JP3986519B2 - 電気式灰溶融炉及びその運転方法 - Google Patents
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Description
図1及び図2は、実施例に係る電気式灰溶融炉を示す概念図であり、図2は灰溶融炉の傾動状態を示す概念図である。図3は計測装置及び演算装置の構成図である。
図1乃至図2に示すように、本実施例に係る電気式灰溶融炉100は、焼却灰31がホッパ32を介して投入される溶融炉本体2と、溶融炉本体2の炉室6側に配設される主電極4と、炉室6の炉底壁5に配設される炉底電極7と、これらの電極4,7間に電圧を印加する直流電源8とを備え、ジュール発熱により焼却灰を加熱してスラグ化するものであり、前述した図12の灰溶融炉と本体構成は監視カメラがない点を除いて同様である。
これにより、主電極4の電極位置を制御することができ、プラズマアーク長を略一定の間隔(本実施例では300mm)で常に維持することができる。
なお、本実施例では灰溶融炉で処理する焼却灰のゴミ質として、灰投入積算量の最大が約140tとなった際に図2に示すように、灰溶融炉1を傾動して溶融メタル24を炉室6外へ排出してから、再度溶融を開始する場合について説明する。
尚、本発明はこれらの条件に何ら限定されるものではない。
先ず、運転に入る前段階において、予め、溶融炉本体2内に投入する焼却灰31の投入積算量に応じた電極4,7間における全抵抗値を求めておく。
この灰投入積算量と全抵抗値との関係図を図4に示す。図4に示す基準線は、灰溶融炉1において、初期の灰を投入していない時点から、焼却灰31を投入し所定の投入積算量(例えば140t)となった際に、図2のように傾動して溶融スラグ23を出滓樋19より排出する間における、灰投入積算量に応じた抵抗値の関係を示している。
なお、初期の時点は、灰溶融炉1を傾動し、焼却灰を溶融炉に投入し、スラグがオーバフローして安定した状態になった時点を0t時と称している。
本発明で全抵抗値とは、プラズマアークが生じる空間部分の抵抗である空間抵抗値と、溶融スラグ23のスラグ層抵抗値と、溶融メタル24のメタル層抵抗値との総和をいう。
なお、メタル層抵抗値は0であるので、スラグ層抵抗値(0.108Ω)と空間抵抗値(アーク長が300mmにおけるプラズマアーク抵抗値:0.072Ω)との総和が全抵抗値となる。
なお、前述した図4のグラフを抵抗値基準線と称する。
a)灰投入初期(メタル排出直後)の抵抗値の決定方法
先ず、灰溶融炉1の傾動を行い、溶融メタル24の排出直後(灰積算量0t)の抵抗値の決定方法について説明する。
メタル排出直後、灰投入を開始し、定格運転(灰投入量:1.67t/h、電力:所定電力(1559kw)を保持)状態を保つ。なお、定格運転灰投入量と電力との関係を図7に示す。図7は灰投入量と電力の関係を示したものであり、灰投入量に応じ、灰の溶融に必要な電力が増加する傾向を示す関係図である。
次に、炉室6内温度が一定温度(例えば1300℃)になるように主電極4の電極位置を調整する。この状態で運転を保持し、運転状態が静定するための一定時間経過後(1時間)の電流、電圧値(1時間平均値)を計測する。
そして、電流、電圧値より電極間抵抗値を求め、これを焼却灰積算量0t時における抵抗値とする(図4中、0t及び図5参照)。
なお、電極間抵抗値(Ω)=電圧値(V)/電流値(A)である。
b)灰投入終期(メタル排出直前)の抵抗値決定方法
焼却灰の投入を継続し、定格運転(灰投入量:1.67t/h、電力:所定電力(1559kw)を保持)状態を保つ。
炉室6内温度が一定温度(1300℃)になるように主電極4の電極位置を調整する。
運転状態が静定するための一定時間経過後(1時間)の電流、電圧値(1時間平均値)を計測する。またこの時点のメタル排出からの焼却灰積算量を読取る。
そして、電流、電圧値より電極間抵抗値を求め、これを焼却灰積算量140t時における抵抗値とする(図4中、140t)。
先ず、灰溶融炉1の傾動後、保温してアーク長が300mmとなるように主電極4の位置を設定する。この設定はカメラ等を用いてもよく、または炉室6内温度から設定するようにしてもよい。その後、溶融炉本体2内に焼却灰31を投入し、焼却灰31の溶融が安定状態となった時点を計測開始点(0t)とし、この計測開始点における電極間4,7の全抵抗値を、図4に示す抵抗値基準線における前記予め求めた抵抗値基準線から電極間の全抵抗値を推定する。そして、図7に示すような溶融炉に応じた時間当りの灰投入量における電力設定値と、前記全抵抗値(推定値)とから電圧設定値を求める。
ここで、溶融が安定状態になった時点とは、焼却灰31の投入と溶融スラグとの出滓とが一定になった場合をいう。
また、溶融炉に応じた時間あたりの灰投入量における電力設定値は、図7に示すように、例えば1.67t/hにおいて1559kwである。
この結果、図3に示すように、前電力設定値と全抵抗値から、電圧設定値は528Vと計算され、この電圧設定値(528V)で溶融を継続する。なお、電力=電圧×電流、電圧=電流×抵抗であり、これら電力と抵抗から下記式(1)により電圧を求める。
次いで、溶融炉本体2内に焼却灰31の投入を開始する。この焼却灰31の投入量の増加に応じて、主電極4の先端部が消耗することになるので、いわゆるアーク長が長くなり、空間抵抗値が変化するので、この変動する電圧を計測する。
この電圧は例えば5分毎の平均値とすればよい。例えばこの計測値が538Vとする。
焼却灰31の投入により変動した電圧(538V)から主電極4の電極位置を電極位置制御装置により調整する。
電極位置の調整は、「A×(初期電圧(528V)−変動した電圧(538V))」である。ここで、A(mm/V)は係数であり、本実施例ではA=1である。
ここで、本実施例では、前記電極位置制御装置105は、演算処理する演算装置と、この演算装置で演算された結果を昇降装置15に指令を出す制御装置と、主電極4を昇降させる昇降装置とを含むものであり、これにより主電極4の位置を所定量下げるようにしている。
前述した計測結果では、電圧計測値が538Vであるので、528−538=−10(V)となり、これにAを乗じて10mm下げるように指示を出すこととなる。
これにより、従来のような監視カメラ等の監視装置を用いることなく、主電極4の位置の微調節をすることができ、常に安定した溶融を行うことができる。
本実施例によれば、アーク長を維持する監視装置を設けることなく、アーク長を一定レベルに保ち、安定した連続運転が可能となる。
図9は、図3における装置において、さらにアーク長目標値からアーク抵抗値を演算するアーク抵抗値演算器110と、焼却灰投入量からスラグ抵抗値を演算するスラグ抵抗値演算器111とを具備するものであり、溶融炉1内のスラグ温度を計測するスラグ温度計を設け、このスラグ温度を用い、灰投入量に対してのスラグ抵抗値が温度依存性を有する点を考慮することで精度の高い制御を行うようにしている。
この実施例2で得られた温度条件を考慮した全抵抗推定値が前述した実施例1における電極間全抵抗推定値となり、精度の高い制御を行うことができる。すなわち、実施例1においては、1600℃における抵抗値基準線を用いているので、温度条件を加味しておらず、実施例2において、スラグ温度を計測することで初めて温度条件を加味したより精度の高い制御が可能となる。
値演算器121)これは図11に示すスラグ厚さと抵抗値の関係図よりスラグ抵抗値を求めるようにしてもよい。この場合、灰の性状が変化しメタルの堆積速度が大きく変化した場合でも高い精度でスラグ抵抗値を求めることができるようになる。
本実施例では、前述した灰溶融炉において、主電極4の位置を適宜調整しておき、その後灰投入を続ける際に、その焼却灰の投入積算量に応じたスラグ抵抗値と、演算により求めたスラグ抵抗値を比較し、その偏差から電力又は電流のいずれかを制御するようにしたものである。
この計測装置と演算・制御装置とを具備した装置の概略を図12に示す。
図12に示すように、プラズマの電流と電圧から電極間の抵抗を計算し、電極間全抵抗推定値を求める。そして、アーク長目標値から空間抵抗値をアーク抵抗値演算器120にて演算し、空間抵抗値を求める。そして、演算器125において、電極間全抵抗推定値から空間抵抗値を引いて、スラグ層抵抗値を求める。
一方、実施例1において説明した図4に示す全抵抗値基準線を下に、スラグ抵抗値演算器121にて焼却灰の投入量からスラグ層の抵抗目標値が演算される。
そして、現時点における抵抗値が大きい場合には、電流を下げるように制御する。一方、現時点における抵抗値が小さい場合には、電流を上げるように制御する。また同等の場合には、制御は不要である。
これにより、スラグ温度と相関のあるスラグ抵抗を一定レベルに安定させることができ、このためスラグ温度を一定レベルに維持し、スラグの安定出滓、炉の長寿命化が可能となる。
例えば現時点における電流計と電圧計から電極間の全抵抗計測値を求める(0.185Ω)。また、設定したアーク長から空間抵抗値を空間抵抗値演算器120から空間抵抗値を求める(0.072Ω)。
全抵抗計測値(0.185Ω)から空間抵抗値(0.072Ω)を引いて、現時点でのスラグ層抵抗値を求める(R1=0.113Ω)。
一方、現時点における焼却灰投入量(0t)とスラグ温度からスラグ抵抗値演算器121よりスラグ抵抗設定値を演算する(R2=0.108Ω)。基準線及び温度依存線より、R1とR2との値とをPID制御器122で制御し、電力設定値を求める(1600kw)。
初期時点での電圧設定値を例えば528Vとする場合、電流演算器123により電流設定値を求める(I1=3030A)。
また、現在の電流計測値は電流計より求める(I2=2930A)。設定値よりも現在の電流が小さいので、電流制御器124で電流を上げる制御を行う。
なお、実施例1の電圧制御と併用する場合には、電力目標値と電圧目標値より電流目標値を求め、電流を制御すればよい。この場合、電圧制御と電流制御の制御周期を調整し、電力値のハンチングを避けるようにすればよい。
また、実施例1と実施例3とを併用することにより、連続して安定したアーク長やスラグ温度の計測が困難な場合でも、電気式灰溶融炉の安定した連続運転が可能となる。
4 主電極
5 炉底壁
6 炉室
7 炉底電極
8 直流電源
23 溶融スラグ
24 溶融メタル
31 焼却灰
32 ホッパ
100 電気式灰溶融炉
101 灰投入量積算器
102 電極間全抵抗演算器
103 電圧設定値演算器
104 電圧計測器
105 電極位置制御装置
Claims (7)
- 焼却灰が投入される溶融炉本体と、溶融炉本体の炉室側に配設される一対の電極と、この電極間に電圧を印加する直流電源とを備え、ジュール発熱により焼却灰を加熱してスラグ化する電気式灰溶融装置の運転方法において、
予め、溶融炉本体内に投入する焼却灰の投入量に応じた電極間における全抵抗値を求める工程と、
溶融炉本体内に焼却灰を投入し、焼却灰の溶融が安定状態となった時点を計測開始点とし、この計測開始点における電極間の全抵抗値を、前記予め求めた全抵抗値から推定すると共に、溶融炉に応じた時間当りの灰投入量における電力設定値と、前記全抵抗値とから
電圧設定値を求める工程と、
溶融炉本体内に焼却灰の投入を開始すると共に、該焼却灰の投入量の増加に応じて電極間の電圧を計測する工程と、
焼却灰の投入により変動した電極間に印加する電圧から電極位置を調整する工程とを含むことを特徴とする電気式灰溶融炉の運転方法。 - 請求項1において、
全抵抗値がスラグ抵抗値と空間抵抗値の総和であることを特徴とする電気式灰溶融炉の運転方法。 - 請求項1において、
焼却灰の投入量に応じて、スラグ温度を計測し、スラグ抵抗値を演算することを特徴とする電気式灰溶融炉の運転方法。 - 焼却灰が投入される溶融炉本体と、溶融炉本体の炉室側に配設される一対の電極と、この電極間に電圧を印加する直流電源とを備え、ジュール発熱により焼却灰を加熱してスラグ化する電気式灰溶融装置の運転方法において、
予め、溶融炉本体内に投入する焼却灰の投入量に応じた電極間におけるスラグ抵抗値を求める工程と、
電極の位置を調整する工程と、
現時点での焼却灰の投入量に応じたスラグ抵抗設定値と、演算により求めたスラグ抵抗値を比較し、その偏差から電力又は電流のいずれかを制御する工程とを含むことを特徴とする電気式灰溶融炉の運転方法。 - 焼却灰が投入される溶融炉本体と、溶融炉本体の炉室側に配設される一対の電極と、この電極間に電圧を印加する直流電源とを備え、ジュール発熱により焼却灰を加熱してスラグ化する電気式灰溶融装置において、
電極の位置を調整する電極位置の維持装置と、
焼却灰の投入量に応じたスラグ抵抗値と、演算により求めたスラグ抵抗値を比較し、その偏差から電力又は電流のいずれかを制御する制御装置とを具備することを特徴とする電気式灰溶融炉。 - 請求項5において、
前記電極位置の維持装置が監視カメラ又は炉室内温度計のいずれかであることを特徴とする電気式灰溶融炉。 - 請求項5において、
焼却灰の投入量に応じたスラグ抵抗値と、前記演算により求めたスラグ抵抗値を比較し、その偏差から電力又は電流のいずれかを制御する制御装置とを具備することを特徴とする電気式灰溶融炉。
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