JP4008272B2 - 潜伏性触媒の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、潜伏性触媒の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、熱硬化性樹脂、特にエポキシ樹脂及びマレイミド樹脂に配合し、常温においては触媒作用を発現することなく長期にわたって樹脂組成物を安定に保存することが可能であり、また成形時に加熱したときに優れた触媒作用を発揮し、良好な成形性及び高品質の成形品を与えることができる潜伏性触媒を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、エポキシ樹脂やマレイミド樹脂のような熱硬化性樹脂の硬化触媒として、保存安定性と成形時の硬化性が両立した好ましい挙動を示す潜伏性触媒の研究がなされ、特開平11−5829号公報や特開平11−171981号公報ではキレート型構造を有するテトラ置換オニウムテトラ置換ボレートが提案され、潜伏性触媒として常温安定性と成形時硬化性が両立した好ましい挙動を示すとされている。従来、これらキレート型構造を有するテトラ置換オニウムテトラ置換ボレート類の合成方法としては、i)テトラ置換オニウムテトラフェニルボレートを出発原料とし、高温下で芳香族カルボン酸やフェノール化合物のようなプロトン供与体とをバルク条件下で反応させる方法が知られている。しかし、この合成方法では150℃以上の高温で反応を行う必要があり、また原料のテトラ置換オニウムテトラフェニルボレートが高価であるため、原料の熱安定性やコスト面において問題があり、さらに反応時に副生物として人体に有害なベンゼンを生じるという問題がある。
【0003】
また、キレート型構造を有するテトラ置換オニウムテトラ置換ボレート類の合成方法としては、ii)テトラ置換ホスホニウムハライドとプロトン供与体がプロトンを2個放出し
てなる基によりテトラ置換されたボレートのアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩より、水または水と有機溶媒の混合溶媒中で脱アルカリハロゲン塩化することにより得る方法(式[I])が知られているが、出発物質であるテトラ置換ボレートアルカリ塩はグリニャール試薬を用いて無水系で反応する必要があり、より煩雑な作業を必要とし高コストとなるため、容易に入手することが困難であり問題がある。
【化6】
(ただし、式中、Q+は、芳香環若しくは複素環を有する有機基又は脂肪族基を有する1価の有機カチオンを表し、X-はハロゲン原子を表す。式中、Mは1価または2価のアルカリあるいはアルカリ土類金属を表し、Z4は、置換基Y7,Y8を有する有機基であり、Y7,Y8は、1価のプロトン供与性置換基がプロトンを放出してなる基を表す。分子内の置換基Y7,Y8はホウ素原子と結合してキレート構造を形成しうるものである。また、式中Z5は、置換基Y9,Y10を有する有機基であり、Y9,Y10は、1価のプロトン供与性置換基がプロトンを放出してなる基を表す。分子内の置換基Y9,Y10がホウ素原子と結合してキレート構造を形成しうるものである。Z4,Z5は互いに同一でも異なっていてもよく、Y7,Y8,Y9,Y10は互いに同一でも異なっていてもよい。nは1または2の整数を表す。)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、常温においては触媒作用を発現することなく、長期間にわたって樹脂組成物を安定に保存することが可能であり、成形時に加熱すると優れた触媒作用を発揮して、良好な硬化性及び高品質の成形品を与えることができる潜伏性触媒を、穏和な条件下で安価原料から高収率で製造することを目的としてなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、比較的安価なオニウム塩を出発原料にして、さらには有機溶媒中で反応させることにより、工業的に安価で、また穏和な条件下で、オニウムテトラ置換ボレートを収率よく製造できることを見いだし、これら知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち本発明は、
1.一般式[1]
【化7】
(但し、式[1]中、Q+は、第4級ホスホニウムカチオン、第4級アンモニウムカチオン、アリールもしくはアルキル置換ホスホラニリデンアンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、または炭素型のオニウムカチオンを示し、X-はハロゲン原子又は水酸基を示す。)で表されるオニウム塩(A)と、一般式[2]
【化8】
(式[2]中、Z1は、置換基Y1,Y2を有する有機基を示し、Y1,Y2は、1価のプロトン供与性置換基がプロトンを放出してなる基を示し、同一分子内の置換基Y1,Y2がホウ素原子と結合してキレート構造を形成しうるものである。)で表される、分子外に放出しうるプロトンを少なくとも2個以上分子内に有するn(n≧2)価のプロトン供与体(B)と、ホウ酸エステル類(C)とを、溶媒中で反応させることを特徴とする一般式[3]で表される潜伏性触媒(D)の製造方法、
【化9】
(但し、式[3]中、Q+は、中心原子がリン、窒素、イオウ、炭素原子から構成される、第4級ホスホニウムカチオン、第4級アンモニウムカチオン、アリールもしくはアルキル置換ホスホラニリデンアンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、または炭素型のオニウムカチオンを示す。また、式中Z2は、置換基Y3,Y4を有する有機基を示し、Y3,Y4は、1価のプロトン供与性置換基がプロトンを放出してなる基を示し、同一分子内の置換基Y3,Y4がホウ素原子と結合してキレート構造を形成しうるものである。式中Z3は、置換基Y5,Y6を有する有機基を示し、Y5,Y6は1価のプロトン供与性置換基がプロトンを放出してなる基を示し、同一分子内の置換基Y5,Y6がホウ素原子と結合してキレート構造を形成しうるものである。Z2,Z3は互いに同一でも異なっていてもよく、Y3,Y4,Y5,Y6は互いに同一でも異なっていてもよい。)
2. 一般式[1]で表されるオニウム塩(A)が、一般式[4]で表される第四級ホスホニウム塩、又は一般式[5]で表される第四級アンモニウム塩である、第1項記載の潜伏性触媒の製造方法、
【化10】
(但し、式[4]中、R1、R2、R3及びR4は、芳香環若しくは複素環を有する有機基又は1価の脂肪族基を示し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。またX - は、ハロゲン原子または水酸基を示す。)
【化11】
(但し、式[5]中、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は、芳香環若しくは複素環を有する有機基又は1価の脂肪族基を示し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。またX - は、ハロゲン原子または水酸基を示す。)
3.一般式[2]で表されるプロトン供与体(B)が、分子内にカルボキシル基を少なくとも2個有する芳香族カルボン酸、分子内にカルボキシル基を少なくとも1個と水酸基を少なくとも1個とを有する芳香族カルボン酸、又は分子内に少なくとも2個の水酸基を有し、カルボキシル基を有さないフェノール化合物である第1項又は第2項記載の潜伏性触媒の製造方法、を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる、オニウム塩(A)は一般式[1]で表されるものである。
オニウム塩(A)におけるカチオンQ+は、芳香環若しくは複素環を有する有機基又は脂肪族基を有する1価の有機カチオンであり、このようなオニウム塩(A)を形成するオニウムカチオンとしては、テトラ置換ホスホニウム、テトラ置換アンモニウム、アミジニウム、イミダゾリウム等のリンまたは窒素型のオニウムカチオンや、トリ置換スルホニウム、トリ置換カルボニウム等のイオウまたは炭素型のオニウムカチオンを挙げることができる。オニウム塩(A)の具体的な例としては、例えば、テトラフェニルホスホニウムブロミド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド、テトラトリルホスホニウムブロミド、テトラナフチルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、n−ブチルトリフェニルホスホニウムクロリド、テトラ−n−ブチルホスホニウムヒドロキシド等の第4級ホスホニウム塩、テトラ−n−ブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−オクチルアンモニウムブロミド、トリブチルベンジルアンモニウムクロリド、N−ラウリルピリジニウムクロリド等の第4級アンモニウム塩、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムクロリド、ビス(トリ(4−メトキシフェニル)ホスホラニリデン)アンモニウムクロリド、ビス(トリ(2,6−ジメトキシフェニル)ホスホラニリデン)アンモニウムクロリド、ビス(ベンジルジフェニルホスホラニリデン)アンモニウムクロリド、ビス(トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデン)アンモニウムクロリドなどの、アリールまたはアルキル置換ホスホラニリデンアンモニウム塩、トリ−n−ブチルスルホニウムヨージド、トリフェニルスルホニウムブロミド、トリス(ジメチルアミノスルホニウム)ブロミド等のスルホニウム塩、トリフェニルメチリウムクロリド、ビス(4−ジエチルアミノフェニル)フェニルメチリウムクロリド、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)メチリウムクロリド等の炭素カチオン型のオニウム塩が挙げられるが、これらの中でも、光、熱、加水分解に対しての安定性、潜伏性触媒の高温活性の観点から、潜伏性触媒において、置換又は無置換のアリール基やアルキル基を置換基に有する置換ホスホニウムイオンや置換ホスホラニリデンアンモニウムイオンとなる、第4級ホスホニウム塩や第4級アンモニウム塩が特に好ましい。
【0008】
本発明に用いる、分子外に放出しうるプロトンを少なくとも2個以上分子内に有するn(n≧2)価のプロトン供与体(B)は一般式[2]で表される化合物である。
このようなプロトン供与体としては、カルボン酸やフェノール化合物、または多価アルコール類などが含まれる。これらプロトン供与体の中でも特に、分子内にカルボキシル基を少なくとも2個有する芳香族カルボン酸、分子内にカルボキシル基を少なくとも1個と水酸基を少なくとも1個有する芳香族カルボン酸、又は分子内に少なくとも2個の水酸基を有し、カルボキシル基を有さないフェノール化合物が好ましく、また、一般式[2]における2個の置換基Y1及びY2は、有機基Z1に対して、それぞれ互いに隣接していることがさらに好ましい。このようなプロトン供与体の具体的な例としては、分子内にカルボキシル基を少なくとも2個有する芳香族カルボン酸の例として、例えば、o-フタル酸、1,8-ナフタル酸、2,3-ピリジンカルボン酸、トリメリト酸、ピロメリト酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸などが挙げられ、分子内にカルボキシル基を少なくとも1個と水酸基を少なくとも1個有する芳香族カルボン酸の例として、サリチル酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸、3,5-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2-ヒドロキシビフェニル-3-カルボン酸、4-ヒドロキシビフェニル-3-カルボン酸、2,2'-ビフェノール-4-カルボン酸、プロトカテキュ酸、没食子酸などが挙げられ、また分子内に少なくとも2個の水酸基を有し、カルボキシル基を有さないフェノール化合物の例として、カテコール、レゾルシノール、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,2'-ビフェノール、1,1'-ビ-2-ナフトール、ピロガロール、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸オクチル等の没食子酸エステル類等を挙げることができ、また、これら以外のプロトン供与体として、2-ヒドロキシベンジルアルコール、チオサリチル酸、3-ヒドロキシピコリン酸、2-ヒドロキシニコチン酸、2,3-ジヒドロキシピリジン、2,3-ジヒドロキシキノキサリン、4-メチル-1,2-ベンゼンジチオール、クロラニル酸、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸、タンニン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、熱、加水分解に対しての安定性、潜伏性触媒の熱潜在性の面から、3-ヒドロキシ2-ナフトエ酸、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,2'-ビフェノールが、特に好ましい。
【0009】
本発明に用いるホウ酸エステル類(C)としては、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリ−n−プロピル、ホウ酸トリ−n−ブチル等の低級アルコキシ基のトリ置換ホウ酸エステルなどが、一例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。製造時の反応性の観点から、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチルが、特に好ましい。
【0010】
本発明に用いる溶媒としては、アルコール類、ケトン系溶媒、非プロトン性極性溶媒、水等が好ましく、さらには上記溶媒同士や上記溶媒と他の有機溶媒の均一混合溶媒も用いることができる。
アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジアセトンアルコール、トリエチレングリコール等を挙げることができ、非プロトン性極性溶媒の例としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホアミド、スルホラン等を挙げることができる。ケトン系溶媒としては例えば、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、ブチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、溶媒にアルコール類と併用して、水やメタノール等のプロトン性溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリトドン等の非プロトン性極性溶媒等を用いることにより、より良好な反応性を得ることができる。
【0011】
本発明において、一般式[3]で表されるオニウムボレートからなる潜伏性触媒は、一般式[1]で表されるオニウム塩(A)と、一般式[2]で表される、分子外に放出しうるプロトンを少なくとも2個以上分子内に有するn(n≧2)価のプロトン供与体(B)と、ホウ酸エステル類(C)とを、溶媒中で混合し、必要に応じてアルカリで中和することにより、容易に合成することができる。混合順序については特に制限はないが、プロトン供与体(B)とホウ酸エステル類(C)とを、はじめに溶媒中で混合し、必要に応じてアルカリで中和した後に、オニウム塩(A)を混合するのが、高収率で目的のオニウムボレート触媒を得る上で有利である。
【0012】
本発明において、一般式[2]で表される、分子外に放出しうるプロトンを少なくとも2個以上分子内に有するn(n≧2)価のプロトン供与体(B)とホウ酸エステル類(C)は、均一に溶解しプロトンが解離可能な溶媒中では、プロトン供与体がプロトンを放出してホウ酸エステルのホウ素原子とキレート構造を形成し、安定な1価のボレート陰イオン錯体が形成される。
さらに、一般式[1]で表されるオニウム塩(A)のカチオン部がボレート陰イオン錯体と塩を形成することにより、一般式[3]で表されるオニウムボレートが生成する。この反応は、室温程度の比較的穏和な条件下においても、速やかに反応を進行させることが可能であり、また反応の制御も容易である。
【0013】
本発明における反応条件としては、原料、溶媒、仕込量等の条件により異なるが、例えば、一般式[1]で表されるオニウム塩(A)とホウ酸エステル類(C)との仕込みモル比としては、1:0.5〜1:2の範囲が好ましく、一般式[2]で表される、分子外に放出しうるプロトンを少なくとも2個以上分子内に有するn(n≧2)価のプロトン供与体(B)とホウ酸エステル類(C)との仕込みモル比としては、1:0.5〜1:2の範囲が好ましい。仕込みモル比が、これらの範囲から外れると、収率や純度が大きく低下する恐れがある。
原料の溶媒に対する濃度としては、1wt%〜30wt%の範囲が好ましく、より好ましくは5wt%〜20wt%の範囲で仕込み、室温〜50℃程度の範囲の温度で、0.5〜2時間程度、反応を行う。
反応液から目的の触媒であるオニウムボレートを回収するには、析出してくる結晶を濾過する方法が、一般に採られるが、反応液を、さらに水や有機溶媒等で、再沈殿することにより、さらに収率を上げることも可能である。回収したオニウムボレートは、用途により、微量の不純物の存在が問題となる場合には、さらに、有機溶媒や純水での洗浄等により、所望の純度の製品を調製することができる。
【0014】
本発明のオニウムボレートからなる潜伏性触媒の製造方法では、ボレート側のホウ素源として安価なホウ酸エステル類を用いるため、従来の高価なテトラ置換ボレート塩やテトラ置換ホスホニウムテトラ置換ボレートを用いる製法と比較して、コスト面においても有利である。ホウ酸エステル類は多くの有機溶媒に可溶であり、室温下でも均一系で反応することが可能なため、反応性の面でより有利である。
【0015】
本発明の一般式[3]で表されるオニウムボレートからなる潜伏性触媒は、エポキシ樹脂やマレイミド樹脂等の熱硬化性樹脂に配合された場合、常温においては触媒活性を示さないので熱硬化性樹脂の硬化反応が進むことなく、成形時の高温において触媒活性が発現し、熱硬化性樹脂を高度に硬化させることが可能である。
【0016】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0017】
(実施例1)
撹拌機およびジムロート冷却管を備えた100mlの3つ口セパラブルフラスコに、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸3.76g(0.02mol)、ホウ酸トリメチル1.04g(0.01mol)、メタノール15ml及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)5mlを仕込み、65℃で約10分間攪拌を続け、均一溶解した。次いで、予め20mlのメタノールに、テトラフェニルホスホニウムブロミド4.19g(0.01mol)を均一に溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ中に滴下し、10%水酸化ナトリウム水溶液4.00ml(0.01mol)を滴下して、溶液を中和したところ、黄白色結晶が析出した。析出結晶を濾過後、100mlのエタノールおよび冷水で洗浄した。その後、濾過、乾燥を行い、融点272〜274℃の黄色結晶6.64gを得た。得られた生成物を1H−NMR、MSスペクトル、元素分析により分析し、結果は次の通りであった。
生成物の元素分析:
(実験値) C:76.3%,H:4.6%,P:4.2%,B:1.5%,(理論値)C:76.5%,H:4.5%,P:4.3%,B:1.5%
生成物の1H−NMRスペクトルは図1に、MSスペクトルは図2に示す。
分析結果より、得られた生成物が式[7]で表される目的のテトラフェニルホスホニウムビス(3−オキシ−2−ナフトイルオキシ)ボレート(TPP−HNABと略す)と確認された。(収率92%)
【0018】
【化12】
【0019】
(実施例2〜8)
実施例1の反応原料、溶媒、温度を表1のように変えて、実施例1同様の手順で合成を実施し、合成結果および分析結果を表1にまとめた。実施例2〜8においても、分析結果より、得られた生成物が、それぞれ式[8]〜[14]で表される目的の各種オニウムボレートと確認された。
【0020】
【表1】
【0021】
【化13】
【0022】
【化14】
【0023】
【化15】
【0024】
【化16】
【0025】
【化17】
【0026】
【化18】
【0027】
【化19】
【0028】
実施例1〜8において、いずれも目的のオニウムボレートを穏和な条件下、短時間、高収率で合成可能であった。
【0029】
(比較例1)
撹拌機およびジムロート冷却管を備えた100mlの3つ口セパラブルフラスコに、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸3.76g(0.02mol)、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート6.58g(0.01mol)を仕込み、180℃でバルク反応させたところ、ベンゼンを副生しながら不均一に反応が進行し、反応途中で生成物の結晶が固化析出し、反応が進行しなくなった。反応物を100mlのエタノールで洗浄したところ、黄白色結晶が沈殿した。沈殿結晶を濾過、乾燥し、融点272〜274℃の黄色結晶2.53gを得た。得られた生成物を1H−NMR、MSスペクトル、元素分析により分析し、得られた生成物が式[7]で表される目的のテトラフェニルホスホニウムビス(3−オキシ−2−ナフトイルオキシ)ボレート(TPP−HNABと略す)と確認された。(収率35%)
【0030】
(比較例2)
撹拌機およびジムロート冷却管を備えた100mlの3つ口セパラブルフラスコに、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸3.76g(0.02mol)、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート6.58g(0.01mol)を仕込み、180℃でバルク反応させたところ、ベンゼンを副生しながら不均一に反応が進行し、反応途中で生成物の結晶が固化し析出した。フラスコ内の温度を生成物の融点以上である280℃まで上げると反応が進行し、黄褐色の。反応物を100mlのエタノールで洗浄したところ、黄白色結晶が沈殿した。沈殿結晶を濾過、乾燥し、融点272〜274℃の黄色結晶5.49gを得た。
得られた生成物を1H−NMR、MSスペクトル、元素分析により分析し、得られた生成物が式7で表される目的のテトラフェニルホスホニウムビス(3−オキシ−2−ナフトイルオキシ)ボレート(TPP−HNABと略す)と確認された。(収率78%)
【0031】
比較例1〜2では、反応が不均一であるため収率が低い、あるいは高い反応温度を必要とし、さらに副生物としてベンゼンを生成するため好ましくなかった。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、安価原料から穏和な条件下、短時間で、しかも高収率で、常温においては触媒作用を発現することなく、長期間にわたって樹脂組成物を安定に保存可能で、成形温度で優れた触媒作用を発現する潜伏性触媒を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の生成物の1H−NMRスペクトルである。
【図2】実施例1の生成物のMSスペクトルである。
Claims (3)
- 一般式[1]
- 一般式[1]で表されるオニウム塩(A)が、一般式[4]で表される第四級ホスホニウム塩、又は一般式[5]で表される第四級アンモニウム塩である、請求項1記載の潜伏性触媒の製造方法。
- 一般式[2]で表されるプロトン供与体(B)が、分子内にカルボキシル基を少なくとも2個有する芳香族カルボン酸、分子内にカルボキシル基を少なくとも1個と水酸基を少なくとも1個とを有する芳香族カルボン酸、又は分子内に少なくとも2個の水酸基を有し、カルボキシル基を有さないフェノール化合物である請求項1又は2記載の潜伏性触媒の製造方法。
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JP2003277510A (ja) | 2003-10-02 |
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