JP4009069B2 - 油脂含有汚濁物質の嫌気性処理方法及び処理システム - Google Patents

油脂含有汚濁物質の嫌気性処理方法及び処理システム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、油脂含有排水あるいは油脂含有廃棄物の嫌気性処理法(メタン発酵法)及び装置に関するものであり、特に、嫌気反応槽内における高級脂肪酸の蓄積を抑制することによって、安定な運転を可能にする嫌気性処理法を提供するものである。本発明によれば、嫌気環境下での高級脂肪酸分解を促進する処理装置及び処理プロセスを提供することによって、油脂含有排水あるいは油脂含有廃棄物を高効率で浄化すると共に、バイオガスによるエネルギー回収効率を向上することができる。
【0002】
【従来の技術】
有機性汚濁物質を含有する排水の処理には、生物処理法が用いられ、特に従来から活性汚泥法を中心とする好気性処理法が多く用いられている。しかしながら、好気性処理法は、エネルギー消費が多く、また特に最近では余剰汚泥の処分が大きな問題となっている。これに対し、高濃度の有機性汚濁物質を含有する排水や有機性汚泥の処理においては、従来から嫌気性処理法が種々の形式で適用されている。この方式は、曝気が不要なのでエネルギー消費量を節約でき、加えて余剰汚泥の発生量が少ないため、処理費用が廉価であり、かつエネルギーとして有用なメタンガスを回収できるという利点があることが知られている(例えば、チュウ・シュンホウ、李玉友、宮原高志、野池達也ら、土木学会論文集、No. 559/VII-2、第31〜38頁、1997年等を参照のこと)。
【0003】
一方、有機性汚濁物質として代表的な油脂は、好気性処理、嫌気性処理のいずれにおいても難分解性物質である。これは、油脂の分散性が悪く、処理槽内で浮上してスカムを形成してしまうからである。従って、油脂を濃厚に含む排水をかかる生物処理法(好気性処理及び嫌気性処理)を用いて浄化するには、従来法では多くの場合油脂を浮上分離法などで物理的に分離・除去する工程が必要であった。しかしながら、一般的な生物処理に適用可能なレベルにまで油脂を分離することは困難であることに加え、作業負担も大きく、しかも分離・除去された油脂も取り扱いが難しく、排水路の閉塞、処理設備の機能障害、悪臭や病害虫の発生などといった多くの問題があった。このように、油脂含有排水・廃棄物に対しては、処分費用が多大となることから、技術的及び経済的な対応策が要求されていた。
【0004】
排水あるいは廃棄物中から油脂を分離・除去することなく浄化する方法として、固定化リパーゼを用いて油脂含有排水中の油脂を酵素により分解する方法が提案されている。しかしこの方法では、油脂の分解生成物である脂肪酸類やグリセロールが水中に残留することになる。すなわち、分解生成物、特に脂肪酸が一時的に不溶性塩となって固定化リパーゼの充填層に捕捉され、充填層が目詰まりを起こし、処理効率が低下するためである。従って、かかる分解生成物をさらに生物処理し、加えて、脂肪酸を分解する生物反応のコントロールを図って排水を浄化することが必要とされている。
【0005】
油脂を分離・除去することなく油脂含有排水あるいは廃棄物を生物的に処理する他の方法としては、固定化されていないリパーゼを添加して排水を処理し、排水中の油脂(特に中性脂肪)を加水分解し、微生物による資化を受けやすい状態にした後に、好気性処理反応槽に投入する方法が提案されている。しかし、好気性処理は、前述の通りエネルギー消費が多く、しかも後に余剰汚泥の処分が必要となるという点、油脂本来の臭気、スカムに対する対策が必要である点で問題がある。
【0006】
さらに、油脂含有排水にリパーゼを添加して油脂を分解した後、その排水を嫌気性処理する方法が提案されている。しかし、このようにリパーゼ処理した後に嫌気性処理(特にメタン生成細菌による処理)をする方法には、以下のような問題点が存在することが知られている。すなわち、中性脂肪の分解によって生成する高級脂肪酸が処理排水中に存在すると、嫌気性処理でのメタン発酵に作用するメタン生成菌、特に酢酸資化性メタン生成菌や水素資化性メタン生成菌の働きを阻害し、さらにかかる微生物自体の生育をも阻害するのである(上述のチュウ・シュンホウ、李玉友、宮原高志、野池達也ら、土木学会論文集、No. 559/VII-2、第31〜38頁、1997年;田中修三、多久和夫ら、土木学会第42回年次学術講演会要旨集第868〜869頁、昭和62年9月;津恵直美、原田秀樹、桃井清至、滝沢智、亀井昌敏ら、土木学会第44回年次学術講演会、第1014〜1015頁、平成元年9月;等を参照のこと)。
【0007】
さらには、油脂含有率8〜40%(TS(total solids:蒸発残留物)ベース、油脂濃度としては9〜44g/L)に成分調整した油脂系食品廃棄物を用いて、HRT=7.5日で高温(55℃)メタン発酵した室内実験では、CODCr分解率は73〜80%、VS分解率は76〜80%と高い有機物分解率であったことが報告されている(山下耕司、佐々木宏、李玉友、関廣二、第11回廃棄物学会研究発表会講演論文集I、第283〜285頁、2000年11月8日)。しかしながら、ここに報告されたデータを基にガス発生率を算出してみると、油脂含有率40%の場合は0.176 L-CH4/g-投入CODCr、0.220 L-CH4/g-分解CODCr、油脂含有率23%の場合は0.167 L-CH4/g-投入CODCr、0.214 L-CH4/g-分解CODCrである。ここで、分解された有機物(CODCr)当たりのメタンガス発生率は、理論上は0.35 L-CH4/g-分解CODCrである(なお、上記において、HRTはhydraulic retention time(水理学的滞留時間)、CODCrはchemical oxygen demand(重クロム酸カリウムによる酸素消費量)、VSはvolatile solids:揮発性固形分である)。従って、この油脂系食品廃棄物のメタン発酵事例より、油脂系廃棄物の高温メタン発酵においては有機物分解率は高く取れると言えるものの、有機物分解量に相当分のメタンガス回収が得られず、メタン発酵槽において高級脂肪酸などの中間代謝産物が蓄積したり、油分が発酵槽内で浮上分離していることが推察される。これは、長期的な視点で見た場合、メタン発酵処理の性能、安定性、確実性に欠けるものであり、改善策が必要である。
【0008】
高級脂肪酸は、一度蓄積し始めると上述のように嫌気性処理に有用な微生物の活性を阻害し、これにより分解されなくなった高級脂肪酸がいっそう蓄積されることになり、最終的にはメタン生成反応を停止させる。つまり、中性脂肪の加水分解によって生成する高級脂肪酸が多大であると、メタン発酵の阻害が大きくなり、ひいてはメタン生成反応自体が進行しなくなるという問題が生じる。これに関連して、中温及び高温のメタン発酵において、C10:0、C12:0、C14:0、C16 :0、C18:0、C18:1(trans)、C18:1(cis)、C18:2、C18:3の個々の高級脂肪酸に関する微生物への阻害特性に関する報告もされている(上述の、チュウ・シュンホウ、李玉友、宮原高志、野池達也ら、土木学会論文集、No.559/VII-2、第31〜38頁、1997年)。従って、従来技術では、高濃度油脂含有排水あるいは廃棄物をリパーゼ前処理した後、メタン発酵処理法を用いて浄化することは、技術的に困難であった。
【0009】
一方、油脂は大部分が炭素と水素とから構成されており、嫌気的な生物分解において油脂分解率が向上すれば、メタンガスへの転換量も向上する。例えば、分解可能な有機物質1gを嫌気性処理した場合に発生するメタンガス量を脂肪、炭水化物、タンパク質で分けて比較すると、各々、850mL/g、395mL/g及び500mL/gである(下・廃水汚泥の処理、岩井重久、申丘徹、名取真著、昭和43年、コロナ社、第42〜42頁を参照のこと)。すなわち、エネルギー回収の観点からは、油脂を嫌気性処理(特にメタン発酵処理)することの利点が大きい。
【0010】
油脂含有排水あるいは油脂含有廃棄物をリパーゼ前処理し、次いでメタン発酵を主とする嫌気性処理によって処理する浄化法の技術的問題点を要約すると以下のようになる。
【0011】
▲1▼不飽和脂肪酸は飽和脂肪酸に変換してからβ酸化分解される。しかし、飽和脂肪酸の分解速度が遅いため、それが油脂分解の反応律速になっている。
▲2▼高級脂肪酸の蓄積により、高級脂肪酸の分解反応と酢酸資化性メタン生成反応が阻害されやすい。この阻害作用は、飽和脂肪酸より不飽和高級脂肪酸の方が強い(上述のチュウ・シュンホウ、李玉友、宮原高志、野池達也ら、土木学会論文集、No.559/VII-2、第31〜38頁、1997年;及び、田中修三、多久和夫ら、土木学会第42回年次学術講演会要旨集第868〜869頁、昭和62年9月;等を参照のこと)。
【0012】
上記問題点▲1▼は、塩(例えば、硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩、鉄塩等の金属塩等)または栄養分(例えば、クエン酸、乳酸、メタノール、ペプトン類等)を嫌気処理槽に添加して、嫌気性微生物の働きを活性化させ、脂肪酸のβ酸化分解を促進する方法が従来からとられている。しかし、上記問題点▲2▼についての解決手段は、これまで示されていなかったため、油脂含有排水あるいは油脂含有廃棄物を安定してかつ効率的に嫌気性処理することは困難であった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、油脂含有排水あるいは油脂含有廃棄物の嫌気性処理を安定的かつ効率的に行うことのできる浄化方法及び浄化装置を提供することにある。さらにかかる発明により、バイオガスとしてのエネルギー回収効率の向上及び安定化並びに処理水質の向上を目的としたものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を鋭意検討した結果、本発明者は、嫌気反応槽内の高級脂肪酸の蓄積を抑えることにより嫌気槽でのメタン発酵を安定して行うことができることを見出し、高級脂肪酸の蓄積を抑制する具体的な手段を提供することによって上記の課題を解決した。本発明において高級脂肪酸の蓄積を抑制する手段とは、まず第1には、嫌気反応系での高級脂肪酸の濃度をモニターし、それに従って前段の油脂分解酵素による油脂分解工程において加える油脂分解酵素の量を制御して嫌気反応系に導入される高級脂肪酸の量を制限することによって、嫌気反応系での高級脂肪酸濃度を制御するというものであり、第2には、嫌気反応系に微生物体を積極的に導入することで、嫌気反応系での高級脂肪酸の分解を促進するというものである。
【0015】
即ち、本発明の一態様は、油脂含有排水あるいは油脂含有廃棄物を嫌気性処理法にて浄化する方法であって、油脂を油脂分解酵素またはその酵素を生成する微生物体と作用させて分解する前処理と;前記前処理した排水あるいは廃棄物を嫌気性処理する処理と;を含み、前記嫌気処理中に、嫌気反応系内の高級脂肪酸濃度をモニターしてその濃度を制御することを特徴とする、前記浄化方法を提供する。更に、本発明の第2の態様は、油脂含有排水あるいは油脂含有廃棄物を嫌気性処理法にて浄化する方法であって、油脂を油脂分解酵素またはその酵素を生成する微生物体と作用させて分解する前処理と;前記前処理した排水あるいは廃棄物を嫌気性処理する処理と;を含み、前記嫌気処理工程に、嫌気性若しくは好気性の微生物体を導入することによって高級脂肪酸の分解を促進することを特徴とする、前記浄化方法を提供する。
【0016】
本発明において、「油脂」とは、その主成分が飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸のグリセロールエステルであり、遊離の脂肪酸、長鎖アルコール、ステロール、炭化水素、脂溶性ビタミン、色素などの不ケン化物をも含む、天然の動植物内に広く存在する成分を指す。油脂は、常温で液体あるいは固体のいずれの場合をも含む。油脂としては、例えば、えの油、あまに油、きり油、大豆油などの乾性油、綿実油、ごま油、なたね油、米油などの半乾性油、落花生油、オリーブ油、ツバキ油などの不乾性油の他、やし油、パーム油などの植物脂も含む植物油脂類、ヘット、ラードなどの動物脂、羊油、鯨油、魚油、肝油などの動物油等、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0017】
「中性脂肪」とは、脂肪酸のグリセロールエステルであり、加水分解するとグリセリン1分子と脂肪酸1〜3分子を生ずる脂質を指す。中性脂肪としては、例えば、グリセリン1分子と脂肪酸1分子がエステル結合したモノアシルグリセロール、グリセリン1分子と脂肪酸2分子がエステル結合したジアシルグリセロール、グリセリン1分子と脂肪酸3分子がエステル結合したトリアシルグリセロール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0018】
エステル結合を持つO−アシル脂質(中性脂肪、ワックスなど)または酸アシド結合を持つN−アシル脂質(スフィンゴ脂質など)の脂質の加水分解生産物として得られた脂肪酸を「遊離脂肪酸」という。遊離脂肪酸には、炭素数の少ない、典型的には炭素数11未満の「低級(短鎖)脂肪酸」(例えば、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸等)と、炭素数の多い、典型的には炭素数11以上の「高級(長鎖)脂肪酸」がある。高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ステアロール酸などの不飽和脂肪酸、及びこれらの混合物が挙げられる。尚、「高級脂肪酸」の炭素数の定義自体は明確なものではなく、例えば、炭素数8以上のものを「高級脂肪酸」とする文献もある(例えば、津恵直美、原田秀樹、桃井清至、滝沢智、亀井昌敏ら、土木学会第44回年次学術講演会、第1014〜1015頁、平成元年9月等を参照のこと)。従って、本発明における「高級脂肪酸」も、広く解釈されるべきである。
【0019】
本発明において、前処理工程において油脂に含有される中性脂肪を分解するために用いる酵素としては、例えば、トリアシルグリセロールリパーゼ、モノアシルグリセロールリパーゼ、リポタンパク質リパーゼなどに代表されるような、グリセロールエステルを加水分解して脂肪酸を遊離する活性を持つ酵素が挙げられる。これらを単独で、または幾つかの種類からなるグリセロールエステル分解酵素を混合した形態で用いても良い。また、通常排水あるいは廃棄物には、油脂だけでなく糖質、タンパク質等も混在しているので、これらグリセロールエステル分解酵素の他に、α−グルコシダーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、β−グルコシダーゼ、アビセラーゼ、キシラナーゼ、マンノシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ等の糖質分解酵素あるいは、エキソペプチダーゼ、エンドペプチダーゼ、ペプシン、トリプシン、キモトリプシンなどに代表されるタンパク質分解酵素とを混合して用いてもよい。
【0020】
また、本発明においては、酵素自体に限らず、上述の酵素を生成する微生物菌体(本発明では、「酵素生成微生物体」あるいは「酵素を生成する微生物体」という)が含まれていてもよい。酵素生成微生物体から酵素を精製する工程を簡略化し、酵素と微生物菌体とが混合した産物を用いて本発明を実施すれば、より安価に油脂を分解させることが可能となる。かかる酵素生成微生物体としては、例えば好気性微生物として、Candida属、Rhizopus属、Pseudomonas属等、嫌気性微生物として、Anaerovibrio属、Butyrivibrio属、Desulfovibrio属、Clostridium属、Ruminococcus属、Enterobacterium属等が挙げられる。さらに、本発明方法の後段の処理工程である嫌気性処理は、後述の通り、45〜70℃で行うことが好適であるため、酵素あるいは酵素生成微生物体は、かかる45〜70℃の温度条件で活性を維持できる、あるいは至適反応温度がかかる温度領域にある酵素若しくは酵素生成微生物体であることが望ましい。
【0021】
本発明方法においては、前処理によって油脂、特にその中の中性脂肪が加水分解された排水又は廃棄物を、次に嫌気性処理にかける。「嫌気性処理」とは、一般に分子状酸素の存在しない条件下で生育する微生物である嫌気性微生物により行われる処理を指し、特に嫌気性微生物が嫌気的条件下で有機物を分解する嫌気発酵を利用して処理を行うものである。
【0022】
本発明方法の嫌気性処理において用いることのできる嫌気性微生物としては、例えば、メタン生成細菌(例えば、Methanosarcina属、Methanothrix属、Methanobacterium属、Methanobrevibacter属)、硫酸還元細菌(例えば、Desulfovibrio属、Desulfotomaculum属、Desulfobacterium属、Desulfobacter属、Desulfococcus属)、酸生成細菌(例えば、Clostridium属、Acetivibrio属、Bacteroides属、Ruminococcus属)、通性嫌気性細菌(例えばBacillus属、Lactobacillus属、Aeromonas属、Streptococcus属、Micrococcus属)等が挙げられる。エネルギー回収の観点からは、メタン生成細菌を用いるのが好ましい。
【0023】
また、高級脂肪酸の分解については、主として硫酸還元細菌、水素生成酢酸生成菌、水素資化性メタン生成菌、及び酢酸資化性メタン生成菌の共同作業によってなされる。すなわち、高級脂肪酸から酢酸への分解反応はいわゆるβ酸化であり、このようなβ酸化反応により生成された酢酸は、酢酸資化性メタン生成菌により利用され、メタンガスへと転換される。従って、高級脂肪酸の効率的な分解の観点からは、これらの微生物を混合して用いるのが好ましい。なお、これらの嫌気性微生物は、例えば、生ゴミを高温メタン発酵させて得られた汚泥や、豚などの家畜の糞尿を中温メタン発酵させて得られた汚泥など自然界に普遍的に存在する微生物群であり、これらの汚泥を種汚泥として油脂含有排水などで馴致することで得られる汚泥を槽内に配置することによって本発明における嫌気反応槽を形成することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以降、便宜的にメタン発酵処理による浄化方法について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
本発明の第1の態様にかかる油脂含有排水あるいは油脂含有廃棄物を嫌気性処理法にて浄化する方法は、油脂中の中性脂肪などの油脂分を油脂分解酵素またはその酵素を生成する微生物体と作用させて分解する前処理と;前記前処理した排水あるいは廃棄物を嫌気性処理する処理と;を含み、かつ前記嫌気性処理中に、嫌気反応系内の高級脂肪酸濃度をモニターしてその濃度を制御することを特徴とする。
【0026】
油脂含有排水あるいは油脂含有廃棄物のメタン発酵処理を促進するためには、油脂と嫌気汚泥(嫌気性微生物)とが均質に接触することが重要かつ不可欠である。しかし、油脂含有率が高いと、中性脂肪を含む油脂が反応槽内に浮上して分散しにくく、嫌気性微生物による発酵が進行しにくい。従って本発明では、前処理工程として、中性脂肪などの油脂分の加水分解酵素(好ましくはリパーゼ)あるいはかかる酵素を生成する微生物体(好ましくはCandida cylindracea[酵母菌]、Rhizopus arrhizus[真菌]、Pseudomonas cepacia[細菌]等)を中性脂肪に作用させ、これを分散しやすい脂肪酸とグリセロールに加水分解する。これにより脂質が反応槽内に浮上することなく、遊離の高級脂肪酸が均一に分散して、嫌気性微生物と均質に接触することとなる。油脂含有排水あるいは油脂含有廃棄物にリパーゼを投入して中性脂肪などの油脂分を分解させる前処理を、メタン発酵を主とする嫌気性処理槽(単に、メタン発酵槽とも言う)内で直接行ってもよく、また、かかる前処理をメタン発酵槽とは別の前処理槽内で行い、処理排水または廃棄物をメタン発酵槽内に投入してもよい。尚、中性脂肪などの油脂分を酵素あるいはその酵素生成微生物体で分解する前処理反応は、中性脂肪などの油脂分の均一な分散を維持するという観点からは、撹拌しながら行うのが好ましい。
【0027】
中性脂肪などの油脂分をリパーゼで分解する前処理反応は、メタン発酵槽内を中性から弱アルカリ性条件下(pH6〜8.5、好ましくは、pH7〜8)に保持して行うことが望ましい。これは、リパーゼの至適pHが通常この範囲にあるからである。前処理工程を中性〜弱アルカリ性に保持して行うことで、中性脂肪などの油脂分のリパーゼによる加水分解が容易にかつ速やかに進行する。
【0028】
中性脂肪などの油脂分をリパーゼで分解する前処理反応は、いわゆる中温域(30〜45℃)、あるいはいわゆる高温域(45〜70℃)で行うのが好ましい。これは、リパーゼの至適温度がこの範囲にあるからである。また、前処理反応をメタン発酵槽内で直接行う場合には、後述するようにメタン発酵槽内を45〜70℃に保持することが有効であるため、前処理もこの温度範囲内に維持して行うことが望ましい。その場合には、かかる高温域にも耐えうる、耐熱性リパーゼを用いることが好ましい。かかる高温状態を維持しつつ前処理を行うと、脂質の流動性が高まり、中性脂肪などの油脂分がより分散しやすくなるので、脂質の浮上を抑えることができてより効果的である。
【0029】
さらに、酵素反応は一般的に反応速度が温度に比例するため、かかる高温域で前処理を行うと中性脂肪などの油脂分の分解効率が大幅に向上するため、より効果的である。
【0030】
リパーゼ等による酵素または酵素生成微生物体による処理は、嫌気性処理に先だって独立して行うことが一般的であるが、嫌気性のメタン発酵処理と同時に行うこともできる。但し、後者の場合は処理条件に注意を払うことが必要である。
【0031】
上記のように酵素または酵素生成微生物体による前処理をした排水または廃棄物を、次工程でメタン発酵により分解する。これによって、中性脂肪の加水分解生産物として得られたグリセロールの他、排水あるいは廃棄物中に含有する炭水化物、タンパク質、その他各種成分がメタン発酵の基質となり、分解される。
【0032】
中性脂肪の加水分解生産物として得られた遊離脂肪酸のうち、低級脂肪酸は、メタン発酵処理における前駆物質としてメタン生成細菌による分解を受けやすく、従ってメタンに転換しやすい。しかし、高級遊離脂肪酸は、本来メタン発酵しにくいばかりでなく、これが高濃度になると、嫌気性処理槽内に蓄積し、メタン発酵性酵素の作用及び酵素生成細菌の増殖を阻害する。すなわち、高級脂肪酸はまずβ酸化により酢酸に転換し、生成した酢酸は酢酸資化性メタン生成細菌の働きによってメタンに転換するが、高濃度の高級脂肪酸はこのβ酸化自体を阻害するだけでなく、酢酸資化性メタン生成菌の活性をも阻害する。
【0033】
かかる知見に基づき、本発明の第1の態様においては、メタン発酵槽内の遊離高級脂肪酸の濃度を所定濃度以下の値に保持することによってメタン発酵を効率的に進行させることができる点を見出し、嫌気性処理する工程で高級脂肪酸濃度をモニターしてこれを制御することによって目的を達成した。
【0034】
高級脂肪酸濃度を確認するためには、メタン発酵槽内の高級脂肪酸濃度を逐次サンプリングし、これをモニターする。高級脂肪酸濃度のモニター方法は、本浄化装置が酵素・酵素生成微生物体・嫌気性微生物等を含む系であることから、酵素や微生物による高速の分解反応に対応できる手法をとる必要がある。例えば、エタノール性苛性カリを用いた化学的な酸価及びケン化価測定法により、メタン発酵槽内の中性脂肪と脂肪酸濃度とを迅速にモニタリングすることができる。また、試料に高級脂肪酸ラベル試薬、例えばアダム試薬(9-anthryldiazomethane,ADAM)などを添加して高級脂肪酸をラベルし、紫外吸光光度(UV)検出器あるいは蛍光光度(FL)検出器を備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、高級脂肪酸を分離・定量することも可能である。この方法は、試料1検体につき1〜2時間で高級脂肪酸濃度を容易に分析できるため、迅速な定量分析の点からは好ましい。さらには、脂質を抽出可能な有機溶媒、例えば、ノルマルヘキサン/イソプロパノール、クロロホルム/メタノール、アセトン、エーテル類等で抽出し、TLC(thin layer chromatography)/FID(flame ionization detector)分析計で中性脂肪を、そしてガスクロマトグラフ分析計で高級脂肪酸を、それぞれ正確に定量分析することができる。この手法を用いると、定量までに約1日を要するが、高級脂肪酸濃度を正確に把握できる点で好ましい。従って、本発明においては、上述の簡易かつ迅速な定量分析法と、TLC/FID分析法、ガスクロマトグラフ分析法とを適宜組み合わせることで、発酵槽内の高級脂肪酸濃度をモニタリングしていくことが望ましい。さらには、例えば、パルミチン酸やステアリン酸等の特定の高級脂肪酸が顕著に生成されることが予め解っている反応系では、それらを特異的に検知できる化学センサもしくは微生物センサを利用することで迅速かつ容易なモニタリングが可能である。
【0035】
本発明方法において、メタン発酵槽内における好ましい高級脂肪酸濃度は、原水の水質、高級脂肪酸の組成、反応槽内の汚泥濃度、嫌気性微生物の種類、メタン発酵処理方式などによって異なる。油脂含有排水あるいは油脂含有廃棄物をリパーゼと反応させる前処理をメタン発酵槽内で同時に行う方法を採る場合には、典型的には高級脂肪酸濃度を、1000mg/L以下、好ましくは700mg/L以下、さらに好ましくは500mg/L以下、最も好ましくは300mg/L以下、さらに最も好ましくは250mg/L以下に保持するように酵素あるいは酵素生成微生物体の添加量を制御することが必要である。また、かかる前処理をメタン発酵槽とは別の前処理槽で行い、その後メタン発酵槽に処理排水あるいは廃棄物を投入する場合は、メタン発酵槽への投入後の発酵槽内の高級脂肪酸濃度が2000mg/L以下、好ましくは1000mg/L以下、さらに好ましくは500mg/L以下、最も好ましくは300mg/L以下、さらに最も好ましくは250mg/L以下に保持するように油脂分解酵素あるいは酵素生成微生物体の添加量を制御する。なお、上記に挙げた高級脂肪酸については、大豆油、あまに油、やし油、パーム油などの植物性油脂類、ヘット、ラードなどの動物脂を起源とするものが主たる対象となる。一方、羊油、鯨油、魚油、肝油などの動物油においては、炭素数の高い高級脂肪酸(C20以上)が主たる高級脂肪酸となり易く、これらの長鎖の高級脂肪酸ではメタン発酵反応が一層阻害され易くなるため、高級脂肪酸の濃度は、上述の10分の1程度以下の値に保持することが望ましい。
【0036】
高級脂肪酸濃度を上述の範囲に保持するためには、本発明の第1の態様においては中性脂肪などの油脂分を分解するリパーゼの添加量を調節すればよい。すなわち、メタン発酵槽内の高級脂肪酸濃度を前述の方法により逐次モニターし、高級脂肪酸濃度が適切な値よりも少ない場合は、リパーゼの添加量を増加して中性脂肪などの油脂分の加水分解を促進して高級脂肪酸濃度を上昇させ、逆に高級脂肪酸濃度が適切な値よりも多い場合には、リパーゼの添加量を減少させるか、あるいは一時中断することによって高級脂肪酸濃度を低下させる。従って、本発明の第1の態様にかかる方法を実施するための浄化装置には、測定された高級脂肪酸濃度の値をフィードバックし、リパーゼ添加量を決定して、これを調節する手段をさらに有することが一層好ましい。
【0037】
尚、高級脂肪酸濃度を保持するためには、上述のようにリパーゼの添加量を制御する他、リパーゼによる前処理工程において、井戸水、水道水または活性汚泥処理をはじめとする各種生物による処理を施した水などを混合して希釈することにより、高級脂肪酸濃度を調節することも有効である。
【0038】
本発明のメタン発酵は、30〜45℃、好ましくは30〜40℃のいわゆる中温域あるいは45〜70℃のいわゆる高温域のいずれで行われてもよい。但し、メタン発酵槽を高温域に維持すると、中性脂肪及び油脂分解酵素または酵素生成微生物体により分解生成した高級脂肪酸が、液中に分散しやすくなり、嫌気性微生物による反応を受けやすくなる。また、高級脂肪酸によるメタン発酵の阻害効果は、高温条件で著しく緩和されることも知られている(チュウ・シュンホウ、李玉友、宮原高志、野池達也ら、土木学会論文集、No.559/VII-2、第31〜38頁、1997年;及び、田中修三、多久和夫ら、土木学会第42回年次学術講演会要旨集第868〜869頁、昭和62年9月;等を参照のこと)。従って、迅速に、かつ高級脂肪酸による活性阻害を回避しつつ効率的に嫌気性処理を行うという観点からは、45〜70℃、好ましくは50〜65℃、より好ましくは50〜60℃の温度域で嫌気性処理を行うことが好ましい。
【0039】
また本発明の嫌気反応槽内は、浄化する排水の種類、使用する汚泥の種類によって異なるが、pH6〜9の中性〜弱アルカリ性の範囲内に維持することが好ましい。かかる範囲内において嫌気性微生物が効果的に有機物を分解するからである。すなわち、嫌気反応槽内のpHが高すぎると(すなわち、強アルカリ性であると)、脂肪酸が石けん状になり、嫌気性微生物による分解が迅速に進行しにくくなるからである。また、有機物と嫌気性微生物が均一に、かつ効果的に接触するように、嫌気反応槽内は撹拌することが好ましい。従って、本発明にかかる方法を実施するための浄化システムまたは浄化装置には、撹拌手段を有することがさらに好ましい。
【0040】
なお、本発明方法において用いられる嫌気性処理槽には、微生物保持担体を充填することができる。微生物を担体に結合する方法としては、結合法や包括法を適用できるが、本発明での油脂含有汚濁物質の嫌気性処理における微生物反応においては、砂、珪砂、活性炭、セラミックス、合成樹脂、プラスチックビーズ、ガラスビーズ、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリプロピレン、汚泥焼却灰、木炭粉末、石炭灰フライアッシュのような粒子表面に微生物群を付着させて生物膜を形成させることが有利である。これらの保持担体の嫌気性処理槽内での存在形態、流動状態によって固定床と流動床に大別されるが、本発明ではどちらのタイプも適用が可能である。ただし、固定床タイプでは油脂分の過剰付着による固定化担体の閉塞や汚泥の浮上が、流動タイプでは担体同士のぶつかり合いによる汚泥の剥離が問題となりやすいため、原水中の油脂分濃度や固形物濃度などの原水性状、発酵槽運転時の原水供給方法や有機物負荷、汚泥濃度や汚泥性状などに注意が必要である。これらの操作条件を決めるに際しては、原水性状、水量変動、目標処理水質を加味した上で決定されるものである。
【0041】
上記に説明した本発明の第1の態様に係る技術思想は、前処理系での酵素添加量を抑えて嫌気性反応系に導入される高級脂肪酸の量を制御するというものであるが、この手法に代えて、嫌気性反応系に積極的に嫌気性又は好気性の微生物体を導入することで、嫌気処理工程における高級脂肪酸の分解を促進させることによっても、高級脂肪酸の蓄積を防いで安定な嫌気性処理を達成することができる。即ち、本発明の第2の態様は、油脂含有排水あるいは油脂含有廃棄物を嫌気性処理法にて浄化する方法であって、油脂中の中性脂肪などを油脂分解酵素またはその酵素を生成する微生物体と作用させて分解する前処理と;前記前処理した排水あるいは廃棄物を嫌気性処理する処理と;を含み、前記嫌気処理工程に、嫌気性若しくは好気性の微生物体を導入することによって高級脂肪酸の分解を促進することを特徴とする、前記浄化方法を提供する。
【0042】
嫌気処理工程に嫌気性もしくは好気性の微生物体を導入する方法としては、嫌気性処理工程より流出した酸発酵汚泥やメタン発酵汚泥などの汚泥を嫌気性処理槽に返送する方法、流出した汚泥を重力沈降濃縮あるいは機械濃縮により濃縮して得られた濃縮汚泥を嫌気性処理槽に返送する方法などを適用することができる。なお、この汚泥濃縮工程においては、流出汚泥に、SS(suspended solids:懸濁固形分)当たり0.1〜1.0%の高分子凝集剤等の汚泥凝集用薬剤を添加することで、汚泥濃縮・凝集を促進する手法も有効である。また、機械濃縮の手法としては、遠心脱水機、スクリュープレス式脱水機などの汚泥用脱水機として使用されるものを適用できる。また、脱水汚泥を通常の嫌気性処理槽に返送する場合には、これらの脱水機で脱水された汚泥を投入することでも何ら問題はない。更には、液中膜などの分離膜を用いたプロセスの適用によってもメタン発酵槽内に汚泥を高濃度に保持することが可能である。例えば、ポリエチレン系材質の精密濾過膜などを用いた液中膜による分離膜複合型メタン発酵システムは効果的である。特に、高温メタン発酵では、中温よりも汚泥の分散性が向上するために、分離膜の適用には有利である。
【0043】
また、嫌気処理系への微生物体の導入量を調節する場合、余剰活性汚泥などの様な好気性の汚泥を同時に用いることも有効であり、例えば、排水処理システムが、嫌気処理槽の後段として好気性処理槽を配置している場合には、好気性処理槽の余剰活性汚泥を嫌気槽に返送することによって、嫌気処理系に好気性の微生物体を導入することができる。これは、不飽和高級脂肪酸が汚泥に吸着すると共に、高級脂肪酸の飽和化反応に有効に作用するためである。さらには、余剰活性汚泥などの微生物体が主体の汚泥は、嫌気性処理での微生物の栄養源としても作用することから、油脂分の有機物分解反応の効率化、消化促進にも効果的である。また、微生物体の導入において高級脂肪酸の飽和化反応よりも栄養源としての効果を増すためには、余剰活性汚泥などの汚泥を超音波破砕、湿式ミル破砕、ボールミル破砕、ホモジナイズ破砕、熱処理、高温高圧処理、酸やアルカリ処理、オゾン酸化などに代表とされる物理的、化学的破砕処理を施した後に嫌気性処理工程に導入することも効果的である。
【0044】
本発明の第2の態様に係る方法においては、上記のように、嫌気反応系に嫌気性又は好気性の微生物体を導入することなどによって、嫌気反応系内の高級脂肪酸濃度/微生物体濃度の比率を重量比で0.4以下に保持することが好ましい。なおここで、微生物体濃度は、VSS(volatile suspended solids:揮発性懸濁固形分)で表すことができ、以下においては、「高級脂肪酸濃度/微生物体濃度」の意味で、「高級脂肪酸濃度/VSS比」或いは「LFA(long-chain fatty acid)/VSS」という用語を適宜用いる。本発明の嫌気性処理工程において好ましい高級脂肪酸濃度/VSS比の範囲は、原水の種類や嫌気性処理の運転方法によって異なる。対象の高級脂肪酸がC18以下の場合、回分式処理法では0.5以下、好ましくは0.4以下であり、連続式処理法の場合では0.2以下、好ましくは0.1以下で嫌気性処理を行うことが好ましい。また、C18よりも長鎖の高級脂肪酸が主体となる場合では、微生物への阻害作用がさらに強くなることから、上述したLFA/VSS比よりも更に低い比率で嫌気性処理を行う必要があり、好ましくは上記の値の1/3〜1/5程度に制御する。なお、C18よりも長鎖の高級脂肪酸では炭素数と不飽和度が微生物への阻害作用に大きく影響することから、それらの高級脂肪酸組成に応じてLFA/VSS比を制御する。これらの比率を調整する工程では、油脂含有排水中の高級脂肪酸濃度を、例えば上記に説明したような方法によって適宜モニターすると同時に、嫌気性処理槽内のVSS濃度を把握する。更には、高級脂肪酸に分解される前の中性脂肪は、メタン発酵槽内に蓄積するとオイルボールを形成したり、装置、配管、機器などの閉塞を生じ、メタン発酵プロセスや微生物反応に支障をもたらすため、これらを防止する中性脂肪濃度として、1.5g/L以下、好ましくは0.7g/L以下で嫌気性処理することが望ましい。そして、中性脂肪/VSS値としては、回分式処理法では1.0以下、好ましくは0.5以下で、連続式処理法では0.3以下、好ましくは0.2以下に保持することが好ましい。なお、中性脂肪がメタン発酵槽内で蓄積した場合、中性脂肪が分解されて高級脂肪酸生成が急速に起きることもあり、高級脂肪酸/VSS比が増大して微生物反応の阻害につながるので、注意が必要である。油脂含有排水中のVSS濃度は、重量法による測定方法(下水試験方法,上巻-1997年版-,社団法人日本下水道協会)の他、光学式、超音波式、マイクロ波式などの汚泥濃度計による測定法を利用することができる。汚泥濃度計としては、光源に赤外線LEDを用いた汚泥濃度計(例えば、東亜電波工業(株)製の浸漬型汚泥濃度計MLSS-2A,セントラル科学(株)製の携帯用汚泥濃度計ML-52型など)、マイクロ波反射式汚泥濃度計((株)明電舎製)などを利用することができる。特に、マイクロ波反射式汚泥濃度計は、汚泥の測定濃度範囲が0〜10%と広く、汚泥色や含有気泡の影響が小さく、また、直線性、繰り返し性も優れていることから(第12回環境システム計測制御(EICA)研究発表会,学会誌「EICA」第5巻,第2号,89〜92頁,2000年)、汚泥濃度の高いメタン発酵系には有効な測定手法である。なお、現状においては、汚泥濃度計による測定方法は、有機物と無機物とを合わせた汚泥濃度を測定するものであるので、正確なVSSの測定には、対象排水及びその生物処理プロセスでのVSS/SSの比率あるいは灰分(Ash分)/SSの比率などの補正値を重量法などで予め求めておき、汚泥濃度計で測定された値を補正して適用することが望ましい。更には、微生物体の有するDNA量、RNA量、ATP量を測定して微生物量(VSS濃度)を決定する方法も適用することができる。そして、高級脂肪酸/VSS比が適切な値よりも低い場合は、汚泥返送操作を縮小することによって、VSSを低下させて、高級脂肪酸/VSS比を適切な値に修復することができる。更に、汚泥返送操作の縮小と共に、油脂含有排水へのリパーゼの添加量を増加して中性脂肪の加水分解を促進し、高級脂肪酸濃度を上昇させることも可能である。逆に、高級脂肪酸/VSS比が適切な値よりも高い場合には、嫌気性処理槽への汚泥返送操作を行うことでVSSを上昇させて、高級脂肪酸/VSS比を下げると共に、リパーゼの添加量を減少させるか、あるいは一時中断することができる。従って、本発明にかかる方法を実施するための浄化システムまたは浄化装置には、測定された高級脂肪酸濃度およびVSS濃度の値をフィードバックし、汚泥返送量や原水投入量、リパーゼ添加量を決定して、これを調節する手段をさらに有することが一層好ましい。
【0045】
また、本発明においては、嫌気性処理反応をより安定且つ効率的に進行させるために、嫌気性微生物の働きを活性化する塩(例えば硫酸塩、リン酸塩等の金属塩等)や栄養分(例えば、クエン酸、乳酸、ペプトン類等)を嫌気反応槽内に加えることにより、脂肪酸のβ酸化分解そのものを促進することで高級脂肪酸濃度を調節することも可能である。すなわち、高級脂肪酸濃度が適切な値よりも多い場合には、かかる塩または栄養分を嫌気反応槽内に加えて嫌気性微生物を活性化し、高級脂肪酸のβ酸化分解を促進させることができる。
【0046】
さらに、高級脂肪酸を分解する上では排水、廃棄物中の油脂類、高級脂肪酸類をできる限り分散させることによって微生物によるβ酸化反応を速やかにすることが重要である。そのためには、油脂用の乳化剤もしくは分散剤としてベントナイトなどを用いることが有効である。従来、中温性のメタン発酵処理においてベントナイトなどの乳化剤の使用は効果的であるとされている(例えば、M. Beccari, M. Majone, C. Riccardi, F. Savarese and L. Torrisi: Integrated treatment of olive oil mill effluents: effect of chemical and physical pretreatment on anaerobic treatability, Water Science and Technology, Vol. 40, No. 1, pp.347-355, 1999)。また、油脂含有排水の高温メタン発酵処理においてもベントナイトによる乳化処理の効果は報告されている(I.Angelidaki, S. P. Petersen, and B. K. Ahring, Effects of lipids on thermophilic anaerobic digestion and reduction of lipid inhibition upon addition of bentonite, Applied Microbiology and Biotechnology, Vol.33, pp.469-472, 1990)。しかし、本発明によれば、嫌気性処理槽内においては高温域でのメタン発酵によって中温の場合よりも油脂類の分散性は向上するものの、油脂を油脂分解酵素またはその酵素を生成する微生物体と作用させて分解する前処理を施すことによって油脂及び高級脂肪酸の負荷が高い処理条件下では油脂類の分散が悪くなり易い。そして、一旦高級脂肪酸が蓄積し始めると高級脂肪酸は、嫌気性処理に有用な微生物、特に酢酸資化性メタン生成細菌や水素資化性メタン生成細菌の活性を極度に阻害し、これにより分解されなくなった高級脂肪酸が一層蓄積されることになり、最終的にはメタン生成反応を停止させることになる。したがって、油脂含有率の高い排水・廃棄物に対しては、乳化剤を用いることが油脂分解効果が高く且つ安定な処理が可能である。特に、本発明において、微生物体に阻害作用を及ぼし易い炭素数の多い(C18以上)高級脂肪酸の微生物体への吸着を防止することおよび高級脂肪酸の分散を促進することを目的に、高級脂肪酸濃度/微生物体濃度(VSS)の比率を調整する工程で乳化剤を添加して油脂分解を促進することを行う。この場合、乳化剤の添加方法は、嫌気性処理槽に直接添加しても良いし、嫌気発酵汚泥あるいは好気工程より発生する余剰の好気性汚泥を嫌気性処理工程に導入する際に添加しても良い。また、使用する乳化剤としては、鉱物系であるベントナイト、微生物や植物由来のサポニンなどが安価で効果的である。一方、アルギン酸ナトリウムの様なナトリウム塩の乳化剤では、ナトリウム塩が微生物体に吸着され易いために乳化、分散の効果は低い場合も多く、また、生物分解性の乳化剤では油脂分解と共に乳化剤も生物分解されることにより、乳化作用が低下することが考えられるために、使用に際しては注意を要する。これらの乳化剤の添加量は、排水の体積比で0.01〜10%、排水中のn−ヘキサン抽出物当たりで0.01〜5g/g、好ましくは排水の体積比で0.01〜1%、排水中のn−ヘキサン抽出物当たりで0.01〜1.5g/gである。なお、これらの添加量は、油脂含有排水の性状、油脂の種類・存在状態、添加剤の添加方法などによっても異なるものであるため、処理方法に適した添加量を決定すべきものである。また、乳化剤を用いる場合の油脂含有率の目安としては、ノルマルヘキサン抽出物/BOD比で10%以上、好ましくは20%以上、さらに好ましくは25%以上、最も好ましくは30%以上の排水・廃棄物である。なお、乳化剤を添加する際、pH調製剤としてCa(OH)2やCaCl2などのカルシウム剤を併用することも有効である。このカルシウム剤の効果は、pH調整と共に、過剰な高級脂肪酸を凝集・除去することにもなる。
【0047】
また、乳化剤による化学的な分散作用に替えて、油脂分の物理的な分散・破砕処理も有効であり、特に、高温メタン発酵においては、油脂分の分散性が中温メタン発酵よりも高くなっているために、物理的手段が効果を有する。かかる物理的手段としては、混合・撹拌処理、超音波破砕、ホモジナイズ破砕などが、一般的な機械装置を適用することができる点で有効である。また、これらの物理的手段と乳化剤添加とを組合わせて用いることも効果的であり、乳化剤の添加量削減にもつながるものである。
【0048】
本発明方法を用いて油脂含有排水を処理する装置の構成例を図8〜図10を参照して説明する。
図8は、本発明の第1の態様に係る方法を実施して油脂含有排水の嫌気性処理を行うプロセスの概要図である。本発明に係る嫌気性処理装置は、油脂含有排水に油脂分解酵素又は酵素生成微生物体を加えて中性脂肪などの油脂の分解を行う前処理槽3、及び前処理槽で処理された排水に対してメタン発酵処理を行うメタン発酵槽5を必須の構成要素として具備する。なお、前述したように、前処理槽とメタン発酵槽とを同じ槽で構成することもできる。処理プロセスにおいては、原水を貯留するための原水貯留槽2、油脂分解酵素又は酵素生成微生物体を貯留する貯留槽1を具備することができる。必要に応じて酵素又は酵素分解微生物が添加された原水は、前処理槽3において中性脂肪などの油脂分解反応にかけられる。必要に応じて、乳化剤やpH調節剤を貯留槽4から反応系に導入することや、及び/又は前処理槽3で超音波破砕などの物理的な破砕処理を加えることもできる。前処理槽で処理された排水は、次にメタン発酵槽5に送られる。メタン発酵槽5には、メタン生成細菌などを含む汚泥が保持されており、ここでメタン発酵処理が行われる。本発明に係る処理装置においては、メタン発酵槽に、槽内の高級脂肪酸濃度を測定するための測定装置20が接続することができ、ここでモニターされた高級脂肪酸濃度の値に応じて、酵素又は酵素発生微生物の導入量、或いは乳化剤などの導入量をバルブ21によって制御することにより、メタン発酵槽5内の高級脂肪酸濃度が所定の好ましい範囲以下に維持することができる。メタン発酵槽で処理された排水は、次に必要に応じて汚泥貯留槽6を経て好気処理槽7へ送ることができる。好気処理槽7には活性汚泥が保持されており、活性汚泥中に含まれる微生物の作用によって好気性処理がなされる。なお、メタン発酵槽5から排出された排液をそのまま排出して、液肥などとして利用することもできる。好気処理された排水は、次に、汚泥凝集槽9において、凝集剤を添加した後、汚泥脱水機10で脱水処理にかけることができる。また、メタン発酵槽5から排出される排ガスは、メタン、CO2及び硫化水素などを含んでいるので、例えば硫酸鉄(Fe(OH)3)などを充填した脱硫塔11で処理した後に、消化ガスタンク12を経て、ガスボイラー、消化ガス発電、燃料電池などの用途に利用することができる。
【0049】
次に、図9は、本発明の第2の態様に係る方法を実施して油脂含有排水の嫌気性処理を行うプロセスの概要図である。図8に示すプロセスと異なるところは、汚泥貯留槽6からの嫌気発酵汚泥、及び好気処理槽からの余剰の好気性汚泥をメタン発酵槽5に返送するラインを有している点である。図8に示す装置と同様に、メタン発酵槽5には、槽内の高級脂肪酸濃度、及びVSS濃度を測定するための装置を接続することができ、ここでモニターされた高級脂肪酸/VSSの比率の値に応じて、汚泥の返送量、並びに必要な場合には、酵素又は酵素発生微生物の導入量、或いは乳化剤などの導入量をバルブ21によって制御することや、及び/又は、場合によっては前処理槽3で超音波破砕などの物理的な破砕処理を加えることにより、メタン発酵槽5内の高級脂肪酸/VSS比を所定の好ましい範囲以下に維持することができる。
【0050】
図10は、本発明の更に他の態様に係る油脂含有排水の処理プロセスの概要図である。図10に示すプロセスでは、メタン発酵槽5内に、微生物保持担体13が充填されており、これによってより効率的にメタン発酵を進行させることが可能になる。なお、図10に示すような微生物保持担体13を用いる態様では、一般に、メタン発酵槽内の嫌気性微生物濃度を高く維持することが可能であるので、汚泥貯留槽6からの汚泥返送は通常必要ではない。しかしながら、必要に応じて汚泥貯留槽6からの汚泥返送ラインを設けることも、勿論可能である。
【0051】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0052】
本発明の実施例で中性脂肪の分解には55℃で安定性を持つ細菌由来のリパーゼ(10万U/g)(ノボ・ノルデイスク・バイオインダストリー社製)若しくはCandida cylinndracea由来のリパーゼ(36万U/g)(名糖産業社製)を用いた。1ユニット(U)は一定標準条件下(pH7.0、30℃、4.8%m/vトリブチリン、0.094%m/vアラビアゴム)でトリブチリンから酪酸を1分間に1ミリモル遊離させる酵素の量である。
【0053】
油脂含有排水(原水)の酵素前処理には、リパーゼ(4KU/L)を用い、50℃で1日処理した。酵素前処理後は、排水を5℃に冷却保存した。
本発明の実施例で行った脂質および高級脂肪酸の定量分析は、以下の様な手順で行った。油脂含有排水(原水)またはメタン発酵処理液(5ml)を、n-ヘキサン/イソプロパノール(5:3(v:v))の有機溶媒(40ml)で抽出した。そのn-ヘキサン抽出液(1.5ml)を用い、島津ガスクロマトグラフGC-17A型、FID検出器、DB-FFAP(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)キャピラリーカラムで高級脂肪酸の定量分析を行った。また、上記のn-ヘキサン抽出液(20ml)を80℃ホットプレートで乾燥し、得られた乾燥重量を用いて、試料のn-ヘキサン抽出物濃度を計算した。更に、乾燥されたn-ヘキサン抽出物をクロロホルムで5mg/ml濃度に再溶解し、クロマロッドS-IIIで展開分離し、TLC/FID分析器(Iatroscan TH-10)で全脂質の定量分析を行った。
【0054】
VSSの測定は、「下水試験方法,上巻-1997年版-」(社団法人日本下水道協会,平成9年9月12日発行)の一般汚泥試験(第4章)に記載されている重量法による測定方法で行った。
【0055】
また、発生ガス中のメタンガス組成は、GLサイエンスガスクロマトグラフ−320型、TCD検出器にて、Active carbon 30/60カラムを用いて分析した。
揮発性脂肪酸(volatile fatty acid, VFA)は、高速液体クロマトグラフ(アルマ光学ERC-8710、検出器RI、カラムShodex Ionpack KC-811、カラム温度60℃、移動相0.1%リン酸)で分析した。CODCrの分析は、米国のStandard Method(18th Edition, 1992年)による閉鎖型還流法で行った。pH測定には、東亜電波工業製のpH複合電極GST-5311C及び自動滴定装置AUT-301型を用いた。TS(total solids:全固形分)、VS(volatile solids:揮発性固形分)、SS(suspended solids:懸濁固形分)の分析については下水試験法(1984年版)に準じた。
【0056】
実施例1、比較例1
生ゴミの高温(55℃)メタン発酵して得た汚泥を種汚泥として、食品工場の油脂含有排水で3ヶ月間馴致した高温メタン発酵汚泥を作成した。この高温メタン発酵汚泥を用いて、油脂含有排水のメタン発酵回分実験を行った。実験条件を表1に示す。
【0057】
【表1】
Figure 0004009069
【0058】
本発明による系(実施例1)では、細菌由来のリパーゼを適量(500U/L)添加することによってバイアル瓶中の遊離高級脂肪酸濃度を約400mg/Lに制御した条件でメタン発酵を行った。この場合、高級脂肪酸/MLVSSの比は約0.1であった。
【0059】
これに対して、比較例1−1は、リパーゼの添加量(1,000U/L)を増やし、バイアル瓶中の遊離高級脂肪酸濃度を約1100mg/Lとして、高級脂肪酸が蓄積した条件でのメタン発酵実験を行った。高級脂肪酸/MLVSSの比は約0.4以上であった。
【0060】
比較例1−2は、リパーゼの添加量をさらに増やし、バイアル瓶中の遊離高級脂肪酸濃度を約1400mg/Lとして、高級脂肪酸がさらに蓄積した条件下でのメタン発酵実験を行った。高級脂肪酸/MLVSSの比は約0.5以上であった。
【0061】
比較例1−3では、リパーゼに添加による中性脂肪の分解を行わず、遊離高級脂肪酸濃度を制御しない条件下でのメタン発酵実験を行った。
これら4種類の回分培養実験を14日間行い、そのメタン生成特性と発酵終了後の脂質除去特性および有機物除去特性を調べた。それらの結果を図1〜図3に示す。
【0062】
図1は、高級脂肪酸濃度を調節した回分実験系でのメタン発酵特性を示す。本発明による系(実施例1)では、高級脂肪酸濃度を適量に制御することによって、メタン発酵反応が6日間でほぼ完了していることがわかる。これに対して、比較例1−1は、高級脂肪酸の蓄積によって、メタン発酵反応が阻害された結果となり、メタン発酵反応は実験開始後6日目以降に始まり、発酵が完了するまでに14日間を要した。さらに比較例1−2は、高級脂肪酸のさらなる蓄積によって、メタン発酵反応が阻害された結果となり、メタン発酵反応は実験開始後14日目以降に始まった。従って、これらの結果により、嫌気反応系内の高級脂肪酸濃度を制御することによって、発酵完了までの期間を制御できることがわかった。
【0063】
尚、比較例1−3は、中性脂肪をリパーゼにより分解処理しない場合の結果であり、メタン生成反応が極めて悪く、14日を経てもほとんどメタン発酵が進行しなかった。従って、油脂含有排水を嫌気性処理する場合には、予めリパーゼなどにより中性脂肪を分解し、次いでメタン発酵処理することが好適であることがわかった。
【0064】
図2は、14日間のメタン発酵を終了した後の脂質除去特性を示す。リパーゼで中性脂肪を分解処理してメタン発酵処理した本発明による系(実施例1)は、脂質成分を90%除去できた。これに対して、高級脂肪酸が高濃度で蓄積した比較例1−1及び比較例1−2は、脂質成分の除去は70%と55%であった。中性脂肪をリパーゼで分解処理しなかった比較例1−3の場合は、脂質成分の除去は58%にとどまった。
【0065】
図3は、14日間のメタン発酵処理した後の有機物除去特性を示す。リパーゼで中性脂肪を分解処理してメタン発酵処理した本発明(実施例1)では、CODCr除去率が70%弱となった。これに対して、高級脂肪酸が高濃度で蓄積した比較例1−1及び比較例1−2は、CODCrの除去は50%と30%であった。一方、中性脂肪をリパーゼにより分解処理しなかった比較例1−3は、CODCr除去率は40%弱にとどまった。リパーゼの添加によって、不溶性CODCr成分の減少が大きかった。
【0066】
実施例2、比較例2
実施例1で使用した生ゴミ高温メタン発酵汚泥と豚糞尿中温メタン発酵汚泥とを種汚泥としてメタン発酵反応槽に投入し、食品工場の油脂含有排水を原水として用い、表2の条件で連続処理法でのメタン発酵実験を3ヶ月間行った。
【0067】
【表2】
Figure 0004009069
【0068】
本発明では、メタン発酵槽内の中性脂肪と高級脂肪酸をモニターしながら、高級脂肪酸濃度を300mg/L以下になるように、リパーゼを100〜1000U/L・日添加し、55℃の高温域でメタン発酵連続実験を行った(実施例2−1)。また、実施例2−1と同じように発酵槽内の高級脂肪酸濃度を制御しながら、35℃の中温域でメタン発酵を行い、これを実施例2−2とした。比較例として、リパーゼを1000〜2000U/L・日の濃度で大量添加して、メタン発酵反応槽内の高級脂肪酸濃度を1500mg/Lに蓄積した条件下で、55℃の高温域でメタン発酵連続実験を行った(比較例2−1)。また、反応槽内の中性脂肪を分解せずに、高級脂肪酸濃度も調節せずに、55℃でメタン発酵連続実験を行い、これを比較例2−2とした。反応槽を3ヶ月間連続運転し、食品工場の油脂含有排水に対するメタン発酵の処理性能について調べた結果を表3に示す。
【0069】
【表3】
Figure 0004009069
【0070】
メタン発酵槽内の高級脂肪酸濃度を適量に制御しながら、油脂含有排水を連続処理した場合は、高温(55℃)で運転した場合(実施例2−1)及び中温(35℃)で運転した場合(実施例2−2)共に、CODCr除去率は約80%、BOD除去率は約85%、n−ヘキサン抽出物の除去率は約94%となり、非常に効果的な浄化が進行したことがわかった。また、高温で運転した場合(実施例2−1)のガス生成速度は中温で運転した場合(実施例2−2)より約2倍速いということがわかった。これに対して、リパーゼを大量に添加し、メタン発酵槽内の高級脂肪酸が蓄積した場合(比較例2-1)は、CODCr除去率は約30%、BOD除去率は約40%、n−ヘキサン抽出物の除去率は約25%であって、ガスもほとんど生成しなかった。また、リパーゼを添加せずに高級脂肪酸濃度も調節しない比較例2−2の場合では、CODCr除去率は40%、BOD除去率は約45%、n−ヘキサン抽出物の除去率は38%であった。メタンガスの生成速度は、実施例2−1>実施例2−2>比較例2−2>比較例2−1の順で大きかった。
【0071】
実施例3
本実施例においては、油脂含有排水として、豆腐製造排水(中性脂肪0.5g/L)を用いた。メタン発酵実験には、3系列の完全混合型のメタン発酵装置(有効容積3.5L)を発酵槽A〜Cとして用い、発酵槽A及びBには生ゴミの高温メタン発酵汚泥を、発酵槽Cには豚糞尿の中温メタン発酵汚泥を種汚泥として用い、連続処理法でのメタン発酵実験を行った。各発酵槽での運転状態と、ガス生成速度とを図4に示す。また、各発酵槽での汚泥濃度の変動を図5に示す。更に、各発酵槽での脂肪(中性脂肪、高級脂肪酸、TG+LFA)とVSSの比率の変動を図6に示す。なお、ここでTGはtriglyceride(トリグリセライド)である。発酵槽B及びCで処理する油脂含有排水については、酵素前処理として、油脂分解酵素(リパーゼ、4KU/L)を用いて50℃で1日処理し、酵素処理の後5℃に冷却保存した。発酵槽Aで処理する油脂含有排水については、リパーゼ前処理を行わなかった。表4に、各槽で処理する排水原水の性状を示す。また、表5に各槽でのメタン発酵の運転条件を示す。
【0072】
【表4】
Figure 0004009069
【0073】
【表5】
Figure 0004009069
【0074】
メタン発酵運転は、発酵槽A及びBについては高温メタン発酵として55℃で発酵を行い、発酵槽Cについては中温メタン発酵として35℃で発酵を行った。発酵槽A及びBについては運転84日目より、発酵槽Cについては運転118日目より、発酵槽の原水に豆腐揚げ廃油を1ml/L添加し、中性脂肪を1.5g/Lとして高油脂負荷条件にした。原水流量については、発酵槽A及びCはHRT=16日、発酵槽BはHRT=15日で運転を開始した。油脂排水原水中の有機物濃度は、リパーゼ前処理したもの及びリパーゼ前処理しないものについて、それぞれ、CODCrが2.0%及び2.3%;BODが1.1%及び1.2%;と比較的低い一方で、n−ヘキサン抽出物/CODCr比はそれぞれ0.12及び0.11;n−ヘキサン抽出物/BOD比はそれぞれ0.19及び0.24;と油脂分が高いため、メタン発酵槽内に十分な微生物量を保持することが難しい上に、油脂分の分解性能も悪い。そこで、発酵槽Aについては、原水にメタン発酵し易いBOD成分(0.5%澱粉)を添加してメタン発酵運転を開始した。また、反応槽Bについては、運転43日目よりメタン発酵槽から流出する汚泥を定期的に遠心分離(3000rpm、5分間)してその沈殿汚泥を発酵槽に返送することによって、槽内の菌体濃度を高め、LFA/VSS比を低く維持することを試みた。
【0075】
リパーゼ前処理していない油脂排水(発酵槽A)では、澱粉添加によって、油脂負荷の低い条件では安定なメタン発酵処理を行うことができたが、84日目以降の豆腐揚げ廃油を添加して油脂負荷を増加させた条件下では、104日目にLFA/VSS比が0.13に上昇した(図6のA)。その後、中性脂肪の分解が停止すると共にガス生成速度が減少し、136日目にはVFAが2500mg/Lにまで蓄積したため、原水投入を停止した。発酵槽内の汚泥濃度は、メタン発酵が停止した時点で著しく低下しており(図5のA)、LFA/VSS比は0.04と低かったものの、中性脂肪/VSS比は0.7にまで上昇していた(図6のA)。その後、143日目より汚泥の返送を開始してLFA/VSS比を0.2以下、中性脂肪/VSS比を0.3以下に保持しながら運転を再開したところ(図6のA)、高い油脂負荷条件でも安定な連続運転が可能であることが分かった(図4のA)。
【0076】
リパーゼ前処理を行った発酵槽Bにおいては、運転43日目から汚泥の返送を開始したことにより、LFA/VSS比は0.1以下に保たれ(図6のB)、高い油脂負荷条件でも極めて安定な連続運転が可能であった(図4のB)。
【0077】
また、リパーゼ前処理を行ったが、メタン発酵を35℃の中温で行った発酵槽Cにおいては、豆腐揚げ廃油を添加しない低油脂負荷条件でも、リパーゼ前処理した油脂排水をHRT16日の負荷条件でメタン発酵処理を十分に行うことができなかった。ガス生成速度が低下した時点の87日目において、発酵槽内にはVFAが3111mg/Lに蓄積しており、原水の投入を停止した。この時点でのLFA/VSS比は0.1であった(図6のC)。このことから、油脂排水の中温メタン発酵の場合には、HRTは20日以上が必要であると考えられた。そして、118日目にHRT=25日として、廃油1mL/Lを添加しながら原水投入を再開したところ、134日目にはLFA/VSS比は0.16に上昇し(図6のC)、VFAは運転再開時の10mg/Lから346mg/Lにまで増加した。その後、運転を継続し、143日目より汚泥の返送を開始してLFA/VSSを0.1以下に保持しながら発酵槽の運転を開始したところ、CODCr負荷が発酵槽A及びBよりも低いためにガス生成速度は低いながらも、LFAを蓄積することなく、嫌気性処理による有機物分解、油脂分解の安定な連続運転が可能であった(図4のC)。
【0078】
各槽での運転150日目から270日目までの連続運転期間中の平均メタン発生量は、発酵槽Aが0.3L/L・日、発酵槽Bが0.5L/L・日、発酵槽Cが0.1L/L・日であった。また、分解したCODCr当たりのメタンガス発生量は、発酵槽Aが0.27L/g-分解CODCr、発酵槽Bが0.32L/g-分解CODCr、発酵槽Cが0.16L/g-分解CODCrであった。これより、リパーゼ前処理を行って55℃で高温メタン発酵を行った発酵槽Bが最もメタン発生量が大きく、以下、メタン発生量は、リパーゼ前処理を行わずに55℃で高温メタン発酵を行った発酵槽A、リパーゼ前処理を行って35℃で中温メタン発酵を行った発酵槽Cの順であることが分かった。
【0079】
発酵槽B(高温メタン発酵)及び発酵槽C(中温メタン発酵)の運転150日目からの連続運転期間における有機物負荷は、発酵槽Bでは1.5g/L・日、発酵槽Cでは0.8g/L・日であった。また脂質負荷(n−ヘキサン抽出物負荷)は、発酵槽Bでは150mg/L・日、発酵槽Cでは91mg/L・日であった。これらの結果から、高温メタン発酵の方が中温メタン発酵よりも、有機物負荷及び脂質負荷を高く運転することができ、メタンガス発生量も多いことが分かった。
【0080】
また、運転146日目より定期的にそれぞれのメタン発酵槽内の残留物をサンプリングし、n−ヘキサンで抽出して、抽出物の組成を定量分析した。結果を図7に示す。これより、リパーゼ前処理していない発酵槽Aでは、発酵槽内に中性脂肪が多く残留していることが分かった。これに対して、リパーゼ前処理した発酵槽B及び発酵槽Cにおいては、中性脂肪は80%以上除去されており、高級脂肪酸も蓄積されていなかった。油脂排水メタン発酵においては、リパーゼによる前処理が有効であることが分かった。
【0081】
上記の結果より、メタン発酵槽の安定な運転には、汚泥の返送によって微生物体を導入することで高級脂肪酸濃度/微生物体濃度を一定値以下に制御することが極めて有効な手段であり、また、リパーゼによる前処理の後に、汚泥返送によってLFA/VSS比を制御しながら高温メタン発酵を行うことによって、メタン発生及び油脂分解のいずれにおいても極めて優れた結果が得られることが分かった。また、中温メタン発酵では、メタン発生についてはあまり良好な値は得られなかったものの、汚泥返送と共にメタン発酵を行うことにより、安定な運転が可能で、油脂を極めて良好に分解できることが分かった。
【0082】
実施例4〜7、比較例3
本実施例では、メタン発酵における微生物保持担体の効果、乳化剤及びpH調節剤の添加効果を調べた。実施例3と同じ油脂含有排水を、リパーゼで50℃、1日間前処理し、130〜180日間、連続処理法での高温メタン発酵実験を行った。連続高温メタン発酵実験の運転条件及び結果を表6に示す。排水処理実験装置としては図10に示すシステムを用いた。但し、メタン発酵槽5への汚泥の返送ラインは、好気処理槽7からのみではなく、汚泥処理槽6からの返送ラインも設置した。乳化剤として、アルギン酸ナトリウム(300〜400cP)、ベントナイトを用い、pH調節剤として水酸化カルシウムを用い、それぞれ乳化剤貯留槽及びpH調節剤貯留槽4より系に投入した。なお、乳化剤及びpH調節剤の添加量は、排水の体積比で0.01%、排水中のn−ヘキサン抽出物当たりでは0.04g/gであった。用いた試薬はいずれも、和光純薬製の特級試薬であった。実施例4及び5では、メタン発酵槽5内に微生物保持担体13としてポリプロピレン樹脂製の充填材を詰めた上向流式の嫌気性処理槽を用いた。充填材の形状は、30mmφ×60mmH、空隙率は90%であった。メタン発酵槽5からの流出液は、汚泥貯留槽6を経て好気処理槽7で好気処理を行った。好気処理槽7では、製菓工場排水の回分式活性汚泥プラントから採取した活性汚泥(運転時の有機物負荷0.2g-BOD/g-MLSS/日、活性汚泥浮遊物質:MLSS=3500mg/L、活性汚泥沈殿率:SV30=42%)を種汚泥とした活性汚泥を用いて、曝気を行いながら排液の好気処理を行った。実施例6及び7においては、それぞれ、汚泥貯留槽6から流出したメタン発酵汚泥、及び好気処理槽7から流出した余剰活性汚泥を、遠心分離(3000rpm、5分間)してその沈殿汚泥を発酵槽5に返送した。メタン発酵槽5の残留物を周期的にサンプリングして、分析装置20によって分析することにより、BOD除去率、CODCr除去率、VTS(volatile total solids:揮発性全固形分)除去率、及び高級脂肪酸除去率を算出した。表6には、各除去率の平均値を示す。汚泥処理槽6及び好気処理槽7から排出された余剰汚泥は、凝集剤として高分子凝集剤(エバグロースLDC-300)を凝集剤貯留槽8から加えて、汚泥凝集槽9において汚泥を凝集させた後、スクリュープレス式汚泥脱水機10で脱水した。脱水濾液及び脱水汚泥の性状を分析した。
【0083】
メタン発酵槽からの発生ガス量を、シナガワ製の湿式ガスメーターWE Da-0.5B型で計測すると共に、ガス試料の一部を採取してガスクロマトグラフィーTCDでその組成を分析した。そして、分析試料以外の発生ガスについては、ペレット状の水酸化鉄(Fe(OH)3)を充填した脱硫塔11によってガス中の硫化水素を除去した。
【0084】
【表6】
Figure 0004009069
【0085】
上記の表6に示す結果から、メタン発酵槽において微生物保持担体を充填した実施例4と担体を充填せずにメタン発酵汚泥を返送した実施例6とを比較すると、消化ガス発生速度と有機物処理性能が両者でほぼ同等の試験結果であったことから、メタン発酵槽内に微生物保持担体を用いることの効果が示された。また、汚泥の高濃度化の効果は、実施例6及び7と比較例3とを比較して、消化ガス発生速度、有機物処理性能、汚泥脱水性能のいずれの点でも、高濃度に汚泥を保持した場合(実施例6及び7)に良好な処理成績が得られたことから、その効果が示された。更に、乳化剤及びpH調節剤の添加効果は、返送汚泥の種類は異なるものの、実施例6と実施例7とを比較して、特に、消化ガス発生速度と有機物処理性能の点で、乳化剤及びpH調節剤を添加した場合に有効な成績が得られたことから、それらの添加効果が示された。
【0086】
汚泥凝集剤添加率と脱水汚泥含水率は汚泥性状を示す指標でもある。油脂分が殆ど存在しない有機性排水を正常に生物処理した場合、通常、汚泥凝集剤添加率は0.5〜0.7%(対SS比)であり、脱水汚泥含水率は、脱水機にもよるが78〜80%程度であるとされている。一方、汚泥中に油脂分が分解されずに残留していると、汚泥凝集剤による汚泥凝集能が低下するために、汚泥凝集剤添加率は高くなると共に、汚泥凝集能が悪いために脱水汚泥含水率も増加する。
【0087】
同様に、脱水濾液性状も汚泥性状を示す指標であり、油脂分による汚泥凝集能の低下によって凝集できなかった微細な汚泥(SS)が脱水濾液側に流出するためにSS値が増加すると共に、それに伴ってBOD値も増大する。
【0088】
消化ガス組成は、メタン発酵性能を示すものである。メタン発酵で有機物分解率が低下すると、微生物の消化不良が生じるために消化ガス発生速度及びメタンガス含有率が低下する。消化ガス発生速度は、対象排水や運転方法によって異なるものであるが、メタンガス含有率は、1槽式タイプでの正常なメタン発酵処理の場合、60〜68%程度である。
【0089】
【発明の効果】
本発明によれば、嫌気反応槽内の油脂を酵素または酵素生成微生物体により分解し、分解生成物である高級脂肪酸の濃度を所定以下に調節しながら、45〜70℃の高温域で油脂含有排水あるいは廃棄物を浄化することにより、排水を高効率で浄化することが可能となった。さらに、嫌気性生物により有機物を分解するので、バイオガス(特にメタン)として回収することができ、これよりエネルギー回収効率を著しく向上させることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、高級脂肪酸濃度の調節によるメタン発酵の特性を示すグラフである。
【図2】図2は、高級脂肪酸濃度の調節によるメタン発酵の脂質除去特性を示すグラフである。
【図3】図3は、高級脂肪酸濃度の調節によるメタン発酵の有機物除去特性を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例3において行ったメタン発酵連続運転によるガス生成速度を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例3において行ったメタン発酵連続運転における発酵槽内の汚泥濃度を示すグラフである。
【図6】図6は、実施例3において行ったメタン発酵連続運転における発酵槽内の脂肪(中性脂肪、高級脂肪酸、TG+LFA)とVSSの比率の変動を示すグラフである。
【図7】図7は、実施例3において行ったメタン発酵連続運転における発酵槽内の残留物の分析結果を示す図である。
【図8】図8は、本発明の一態様に係る方法を用いた油脂含有排水の嫌気性処理プロセスの概要を示すフロー図である。
【図9】図9は、本発明の他の態様に係る方法を用いた油脂含有排水の嫌気性処理プロセスの概要を示すフロー図である。
【図10】図10は、本発明の更に他の態様に係る方法を用いた油脂含有排水の嫌気性処理プロセスの概要を示すフロー図である。

Claims (8)

  1. 油脂含有排水あるいは油脂含有廃棄物を嫌気性処理法にて浄化する方法であって、油脂を油脂分解酵素またはその酵素を生成する微生物体と作用させて分解する前処理を行い、前記前処理した排水あるいは廃棄物を嫌気性処理する工程に導入して、嫌気性若しくは好気性の微生物体を該嫌気性処理工程に導入し、嫌気性処理工程から採取したサンプルの高級脂肪酸濃度/微生物体濃度の比率値を求め、該比率値をフィードバックして、嫌気性処理工程に導入する嫌気性若しくは好気性の微生物体の量を調節することを特徴とする、前記浄化方法。
  2. 前記嫌気反応系内の高級脂肪酸濃度/微生物体濃度の比率を、重量比で0.4以下に保持するように、高級脂肪酸並びに前記嫌気性若しくは好気性の微生物の導入量を調節する工程を含む請求項1に記載の方法。
  3. 嫌気性処理工程から排出される排液を更に好気性処理にかける工程を更に含む請求項1又は2に記載の方法。
  4. 嫌気性処理工程から流出した嫌気発酵汚泥の一部、及び/又は、好気性処理工程から発生する余剰の好気性汚泥を、嫌気性処理工程に戻すことによって、嫌気性処理工程に嫌気性若しくは好気性の微生物体を導入する請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 嫌気性処理工程を45〜75℃の温度で行う請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 嫌気性処理工程を、微生物保持担体を充填した嫌気性処理槽内で行う請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 油脂含有排水あるいは油脂含有廃棄物に乳化剤を添加するか、及び/又は油脂含有排水あるいは油脂含有廃棄物を超音波処理、破砕処理などの物理的手段にかけることによって、油脂分解を促進することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 油脂含有排水あるいは油脂含有廃棄物を嫌気性処理にて浄化するための処理装置であって、油脂含有排水あるいは油脂含有廃棄物に、油脂を分解する油脂分解酵素または該酵素を生成する微生物体を添加して、油脂を油脂分解酵素により分解する前処理槽と;前記前処理した排水あるいは廃棄物を投入し、これを嫌気性処理するための嫌気反応槽と;を具備し、更に、嫌気反応系に嫌気性若しくは好気性の微生物体を加える手段と;嫌気反応槽から採取したサンプルの高級脂肪酸濃度及び微生物体濃度とを測定する手段と;測定されたサンプルの高級脂肪酸濃度/微生物体濃度の比率値をフィードバックして、嫌気反応系に加える嫌気性若しくは好気性の微生物体の量を調節する手段と;を含むことを特徴とする、前記装置。
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