JP3994611B2 - オレフィン系熱可塑性エラストマー積層体および自動車用ガラスランチャンネル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オレフィン系熱可塑性エラストマーからなる基材層にオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物からなる表皮層が積層されたオレフィン系熱可塑性エラストマー積層体およびこの積層体からなる自動車用ガラスランチャンネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車部品、工業機械部品、電気・電子部品、建築材料等に用いられるゴム弾性を必要とする部品または部位には、従来から種々の材料が用いられている。例えば、このような自動車部品の一例として、ガラスランチャンネルがあげられる。ガラスランチャンネルは、窓ガラスと窓枠との間に設けられた案内部材であり、窓ガラスの昇降開閉操作を容易にしながら、しかも窓ガラスと窓枠との緊密的(液密的)な密閉操作が必要である。
【0003】
従来のガラスランチャンネルは、軟質塩化ビニル樹脂のような軟質合成樹脂やエチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム等の基材表面に、窓ガラスと摺動させるためのナイロンフィルム等の表皮層が接着剤により積層されている。また、窓ガラスとの接触面積を少なくするために、ナイロンフィルム等の積層前または後に、エンボス加工が施されている。
このようなガラスランチャンネルは、接着剤により表皮層が積層されるため、基材層と表皮層との間で剥離を生じやすいという欠点があり、また工程数が多く煩雑であるという問題がある。
【0004】
さらに、軟質塩化ビニル樹脂はゴム弾性に劣るため、長期間の使用によりヘタリを生じたり、大きく変形するなど、ガラスランチャンネルとしての機能が低下しやすいという傾向がある。また、加硫ゴムは熱硬化型のゴムであるため、リサイクルが不可能であるという問題もある。
【0005】
そこで、本発明者らは、ガラスランチャンネルの上記のような問題を解決すべく、リサイクル可能なオレフィン系熱可塑性エラストマーに着目した。ところが、オレフィン系熱可塑性エラストマーを単層でガラスランチャンネルに用いると、窓ガラスとの摺動性が悪く、激しく摩耗が起こり、さらに押出成形時にダイに発生する目ヤニの量が一般的な樹脂に比べて多く、このため目ヤニが成形品に付着して外観不良になるなどの問題点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、リサイクル可能なオレフィン系熱可塑性エラストマーを材料とし、容易に製造することができ、しかも外観性、耐摩耗性、耐久性、摺動特性、機械的強度およびゴム弾性に優れたオレフィン系熱可塑性エラストマー積層体を提供することである。
本発明の他の課題は、オレフィン系熱可塑性エラストマー積層体からなる自動車用ガラスランチャンネルであって、外観性、耐摩耗性、耐久性、摺動特性、機械的強度およびゴム弾性に優れ、かつ長期間の使用にもヘタリを生じない自動車用ガラスランチャンネルを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、次のオレフィン系熱可塑性エラストマー積層体および自動車用ガラスランチャンネルである。
(1) ポリエチレン樹脂(a−1)5〜60重量部と、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が90〜250、エチレン含量が70〜95モル%のエチレン・α−オレフィン系共重合体(a−2)40〜95重量部〔ここで(a−1)および(a−2)の合計量は100重量部である。〕とを、架橋剤の非存在下に動的に熱処理して得られるオレフィン系熱可塑性エラストマーであって、下記〔1〕、〔2〕および〔3〕
〔1〕 10≦Y−0.43X≦26 …(1)
(式(1)中、XはJIS K 6301に準拠して測定したオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)のJIS A硬度(単位はなし)、YはJIS K 6301に準拠し、70℃×22時間の条件で測定したオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)の圧縮永久歪(単位は%)である。)
〔2〕 JIS K 6301に準拠して測定した引張強度が5〜30MPa
〔3〕 JIS K 6301に準拠して測定した永久伸びが18%以下
の特性を有するオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)からなる基材層と、
オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)100重量部に対して、オルガノポリシロキサン(C)0.5〜20重量部、フッ素系ポリマー(D)0.5〜10重量部および帯電防止剤(E)0.5〜10重量部からなる群から選ばれる少なくとも1種を上記割合で含むオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X)からなる表皮層と
が積層されていることを特徴とするオレフィン系熱可塑性エラストマー積層体。
(2) 表皮層が、オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)100重量部に対して、オルガノポリシロキサン(C)0.5〜20重量部、フッ素系ポリマー(D)0.5〜10重量部および帯電防止剤(E)0.5〜10重量部からなる群から選ばれる少なくとも1種を上記割合で含み、さらにポリオレフィン樹脂(F)を5〜150重量部の割合で含むオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X)からなる表皮層である上記(1)記載の積層体。
(3) オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)が、ポリエチレン樹脂(a−1)とエチレン・α−オレフィン系共重合体(a−2)との合計100重量部に対して、ポリプロピレン樹脂(a−3)を30重量部以下の割合で含む混合物を、動的に熱処理して得られるオレフィン系熱可塑性エラストマーである上記(1)または(2)記載の積層体。
(4) オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)が、結晶性ポリオレフィン樹脂(b−1)とゴム(b−2)とを含む混合物を、動的に熱処理して得られるオレフィン系熱可塑性エラストマーである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の積層体。
(5) 上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の積層体からなる自動車用ガラスランチャンネル。
【0008】
本発明の基材層の原料となるオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)としては、ポリエチレン樹脂(a−1)5〜60重量部と、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が90〜250、エチレン含量が70〜95モル%のエチレン・α−オレフィン系共重合体(a−2)40〜95重量部〔ここで(a−1)および(a−2)の合計量は100重量部である。〕とを、架橋剤の非存在下に動的に熱処理して得られるオレフィン系熱可塑性エラストマーであって、以下の〔1〕、〔2〕および〔3〕の特性を有するオレフィン系のエラストマーが制限なく使用できる。
〔1〕 10≦Y−0.43X≦26 …(1)
(式(1)中、XはJIS K 6301に準拠して測定したオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)のJIS A硬度(単位はなし)、YはJIS K 6301に準拠し、70℃×22時間の条件で測定したオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)の圧縮永久歪(単位は%)である。)
【0009】
〔2〕 JIS K 6301に準拠して測定した引張強度が5〜30MPa、好ましくは8〜30MPa、さらに好ましくは12〜30MPa
〔3〕 JIS K 6301に準拠して測定した永久伸びが18%以下、好ましくは0.5〜15%、さらに好ましくは0.5〜12%
【0010】
前記〔1〕、〔2〕および〔3〕の特性の測定方法は次の通りである。
JIS A硬度:JIS K 6301、スプリング式硬さ試験機A型による瞬間値
圧縮永久歪:JIS K 6301、厚さ12.7mm、直径29.0mmの円柱形サンプルを用いて、25%圧縮、70℃×22時間後の残留歪
引張強度:JIS K 6301、JIS3号ダンベルを用いて引張速度200mm/分にて引張試験を行った引張強度
永久伸び:JIS K 6301、JIS3号ダンベルを100%伸張して10分間保持し、荷重除去10分後の残留歪
【0011】
本発明で用いるオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は、ポリエチレン樹脂(a−1)およびエチレン・α−オレフィン系共重合体(a−2)を架橋剤の非存在下に動的に熱処理して得られるエラストマー、またはポリエチレン樹脂(a−1)およびエチレン・α−オレフィン系共重合体(a−2)およびポリプロピレン樹脂(a−3)を架橋剤の非存在下に動的に熱処理して得られるエラストマーである。
【0012】
前記ポリエチレン樹脂(a−1)としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレン等、公知のポリエチレン樹脂が制限なく用いることができるが、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましく、特にメタロセン触媒を用いて重合した直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
【0013】
ポリエチレン樹脂(a−1)はメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238、190℃、2.16kg荷重)が0.01〜100g/10分、好ましくは0.01〜50g/10分であるのが望ましい。なお、MFRが0.1g/10分より小さい超高分子量ポリエチレンは、135℃のデカリン(デカヒドロナフタレン)中で測定した極限粘度〔η〕が通常7〜40dl/gであり、このような超高分子量ポリエチレンをポリエチレン樹脂(a−1)として使用する場合は、135℃のデカリン中で測定した極限粘度〔η〕が0.1〜5dl/gの低分子量ないし高分子量ポリエチレン15〜40重量%と、極限粘度〔η〕が7〜40dl/gの超高分子量ポリエチレン85〜60重量%とを含む超高分子量ポリエチレン樹脂組成物の形態で使用するのが好ましく、この超高分子量ポリエチレン樹脂組成物全体の極限粘度〔η〕は3.5〜8.3dl/gであるのが好ましい。
【0014】
ポリエチレン樹脂(a−1)は密度が0.880〜0.980g/cm3、好ましくは0.900〜0.950g/cm3であるのが望ましい。
ポリエチレン樹脂(a−1)として直鎖状低密度ポリエチレンを用いる場合は、MFR(ASTM D 1238、190℃、2.16kg荷重)が0.1〜30g/10分、好ましくは0.2〜20g/10分、密度が0.880〜0.950g/cm3、好ましくは0.910〜0.940g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンを用いるのが望ましい。
【0015】
ポリエチレン樹脂(a−1)として直鎖状低密度ポリエチレンを用いる場合、高密度ポリエチレンまたは中密度ポリエチレンを用いる場合に比べて、肌荒れが生じにくく、しかも表面のベタ付きの少ない基材層を得ることができる。
【0016】
ポリエチレン樹脂(a−1)はエチレンの単独重合体であってもよいし、エチレンと、少量、例えば10モル%以下の他のモノマーとの共重合体であってもよい。他のモノマーとしては、炭素数3〜20、好ましくは3〜8のα−オレフィン;酢酸ビニルおよびエチルアクリレート等のビニルモノマーなどがあげられる。他のモノマーとして用いられるα−オレフィンとしては、例えばプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンおよび1−オクテン等があげられる。他のモノマーは1種単独で使用することもできるし、2種類以上を組み合せて使用することもできる。
ポリエチレン樹脂(a−1)は1種単独で使用することもできるし、2種類以上を組み合せて使用することもできる。
【0017】
前記エチレン・α−オレフィン系共重合体(a−2)はエチレンと炭素数3〜20、好ましくは3〜8のα−オレフィンとからなる共重合体であってもよいし、さらにα−オレフィン以外のモノマーが共重合されていてもよい。α−オレフィン以外のモノマーとしては、非共役ポリエン等があげられる。またエチレン・α−オレフィン系共重合体(a−2)はランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0018】
エチレン・α−オレフィン系共重合体(a−2)の具体的なものとしては、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体等があげられる。これらの中ではエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体が好ましい。
【0019】
エチレン・α−オレフィン系共重合体(a−2)において、エチレンと共重合されるα−オレフィンとしては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンおよび1−オクテン等があげられる。α−オレフィンは1種単独で使用することもできるし、2種類以上を組み合せて使用することもできる。
【0020】
エチレン・α−オレフィン系共重合体(a−2)において、エチレンおよびα−オレフィンと共重合される非共役ポリエンとしては、例えばジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネンおよびエチリデンノルボルネン等の非共役ジエン等があげられる。非共役ポリエンは1種単独で使用することもできるし、2種類以上を組み合せて使用することもできる。エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体のヨウ素価は、通常0.1〜50、好ましくは5〜30、さらに好ましくは5〜25であるのが望ましい。
【0021】
エチレン・α−オレフィン系共重合体(a−2)としては、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が90〜250、好ましくは100〜200、さらに好ましくは110〜180、エチレン含量が70〜95モル%、好ましくは75〜90モル%、さらに好ましくは75〜85モル%のエチレン・α−オレフィン系共重合体が好ましく、このような共重合体の中でもヨウ素価が0.1〜50、好ましくは5〜30、さらに好ましくは5〜25のエチレン・α−オレフィン系共重合体が特に好ましい。ここで、エチレン含量とは全α−オレフィン(エチレンも含む)に対するエチレン含量をいう。
エチレン・α−オレフィン系共重合体(a−2)は1種単独で使用することもできるし、2種類以上を組み合せて使用することもできる。
【0022】
本発明で用いるオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)としては、前記ポリエチレン樹脂(a−1)5〜60重量部、好ましくは10〜50重量部、さらに好ましくは10〜45重量部、エチレン・α−オレフィン系共重合体(a−2)40〜95重量部、好ましくは50〜90重量部、さらに好ましくは55〜90重量部を含む混合物〔ここで(a−1)および(a−2)の合計量は100重量部である。〕を、後述のように、架橋剤の非存在下に動的に熱処理して得られるエラストマーが用いられる。ポリエチレン樹脂(a−1)およびエチレン・α−オレフィン系共重合体(a−2)の含有割合が前記範囲にある場合、優れたゴム弾性が発揮される。
【0023】
本発明で用いるオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)にはポリプロピレン樹脂(a−3)が含まれていてもよい。このポリプロピレン樹脂(a−3)としては、公知のポリプロピレン樹脂が制限なく使用できる。具体的なものとしては、次のポリプロピレン樹脂等が例示される。
【0024】
1)プロピレン単独重合体
2)90モル%以上のプロピレンと10モル%未満の他のα一オレフィンとのランダム共重合体(プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体)
3)70モル%以上のプロピレンと30モル%未満の他のα−オレフィンとのブロック共重合体(プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体)
プロピレンと共重合される前記他のα−オレフィンとしては、具体的にはエチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の炭素数2〜20、好ましくは2〜8のα−オレフィンがあげられる。
【0025】
ポリプロピレン樹脂(a−3)としては、前記1)のプロピレン単独重合体および2)のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が好ましく、特にMFR(ASTM D 1238、230℃、2.16kg荷重)が0.1〜50g/10分であるものが好ましい。
ポリプロピレン樹脂(a−3)は1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
【0026】
本発明で用いるオレフィン熱可塑性エラストマー(A)中のポリプロピレン樹脂(a−3)の含有量は、前記ポリエチレン機脂(a−1)およびエチレン・α−オレフィン系共重合体(a−2)の合計100重量部に対して、通常30重量部以下、好ましくは2〜30重量部、さらに好ましくは5〜20重量部の割合であるのが望ましい。
ポリプロピレン樹脂(a−3)の含有量が前記範囲にある場合、肌荒れが生じにくく、しかもベタ付きの少ない基材層を得ることができる。
【0027】
上記のようなオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は、架橋剤や架橋助剤を用いて架橋(加硫)しなくても、ゴム弾性に優れている。また本発明の積層体において基材層を形成するオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は、従来の加硫ゴムのような熱硬化型の弾性体ではなく、熱可塑性のエラストマーであるのでリサイクルが容易である。また架橋剤等を必要とせず、このため架橋剤等の混練工程は必要なくなり、動的に熱処理する一工程で簡単に効率よく得られるので、安価である。
【0028】
本発明で用いるオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)中には、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて公知の軟化剤、耐熱安定剤、老化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、充填剤、着色剤、滑剤等の添加剤を配合することができる。
前記軟化剤としては、鉱物油系軟化剤が好ましく用いられる。このような鉱物油系軟化剤は、通常ゴムに使用されるパラフィン系、ナフテン系、芳香族系等の軟化剤が適当である。
【0029】
上記のようなオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は、好ましくは架橋剤の非存在下に、前記ポリエチレン樹脂(a−1)およびエチレン・α−オレフィン系共重合体(a−2)、ならびに必要により配合するポリプロピレン樹脂(a−3)、その他の樹脂および添加剤を、前記特定の割合で混合し、動的に熱処理することにより製造することができる。
【0030】
前記の「動的に熱処理する」とは、前記ポリエチレン樹脂(a−1)およびエチレン・α−オレフィン系共重合体(a−2)、ならびに必要により配合するポリプロピレン樹脂(a−3)、その他の樹脂および添加剤を溶融(融解)状態で混練することをいう。この動的な熱処理は、ミキシングロール、インテンシブミキサー(例えばバンバリーミキサー、ニーダー)、連続ミキサー、一軸押出機および二軸押出機等の混練装置を用いて行うことができるが、二軸押出機を用いて行うのが好ましい。動的な熱処理は、非開放型の混練装置中で行うのが好ましい。また窒素、二酸化炭素等の不活性ガス中で行うのが好ましい。
【0031】
動的に熱処理する際の条件は、混練温度が通常150〜280℃、好ましくは170〜240℃、混練時間が通常1〜20分間、好ましくは1〜5分間とするのが望ましい。また、混練の際に加えられる剪断力は、剪断速度で通常10〜104sec-1、好ましくは102〜104sec-1とする。
【0032】
また、動的な熱処理を二軸押出機を用いて行う場合には、下記式(2)、好ましくは式(2')、さらに好ましくは式(2")を満たす条件で行うことが好ましい。
【数1】
4.8<[(T−130)/100]+2.2logP+logQ−logR<7.0 …(2)
5.0<[(T−130)/100]+2.2logP+logQ−logR<6.8 …(2')
5.3<[(T−130)/100]+2.2logP+logQ−logR<6.6 …(2")
(式(2)、(2')および(2")中、Tは二軸押出機のダイス出口での樹脂温度(℃)、Pは二軸押出機のスクリューの直径(mm)、Qは二軸押出機内で受ける最高剪断速度(sec-1)、Rは二軸押出機の押出量(kg/h)である。前記最高剪断速度Q(sec-1)は、Q=(P×π×S)/Uの式から求められる。ここで、Pは二軸押出機のスクリューの直径(mm)、Sは1秒間でのスクリュー回転数(rps)、Uはバレル内壁とスクリューのニーディングセグメント(混練セグメント)間のクリアランス(間隙)の最も狭い部分の距離(mm)である。)
【0033】
前記式(2)を満たす条件で、架橋剤の非存在下に二軸押出機を用いて動的に熱処理して得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は、引張強度、永久伸び、圧縮永久歪および成形外観に優れている。
【0034】
上記のようなオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)の製造方法では、従来の加硫ゴムの製造に用いられている有機過酸化物等の架橋剤やジビニル化合物等の加硫助剤等を使用しなくても、前記ポリエチレン樹脂(a−1)およびエチレン・α−オレフィン系共重合体(a−2)、ならびに必要により配合するポリプロピレン樹脂(a−3)、その他の樹脂および添加剤を前記特定の割合で混合して動的に処理することにより、ゴム弾性に優れたオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)を一工程で簡単に効率よく製造することができる。そして架橋剤や加硫助剤等を用いる必要がなく、しかも煩雑な加硫工程が必要ないので、低コストで製造することができる。
【0035】
本発明で用いられるオレフィン系熱可塑性エラストマー(B)は、オレフィン系の熱可塑性エラストマーが制限なく使用でき、前記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)を使用することもできるが、結晶性ポリオレフィン樹脂(b−1)とゴム(b−2)とを含む熱可塑性エラストマーが好ましく、その中でも結晶性ポリオレフィン樹脂(b−1)とゴム(b−2)とを動的に熱処理して得られるエラストマーが好ましく、特に結晶性ポリオレフィン樹脂(b−1)とゴム(b−2)とを架橋剤の存在下に動的に熱処理して得られるエラストマーが好ましい。
【0036】
上記結晶性ポリオレフィン樹脂(b−1)としては、炭素数2〜20、好ましくは2〜8のα−オレフィンの単独重合体または共重合体などがあげられる。
上記結晶性ポリオレフィン樹脂(b−1)の具体的な例としては、以下のような(共)重合体があげられる。
【0037】
1)エチレン単独重合体(製法は、低圧法、高圧法のいずれでもよい)
2)エチレンと、10モル%以下の他のα−オレフィンまたは酢酸ビニル、エチルアクリレートなどのビニルモノマーとの共重合体
3)プロピレン単独重合体
4)プロピレンと10モル%以下の他のα−オレフィンとのランダム共重合体
5)プロピレンと30モル%以下の他のα−オレフィンとのブロック共重合体
6)1−ブテン単独重合体
7)1−ブテンと10モル%以下の他のα−オレフィンとのランダム共重合体
8)4−メチル−1−ペンテン単独重合体
9)4−メチル−1−ペンテンと20モル%以下の他のα−オレフィンとのランダム共重合体
【0038】
上記のα−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどがあげられる。
結晶性ポリオレフィン樹脂(b−1)としては、上記3)〜5)の結晶性ポリプロピレン樹脂(b−1−1)が好ましい。
【0039】
本発明で用いられるゴム(b−2)としては、特に制限はないがオレフィン系共重合体ゴム(b−2−1)が好ましい。
上記のオレフィン系共重合体ゴム(b−2−1)としては、炭素数2〜20、好ましくは2〜8のα−オレフィンを主成分とする無定形ランダムな弾性共重合体であって、2種以上のα−オレフィンからなる非晶性α−オレフィン共重合体、2種以上のα−オレフィンと非共役ジエンとからなるα−オレフィン・非共役ジエン共重合体などがあげられる。
【0040】
このようなオレフィン系共重合体ゴム(b−2−1)の具体的な例としては、以下のようなゴムがあげられる。
1)エチレン・α−オレフィン共重合体ゴム〔エチレン/α−オレフィン(モル比)=約90/10〜50/50〕
2)エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム〔エチレン/α−オレフィン(モル比)=約90/10〜50/50〕
3)プロピレン・α−オレフィン共重合体ゴム〔プロピレン/α−オレフィン(モル比)=約90/10〜50/50〕
4)ブテン・α−オレフィン共重合体ゴム〔ブテン/α−オレフィン(モル比)=約90/10〜50/50〕
【0041】
上記α−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどがあげられる。
上記非共役ジエンとしては、具体的には、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネンなどがあげられる。
【0042】
これらのオレフィン系共重合体ゴム(b−2−1)のムーニー粘度ML1+4(100℃)は10〜250、好ましくは40〜150であるのが望ましい。また、上記非共役ジエンが共重合している場合のヨウ素価は25以下、好ましくは5〜23であるのが望ましい。
【0043】
上記のオレフィン系共重合体ゴム(b−2−1)は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)中において、未架橋、部分架橋、完全架橋など、すべての架橋状態で存在することができるが、本発明においては、架橋状態で存在していることが好ましく、特に部分架橋状態で存在することが好ましい。
【0044】
本発明において用いられるゴム(b−2)としては、上記のオレフィン系共重合体ゴム(b−2−1)のほかに、他のゴム、例えばスチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、天然ゴム(NR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴム、SEBS、ポリイソブチレンなどがあげられる。
【0045】
本発明で用いられるオレフィン系熱可塑性エラストマー(B)において、結晶性ポリオレフィン樹脂(b−1)とゴム(b−2)との重量配合比(結晶性ポリオレフィン樹脂(b−1)/ゴム(b−2))は、通常90/10〜5/95、好ましくは70/30〜10/90の範囲であるのが望ましい。
またゴム(b−2)として、オレフィン系共重合体ゴム(b−2−1)とその他のゴムを組み合せて用いる場合には、その他のゴムは、結晶性ポリオレフィン樹脂(b−1)とゴム(b−2)との合計量100重量部に対して40重量部以下、好ましくは5〜20重量部の割合で配合するのが望ましい。
【0046】
本発明で最も好ましく用いられるオレフィン系熱可塑性エラストマー(B)は、結晶性ポリプロピレン樹脂(b−1−1)と、エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムまたはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム等のオレフィン系共重合体ゴム(b−2−1)とからなり、オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)中においてこれらが部分架橋された状態で存在し、かつ結晶性ポリプロピレン樹脂(b−1−1)と、オレフィン系共重合体ゴム(b−2−1)との重量配合比(結晶性ポリプロピレン樹脂(b−1−1)/オレフィン系共重合体ゴム(b−2−1))が70/30〜10/90、好ましくは60/40〜10/90の範囲内にあるものである。
【0047】
オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)には、必要に応じて鉱物油系軟化剤、耐熱安定剤、耐侯安定剤、老化防止剤、充填剤、着色剤、滑剤などの添加物を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0048】
本発明で好ましく用いられるオレフィン系熱可塑性エラストマー(B)のより具体的な例としては、結晶性ポリプロピレン樹脂(b−1−1)70〜10重量部、好ましくは60〜10重量部と、エチレン・プロピレン共重合体ゴムまたはエチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム等のオレフィン系共重合体ゴム(b−2−1)30〜90重量部、好ましくは40〜90重量部〔成分(b−1−1)および(b−2−1)の合計量は100重量部とする〕と、このオレフィン系共重合体ゴム(b−2−1)以外のゴムおよび/または鉱物油系軟化剤5〜100重量部、好ましくは5〜80重量部とからなる混合物を、架橋剤の存在下で動的に熱処理して得られるオレフィン系熱可塑性エラストマーである。このように動的に熱処理することにより、上記オレフィン系共重合体ゴム(b−2−1)が架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマーがあげられる。
【0049】
上記架橋剤としては有機ペルオキシドなどがあげられる。有機ペルオキシドとしては、具体的には、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシドなどがあげられる。
【0050】
これらの中では臭気性、スコーチ安定性の点で2,5−ジメチル−2.5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)へキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレートが好ましく、中でも1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンが最も好ましい。
有機ペルオキシドは、結晶性ポリオレフィンとゴムとの合計量100重量部に対して0.05〜3重量部、好ましくは0.1〜1重量部の割合で用いるのが望ましい。
【0051】
上記有機ペルオキシドを用いた動的な熱処理に際し、硫黄、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、N−メチル−N−4−ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン−N,N’−m−フェニレンジマレイミドのようなペルオキシ架橋用助剤、あるいはジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラート、ビニルステアレートのような多官能性ビニルモノマーを配合することができる。
【0052】
上記のような化合物を用いることにより、均一かつ緩和な架橋反応が期待できる。特に、本発明においては、ジビニルベンゼンが最も好ましい。ジビニルベンゼンは取扱い易く、上記の被架橋処理物の主成分である結晶性ポリオレフィン(b−1)およびゴム(b−2)との相溶性が良好であり、かつ有機ペルオキシドを可溶化する作用を有し、有機ペルオキシドの分散剤として働くため、熱処理による架橋効果が均質で、流動性と物性とのバランスのとれたオレフィン系熱可塑性エラストマー(B)が得られる。
【0053】
上記のような架橋助剤もしくは多官能性ビニルモノマーは上記の被架橋処理物全体に対して0.1〜2重量%、好ましくは0.3〜1重量%の割合で用いるのが望ましい。架橋助剤もしくは多官能性ビニルモノマーの使用量が上記範囲にある場合、架橋反応が適度に進行するので得られる熱可塑性エラストマーは流動性に優れ、また未反応の化合物が残留することもないので得られる熱可塑性エラストマーは加工成形の際の熱履歴による物性の変化などは生じない。
【0054】
上記の「動的に熱処理する」とは、前記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)の場合と同じ意味であり、上記のような各成分を溶融(融解)状態で混練することをいう。操作もオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)の場合と同じである。混練条件は、使用する有機ペルオキシドの半減期が1分未満となる温度で行うのが望ましい。混練温度は、通常150〜280℃、好ましくは170〜240℃であり、混練時間は1〜20分間、好ましくは3〜10分間とするのが望ましい。また加えられる剪断力は剪断速度として100sec-1以上、好ましくは、500〜10,000sec-1の範囲内で決定される。
【0055】
本発明で特に好ましく用いられるオレフィン系熱可塑性エラストマー(B)は、部分的に架橋されているが、この「部分的に架橋された」とは、下記の方法で測定したゲル含量が20〜98重量%の範囲内にある場合をいい、本発明においては、ゲル含量が40〜98重量%の範囲内にあることが好ましい。
【0056】
〔ゲル含量の測定法〕
熱可塑性エラストマーの試料を約100mg秤量して0.5mm×0.5mm×0.5mmの細片に裁断し、得られた細片を密閉容器中にて30mlのシクロヘキサンに、23℃で48時間浸漬する。
次に、この試料を濾紙上に取り出し、室温で72時間以上恒量になるまで乾燥する。この乾燥残渣の重量からポリマー成分以外のシクロヘキサン不溶性成分(繊維状フィラー、充填剤、顔料等)の重量を減じた値を、「補正された最終重量(Y)」とする。
【0057】
一方、試料の重量からポリマー成分以外のシクロヘキサン可溶性成分(例えば、軟化剤)の重量およびポリマー成分以外のシクロヘキサン不溶性成分(繊維状フィラー、充填剤、顔料等)の重量を減じた値を、「補正された初期重量(X)」とする。
【0058】
ここに、ゲル含量(シクロヘキサン不溶解分)は、次式(3)により求められる。
【数2】
ゲル含量(重量%)
=〔補正された最終重量(Y)〕÷〔補正された初期重量(X)〕×100…(3)
【0059】
上記のように、結晶性ポリオレフィン樹脂(b−1)とゴム(b−2)とを架橋剤の存在下に動的に熱処理して得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー(B)は、流動性に優れている。またこのオレフィン系熱可塑性エラストマー(B)は圧縮成形、トランスファー成形、射出成形、押出成形等の従来使用されている成形装置を用いて容易に成形することができる。
【0060】
本発明において用いるオルガノポリシロキサン(C)としては、主鎖に−Si−O−結合を有する公知のオルガノポリシロキサンが制限なく使用できる。オルガノポリシロキサン(C)を配合することにより、摺動性および耐摩耗性に優れた表皮層が得られる。
【0061】
オルガノポリシロキサン(C)としては、具体的にはジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、フルオロポリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンおよびこれらの変性物などがあげられる。変性物としては、エポキシ変性、アルキル変性、アミノ変性、カルボキシル変性、アルコール変性、フッ素変性、アルキルアラルキルポリエーテル変性、エポキシポリエーテル変性などの変性ポリシロキサンなどがあげられる。これらの中ではジメチルポリシロキサンが好ましい。オルガノポリシロキサン(C)は1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
【0062】
オルガノポリシロキサン(C)は、粘度〔JIS K 2283、25℃〕が10〜107cStのものが好ましい。また、これらの中で粘度〔JIS K 2283、25℃〕が106cSt以上であるものは、非常に粘度が高いので、オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)への分散性を高めるために、オレフィン系樹脂とマスターバッチとなっていてもよい。この場合に使用されるオレフィン系樹脂としては、オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)を製造する時に用いた結晶性ポリオレフィン樹脂、具体的にはエチレン単独重合体、エチレンと他のα−オレフィンとの共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体などがあげられる。
【0063】
さらに、オルガノポリシロキサン(C)はその粘度に応じて1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。特に2種以上を組み合せて使用する場合は、粘度が10〜106cStの低粘度オルガノポリシロキサンと106〜107cStの高粘度オルガノポリシロキサンとを組み合せて使用するのが好ましい。
【0064】
オルガノポリシロキサン(C)は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)100重量部に対して0.5〜20重量部、好ましくは1〜18重量部の割合で用いられる。オルガノポリシロキサン(C)の含有量が上記範囲にある場合、成形品は摺動性に優れ、またオルガノポリシロキサン(C)により表面がベタ付くなどの不具合も生じない。
【0065】
本発明で用いられるフッ素系ポリマー(D)としては、フッ素原子を含む公知のフッ素系ポリマーが制限なく使用できる。フッ素系ポリマー(D)を配合することにより、摺動性および耐摩耗性に優れた表皮層が得られる。
【0066】
本発明で用いられるフッ素系ポリマー(D)としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・ペルフルオロビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、フッ化ビニリデンポリマー、フッ化ビニルポリマーなどがあげられる。フッ素系ポリマー(D)は1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
【0067】
フッ素系ポリマー(D)は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)との分散性を高めるために、あるいは摺動摩耗性改良の効果をさらに高めるために、あらかじめオレフィン系樹脂および/または無機系充填剤とのマスターバッチとなっていてもよい。ここで使用されるオレフィン系樹脂としては前記オルガノポリシロキサン(C)のマスターバッチで使用されるオレフィン系樹脂と同じものがあげられる。また無機系充填剤としては炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク、クレーなどがあげれらる。
【0068】
フッ素系ポリマー(D)は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)100重量部に対して0.5〜10重量部、好ましくは1〜8重量部の割合で用いられる。フッ素系ポリマー(D)の含有量が上記範囲にある場合、成形品は摺動性に優れる。
【0069】
本発明で用いられる帯電防止剤(E)は、一般的に樹脂に使用される公知の帯電防止剤が制限なく使用でき、アニオン活性剤、カチオン活性剤、非イオン活性剤、両性活性剤等があげられる。帯電防止剤(E)を配合することにより、摺動性および耐摩耗性に優れた表皮層が得られる。
【0070】
帯電防止剤(E)の具体的なものとしては、ラウリルジエタノールアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン、ステアリルモノグリセライド、ジステアリルグリセライド、トリステアリルグリセライド、ポリオキシエチレンラウリルアミンカプリルエステル、ステアリルジエタノールアミンモノステアレートなどがあげられる。帯電防止剤(E)は1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
【0071】
帯電防止剤(E)は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)との分散性を高めるためには、あるいは摺動摩耗性改良の効果をさらに高めるために、あらかじめオレフィン系樹脂および/または無機系充填剤とのマスターバッチとなっていてもよい。ここで使用されるオレフィン系樹脂および無機系充填剤としては前記と同じものがあげられる。
【0072】
帯電防止剤(E)は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)100重量部に対して0.5〜10重量部、好ましくは1〜8重量部の割合で用いられる。帯電防止剤(E)の含有量が上記範囲にある場合、成形品は摺動性に優れ、また帯電防止剤(E)が表面に析出して白化する(ブリードアウト)などの不具合も生じない。
【0073】
オルガノポリシロキサン(C)、フッ素系ポリマー(D)および帯電防止剤(E)は1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもでき、その組み合せは任意である。
【0074】
本発明で表皮層の原料として使用するオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X)にはオルガノポリシロキサン(C)、フッ素系ポリマー(D)および帯電防止剤(E)からなる群から選ばれる少なくとも1種に加えて、さらにポリオレフィン樹脂(F)を配合することもできる。ポリオレフィン樹脂(F)を配合することにより、摺動性および耐摩耗性に優れ、しかも成形性良好な表皮層が得られる。
【0075】
ポリオレフィン樹脂(F)としては、前記オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)で用いた結晶性ポリオレフィン(b−1)が好ましい。
また、本発明で用いられるポリオレフィン樹脂(F)の他の好ましい例としては、135℃のデカリン中で測定した極限粘度〔η〕が3.5〜8.3dl/gの範囲内にあるポリオレフィン樹脂である。このようなポリオレフィン樹脂は1種のポリオレフィン樹脂でも、あるいは極限粘度〔η〕の異なる2種以上のポリオレフィン樹脂からなる組成物あるいは混合物であってもよいが、超高分子量ポリオレフィンと、低分子量ないし高分子量ポリオレフィンとからなるポリオレフィン組成物が好ましい。より好ましくは、135℃のデカリン中で測定した極限粘度〔η〕が10〜40dl/gの範囲内にある超高分子量ポリオレフィンと、135℃のデカリン中で測定した極限粘度〔η〕が0.1〜5dl/gの範囲内にある低分子量ないし高分子量ポリオレフィンとのブレンド物であってもよく、このブレンド物としては、超高分子量ポリオレフィンが、超高分子量ポリオレフィンと低分子量ないし高分子量ポリオレフィンとの総重量100重量部に対して15〜40重量部の割合で存在するものが好ましい。
【0076】
前記のような超高分子量ポリオレフィンおよびポリオレフィンは、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンの単独重合体または共重合体からなる。本発明においては、エチレン単独重合体、およびエチレンと他のα−オレフィンとからなるエチレンを主成分とする共重合体が望ましい。
【0077】
また、超高分子量ポリオレフィン組成物には、超高分子量ポリオレフィンとポリオレフィンとの合計量100重量部に対して1〜20重量部の液体ないし固体の軟化剤(潤滑油)を含有させていてもよい。
このような液体軟化剤としては、鉱物油系軟化剤、合成軟化剤等が使用される。鉱物油系軟化剤としては、具体的には、パラフィン系、ナフテン系等の石油系潤滑油、流動パラフィン、スピンドル油、冷凍機油、ダイナモ油、タービン油、マシン油、シリンダー油等が使用される。合成軟化剤としては、具体的には、合成炭化水素油、ポリグリコール油、ポリフェニルエーテル油、エステル油、リン酸エステル油、ポリクロロトリフルオロエチレン油、フルオロエステル油、塩素化ビフェニル油、シリコーン油等が使用される。
【0078】
また、固体軟化剤としては、具体的には、黒鉛、二硫化モリブデンが主に使用されるが、他に窒化ホウ素、二硫化タングステン、酸化鉛、ガラス粉、金属石けん等も使用することができる。固体軟化剤は、単独でも使用することができ、また液体軟化剤と組み合せて使用することができ、例えば粉末、ゾル、ゲル、サスペンソイド等の形態で超高分子量ポリオレフィンに配合することができる。
【0079】
前記の超高分子量ポリオレフィン組成物には、必要に応じて耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、充填剤、着色剤、滑剤等の添加物を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
ポリオレフィン樹脂(F)は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)100重量部に対して5〜150重量部、好ましくは30〜100重量部の割合で用いるのが望ましい。
【0080】
表皮層の原料となるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X)には、必要に応じて鉱物油系軟化剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、充填剤、着色剤、滑剤などの添加物を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0081】
オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X)は公知の方法で製造することができ、例えばオレフィン系熱可塑性エラストマー(B)と、オルガノポリシロキサン(C)、フッ素系ポリマー(D)および帯電防止剤(E)からなる群から選ばれる少なくとも1種と、必要より配合されるポリオレフィン樹脂(F)および他の添加剤を混練することにより得ることができる。
【0082】
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー積層体は、前記のオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)からなる基材層と、前記のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X)からなる表皮層とが積層された積層体である。表皮層は基材層の全面に積層されていてもよいし、基材層の一部分のみに積層されていてもよく、また他の層が積層されていてもよい。表皮層は基材層の片面に積層されていてもよいし、両面に積層されていてもよい。表皮層が基材層の一部分のみに積層される場合、表皮層が積層されない部分は基材層が表面に露出してもよい。基材層と表皮層とは接着剤により積層されていてもよいが、融着されているのが好ましい。積層体の厚さは特に限定されないが、基材層の厚さは0.1〜50mm、好ましくは0.5〜45mm、表皮層の厚さは5μm〜10mm、好ましくは10μm〜8mmであるのが望ましい。
【0083】
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー積層体は、前記のオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)を基材層とし、前記のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X)を表皮層として積層することにより得られる。積層方法は、最終製品の形状、大きさ、要求物性により異なり特に限定されないが、例えば多層押出成形機により基材層と表皮層とを同時に押出成形して熱融着する方法があげられる。このような熱融着の方法は接着剤を必要とせず、簡単な一工程で容易に積層体を得ることができ、しかも基材層と表皮層との層間接着は強固である。また、押出成形時に発生する目ヤニが少なく、外観性に優れている。
【0084】
このような本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー積層体は外観性、耐摩耗性、耐久性、摺動特性、機械的強度およびゴム弾性に優れている。また本発明の積層体は容易に製造することができ、リサイクルが可能であるため経済性に優れている。
【0085】
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー積層体は自動車部品などに利用することができる。例えば、ガラスランチャンネル、ウインドモールおよびサイドモール等の自動車部品、特に自動車用ガラスランチャンネルに好適に利用することができる。
【0086】
図1は本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー積層体の垂直断面図であり、積層体1は前記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)からなる基材層2に前記オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X)からなる表皮層3が積層された積層体である。
【0087】
本発明の自動車用ガラスランチャンネルは上記本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー積層体からなる自動車用ガラスランチャンネルである。本発明の自動車用ガラスランチャンネルは、外観性、耐摩耗性、耐久性、摺動特性、機械的強度およびゴム弾性に優れ、かつ長期間の使用にもヘタリを生じない。また本発明のガラスランチャンネルは容易に製造することができ、リサイクルが可能であるため経済性に優れている。
【0088】
図2は本発明の自動車用ガラスランチャンネルの一例の垂直断面図であって、長手方向に対して直交する垂直断面図である。ガラスランチャンネル5は本体6および水切り部7を有し、本体6には窓枠取付用の係合部8が設けられている。本体6および水切り部7はオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)からなり、ガラスが接触する部分にはオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X)が積層され、ガラス接触部9を構成している。すなわち、ガラスランチャンネル5全体としては、基材層の一部分に表皮層が積層された本発明の積層体から構成され、積層部分がガラス接触部9を構成している。このようなガラスランチャンネル5は、ガラス接触部9の部分にだけオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X)が積層されるように、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)とオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X)とを共押出成形することにより製造することができる。
このようなガラスランチャンネル5は図3に示すように、自動車のドア11の窓枠12に取り付けられ、窓ガラス13の昇降開閉操作を行う際の案内部材として用いられる。
【0089】
図4は図3のA−A断面図であり、ガラスランチャンネル5が窓枠12に取り付けられた状態を示しており、(a)は窓ガラス13が閉められる前、(b)は窓ガラス13が閉められた後の状態を示している。
ガラスランチャンネル5は窓ガラス13の開閉操作に伴って図4(a)および(b)の状態が繰り返され、窓ガラス13が開閉される際には窓ガラス13が水切り部7のガラス接触部9を摺動するが、本発明のガラスランチャンネル5は耐摩耗性、耐久性、摺動特性、機械的強度およびゴム弾性などに優れているので、長期間にわたって窓ガラス13の開閉を繰り返しても、ヘタリや変形を生じない。
【0090】
【発明の効果】
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー積層体は、特定の組成物から特定の方法により得られ、かつ特定の特性を有するオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)からなる基材層と、オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)にオルガノポリシロキサン(C)、フッ素系ポリマー(D)および帯電防止剤(E)からなる群から選ばれる少なくとも1種を特定の割合で含むオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X)からなる表皮層とが積層された積層体であるので、外観性、耐摩耗性、耐久性、摺動特性、機械的強度およびゴム弾性に優れている。また本発明の積層体は容易に製造することができ、リサイクルが可能であるため経済性に優れている。
【0091】
本発明の自動車用ガラスランチャンネルは上記オレフィン系熱可塑性エラストマー積層体からなるものであるので、外観性、耐摩耗性、耐久性、摺動特性、機械的強度およびゴム弾性に優れ、かつ長期間の使用にもヘタリを生じない。また本発明のガラスランチャンネルは容易に製造することができ、リサイクルが可能であるため経済性に優れている。
【0092】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。表皮層を形成するオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X)に使用した原料を以下に示す。
【0093】
●オルガノポリシロキサン(C−1)
東レ・ダウコーニング(株)製、シリコーンオイル、SH200(3000cSt)、商標
● オルガノポリシロキサン(C−2)
東レ・ダウコーニング(株)製、シリコーンオイル−ポリプロピレンマスターバッチ、BY27−002(超高分子量シリコンオイル含量50重量%)、商標
【0094】
●フッ素系ポリマー(D−1)
住友スリーエム(株)製、ダイナマーFX−9613(フッ素系ポリマー含量90%)、商標
●帯電防止剤(E−1)
花王(株)製、エレクトロストリッパーTS−6B、商標
●ポリオレフィン樹脂(F−1)
MFR(ASTM D 1238−65T、230℃、2.16kg荷重)13g/10分、密度0.910g/cm3のポリプロピレン樹脂
【0095】
実施例1
直鎖状低密度ポリエチレン(密度=0.920g/cm3、ASTM D 1238、190℃、2.16kg荷重で測定されるMFR=2.1g/10分、エチレン含量=97.0モル%、4−メチル−1−ペンテン含量=3.0モル%)30重量部と、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体ゴム(エチレン含量=77モル%、ムーニー粘度ML1+4(100℃)=145、ヨウ素価=12)70重量部とを、ヘンシェルミキサーにより混合した。次に、L/D=30、スクリュー径50mmの二軸押出機を用いて、窒素雰囲気中、220℃で動的に熱処理して押し出し、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A−1)のペレットを製造した。また、このペレットから物性測定用のサンプルを作成し、硬度(JIS A)、圧縮永久歪(CS)、引張強度、永久伸びの測定を行った。結果を表1に示す。
【0096】
一方、ASTM D 1238−65T、230℃、2.16kg荷重で測定されるMFRが13g/10分、密度が0.910g/cm3のポリプロピレン40重量部と、エチレン含有量70モル%、ヨウ素価12、ムーニー粘度ML1+4(100℃)120のエチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム60重量部とを、バンバリーミキサーを用いて、窒素雰囲気中、180℃で5分間混練した後、この混練物をロールに通してシート状にし、これをシートカッターで裁断して角ペレットを製造した。次いで、この角ペレットと、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン0.2重量部と、ジビニルベンゼン0.2重量部とをヘンシェルミキサーで攪拌混合した。次いで、この混合物を、L/D=40、スクリュー径50mmの2軸押出機を用いて、窒素雰囲気中、220℃で押し出してオレフィン系熱可塑性エラストマー(B−1)を得た。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー(B−1)のゲル含量を前記方法に従って式(3)により求めたところ78重量%であった。
次にオレフィン系熱可塑性エラストマー(B−1)100重量部と、オルガノポリシロキサン(C−1)2重量部とを2軸押出機で混練してオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X−1)のペレットを得た。
【0097】
前記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A−1)を基材層、上記にて得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X−1)を表皮層として、230℃の温度で共押出成形することにより、図2に示すガラスランチャンネルを製造した。得られたガラスランチャンネルの表皮層の厚みは、平均30μmであった。
【0098】
得られたガラスランチャンネルを試験窓枠に装着し、厚さ3.2mmの窓ガラスを嵌装した後、窓ガラスを上下に摺動を繰り返す耐久試験を行った。その結果、このガラスランチャンネルは50,000回の窓ガラス上下繰返試験後も、へたり、摩耗がなくガラスランチャンネルとしての機能を維持していた。
【0099】
実施例2
実施例1で得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー(B−1)100重量部と、オルガノポリシロキサン(C−1)2重量部と、オルガノポリシロキサン(C−2)14重量部とを2軸押出機で混練し、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X−2)を得た。
実施例1で得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー(A−1)を基材層、上記オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X−2)を表皮層として、実施例1と同じガラスランチャンネルを作製し、耐久試験を行った。その結果、このガラスランチャンネルは50,000回の繰返試験にも耐え、ガラスランチャンネルとしての機能を維持していた。
【0100】
実施例3
実施例1で用いた直鎖状低密度ポリエチレン30重量部と、実施例1で用いたエチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体ゴム70重量部と、鉱物油系軟化剤(パラフィン系オイル;出光興産(株)製、PW−380、商標)40重量部とを用いて、実施例1と同じ方法によりオレフィン系熱可塑性エラストマー(A−2)を得た。
上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A−2)を基材層、実施例2で得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X−2)を表皮層として、実施例1と同じガラスランチャンネルを作製し、耐久試験を行った。その結果、このガラスランチャンネルは50,000回の繰返試験にも耐え、ガラスランチャンネルとしての機能を維持していた。
【0101】
実施例4
実施例1で用いた直鎖状低密度ポリエチレン15重量部と、実施例1で用いたエチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体ゴム85重量部と、プロピレン単独重合体(ASTM D 1238、230℃、2.16kg荷重により測定されるMFR=1.5g/10分)20重量部とを用いて、実施例1と同じ方法によりオレフィン系熱可塑性エラストマー(A−3)を得た。
上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A−3)を基材層、実施例2で得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X−2)を表皮層として、実施例1と同じガラスランチャンネルを作製し、耐久試験を行った。その結果、このガラスランチャンネルは50,000回の繰返試験にも耐え、ガラスランチャンネルとしての機能を維持していた。
【0102】
実施例5
実施例1で用いた直鎖状低密度ポリエチレン30重量部と、実施例1で用いたエチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体ゴム100重量部に伸展油(パラフィン系オイル;出光興産(株)製、PW−380、商標)40重量部を配合した油展エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体ゴム110重量部とを用いて、実施例1と同じ方法によりオレフィン系熱可塑性エラストマー(A−4)を得た。
上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A−4)を基材層、実施例2で得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X−2)を表皮層として、実施例1と同じガラスランチャンネルを作製し、耐久試験を行った。その結果、このガラスランチャンネルは50,000回の繰返試験にも耐え、ガラスランチャンネルとしての機能を維持していた。
【0103】
実施例6
実施例1で得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー(B−1)100重量部と、オルガノポリシロキサン(C−1)2重量部と、オルガノポリシロキサン(C−2)14重量部と、ポリオレフィン樹脂(F−1)30重量部とを2軸押出機で混練し、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X−3)を得た。
実施例1で得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー(A−1)を基材層、上記オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X−3)を表皮層として、実施例1と同じガラスランチャンネルを作製し、耐久試験を行った。その結果、このガラスランチャンネルは50,000回の繰返試験にも耐え、ガラスランチャンネルとしての機能を維持していた。
【0104】
実施例7
実施例1で得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー(B−1)100重量部と、フッ素系ポリマー(D−1)3重量部とを2軸押出機で混練し、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X−4)を得た。
実施例1で得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー(A−1)を基材層、上記オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X−4)を表皮層として、実施例1と同じガラスランチャンネルを作製し、耐久試験を行った。その結果、このガラスランチャンネルは50,000回の繰返試験にも耐え、ガラスランチャンネルとしての機能を維持していた。
【0105】
実施例8
実施例1で得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー(B−1)100重量部と、オルガノポリシロキサン(C−1)2重量部と、オルガノポリシロキサン(C−2)14重量部と、フッ素系ポリマー(D−1)3重量部とを2軸押出機で混練し、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X−5)を得た。
実施例1で得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー(A−1)を基材層、上記オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X−5)を表皮層として、実施例1と同じガラスランチャンネルを作製し、耐久試験を行った。その結果、このガラスランチャンネルは50,000回の繰返試験にも耐え、ガラスランチャンネルとしての機能を維持していた。
【0106】
実施例9
実施例1で得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー(B−1)100重量部と、帯電防止剤(E−1)3重量部を2軸押出機で混練し、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X−6)を得た。
実施例1で得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー(A−1)を基材層、上記オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X−6)を表皮層として、実施例1と同じガラスランチャンネルを作製し、耐久試験を行った。その結果、このガラスランチャンネルは50,000回の繰返試験にも耐え、ガラスランチャンネルとしての機能を維持していた。
【0107】
比較例1
従来品のガラスランチャンネル(軟質塩化ビニル樹脂層にナイロンフィルムを接着した積層構造)を用いて、実施例1と同じ耐久試験を行った。その結果、25,000回で窓ガラスとの接触面において破壊を生じ、窓ガラスとの摩擦抵抗が著しく増大して使用に耐えなくなった。
【0108】
前記のオレフィン系熱可塑性エラストマー(A−1)、(A−2)、(A−3)および(A−4)の製造における動的熱処理の条件、およびこれらのオレフィン系熱可塑性エラストマーの特性を表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
表1の注
*1 PE:直鎖状低密度ポリエチレン
*2 EPDM:エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体ゴム
*3 伸展油配合EPDM:エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共
重合体ゴム100重量部に伸展油としてパラフィン系オイル(出光興産(株)製、PW−380、商標)40重量部を配合した油展エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体ゴム
*4 PP:プロピレン単独重合体
*5 パラフィン系オイル:鉱物油系軟化剤(出光興産(株)製、PW−380、商標)
*6 T:二軸押出機のダイス出口での樹脂温度(℃)
*7 P:二軸押出機のスクリューの直径(mm)
*8 Q:二軸押出機内で受ける最高剪断速度(sec-1)
*9 R:二軸押出機の押出量(kg/h)
*10 S:1秒間でのスクリュー回転数(rps)
*11 U:バレル内壁とスクリューのニーディングセグメント(混練セグメント)間のクリアランス(間隙)の最も狭い部分の距離(mm)
*12 式(2):[(T−130)/100]+2.2logP+logQ−logR
*13 式(1):Y−0.43X
*14 JIS A硬度:JIS K 6301、スプリング式硬さ試験機A型による瞬間値
*15 圧縮永久歪:JIS K 6301、厚さ12.7mm、直径29.0mmの円柱形サンプルを用いて、25%圧縮、70℃×22時間後の残留歪
*16 引張強度:JIS K 6301、JIS3号ダンベルを用いて引張速度200mm/分にて引張試験を行った引張強度
*17 永久伸び:JIS K 6301、JIS3号ダンベルを100%伸張して10分間保持し、荷重除去10分後の残留歪
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー積層体の垂直断面図である。
【図2】図2は本発明のガラスランチャンネルの一例の垂直断面図である。
【図3】図3は本発明のガラスランチャンネルを窓枠へ取り付けた自動車ドアの斜視図である。
【図4】図4は図3のA−A断面図であり、(a)は窓ガラス13が閉められる前、(b)は窓ガラス13が閉められた後の状態を示している。
【符号の説明】
1 積層体
2 基材層
3 表皮層
5 ガラスランチャンネル
6 本体
7 水切り部
8 係合部
9 窓ガラス接触部
11 自動車ドア
12 窓枠
13 窓ガラス
Claims (5)
- ポリエチレン樹脂(a−1)5〜60重量部と、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が90〜250、エチレン含量が70〜95モル%のエチレン・α−オレフィン系共重合体(a−2)40〜95重量部〔ここで(a−1)および(a−2)の合計量は100重量部である。〕とを、架橋剤の非存在下に動的に熱処理して得られるオレフィン系熱可塑性エラストマーであって、下記〔1〕、〔2〕および〔3〕
〔1〕 10≦Y−0.43X≦26 …(1)
(式(1)中、XはJIS K 6301に準拠して測定したオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)のJIS A硬度(単位はなし)、YはJIS K 6301に準拠し、70℃×22時間の条件で測定したオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)の圧縮永久歪(単位は%)である。)
〔2〕 JIS K 6301に準拠して測定した引張強度が5〜30MPa
〔3〕 IS K 6301に準拠して測定した永久伸びが18%以下
の特性を有するオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)からなる基材層と、
オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)100重量部に対して、オルガノポリシロキサン(C)0.5〜20重量部、フッ素系ポリマー(D)0.5〜10重量部および帯電防止剤(E)0.5〜10重量部からなる群から選ばれる少なくとも1種を上記割合で含むオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X)からなる表皮層と
が積層されていることを特徴とするオレフィン系熱可塑性エラストマー積層体。 - 表皮層が、オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)100重量部に対して、オルガノポリシロキサン(C)0.5〜20重量部、フッ素系ポリマー(D)0.5〜10重量部および帯電防止剤(E)0.5〜10重量部からなる群から選ばれる少なくとも1種を上記割合で含み、さらにポリオレフィン樹脂(F)を5〜150重量部の割合で含むオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(X)からなる表皮層である請求項1記載の積層体。
- オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)が、ポリエチレン樹脂(a−1)とエチレン・α−オレフィン系共重合体(a−2)との合計100重量部に対して、ポリプロピレン樹脂(a−3)を30重量部以下の割合で含む混合物を、動的に熱処理して得られるオレフィン系熱可塑性エラストマーである請求項1または2記載の積層体。
- オレフィン系熱可塑性エラストマー(B)が、結晶性ポリオレフィン樹脂(b−1)とゴム(b−2)とを含む混合物を、動的に熱処理して得られるオレフィン系熱可塑性エラストマーである請求項1ないし3のいずれかに記載の積層体。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載の積層体からなる自動車用ガラスランチャンネル。
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