JP3988009B2 - ガラス板の曲げ成形方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、船舶、鉄道、航空機などの輸送機器あるいは建築用その他各種用途のガラス板の曲げ成形方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、加熱炉において軟化点近くまで加熱したガラス板を、湾曲した複数のローラからなるローラコンベアで搬送することによって、ガラス板を曲げ成形する方法が知られている(例えば米国特許4,123,246号明細書)。この方法は、軟化したガラス板はその自重により垂れ下がるので、ガラス板はローラの曲率に倣うように曲げられる。
【0003】
また、加熱炉において軟化点近くまで加熱したガラス板を、その搬送路が湾曲するように搬送方向に傾斜配置した複数のローラにより搬送することによって、ガラス板を曲げ成形する方法が知られている(例えば米国特許4,820,327号明細書)。この方法によれば、軟化したガラス板はその自重により垂れ下がるので、ガラス板は搬送路の曲率に倣うように曲げられる。
【0004】
なお、本明細書において、「搬送方向に直交する方向に曲げ成形される」とは、曲げ成形されたガラス板の形状が、搬送方向軸のまわりに湾曲した形状になることを意味する。いいかえると、曲げ成形されたガラス板は、搬送方向軸に垂直な断面が湾曲形状となる。「搬送方向に(沿って)曲げ成形される」も同様に、曲げ成形されたガラス板の形状が、搬送方向に直交する軸のまわりに湾曲した形状になることを意味する。いいかえると、曲げ成形されたガラス板は、搬送方向に直交する軸に垂直な断面が湾曲形状となる。以下に示す複数のローラで形成される湾曲面の形状についても、「搬送方向に(沿って)曲がった」「搬送方向に湾曲した」等の説明は「搬送方向に(沿って)曲げ成形される」の意味と同旨である。搬送方向に直交する方向に関する湾曲面の説明も、「搬送方向に直交する方向に曲げ成形される」の意味と同旨である。
【0005】
本明細書における「・・・方向に直交」は、水平面上であって・・・方向に垂直な方向を意味する。本明細書における「上」、「下」は、水平面に対しそれぞれ「上」、「下」を意味する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年の自動車産業では少量多品種の要求が高まっているため、その型式毎にそれぞれ対応する曲率のガラス板が必要になる。このために、上記米国特許4,123,246号明細書に記載された方法では、型式毎にその型式に対応した曲率のローラに交換する必要があった。この交換には時間がかかるものであり、しかも型式毎に求められる曲率のローラを用意する必要があった。
【0007】
また、この場合ガラス板は曲げられる方向に直行する方向に搬送される。この場合、例えば自動車用サイドガラス板の曲げ成形においては自動車への取付け状態における側辺方向がローラの延在方向となる。その取付け状態は、ローラのガラス板への接触によるローラ歪みが目立ちやすい状態である。
【0008】
米国特許4,820,327号明細書に記載された方法では、型式毎にその型式に対応した曲率の搬送路になるようにローラの配置を変更する必要があった。この変更には時間がかかるものであった。
【0009】
また、’327の方法では、ガラス板の搬送方向を鉛直方向に変える。そのため、’327の方法に用いる設備全体が大きくなる。しかも重力に逆らってガラス板を搬送するため、ガラス板を高速で搬送することが困難であり、ローラ上でのガラス板の滑りを防止する構造を特別に設けなければならない。さらに、曲げ成形、風冷強化された後のガラス板は、鉛直方向から水平方向へと搬送方向を変えなければならない。この搬送方向を変える機構は複雑であり、ガラス板への傷の発生が懸念される。
【0010】
本発明の目的は、上記従来技術が有していた欠点を解消することにあり、従来知られていなかったガラス板の曲げ成形方法及び装置を新規に提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は前述の課題に鑑みてなされたものであり、ガラス板を加熱炉で成形温度まで加熱し、該加熱されたガラス板をローラコンベアの複数のローラで形成される搬送面に沿って搬送しながらガラス板の自重によってガラス板を所定の曲率に曲げ成形するガラス板の曲げ成形方法において、ガラス板が搬送されている位置の複数のローラをガラス板の搬送にともない上下動させて、該位置の複数のローラにより前記搬送面の少なくとも一部にガラス板の搬送方向に湾曲した所望の湾曲面を形成するとともに、前記各ローラをガラス板の搬送にともない、順次上下動させて前記湾曲面をガラス板の搬送とともにガラス板の搬送方向に進行させ、ガラス板を搬送しながらガラス板を前記湾曲面に沿うように曲げ成形することを特徴とするガラス板の曲げ成形方法を提供するものである。
【0014】
さらにまた、本発明は、ガラス板を曲げ成形温度まで加熱する加熱炉と、該加熱炉の下流側に設けられたガラス板を所定の曲率に曲げ成形する成形手段とを含むガラス板の曲げ成形装置において、前記成形手段は、前記ガラス板を搬送するための搬送面を形成する複数のローラから成るローラコンベアと、前記複数のローラを上下移動させる上下方向駆動手段と、ガラス板が搬送されている位置の複数のローラにより、前記搬送面の少なくとも一部にガラス板の搬送方向に湾曲した所望の湾曲面が形成されるとともに、ガラス板の搬送にともない、順次複数のローラを上下させて前記湾曲面がガラス板の搬送方向に進行するように前記駆動手段を制御する制御手段と、 から成ることを特徴とするガラス板の曲げ成形装置を提供するものである。
【0015】
具体的には、各ローラ自身は、ガラス板の搬送にともない鉛直方向に上下動する。この上下動により、ガラス板が搬送されている位置の複数のローラによって湾曲面を形成し、この湾曲面がガラス板の搬送方向に進行する。言いかえると、上記の湾曲面が波面に、各ローラが波の振動子に、各ローラの上下動ストローク長が振幅に、それぞれ相当する。そして、各振動子の位相を搬送方向下流に向かうにしたがって順次変えるように、各ローラの上下動に位相差を与えることによって波を伝播させ、湾曲面がガラス板の搬送方向に進行する。
【0016】
各ローラの上下動は、鉛直方向における初期位置から下降−上昇を経て初期位置に戻る動きを、1周期の動きとすることが好ましい。この場合、各ローラは、(a;初期状態)1単位のガラス板の搬送方向前辺が搬送されてきた時を下降の始まりとし、(b)1単位のガラス板が通過している間を下降−上昇の1周期の動きとし、(c;終状態)1単位のガラス板の搬送方向後辺が搬送されてきた時にもとの位置に戻る。こうして、1単位のガラス板があるローラ上を通過する間に、そのローラは初期状態から終状態までの1周期の上下動を行う。複数のガラス板を連続的に曲げ成形する際には、1単位のガラス板が順次搬送されてくるので、次単位以降のガラス板に対し、各ローラを(a)、(b)、(c)の順に繰り返し上下動させる。
【0017】
こうした各ローラの上下動により、1単位のガラス板は次のように搬送される。ガラス板の搬送方向前辺及び搬送方向後辺があるローラ上に位置する時、そのローラは初期状態(終状態)にある。そのため、ガラス板の搬送方向前辺及び搬送方向後辺の鉛直方向位置は、各ローラの初期状態の位置に保たれる。初期状態にある各ローラで形成される仮想の面を、「搬送レベル」と呼ぶこととする。一方、ガラス板の搬送方向前辺と搬送方向後辺との間の部分であるガラス板の中央部分が位置する各ローラは、1周期の上下動のうちの中間状態にある。そのため、ガラス板の中央部分は搬送レベルよりも下方に位置する(中央部分が下方に垂れ下がる)。したがって、1単位のガラス板は、搬送方向前辺と搬送方向後辺とが搬送レベルに保たれながら、中央部分が搬送レベルよりも下方に位置するように、搬送される。
【0018】
なお、「1単位のガラス板」とは、通常は1枚のガラス板を意味する。必要に応じて2枚以上のガラス板を積層した状態で搬送すると、2枚以上のガラス板を同時に曲げ成形できる。このように、「1単位のガラス板」は2枚以上のガラス板が積層された状態で搬送される場合を含む。そして、本発明のガラス板の曲げ成形方法及び装置は、1単位のガラス板の曲げ成形を順次連続的に行い、複数単位のガラス板を連続的に曲げ成形できる。1単位のガラス板が1枚のガラス板であるかガラス板が複数枚積層された状態にあるかは、本発明のガラス板の曲げ成形方法及び装置の基本的な動作に大きな影響を与えない。そこで、本明細書では、「1単位」なる語を省略することができる。
【0019】
本発明によれば、複数のローラをガラス板の搬送位置に応じて上下移動させることにより、複数のローラで形成される搬送面を湾曲させ、この湾曲した搬送面に沿ってガラス板を自重により所定の曲率に曲げ成形する。これにより、型式に応じた曲率の複数のローラを使用することなくガラス板を曲げ成形することができるので、従来必要であったローラの交換作業を省くことができる。また、本発明は、ローラの上下移動制御データを変更するだけで別の型式のガラス板を成形することができるので、ジョブチェンジ時間を実質的に無くすことができる。
【0020】
なお、各ローラにより形成される湾曲面は次の意味を持つ。まず、各ローラの中心軸線を仮想する。各中心軸線は搬送方向に直交する方向に延びていることから、各中心軸線を滑らかに結ぶと仮想の湾曲面ができる。この仮想湾曲面が各ローラにより形成される湾曲面に対応する。実際には、各ローラは有限の太さを有するため、各ローラで形成される湾曲面は仮想湾曲面と若干異なる。すなわち、各ローラで形成される湾曲面の曲率半径は仮想湾曲面の曲率半径よりも若干(ローラの半径程度)小さい。したがって、各ローラにより形成される湾曲面は、仮想湾曲面よりも若干曲率半径の小さい湾曲面に相当する。
【0021】
そして、各ローラにより形成される所望の湾曲面とは、ガラス板がローラ上の搬送されている位置に応じて必要とされる湾曲面である。具体的には、ガラス板を曲げ成形するゾーンのうちの最下流の位置では、この位置の各ローラで形成される湾曲面は、ガラス板の搬送方向についての最終的に得ようとするガラス板の曲げ形状に概略一致した湾曲形状を呈する。
【0022】
1つの例として、最下流の位置よりも上流に位置する各ローラで形成される湾曲面は、最下流の位置での各ローラで形成される湾曲面よりも大きな曲率半径を有する。さらに上流へいくに従って、上流位置の各ローラで形成される湾曲面はさらに大きな曲率半径を有する。
【0023】
他の例として、ガラス板を曲げ成形するゾーンのすべての位置において、各ローラで形成される湾曲面を最終的に得ようとするガラス板の搬送方向の曲げ形状に概略一致した湾曲形状にすることもできる。いづれにしても、最終的に得ようとするガラス板の曲げ形状にガラス板を曲げ成形するために、各ローラで形成される湾曲面は、ガラス板が搬送されている位置に応じて決められる湾曲面とされる。この際、湾曲形状はガラス板の厚みやガラス板の温度を考慮しながら決めるものであり、これらの各条件に応じて、どのように湾曲面の形状を変えるか(または一定の湾曲形状とするか)を適宜設定できるように装置を構成することは好ましい。
【0024】
ガラス板は瞬時には自重により曲がらないことが多い。そのため、各ローラで形成される湾曲面の曲率半径を、上流側から徐々に小さな曲率半径にし、最下流位置で最終的に得ようとするガラス板の湾曲形状にすることが、各ローラの搬送駆動力をガラス板に充分に伝達できる点に鑑みて好ましい。
【0025】
ところで、ローラが上下移動した場合、ガラス板の水平方向成分の搬送速度は、ローラの上下位置に依存することとなる。この場合、複数のローラの角速度が一定であると、水平方向成分の搬送速度は、下方側のローラの方が上側のローラよりも速くなる。このような速度のアンバランス現象が生じると、ローラとガラス板との間でスリップが発生し、ガラス板が傷付きやすい。
【0026】
そこで、複数のローラを独立して回転させる回転駆動手段を備え、そして、制御装置によりガラス板の水平方向成分の搬送速度が等しくなるように前記回転駆動手段を制御することは好ましい。これにより、前記スリップの発生を防止でき、傷の無いガラス板を得ることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下添付図面に従って本発明に係るガラス板の曲げ成形方法及び装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0028】
図1は、本発明の実施の形態に係るガラス板の曲げ成形装置10の構造を示す斜視図である。同図に示す成形装置10は、主として加熱炉12、成形ゾーン14、及び風冷強化装置16から構成されている。
【0029】
まず、成形装置10によるガラス板18の曲げ成形工程について説明する。曲げ成形前のガラス板18は、加熱炉12の入口において搬送位置が位置決めされた後、図示しないローラコンベアによって加熱炉12内に搬送される。そして、ガラス板18は、加熱炉12内の搬送中に加熱炉12のヒータによって加熱されていき、加熱炉12の出口において曲げ成形温度(600〜700℃程度)まで加熱される。前記温度に加熱されたガラス板18は、加熱炉12の下流側に設置された成形ゾーン14に、曲げ成形用のローラコンベア20によって搬送される。そして、ガラス板18は、成形ゾーン14での搬送中に、ローラコンベア20による曲げ成形動作によって所定の曲率に曲げ成形される。曲げ成形されたガラス板18は、成形ゾーン14の出口から、風冷強化装置16用のローラコンベア22によって風冷強化装置16に搬送され、ここで風冷強化される。風冷強化装置16は、ローラコンベア22を挟んで配置された上部吹口ヘッド24と下部吹口ヘッド26とを備えており、ガラス板18はそれらの吹口ヘッド24、26からガラス板18に向けて吹き出されるエアによって風冷強化される。このとき、風冷強化装置16の冷却能は、ガラス板18の厚みに応じて適宜設定する。風冷強化されたガラス板18は、風冷強化装置16の出口からローラコンベア28によって、次工程の検査装置(図示せず)に向けて搬送される。以上が成形装置10による1枚のガラス板18の成形工程の流れである。
【0030】
次に、図1〜図3を参照しながら成形ゾーン14のローラコンベア20について説明する。ローラコンベア20は、ガラス板の搬送方向に互いに平行に水平状態で配されたストレート状に形成された複数のローラ(本実施の形態では13本のローラ20A〜20M(図2参照))から構成されており、これらのローラ20A〜20Mの間で形成される搬送面に沿ってローラ20A〜20Mの回転によりガラス板18が搬送される。
【0031】
ローラ20A〜20Mは、回転駆動手段によって各々が独立して回転駆動されるとともに、上下方向駆動手段によって各々が独立して上下移動される。回転駆動手段と上下方向駆動手段とは、モーションコントローラによって制御されている。
【0032】
図4は、各ローラ20A〜20Mの回転駆動手段と上下方向駆動手段とを示した構造図である。なお、各ローラ20A〜20Mの回転駆動手段と上下方向駆動手段とは同一の構造を有しているので、図4では便宜上ローラ20A側の構造のみを説明し、他のローラ20B〜20M側の構造についてはその説明を省略する。
【0033】
ローラ20Aは、凹状に形成された移動フレーム30にその両端が軸受32、32を介して回転自在に支持されている。また、ローラ20Aの図4における左端部には、ギヤ34、36を介してサーボモータ38のスピンドル40が連結されている。このサーボモータ38を駆動することによりローラ20Aは所定の角速度で回転される。以上が回転駆動手段の構造である。
【0034】
一方、移動フレーム30は、その両側部がLM(直動)ガイドを介して固定フレーム42に上下移動自在に支持されている。LMガイドは、移動フレーム30側にガイドレール44が上下方向に配されており、このガイドレール44に、固定フレーム42側のガイドブロック46が係合されている。
【0035】
また、移動フレーム30の下部の両端部には、ラック48、48が下方に向けて突設され、このラック48、48にピニオン50、50が噛合されている。ピニオン50、50は、水平方向に配設された回転軸52に固定され、この回転軸52は、両端が軸受54、54に支持されるとともに、図4における左端部がサーボモータ56のスピンドル58に連結されている。これにより、サーボモータ56で回転軸52を回転させると、その回転運動がピニオン50とラック48との作用によって直線運動に変換されるので、移動フレーム30が、すなわちローラ20Aが上下移動される。以上が上下方向駆動手段の構造である。なお、図4中符号60、62は、成形ゾーン14に設けられたヒータを示している。
【0036】
前記した回転駆動手段、及び上下方向駆動手段は、他のローラ20B〜20M全てに設けられており、これらの手段のサーボモータ38、56がモーションコントローラによって制御されている。
【0037】
モーションコントローラについて説明すると、このモーションコントローラは、外部入力手段からガラス板18の型式が入力されると、その型式のガラス板18の曲率に対応するローラ20A〜20Mの角速度制御データ及び上下移動制御データを作成する。そして、モーションコントローラは、前記作成した角速度制御データに基づきサーボモータ38を制御するとともに、上下移動制御データに基づきサーボモータ56を制御する。すなわち、モーションコントローラは、ガラス板18がローラ20A〜20Mによる搬送中に所望の曲率に曲げ成形されるように、ローラ20A〜20Mを多軸制御する。
【0038】
次に、モーションコントローラによるローラ20A〜20Mの多軸制御方法について図2を用いて説明する。基本的なローラの上下動は、ガラス板の搬送にともない、ローラ20A→20Mの順に順次下降、上昇運動するものである。なお、以下の説明中( )内の符号は、図2中( )内の符号に対応する。
【0039】
モーションコントローラによって多軸制御されたローラ20A〜20Mは、たとえば、加熱されたガラス板18が入口側のローラ20A上に到達した時には、全てのローラ20A〜20Mは最上位置にあり(A)、ローラ20A〜20Mの間で形成される搬送面は水平である(図3(A)に対応)。ガラス板18がさらに搬送されると、ローラ20B、20Cは下降する。
【0040】
次に、ガラス板18が搬送されると、ローラ20D〜20Fが下降移動して、ローラ20A〜20Mの間で形成される搬送面のうち、ローラ20D〜20Fの間で形成される搬送面が曲率半径の大きい緩やかな下に凸の湾曲状に変形する(B)。これにより、ガラス板18は、ローラ20D〜20F上を通過する際に、ガラス板18の自重によりローラ20D〜20Fの湾曲面に沿って下方に撓み、その湾曲面に沿った形状に変形する(図3(B)に対応)。
【0041】
ところで、ローラ20D〜20Fが下降移動すると、ガラス板18の水平方向成分の搬送速度Vx は、ローラ20D〜20Fの上下位置に依存することになる。この場合、ローラ20D〜20Fの角速度(回転速度)ωが一定であると、水平方向成分の搬送速度Vx は、下方のローラ20Eの方が上側のローラ20D、Fよりも速くなる。このような速度のアンバランス現象が生じると、ローラ20D〜20Fとガラス板18との間でスリップが発生し、ガラス板18に傷付きやすいという不具合が発生する。
【0042】
そこで、モーションコントローラは、ローラ20D〜20Fによるガラス板18の水平方向成分の搬送速度Vx が等しくなるように、ローラ20D〜20Fの各サーボモータ56を制御している(図5参照)。すなわち、モーションコントローラは、ローラ20D〜20Fの上下位置をパラメータとしてローラ20D〜20Fの角速度がωD >ωE <ωF となるように制御する。これにより、前記不具合は解消するので、ガラス板18にはスリップに起因する傷が付かない。
【0043】
さて、ガラス板18が、更に搬送されてくると、ローラ20F〜20Hが、先のローラ20D〜20Fよりも多めに下降移動して、ローラ20F〜20Hの間で形成される搬送面が、先の湾曲面よりも曲率半径の小さい(曲がりが大きい)湾曲状に変形する(C)。これにより、ガラス板18は、ローラ20F〜20H上を通過する際に、ローラ20F〜20Hの湾曲面に沿って下方に更に撓み、その湾曲面に沿った形状に変形する(図3(C)に対応)。なお、ガラス板18が、連続的に搬送されることから図3(B)の状態と図3(C)の状態との間では、ローラ20Dやローラ20Eは図3(B)の状態よりも上方であり、図3(C)の状態よりも下方に位置する。
【0044】
そして、ガラス板18が、搬送経路の略中間に位置したところで、ローラ20H〜20Jが、先のローラ20F〜20Hよりも多めに下降移動して、ローラ20H〜20Jの間で形成される搬送面が、先の湾曲面よりも曲率半径の小さい湾曲状に変形する(D)。これにより、ガラス板18は、ローラ20H〜20J上を通過する際に、ローラ20H〜20Jの湾曲面に沿って下方に更に撓み、その湾曲面に沿った形状に変形する(図3(D)に対応)。
【0045】
そして最後に、ガラス板18が、搬送経路の下流に位置したところで、ローラ20J〜20Lが、先のローラ20H〜20Jよりも多めに下降移動して、ローラ20J〜20Lの間で形成される搬送面が、最終的に得ようとするガラス板18の曲率に対応する曲率の湾曲状に変形する(E)。これにより、ガラス板18は、ローラ20J〜20L上を通過すると、その湾曲面に沿った形状に変形するので、所望の曲率に曲げ成形される(図3(E)に対応)。以上がローラ20A〜20Mによるガラス板18の曲げ成形動作である。
【0046】
したがって、成形ゾーン14内の各ローラは、1枚のガラス板18の搬送の際に、ガラス板18の通過にともない1周期の下降・上昇運動を行う。これにより、ガラス板18が位置しているローラの群により下に凸形状の波面を形成し、ガラス板18の搬送とともに、この波面を進行させる。ガラス板18の搬送方向前辺及び搬送方向後辺は搬送レベルに保たれ、ガラス板18の中央部分は各ローラの下降位置に応じて搬送レベルの下方に垂れ下がる。こうして、ガラス板18は各ローラにより搬送されながら、搬送方向に曲げ成形される。この場合、ガラス板18の搬送方向前辺及び搬送方向後辺が搬送レベルに保たれていることから、ガラス板の搬送方向は搬送レベルに平行な方向といえる。
【0047】
なお、ガラス板18は、成形ゾーン14の下流へ行くにしたがって大きく曲げられるので、上記の波面の振幅は下流ほど大きい。すなわち、各ローラの下降・上昇運動による振幅は、成形ゾーン14の下流ほど大きい。
【0048】
ところで、本発明におけるガラス板の曲げ成形方法及び曲げ成形装置は、大量のガラス板の曲げ成形に用いられる。すなわち、複数枚のガラス板を1枚ずつ順次連続して搬送することによって、大量のガラス板の曲げ成形が行われる。そのため、成形ゾーン14の各ローラは、順次搬送されてくるガラス板を曲げ成形するために、上下振動を繰り返している。したがって、成形ゾーン14内には、複数の下に凸形状の波が、順次加熱炉12側から風冷強化装置16に向けて進行する。
【0049】
そして、加熱炉12側から風冷強化装置16に向かうに従って波の振幅が増大するものである。
【0050】
このように、本実施の形態によれば、複数のローラとしてストレート状のローラ20A〜20Mを使用し、これらのローラ20A〜20Mをガラス板18の搬送に連動させて上下移動させてガラス板18を曲げ成形したので、従来必要であったローラの交換作業を省くことができる。また、ローラの上下移動制御データを変更するだけで別の型式のガラス板を成形することができるので、ジョブチェンジ時間を実質的に無くすことができる。更に、本実施の形態によれば、成形ゾーン14の下流側に風冷強化装置16を設けたので、この風冷強化装置16によって曲げ成形後のガラス板を急冷することにより、強化処理された曲げガラス板18を得ることができる。
【0051】
ところで、上記の実施の形態では、ローラ20A〜20Mの間で形成される搬送面が単一の曲率半径を有する曲面に湾曲させられているので、曲げ成形されるガラス板18も単一の曲率半径を有する曲面に曲げ成形される。これに対して、以下に説明するように、ローラ20A〜20Mの間で形成される搬送面を複数の曲率半径を有する曲面に湾曲させることにより、ガラス板18を複数の曲率半径を有する搬送方向に曲がった曲面に曲げ成形できる。なお、以下の実施の形態においては、曲率半径R1の曲面と曲率半径R2の曲面を複合した曲面のガラス板18を曲げ成形する場合について、図6を用いて説明する。この説明でも( )内の符号は、図6中の( )の符号に対応する。
【0052】
加熱されたガラス板18が入口側のローラ20A上に到達した段階では、全てのローラ20A〜20Mは最上位置にあり、ローラ20A〜20Mの間で形成される搬送面は水平になっている(A)。そして、ガラス板18が成形ゾーン14内に搬送されると、ローラが順次下降して、ローラ20C〜20Gの間で形成される搬送面が緩やかな湾曲状に変形する(B)。これにより、ガラス板18は、ローラ20C〜20G上を通過する際に、ガラス板18の自重によりローラ20C〜20Gの湾曲面に沿って下方に撓み、その湾曲面に沿った形状に変形する。
【0053】
ガラス板18が更に搬送されると、ローラ20E〜20Iが、先のローラ20C〜20Gよりも多めに下降して、ローラ20E〜20Iの間で形成される搬送面が、全体として先の湾曲面よりも曲率半径の小さい湾曲状に変形する(C)。ここで、同図に示すように、ローラ20E〜20Iの間で形成される湾曲面は、単一の曲率半径で形成されているのではなく、異なる曲率半径を有する2つの曲面を複合して形成されている。すなわち、ローラ20E〜20Fの間で形成される曲率半径の小さい湾曲面と、ローラ20F〜20Iの間で形成される曲率半径の大きい湾曲面を複合して形成されている。これにより、ガラス板18は、ローラ20E〜20I上を通過する際に、ローラ20E〜20Iによって形成される湾曲面に沿って下方に更に撓み、その湾曲面に沿った形状、すなわち、2つの曲率半径を有する曲面に変形する。
【0054】
ガラス板18が更に搬送されると、ローラ20G〜20Kが、先のローラ20E〜20Iよりも多めに下降して、ローラ20G〜20Kの間で形成される搬送面が、全体として先の湾曲面よりも曲率半径の小さい湾曲状に変形する(D)。ここで、同図に示すように、ローラ20G〜20Kの間で形成される湾曲面も前記同様に異なる曲率半径を有する2つの曲面を複合して形成されている。すなわち、ローラ20G〜20Hの間で形成される曲率半径の小さい湾曲面と、ローラ20H〜20Kの間で形成される曲率半径の大きい湾曲面を複合して形成されている。これにより、ガラス板18は、ローラ20G〜20K上を通過する際に、ローラ20G〜20Kによって形成される湾曲面に沿って下方に更に撓み、その湾曲面に沿った形状、すなわち、2つの曲率半径を有する曲面に変形する。
【0055】
最後に、ガラス板18が成形ゾーン14の搬送経路の下流に位置したところで、ローラ20I〜20Mが、先のローラ20G〜20Kよりも多めに下降して、ローラ20I〜20Mの間で形成される搬送面が、最終的に得ようとするガラス板18の曲率に対応した湾曲面に変形する(E)。すなわち、ローラ20I〜20Jの間で形成される搬送面は、曲率半径がR2の曲面に湾曲し、ローラ20J〜20Mの間で形成される搬送面は、曲率半径がR1の曲面に湾曲する。これにより、ガラス板18は、ローラ20I〜20M上を通過する際に、ローラ20I〜20Mによって形成される湾曲面に沿って下方に更に撓み、最終的に得ようとする形状、すなわち、曲率半径R1の曲面と曲率半径R2の曲面とを複合した曲面に曲げ成形される。
【0056】
このように、本実施の形態によれば、複数の曲率半径を有する曲面にガラス板18を曲げ成形することができる。
【0057】
なお、本実施の形態では、2つの曲率半径を有する曲面にガラス板18を曲げ成形する場合について説明したが、ローラで形成される湾曲面を複数の曲率半径を有する曲面に変形させることにより、所望の複合形状のガラス板18を曲げ成形できる。
【0058】
なお、上述した一連の実施の形態では、ローラ20A〜20Mにストレート状のものを用いているが、使用するローラ20A〜20Mは、ストレート状のものに限られるものではなく、搬送方向に直交した方向に湾曲したローラでも良い。これにより、ガラス板を複数方向に湾曲した形状(複曲形状)に曲げ成形できる。
【0059】
また、搬送面の曲率の変更は、得ようとするガラス板18の形状データに基づいて行うことが好ましい。特に、車両窓用のガラス板は、その形状がCADデータとして予め準備されているので、このCADデータをモーションコントローラに与えれば、曲率変更を容易に行うことができる。
【0060】
なお、風冷強化装置16側のローラコンベア22も、成形ゾーン14側のローラコンベア20と同様に、回転駆動手段と上下方向駆動手段とを備え、これらの手段を別の若しくは同一のモーションコントローラで制御することが好ましい。この場合、ローラコンベア22の各ローラの上下位置を変更して、ローラコンベア22による搬送面の曲率をガラス板18の曲率と同一の曲率にすれば良い。
【0061】
また、ローラコンベア22の各ローラの本数に対応させて、風冷強化装置16の上部吹口ヘッド24、及び下部吹口ヘッド26を分割するのが好ましい。この場合、分割した上部吹口ヘッド24、及び下部吹口ヘッド26は、それに対応するローラの上下移動に連動してガラス板18との距離が一定となるように上下移動させれば良い。これによって、全面において均一な強度を有するガラス板18を得ることができる。
【0062】
一方、自動車用のリヤガラスの場合、左右辺の近傍は小さな曲率半径を有し、中央部は大きな曲率半径を有するガラス板が用いられることがある。この場合、図7に示すニップローラ21、23を成形ゾーン14と風冷強化装置16との間に配置し、ニップローラ21、23でガラス板18の左右辺の近傍19をニップした時に、上側のニップローラ23を円弧状軌跡に沿って図7上反時計回り方向に回動する。これによって、ガラス板18の左右辺をニップローラ21、23によって所望の形状(小さな曲率半径の形状)に強制的に曲げることができるので、この成形装置10をリヤガラス用の成形装置として使用することができる。
【0063】
また、上記実施の形態では、各ローラを下降・上昇運動させることにより、下に凸形状の波面を形成し、この波面を進行させているが、逆に、各ローラを上昇・下降運動させることにより、上に凸形状の波面を形成し、この波面を進行させることもできる。この場合、自重によりガラス板の中央部ではなくガラス板の縁部が垂れ下がる。ガラス板の搬送をスムーズに行う点に鑑みれば、各ローラを下降・上昇運動させ、下に凸の波面を進行させることが好ましい。
【0064】
また、上記実施の形態では、ラックとピニオンの作用で各ローラ20A、20B、…を上下移動させているが、上下方向駆動手段はこの方式以外の種々の方式が用いられる。たとえば、上下方向駆動手段として、図8又は図9に示すような方式のものを用いてもよい。
【0065】
図8に示す上下方向駆動手段は、送りねじを用いた方式のものであり、次のように構成されている。
【0066】
各ローラ70、70、…は、それぞれその両端部が凹状に形成された移動フレーム72、72、…に軸受74、74、…を介して回転自在に支持されている。また、各ローラ70、70、…は、それぞれその一方端部にギヤ76、78を介してサーボモータ80、80、…のスピンドルが連結されている。各ローラ70、70、…は、このサーボモータ80、80、…を駆動することにより所定の角速度で回転される。
【0067】
ローラ70、70、…を支持する移動フレーム72、72、…は、それぞれその両側部がLM(直動)ガイドを介して固定フレーム82に上下移動自在に支持されている。LMガイドは、移動フレーム72、72、…側にガイドレール84、84、…が上下方向に配されており、このガイドレール84、84、…に、固定フレーム82側に配設されたガイドブロック86、86、…が係合されている。
【0068】
また、各移動フレーム72、72、…の下部中央部には、それぞれナット部材88、88、…が固着されており、ナット部材88、88、…には、それぞれねじ棒90、90、…が螺合されている。ねじ棒90、90、…は、固定フレーム82に配設された軸受92、92、…に回動自在に支持されており、その下端部には従動プーリ94、94、…が固着されている。一方、固定フレーム82には、サーボモータ96、96、…が配設されており、サーボモータ96、96、…のスピンドルには駆動プーリ98、98、…が固着されている。この駆動プーリ98、98、…と従動プーリ94、94、…には、駆動ベルト100、100、…が巻き掛けられており、駆動ベルト100、100、…を介してサーボモータ96、96、…の回転がねじ棒90、90、…に伝達される。そして、このねじ棒90、90、…が回転することにより、その回転量に応じて移動フレーム72、72、…、すなわちローラ70、70、…が上下移動される。
【0069】
送りねじを用いた上下方向駆動手段は以上のように構成される。なお、図8において、符号102は成形ゾーン14に設けられたヒータを示している。
【0070】
一方、図9に示す上下方向駆動手段は、パンタグラフを用いた方式のものであり、次のように構成されている。
【0071】
各ローラ70、70、…は、それぞれその両端部が凹状に形成された移動フレーム72、72、…に軸受74、74、…を介して回転自在に支持されている。また、各ローラ70、70、…は、それぞれその一方端部にギヤ76、78を介してサーボモータ80、80、…のスピンドルが連結されている。各ローラ70、70、…は、このサーボモータ80、80、…を駆動することにより所定の角速度で回転される。
【0072】
各移動フレーム72、72、…の下部両端には、それぞれブラケット104、104、…を介してリンク106、108の先端部がピン結合されている。リンク106、108は、互いに交差するように配設されており、その交差部で互いにピン結合されている。また、一方側のリンク106、106、…の基端部は、固定フレーム110に配設されたブラケット112、112、…にピン結合されており、他方側のリンク108、108、…の基端部は、固定フレーム110に設けられたシリンダ114、114、…のロッド先端部にピン結合されている。シリンダ114、114、…を駆動して、そのロッドを伸縮させると、リンク106、108の作用で移動フレーム72、72、…が上下移動し、この結果、ローラ70、70、…が上下移動される。
【0073】
パンタグラフを用いた上下方向駆動手段は以上のように構成される。なお、図9において、符号102は成形ゾーン14に設けられたヒータを示している。
【0074】
図1に示す実施の形態では、成形ゾーン14が加熱炉12の囲い中に設けられている。すなわち、成形ゾーン14が加熱炉12内であって加熱炉12の下流側に設けられている。本発明におけるガラス板の曲げ成形装置では、(i)成形ゾーンを加熱炉内に設けることの他に、(ii)加熱炉外に設けることも、(iii)成形ゾーンの一部を加熱炉外に設けることもできる。こうした成形ゾーンを設ける位置は、ガラス板の寸法や曲げ形状に応じて、上記(i)〜(iii)から適宜選択できる。
【0075】
まず、ガラス板の厚みと成形ゾーンの位置との関係を説明する。ガラス板が曲げ成形された後の強化処理は、ガラス板の厚みの影響を受ける。すなわち、強化処理されたガラス板は、表面に圧縮応力が、内部に引張応力が形成されている。これらの残留応力は、加熱されたガラス板の急冷により生じるガラス板表面とガラス板内部との温度差に起因する。ガラス板の厚みが小さいとこの温度差が得にくくなるので、厚みが小さいガラス板の強化処理にあたっては、急冷時の冷却能を増加させる必要がある。冷却能の増加のための手段の1つには、冷却風の吹付け圧や風量を増加することがあげられる。他に、急冷時のガラス板の温度を増加させる手段もある。
【0076】
(i)の場合、ガラス板を加熱炉内で曲げ成形できるので、曲げ成形後のガラス板をすぐに風冷強化装置に搬送できる。そのため、ガラス板の温度が下がることなく風冷強化装置までガラス板を搬送できる。したがって、(i)の成形ゾーンの配置は、厚みが小さいガラス板の曲げ成形・強化処理に優位である。
【0077】
次に、ガラス板の曲げ形状と成形ゾーンの位置との関係を説明する。ガラス板を複曲形状に曲げ成形する場合、成形ゾーンには、搬送方向に直交する方向へのガラス板の曲げ成形をするための手段が設けられる。この手段を加熱炉内に設けようとすると、加熱炉内の閉空間を確保しにくくなる。そのため、加熱炉内の温度を所定の温度に保てないという不具合が生じる。そこで、この手段を加熱炉外に設けることによって、加熱炉内の温度の安定化が実現できる。したがって、 (ii)の成形ゾーンの配置は、ガラス板を複曲形状に曲げ成形する場合に優位である。
【0078】
さらに、厚みの小さいガラス板を複曲形状に曲げ成形する曲げ成形・強化処理には、(i)と(ii)の折衷として(iii)が優位である。そして、(iii)の曲げ成形ゾーンの配置は、単なる折衷案の位置付けに留まらず、次の点で好ましい。すなわち、自動車産業の少量多品種の要求により、1つのガラス板の曲げ成形装置で多くの型式のガラス板を曲げ成形することも要求されている。型式に応じて、ガラス板の厚みは多種にわたり、ガラス板の曲げ形状も多種にわたる。そのため、同じ仕様のガラス板の曲げ成形装置で、多種の厚みの多種の曲げ形状のガラス板を成形できることは優位である。そして、このような少量多品種の事情に適応できる成形ゾーンの配置が、(iii)の配置である。
【0079】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るガラス板の曲げ成形方法及び装置によれば、複数のローラをガラス板の搬送位置に応じて上下移動させることにより、ローラで形成される搬送面を湾曲させて、ガラス板を自重により所定の曲率に曲げ成形するようにしたので、型式に応じた曲率の複数のローラを使用することなくガラス板を曲げ成形することができる。よって、本発明は、従来必要であったローラの交換作業を省くことができる。
【0080】
また、本発明は、ローラの上下移動制御データを変更するだけで別の型式のガラス板を成形することができるので、ジョブチェンジ時間を実質的に無くすことができる。しかも、複数のローラは単に上下動するだけで、搬送面のガラス板が位置する部分が湾曲面となり、この湾曲面が進行するだけであるので、ガラス板の搬送はスムーズに行われる。
【0081】
また、ガラス板の水平方向成分の搬送速度が等しくなるように複数のローラの回転駆動手段を制御することによって、傷の無いガラス板を得ることができる。
【0082】
さらに、ローラで形成される搬送面を複数の曲率半径を有する曲面に湾曲させることによって、単一の曲率半径を有するガラス板だけでなく、複数の曲率半径を有するガラス板に曲げ成形することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るガラス板の曲げ成形装置の構造を示す斜視図
【図2】成形ゾーンに配置された複数のローラによるガラス板の曲げ動作を示す遷移図
【図3】図2に示した遷移図の斜視図
【図4】ローラの回転駆動手段と上下方向移動手段との構造を示す説明図
【図5】ガラス板の水平方向成分の搬送速度を示す説明図
【図6】成形ゾーンに配置された複数のローラによるガラス板の曲げ動作を示す遷移図
【図7】成形ゾーンと風冷強化装置との間に強制曲げ用ニップローラを配置した説明図
【図8】上下方向移動手段の他の実施の形態の構造を示す斜視図
【図9】上下方向移動手段の他の実施の形態の構造を示す斜視図
【符号の説明】
10…ガラス板の曲げ成形装置、12…加熱炉、14…成形ゾーン、16…風冷強化装置、18…ガラス板、20…ローラコンベア、20A〜20M…ローラ、38、56…サーボモータ
Claims (5)
- ガラス板を加熱炉で曲げ成形温度まで加熱し、該加熱されたガラス板をローラコンベアの複数のローラで形成される搬送面に沿って搬送しながらガラス板の自重によってガラス板を所定の曲率に曲げ成形するガラス板の曲げ成形方法において、
ガラス板が搬送されている位置の複数のローラをガラス板の搬送にともない上下動させて、該位置の複数のローラにより前記搬送面の少なくとも一部にガラス板の搬送方向に湾曲した所望の湾曲面を形成するとともに、前記各ローラをガラス板の搬送にともない、順次上下動させて前記湾曲面をガラス板の搬送とともにガラス板の搬送方向に進行させ、ガラス板を搬送しながらガラス板を前記湾曲面に沿うように曲げ成形することを特徴とするガラス板の曲げ成形方法。 - 前記湾曲面の曲率半径を、ガラス板の搬送方向下流に向かうに従って小さくすることを特徴とする請求項1に記載のガラス板の曲げ成形方法。
- 前記湾曲面を複数の曲率半径を有する湾曲面に形成し、前記ガラス板を複数の曲率半径を有する曲面に曲げ成形することを特徴とする請求項1又は2記載のガラス板の曲げ成形方法。
- ガラス板を曲げ成形温度まで加熱する加熱炉と、該加熱炉の下流側に設けられたガラス板を所定の曲率に曲げ成形する成形手段とを含むガラス板の曲げ成形装置において、
前記成形手段は、
前記ガラス板を搬送するための搬送面を形成する複数のローラから成るローラコンベアと、
前記複数のローラを上下移動させる上下方向駆動手段と、
ガラス板が搬送されている位置の複数のローラにより、前記搬送面の少なくとも一部にガラス板の搬送方向に湾曲した所望の湾曲面が形成されるとともに、ガラス板の搬送にともない、順次複数のローラを上下させて前記湾曲面がガラス板の搬送方向に進行するように前記駆動手段を制御する制御手段と、
から成ることを特徴とするガラス板の曲げ成形装置。 - 前記ローラを回転させる回転駆動手段を備え、前記制御装置は、前記ガラス板の水平方向成分の搬送速度が等しくなるように前記回転駆動手段を制御することを特徴とする請求項4に記載のガラス板の曲げ成形装置。
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