JP3985127B2 - マルチピースソリッドゴルフボール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム質の弾性ソリッドコアを複数層の樹脂カバーで被覆したマルチピースソリッドゴルフボールに関し、特に飛距離性能とコントロール性の面で優れた少なくとも3層の樹脂カバーを具備するマルチピースソリッドゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ソリッドゴルフボールは、ゴム質の弾性ソリッドコアを耐カット性、耐摩耗性等の外傷防止の面で優れた比較的硬いアイオノマー樹脂製カバーで被覆した構造のものが知られている。
【0003】
このようなソリッドゴルフボールは、優れた飛距離特性を有する反面、打感が硬いため、プロゴルファー等の上級者には不満があり、そのため樹脂カバーを複数層に形成し、そのうちカバー外層によって保護されるカバー内層に柔軟性を持たせたり、厚みを増したりして打感を緩和することが試みられてきた。
【0004】
しかしながら、カバー内層を単に軟らかくしたり、厚みを増したりしただけでは、ドライバー等のロフトの小さいクラブによる打球のスピンが増加したり、ボールの反発性が減少して飛距離が低下し、また、アイアンクラブによる向かい風に対しての打球に吹け上りが生じ易いなどの問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ゴム質の弾性ソリッドコアを少なくとも3層の樹脂カバーで被覆したマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、ボールの反発性を損うことなく、ドライバーショット時のスピンの不所望な増加を抑え、高い飛び性能を有すると共に、ショートアイアンによる打球のスピンの維持に基づくコントロール性に優れ、また、耐久性及び打感が良好な高性能なマルチピースソリッドゴルフボールを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため、下記のマルチピースソリッドゴルフボールを提供する。
【0007】
請求項1:
ゴム質の弾性ソリッドコアを少なくとも3層の樹脂カバーで被覆したマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、上記コアは、その直径が29.27〜40.47mmであり、294N(30kgf)の荷重を加えた時に1.6mm以上変形する硬さを有する一方、上記カバーはコアに近接したカバー内層のショアD硬度が55以上であり、外表面に多数のディンプルを具備するカバー外層のショアD硬度が40〜55であり、これらカバー内外層に挟まれたカバー中間層は8〜50のショアD硬度Aと、1.2mm以下の厚みBを有すると共に、該A,Bが46≧A/B≧35の関係を満たすことを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
請求項2:
ゴム質の弾性ソリッドコアを少なくとも3層の樹脂カバーで被覆したマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、上記コアは、その直径が29.27〜40.47mmであり、294N(30kgf)の荷重を加えた時に1.6mm以上変形する硬さを有する一方、上記カバーはコアに近接したカバー内層の主材が、下記の(a),(b)
(a)アイオノマー樹脂にオレフィン系エラストマー及び/又はポリエステル系エラストマーをブレンドしたもの
(b)アイオノマー樹脂に、分子量が280以上の脂肪酸又はその誘導体と、各々の酸基を中和することのできる塩基性無機金属化合物とを加熱混合したもの
のいずれか一方であり、そのカバー内層のショアD硬度が55以上であり、外表面に多数のディンプルを具備するカバー外層のショアD硬度が40〜55であり、これらカバー内外層に挟まれたカバー中間層は8〜50のショアD硬度Aと、1.2mm以下の厚みBを有すると共に、該A,Bが46≧A/B≧35の関係を満たすことを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
請求項3:
上記ディンプルが平面視円形であって、ディンプル容積にディンプル直径の平方根を乗じることによって得られるディンプル弾道容積の総和が530〜750である請求項1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
請求項4:
カバー中間層が、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アイオノマー樹脂又はこれらの混合物を主材として形成された請求項1乃至3のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
請求項5:
カバー中間層の厚みが0.1〜1.2mmである請求項1乃至4のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
請求項6:
カバー外層が、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー、熱硬化性ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー又はこれらの混合物を主材として形成された請求項1乃至5のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
請求項7:
カバー外層が、芳香族又は脂肪族ジイソシアネートを用いて得られる熱可塑性ポリウレタン系エラストマーを主材として形成された請求項6記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
請求項8:
カバー外層が、熱可塑性ポリウレタン系エラストマーと、イソシアネート化合物との反応生成物を主材として形成された請求項6又は7記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
請求項9:
上記カバーのショアD硬度が、各層間で内層≧外層≧中間層の順である請求項1乃至8のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
請求項10:
上記カバーの各層間に接着剤層を介在させてなる請求項1乃至9のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
請求項11:
カバー中間層の厚みが0.1〜0.9mmであり、A/Bの値が38以上である請求項1〜10のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
請求項12:
上記内層カバーの主材において、上記アイオノマー樹脂と上記オレフィン系エラストマー及び/又はポリエステル系エラストマーをとの混合割合が、質量比で40:60〜95〜5である請求項2〜11のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
請求項13:
ゴルフボールの直径が42.67mm以上44mm以下である請求項1〜12のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
請求項14:
上記A/Bの値が、46≧A/B≧38である請求項1〜13のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【0008】
本発明によれば、ゴム質の弾性ソリッドコアを少なくとも3層の樹脂カバーで被覆し、ボール表面に多数のディンプルを備えたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、カバー各層の硬さと厚みを適正に組合わせることにより、反発性を損うことなく、ドライバーでのフルショットでのスピンが増えすぎないと共に、ディンプル容積にディンプル直径の平方根を乗じることによって得られるディンプル弾道容積VTの総和を適正な範囲とすることにより、低めの弾道と弾道の落ち際に伸びを有し、これらが相俟って、ドライバーショットでの風に影響され難く、ランが多くなり飛び性能に優れ、かつショートアイアンでのアプローチショット時のスピン性能に優れた高性能なマルチピースソリッドゴルフボールが得られるものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールGは、例えば図1に示したように、ソリッドコア1と、このコアを被覆するカバー内層2と、このカバー内層を被覆するカバー中間層3と、このカバー中間層を被覆するカバー外層4とを備えたものである。なお、図1中、Dはディンプルを示す。
【0010】
ここで、上記ソリッドコア1は、ゴム組成物にて形成したものが好ましい。ゴム組成物としては、基材としてポリブタジエンを使用したものが好ましい。このポリブタジエンとしては、シス構造を少なくとも40%以上有する1,4−シスポリブタジエンが好適に挙げられる。また、この基材ゴム中には、所望により該ポリブタジエンに天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴムなどを適宜配合することができる。ゴム成分を多くすることにより、ゴルフボールの反発性を向上させることができる。
【0011】
また、上記ゴム組成物には、架橋剤としてメタクリル酸亜鉛、アクリル酸亜鉛等の不飽和脂肪酸の亜鉛塩、マグネシウム塩やトリメチルプロパンメタクリレート等のエステル化合物を配合し得るが、特にアクリル酸亜鉛を好適に使用し得る。これら架橋剤の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対し、10質量部以上50質量部以下、特に20質量部以上45質量部以下とすることが好ましい。
【0012】
上記ゴム組成物中には、通常、加硫剤が配合されているが、この加硫剤中には、1分間で半減期を迎える温度を155℃以下とするパーオキサイドが含まれていることが推奨され、その含有量は加硫剤全体の30質量%以上、特に40質量%以上であり、その上限は特に制限されないが、70質量%以下であることが好ましい。このようなパーオキサイドとしては、市販品を用いることができ、例えばパーヘキサ3M(日本油脂社製)などが挙げられる。加硫剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対し、0.6質量部以上2質量部以下とすることができる。
【0013】
更に必要に応じて、老化防止剤や比重調整用の充填剤として酸化亜鉛や硫酸バリウム等を配合することができる。
【0014】
上記成分を配合して得られるソリッドコア組成物は、通常の混練機、例えばバンバリーミキサーやロール等を用いて混練し、コア用金型に圧縮又は射出成形し、成形体を架橋剤及び共架橋剤が作用するのに十分な温度、例えば加硫剤としてジクミルパーオキサイドを用い、架橋剤としてアクリル酸亜鉛を用いた場合には、約130〜170℃、特に150〜160℃で10〜40分、特に12〜20分加熱硬化してソリッドコアを調製する。
【0015】
上記ゴム組成物は、公知の方法で加硫・硬化させてソリッドコアを製造することができる。
【0016】
また、このソリッドコアは、294N(30kgf)の荷重を負荷した場合における変形量が1.6mm以上であることが必要であり、好ましくは1.7mm以上、より好ましくは1.8mm以上、更に好ましくは1.9mm以上、最も好ましくは2.0mm以上であり、上限として6.0mm以下、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは4.0mm以下、更に好ましくは3.5mm以下、最も好ましくは3.0mm以下である。上記294N(30kgf)の荷重負荷時の変形量が上記値より小さいと、フィーリングが硬くなり、好ましくない。一方、上記変形量が大きすぎると、反発性及び耐久性が低下するおそれがある。なお、コア断面の硬度分布(JIS−C硬度)は、中心〜表面間で平坦であっても、中心〜表面間で傾斜をもたせても、或いは部分的に硬度差を設けても構わない。
【0017】
上記ソリッドコアの比重は1.0以上、好ましくは1.05以上、より好ましくは1.1以上であり、上限として1.3以下、好ましくは1.25以下、より好ましくは1.2以下である。
【0018】
なお、コアは一種類の材料からなる単層構造としても、異種の材料からなる層を積層した二層以上からなる多層構造としても構わない。
【0019】
上記ソリッドコア1を被覆するカバー内層2は、アイオノマー樹脂又はアイオノマー樹脂とポリオレフィン系エラストマーとからなる樹脂成分を主材としたものにて形成することが好ましい。また、アイオノマー樹脂にポリエステル系エラストマーをブレンドしたもの、アイオノマー樹脂の中和度を上げた樹脂材料、及び酸含有量の高いアイオノマー樹脂も好適に用いることができる。
【0020】
アイオノマー樹脂に更にポリオレフィン系エラストマーを混合することにより、各々を単独で使用したときに達し得ない特性(例えば打感や反発性)を得ることができる。ポリオレフィン系エラストマーとしては、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ゴム強化ポリオレフィンポリマー、フレキソマー、プラストマー、酸変性物を含む熱可塑性エラストマー(スチレン系ブロックコポリマー、水素添加ポリブタジエンエチレンプロピレンゴム)、動的に加硫されたエラストマー、エチレンアクリレート、エチレンビニルアセテート等が挙げられる。具体的には、三井・デュポンポリケミカル社製「HPR」,日本合成ゴム社製「ダイナロン」等の市販品が用いられる。
【0021】
アイオノマー樹脂とポリオレフィン系エラストマーとの混合割合は、質量比で40:60〜95〜5、好ましくは45:55〜90:10、更に好ましくは48:52〜88:12、特に55:45〜85:15であることが望ましい。オレフィン系エラストマーが少なすぎると打感が硬くなりやすい場合がある。一方、これが多すぎると反発性が低下するおそれがある。
【0022】
なお、上記アイオノマー樹脂は、Zn,Mg,Na,Li等のイオン中和タイプを用いることができる。この場合、比較的軟らかく、反発性の高いZn又はMgイオン中和タイプアイオノマー樹脂を5〜100質量%、より好ましくは10〜80質量%、更に好ましくは15〜70質量%含むものであることが好ましい。このアイオノマー樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他のポリマーを配合しても差し支えない。
【0023】
また、上記カバー内層は、アイオノマー樹脂にポリエステル系エラストマーもブレンドすることができ、その混合割合は質量比で40:60〜95:5、好ましくは45:55〜90:10、より好ましくは48:52〜88:12、更に好ましくは55:45〜85:15であることが好ましい。ポリエステル系エラストマーが少なすぎると打感が硬くなり易い場合がある。一方、多すぎると反発性が低下する場合がある。
【0024】
また、上記カバー内層はアイオノマー樹脂に分子量が280以上の脂肪酸又はその誘導体と、各々の酸基を中和することのできる塩基性無機金属化合物を加熱混合してアイオノマー樹脂の酸基の中和度を向上させた材料を用いることができる。更に、カバー内層としては、アイオノマー樹脂の酸含量を向上させたアイオノマー樹脂〔例えばハイミランAM7317、同AM7318(三井・デュポンポリケミカル社製)など〕を用いることができる。
【0025】
なお、カバー内層には、酸化亜鉛、硫酸バリウム、二酸化チタン等の無機充填剤を30質量%程度、特に1〜20質量%含有することが好ましい。
【0026】
カバー内層のショアD硬度は55以上、好ましくは56以上、より好ましくは57以上、更に好ましくは58以上、最も好ましくは60以上であり、また70以下、好ましくは68以下、より好ましくは66以下、更に好ましくは64以下、最も好ましくは62以下である。カバー内層のショアD硬度が低すぎるとボールの反発性が低下し、一方、高すぎると打感が硬くなってしまう。
【0027】
更に、カバー内層の比重は0.8以上、より好ましくは0.9以上、更に好ましくは0.92以上であり、また1.4以下、より好ましくは1.16以下、更に好ましくは1.1以下であることが好ましい。
【0028】
なお、上記カバー内層の厚さは0.5mm以上、好ましくは0.7mm以上、より好ましくは0.9mm以上、更に好ましくは1.1mm以上であり、また3.0mm以下、より好ましくは2.5mm以下、更に好ましくは2.0mm以下である。
【0029】
上記カバー内層2を被覆するカバー中間層3は、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アイオノマー樹脂又はこれらの混合物を主材としたものにて形成することが好ましい。これらカバー中間層材としては、ゴルフボールのカバー材として普通に用いられているものを使用することができる。
【0030】
熱可塑性ポリエステルエラストマーとしては、テレフタル酸、1,4−ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリプロピレングリコール(PPG)とから合成される。ポリブチレンテレフタレート(PBT)部分をハードセグメント、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリプロピレングリコール(PPG)部分をソフトセグメントとするポリエーテルエステル系のマルチブロックコポリマーをいい、具体的には、ハイトレル3078、同4047、同G3548W、同4767、同5577(東レ・デュポン製)などが挙げられる。
【0031】
熱可塑性ポリウレタン系エラストマーとしては、その分子構造が、ソフトセグメントを構成する高分子ポリオール化合物と、ハードセグメントを構成する単分子鎖延長剤とジイソシアネートとを含むものが好適である。
このような熱可塑性ポリウレタン系エラストマーとしては、市販品を用いることができ、例えばパンデックスT7298(−20℃),同T7295(−26℃),同T7890(−30℃)(DIC・バイエルポリマー社製)などのジイソシアネートが脂肪族であるものが挙げられる。なお、括弧内の数字はいずれもtanδピーク温度を示す。
【0032】
ポリオレフィン系エラストマーとしては、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ゴム強化ポリオレフィンポリマー、フレキソマー、プラストマー、酸変性物を含む熱可塑性エラストマー(スチレン系ブロックコポリマー、水素添加ポリブタジエンエチレンプロピレンゴム)、動的に加硫されたエラストマー、エチレンアクリレート、エチレンビニルアセテート等が挙げられる。具体的には、三井・デュポンポリケミカル社製「HPR」,日本合成ゴム社製「ダイナロン」等の市販品が用いられる。
【0033】
ポリアミド系エラストマーとしては、ナイロンオリゴマーであるナイロン6,11,12をハードセグメント、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、又はポリプロピレングリコール(PPG)をソフトセグメントとするポリアミド系のマルチブロックコポリマーをいい、具体的にはペバックス2533,3533,4033(エルフ−アトケム社製)などが挙げられる。
【0034】
これらカバー中間層材の中でも、好適な材料としては、特にポリエステル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマーが挙げられる。
【0035】
カバー中間層のショアD硬度は8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは15以上、最も好ましくは17以上であり、また50以下、好ましくは45以下、より好ましくは35以下、更に好ましくは30以下、最も好ましくは25以下である。カバー中間層のショアD硬度が低すぎるとフルショット時のスピンが増えすぎ、飛距離が低下する。一方、高すぎると打感が硬くなりすぎてしまう。
【0036】
また、カバー中間層の厚さは1.2mm以下、好ましくは1.1mm以下、より好ましくは1.0mm以下、更に好ましくは0.9mm以下、最も好ましくは0.8mm以下であり、また0.1mm以上、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.4mm以上、最も好ましくは0.5mm以上であり、カバー各層間において最も薄いことが好ましい。
【0037】
本発明においては、カバー中間層はそのショアD硬度をAとし、その厚みをBとすると、46≧A/B≧35の関係を満たすことが必要であり、好ましくはA/B≧38、より好ましくはA/B≧40、更に好ましくはA/B≧41、最も好ましくはA/B≧42である。A/Bが小さすぎるとフルショットでのスピンが増えすぎて飛距離が低下する不具合が生じる。
【0038】
上記カバー中間層3を被覆するカバー外層4は、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー、熱硬化性ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー又はこれらの混合物を主材としたものにて形成することが好ましい。また、ポリアミド系エラストマー、アイオノマー樹脂、ポリエステル系エラストマー/アイオノマー樹脂=100/0〜60/40(質量比)でブレンドしたもの、芳香族又は脂肪族イソシアネートを用いて得られる熱可塑性ポリウレタン系エラストマーを主材としたもの、熱可塑性ポリウレタン系エラストマーとイソシアネート化合物との反応生成物を主成分としたものなども好適に用いることができる。
【0039】
ここで、熱可塑性ポリウレタン系エラストマーとしては、その分子構造が、ソフトセグメントを構成する高分子ポリオール化合物と、ハードセグメントを構成する単分子鎖延長剤とジイソシアネートとを含むものが好適である。
【0040】
高分子ポリオール化合物としては、特に制限されるものではないが、例えばポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、コポリエステル系ポリオール又はポリカーボネート系ポリオールなどが挙げられる。ポリエステル系ポリオールとしては、例えばポリカプロラクトングリコール、ポリ(エチレン−1,4−アジペート)グリコール、ポリ(ブチレン−1,4−アジペート)グリコールなどが挙げられ、コポリエステル系ポリオールとしては、ポリ(ジエチレングリコールアジペート)グリコールなどが挙げられ、ポリカーボネート系ポリオールとしては、(ヘキサンジオール−1,6−カーボネート)グリコールなどが挙げられ、ポリエーテル系ポリオールとしては、ポリオキシテトラメチレングリコール等が挙げられる。これらポリオール化合物の数平均分子量は約600〜5000、好ましくは1000〜3000である。
【0041】
単分子鎖延長剤としては、通常の多価アルコール、アミン類を用いることができ、例えば1,4−ブチレングリコール、1,2−エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジシクロヘキシルメチルメタンジアミン(水添MDA)、イソホロンジアミン(IPDA)などが挙げられる。
【0042】
ジイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネート又は芳香族ジイソシアネートを好適に用いることができる。具体的には、脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4(2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、リジンジイソシアネート(LDI)などが挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
これらの中でも、特にカバーの耐黄変性の点から脂肪族ジイソシアネートが好ましく、中でもHDIが他の樹脂とブレンドする際の相溶性の点から好ましい。
【0043】
上記熱可塑性ポリウレタン系エラストマーは、粘弾性測定によるtanδピーク温度が−15℃以下、特に−16℃以下、下限として−50℃以上であるものが軟らかさ、反発性の点から好ましい。
【0044】
このような熱可塑性ポリウレタン系エラストマーとしては、市販品を用いることができ、例えばパンデックスT7298(−20℃),同T7295(−26℃),同T7890(−30℃)(DIC・バイエルポリマー社製)などのジイソシアネートが脂肪族であるものが挙げられる。なお、括弧内の数字はいずれもtanδピーク温度を示す。
【0045】
本発明のカバー外層材としては、上述した熱可塑性ポリウレタン系エラストマーとイソシアネート化合物との反応生成物を用いることもでき、これによりアイアン打撃時の表面耐久性を更に向上させることができる。
【0046】
イソシアネート化合物としては、通常のポリウレタンに使用されているイソシアネート化合物であれば特に制限なく用いることができ、例えば芳香族イソシアネート化合物としては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート又はこれら両者の混合物、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニルジイソシアネートなどが挙げられ、これら芳香族イソシアネート化合物の水添物、例えばジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどを用いることもできる。また、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、オクタメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。更に、末端に2個以上のイソシアネート基を有する化合物のイソシアネート基と活性水素を有する化合物とを反応させたブロックイソシアネート化合物や、イソシアネートの二量化によるウレチジオン体などが挙げられる。
【0047】
上記イソシアネート化合物の配合量は、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー100質量部に対して、通常0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.3質量部以上、また10質量部以下、好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下であることが好ましい。少なすぎると十分な架橋反応が得られず、物性の向上が認められない場合がある。一方、多すぎると経時、熱、紫外線による変色が大きくなる、熱可塑性を失ってしまったり、反発の低下等の問題が生じる場合がある。
【0048】
本発明におけるカバー外層材は、熱硬化性ポリウレタンとしては、ポリイソシアネート、例えば2,4−トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンビス−(4−シクロヘキシルイソシアネート)(HMDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、又は3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート(TODI)と、ポリアミン、例えばメチレンジアニリン(MDA)で硬化するポリオール、3価グリコール、例えばトリメチロールプロパン、又は4価グリコール、例えばN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンから得られる。
【0049】
好適なポリエーテルポリオールとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール、又はポリブタジエングリコールである。
好適なポリエステルポリオールとしては、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリエチレンプロピレンアジペートグリコール、又はポリブチレンアジペートグリコールである。
好適なポリラクトンポリオールとしては、ジエチレングリコール開始カプロラクトン、1,4−ブタンジオール開始カプロラクトン、トリメチロールプロパン開始カプロラクトン、又はネオペンチルグリコール開始カプロラクトンである。これらの中でも好ましいポリオールとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコール、又はジエチレングリコール開始カプロラクトンである。
【0050】
好適な硬化剤としては、3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミン、3,5−ジメチルチオ−2,6−トルエンジアミン、N,N’−ジアルキルジアミノジフェニルメタン、トリメチレン−グリコール−ジ−p−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート、2価グリコール及びこれらの混合物からなる遅反応性ポリアミン群から選ばれる。
【0051】
3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミン及び3,5−ジメチルチオ−2,6−トルエンジアミンは異性体であり、エチルコーポレーションから、ETHACURE(登録商標)300の商品名で販売されている。
トリメチレン−グリコール−ジ−p−アミノベンゾエートはPOLACURE740Mの商品名で、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエートはPOLAMINESの商品名で、ポラロイド社から販売されている。
N,N’−ジアルキルジアミノジフェニルメタンはUOPからUNILINK(登録商標)の商品名で販売されている。
【0052】
好ましいグリコールとしてはPTMEG、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールである。
【0053】
好適な2価グリコールとしては、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、又はエチレングリコールである。2価グリコールは本来的に遅反応性である。
【0054】
このように熱硬化性ポリウレタンは、多数の商業的に入手可能な芳香族、脂肪族、及び脂環族ジイソシアネートとポリイソシアネートから製造することができる。
【0055】
熱可塑性ポリエステルエラストマーとしては、テレフタル酸、1,4−ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリプロピレングリコール(PPG)とから合成される。ポリブチレンテレフタレート(PBT)部分をハードセグメント、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリプロピレングリコール(PPG)部分をソフトセグメントとするポリエーテルエステル系のマルチブロックコポリマーをいい、具体的には、ハイトレル3078、同4047、同G3548W、同4767、同5577(東レ・デュポン製)などが挙げられる。
【0056】
ポリアミド系エラストマーとしては、ナイロンオリゴマーであるナイロン6,11,12をハードセグメント、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、又はポリプロピレングリコール(PPG)をソフトセグメントとするポリアミド系のマルチブロックコポリマーをいい、具体的にはペバックス2533,3533,4033(エルフ−アトケム社製)などが挙げられる。
【0057】
アイオノマー樹脂としてはソリッドゴルフボールのカバー材として通常使用されるものを用いることができる。具体的には、市販品を用いることができ、ハイミラン1855(三井・デュポンポリケミカル社製)、サーリン8120,同8320,同6320(米国デュポン社製)などを挙げることができ、2種以上のアイオノマー樹脂を組み合わせて用いることもできる。また必要により、各々の樹脂を単独又は複数種混合して用いることができる。なお、カバー材には顔料、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、可塑剤等の公知の添加剤を配合することもできる。
【0058】
カバー外層のショアD硬度は40以上、好ましくは42以上、より好ましくは44以上、更に好ましくは46以上、最も好ましくは48以上であり、また55以下、好ましくは54以下、より好ましくは53以下、更に好ましくは52以下であり、カバー内層より軟らかく、カバー中間層より硬いことが好ましい。即ち、本発明において、カバーのショアD硬度は各層間で内層≧外層≧中間層の順であることが好ましい。カバー外層のショアD硬度が低すぎるとスピンがかかりすぎ、飛距離が低下する。一方、高すぎるとスピンのかかりが少なすぎ、コントロール性が低下する。
【0059】
カバー外層の比重は0.9以上、好ましくは0.95以上、より好ましくは1.0以上、更に好ましくは1.05以上であり、上限は1.3以下、好ましくは1.25以下、より好ましくは1.22以下、更に好ましくは1.19以下である。カバー外層の厚みは0.5mm以上、好ましくは0.7mm以上、より好ましくは0.9mm以上、更に好ましくは1.1mm以上であり、上限は2.5mm以下、好ましくは2.3mm以下、より好ましくは2.0mm以下、更に好ましくは1.8mm以下である。
【0060】
なお、カバー内層,中間層,外層を形成する方法としては、特に制限はなく、通常のインジェクション成形又はコンプレッション成形を採用することができる。
【0061】
本発明においては、カバー各層間(例えばカバー内層とカバー中間層の間、カバー中間層とカバー外層との間)には、打撃時の耐久性を向上させる目的のために、接着剤層を設けることが好ましい。接着剤としては、エポキシ樹脂系接着剤、ビニル樹脂系接着剤、ゴム系接着剤などを用いることもできるが、特にウレタン樹脂系接着剤、塩素化ポリオレフィン系接着剤を用いることが好ましい。
【0062】
この場合、接着剤層の形成をディスパージョン塗装にて行うことができるが、ディスパージョン塗装に用いるエマルジョンの種類に限定はない。エマルジョン調製用の樹脂粉末としては、熱可塑性樹脂粉末でも熱硬化性樹脂粉末でも用いることができ、例えば酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル共重合樹脂、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂)、アクリル酸エステル(共)重合樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂等を使用することができる。これらの中で、特に好ましいのはエポキシ樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、アクリル酸エステル(共)重合樹脂であり、中でも熱可塑性ウレタン樹脂が好適である。
【0063】
なお、接着剤層の厚さは好ましくは0.1〜30μm、より好ましくは0.2〜25μm、更に好ましくは0.3〜20μmである。
【0064】
次に、本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、表面に多数のディンプルが形成されたものであり、ディンプル容積にディンプル直径の平方根を乗じることによって得られるディンプル弾道容積VTの総和(総ディンプル弾道容積TVT)が530〜750であることが好ましい。この場合、TVTの下限は530以上、好ましくは600以上、より好ましくは610以上であり、上限は750以下、好ましくは700以下、より好ましくは670以下である。
【0065】
ここで、本発明において、図2に示したように、ディンプルD中央部における縦断面を見たとき、図2における左右の最高点が水平になるようにした場合での最高点をディンプルエッジE,Eとし、このエッジE,E間をディンプルの直径Djとする。また、上記エッジE,Eを結んだ線分からディンプル最深部までの距離をディンプル深さDeとする。従って、ディンプル容積Vは、上記エッジに囲まれる部分のディンプル容積となる。
【0066】
即ち、本発明におけるTVTは、各ディンプルのVT(=V×Dj 0.5)の総和である。このTVTの値により、ドライバーショットでの高ヘッドスピード、特に50m/s程度でのおおよその弾道高さがわかる。通常、TVTが小さいと仰角が大きくなり、TVTが大きいと仰角が小さくなる。本発明では、上述したように、TVTを530〜750の範囲とすることが好適であり、TVTが小さすぎると、高弾道になりすぎてランが十分出ず、トータル飛距離が低下する場合がある。一方、TVTが大きすぎると、低弾道になりすぎてキャリー不足となり、同様に飛距離が低下する場合がある。更に、本発明のTVTの範囲外では、キャリーのバラツキが大きくなり、いずれも性能の安定性に欠ける場合がある。
【0067】
なお、本発明において、ディンプル形状は、通常平面視円形であり、その直径は1.8mm以上、より好ましくは2.4mm以上、更に好ましくは3mm以上であり、また4.6mm以下、より好ましくは4.4mm以下、更に好ましくは4.2mm以下であることが好ましい。深さは0.08mm以上、より好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.12mm以上であり、また0.22mm以下、より好ましくは0.2mm以下、更に好ましくは0.19mm以下であることが好ましい。
【0068】
ディンプルの総数は、360個以上540個以下である。より好ましくは380個以上、更に好ましくは390個以上であり、またより好ましくは450個以下、更に好ましくは400個以下である。この場合、ディンプルは、その直径が互いに異なる2種以上、より好ましくは3種以上、更に好ましくは4種以上であり、また直径が互いに異なる6種以下、特に5種以下の組み合わせである多種ディンプルであることが好ましい。また、深さが互いに相違してもよい。従って、互いにVTが相違する4種以上、特に5種以上であり、また10種以下、特に8種以下のディンプルの組み合わせとすることが好適である。
【0069】
上記ディンプルの配列方法は、公知の方法を採用し得、上記ディンプルが均等に配置していれば特に制限されないが、8面体配列、20面体配列、半球を2〜6に等分割するなどの球面分割法を採用し得、その分割領域内にディンプルを配置する方法とすることができる。なお、これらの方法に微修正を施す方法もとることができる。この場合、ディンプル表面占有率は69〜82%、特に72〜77%であることが好ましい。
【0070】
本発明のゴルフボールの直径及び重さは、ゴルフ規則に従うものであるが、直径42.67mm以上で、44mm以下、より好ましくは43.5mm以下、更に好ましくは43mm以下の範囲に形成することが好ましい。また、重さは45.92g以下で、44.5g以上、より好ましくは44.8g以上、更に好ましくは45g以上、最も好ましくは45.1g以上の範囲が好ましい。
【0071】
【発明の効果】
本発明によれば、ゴム質の弾性ソリッドコアを少なくとも3層の樹脂カバーで被覆したマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、ボールの反発性を損うことなく、ドライバーショット時のスピンの不所望な増加を抑え、高い飛び性能を有すると共に、ショートアイアンによる打球のスピンの維持に基づくコントロール性に優れ、耐久性及び打感が良好なマルチピースソリッドゴルフボールを得ることができる。
【0072】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0073】
〔実施例,比較例〕
常法に従い、表1,2に示したソリッドコア上に、表3〜5に示したカバー内層、カバー中間層、及びカバー外層を順次形成すると共に、表6に示したディンプルを均一に形成し、表7,8に示したスリーピースソリッドゴルフボール、及びフォーピースソリッドゴルフボールを製造した。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
*ポリブタジエン:JSR BR11(日本合成ゴム社製)
*ジクミルパーオキサイド:パークミルD(日本油脂社製)
*老化防止剤:ノクラックNS6(大内新興化学社製)
【0076】
【表3】
*表中、添加剤の数値は樹脂成分の合計(100)に対する値を示す。
【0077】
【表4】
*表中、添加剤の数値は樹脂成分の合計(100)に対する値を示す。
【0078】
【表5】
*表中、添加剤の数値は樹脂成分の合計(100)に対する値を示す。
*パンデックス:DIC・バイエルポリマー社製、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー
*ニュクレル:三井・デュポンポリケミカル社製、エチレン・メタクリル酸・アクリル酸エステル共重合体及びエチレン−メタクリル酸共重合体
*ハイミラン:三井・デュポンポリケミカル社製、アイオノマー樹脂
*ダイナロン:JSR社製、ポリブタジエン水素添加物
*プリマロイ:三菱化学社製、熱可塑性ポリエステルエラストマーを主材とするアロイ材料
*HPR:三井・デュポンポリケミカル社製、エチレン・エチルアクリレート共重合樹脂の無水マレイン酸グラフト変性物
*サーリン:米国デュポン社製、アイオノマー樹脂
*ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート:住友バイエルウレタン工業社製
*ハイトレル:東レ・デュポン社製、熱可塑性ポリエステルエラストマー
【0079】
【表6】
【0080】
得られた各ゴルフボールについて、下記方法で飛び試験を行った。また下記方法でスピン、フィーリング、耐ササクレ性、連続耐久性を評価した。結果を表7,8に示す。
【0081】
飛び試験
ミヤマエ社製スイングロボットを用い、ドライバー(#W1)によりヘッドスピード(HS)50m/sで各ボールを20発ずつ打撃し、キャリー、トータル飛距離を測定し、弾道形態を評価した。
<使用クラブ>
ヘッド: ブリヂストンスポーツ社製,J’s−METAL,
ロフト角7.5°,ライ角57°,SUS630ステンレス,
ロストワックス製法
シャフト:ハーモテックプロ,HM−70,LK(先調子),硬さX
スピン
ドライバー(#W1)、5番アイアン(#I5、ヘッドスピード(HS)38m/s)及びサンドウェッジ(#SW,ヘッドスピード(HS)20m/s)について、インパクト直後のボールの挙動を写真撮影し、写真解像により算出した。
フィーリング
#W1及びパター(#PT)について、プロゴルファー3名により実打したときの感触を下記基準により評価した。
◎:軟らかい
○:やや軟らかい
△:やや硬い
×:硬い
耐ササクレ性
スイングロボットにより、サンドウェッジ(#SW,ヘッドスピード(HS)38m/s)でボールを任意に2箇所打撃し、これを下記基準で目視評価した。◎:非常に良好
○:良好
△:普通
×:劣る
連続耐久性
フライホイール打撃M/Cを用いて、へットスピード38m/sで繰り返し打撃して、ボールが破壊するまでの打撃回数の多少により下記基準で評価した。
◎:非常に良好
○:良好
△:普通
×:悪い
【0082】
【表7】
【0083】
【表8】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るマルチピースソリッドゴルフボールの概略断面図である。
【図2】本発明におけるディンプル形状の説明図である。
【符号の説明】
1 ソリッドコア
2 カバー内層
3 カバー中間層
4 カバー外層
G ゴルフボール
D ディンプル
Dj ディンプル直径
De ディンプル深さ
E エッジ
Claims (14)
- ゴム質の弾性ソリッドコアを少なくとも3層の樹脂カバーで被覆したマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、上記コアは、その直径が29.27〜41.8mmであり、294N(30kgf)の荷重を加えた時に1.6mm以上変形する硬さを有する一方、上記カバーはコアに近接したカバー内層のショアD硬度が55以上であり、外表面に多数のディンプルを具備するカバー外層のショアD硬度が40〜55であり、これらカバー内外層に挟まれたカバー中間層は8〜50のショアD硬度Aと、1.2mm以下の厚みBを有すると共に、該A,Bが46≧A/B≧35の関係を満たすことを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
- ゴム質の弾性ソリッドコアを少なくとも3層の樹脂カバーで被覆したマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、上記コアは、その直径が29.27〜41.8mmであり、294N(30kgf)の荷重を加えた時に1.6mm以上変形する硬さを有する一方、上記カバーはコアに近接したカバー内層の主材が、下記の(a),(b)
(a)アイオノマー樹脂にオレフィン系エラストマー及び/又はポリエステル系エラストマーをブレンドしたもの
(b)アイオノマー樹脂に、分子量が280以上の脂肪酸又はその誘導体と、各々の酸基を中和することのできる塩基性無機金属化合物とを加熱混合したもの
のいずれか一方であり、そのカバー内層のショアD硬度が55以上であり、外表面に多数のディンプルを具備するカバー外層のショアD硬度が40〜55であり、これらカバー内外層に挟まれたカバー中間層は8〜50のショアD硬度Aと、1.2mm以下の厚みBを有すると共に、該A,Bが46≧A/B≧35の関係を満たすことを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。 - 上記ディンプルが平面視円形であって、ディンプル容積にディンプル直径の平方根を乗じることによって得られるディンプル弾道容積の総和が530〜750である請求項1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
- カバー中間層が、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アイオノマー樹脂又はこれらの混合物を主材として形成された請求項1乃至3のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
- カバー中間層の厚みが0.1〜1.2mmである請求項1乃至4のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
- カバー外層が、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー、熱硬化性ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー又はこれらの混合物を主材として形成された請求項1乃至5のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
- カバー外層が、芳香族又は脂肪族ジイソシアネートを用いて得られる熱可塑性ポリウレタン系エラストマーを主材として形成された請求項6記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
- カバー外層が、熱可塑性ポリウレタン系エラストマーと、イソシアネート化合物との反応生成物を主材として形成された請求項6又は7記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
- 上記カバーのショアD硬度が、各層間で内層≧外層≧中間層の順である請求項1乃至8のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
- 上記カバーの各層間に接着剤層を介在させてなる請求項1乃至9のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
- カバー中間層の厚みが0.1〜0.9mmであり、A/Bの値が38以上である請求項1〜10のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
- 上記内層カバーの主材において、上記アイオノマー樹脂と上記オレフィン系エラストマー及び/又はポリエステル系エラストマーをとの混合割合が、質量比で40:60〜95〜5である請求項2〜11のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
- ゴルフボールの直径が42.67mm以上44mm以下である請求項1〜12のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
- 上記A/Bの値が、46≧A/B≧38である請求項1〜13のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
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