JP3990116B2 - 誘導加熱調理器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被加熱物の温度を検出する機能を有する誘導加熱調理器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図11は、例えば特開平11―225881号公報に開示されている従来の赤外線センサを用いた加熱調理器のブロック構成図である。
図において1は例えば電磁誘導方式の加熱調理器、2は鍋、3は加熱調理器1全体の制御や温度算出の演算などを行う演算制御処理部、4は演算制御処理部3からの指示により鍋2の加熱制御を行う加熱制御部、5は鍋2の底に光を照射するための発光素子、6は鍋2の底から反射してきた光を受光する受光センサ、7は発光素子5の発光や消灯を制御する発光制御部、8は受光センサ6の出力を検知するための反射検知部、9は鍋2の底から放射される赤外線量を検知する赤外線センサ、10は赤外線センサ9からの出力を検出するための放射検知部、11は一部もしくは全てが赤外線を透過する材質によって構成された加熱調理器1の天板である。
【0003】
また、図12はある波長の赤外線に対する反射率と放射率の関係を示したものであり、121はこの関係を示す特性曲線である。図より反射率Rが高いほど放射率eは低く、反射率Rが低いほど放射率eは高く、両者は略反比例の関係を示していることが分かる。
【0004】
また、図13は放射率eをパラメータにとり、赤外線センサ9で受光される赤外線量Wと、これをもとに放射検知部10及び演算制御処理部3で算出される被加熱物の換算温度Tとの関係を示したものである。
図において131、132、133はそれぞれ放射率eが1.0、0.5、0.1の場合の赤外線量Wと換算温度Tの関係を示した特性曲線である。
放射率が低いほど、同じ温度における赤外線の放射される割合は小さいので、図に示すように同じ赤外線量W0が検出された場合には、被加熱物の温度は、放射率が低いほど高くなる(T0<T1<T2)ことが分かる。
【0005】
次に図11、12、13をもとに動作を説明する。
図11において、まず演算制御処理部3は発光素子5を点灯させるように発光制御部7に指示する。これにより発光素子5から発した光は鍋2の底を照射し、底で反射された光は受光センサ6によって受光される。この受光センサ6の出力は反射検知部8で電圧量に変換され、演算制御処理部3に入力されて、反射率が算出される。
ここで演算制御処理部3には、図12に示すような反射率と放射率の関係を示す特性曲線121に対応した計算式、もしくはデータテーブルが記憶されている。この計算式、もしくはデータテーブルに基づいて反射率から放射率が算出される。
【0006】
一方、鍋2の底から放射される赤外線は赤外線センサ9によって受光され、放射検知部10によって電圧量に変換され、演算制御処理部3に入力される。
演算制御処理部3には、上述の特性曲線121の他に、図13に示すような赤外線量と放射率eとの関係から温度を換算する計算式、もしくは換算データのテーブルが記憶されている。この計算式、もしくは換算データテーブルに基づいて鍋2の底の温度が算出される。
【0007】
このように従来の赤外線センサ9を用いた加熱調理器1は、被加熱物の放射率eを求めて、被加熱物の温度を算出するように構成されているので、被加熱物の温度を反射率の影響を受けることなく検出でき、また、被加熱物の温度変化に対してほとんど時間的遅れを生じることなく検出することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の加熱調理器1の構成では、被加熱物の放射率を取得するために、被加熱物に光を照射する発光素子と、被加熱物からの反射光を受光する受光素子が必要であり、コストが高くなるという課題があった。
また、赤外線センサ9や発光素子、受光素子の光路が汚れて遮光されると、被加熱物から放射される赤外線や反射率の検出が不十分となり、正確な温度を検出できないという課題もあった。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、被加熱物の放射率を低コストで得ることができる誘導加熱調理器を得ることを目的とする。
また、赤外線センサ9の受光部の汚れを検出し、報知できる誘導加熱調理器を得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る誘導加熱調理器は、鍋が載置される天板と、この天板下方に配置され、鍋を誘導加熱する誘導加熱コイルと、天板の裏面に熱的に接触するように設けられた感熱素子と、鍋の底面に対向するように天板下方に設けられ、鍋から放射される赤外線を検出する赤外線センサと、赤外線センサにより検出された赤外線量と感熱素子により検出された温度により、鍋から放射される赤外線の放射率を推定する推定手段と、該推定手段により推定された鍋の放射率と赤外線センサにより検出された赤外線量から鍋の放射温度を算出し、該推定手段により鍋の放射率が推定されない場合は感熱素子により検出された温度を鍋の放射温度とする放射温度算出手段とを備えるようにしたものである。
【0011】
また、推定手段による鍋に対する放射率の推定は、感熱素子により検出された温度と赤外線センサにより検出された赤外線量の変動が、所定時間以上続いて所定範囲内に収まっている場合に実行されるようにしたものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器のブロック構成図である。従来例と同一もしくは同一相当部分には同じ符号を付けて表し、説明を省略する。
図において12は天板11の裏面中央部に熱的に接触するように設けられたサーミスタなどの感熱素子、13は感熱素子12の出力を検出するための感熱検知部、14は誘導加熱調理器1の加熱/停止や出力調整、鍋温度推定等の操作入力を行う操作部、15は加熱/停止状態や鍋温度等の表示を行う表示部、16は放射検知部10を介して赤外線センサ9で検出された赤外線量と感熱検知部13を介して感熱素子12で検知された天板11の裏面温度から、天板11上に載置された被加熱物である鍋2の温度を算出したり、誘導加熱調理器1全体の制御を行うための温度検出制御部、17は加熱コイルである。
【0017】
また、図2は温度検出制御部16の構成を示すブロック構成図である。
図において16aはCPU等で構成される制御部、16bは制御部16aが実行する制御プログラムデータ、16cは制御部16aに周期的に割り込み信号を出力するタイマ部、16dは時間をカウントするためのタイマカウンタ、16eは感熱検知部13から取り込んだ感熱データから算出した温度データの現在値、最大値、最小値を格納する感熱素子検出温度データ記憶部である。
同様に16fは放射検知部10から取り込んだ赤外線量データの現在値、最大値、最小値を格納する赤外線量データ記憶部である。
また16g、16hはそれぞれ被加熱物放射率データ記憶部と放射温度データ記憶部である。16iは感熱データと温度との対応関係を記憶する感熱素子温度データテーブル、16jは各放射率における赤外線量データと温度との対応関係を記憶する赤外線量・温度データテーブル、16kは被加熱物の検出温度を格納する検出温度記憶部である。
【0018】
また、図3は鍋2の温度を算出するための検出温度演算処理のフローチャート、図4は感熱素子の検出温度と被加熱物の放射する赤外線量から被加熱物の放射率を推定する方法を説明する説明図である。
【0019】
次に図1、2、3、4をもとに動作について説明する。
図1において、赤外線センサ9は鍋2の側面から放射される赤外線を検知するように配されている。
温度検出制御部16は、操作部14から加熱指示が入力されると表示部15に加熱状態になったことを表示するとともに、加熱制御部4を介して加熱コイル17を駆動し、この時の加熱コイル17の電流量を電流データとして取り込む。また、放射検知部10を介して赤外線センサ9により赤外線量を検出し、感熱検知部13を介して感熱素子12により検出した感熱データから天板11裏面の温度を検出する。
【0020】
さらに温度検出制御部16は、これら検出された赤外線量と天板11の裏面温度から鍋2の温度を算出する検出温度演算処理を行い、鍋2の温度が操作部14で推定した温度になるように加熱制御部4へ加熱指示データを出力する。
これら一連の制御動作は、温度検出制御部16の演算制御部16aがタイマ部16cから周期的に発生する割り込み信号により、制御プログラムデータ16bに基づき、操作部14、表示部15、感熱検知部13、放射検知部10、加熱制御部4の間で適宜データを交換しながら実行する。
【0021】
ここで鍋2の温度を算出する検出温度演算処理について、図2を参照にしながら図3のフローチャートを説明する。
演算制御部16aは操作部14から加熱指示が入力されて加熱を開始する際、加熱制御部4に小出力の加熱指示データを出力するとともに、加熱制御部4より検出した加熱コイル17の電流データを得て、天板11上に鍋等の被加熱物の有無を判定し、被加熱物が無い場合にはステップ14に移行する(ステップ1)。被加熱物を検出した場合には、感熱検知部13から感熱データを取り込み、感熱素子温度データテーブル16iを参照して感熱素子温度データに変換し、感熱素子検出温度データ記憶部16eの現在値に格納する(ステップ2)。
【0022】
次いで、被加熱物の放射率データが推定済みか否か判定し、推定済みであればステップ11に移行する(ステップ3)。
一方、放射率データが推定済みでない場合には、感熱素子検出温度データ記憶部16eの最大値、最小値データをステップ2で求めた現在値と比較して更新する(ステップ4)。
次いで、感熱素子温度データ記憶部16eの最大値と最小値の差を求め、その値を所定値と比較して感熱素子12の検出温度の変動が大きいか否か判定し、大きい場合にはステップ10に移行する(ステップ5)。
検出温度の変動が小さいと判定した場合には、放射検知部10から赤外線量データを取り込み、赤外線量データ記憶部16fに現在値を格納するとともに、その最大値および最小値データを更新する(ステップ6)。
【0023】
次いで、赤外線量データ記憶部の最大値と最小値の差を求め、その値を所定値と比較して赤外線量の変動が大きいか否かを判定し、大きい場合にはステップ10に移行する(ステップ7)。
赤外線量の変動が小さいと判定した場合には、タイマカウンタ16dの値をインクリメントして所定値Nと比較して(ステップ8)、タイマカウンタ16dの値がNに一致した場合には、所定時間、感熱素子12により検出した天板11裏面の温度と被加熱物の放射する赤外線量が安定していたと判断し、被加熱物の温度を感熱検出温度として赤外線量・温度データテーブル16jを参照して被加熱物の放射率を推定する。
【0024】
ここで図4をもとに感熱素子の検出温度と被加熱物の放射する赤外線量から被加熱物の放射率を推定する方法について説明する。
図において感熱素子検出温度の現在値がTaで、放射検知部10で検出した赤外線量の現在値がWaの場合、赤外線量・温度データテーブルでそれぞれ赤外線量と温度のデータがWa、Taに近いデータを探し、近いデータが存在すれば最も近いデータに対応する放射率eaを被加熱物の放射率として放射率データ記憶部に格納し、近いデータが存在しなければ放射率の推定を行わない(ステップ9)。
【0025】
この時、ステップ5で感熱素子12検出温度の変動が大きかった場合や、ステップ7で赤外線量データの変動が大きかった場合には、タイマカウンタ、感熱素子検出温度データ記憶部16eの最小値と最大値、赤外線データ記憶部の最小値と最大値を初期化する(ステップ10)。
次いで、放射率データが推定されているか判定し(ステップ11)、推定されている場合には放射率データと赤外線量データの現在値から赤外線量・温度データテーブル16jを参照して被加熱物の放射温度を求め、放射温度記憶部と検出温度記憶部に格納する(ステップ12)。放射率データが推定されていなかった場合には、感熱素子検出温度データの現在値を検出温度記憶部に格納する(ステップ13)。
また、ステップ1で被加熱物が検出されなかった場合は、タイマカウンタ16d、放射率データ記憶部16g、感熱素子検出温度記憶部16e、赤外線量データ記憶部16f、検出温度記憶部16kの内容をクリアして処理を終了する(ステップ14)。
【0026】
なお、上述のステップ9における放射率データの推定は、赤外線量・温度データテーブル16jから検出した赤外線量と感熱素子検出温度の組み合わせに一番近いデータの組み合わせを抽出して、そのデータの放射率を被加熱物の放射率としたが、複数の近傍データを抽出し、その距離から加重平均を取るなどして放射率を求めるようにしてもよい。
【0027】
また、本実施の形態の説明では、鍋2の側面から放射される赤外線を検知するように赤外線センサ7を配置したが、これに限るものではない。
例えば図5に示すように鍋2の底から放射される赤外線を、赤外線透過材を用いた天板11を介して検知するように構成してもよいし、これ以外の配置構成によって鍋2の表面から放射される赤外線を検知するようにしてもよい。
さらにまた、本実施の形態の説明では、感熱素子12が鍋2と天板11を介して、間接的に熱的接触を保つ場合について説明したが、直接的に熱的接触を保つようにしてもかまわない。
【0028】
以上のように、感熱素子12による天板11裏面の温度検出と、赤外線センサ9による被加熱物から放射された赤外線量の検出を同時に行い、被加熱物の放射率を推定し、この放射率と検出した赤外線量から被加熱物の温度を検出するように構成したので、発光素子や受光素子が不要となり、低コストで構成できる。
さらに、赤外線センサ9受光部の汚れ等により赤外線量が正常に検出できなくなり、放射率データが推定されない場合についても、感熱素子12で検出した天板11裏面の温度を被加熱物の検出温度とするようにしたので、安定した温度検出ができるようになる。
【0029】
実施形態2.
本実施の形態は、実施の形態1の構成において、赤外線センサ9の受光部の汚れを検知し、これを使用者に報知する手段に関するものである。
以下、図をもとに本実施の形態について説明する。
【0030】
図6は、本実施の形態に係る誘導加熱調理器1のブロック構成図である。
図において従来例、もしくは実施の形態1と同一あるいは同一相当部分には同じ符号を付し、説明を省略する。
16xは温度検出制御部16内に設けられ、赤外線センサ9受光部に異常を検出した場合に設定される放射温度不可フラグである。
15aは表示部15内に設けられ、受光状態に異常を検出した場合に点灯させられる赤外線センサ9受光部の状態確認要求のLEDである。14aは操作部14内に設けられ、入力があると放射温度不可フラグ16xをクリアして赤外線センサ9受光部状態確認要求のLED15aを消灯する赤外線センサ9異常リセット入力である。
【0031】
図7は赤外線センサ受光部の汚れをパラメータとしてある放射率eaにおける受光された赤外線量と被加熱物の温度との関係を示した特性図である。
図において71は赤外センサ9の受光部が汚れてない正常な場合の受光赤外線量と被加熱物の温度との関係を示す特性曲線であり、感熱素子12による検出温度Taと赤外線センサ9による検出赤外線量Waで被加熱物の放射率データeaが推定されたものである。
【0032】
また、72は赤外線センサ9受光部が油煙や噴きこぼれにより一部汚れた場合の受光赤外線量と被加熱物温度との関係を示す特性曲線、73は赤外線センサ9受光部がほぼ汚れに覆われてしまった場合の受光赤外線量と被加熱物の温度との関係を示す特性曲線である。
被加熱物の温度がTbになった場合に、赤外線センサ9受光部が正常な場合(特性曲線71の場合)には、検出赤外線量はWb、一部汚れている場合(特性曲線72の場合)には、検出赤外線量はWc、汚れが甚だしい場合(特性曲線73の場合)には、検出赤外線量はWaとなり、放射率データeaと赤外線量から換算される放射温度は、それぞれ、Tb、Tc、Taとなり、赤外線センサ9受光部の汚れがひどいほど、検出した放射温度の誤差が大きくなることが分かる。
【0033】
また、図8は赤外線センサ9受光部の汚れを検出する際の処理動作の一例を示すフローチャートである。
以下、図6、7を参照にしながら、図8のフローチャートに基づき(赤外線センサ9の受光部の汚れを検知し、これを使用者に報知する手段の)動作について説明する。
この処理は温度検出制御部16で周期的に実行されるものとし、被加熱物の放射率の推定は実施の形態1における図3のフローチャートと同様にして推定されるものとする。
【0034】
最初に、天板11上に鍋2等の被加熱物の有無を判定し、被加熱物が無い場合にはステップ84に移行する(ステップ81)。被加熱物を検出した場合には、感熱検知部13からの感熱データを取り込んで感熱素子12温度を検出し、放射検知部10から赤外線量データを取り込んで被加熱物放射率データから放射温度に換算する(ステップ82)。
次いで、検出した感熱素子12温度と放射温度の差を求め、所定値以上の差が生じているか否か判定する(ステップ83)。検出温度差が小さい場合にはタイマカウンタ16dをクリアし(ステップ84)、検出温度差が大きい場合にはタイマカウンタ16dをインクリメントし、検出温度差が大きい状態が所定時間以上継続しているか否か判定し(ステップ85)、続いていた場合には赤外線センサ9受光部が汚れたものと判断して放射温度不可フラグ16xをセットするとともに、赤外線センサ9受光部の確認要求LED15aの点灯信号を表示部15に出力する(ステップ86)。放射温度不可フラグ16xが設定されているか判定し(ステップ87)、設定されていない場合には放射温度を被加熱物の検出温度とし(ステップ88)、設定されていれば感熱素子12温度を被加熱物の検出温度とする(ステップ89)。
【0035】
以上のように、感熱素子12で検出した天板11裏面の温度と、赤外線センサ9で検出した赤外線量と被加熱物の放射率から算出した放射温度との差が続いて大きくなった場合には、赤外線センサ9が正常に検出できなくなったと判定して表示部を介して使用者に報知するため、赤外線センサ9受光部が汚れを確実に検出し、赤外線の検出を正常に保つことができる。また、赤外線センサ9受光部の汚れを検出した場合には感熱素子12による温度検出に切り替えるため、被加熱物の検出温度に大きな誤差が生じることはない。
【0036】
実施形態3.
本発明の実施の形態3は、赤外線センサ9受光部の汚れを検出するもう一つの手段を備える誘導加熱調理器1であり、そのブロック構成は実施の形態2で示した図6と同じである。
図9は鍋2の温度とその検出温度の時間的な変化の例を示す図である。
図において91は鍋2の温度の時間的な変化を示す特性曲線、92は赤外線センサ9の受光部が正常な場合に検出する放射温度検出値の時間的な変化を示す特性曲線であり、鍋2の温度の変動に対してほとんど時間遅れなく検出できる。93は天板11裏面に設けた感熱素子12による検出温度の時間的な変化を示す特性曲線であり、天板11の熱伝導等の時間的な遅れが生じている。94は赤外線センサ9受光部に汚れが付着した場合の放射温度検出値の時間的な変化を示す特性曲線であり、その付着物が鍋2からの輻射熱である赤外線で加熱され、その温度上昇を検出している。
【0037】
以下、赤外線センサ9受光部の汚れを検出処理の動作につき、図9を参照にしながら図10のフローチャートに基づいて説明する。
最初に、天板11上に鍋2等の被加熱物の有無を判定し(ステップ101)、被加熱物を検出した場合には、感熱検知部13からの感熱データを取り込んで感熱素子12温度を検出し、放射検知部10から赤外線量データを取り込んで被加熱物放射率データから放射温度に換算する(ステップ102)。
【0038】
次いで、検出した感熱素子12温度と放射温度の差を求め、感熱素子12温度の方が放射温度より所定値以上の高く検出しているか否か判定し(ステップ103)、高く検出している場合には放射温度検出値が上昇中か否か判定する(ステップ104)。上昇中であればタイマカウンタ16dをインクリメントして継続時間を判定し(ステップ105)、所定時間以上継続していた場合には放射温度検出値の方が感熱素子温度より遅れて鍋の温度上昇に追従しており、赤外線センサ9受光部に汚れが付着していると判断して放射温度不可フラグ16xをセットするとともに、赤外線センサ9受光部の確認要求LEDの点灯信号を表示部に出力する(ステップ106)。被加熱物が検出されない場合、感熱素子12温度の方が放射温度より高くなかった場合、あるいは放射温度検出値が下降中であった場合には継続時間を判定するためのタイマカウンタ16dをクリアする(ステップ107)。次いで、放射温度不可フラグ16xが設定されているか判定し(ステップ108)、設定されていない場合には放射温度を被加熱物の検出温度とし(ステップ109)、設定されていれば感熱素子12温度を被加熱物の検出温度とする(ステップ110)。
【0039】
以上のように、感熱素子12で検出した天板11裏面の温度と、赤外線センサ9で検出した赤外線量と被加熱物の放射率から算出した放射温度と変動速度を比較し、赤外線センサ9による温度検出が感熱素子12による温度検出より被加熱物の温度変化に対し応答が遅いことを検出し、赤外線センサ9が正常に検出できなくなったと判定して表示を行うため、赤外線センサ9受光部が汚れを確実に検出して、使用者に報知することができる。また、赤外線センサ9受光部の汚れを検出した場合には感熱素子12による温度検出に切り替えるため、被加熱物の検出温度に大きな誤差が生じることはない。
【0040】
なお、上記実施の形態1〜3では、被加熱物の感熱素子12温度と放射温度の何れかを、赤外線センサ12受光部の汚れ状態に応じて被加熱物の検出温度としたが、感熱素子12検出温度と放射温度の高い方の温度を被加熱物の検出温度としてもよい。
【0041】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、鍋から放射される赤外線量を赤外線センサで検出し、天板11裏面の温度を感熱素子12で検出し、鍋の放射率が推定されない場合は感熱素子12により検出された温度を鍋の放射温度とすることにより、鍋の放射率を推定し、時間遅れなく温度検出することを可能にするとともに、赤外線センサ9受光部が汚れた場合にも誤差の小さい誘導加熱調理器1を得ることができる。
【0042】
また、鍋の放射率の推定を検出した赤外線量および感熱素子12温度が安定した時点で行うようにしたので、精度の高い放射温度を得ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器1のブロック構成図である。
【図2】 本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器1の温度検出制御部の構成例を示すブロック構成図である。
【図3】 本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器1の被加熱物の温度を検出する検出温度演算処理のフローチャートである。
【図4】 放射率をパラメータにとって赤外線量と換算温度との関係を示した特性図である。
【図5】 本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器1の赤外線センサもう一つの配置例を示したブロック構成図である。
【図6】 本発明の実施の形態2に係る誘導加熱調理器1のブロック構成図である。
【図7】 赤外線センサ受光部の汚れ状態毎に赤外線量と換算温度との関係を示した特性図である。
【図8】 本発明の実施の形態2に係る誘導加熱調理器1における赤外線センサの受光状態を判定する赤外線センサ汚れ検出処理1のフローチャートである。
【図9】 被加熱物の温度変化と感熱素子検出温度、放射温度の変化を示した特性図である。
【図10】 本発明の実施の形態3に係る誘導加熱調理器1において赤外線センサの受光状態を判定する赤外線センサ汚れ検出処理のもう一つのフローチャートである。
【図11】 従来の加熱調理器の温度検出の構成を示すブロック図である。
【図12】 放射率と反射率の関係を示した特性図である。
【図13】 放射率をパラメータにとって赤外線量と換算温度との関係を示した特性図である。
【符号の説明】
1 加熱調理器、2 鍋、3 演算制御処理部、4 加熱制御部、5 発光素子、6 受光センサ、7 発光制御部、8 反射検知部、9 赤外線センサ、10 放射検知部、11 天板、12 感熱素子、13 感熱検知部、14 操作部、14a 異常リセット入力、15 表示部、15a 状態確認要求のLED、16 温度検出制御部、16a 演算制御部、16b 制御プログラムデータ、16c タイマ部、16d タイマカウンタ、16e 感熱素子検出温度データ記憶部、16f 赤外線データ記憶部、16g放射率データ記憶部、16h 放射温度データ記憶部、16i 感熱素子温度データテーブル、16j 赤外線量・温度データテーブル、16k 検出温度記憶部、16x 放射温度不可フラグ、17 加熱コイル
Claims (2)
- 鍋が載置される天板と、この天板下方に配置され、前記鍋を誘導加熱する誘導加熱コイルと、前記天板の裏面に熱的に接触するように設けられた感熱素子と、前記鍋の底面に対向するように前記天板下方に設けられ、前記鍋から放射される赤外線を検出する赤外線センサと、前記赤外線センサにより検出された赤外線量と前記感熱素子により検出された温度により、前記鍋から放射される赤外線の放射率を推定する推定手段と、該推定手段により推定された前記鍋の放射率と前記赤外線センサにより検出された赤外線量から前記鍋の放射温度を算出し、該推定手段により前記鍋の放射率が推定されない場合は前記感熱素子により検出された温度を前記鍋の放射温度とする放射温度算出手段とを備えたことを特徴とする誘導加熱調理器。
- 前記推定手段による前記鍋に対する放射率の推定は、前記感熱素子により検出された温度と前記赤外線センサにより検出された赤外線量の変動が、所定時間以上続いて所定範囲内に収まっている場合に実行されることを特徴とする請求項1記載の誘導加熱調理器。
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