JP7091095B2 - 水処理装置 - Google Patents
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Description
一方、油脂含有排水の生物処理においては、油脂のような水難溶性物質は微生物で分解され難く、反応が進みにくい。また、反応の過程で生成する高級脂肪酸等の遊離脂肪酸は、微生物の代謝を阻害することが知られている。したがって、油脂含有排水の生物処理においては、排水中の遊離脂肪酸の割合を低減させることが必要となる。
すなわち、本発明は、以下の水処理装置である。
この特徴によれば、処理部のうち油脂分解機能を有する部分よりも前段において二価の金属塩を添加する構成とすることで、金属塩を添加する部分よりも後段で行われる油脂分解においても遊離脂肪酸による阻害を低減することができる。
この特徴によれば、油脂含有排水中の油脂と二価の金属塩を反応させて形成した脂肪酸塩を、保持領域によって処理部内に保持することで、油脂含有排水中の遊離脂肪酸の割合が低減されるため、微生物の代謝阻害を防ぎ、水処理性能を向上することができる。
さらには、保持領域に溜まった脂肪酸塩は、処理水と共に排出されないため、油脂分解菌等によって分解するための十分な時間を確保することが可能となる。また、保持領域に溜まった脂肪酸塩は、処理槽外に排出し、他の処理設備で処理することもできる。
この特徴によれば、簡易な構造によって脂肪酸塩を処理槽内に保持することが可能となる。
この特徴によれば、油脂含有排水中の油脂と二価の金属塩を反応させて形成した脂肪酸塩を担体に付着させ、効率よく保持領域に保持することができる。そして、担体に付着した脂肪酸塩は、処理水と共に排出されないため、油脂分解菌等によって分解するための十分な時間を確保することができる。
この特徴によれば、油脂含有排水中に形成された脂肪酸塩が担体方向に誘導されるため、脂肪酸塩と担体との接触を促進することができる。
誘導手段として、水位変動手段を備えることにより、油脂含有排水を上下方向に移動することができるため、油脂含有排水中又は水面に浮遊する脂肪酸塩を担体表面又は担体中に通過させ、脂肪酸塩と担体との接触を促進することができる。また、誘導手段として、担体に向けて水流を形成する水流形成手段を備えることにより、油脂含有排水中又は水面に浮遊する脂肪酸塩を担体方向に移動することができるため、脂肪酸塩と担体との接触を促進することができる。
この特徴によれば、処理槽内において流速分布に差異が生じるため、流速の遅い領域に、油脂含有排水中の油脂と二価の金属塩を反応させて形成した脂肪酸塩を留めることができる。これにより、油脂含有排水中の遊離脂肪酸の割合が低減されるため、微生物の代謝阻害を防ぎ、水処理性能を向上することができる。
さらには、流速の遅い領域に溜まった脂肪酸塩は、処理水と共に排出されないため、油脂分解菌等によって分解するための十分な時間を確保することが可能となる。また、流速の遅い領域に溜まった脂肪酸塩は、処理槽外に排出し、他の処理設備で処理することもできる。
この特徴によれば、脂肪酸塩を処理槽底部に留めることで、処理水と共に脂肪酸塩が処理槽外へ排出されることを防止することができ、より一層水処理性能を向上させることが可能となる。また、脂肪酸塩を処理槽の底部から引き抜くことが可能となる。
なお、実施態様に記載する水処理装置については、本発明に係る水処理装置を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
図1は、本発明の第1の実施態様の水処理装置1aの概略説明図である。
本実施態様に係る水処理装置1aは、図1に示すように、油脂含有排水WOを導入する処理部2aと、処理部2aに対して二価の金属塩Msを添加する金属塩添加部3とを備えるものである。また、処理部2aに対して油脂含有排水WOを導入するための配管であるラインL1と、処理部2aから排出される被処理水W1を系外に排出するための配管であるラインL2を有している。なお、図1の矢印は水の流れを示すものである。
また、貯留槽21の機能に応じて、特定の機能を有する菌が槽内に投入されてもよい。
なお、貯留槽21もしくは貯留槽21の前段で金属塩Msを添加する場合、貯留槽21内で油脂含有排水WOと金属塩Msの混合のために撹拌機構等を設けるものとしてもよい(不図示)。
本発明における不溶性の金属塩とは、25℃における溶解度が20mmol/L以下の金属塩である。このような二価の金属塩Msとしては、例えば、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に、汎用性を鑑みて、カルシウム塩を用いることが好ましい。
例えば、油脂含有排水WOのサンプリングを行い、油脂含有排水WO中の油脂成分の濃度及び遊離脂肪酸の組成を測定する。この測定結果から、油脂含有排水WOに含まれる遊離脂肪酸のモル数を算出する。金属塩添加部3は、金属塩Msを構成する金属イオンのモル数が遊離脂肪酸のモル数と同じとなるように金属塩Msを添加することで、脂肪酸塩FAsの形成が過不足なく進行する。ただし、金属塩Msを構成する金属イオンのモル数が遊離脂肪酸のモル数よりも少なくても、金属塩Msと遊離脂肪酸とによる脂肪酸塩FAsの形成は進む。また、金属塩Msを構成する金属イオンのモル数が遊離脂肪酸のモル数よりも多く過剰に投入されたとしても、金属塩Msと遊離脂肪酸とによる脂肪酸塩FAsの形成は進む。
図2は、本発明の第2の実施態様の水処理装置1bの概略説明図である。
本実施態様に係る水処理装置1bは、図2に示すように、貯留槽21によって油脂含有排水WO中の遊離脂肪酸や油脂を低減した状態の被処理水W1を生物処理するための生物処理槽5を備えるものである。なお、生物処理槽5は、ラインL2を介して貯留槽21から被処理水W1が供給される。また、生物処理槽5は、処理水Wを系外に排出するための配管であるラインL4を有している。
また、貯留槽21において、もしくは、貯留槽21よりも後段において、二価の金属塩Msを油脂含有排水WOに対して添加する構成とした場合でも、金属塩Msを添加した部分及びその後段では、油脂成分の分解を促進することができる。貯留槽21よりも後段に二価の金属塩Msを添加する構成とは、例えば、ラインL2や生物処理槽5に対して、二価の金属塩Msを添加する構成である。なお、貯留槽21よりも後段に二価の金属塩Msを添加する構成の場合、油脂含有排水WOと二価の金属塩Msとを混合するための貯留槽21を設けなくてもよい。
また、貯留槽21が酸生成槽又は油脂分解槽として機能する場合には、生物処理槽5から貯留槽21に対して汚泥を返送するライン等が設けられていてもよい。
図3は、本発明の第3の実施態様の水処理装置1cの概略説明図である。
本実施態様に係る水処理装置1cは、図3に示すように、油脂含有排水WOを導入する処理部2bとして、第1の実施態様の水処理装置1aにおける貯留槽21に加えて、油脂含有排水WO中の油脂成分と金属塩Msの反応生成物を保持する保持領域4を有する処理槽22を備えるものである。
なお、本実施態様における水処理装置1cの構成のうち、第1の実施態様の水処理装置1aの構成と同じものについては、説明を省略する。
保持領域4の具体的な一例としては、図3に示すように、複数枚の板からなる仕切り板41を、処理槽22の壁面から槽上方に向かって斜めに配設することで区画された領域とすることが挙げられる。これにより、処理槽22の壁面と仕切り板41の間に形成された凹状の空間である保持領域4では周囲と比較して被処理水W1の流れが遅くなるため、保持領域4には不溶性の脂肪酸塩FAsが堆積する。ここで、被処理水W1中に存在する脂肪酸を基質とする油脂分解菌が、堆積した脂肪酸塩FAsに接触、付着して、脂肪酸塩FAsの表面や近傍で増殖することで、油脂分解菌及び脂肪酸塩FAsが流出せず処理槽22内に維持された状態で油脂分解が進行する。
図4は、本実施態様における水処理装置における処理部の他の態様を示す概略説明図である。例えば、図4(A)に示すように、保持領域4は、処理槽22の中心部に凹状の空間を形成するように仕切り板41を設けたものとしてもよい。また、図4(B)に示すように、固液分離手段42を処理槽22の上部に設け、固液分離手段42の近傍に配設した仕切り板41を保持領域4とし、固液分離手段42で分離された固体分としての脂肪酸塩FAsを保持領域4に回収するものとしてもよい。
図5は、本発明の第4の実施態様に係る水処理装置1dの概略説明図である。第4の実施態様に係る水処理装置1dは、処理槽22で油脂が分離された被処理水W2を生物処理するための生物処理槽5を具備するものである。
生物処理槽5における生物処理は、特に制限されないが、例えば、メタン発酵槽等による嫌気性処理や、活性汚泥等による好気性処理が挙げられる。また、第2の実施態様に係る水処理装置1bに示した生物処理槽5を用いるものとしてもよい。
図6は、本発明の第5の実施態様の水処理装置1eの概略説明図である。
本実施態様に係る水処理装置1eは、図6に示すように、油脂含有排水WOを処理する処理部2cとして、二価の金属塩Msが添加された油脂含有排水WO′を導入する処理槽23を備え、処理槽23内の流速分布を変化させる流速分布可変手段6を設けるものである。
なお、本実施態様における水処理装置1eの構成のうち、第1~4の実施態様の水処理装置1a~1dの構成と同じものについては、説明を省略する。
図7は、本実施態様における水処理装置における処理槽23の他の態様を示す概略説明図である。例えば、図7に示すように、流速分布可変手段6は、処理槽23の中央部から油脂含有排水WO′を供給するようにラインL7と連結して設けた供給管63と、供給管63の先端に設けた漏斗状の噴出口64からなり、これにより処理槽23内で上昇流を形成させる。このとき、水面付近まで上昇した油脂含有排水WO′は、処理槽23の壁面に沿って下降流を形成し、それに伴って脂肪酸塩FAsも処理槽23の底部に滞留するため、油脂分解に十分な時間を確保することができる。
図8は、本発明の第6の実施態様の水処理装置1fの概略説明図である。なお、図8(A)は、水処理装置1fの全体説明図である。図8(B)は、水処理装置1fの処理部の拡大説明図である(図8(A)中のI-I矢視図)。
本実施態様に係る水処理装置1fは、図8(A)に示すように、油脂含有排水WOを導入する処理部2dとして、第1の実施態様の水処理装置1aにおける貯留槽21に加えて、油脂含有排水WO中の油脂成分と金属塩Msの反応生成物を保持する保持領域4を有する処理槽24を備えるものである。また、保持領域4には、油脂含有排水WO中の油脂成分と金属塩Msの反応生成物を付着する担体7を備えるものである。また、担体7は、処理槽24上部において水面と略平行に設けられる。
なお、本実施態様における水処理装置1fの構成のうち、第1~5の実施態様の水処理装置1a~1eの構成と同じものについては、説明を省略する。
担体の形状は特に限定されない。例えば、立方体、直方体、円柱状、円筒状、ひも状、平面状などが挙げられる。また、処理槽内に固定した固定化担体としてもよく、流動する流動化担体としてもよい。
また、処理槽24において、ラインL2を介して貯留槽21から導入される被処理水W1の水量やラインL9を介して処理槽24の上部から排出される被処理水W4の水量を制御し、処理槽24内の被処理水W1の水位の上昇及び下降を制御する水位変動手段でもよい。水位変動手段は、水位を変動させることにより、処理槽24内の被処理水W1の流れを垂直方向に発生させ、担体7に脂肪酸塩FAsを付着させるものである。
図9は、本実施態様における水処理装置における処理部の一部についての他の態様を示す概略説明図である。図9(A)に示すように、担体7の開口部71の形状は、担体7の中央部以外にも開口している形状であってもよい。また、図9(B)に示すように、担体7を処理槽24の中心部に設け、処理槽24の壁面側を開口部71とするものであってもよい。
さらに、担体7は、直方体や立方体などの多角構造体、あるいはそれらの組み合わせからなり、開口部71を有する構造であるものとしてもよい。特に、処理槽24の形状が立方体などのように水平断面が多角形である場合に好適に用いられる。
複数の保持領域を垂直方向に2段以上設けることにより、処理槽内の全体において脂肪酸塩を保持することができるため、生物処理の効率を一層高めることができる。
被処理水W1の水位を、担体7及び構造体9からなる保持領域より低位から上昇させると、水面付近に浮遊する脂肪酸塩FAsが、被処理水W1の流れと共に担体7の中心の開口部71に流れ込む(図12(A))。次に、被処理水W1の水位を、保持領域より高位となるまで水位を上昇させると、脂肪酸塩FAsが保持領域より高位に移動する。そして、撹拌機構8を回転させることにより、脂肪酸塩FAsが放射状に広がり、担体7の上方に移動する(図12(B))。この状態で被処理水W1の水位を保持領域より低位となるまで低下させると、脂肪酸塩FAsを保持領域の担体7に付着することができる(図12(C))。
図13は、本発明の第7の実施態様の水処理装置1gの概略説明図である。第7の実施態様の水処理装置1gは、撹拌機により混合流を形成する処理槽25を備えたものである。撹拌機により混合流を形成する処理槽としては、例えば、消化槽などに利用することができる。
Claims (6)
- 油脂含有排水を導入する処理部と、
前記処理部における前記油脂含有排水に対して二価の金属塩を添加する金属塩添加部と、を備え、
前記処理部は、油脂と前記金属塩の反応で形成された脂肪酸塩を保持するための保持領域を有し、
前記保持領域は、前記処理部内に設けた仕切り板により、前記処理槽の壁面から前記処理槽上方に向かって斜めに配設することで区画される領域であること、を特徴とする、水処理装置。 - 前記処理部の一部は油脂分解機能を有し、
前記金属塩添加部は、前記処理部において前記油脂分解機能を有する部分よりも前段で前記二価の金属塩を添加することを特徴とする、請求項1に記載の水処理装置。 - 前記保持領域は、前記油脂含有排水中に形成された脂肪酸塩を付着する担体を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の水処理装置。
- 前記油脂含有排水中に形成された脂肪酸塩を前記担体に誘導する誘導手段を備えることを特徴とする、請求項3に記載の水処理装置。
- 前記誘導手段は、水位を変動するための水位変動手段、又は、担体に向けて水流を形成する水流形成手段であることを特徴とする、請求項4に記載の水処理装置。
- 油脂含有排水を処理する処理部を備え、
前記処理部は、二価の金属塩が添加された油脂含有排水を放水量の異なる複数の管により導入する処理槽を有し、前記処理槽内の流速分布を変化させる流速分布可変手段を有し、
前記流速分布可変手段は、前記油脂含有排水中に形成された脂肪酸塩を前記処理槽内の底部に保持又は滞留させるように設けられることを特徴とする、水処理装置。
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