JP3746921B2 - 電気溶融炉の運転方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、都市ごみや産業廃棄物等の焼却施設から排出された焼却灰や飛灰を溶融処理する電気溶融炉の運転方法の改良に関するものであり、溶融スラグの温度を一定に保持しつつより少ない電気エネルギーでもって、焼却灰等を能率よく溶融処理するようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、都市ごみ等の焼却炉から排出される焼却灰や飛灰の減容化及び無害化を図るため、焼却灰等の溶融固化処理が注目され、実用に供されている。焼却灰等は溶融固化することにより、その容積が1/2〜1/3に減少するうえ、重金属等の溶出の防止、溶融スラグの再利用、最終埋立処分場の延命等が可能になるからである。
【0003】
前記焼却灰等の溶融固化処理には、アーク溶融炉やプラズマアーク炉、電気抵抗炉等を用い、電気エネルギーにより被溶融物を溶融固化する方法と、表面溶融炉や旋回溶融炉、コークスベッド炉等を用い、燃料の燃焼エネルギーにより被溶融物を溶融固化する方法が多く利用されており、都市ごみ焼却設備に発電設備が併置されている場合には前者の電気エネルギーを用いる方法が、また、発電設備が併置されていない場合には後者の燃焼エネルギーを用いる方法が、夫々多く採用されている。
【0004】
図2は、従前のごみ焼却処理設備に併置した直流アーク放電型黒鉛電極式プラズマ溶融炉の一例を示すものであり、図に於いて、1は焼却灰等の被溶融物Aのコンテナ、2は被溶融物供給装置、3は溶融炉本体、4は黒鉛主電極、5はスタート電極、6は炉底電極、7は炉底冷却ファン、8は直流電源装置、9は不活性ガス供給装置、10は溶融スラグ流出口、11はタップホール、12は燃焼室、13は燃焼空気ファン、13aは助燃バーナ、14は排ガス冷却ファン、15はスラグ水冷槽、16はスラグ搬出コンベア、17はスラグだめ、18はスラグ冷却水の冷却装置である。
【0005】
被溶融物Aはコンテナ1に貯えられ、供給装置2により溶融炉本体3内へ連続的に供給される。溶融炉本体3には、被溶融物Aとの間に一定の距離を設けた黒鉛主電極4(−極)と、炉底に設置された炉底電極6(+極)とが設けられており、両電極4、6間に印加された直流電源装置8(容量約600〜1000KWH/T・被溶融物)の直流電圧(200〜500V)により、電流が流れプラズマアークが発生する。これによって被溶融物Aが1300℃〜1600℃に加熱され、順次溶融スラグBとなる。
【0006】
尚、溶融前の被溶融物Aは導電性が低いため、溶融炉の始動時にはスタート電極5を溶融炉本体3内へ挿入してこれを+極とし、これと主電極4の間へ通電することにより被溶融物Aが溶融するのを待つ。そして、被溶融物が溶融するとその導電性が上昇するため、スタート電極5を炉底電極6へ切り換える。
【0007】
溶融炉本体3の内部は、溶融スラグBや主電極4等の酸化を防止するために還元性雰囲気に保持されており、不活性ガス供給装置9から不活性ガスCが、中空筒状に形成した主電極4及びスタート電極5の中空孔を通して、溶融炉本体3内へ連続的に供給されている。
【0008】
不活性ガスCを主電極4やスタート電極5の中空孔を通して炉本体内へ供給するのは、▲1▼アークの軸方向にプラズマガスを噴射し、アークを拘束することで高密度化する、▲2▼黒鉛主電極4や黒鉛スタート電極5を冷却することで電極の消耗がより少なくなる、等の理由によるものである。
【0009】
前記溶融炉本体3の炉底は、炉底冷却ファン7からの冷風により空冷され、これによって炉底電極6近傍の過度な温度上昇が防止されている。また、溶融炉本体3そのものは高温に耐える耐火材及びそれを覆う断熱材等により構成されており、必要に応じて断熱材の外部に空冷あるいは水冷ジャケットが設けられている。
【0010】
被溶融物Aの溶融によって、内部に存在した揮発成分や発生した一酸化炭素等はガス体Dとなると共に、金属類やガラス、砂等の不燃性成分は、プラズマアーク放電の発生熱を供給されることにより、溶融点(1100〜1250℃)を越える約1300〜1600℃の高温度にまで加熱され、流動性を有する液体状の溶湯となる。
【0011】
炉本体3内に形成された溶湯は、溶融スラグ流出口10より連続的に溢出し、スラグ水冷槽15内へ落下することにより水砕スラグとなり、スラグ搬出コンベア16によってスラグだめ17へ排出される。
また、溶融炉を停止する際には、炉本体3内の溶湯が冷却、固化してしまうのを防止するため、溶湯の底部レベルに取付けられたタップホール11より湯抜きを行い、炉本体3内を空状態にする。
【0012】
発生したガス体Dは、溶融スラグ流出口10の上部より燃焼室12に入り、ここで燃焼空気ファン13から助燃バーナ13aを経て加熱された燃焼用空気が加えられることにより、未燃分が完全に燃焼される。また、完全燃焼をしたガス体Dは、排ガス冷却ファン14からの冷空気によって冷却され、外部へ排出されて行く。
【0013】
而して、電気溶融炉で被溶融物Aを連続的に溶融すると、溶融炉本体3内に形成された溶湯は、比重差によって上方に位置する溶融スラグ層Bと下方に位置する溶融メタル層Mとに分離する。
また、上方の溶融スラグ層Bは溶融スラグ流出口10から連続的に溢出するが、下方の溶融メタル層Mは順次炉底に残留・堆積し、溶融メタル層Mの液面レベルLmが上昇し、層厚さLtが増加する。
尚、溶融炉本体3内の溶湯容積はほぼ一定であるため、溶融メタル層Mの液面レベルLmが上昇するに伴なって、上方の溶融スラグ層Bの層厚さStは薄くなって行く。
【0014】
ところで、従来の電気溶融炉の運転に於いては、溶融炉本体3への被溶融物Aの供給量と印加電力とを一定に保って溶融炉を連続運転した場合には、溶融スラグ層Bの温度はほぼ一定に保持されると云う基本的な考えの下に、被溶融物Aの供給量に応じて印加電力を所定値に調整制御することにより、溶融スラグ層Bの温度は常時設定値の近傍に保持されていると考えられていた。
【0015】
しかし、現実の電気溶融炉に於いては、運転時間が経過して溶融スラグ層Bの層厚さStが減少すると、溶融炉本体3内の溶融スラグ層Bと溶融メタル層Mとから成る溶湯全体の電気伝導度や熱伝導度が相当に変化し、これに伴なってアーク長さ等の電気的な熱発生条件や溶湯特に溶融メタル層Mからの放熱量が大きく変化することになる。
【0016】
具体的には、一定の溶湯量の電気溶融炉に於いて、溶融メタル層Mの層厚さLtが大になれば、溶湯からの放熱量は増加する傾向にある。そのため、溶融炉本体3への供給電力及び被溶融物Aの供給量やその物性を同一に保った状態で溶融炉を連続運転すると、運転開始初期の溶融メタル層Mの層厚さLtが小で溶融スラグ層Bの層厚さStが大の間は、放熱量が少ないために溶融スラグ層Bの温度が高温となり、逆に運転継続時間が長くなって、溶融メタル層Mの層厚さLtが大、溶融スラグ層Bの層厚さStが小になってくると、放熱量が増加して溶融スラグ層Bの温度が低下することになり、また、溶融メタル層Mの層厚さLtが大きくなると、メタルの電気伝導度が大きいために溶湯部の電気抵抗が低下し、アーク長が長くなることで放射損失が増えることになり、これ迄ほぼ一定と考えられていた溶融スラグ層Bの温度が、現実には上記の如き理由により約1300〜1700℃の範囲に亘って、大きく変化していることが判明した。
【0017】
尚、被溶融物Aの供給量に応じて印加電力を制御する際に、溶湯からの放熱量の変動を把握することが重要であることは勿論認識されていたことである。しかし、当該放熱量の変動が、溶融メタル層Mの層厚さLtの変動と大きな相関関係にあるとは考えられていなかった。そのため、前述の通り、溶融スラグ層Bの温度が1300〜1700℃もの広範囲に亘って変動すると云う事態を招く結果となっている。
【0018】
また、溶融スラグ層Bの温度は、電気溶融炉の運転制御に於ける重要な運転指標の一つであり、当該溶融スラグ層Bの温度を一定に保つと云うことは、水砕スラグの品質の安定化、溶融原単位(供給電力KWH/T・被溶融物)の低減、炉壁用耐火材の損耗の抑制等を図る上で重要な意味を有するものである。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従前の都市ごみ等の焼却灰や飛灰を被溶融物とする電気溶融炉に於ける上述の如き問題、即ち運転時間の経過に伴なって、溶融炉本体内の溶湯を形成する溶融メタル層Mと溶融スラグ層Bの層厚さLt、Stが変ることにより溶融スラグ層Bの温度が大きく変動し、結果として水砕スラグの品質の悪化や溶融原単位の上昇、炉耐火材の損傷等を招くと云う問題を解決せんとするものであり、溶融メタル層Mや溶融スラグ層Bの層厚さLt、Stが変っても、常に溶融スラグ層Bの温度を設定値の近傍に保持することを可能にした電気溶融炉の運転方法を提供するものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、溶湯内の溶融メタル層の液面レベルに応じて溶融炉本体への供給電力を調整することにより、溶融スラグ層の温度を設定値近傍に維持するようにした電気溶融炉の運転方法において、前記溶融メタル層の液面レベルを、溶湯内へ昇降自在に挿入され、先端部に磁気コイルを備えたレベル検出センサ又は溶融炉本体の炉側壁に埋込んだ磁気コイルを用いたレベル検出センサにより検出すると共に、検出した溶融メタル層の液面レベル信号Lmpを、被溶融物の性状やその供給量に応じて選択、設定される複数の溶融メタル層の液面レベルLmの上昇率の設定部及び前記各液面レベルLmの上昇率に対応する供給電力値の設定部とを備えた供給電力演算装置へ入力し、当該液面レベル信号Lmpから溶融メタル層Mの液面レベルLmの上昇率を演算すると共に、演算した上昇率と前記予め設定した標準の上昇率とを対比して両者の差を減少させるのに必要な供給電力の増・減値を前記供給電力値の設定値を用いて演算し、当該演算値を供給電力指令信号Qwとしてプラズマ制御盤へ入力することにより溶融炉本体への供給電力を調整するようにしたことを発明の基本構成とするものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態の説明図であり、図に於いてAは被溶融物、Mは溶融メタル層、Bは溶融スラグ層、2は供給装置、3は溶融炉本体、4は黒鉛主電極、5はスタート電極、6は炉底電極、8は直流電源装置、10は溶融スラグ流出口、19は溶融メタル層の液面レベルLmを検出するメタルレベル検知器、20はメタルレベル検知器の駆動装置、21はメタルレベル検知器の駆動操作盤、22はメタルレベル演算装置、23は供給電力演算装置、24はプラズマ制御盤、Ltは溶融メタル層の層厚さ、Stは溶融スラグ層の層厚さであり、電気溶融炉そのものの構造は、図2に示した従前の電気溶融炉と略同一であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0025】
前記メタルレベル検知器19は溶融炉本体3の天井部を挿通せしめて上・下方向へ昇降動自在に配設されており、駆動操作盤21を介して駆動装置20により昇降動される。即ち、溶融メタル層Mの液面レベルLmの検出時には、メタルレベル検知器19の先端部が溶融メタル層Mの近傍まで下降された時に、先端部に設けられたコイルが発生する磁場の変化を検出することにより、溶融メタル層Mの液面レベルLmを検出し、検出されたレベル検出信号Lmpが供給電源演算装置23へ入力される。
【0026】
尚、本実施形態に於いては、メタルレベル検知器19の先端部に2対の電極を設け、当該電極間にある物質の電気抵抗値を測定する事によって、すなわち溶融スラグと溶融メタルの電気抵抗値の違いを利用する事によって溶融メタル層Mの液面レベルLmを検知する事も可能である。
【0027】
前記供給電力演算装置23は、メタル層Mの液面レベル検出信号(厚さ検出信号)Lmpを用いて、電気溶融炉へ供給すべき最適電力値を演算するものであり、当該供給電力演算装置23からの供給電力指令信号Qwによりプラズマ制御盤24を介して直流電源8の出力電圧を制御してプラズマアーク電流を調整することにより、電気溶融炉へ供給する電力が前記最適電力値に制御される。
【0028】
具体的には、供給電力演算装置23には、複数の予かじめ設定可能な溶融メタル層Mの液面レベルLmの上昇率の設定部と、これに対応する供給電力値の設定部とが設けられており、電気溶融炉の運転に際しては、被溶融物Aの性状や被溶融物Aの供給量に応じて、前記溶融メタル層Mの液面レベルLmの上昇率と、これに対応する供給電力値とが適宜に選択・設定される。
【0029】
そして、電気溶融炉の運転過程に於いて、溶融メタル層Mの液面レベルの検出信号Lmpから溶融メタル層Mの液面レベルLmの上昇率を演算すると共に、当該液面レベルLmの上昇率と予かじめ設定した標準上昇率とを対比して、両者の差を減少させるのに必要とする供給電力の増・減値が演算され、供給電力指令信号Qwとしてプラズマ制御盤24へ出力される。
【0030】
都市ごみ等の焼却灰を被溶融物Aとし、プラズマアーク溶融炉(直流電源装置600〜1000KWH/T・被溶融物、電圧200〜350V)を用いた溶融試験の結果によれば、本発明の適用によって溶融スラグ層Bの温度を約1400℃〜1450℃の間に維持することが可能となり、従前の電気溶融炉に於ける溶融スラグ層Bの温度範囲(1300〜1700℃)に比較して、溶融スラグ層Bの温度変化が大幅に減少する。
また、溶融スラグ層Bの温度の変動が少なくなることにより、溶融スラグ層Bが無用の高温になることによる電気エネルギーのロスが減少し、溶融原単位が従前の場合に於ける700〜1000KWH/T・被溶融物から600〜900KWH/T・被溶融物Tに減少した。
【0031】
尚、図1の実施形態に於いては、溶融炉本体3の内部にメタルレベル検知器19を昇降動自在に配設すると共に、レベル検出センサーを用いて溶融メタル層Mの液面レベルLm(即ち溶融メタル層Mの層厚さLt)を直接的に検知するようにしているが、溶融炉本体3内へ配設するメタルレベル検知器19に替えて、溶融炉本体3の側壁外方に磁気方式又は超音波方式のメタルレベル検知器を設け、炉側壁の外方から溶融メタル層Mの液面レベルLm(溶融メタル層Mの層厚さLt)を直接検出するようにしてもよい。
【0032】
【発明の効果】
請求項1〜3の発明に於いては、溶湯内の溶融メタル層Mの層厚さLt(溶融メタル層Mの液面レベルLm)に応じて溶融炉本体3への供給電力を調整することにより、溶融スラグ層Bの温度を設定値近傍に維持する構成としている。
その結果、溶融スラグ層B内の温度を迅速に、しかも正確にほぼ設定温度近傍に保持することができ、水滓スラグの品質が安定し、これを骨材として積極的に再利用することが可能となる。
また、電気溶融炉に於ける電気エネルギーの消費量が減少し、溶融原単位の大幅な低減が可能になるうえ、溶融炉を形成する耐火材の寿命が延びて、メンテナンス費の削減を図ることができる。
本発明は上述の通り優れた実用的効用を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の説明図である。
【図2】従前のごみ焼却処理設備に併置した電気溶融炉の説明図である。
【符号の説明】
Aは被溶融物、Mは溶融メタル層、Bは溶融スラグ層、Lmは溶融メタル層の液面レベル、Ltは溶融メタル層の層厚さ、Stは溶融スラグ層の層厚さ、Tbは温度検出信号、Pmは液面レベルの検出信号(溶融メタル層の厚さの検出信号)、Qwは供給電力指令信号、1は灰コンテナ、2は供給装置、3は溶融炉本体、4は黒鉛主電極、8は直流電源装置、10は溶融スラグ流出口、19はメタルレベル検知器、20はメタルレベル検知器の駆動装置、21はメタルレベル検知器の駆動操作盤、23は供給電力演算装置、24はプラズマ制御盤。
Claims (1)
- 溶湯内の溶融メタル層の液面レベルに応じて溶融炉本体への供給電力を調整することにより、溶融スラグ層の温度を設定値近傍に維持するようにした電気溶融炉の運転方法において、前記溶融メタル層の液面レベルを、溶湯内へ昇降自在に挿入され、先端部に磁気コイルを備えたレベル検出センサ又は溶融炉本体の炉側壁に埋込んだ磁気コイルを用いたレベル検出センサにより検出すると共に、検出した溶融メタル層の液面レベル信号Lmpを、被溶融物の性状やその供給量に応じて選択、設定される複数の溶融メタル層の液面レベルLmの上昇率の設定部及び前記各液面レベルLmの上昇率に対応する供給電力値の設定部とを備えた供給電力演算装置へ入力し、当該液面レベル信号Lmpから溶融メタル層Mの液面レベルLmの上昇率を演算すると共に、演算した上昇率と前記予め設定した標準の上昇率とを対比して両者の差を減少させるのに必要な供給電力の増・減値を前記供給電力値の設定値を用いて演算し、当該演算値を供給電力指令信号Qwとしてプラズマ制御盤へ入力することにより溶融炉本体への供給電力を調整する構成としたことを特徴とする電気溶融炉の運転方法。
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