外周に接着剤で取り付けたシール材113のシール片113aは、図31に示すように圧力容器103の内壁と接触して気密性が保たれるようにしている。
このような構成で気密性をより高くするには、シール片106a・103aの内壁への接触率を大きくすることにより可能となるが、この場合、摺接抵抗が大きくなるため容器の着脱が困難となり、接触率を小さくすると容器の着脱は容易となるが、気密性が低下するという相反する結果となる。また、前記シール材106・113は容器の垂直面に取り付けられた状態であるため、容器の着脱の繰り返し、容器から伝達する熱の影響などにより接着剤が劣化して脱落する可能性がある。
なお、上記構成による場合は、粉砕籠107を抽出容器102内へ装着するようにしているが、図29に示すように抽出容器102と粉砕籠107の間に空間が形成されてしまい、この部分に圧力容器103から揚上されて浸入した熱水は抽出の用に供せなくなることになる。また、カッター111が回転すると強い水流が発生し、抽出容器102が蓋体118で施蓋されている部分から熱水が溢れ出す危険があり、更に、連続して抽出を行う場合、第2の濾過手段115に目詰まりが発生し、残滓を取り除くことが困難であった。
ところで、一般に飲料製品となる豆乳の場合、大豆固形分が8%の下限値を超えていることが条件となり、これ未満では調整豆乳などと呼称される(JAS規格)。上記構成では、圧力容器103から抽出容器102内へ揚上される熱水(沸騰水)の中で大豆を粉砕することになるので、高温の熱水により大豆に含まれる蛋白質成分が硬化されてしまい、この状態で大豆を粉砕しても豆乳成分が抽出しきれず抽出液に含まれる豆乳成分(大豆固形分)が低くなるという問題がある。これを回避するためには大豆の量を多くしたり、注入する水の量を少なくして対応することが考えられるが、大豆の量を多くした場合は消費電力の大きなモーターを必要とし装置が大型化する上、粉砕時に発生する大豆の非水溶性成分が飛躍的に増加するとともに残滓に多く残存する蛋白質成分で濾過手段の目詰まりを招き、満足な調理ができなくなるという問題がある。
また、上記に説明したこの種の装置は、通常、単機能として構成されており、主に豆乳のみを調理できるようにしたものであった。これは、食材の調理工程や濾過手段であるフィルターの構成が豆乳とスープで対比した場合、大きく相違することに起因するものであり、複数の液状食品、例えば、豆乳、スープの調理などを1台の装置で対応できるようにすることが困難であった。
さらに、抽出容器と圧力容器を着脱可能にした従来の構成において、大きい容量の抽出が可能となるようにする場合は、抽出容器、圧力容器の何れも容量の大きいものとしなければならないため、装置全体が大型化し、家庭用として適する大きさに構成することができない問題があった。
本発明は、かかる従来の装置を改良するようにしたもので、以下に述べる各手段により上記課題を解決するようにした。即ち、請求項1記載の発明では、加熱手段と、該加熱手段により加熱される圧力容器と、該圧力容器の開口部を密閉して載置され、且つ、濾過手段を収容する底部から前記圧力容器内へ延在する連通管を有した抽出容器と、該抽出容器内部へ臨ませた粉砕手段とを備え、前記加熱手段および粉砕手段を任意に定めた時期に作動させて抽出容器へ投入された食材より有効成分を抽出するようにした液状食品の調理方法であって、調理開始時に前記抽出容器へ食材を投入するとともに調理水を注入した後、
前記粉砕手段を駆動して抽出容器内に滞留する調理水中で食材を粉砕し、粉砕後に沸騰した調理水により食材を加熱して有効成分の抽出を行い、抽出された後の適時に前記加熱手段による加熱を停止し、前記加熱手段による加熱の停止に伴う圧力容器内の減圧により前記抽出容器内に生成された抽出液を前記濾過手段により濾過しつつ連通管を介して圧力容器内に吸引して回収する。
請求項2記載の発明では、上記請求項1記載の発明において、加熱手段により圧力容器の加熱を開始するとほぼ同時に粉砕手段による食材の粉砕が開始されるようにして液状食品を調理する。
請求項3記載の発明では、上記請求項2記載の発明において、抽出容器に投入する食材が大豆であり、生成する液状食品が豆乳であるようにする。
請求項4記載の発明では、上記請求項1記載の発明において、加熱手段を先に作動させて調理水が昇温した後、任意に定めた時期に粉砕手段による食材の粉砕が開始されるようにして、熱水(沸騰水)中での粉砕も可能にする。
請求項5記載の発明では、上記請求項4記載の発明において、抽出容器に投入する食材が野菜であり、生成する液状食品がスープであるようにする。
請求項6記載の発明では、加熱手段と、該加熱手段により加熱される圧力容器と、該圧力容器の開口部を密閉して載置され、且つ、濾過手段を収容する底部から前記圧力容器内へ延在する連通管を有した抽出容器と、該抽出容器内部へ臨ませた粉砕手段とを備え、調理開始時に前記抽出容器へ食材を投入するとともに調理水を注入した後、前記粉砕手段を駆動して抽出容器内に滞留する調理水中で食材を粉砕するようにした、液状食品調理器とする。
請求項7記載の発明では、加熱手段と、該加熱手段により加熱される圧力容器と、該圧力容器の開口部を密閉して載置され、且つ、濾過手段を収容する底部から前記圧力容器内へ延在する連通管を有した抽出容器と、該抽出容器へ臨ませた粉砕手段とを備え、調理開始時に前記抽出容器へ食材を投入するとともに調理水を注入した後、加熱手段による圧力容器の加熱を開始するようにした液状食品調理器であり、加熱手段により圧力容器の加熱を開始するとほぼ同時に粉砕手段を駆動して抽出容器内に滞留する調理水中で食材を粉砕するようにした調理モードと、加熱手段により圧力容器の加熱が開始されて注入された調理水が昇温した後、任意に定めた時期に、粉砕手段による食材の粉砕が開始される調理モードと、を備えた液状食品調理器とする。
請求項8記載の発明では、上記請求項7記載の発明において、昇温前の調理水中で大豆を粉砕して豆乳を生成する豆乳モードと、昇温後の調理水中で野菜を粉砕してスープを生成するスープモードとを備えた液状食品調理器となるようにする。
請求項9記載の発明では、上記請求項6または請求項7記載の発明において、圧力容器の開口部に遠心方向に延在するフランジを形成する一方、抽出容器の底部を縮径して段部を形成し、装着状態において前記圧力容器のフランジと前記抽出容器の段部が幅広に重合するようにし、該重合部にシール部材が介在するようにした液状食品調理器となるようにする。
請求項10記載の発明では、上記請求項9記載の発明において、圧力容器の開口部のフランジを水平状態に形成する一方、抽出容器の底部を縮径して形成した段部が前記フランジと並行する水平状態に形成され、前記圧力容器のフランジと抽出容器の段部でシール部材を挟持するようにした液状食品調理器となるようにする。
請求項11記載の発明では、上記請求項9記載の発明において、圧力容器の開口部のフランジをテーパ状に拡径した状態に形成する一方、抽出容器の底部を縮径した段部が前記フランジと並行するテーパ状に形成され、前記圧力容器のフランジと抽出容器の段部でシール部材を挟持するようにした液状食品調理器となるようにする。
請求項12記載の発明では、上記請求項9記載の発明において、抽出容器の底部が縮径部から連通管へ向かう下り勾配となるように形成されているようにした液状食品調理器となるようにする。
請求項13記載の発明では、上記請求項6または請求項7記載の発明において、抽出容器の底部の内径に対する粉砕手段の回転軌跡の直径の比率が0.5〜0.7となるようにした液状食品調理器となるようにする。
請求項14記載の発明では、上記請求項6または請求項7記載の発明において、抽出容器の底部の圧力容器に没入する縮径部の高さh2、抽出容器の周壁全体の高さをh1としたとき、h2≧h1/3なる条件にもとづいて抽出容器の縮径部が形成された液状食品調理器となるようにする。
請求項15記載の発明では、上記請求項6または請求項7記載の発明において、抽出容器の底部に装着する濾過手段が残滓を回収する機能を備えた液状食品調理器となるようにする。
請求項16記載の発明では、上記請求項7記載の発明において、異なる濾過手段を任意に選択して抽出容器に着脱可能となるようにし、豆乳またはスープの何れも生成できる液状食品調理器となるようにする。
請求項17記載の発明では、装置構成要素として少なくとも、着脱可能の濾過手段および底部から下方に延在する連通管とを備えた抽出容器と、該抽出容器を装着することにより密閉状態となる圧力容器と、粉砕手段およびこれを回転駆動するための回転軸を備えるとともに、抽出容器に施蓋可能となるようにした蓋体と、該蓋体に配設した回転軸を回転駆動する動力手段と、前記圧力容器を加熱する加熱手段とを本体に一体化して成立する液状食品調理器であり、調理開始時に前記抽出容器へ食材を投入するとともに調理水を注入し、投入した食材の種類に応じて注入した調理水の昇温前または昇温後に粉砕手段を駆動できるようにして複数の種類の液状食品の調理が可能となるように前記動力手段を制御する制御手段を設け、該制御手段にプログラムされた各種の調理モードを設定するとともに、前記調理モードを指定するための選択手段を本体に設け、この選択手段により任意に調理モードを指定して所望の液状食品の調理が可能となる液状食品調理器となるようにする。
請求項18記載の発明では、上記請求項17記載の発明において、昇温前の調理水中で大豆を粉砕して豆乳を生成する豆乳モードと、昇温後の調理水中で野菜を粉砕してスープを生成するスープモードとを備えている液状食品調理器となるようにする。
請求項19記載の発明では、上記請求項17記載の発明において、抽出容器から流下した調理水が圧力容器で加熱され熱水となって抽出容器に揚上した後、圧力容器の加熱量を減少するようにする。
請求項20記載の発明では、上記請求項17記載の発明において、加熱手段の温度を検出する検出手段を設け、該検出手段の検出値にもとづいて圧力容器の加熱量を調整するようにした液状食品調理器となるようにする。
請求項21記載の発明では、装置構成要素として少なくとも、着脱可能の濾過手段および底部から下方に延在する連通管とを備えた抽出容器と、該抽出容器を装着することにより密閉状態となる圧力容器と、粉砕手段およびこれを回転駆動するための回転軸を備えるとともに、抽出容器に施蓋可能となるようにした蓋体と、該蓋体に配設した回転軸を回転駆動する動力手段と、前記圧力容器を加熱する加熱手段とを本体に一体化して成立する液状食品調理器であり、本体頂部で起倒するキャリングハンドルを備え、該キャリングハンドルの起立に伴って動力手段とともに降下して前記蓋体に圧接する緩衝部材および装置電源が投入されるようにしたスイッチ手段とを備え、可搬性を向上した液状食品調理器となるようにする。
請求項22記載の発明では、上記請求項6、請求項7、請求項17乃至請求項20の何れかに記載された発明において、抽出容器の水位を検出する検出手段を備えた液状食品調理器となるようにする。
請求項1乃至請求項8記載の発明によれば、上方に位置する抽出容器を下方に位置する圧力容器の開口部を密閉して載置し、抽出容器内に食材を投入するとともに調理水を注入し、この調理水の加熱と食材の粉砕を任意に定めた時期若しくはほぼ同時に実行可能となるようにしたので、調理水の温度が上昇し、やがて沸騰するまでの数分間の間に食材の粉砕を完了することができる。
即ち、この数分間は、調理水の温度が大豆などの蛋白質成分を硬化させる温度に至らない低い状態にあるため、この間に食材を粉砕し、粉砕後に熱水となった調理水により有効成分を抽出するようにしているので、豆乳を生成する場合の大豆のように昇温していない調理水(常温水若しくは冷水)中で粉砕することが望まれる場合に好適であり、かかる処理を経て生成された抽出液はその成分濃度が高いものとなり品質を向上することができる。
前記した調理プロセスは、抽出容器により圧力容器を確実に密閉できるようにしたことから、圧力容器内の気圧と抽出容器内の調理水の水圧のバランスが均衡するため、この調理水の一部が圧力容器に漏出して殆どの調理水が抽出容器に滞留するため可能となるもので、圧力容器にすべての調理水を注入し、その熱水を揚上していた従来の方法では実現できない調理プロセスとなる。
詳述すると、抽出容器は圧力容器内を密閉状態に保つため気圧と水圧のバランスが均衡し、抽出容器に注入した調理水は連通管から僅かに漏出して連通管の先端が浸漬する程度に止まり、それ以上は流出せず抽出容器内に滞留する。この状態で加熱が開始されると、圧力容器内の調理水の沸騰により発生した水蒸気により圧力容器内が高圧となり、やがて水蒸気の自励振動の要因となる作用が発生して圧力容器の水蒸気が連通管を介して排出され、これに伴って負圧となった圧力容器へ抽出容器内に滞留している調理水が吸引され流下する。この時、大豆の場合は水溶性成分の粘性が高いのでフィルターユニットの網目が細かいことと相俟って調理水の一部が流下するが、粘性の低い水溶性成分の食材の場合はほぼ全て流下する。抽出容器内の調理水が流下するまでには既に粉砕が完了しており、圧力容器に流下した調理水は加熱が継続されることによりやがて沸騰し、熱水および水蒸気となって抽出容器へ揚上して抽出容器内の食材を加熱しながら有効成分を抽出する。
また、本発明の液状食品調理器によれば、圧力容器に一旦流下した調理水が沸騰して熱水となって抽出容器へ揚上してから、高温の調理水中で食材を粉砕することも可能であり、各種の食材の性質または異なる調理プロセスに柔軟に対応することができ、何よりも、サイホン式の基本機能を維持しつつ昇温前の調理水中で食材の粉砕が可能となることから調理機能が広範となり、高品質の各種液状食品の生成が可能となる。
請求項9乃至請求項11記載の発明によれば、圧力容器の開口部のフランジと抽出容器の底部に形成した段部でシール部材を幅広に挟持するように構成したので、圧力容器内を高圧に維持することが可能となり、また負圧となることにより、抽出容器が下方へ吸引される場合においてもシール部材からエア漏れが防止され、圧力容器の気密性を高く保つことができる。
また、粉砕された大豆や野菜などの食材を煮沸する場合は、圧力容器から抽出容器への
熱伝達が重要となるが、かかる点において本発明では、圧力容器の開口部のフランジと抽出容器の底部の段部が幅広に重合するとともに、抽出容器の側周部の一部が圧力容器内部へ没入する構成となることから接触面積が大きくなるので熱伝達効率が向上し、抽出容器を素早く加熱することができる。
請求項12記載の発明によれば、抽出容器の底部が縮径部から連通管へ向かう下り勾配となるようにしたので、抽出容器の底部が圧力容器内へ没入する状態となり、これにより抽出容器の容量を大きくしつつ容器全体の高さを低く抑えることができるので、抽出容器と圧力容器を組み立てた状態において装置全体の高さを低くすることができ、延いては、調理器全体の高さを抑えてコンパクトに構成することができる。
これにより、重心を低くすることができるので、全高が増した場合のサイフォン式固有の構造的不安定(抽出容器と圧力容器間を調理水が流下/揚上することにより発生する不安定)を回避することができ、運転中の装置の転倒などを防ぎ、安全性を高めることができる。また、抽出容器の底部が傾斜状であることからその面積が拡大し、圧力容器内へ没入することと相俟って圧力容器に発生した熱を吸収し易くなり、抽出容器が素早く加熱されることになる。さらに、抽出容器の底面が傾斜状となっていることから、濾過手段により濾過される液状食品に含まれる微細粒子の滞留を防ぎ、生成された液状食品の圧力容器への回収が良好となる。
請求項13記載の発明によれば、抽出容器の底部の内径に対する粉砕手段の回転軌跡の直径の比率を一定の範囲に収めるようにしたので、食材の粉砕能力を維持しつつ熱水となった調理水が抽出容器の施蓋部分から溢れ出すのを防止することができる。
請求項14記載の発明によれば、カッターにより遠心方向へ飛散した食材は縮径部で跳ね返りカッター上に落下する循環を繰り返すので、食材の粉砕効率を向上することができる。
請求項15記載の発明によれば、濾過手段に残滓を回収する機能を備えたので、調理後の残滓の取り出しが容易であり、調理作業の能率を向上することができるとともに、抽出容器の略内径までフィルターを張設でき、目詰まりの虞を少なくできる。
請求項16記載の発明によれば、異なる濾過手段を任意に選択して抽出容器に着脱可能となるようにしたので、豆乳またはスープなど異なる種類の液状食品の何れも生成することが可能になるとともに、メンテナンス性を向上することができる。
請求項17乃至請求項20記載の発明によれば、食材に応じた調理モードから任意の調理を選択して指定し、その後、自動的に所望の液状食品の調理が可能となる。また、加熱手段による圧力容器の加熱量を減少するようにしたので、圧力容器からの過剰な蒸気で調理水の施蓋部分からの溢れを防止でき、乏しくなった圧力容器内の調理水が異常に高温となることに起因する焦げ付きの不具合を防止することができるとともに、過剰な加熱により食材の抽出成分を破壊することなく、味覚を損なわない安定した調理結果を得ることができる。
請求項21記載の発明によれば、本体に備えた回動自在のハンドルで動力手段を昇降可能となるように構成したので、ハンドルと連結した昇降機構で動力手段を保持しているカバー体を確実に固定することができ、振動を抑制して運転時の騒音を低減できる。また、ハンドルを倒した状態では動力手段が連結されずスイッチ手段がオフとなり、蓋体・容器を本体から外せるようにし、ハンドルをほぼ直立に立てた状態、即ち本体の可搬可能な状態ではスイッチ手段がオフとされ、且つ、蓋体・容器が本体から外れないようにし、ハンドルが直立位置からさらに稼動範囲最大まで回動したとき、スイッチ手段がオンとなり動力手段が連結されるようにしたので、調理場所の移動や運搬時のハンドルを持ち上げた場合の電気的な安全性を高めることができ、家庭で手軽に使用できるようにする使い勝手を向上することができる。
請求項22記載の発明によれば、抽出容器の水位検出手段を設けたので、抽出容器の水位の異常を検知することができるとともに、蓋体の装着忘れ、シール部材の装着忘れを検知することができ、更に、濾過手段の誤装着による目詰まり等を検知して使用者に報知することが可能となる。
図1は、本発明を実施した液状食品調理器Aの正面斜視図であり、図2にその側面図を示し、図3に断面図を示す。同各図において、装置構成要素は大別して、前面を開放し、底面に加熱手段としてのヒーター2を配設するとともに、上部に動力機構3を内蔵した本体(スタンド)1、および圧力容器(下容器)4とこの圧力容器4に装着される抽出容器(上容器)5からなる。前記ヒーター2は電熱線による場合が一般であるが、誘導加熱コイルを採用することも可能であり、この場合、圧力容器4の外底面には、例えばアルミニウム層を敷設してその上に、SUS430ステンレスや鉄などの磁性材料からなる磁性体層を溶接や溶着などによる適宜手段で敷設すれば良い。
圧力容器4は、ステンレス等の金属または耐熱ガラスで有底筒状に形成されるが、その開口部の全周には遠心方向へ水平状態で延在するフランジ4aが形成され、把手4bが取り付けられている。前記フランジ4aは、図4に示すように水平状態に形成してもよく、図5に示すようにフランジ4aをテーパ状に拡径した状態に形成してもよい。なお、圧力容器4の底面には、例えば、熱伝導性に優れたアルミニウムや銅をメッキ若しくは溶接などで付設してもよく、これにより加熱による熱が均等に拡散し、非水溶性成分の焦げ付きを防止することができる。
前記圧力容器4に装着する抽出容器5は、ステンレスなどにより有底状態に形成されるが、傾斜状態の底部5cの略中央部から下方に延在する連通管(サイホン管)5Aが設けられ、把手5eを備える。この連通管5Aの長さは、熱水の揚上に供するようにその下部開口部と圧力容器4の底面との間隙を可及的に狭く、例えば、5mm程度となるようにする。この連通管5Aは抽出容器5と一体で形成してもよく、別体として抽出容器5に取着可能に構成してもよい。さらにこの抽出容器5は、その底部を縮径して形成した段部5aが前記圧力容器4のフランジ4aに並行する水平状態で形成されている。なお、フランジ4aを図5に示すようにテーパ状に形成した場合は、同図に示すように抽出容器5の段部5aもフランジ4aに並行するテーパ状に形成する。
そして、前記段部5aを覆う状態でシール部材(シールリング)6が取り付けられ、これにより抽出容器5を圧力容器4へ装着したとき、前記シール部材6を圧力容器4のフランジ4aと抽出容器5の段部5aにより挟持されることになる。詳述すると、シール部材6は抽出容器5と圧力容器4の断面略L字状の幅広の重合部に沿って挟持され、気密性を増すとともに抽出容器5と圧力容器4との熱的結合を良好に保つように構成される。前記のように段部5aが形成された抽出容器5は、縮径部5bから連通管5Aに向かう下り勾配の傾斜面となる底部5cが形成されている。なお、勾配の角度αは、回転軸に垂直な面を基準として略10度〜30度に構成される。このように形成された抽出容器5を圧力容器4へ装着すると、抽出容器5の底部5cが圧力容器4内へ没入する状態になることから、熱的結合を良好にしつつシール部材6の鉛直方向における挟持が確実に行われ、圧力容器4内の減圧吸収時における位置ずれが生じない。
図6は、抽出容器5へ配設される濾過手段としてのフィルターユニット7および粉砕手段としてのカッター9を軸支した蓋体10の組み立て状態を分解斜視図で示したものである。同図に示すフィルターユニット7は、抽出容器5の縮径部5bの内周壁に圧入して固定される環状枠体7aから抽出容器5の底部5cの傾斜に並行する状態で形成されたステム(支持枠)7bにフィルター素材7cが張設されている。このフィルターユニット7には把手(ハンドル)7dを備え、調理後にこの把手(ハンドル)7dによりフィルターユニット7を抽出容器5から引き抜くことができ、残滓が有効に捕捉されその回収が容易となる。なお、環状枠体7aの高さは抽出容器5の縮径部5bの内周壁の高さと略同一に形成される。
前記フィルター素材7cは、一例として、JISで規定されているステンレス鋼線製金網を採用する場合、豆乳の生成用として、例えば、80〜110メッシュ(好ましくは100メッシュ)、スープの生成用として例えば、10〜20メッシュ(好ましくは、繊維質の少ない南瓜、馬鈴薯などの調理用に16メッシュ、繊維質の多い人参、キャベツなどの調理用に10メッシュ)を採用した場合に良好な生成結果が得られた。なお、フィルター素材としては他にステンレス板のパンチングメタルなども採用し得る。
図7は、上記とは異なる形状に構成したフィルターユニット8を示すもので、内周にフィルター素材8bを張設した環状体8aの外周の複数箇所に傾斜凸条8cを形成する一方、抽出容器5の縮径部5bの前記傾斜凸条8cに対向する位置に突起5dを形成してバヨネット構造となるようにし、着脱可能となるようにしたもので、フィルター素材8bが略平坦面となるように構成したものである。このようにフィルター素材8bが略平坦面となるようにしたフィルターユニット8によっても、その環状枠体8aが抽出容器5の内周壁に密接するので、残滓が有効に捕捉され回収が容易になるとともに、フィルターユニット7のように縦長の環状枠体7aを形成する必要がないので、製作が容易である。
図7は、フィルターユニット8を抽出容器5にセットして大豆などの食材をカッター9で粉砕している状態を示したもので、粉砕された食材はカッター9の回転による遠心力で同図矢印に示す軌跡で飛散する。即ち、カッター9の回転による水流とともに発生する遠心力により砕かれた食材はフィルター8の底部から抽出容器5の縮径部5bに向かいその上方で跳ね返され、カッター9上に落下する循環が繰り返される。したがって、段部5aの高さ、即ち、縮径部の縦方向の高さh2が短いと、粉砕された食材がこの段部5aに乗り上げ堆積してしまう。よって、縮径部5bの高さh2は、抽出容器5の周壁の全体の高さh1の略1/3以上とすることによりこのような不具合を解消するようにしている。かかる構成としたことにより、装置全体が高くなるのを抑制することができ、しかも、前述したように圧力容器4から抽出容器5への熱伝導効率を向上することができるとともにシール部材6によるシール機能を向上することができる。なお、カッター9の回転軌跡D1と抽出容器5の縮径部5bの内径D2との関係については後述する。
つぎに、蓋体10の組立状態を図3、図6ならびに図8に示す分解斜視図にもとづいて説明する。蓋体10の中央には凹陥状態に形成された中空ホルダー10aを備え、該ホルダー10a内にシャフト11が挿通されたスリーブメタル12が固定される。このスリーブメタル12は、その上下がストップリング13で位置決めされ、ワッシャー14とオイルシール15が配設され、中空ホルダー10aの内部を液密状態となるようにするとともに押さえ板16が止めネジ17で固定され、シャフト11が上下方向の定位置で回転可能に固定される。なお、符号10cは、抽出容器5内に発生した水蒸気を排出するための排気孔である。
このようにして組み立てられたシャフト11の上端11aは中空ホルダー10aの開口部に臨み、このシャフト11の上端11aに下カップリング18をナット19により固定する。一方、中空ホルダー10aから垂下したシャフト11の下端11bにはカッター9のホルダー9aが装着され、該ホルダー9aの割溝とシャフト11のピン11cが係合し、カッター9が着脱可能に取り付けられる。なお、図3、図7に示すようにカッター9の回転軌跡の直径D1と抽出容器5の縮径部の内径D2との比率D1/D2は、略0.5〜0.7となるようにしている。これにより、カッター9の回転軌跡の直径が大き過ぎることによる熱水となった調理水の施蓋部分からの溢れ、逆に小さ過ぎることによる粉砕能力の低下やフィルターの目詰まりを防止することができる。
以上のように蓋体10に構成されたカッター9の回転機構は、本体1の上部のヘッドベース1A上に組み立てられた動力機構3により駆動される。この動力機構3は、図3に示すように出力軸の先端に上カップリング20が固定された動力手段としての電動モーター21は、同図および図9に示すようにモーターケーシング22に収容され、昇降可能となるようにしている。
即ち、前記モーターケーシング22は図10に示すように直径方向の両側部で対向するスプリングホルダー22aが一体に構成されており、該スプリングホルダー22aに圧縮コイルスプリング23の上部を収容する一方、下部をヘッドベース1Aに立設されたボス1A−1に装着して係止する。そして、モータケーシング22は、ヘッドベース1Aに立設されたスライドホルダー1A−2に昇降可能となるように支持されており、該モータケーシング22の下端部には蓋体10に圧接する適度の柔軟性を具えたゴムなどの緩衝部材22bが配設されている。
駆動機構3はこのように構成されていることから、圧縮コイルスプリング23の作用によりモーターケーシング22は上方へ付勢され上昇が可能となる。一方、このモーターケーシング22を下降させるための手段として本発明ではカム機構を採用し、キャリングハンドル40に連動するようにした。即ち、図1および図2に示すように、本体1の頂部を跨ぐように架設されるキャリングハンドル40は、その両端部の回転中心から本体内部へ延設された支軸41を備え、該支軸41の先端にカム42を固定してなる。
前記支軸41は、図11および図12に示すようにブラケット43により回動可能に保持され、該ブラケット43のフランジ43aがヘッドベース1Aに立設されたボス1A−3にネジ止めにより固定される。なお、図11は、ヘッドベース1Aを省略した状態の図であり、したがって、前記ボス1A−3は図示されていないが、図10に示す配置状態で形成されている。そして、このようにしてヘッドベース1Aに支軸41が保持されると、ブラケット43の窓孔43bからカム42が露呈し、ブラケット43と一体のストッパー43cにより回動が制限されるようにしてある。
即ち、前記のように組み立てられると、カム42はスプリングホルダー22aにより上方へ常時押し上げられている状態となるため、キャリングハンドル40を後方へ転倒されるとその状態が維持される。そして、かかる転倒状態のキャリングハンドル40を起立させると、その支軸が回転するのに伴いカム42下方向に向かって揺動する。これによりカム42の円弧状に形成した摺接面42aがスプリングホルダー22aを下方へ押し下げる。これにより図3に示すように下カップリング18と上カップリング20が係合して動力の伝達が可能になるとともに、緩衝部材22bが蓋体10に圧接されることになる。なお、キャリングハンドル40を起立状態にしたとき、カム42の先端がスプリングホルダー22aの頂面に膨出形成された***部22cを乗り越えるためトグル作用が働き、起立状態を安定に保つことができる。
このようにして駆動機構3が組み立てられたヘッドベース1Aには図10に示すように、制御部を構成する制御基板B1が取り付けられ、マイコン機能を果たす集積回路などの電子部品が実装され、タイマー機能やプログラムされた調理シーケンスなどが保存されている。また、表示制御部を構成する制御基板B2にも集積回路素子やスイッチ素子、LEDランプ、ブザーなどが実装される。
以上のように構成された駆動機構3の昇降機構において、図13(図2)に示すようにキャリングハンドル40を転倒し、本体上部カバーのハンドル収容凹部に完全に収容すると、電動モーター21は最も高い位置に上昇する。かかる状態においては緩衝部材22bが完全に上昇した状態となるので、圧力容器4と抽出容器5を組み立てた状態で本体1の前面開放部への装脱が可能となる。このとき、装置電源の入切を司るためモーターケーシング22に配設されたリミットスイッチ44のスイッチアクチュエータ44aは、常時下方に付勢されているスイッチ操作ピン45により作動されず、装置電源は遮断された状態となっている。
つぎに、キャリングハンドル40を徐々に起こし、図14に示すようにほぼ直立状態にすると、カム42の摺接面42aが次第にスプリングホルダー22aを下方に押し下げ、その先端が***部22cに接する状態に至る。これにより、モーターケーシング22は徐々に降下し、先端の緩衝部材22bが蓋体10の嵌合凹部10bに進入するので、本体1に装着された圧力容器4と抽出容器5を取り出すことが不能であり、脱落を防ぐ状態となる。したがって、キャリングハンドル40を把持して本体1を持ち運ぶことが可能となり、調理場所の移動が可能となる。なお、この状態では、スイッチ操作ピン45は蓋体10に接触するものの、スイッチアクチュエータ44aを押圧せず、リミットスイッチ44を作動するに至らない。
図14の状態からなおもキャリングハンドル40を回動して図15に示す状態に至ると、キャリングハンドル40は本体上部カバーに当接して停止し、このときカム42の先端が***部22cを乗り越えて直立し、スプリングホルダー22aを押し付けるように直立する状態となる。かかる状態は***部22cによりトグル作用を受けた状態であり、僅かな力でモーターケーシング22を確実に保持することができ、キャリングハンドル40の起立状態を安定に保つことができる。また、これと同時に蓋体の下カップリング18と電動モーター21の上カップリング20が係合して動力の伝達が可能となる。また、モーターケーシング22の緩衝部材22bが蓋体10の嵌合凹部10bに完全に没入し、これにより適度に蓋体10を押圧して施蓋状態を安定に保つことができ、これにより、圧力容器4が高圧状態となつたときに発生する抽出容器5の振動を防ぐことができる。そして、スイッチアクチュエータ44aがスイッチ操作ピン45で押圧されるのでリミットスイッチ44を作動して装置電源が投入される。
一方、降下させたモーターケーシング22を上昇させるには、起立しているキャリングハンドル40を再び図2の状態となるまで転倒させることにより可能となる。即ち、キャリングハンドル40の回動に伴い、カム42の先端がスプリングホルダー22aの***部22cを乗り越え、カム42の円弧状の摺接面42aの高さ位置が次第に高くなることからスプリングホルダー22aが圧縮コイルスプリング23の作用を受けて図15に示す状態から図13に示す状態まで移行する。これにより、下カップリング18と上カップリング20との係合が解除されるとともに、緩衝部材22bが蓋体10の嵌合凹部10dから完全に離間し、圧力容器4および抽出容器5の固定状態が解除される。そして、図14の状態に至ると、スイッチアクチュエータ44aのスイッチ操作ピン45による押圧が解除されるため、リミットスイッチ44の作動が停止され装置電源が遮断される。
以上は本発明の最も基本的な構成を示すもので、装置を起動すると、予め実験した結果にもとづいてプログラムされたシーケンスにより豆乳あるいはスープの調理が可能となるが、更に予期し得る不具合を未然に防ぎ、精度の高い調理結果を得るためには、以下に述べる構成を付加することにより可能となる。
図16は、かかる要求を実現するための構成を示すもので、発熱部は同図に示すようにヒーター2を遮熱板にネジ止めされたアルミダイキャスト製のヒーターベース46に鋳込んで形成されたもので、本体1の底部に固定配置されている。ヒーターベース46には亜鉛メッキ鋼板などの鉄板製のサーミスタ取付板47を介して温度センサとなるサーミスタ48が取り付けられており、このサーミスタ48のリード線が前記制御基板B1へ接続され、調理中のヒーター温度をモニターできるようにする。これにより、ヒーター2の発熱量が予め実験した結果から得られた適正値となるように通電制御することが可能となる。なお、取付板を熱伝導性の良好なアルミニウム板などにすると熱応答性が良すぎて制御時の温度差や時間差がモニターし難いので、ヒーター温度とサーミスタ検知温度との差が大きく、時間差も出るようにこの部分には鉄板を採用した。このように構成したことによりヒーター温度のモニターが可能となり、異常加熱(空焚きなど)による損傷はもちろん、加熱により食材の非水溶性成分の焦げ付きや調理水の施蓋部分からの溢れを防止することができる。又、季節により使用される調理水の水温に相違が生じるが、この相違は水の沸騰温度を得るのに制御するヒーターの目標温度、例えば、130℃になる時間にも影響してくる(冷水の場合はヒーター温度が目標温度に到達する時間が長くなるが、暖水の場合は短くなる)。よって使用される調理水の水温に影響されることなく均一な液状食品を生成でき、また、調理時間の短縮が可能となる。
つぎに、蓋体10には電極29a・29bが設けられ、それぞれの電極の一端が抽出容器5内に垂下するとともに、他端を蓋体10の表面に臨ませて固定し、制御部へ接続された導電ピン31a・31bと電気的に導通するコンタクト30a・30bが形成されている。前記導電ピン31a・31bは、図16乃至図18に示すようにモーターケーシング22の外周の略直径方向で対向する位置に構成されたピンホルダー22dに収容され、モーターケーシング22の昇降に同期して上下動可能となるようにしており、内蔵された圧縮コイルスプリングにより下方へ付勢されている。
前記電極29a・29bは、抽出容器5の調理水の有無を検知するもので、調理開始時に抽出容器5に注入された調理水が電極29a・29bが浸水する所定の高さまで達していると、電極29a・29b間の電気抵抗値の変化を検知し、制御部において調理水が充填されているものと判断する。この電極29a・29bから得られる電気抵抗値にもとづいて制御部が調理開始の適否を判断し、かかる機能により装置の安全機能が維持される。例えば、仮にシール部材6の装着忘れがあった場合、抽出容器5へ注入した調理水はすべて圧力容器4へ流下してしまい、調理が不能となる。このような状態をこの電極29a・29bにより検出することができ、ブザーを鳴動して異常を報知することができる。
また、制御部で電極29a・29bから得られる電気抵抗値を監視することにより、設定された所定のシーケンスにおいて調理された抽出液が圧力容器4へ流下して回収されないという不具合も検知することができる。即ち、例えば、フィルターの目詰まりにより抽出液が設定された時間を経過しても流下せず、抽出容器5内に滞留したままである場合、電極29a・29bから得られる電気抵抗値が所定時間を経過しても変化しない状態を異常と判断し、制御部が粉砕手段を動作するか、動作しても目詰まりが解消しない場合は以降のシーケンスを停止して異常状態をブザーを鳴動して報知することができる。
蓋体10より僅かに垂下する電極29cは一端が抽出容器5の開口部位に臨み、他端は制御部に電気的に接続されたスイッチ操作ピン45に、図示しない導電コンタクトを介して電気的に接続されている。蓋体10に電極を配設する場合はスイッチ操作ピン45が導電ピンの1つを兼用する。この電極29cは抽出容器5内の食材の煮沸に伴う発泡を検出するもので、例えば、豆乳生成時に調理水が発泡し、施蓋部分から溢れ出るような場合、あるいは調理水が所定量を超えて注入され、沸騰した調理水が施蓋部分より溢れ出るような状況を検知するものである。かかる状況は、この電極29cと前記電極29a・29b一方または両方との間の電気抵抗値の変化を検出することにより検知することができる。したがって、調理中に発泡を検知すると、カッター9の回転あるいはヒーター2による加熱の一時停止により発泡を沈静することができ、所定の時間が経過しても変化しない場合は、ブザーを鳴動して異常を報知する。
以上説明したように本発明によれば、ヒーター2の温度をモニターすることができることから注入した調理水の水温に拘わらず均質な調理が可能となり、また、抽出容器5内の調理水の水位や発泡を電極により検知することができ、また、豆乳、スープなど異なる調理におけるシーケンスの相違(加熱時間、粉砕、攪拌のタイミングなど)に対応することが容易となり、高い精度の調理結果を得ることができる。特に本発明では、サイホン式における常套手段である抽出容器5内での熱水となった調理水中で食材を粉砕するプロセスと、昇温前の調理水中での食材を粉砕するプロセスの何れも可能であるので食材に適応した調理が可能となるため、調理できる液状食品の種類の幅を広げることができるとともに、食味の良い液状食品を生成することができる。
図19は、複数の液状食品の生成が可能となるように複数モードを備えて完成した本発明の液状食品調理器Aの斜視図であり、本体1の頂部に操作部33を構成したもので、例えば、モードスイッチ33a(コーヒー)、モードスイッチ33b(豆乳)、モードスイッチ33c(スープ)を備え、電源表示ランプ33d、調理終了や異常状態を報知するブザー33eを備える。なお、前記モードスイッチ33a・33b・33cにはモードランプ33a−1・33b−1・33c−1を備え、運転中のモードの確認が可能となるようにしている。
つぎに、本発明の液状食品調理器Aを運転するため、制御部にプログラムされた各調理モードのシーケンスの一例を説明する。まず、本発明の液状食品調理器Aをサーミスタ48および電極29a・29b・29cを配設しないで単機能に構成した場合において豆乳を生成するシーケンスを図1、図3、図20および図21等にもとづいて説明する。
まず、調理を開始する準備として、圧力容器4の開口部に抽出容器5を装着し、予め水に浸漬しておいた所定量の大豆をフィルターユニットが装着された抽出容器5へ投入する。そして、所定量の調理水W1を抽出容器5に注入し、蓋体10により施蓋され組み立てられた状態の抽出容器5、圧力容器4を本体1へ図1に示すように配設する。このとき、抽出容器5に注入した調理水W1の一部は圧力容器4へ漏出するが、この圧力容器4は抽出容器5により密閉されているので気圧と水圧のバランスの均衡により、圧力容器4に漏出した調理水W2は連通管5Aの先端を満たす程度であり、殆どの調理水W1は抽出容器5内に滞留する。そして、キャリングハンドル40を回動して起立し、定位置に固定することによりリミットスイッチ44が作動して装置電源が投入され、これにより制御部は電動モーター21がセットされたことを認識し、スタンド1の操作部33のLEDランプ33fが点滅する(ステップSa1)。
制御部は、前記により装置電源が投入されると同時に12分タイマーを起動してヒーター2の継続作動を開始し(ステップSa2−1)、同時に5分タイマーを起動してカッター9の断続作動(10秒ON/20秒OFF)が開始される(ステップSa3−1)。これにより、抽出容器5内の大豆が粉砕され水溶性成分が溶出する。一方、通電が開始されたヒーター2の発熱により圧力容器4内の調理水W2の温度が次第に上昇する。
5分間のカッター9の継続動作の経過が確認されると(ステップSa3−2)、カッター9の作動を停止し、5分タイマーを起動する(ステップSa3−3)。そして、昇温した調理水W2は次第に沸騰して発生した水蒸気により圧力容器4内が高圧となり、やがて水蒸気の自励振動の要因となる作用が発生して圧力容器4内の水蒸気が図3に矢印で模式的に示すように連通管5Aを介して排出され、これに伴って負圧となった圧力容器4へ抽出容器5内に滞留している調理水W1の一部が吸引され流下する。圧力容器4に流下した調理水W1は次第に沸騰して発生した水蒸気により圧力容器4内が加圧され、水蒸気および熱水となって抽出容器5へ揚上し、抽出容器5内の粉砕された大豆の煮沸が開始される。やがて5分タイマーによる5分間の経過が確認されると(ステップSa3−4)、16分タイマーが起動し、カッター9の断続作動(1秒ON/10秒OFF)が開始される(ステップSa3−5)。
一方、ヒーター2の作動が継続され、12分の経過が確認されると(ステップSa2−2)、余熱を減らし加熱量を急減させるため、ヒーター2の作動を2分間停止(ステップSa2−3)した後、11分タイマーを起動してヒーター2の20秒ON/50秒OFFの断続作動を開始する(ステップSa2−4)。この時点では、調理水は連通管5Aの未浸漬部分を除いて殆ど抽出容器5へ揚上し豆乳の生成が開始されており、ヒーター2の作動が停止されるまで調理水の揚上が維持されている。このようにして豆乳の生成が行われている間、カッター9に断続作動(1秒ON/10秒OFF)による攪拌・消泡運転が行われ、豆乳の生成に伴う泡の発生を抑制するとともに、ヒーター2を断続通電させて溢水および焦げ付きを抑制する。
11分タイマーによるヒーター2の断続作動の経過が確認されると(ステップSa2−5)、ヒーター2の作動が停止され5分タイマーが起動される(ステップSa2−6)。これにより、次第に圧力容器4内が減圧し、抽出容器5内に生成された抽出液(豆乳)が吸引されて圧力容器4内への回収が徐々に開始される。この間、カッター9の断続作動が継続され、16分タイマーによる経過が確認されると(ステップSa3−6)、カッター9はヒーター2のOFF後少し遅れて、略1分間後に停止し(ステップSa3−7)、残滓によるフィルターの目詰まりを防止する。かかる状態に至ると、圧力容器4内が急速に減圧し、抽出容器5の抽出液が勢いよく圧力容器4に吸引される。このようにして抽出液が完全に圧力容器4へ回収された後、ヒーター2の作動停止から5分経過を確認すると(ステップSa4)、ブザー33gを鳴動するとともにLEDランプ33fを点灯表示に切り換え、豆乳の生成の完了を報知する(ステップSa5)。なお、前記報知を終了した後、ヒーター2を断続作動して生成された豆乳を任意に定めた時間保温することは容易に可能である。
つぎに、上述のように豆乳を生成した場合と同様に、本発明の液状食品調理器Aをサーミスタ48および電極29a・29b・29cを配設しないで単機能に構成した場合においてスープを生成するシーケンスを図1、図3、図22および図23等にもとづいて説明する。
まず、調理を開始する準備として、圧力容器4の開口部に抽出容器5を装着し、適当な大きさに切り分けた所定量の野菜(根菜)をフィルターユニットが装着された抽出容器5へ投入する。そして、所定量の調理水W1を抽出容器5に注入し、蓋体10により施蓋され組み立てられた状態の抽出容器5、圧力容器4を本体1へ図1に示すように配設する。このとき、抽出容器5に注入した調理水W1の一部は圧力容器4へ漏出するが、この圧力容器4は抽出容器5により密閉されているので気圧と水圧のバランスの均衡により、圧力容器4に漏出した調理水W2は連通管5Aの先端を満たす程度であり、殆どの調理水W1は抽出容器5内に滞留する。そして、キャリングハンドル40を回動して起立し、定位置に固定することによりリミットスイッチ44が作動して装置電源が投入され、これにより制御部は電動モーター21がセットされたことを認識し、スタンド1の操作部のLEDランプ33fが点滅する(ステップSb1)。
制御部は、前記により装置電源が投入されると同時に16分タイマーを起動してヒーター2の継続作動を開始し(ステップSb2−1)、同時にカッター9が作動するタイミングを遅延するための17分タイマーを起動する(ステップSb3−1)。ヒーター2に通電が開始され発熱により圧力容器4内の調理水W2の温度が次第に上昇する。そして、昇温した調理水W2は次第に沸騰して発生した水蒸気により圧力容器4内が高圧となり、やがて水蒸気の自励振動の要因となる作用が発生して圧力容器4内の水蒸気が図3に矢印で模式的に示すように連通管5Aを介して排出され、これに伴って負圧となった圧力容器4へ抽出容器5内に滞留している調理水W1が吸引され流下する。圧力容器4に流下した調理水W1は次第に沸騰して発生した水蒸気により圧力容器4内が加圧され、水蒸気および熱水となって抽出容器5へ揚上し、野菜の煮沸が開始される。そして、ヒーター2の作動を開始してから16分の経過が確認されると(ステップSb2−2)、9分タイマーを起動して20秒ON/30秒OFFによるヒーター2の断続作動を開始する(ステップSb2−3)。この時点では、調理水は連通管5Aの未浸漬部分を除いて殆ど抽出容器5へ揚上し、野菜の煮沸を促進しており、ヒーター2の作動が停止されるまで調理水の揚上が持続されている。
以上により野菜の煮沸が継続され、17分の経過が確認されると(ステップSb3−2)、5分タイマーを起動し、カッター9による断続作動(10秒ON/20秒OFF)が開始され(Sb3−3)、このカッター9の断続作動により軟化した野菜が粉砕され、加熱されつつ攪拌されて水溶性成分が溶出する。そして、9分の経過が確認されると(ステップSb2−4)、ヒーター2の作動が停止し、5分タイマーが起動する(ステップSb2−5)。これにより、次第に圧力容器4内が減圧し、抽出容器5内に生成された抽出液(スープ)が吸引されて圧力容器4内への回収が徐々に開始される。
一方、5分の経過が確認されると(ステップSb3−4)、カッター9の作動が停止され、3分タイマーが起動する(ステップSb3−5)。そして、3分の経過が確認されると(ステップSb3−6)、ヒーター2の作動停止後10秒ON/OFFの断続動作を2回繰り返し停止する(ステップSb3−7)。このカッター9の断続作動により、残滓によるフィルターの目詰まりを防止することができる。かかる状態に至ると、圧力容器4内が急速に減圧し、抽出容器5の抽出液が勢いよく圧力容器に吸引される。このようにして抽出液が完全に圧力容器4へ回収された後、5分(カッター停止後の略4分30秒)経過を確認すると(ステップSb4)、ブザー33gを鳴動するとともにLEDランプを点灯表示に切り換え、スープの生成の完了を報知する(ステップSb5)。なお、この場合も前記報知の後、ヒーター2を断続運転して生成されたスープを保温することができる。
つぎに、図16に示すようにヒーター2にサーミスタ48を配設し、水位検知用電極29a・29bならびに泡検知用電極29cを配設することにより、ヒーター2の温度をモニターしつつシーケンスを進行するようにして豆乳を生成する例を図24および図25にもとづいて説明する。なお、以下の例では、複数モードを備えた図19に示す構成の液状食品調理器Aを前提とする。
まず、調理を開始する準備として、圧力容器4の開口部に抽出容器5を装着し、予め水に浸漬しておいた所定量の大豆をフィルターユニットが装着された抽出容器5へ投入する。そして、所定量の調理水W1を抽出容器5に注入し、蓋体10により施蓋され組み立てられた状態の抽出容器5、圧力容器4を本体1へ図19に示すように配設する。このとき、抽出容器5に注入した調理水W1の一部は圧力容器4へ漏出するが、この圧力容器4は抽出容器5により密閉されているので気圧と水圧のバランスの均衡により、圧力容器4に漏出した調理水W2は連通管5Aの先端を満たす程度であり、殆どの調理水W1は抽出容器5内に滞留する。そして、キャリングハンドル40を回動して起立し、定位置に固定することによりリミットスイッチ44が作動して装置電源が投入され、制御部は電動モーター21がセットされたことを認識し、スタンド1の操作部33の電源表示ランプ33dを点灯する。
このとき、各導電ピンが電極29a・29b・29cと接触し、各電極間の電気抵抗値を読み込み、抽出容器5内の調理水W1の水位が正常であるか判断される。これは、例えば、圧力容器4の開口部に抽出容器5を装着するにあたり、シール部材6の装着を失念していると抽出容器5に注入した調理水W1はすべて圧力容器4へ流下してしまうことになる。かかる状態では正常な調理が不能となるので、各電極により電気抵抗値を検出し、異常と判断した場合、ブザー33eを鳴動させるなどして異常を報知する。したがって、異常状態の報知がない場合は、調理水W1が抽出容器5内に正常に滞留されている状態であり、かかる状態において、豆乳を指定するモードスイッチ33bが操作されると、モードランプ33b−1が点滅し、豆乳調理モードのシーケンスが開始される。
前記により豆乳のモードスイッチ33bが操作されるとヒーター2の継続作動が開始され(ステップSc1)、これとほぼ同時に5分タイマーが起動されて電動モーター21が作動し、カッター9の断続作動(10秒ON/20秒OFF)を開始する(ステップSc2)。これにより、抽出容器5内の粉砕された大豆から水溶性成分が調理水W1中に溶出する。そして、カッター9の5分の断続作動が確認されると(ステップSc3)、大豆の粉砕を終了する(ステップSc4)。一方、通電が開始されたヒーター2の発熱により圧力容器4内の昇温された調理水W2が次第に沸騰して発生した水蒸気により圧力容器4内が高圧となり、やがて水蒸気の自励振動の要因となる作用が発生して圧力容器4内の水蒸気が図3に矢印で模式的に示すように連通管5Aを介して排出され、これに伴って負圧となった圧力容器4へ抽出容器5内に滞留している調理水W1の一部が吸引され流下する。圧力容器4に流下した調理水W1は次第に沸騰して圧力容器4内が加圧され、熱水および水蒸気となって抽出容器5へ揚上し、粉砕された大豆の煮沸が開始される。
前記状態が継続され、サーミスタ48により検出されているヒーター2の温度が約130℃に達したことが確認され(ステップSc5)、抽出容器5の調理水W1が所定の水位に保たれていることを確認すると(ステップSc6)、ヒーター2による加熱量を減少させ、ヒーター2の温度を約130℃に維持する第1の加熱制御を約4〜6分間行う(ステップSc7)。この第1の加熱制御は、調理水の揚上を維持しつつ過剰蒸気による施蓋部分からの溢水を抑制するとともに、抽出容器5に生成された抽出液をほぼ沸騰温度に維持して豆乳の殺菌効果を促進させるもので、ヒーター2を断続的に作動するようにしてサーミスタ48で温度を検出するため、ヒーター2への通電は不定期な間隔となる。
このようにして第1の加熱制御(ステップSc7)が終了すると、次にこの第1の加熱制御時よりヒーター2への通電時間を短くして温度を約115℃に維持するための第2の加熱制御が行われる(ステップSc8)。この第2の加熱制御は、抽出液(豆乳)を煮込んで熟成させつつ殺菌を完遂して生臭さを除去するもので、ヒーター2を断続的に作動し、第1の加熱制御による温度より低い温度とすることにより抽出液の溢水を抑制するとともに焦げ付きの発生を抑制する。また、加熱時間を約9〜11分間とすることにより、例えば、注入した調理水W1の温度が低く、沸騰して揚上に要する時間が長くなった場合、この第2の加熱制御の時間を短くして調理時間の合計を一致させることができる。
この間、電極29a・29b・29cにより泡の発生が検知されると、カッター9を断続的に動作して泡の発生を抑制する。そして、第2の加熱制御が終了すると、ヒーター2の作動が停止され(ステップSc9)、抽出工程に移行する。即ち、ヒーター2の作動が停止すると、次第に圧力容器4内が減圧し、抽出容器5内に生成された抽出液(豆乳)が吸引されて圧力容器4内への回収が徐々に開始される。
この間、フィルターの目詰まりなどにより予め設定された抽出時間が経過しても電極29a・29bによる電気抵抗値が変化せず、抽出容器5内の水位が低下しない場合(ステップSc10)、カッター9を作動し(ステップSc11)、目詰まりを解消して抽出が促進できるようにする。そして、抽出完了予定時間を経過しても抽出液が抽出容器5内に滞留している状態を電極29a・29bにより検出されると(ステップSc12)、異常状態と判断してブザー33eを鳴動する(ステップSc16)。また、抽出完了予定時間に電極29a・29bによる電気抵抗値が変化している場合は抽出が完了したものと判断し、ブザー33eの鳴動および操作部33のLEDランプを点灯して調理完了を報知する(ステップSc13)。なお、前述した調理シーケンスの場合においても、調理完了の報知を終了した後、ヒーター2を断続作動して生成された豆乳を保温することができる。
つぎに、前述と同様にヒーター2にサーミスタ48を配設し、水位検知用電極29a・29bならびに泡検出用電極29cを配設することにより、ヒーター2の温度をモニターしつつシーケンスを進行するようにしてスープを生成する例を図26および図27にもとづいて説明する。なお、以下の例においても、複数モードを備えた図19に示す構成の液状食品調理器Aを前提とする。
まず、調理を開始する準備として、圧力容器4の開口部に抽出容器5を装着し、適当な大きさに切り分けた所定量の野菜(根菜)をフィルターユニットが装着された抽出容器5へ投入する。そして、所定量の調理水W1を抽出容器5に注入し、蓋体10により施蓋され組み立てられた状態の抽出容器5、圧力容器4を本体1へ図19に示すように配設する。このとき、抽出容器5に注入した調理水W1の一部は圧力容器4へ漏出するが、この圧力容器4は抽出容器5により密閉されているので、気圧と水圧のバランスの均衡により、圧力容器4に漏出した調理水W2は連通管5Aの先端を満たす程度であり、殆どの調理水W1は抽出容器5内に滞留する。そして、キャリングハンドル40を回動して起立し、定位置に固定することによりリミットスイッチ44が作動して装置電源が投入され、制御部は電動モーター21がセットされたことを認識し、スタンド1の操作部33の電源表示ランプ33dを点灯する。
このとき、各導電ピンが電極29a・29b・29cと接触し、各電極間の電気抵抗値を読み込み、抽出容器5内の調理水W1の水位が正常であるか判断される。これにより、前述したようなシール部材6の装着の失念などによる不具合の発生を未然に防止することができる。かかる状態において、スープを指定するモードスイッチ33cが操作されると、モードランプ33c−1が点滅し、スープ調理モードのシーケンスが開始される。
前記によりスープのモードスイッチ33cが操作されると、ヒーター2の継続作動が開始され(ステップSd1)、通電が開始されたヒーター2の発熱により圧力容器4内の調理水W2の温度が次第に上昇し、やがて沸騰する。そして、沸騰により発生した水蒸気により圧力容器4内が高圧となり、やがて水蒸気の自励振動の要因となる作用が発生して圧力容器4内の水蒸気が図3に矢印で模式的に示すように連通管5Aを介して排出され、これに伴って負圧となった圧力容器4へ抽出容器5内に滞留している調理水W1が吸引されて流下する。圧力容器4に流下した調理水W1は次第に沸騰して発生した水蒸気により圧力容器4内が加圧され、水蒸気および熱水となって抽出容器5へ揚上し、野菜の煮沸が開始される。
前記状態が継続され、サーミスタ48により検出されているヒーター2の温度が約130℃に達したことが確認され(ステップSd2)、抽出容器5の調理水W1が所定の水位に保たれていることを確認すると(ステップSd3)、ヒーター2による加熱量を減少させ、第1の加熱制御を約4〜6分間行う(ステップSd4)。この第1の加熱制御は、調理水の揚上を維持しつつ過剰蒸気による施蓋部分からの溢水を抑制するとともに、ヒーター2の温度を約130℃に保って沸騰温度を維持し、野菜の煮沸を促進させるもので、ヒーター2を断続的に作動するようにしてサーミスタ48で温度を検出するため、ヒーター2への通電は不定期な間隔となる。
このようにして第1の加熱制御(ステップSd4)が終了すると、この第1の加熱制御時よりヒーター2への通電時間を短くして温度を約115℃に維持するための第2の加熱制御が行われ、これとほぼ同時に5分タイマーが起動して電動モーター21を作動し、カッター9の断続運転(10秒ON/20秒OFF)を開始する(ステップSd5)。このカッター9の断続運転により、煮沸により軟化した野菜が粉砕されて攪拌され、熱水となった調理水W1中に水溶性成分が次第に溶出する。
この第2の加熱制御は、抽出液(スープ)を煮込んで熟成させつつ殺菌を完遂して野菜の青臭さを除去するもので、ヒーター2を断続的に作動し、第1の加熱制御による温度より低い温度とすることにより抽出液の溢水を抑止するとともに焦げ付きの発生を抑止する。また、加熱時間を約9〜11分間とすることにより、例えば、注入した調理水W1の温度が低く、沸騰して揚上するまでの時間が長くなった場合、この第2の加熱制御の時間を短くして調理時間の合計を一致させることができる。
この間、電極29a・29b・29cにより泡の発生が検知されると、カッター9を断続的に動作して泡の発生を抑制する。そして、第2の加熱制御が終了すると、ヒーター2の作動が停止され(ステップSd6)、抽出工程に移行する。即ち、ヒーター2の作動が停止すると、次第に圧力容器4内が減圧し、抽出容器5内に生成された抽出液(スープ)が吸引されて圧力容器4内への回収が徐々に開始される。
この間、フィルターの目詰まりなどにより予め設定された抽出時間が経過しても電極29a・29bによる電気抵抗値が変化せず、抽出容器5内の水位が低下しない場合(ステップSd7)、カッター9を作動し(ステップSd8)、目詰まりを解消して抽出を促進できるようにする。そして、抽出完了予定時間を経過しても抽出液が抽出容器5内に滞留している状態を電極29a・29bにより検出されると(ステップSd9)、異常状態と判断してブザー33eが鳴動(ステップSd13)する。また、抽出完了予定時間に電極29a・29bによる電気抵抗値が変化している場合は抽出が完了したものと判断し、ブザー33eの鳴動および表示部33のLEDランプを点灯して調理完了を報知する(ステップSd10)。なお、前述した調理シーケンスの場合においても、調理完了の報知を終了した後、ヒーター2を断続作動して生成されたスープを保温することができる。
なお、本発明の液状食品調理器Aにより野菜スープを生成する場合の主な食材は、南瓜、馬鈴薯、人参、玉葱、アスパラ、トウモロコシなどであり、それぞれ良好な生成結果が得られた。また、本発明で使用する調理水は常温水(約0〜40℃)を前提とするが、野菜の場合はもちろん、豆乳を生成する場合でも65℃以下の温度で良好な抽出を行うことができた。また、投入する大豆は予め水に浸漬したもののみならず乾燥大豆でも可能である。好ましくは、乾燥大豆を使用する場合は調理開始を遅延するタイマー機能を搭載して浸漬させておくと良い。また、スープの生成において、殆どの野菜はサイホン式の常套手段である熱湯中で粉砕する調理プロセスとなることから、圧力容器4に調理水を注入し、この調理水が熱湯となって抽出容器5に揚上してから食材の煮沸、粉砕を行うシーケンスとなるようにしてもよい。この場合、蓋体10の電極29a・29bは、熱水となった調理水が抽出容器5に揚上されたことを検知する揚上検知手段としても機能させることが可能である。
なお、以上の説明では、豆乳、野菜スープを調理例として説明したが、調理シーケンスやフィルターユニットの変更により各種の液状食品の調理が可能となるものであり、上記調理例に限定されるものではない。例えば、野菜スープの生成においてカッター9による粉砕を10秒ON/20秒OFFの1サイクルのみ行うようにして、その調理モードを図19における複数モードを備えた液状食品調理器に追加で搭載しても良い。このような調理を可能とすることで粉砕後の粒子の大きな食材をフィルターユニットに捕捉して、生成したスープに適宜混入することができ、歯ごたえのある好みに応じたスープが得られる。