JP4007023B2 - 車両用故障診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に搭載した電子制御装置を特定し、その故障診断を行うことができる車両用故障診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用故障診断装置は、車両の販売店やサービス工場などで広く使用されており、車両に搭載したエンジンや自動変速機等のシステムを制御する電子制御装置の故障診断を行うときに使用される。
この故障診断にあたっては、車両用故障診断装置を複数の電子制御装置が接続された接続ラインに接続してこれらの間で通信リンクを確立することにより実行される。この通信リンクの利用により、各電子制御装置の記憶部に記憶されている自己診断情報や各種制御データ等を車両用故障診断装置側で取得、記録、表示することが可能となる。
【0003】
車載の電子制御装置は、近年の車両性能の向上に伴い、1台あたりに搭載される個数が増加する一方であることから、たとえばエンジンと自動変速機といった各システムの電子制御装置間でデータや故障の情報をやりとりして共有したり自身のシステム制御に利用したり、あるいは車両の総合制御を実行したりすることが増えてきている。
この目的達成のため、車載の電子制御装置同士間でデータのやりとりを実行するのに、たとえばCANプロトコルのような車内通信手段が用いられるようになってきている。これに伴い、車両用故障診断装置にあっても、車内通信手段と同じ通信手段に対応可能なようにして、電子制御装置との通信リンクを実現できるようにしている。
【0004】
このような車両用故障診断装置にあっては、故障診断時に、車両用故障診断装置側のコネクタを車両側の診断コネクタに接続して車載の各電子制御装置に対する故障診断を実行する。その場合、故障診断そのものに先立って、まず当該車両に搭載されている電子制御装置がエンジン用あるいは自動変速機(AT)用などのどのシステムのものであるかを識別しておく必要がある。
【0005】
そこで、上記接続が終了したら、車両用故障診断装置から車両に搭載されている可能性があるすべてのシステムの各電子制御装置に対して返信要求信号を出力して、各電子制御装置から返信信号を出力させるようにする。
車両用故障診断装置は、それらの出力相手先のうち、所定時間内に車両用故障診断装置へ返信信号の返信がなかった電子制御装置のシステムについては、これらのシステムが当該車両には存在しないものと判断する一方、返信があった電子制御装置についてはそれらのシステムが当該車両に搭載されているものとして、それぞれ識別する。
【0006】
これらの識別結果をもとに車両用故障診断装置は、その表示部であるディスプレイに、返信のあった電子制御装置のシステム名称、たとえばエンジン、AT等の名称を表示するので、作業者がこれらの表示された電子制御装置から適宜選択して故障診断を行っていくことが可能となる。
【0007】
上記従来の車両用故障診断装置では、車載電子制御装置の識別を図8に示す流れで行っていた。
なお、上述のように、故障診断に先立って、車両用故障診断装置を車両側の診断コネクタに接続しておき、その後イグニッション・スイッチをオンにしてから車両用故障診断装置のスタート・ボタンを押下する。車両用故障診断装置は、これにより、電子制御装置の識別、および故障診断を開始する。
【0008】
まず、ステップ21では、車両側の各電子制御装置がデータ交換を行うための通信線上に、車両用故障診断装置からシステムAへ返信要求信号を送信し、ステップ22へ進む。
ステップ22では、システムAへの返信要求信号の送信から1秒経過したか否かを判断する。
【0009】
ここで1秒としたのは、以下の理由による。
各システムの電子制御装置では、それぞれのシステムの制御および車内通信の方を車両用故障診断装置からの上記返信要求よりも優先度を高く設定してあるので、これらの制御や車内通信の方を上記返信要求よりも優先的に実行することになる。この結果、返信受けまでに数百msec(ミリ秒)程度必要とする場合がある。したがって、車両用故障診断装置では、1sec(秒)間待機するものとしている。
そして、1sec経過していなければステップ23へ進むが、1sec経過したらステップ25へと進む。
【0010】
ステップ23では、システムAの電子制御装置から返信があったか否かを判定する。返信があれば、ステップ24へ進み、返信がなければステップ22へ戻る。
ステップ24では、システムAの電子制御装置から返信があったので、当該車両にはシステムAが搭載されていると判断して、車両用故障診断装置のディスプレイ画面上に“システムA”と表示し、ステップ26へ進む。
【0011】
一方、返信が得られない状態が続き1secが経過した場合は、ステップ25で、その車両にはシステムAが搭載されていないと判断し、ディスプレイ画面には何ら表示することなく、ステップ26へ進む。
ステップ26では、上記システムAの識別が終了したので、次の識別対象であるシステムBへ移り、システムBへの返信要求信号を車両側の通信線上に送信する。以下、上記システムAの場合と同様にシステムBが車両に搭載されているか否かを判定する。
とくに図示しないが、その後も同様に、システムC以降のシステムにつき順次判定、識別していく。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の故障診断装置にあっては、各電子制御装置に対し最初に返信要求信号を送信して返信がなかった場合、それぞれの電子制御装置について最大1secほど待つ。
すなわち、より詳細に説明すると、車両用故障診断装置では、返信要求信号を送信して返信がなかった場合、送信時から約300msecほど返信を待ち続けた後、返信がなかった電子制御装置に対し、再度返信要求信号を送信する。このようにして返信要求信号の送信を3回繰り返しても1回も返信がなかった場合に、返信がなかった電子制御装置を、当該車両には搭載されていない電子制御装置であると判断する。
【0013】
したがって、一つの電子制御装置が車両に搭載されていないことを確認するには、300msec×3=900msec(約1sec)以上が必要となる。
なお、この300msecといった時間は、故障診断装置が返信要求信号を送信して返信がなかった場合に返信を待つ時間として規格で定められた値である。
【0014】
いま故障診断の対象となる各種車両に搭載されている可能性のある電子制御装置がたとえば30種類あって、今回故障診断対象としている車両にたとえば5種類の電子制御装置が搭載されていたとすると、車載電子制御装置の識別には、搭載されている5種の電子制御装置からの返信に要した時間のほかに返信のない25種分(したがって、1sec/個×25個=25sec)は待たなくてはならず、最低でも25secを上まわることになる。
【0015】
したがって、すべてのシステムの存在・非存在を識別するのには時間がかからざるを得ず、この結果、車両側への車両用故障診断装置の接続から、その表示部へ車載されているシステム名が表示されるまでの間、作業者は長時間待たされることとなり、故障診断作業の効率の悪化を招いている。
なお、この識別にかかる時間の増大は、最近のように車載するシステムが増加する状況にあっては、システム数(したがって電子制御装置数)の増加にともなってますます顕著になる。
したがって本発明は、より短時間で車載のシステムを識別可能として、故障診断作業を短縮できるようにした車両用故障診断装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、通信線によりそれぞれ接続され、通信線へ制御データを出力することによって通信線を介して互いにデータ通信を行ってそれぞれの制御対象の制御を実行する車両搭載の複数の電子制御装置に、通信線を介して接続し、複数の電子制御装置の故障診断を行う車両用故障診断装置であって、電子制御装置の各々が通信線を介して他の電子制御装置との間でやり取りする複数の制御データをモニタし、モニタした制御データの各々に含まれた、制御データを出力した電子制御装置を特定する特定データに基づいて、車両に搭載されている電子制御装置を識別する識別手段を備え、識別手段によって車両に搭載されていると識別された電子制御装置の故障診断を行うと共に、複数の電子制御装置はそれぞれ、他の電子制御装置から出力された制御データを受信できなかった場合に、受信できなかった制御データを出力する電子制御装置を特定する通信不良装置特定データを記憶する記憶手段を備え、識別手段は、特定データに基づいて車両に搭載されていると識別された電子制御装置の記憶手段にそれぞれ記録された通信不良装置特定データを読み出し、読み出した通信不良装置特定データに基づいて車両に搭載されている通信不良の電子制御装置を識別するものとした。
【0018】
請求項2の発明は、さらに識別手段によって車両に搭載されていると識別された電子制御装置を特定する情報を報知する報知手段を備えているものである。
そして、請求項3の発明は、上記報知手段が、特定データに基づいて車両に搭載されていると識別された電子装置を特定する情報と、記憶手段から読み出した通信不良装置特定データに基づいて電子制御装置を特定する情報とを異なった形態で報知するものである。
【0019】
【発明の効果】
請求項1の発明では、車両用故障診断装置が、電子装置の各々が前記通信線を介して他の電子制御装置との間でやり取りする複数の制御データをモニタし、モニタした制御データの各々に含まれている特定データに基づいて、車両に搭載された電子制御装置を識別する識別手段を備えているので、車両に搭載されている可能性のあるすべての電子制御装置に対して、車両に搭載されているかどうかを識別する必要がなくなり、車両に搭載された電子制御装置を識別する時間を短縮でき、作業者の作業効率が向上する。
【0020】
また、複数の電子制御装置がそれぞれ制御データを受信できなかった場合に、受信できなかった制御データを出力する電子制御装置を特定する通信不良装置特定データを電子制御装置の記憶手段に記憶しておき、識別手段により、特定のデータに基づいて車両に搭載されていると識別された電子制御装置の記憶手段にそれぞれ記憶された通信不良装置特定データを読み出し、この読み出した通信不良装置特定データに基づいて車両に搭載された電子制御装置を識別するようにしたので、車両に搭載されていながら通信不良により特定データの受信ができない電子制御装置があった場合でも、車両に搭載されていることを識別することができる。
【0021】
請求項2の発明では、車両に搭載されていると識別された電子制御装置を特定する情報を報知する報知手段を備えているので、故障診断を行う作業者は車両に搭載されている電子制御装置を容易に認識することができる。
【0022】
請求項3の発明では、報知手段が、特定データに基づく電子制御装置を特定する情報と、通信不良装置特定データに基づく電子制御装置を特定する情報とをそれぞれ異なった形態で報知するので、通信不良の有無にかかわらず車両に搭載されている電子制御装置のすべてを、故障診断を行う作業者が確実に認識できるとともに、どの電子制御装置に通信不良が発生しているかを容易に認識することもできる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は実施の形態の構成を示すブロック図である。
車両診断対象の車両1は、5個の電子制御装置ECU−A、ECU−B、ECU−C、ECU−D、ECU−Eを搭載している。
これらは、たとえば電子制御装置ECU−Aがエンジン制御用、電子制御装置ECU−BがAT制御用、電子制御装置ECU−Cがシャシー制御用といった具合に各システムを制御するものである。
また、各電子制御装置は、車内の通信線2を介してそれぞれデータ交換が可能であり、また車両側の通信線2および診断コネクタ3を介して車外の車両用故障診断装置4を接続可能である。車両用故障診断装置4は、ディスプレイ5の画面に、診断のための情報を表示可能である。
【0024】
上記車両内の各電子制御装置間でのデータ(メッセージ)交換の際、送信側および受信側の電子制御装置とそれら間でやりとりされるメッセージIDとの関係を、図2に示す。なお、このメッセージIDはデータ(メッセージ)に含まれる形で送信され、通信線2へデータ(メッセージ)を出力した電子制御装置を特定する特定データを構成する。
同図において、最左側の縦方向に並べた各欄にはデータ送信側の電子制御装置名を、また最上方の横方向に並べた各欄にはデータ受信側の電子制御装置名をそれぞれ示してある。
【0025】
まず送信側から説明すると、電子制御装置ECU−Aは、A1というメッセージIDを有するメッセージと、A2というメッセージIDを有するメッセージとを、それぞれ所定時間、たとえば20msecごとに通信線2上に送信する。
また、電子制御装置ECU−Bは、B1というメッセージIDを有するメッセージと、B2というメッセージIDを有するメッセージとを所定時間、たとえば30msecごとに通信線2上に送信する。
【0026】
同様に、電子制御装置ECU―Cは、C1というメッセージIDを有するメッセージと、C2というメッセージIDを有するメッセージとを、また電子制御装置ECU−Dは、D1というメッセージIDを有するメッセージを、また電子制御装置ECU−Eは、E1というメッセージIDを有するメッセージを、それぞれに応じた決められた所定時間ごとに送信する。
【0027】
一方、受信側では、電子制御装置ECU−Aは、B1、C1、C2、D1、E1の各メッセージIDを有するメッセージのみを取り組むようにプログラムされており、これらの取り込んだデータを自身の制御に使用する。
また、電子制御装置ECU−Bは、A1、A2、C1、D1、E1の各メッセージIDを有するメッセージのみを取り込み、自身の制御に使用する。
同様に、電子制御装置ECU−CはA1、B1、E1の各メッセージIDを有するメッセージのみを、また電子制御装置ECU−DはA1、B1、B2、C1、E1の各メッセージIDを有するメッセージを、また電子制御装置ECU−Eは、A1、A2、B1、B2、C1、C2、D1の各メッセージIDを有するメッセージIDを、それぞれ取り込み、それら自身の制御に使用する。
【0028】
車両用故障診断装置4は、その内部に図3に示すデータベースを有している。
すなわち、車両用故障診断装置4は、各種車両に搭載の可能性があるすべてのシステムA、B、C、D、E、F、・・・に対応して、同図に示すように、システムAについてはA1、A2、A3、A4、・・・といったメッセージIDを、またシステムBについてはB1、B2、B3、B4、・・・といったメッセージIDを、またシステムCについてはC1、C2、C3、C4、・・・といったメッセージIDを、またシステムDについてはD1、D2、D3、D4、・・・といったメッセージIDを、またシステムEについてはE1、E2、E3、E4、・・・といったメッセージIDを、またシステムFについてはF1、F2、F3、F4、・・・といったメッセージIDを、といった具合に構築したデータベースを備えている。
【0029】
したがって、車両用故障診断装置4が通信線2上から読み込んだメッセージIDを自身内のデータベースに照らし合わせることで、車載の電子制御装置を識別することが可能となる。この識別は、車両用故障診断装置4内のプログラムにしたがって実行される。
【0030】
次に、上記車両用故障診断装置の作用につき説明する。
まず、車両用故障診断装置4を車両1側の診断コネクタ3に接続する。接続したら、図外のイグニッションスイッチをオンにした後、車両用故障診断装置4のスタートボタンを押下する。これにより、車両用故障診断装置4は作動状態となる。
【0031】
車両用故障診断装置4では、図4のフローチャートに基づき、車載の電子制御装置の識別を行う。
まずステップ11では、スタートボタン押下後、2secの間、車両1内の通信線2上におけるメッセージIDをモニタして、検出されたそれらのメッセージIDを記憶する。
続いてステップ12では、ステップ11で記憶されたメッセージIDのうち、A1、A2、A3、・・・が存在するか否かを判定し、それらが存在すればステップ13へ、またそれらが存在しなければステップ14へ進む。
ステップ13では、A1、A2、A3、・・・のうちのいずれかが存在することを確認したので、この車両にはシステムAが搭載されていると判断して、ディスプレイ5の画面上に“システムA”と表示し、ステップ14へと進む。
【0032】
ステップ14では、ステップ11で記憶されたメッセージIDのうち、B1、B2、B3、・・・が存在するか否かを判定し、それらが存在すればステップ15へ、またそれらが存在しなければステップ16へと進む。
ステップ15では、B1、B2、B3、・・・のうちのいずれかが存在することが確認できたので、この車両にはシステムBが搭載されていると判断して、ディスプレイ5の画面上に“システムB”と表示する。
これ以降は省略するが、同様に、メッセージIDのうち所定のIDが存在するか否かを判定し、存在すれば対応するシステムが存在する旨を表示するステップを、すべてのシステムに対して実行する。
【0033】
図5は、識別した最終結果のディスプレイ5における画面表示例を示す。
すなわち、画面にはシステムA”、“システムB”、“システムC”、“システムD”、“システムE”と5つのシステム名が表示されるので、これにより、当該車両がAからEの5つのシステムを搭載していることを、故障診断を行う作業者に認識できるようになる。
【0034】
車両側の電子制御装置から出力される上記のメッセージIDを含んだメッセージの送信間隔は、メッセージIDに応じた所定間隔があらかじめ決められており、通常は最長で1sec程度である。
すなわち、電子制御装置から送信されるメッセージは、受信する電子制御装置の制御に使用するので、通常少なくとも1sec間に1回は出力されるように設定しているわけである。
したがって、車両用故障診断装置4では、ステップ11におけるように2sec間、車両側のメッセージをモニタすることにより、すべてのメッセージを1回以上モニタすることが可能となる。
【0035】
なお、通常は、上述したように、1secの間にすべての電子制御装置がメッセージを送信するので、1secの間モニタすればすべての車載電子制御装置のメッセージを受信できることになるわけであるが、ノイズ等による受信不良によって車載電子制御装置を誤判断するおそれがある。このため、本実施例にあっては、2sec間とすることにより、2回はモニタ可能なようにして確実性を大きくアップさせている。
また、ステップ12〜ステップ15については、車両用故障診断装置4内部のソフトウェア処理であるから、msecレベルで処理できる結果、本実施例では、約2secで車載電子制御装置の識別、そのシステム名の表示が可能になっている。
【0036】
ここで、ある電子制御装置について通信線の断線等により通信不良が発生している場合、上記の第1の識別方法だけでは、その電子制御装置のシステムについてはその車両に搭載されていないと判別されてしまうおそれがある。
そこで本実施の形態では、さらに、通信不良が発生している旨を判定してディスプレイに表示することができるようにしている。
【0037】
たとえば電子制御装置ECU−Bが搭載されているにもかかわらず、上述の方法により車載電子制御装置を識別した結果、通信線の断線等により通信不良であることに起因して、電子制御装置ECU−Bが当該車両に搭載されていないと判断された場合を例にとって説明する。
各システムの電子制御装置は、先の図2に示したように、それぞれあらかじめ定めたメッセージIDを有するメッセージを取り込むようにプログラミングしてある。
たとえば、電子制御装置ECU−AはB1、C1、C2、D1、E1の各メッセージIDを有するメッセージを取り込むように設定されている。
【0038】
そして、もしそのメッセージIDを有するメッセージがある所定期間、たとえば1sec間、受信できないとすると、その受信している電子制御装置は、そのメッセージを送信する電子制御装置との通信が不良であるとして、自己診断結果のコード(通信不良特定データ)を図外の自身のメモリ(記憶手段)に記憶するように構成されている。
すなわち、電子制御装置ECU−Aは、B1のメッセージIDが受信できなければ、“電子制御装置ECU−Bよりの通信不良”を意味する通信不良特定データを電子制御装置ECU−A内のメモリに記憶するように、あらかじめプログラミングされている。
【0039】
以上に基づいて、車両用故障診断装置4では、上述した図4のフローによる第1の識別方法を実行したあと、さらに図6に示すフローチャートにしたがって、車載電子制御装置の第2の識別を行う。
すなわち、第1の識別方法を実行して、この方法により当該車両に搭載されていると判断された各システム(ここでは、システムBを除くシステムA、システムC、システムD、システムEの4つのシステム)の電子制御装置と順次通信していく。
【0040】
この通信において、まずステップ31では、システムAに対して、システムA自己診断結果要求信号を送信する。
ステップ32では、上記システムA自己診断結果要求信号の送信から1sec経過したか否かを判断する。1sec経過していないのであればステップ33へ進み、1sec経過したのであればステップ34へ進む。
ステップ33では、システムAの電子制御装置から自己診断結果が返信されたか否かを判断し、返信があったときはステップ34へ進み、返信がなかったときはステップ32へ戻る。
【0041】
ステップ34においては、電子制御装置ECU−Aから返信された自己診断結果から“電子制御装置ECU−Bよりの通信不良”があるか否かを判断する。
通信不良と判断すれば、ステップ35へ進み、ディスプレイ5の画面上に“システムB(通信不良)”と表示し、システムBが当該車両に搭載されているものの通信不良が生じている旨を、故障診断の作業者にとって認識できるようにする。
【0042】
上記とは反対に、ステップ34で電子制御装置ECU−Bよりの通信不良がないと判断された場合は、ステップ36へ進む。
ステップ36では、電子制御装置ECU−Aから返信された自己診断結果から“電子制御装置ECU−Cよりの通信不良”があるか否かを判断する。
通信不良があると判断されれば、ステップ37へ進み、ディスプレイ5の画面上に“システムC(通信不良)”と表示し、システムCが当該車両に搭載されているものの通信不良が生じている旨を、故障診断の作業者にとって認識できるようにする。
【0043】
これとは反対に、ステップ36で電子制御装置ECU−Cよりの通信不良がないと判断された場合は、ステップ38へ進む。
ステップ38では、電子制御装置ECU−Aから返信された自己診断結果から“電子制御装置ECU−Dよりの通信不良”があるか否かを判断する。
通信不良があると判断されれば、ステップ39へ進み、ディスプレイ5の画面上に“システムD(通信不良)”と表示し、システムDが当該車両に搭載されているものの通信不良が生じている旨を、故障診断の作業者にとって認識できるようにする。
【0044】
ステップ38で電子制御装置ECU−Dよりの通信不良がないと判断された場合は、ステップ40へ進む。
ステップ40では、電子制御装置ECU−Aから返信された自己診断結果から“電子制御装置ECU−Eよりの通信不良”があるか否かを判断する。
通信不良があると判断されれば、ステップ41へ進み、ディスプレイ5の画面上に“システムE(通信不良)”と表示し、システムEが当該車両に搭載されているものの通信不良が生じている旨を、故障診断の作業者にとって認識できるようにする。
【0045】
これとは反対に、ステップ40で電子制御装置ECU−Eよりの通信不良がないと判断されたときは、これで電子制御装置ECU−Aのメモリに記憶した通信不良特定データによる通信不良の車載電子制御装置の識別を終え、次に識別された車載電子制御装置ECU−Cのメモリに記憶した通信不良特定データによる通信不良の車載電子制御装置の識別を実行すべく、ステップ42へ進む。
【0046】
ステップ42では、システムCの電子制御装置ECU−Cに対し、自己診断結果要求信号を送信し、上記電子制御装置ECU−Aでの場合と同様にして順次通信不良の電子制御装置があるか否かを、電子制御装置ECU−C内のメモリに記憶された通信不良特定データをもとに判断し、通信不良の電子制御装置がある場合はそのシステム名とそれが通信不良である旨を、ディスプレイ5の画面上に表示する。
システムD、システムEの各電子制御装置に対しても、上記同様の識別作業を順次実行する。
【0047】
上記診断結果の表示例を図7に示す。ディスプレイ5の画面には、“システムA”、“システムC”、“システムD”、“システムE”、“システムB(通信不良)”と表示され、A〜Eの5つのシステムが当該車両に搭載されている旨、およびそのうちシステムBが通信不良状態にあることが故障診断を行う作業者にとって認識できるようになる。
【0048】
なお、上記第2の識別方法の実行にあたってかかる時間は、以下のようになる。
車両用故障診断装置4は、車載の電子制御装置ECU−A、ECU−C、ECU−D、ECU−Eに対して自己診断結果要求を送信し、各電子制御装置からそれらのメモリに記憶された自己診断結果を受信するが、このプロセスにあっては、まず電子制御装置ECU−Aに対する自己診断結果要求メッセージの信号送信にかかる時間は、通信速度を500kbpsとすれば、1メッセージあたり約100bit相当であるので、約0.2msecである。
続く電子制御装置ECU−Aでの処理時間は、車両用故障診断装置4が最大1secまで自己診断結果の受信を待つので、最大1secかかる。
【0049】
電子制御装置ECU−Aからの自己診断結果メッセージの受信には、約0.2msecかかり、電子制御装置ECU−Cに対して自己診断結果要求メッセージの信号を送信するまでの待ち時間は、60msecであることから、全体では、(0.2+1000+0.2+60)×3+(0.2+1000+0.2)
=4181.6msecとなる。
したがって、最悪でも5sec以内に電子制御装置ECU−A、ECU−C、ECU−D、ECU−Eの各メモリから自己診断結果を読み出すことができる。
この結果、第1の識別方法を実行した後、上記第2の識別方法を実行して、車載電子制御装置およびそれらの通信不良の有無を判断し、これらの結果をディスプレイ5へ表示しても、約7secしかかからないことになる。
【0050】
以上のように、本実施の形態にかかる車両用故障診断装置にあっては、まず、車両側の通信線2上に各電子制御装置が出力するメッセージIDを有するメッセージ信号を読み出し、このメッセージIDと発信側、受信側の電子制御装置とメッセージIDの関係のデータベースとを照らし合わせる第1の識別方法で、車載の電子制御装置を識別するようにしたので、車載の電子制御装置を識別してその対応システム名をディスプレイ5の画面に表示するまでの時間を、従来の長い待ち時間を要する車両用故障診断装置に比べてより短時間でできるようになる。この結果、診断作業の効率が向上する。
【0051】
そしてさらに、第1の識別方法で識別した電子制御装置内のメモリに記憶された自己診断結果の情報を読み込む第2の識別方法により、通信不良の有無にかかわらず、すべての車載電子制御装置を識別し、併せて通信不良の有無も検出して、それぞれ異なった形態でディスプレイ5に表示することができる。
この識別、表示にかかる時間は、従来の車両用故障診断装置に比べて大きく短縮でき、故障診断の作業の効率を向上させることが可能となる。
【0052】
これにより、通信線断線等による通信不良に起因して、当該車両に搭載されているにもかかわらずそのシステムが存在しないものと判断され、ディスプレイ画面にそのシステム名が表示されないことから、作業者の混乱や故障診断作業の効率の悪化を招くというおそれもない。
【0053】
なお、本発明は上記実施の形態に限られることなく、種々の態様で実施できる。たとえば、電子制御装置ECU−Bが車載され、かつ通信不良であることが電子制御装置ECU−A、ECU−C、ECU−D、ECU−Eからそれぞれ“電子制御装置ECU−Bよりの通信不良”という自己診断結果を送信してくる場合、図7のようにこれら同じ内容を1つにまとめて表示する代わりに、各診断結果として4つとも“システムB(通信不良)”と表示するようにしてもよい。
【0054】
あるいは、“システムB(通信不良:システムA判断)”、“システムB(通信不良:システムC判断)”、“システムB(通信不良:システムD判断)”、“システムB(通信不良:システムE判断)”といった具合に、通信不良を判断したシステム名を併せて4種類表示するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示すブロック図である。
【図2】各電子制御装置間でのデータ交換例を示す説明図である。
【図3】電子制御装置識別のための車両用故障診断装置内のデータベース例を示す図である。
【図4】電子制御装置識別のための第1のフローチャートである。
【図5】識別結果のディスプレイへの表示例を示す図である。
【図6】電子制御装置識別のための第2のフローチャートである。
【図7】識別結果のディスプレイへの表示例を示す図である。
【図8】従来例における電子制御装置識別のためのフローチャートである。
【符号の説明】
1 車両
2 通信線
3 診断コネクタ
4 車両用故障診断装置
ECU−A、ECU−B、ECU−C 電子制御装置
ECU−D、ECU−E 電子制御装置
Claims (3)
- 通信線によりそれぞれ接続され、該通信線へ制御データを出力することによって前記通信線を介して互いにデータ通信を行ってそれぞれの制御対象の制御を実行する車両搭載の複数の電子制御装置に、前記通信線を介して接続し、前記複数の電子制御装置の故障診断を行う車両用故障診断装置であって、
前記電子制御装置の各々が前記通信線を介して他の電子制御装置との間でやりとりする複数の制御データをモニタし、モニタした制御データの各々に含まれた、前記制御データを出力した電子制御装置を特定する特定データに基づいて、車両に搭載されている前記電子制御装置を識別する識別手段を備え、
該識別手段によって車両に搭載されていると識別された電子制御装置の故障診断を行うと共に、
前記複数の電子制御装置はそれぞれ、他の電子制御装置から出力された制御データを受信できなかった場合に、受信できなかった制御データを出力する電子制御装置を特定する通信不良装置特定データを記憶する記憶手段を備え、
前記識別手段は、前記特定データに基づいて車両に搭載されていると識別された電子制御装置の前記記憶手段にそれぞれ記録された通信不良装置特定データを読み出し、該読み出した通信不良装置特定データに基づいて車両に搭載されている通信不良の電子制御装置を識別することを特徴とする車両用故障診断装置。 - 前記識別手段によって車両に搭載されていると識別された電子制御装置を特定する情報を報知する報知手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の車両用故障診断装置。
- 前記報知手段は、前記特定データに基づいて車両に搭載されていると識別された前記電子装置を特定する情報と、前記記憶手段から読み出した通信不良装置特定データに基づいて電子制御装置を特定する情報とを異なった形態で報知するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の車両用故障診断装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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