JP3984706B2 - 画像記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被記録材にインク滴を吐出して画像を記録するインクジェット方式の画像記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、オフィスオートメーション化が進みパーソナルコンピュータ等の普及に伴い、パーソナルコンピュータ上のディジタル画像を記録するのにインクジェット方式のプリントヘッドを用いたインクジェットプリンタが急速に普及している。
【0003】
また、当該ディジタル画像の印字時間の短縮化や出力画像の高画質化のために、複数の記録素子を集積配列し、インク吐出口やインク流路を高密度に集積した記録ヘッド(以下、マルチヘッド)が主流となっている。
【0004】
さらに、画像のカラー化に対応させるため、上記マルチヘッドを複数備えたものが一般的になっている。
【0005】
しかし、多色インクを用いたカラー画像記録が一般化したことにより、モノクロのみで記録した場合の画質に加えて、発色性、再現性、階調性、一様性なども画像品位に関する重要な要素となっている。
【0006】
特に、カラー画像記録の一様性に関しては、マルチヘッドの製造工程で生じるノズル単位の僅かなバラツキが各ノズルの印字精度に悪影響を及ぼし、印字時のインクの吐出量や吐出方向にバラツキを生じさせるのである。この製造工程におけるバラツキが最終的に記録画像の濃度ムラとなって画像品位を劣化させる原因となるのである。
【0007】
そこで、ノズルのバラツキに起因する濃度ムラの防止対策として、例えば、特開昭60−107975号公報では、マルチヘッドを主走査方向に複数回スキャンさせながら画像を記録する方法が提案されている。
【0008】
この方法によれば、複数のノズルが並ぶマルチヘッドの全ノズル幅の領域の記録を完了させるためにマルチヘッドを主走査方向に3回スキャンさせ、マルチヘッド幅の全画素の半分ずつの領域の記録をそれぞれ2回のスキャンで完了させている。この場合、マルチヘッドの全ノズルはヘッドの上半分と下半分のグループに分けられ、1つのノズルが1回のスキャンで形成するドットは、画像データを所定の画像データ配列に従って半分に間引いたものに対応する。そして2回目のスキャン時において、残る半分の画像データに相当するドットを形成することで画像出力を完了させている。
【0009】
上記記録方法では、1回目のスキャンと2回目のスキャンとで分割された画像データが互いに補完し合うように、通常、画像データ配列(マスクパターン)に従って画像を記録する。このマスクパターンは、図21(a)、(b)に示すように、縦横の画素同士が千鳥格子になるようなパターンを用いるのが一般的である。そして、1回目のスキャンでは単位記録領域において図21(a)のパターンを用いて間引いた画像データに対応するドットを形成し、2回目のパターンでは、図21(b)に示す反転千鳥格子状のパターンを用いて間引いた画像データに対応するドットを形成する。このように、2回のスキャンにより単位記録領域の画像の出力を行うのである。
【0010】
以上説明したように、異なる2種類のノズルを使用して単位記録領域内の画像が記録されので、濃度ムラの無い高品位な画像を記録することが可能となる。
【0011】
図2は、従来の画像記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【0012】
図2に示すように、印字開始前にホームポジション位置にあるキャリッジ202は印字開始命令を受けると、主走査方向(X軸方向)に往復運動させることによりマルチヘッド206上のn個のマルチノズルを、分割された被記録材の記録領域上で往復させる。往運動による被記録材へのインク吐出が終了してキャリッジ202がキャリッジの反転位置まで達すると、キャリッジ202はホームポジション201へ向かって復運動を開始する。キャリッジ202がホームポジション側のキャリッジ反転位置に達すると、キャリッジ202は再び往運動を開始する。
【0013】
このキャリッジ202の往復運動による1回目の印字が終了してから2回目の印字が始まる前までに、被記録材搬送ローラ203と被記録材排出ローラ205が回転することによって被記録材204が搬送される。この送り量は、分割された記録領域幅だけ主走査方向(Y方向)に送り出されるように制御される。このようにして、キャリッジの1スキャン毎にマルチヘッドによる印字と被記録材の搬送を繰り返し行うことで画像出力が完了する。
【0014】
図3は、一般的なインクジェット方式の画像記録装置を示すブロック構成図である。
【0015】
図3に示すように、301はCPUで、その内部バスにはROM302とRAM303が接続される。CPU301はROM302からプログラムを読み出し、RAM303に対してリード/ライトを繰り返すことでプログラムを実行する。304は画像記録装置と不図示の外部ホスト装置との間でコマンド転送や画像データ転送を行うインタフェースであり、CPU301と後述するバンドメモリ307に接続される。305は各種キーによる入力操作や動作状態を表示するための操作・表示部でありCPU301に接続される。307は、バンドメモリであり、インタフェース304から印字のための画像データが転送され、CPU301の制御によって、1バンド分の画像データとして所定幅に分割された記録領域の画像記録に必要な画像データがストアされる。バンドメモリ307の出力は、マルチパスデータ処理部308に入力される。マルチパスデータ処理部308は、CPU301の制御によって、分割された印字領域の画像記録を複数回のスキャンで完了するように画像データの間引き処理を行ない、1スキャン分の画像データを生成し、ヘッドコントローラ309に出力する。309はヘッドコントローラであり、その出力はマルチヘッド310に接続される。ヘッドコントローラ309は、CPU301の制御によって、キャリッジが1スキャンの動作を行う間に、所定幅に分割された印字領域の画像記録が行われるように、マルチヘッド310を駆動する。マルチヘッド310は、ヘッドコントローラ309により制御され、ヘッド上に形成された複数のインク吐出口からインクを飛翔させて、キャリッジ動作と同期されて1スキャン分の画像記録を実行する。
【0016】
図6は、2パスに設定されたマルチパス印字時のヘッド位置と記録画像を示す図である。
【0017】
図6に示すように、2パス印字では、ヘッドを搭載したキャリッジが被記録材上を往復しながらインクを吐出することで画像を記録し、1回のスキャン動作毎に1/2バンド幅ずつ被記録材の搬送動作を行なう。1回のスキャン動作では、1バンド分の画像データのうち近接画素について間引かれた画像データを記録する。そして、2回のスキャンにより1バンド分の画像記録を完了させる。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例のように記録領域を分割して記録しても濃度ムラの弊害は完全には解消されていない。
【0019】
例えば、印字動作中にインク供給動作やヘッド回復動作が必要になり、1回目のスキャン終了から2回目のスキャン開始までに時間がかかってしまう場合には、特に高デューティ印字では印字時間差に起因する濃度変化が濃度ムラ(時間差ムラ)として現れることが知られている。
【0020】
ここで、図9、10を参照して印字時間差による濃度ムラについて説明する。図9、10は、所定の記録領域に対する画像記録を2回のスキャンで完了させる場合に、2回のスキャンの時間間隔が短い場合と長い場合とについて被記録材に対するインクの浸透と定着の様子を模式的に表した図である。
【0021】
図9、10において、801はインク滴、802は被記録材である。1回目のスキャンで被記録材802に浸透したインク滴801aは、紙面に垂直な方向および紙面に広がる方向へ浸透し、インク成分である染料などの色素が被記録材と物理的化学的に結合する。
【0022】
図9は、1パス目と2パス目との時間間隔が短い場合を示す図である。
【0023】
図9において、1パス目の印字後、2パス目のインク滴801bも被記録材に垂直な方向と、被記録材表面に広がる方向に浸透するが、先に着弾した801aが定着した領域にはあまり浸透・定着しない。その原因は、先に着弾したインク滴801aが未だ浸透しつつある状態にあること、被記録材とインク成分との化学的な結合が有限であることが考えられる。そのため、後から着弾したインク滴801bは、先に着弾したインク滴801aが浸透した領域のさらに下の方へ浸透・定着することになる。
【0024】
図10は、1パス目と2パス目との時間間隔が長い場合を示す図である。
【0025】
図10において、後から着弾したインク滴801bは、先に着弾して浸透・定着している領域に比較的多く浸透する。これは、先に着弾したインク滴801aが十分浸透して広がり、或いはその揮発成分が蒸発したため、単位体積当たりのインク滴801aの量が減少し、後から着弾したインク滴801bが浸透できるようになったためではないかと考えられる。
【0026】
即ち、1パス目と2パス目との時間間隔が長い方が被記録材の表面付近に定着するインク量、つまり染料などの色素やインク成分が多く残る。また、その濃度は、被記録材の表面付近に定着する色素の光の吸収に対応するので、時間間隔が長くなるほうが濃度が濃くなってしまう。
【0027】
このように、分割記録方法により画像を記録する場合、途中パスでの印字が中断されると、中断の前後の画像に濃度ムラを生じてしまうのである。
【0028】
本発明は、上述の課題に鑑み、その目的は、バンド分割による記録を行う際に印字が中断されても濃度ムラを生じないで、インク供給やヘッド回復など他動作を行ない、その後印字動作を再開できる画像記録装置及び画像記録方法を提供することである。
【0029】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明の画像記録装置は、複数のインク吐出口を備えるヘッドを被記録材の単位記録領域に対して3回走査させることにより画像を記録する画像記録装置において、前記被記録材を搬送する搬送手段と、各走査で記録に用いるインク吐出口を定めるための第2のマスクパターンを選択するパターンセレクタと、前記第2のマスクパターンと、前記単位記録領域に記録すべき画像データを前記3回の走査に分けるための第1のマスクパターンとに基づき、前記画像データを間引いて各走査の間引き画像データを生成する生成手段と、前記搬送手段、前記パターンセレクタ及び前記ヘッドを制御することにより、前記間引き画像データに基づいて記録中断前及び記録再開後における記録を実行させる制御手段と、を有し、前記制御手段は、(A)記録中断直前の2回の走査の間で前記被記録材を搬送し、記録再開直後の2回の走査の間で前記被記録材を搬送しないよう前記搬送手段を制御し、且つ記録中断直前に記録が完了される単位記録領域に対する当該記録中断直前の2回の走査で異なるインク吐出口群を用いるように前記第2のマスクパターンを選択し、記録再開直後に記録が開始される単位記録領域に対する当該記録再開直後の2回の走査で同一のインク吐出口群を用いるように前記第2のマスクパターンを選択するよう前記パターンセレクタを制御することにより、前記記録中断前及び記録再開後における記録を実行させる第1の記録動作と、(B)記録中断直前の2回の走査の間で前記被記録材を搬送せず、記録再開直後の2回の走査の間で前記被記録材を搬送するよう前記搬送手段を制御し、且つ記録中断直前に記録が完了される単位記録領域に対する当該記録中断直前の2回の走査で同一のインク吐出口群を用いるように前記第2のマスクパターンを選択し、記録再開直後に記録が開始される単位記録領域に対する当該記録再開直後の2回の走査で異なるインク吐出口群を用いるように前記第2のマスクパターンを選択するよう前記パターンセレクタを制御することにより、前記記録中断前及び記録再開後における記録を実行させる第2の記録動作と、を選択的に実行可能である。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図4は、本発明に係る代表的な実施形態のインクジェット方式の記録ヘッドを搭載する画像記録装置の概略ブロック図である。
【0032】
図4に示すように、401はCPUで、その内部バスにはROM402とRAM403が接続される。CPU401はROM402からプログラムを読み出し、RAM403に対してリード/ライトを繰り返すことでプログラムを実行する。404は不図示の外部ホスト装置との間でのコマンドや画像データ転送を行うインタフェースであり、CPU401と後述するバンドメモリ407に接続される。405は、本装置に対する各種キーの入力操作や動作状態を表示する操作・表示部であり、CPU401に接続される。406は、後述するマスクパターンセレクタであり、CPU401に接続されて制御され、その出力は後述するマルチパスデータ処理部408に接続される。407はバンドメモリであり、インタフェース404から印字のための画像データが転送され、CPU401の制御によって、1バンド分の画像データとして所定幅に分割された領域の印字に必要な画像データがストアされる。バンドメモリ407の出力は、マルチパスデータ処理部408に入力される。マルチパスデータ処理部408は、CPU401の制御によって、分割された領域の印字を複数回のスキャンで完了するように画像データの間引き処理を実行し、1スキャン分の画像データを生成し、ヘッドコントローラ409に出力する。409はヘッドコントローラであり、その出力はマルチヘッド410に入力される。ヘッドコントローラ409は、CPU401の制御によって、キャリッジが1スキャン動作を行う間に、所定幅に分割された領域の印字が実行されるようにマルチヘッド410を駆動する。マルチヘッド410は、ヘッドコントローラ409により制御されて、記録ヘッド上に形成された複数のインク吐出口からインクを飛翔させて、キャリッジ動作と同期しながら1スキャン分の印字を実行する。
【0033】
次に、本実施形態の画像記録装置が2回の走査によって所定幅の領域の印字を実行する動作(2パス印字)について説明する。
【0034】
図1は、2パス印字動作を休止及び再開させた場合のヘッド位置とインク吐出口の分布位置の変化を示す図である。図5は、CPU401の制御動作を示すフローチャートである。
【0035】
図1、図4及び図5において、先ず、インタフェース404を経由して印字要求コマンドがCPU401に入力されると、CPU401は1バンド分の画像データをバンドメモリ407に書き込む(ステップS501)。
【0036】
次に、マルチパスデータ処理部408は、バンドメモリ407から1バンド分の全ての画像データを読み出す(ステップS502)。次に、CPU401は、インク残量検知処理の結果フラグやスキャン行数をアップカウントするカウンタを参照し、印字動作の中断要求の有無を判定する。ステップS503で中断要求がなければ(ステップS503でNO)、マルチパスデータ処理部408において2パス印字を行うための間引き処理を行う(ステップS504)。この間引き処理はバンドメモリ407から読み出した画像データを所定のマスクパターンでマスクすることにより実現される。
【0037】
本実施形態では、2パス印字の1回目のスキャンで印字する画像データを間引くためのマスクパターンを図21(a)に示す千鳥パターンとし、2回目のスキャンで印字する画像データを間引くためのマスクパターンを図21(b)に示す反転千鳥パターンとする。また、記録ヘッドは、説明の簡略化のため8個のインク吐出口が1列に並設され、千鳥パターンマスクで1画素置きに4画素のデータを間引き、反転千鳥パターンマスクで前回間引かれた4画素のデータが間引かれるとする。
【0038】
次に、間引かれた画像データをヘッドコントローラ409に出力し、キャリッジを主走査方向にスキャンさせながらマルチヘッド410からインクを吐出させて被記録材上に画像を印字する(ステップS505)。ステップS505におけるヘッド位置と吐出ノズルの領域は、図1の領域Aとなり、全吐出口のうち千鳥パターン或いは反転千鳥パターンにより間引かれた領域が1スキャン分の全領域に分布する。
【0039】
そして、1スキャン分のインク吐出による印字が終了したら、被記録材の1/2バンド幅だけ記録材を搬送する(ステップS506)。ステップS506では、ヘッド位置は図1に示す領域Aよりも1/2バンド幅だけ前進した領域Bになる。
【0040】
記録材1枚分の印字が全て完了していなければ(ステップS507でNO)、ステップS501に戻り、インタフェース404から次の画像データ転送要求を出力して、外部ホスト装置などから新たに転送されてくる画像データをCPU401の制御によってバンドメモリ407に書き込む。
【0041】
以下、ステップS501からステップS507までの動作を繰り返すことで、図7及び図8に示すように全ての領域について画像データが転送され、2パス印字動作が完了する。ここで、図7及び図8は、被記録材に2パス印字を行なった場合の出力画像を示す図である。
【0042】
図示しないが、CPU401は、ソフトウェアの割込み処理やハードウェアによるカウンタ等を用いて、インクタンク内のインク残量検知処理や、所定量のインクを消費する度にヘッド回復処理を実行するための総印字ドット数の計数処理等、印字を継続するための動作環境を監視するプログラムを印字動作プログラムと共に実行している。そして、CPU401は、インク供給やヘッド回復動作などによって印字動作を中断する必要がある場合に、先ず印字動作の中断要求フラグをセットする。
【0043】
ステップS501からステップS507による2パス印字の実行中に、印字動作の中断を要求するフラグがセットされていることをCPU401が判定したならば(ステップS503でYES)、CPU401はマスクパターンセレクタ406でデータ間引き処理のためのマスクパターンを切り換える(ステップS508)。
【0044】
ここで、マスクパターンについて図15〜図17を参照して説明する。
【0045】
マルチパスデータ処理部408では、画像データを図15(a)のマスクパターンによりマスクすることで間引き画像データが生成される。この時、マスクパターンセレクタ406では、CPU401の制御によって図15(b)のマスクパターンが選択されている。そして、マルチパスデータ処理部408では、図15(a)と図15(b)のマスクパターンを掛け合わせた図15(c)のマスクパターンが間引き処理のためのマスクパターンとして用いられ、間引き画像データが生成される。
【0046】
ところが、ステップS508でのマスクパターンの切り換えは、マスクパターンセレクタ406により図16(b)のマスクパターンが選択される。そして、マルチパスデータ処理部408において図16(a)のマスクパターンと図16(b)のマスクパターンとを掛け合わせた図16(c)のパターンが新たなマスクパターンとして使用され、間引き処理が行われる(ステップS509)。ここで、図16(b)のマスクパターンは、マルチヘッド410による2パス印字の2/2パス目の印字動作を禁止するように画像データを間引くためのパターンである。
【0047】
さらに、CPU401は間引き処理後の画像データをヘッドコントローラ409に出力し、マルチヘッド410のインク吐出口からインクを吐出させて1/2パス目の印字を完了させる(ステップS510)。これは、新たな2/2パス目の領域に対する印字を禁止して1/2パス目である半バンドの印字を行うことに相当する。このように出力された画像を図8に示す。2パス印字の2回目のスキャン印字が完了すると2/2パス目の画像の印字が完了され,この時のヘッド位置と吐出ノズル領域の関係は、図1の領域Bとなり、1バンド分の画像領域のうち上半分の領域のみの画像の印字が実行される。
【0048】
その後、印字動作は休止状態になり図1の領域Cに移行する。CPU401は、所定のヘッド回復処理やインク供給処理などを実行した後(ステップS511)、印字中断要求フラグをリセットする。
【0049】
ステップS511のインク供給処理やヘッド回復処理が終了して印字を再開する場合には、CPU401の制御によって、図4のバンドメモリ407から1バンド分の画像データを再び読み出し(ステップS512)、マスクパターンセレクタ406においてマスクパターンを図17(b)のパターンに変更する(ステップS513)。図17(b)のマスクパターンはステップS508において変更したマスクパターンと補完し合うように反転されたマスクパターンであって、2パス印字の1/2パス目の印字を行わないように画像データを間引くためのパターンである。
【0050】
次に、マルチパスデータ処理部408において、図17(a)と図17(b)のマスクパターンが掛け合わされ、図17(c)の新たなマスクパターンにより画像データが間引かれる(ステップS514)。そして、間引かれた画像データに対応したヘッド駆動信号がヘッドコントローラ409に出力され、マルチヘッド410により被記録材に間引き画像が出力される(ステップS515)。この時のヘッド位置と吐出ノズル領域の関係は図1の領域Dの如くなる。領域Dのヘッド位置と領域Bのヘッド位置とは同じ位置に存在するが、インク吐出口の領域は、領域Bと相互補完の関係にあたる1バンド分のうち下半分の領域となる。
【0051】
そして、再びステップS506において被記録材の搬送動作を実行することによって、ヘッド位置は図1の領域Eとなり、その後は通常の2パス印字が継続される。
【0052】
このようにして、印字中断及び再開の前後で2パス印字を完了させることによって1パス目と2パス目の画像間に濃度ムラが発生しないように、また、ステップS510での間引き画像の出力のためのキャリッジのスキャン動作とステップS515におけるキャリッジ動作との間で、被記録材の搬送動作が行われないように印字動作を中断させることで、出力画像の切れ目における画像のつなぎ目を目立たなくすることが可能となる。
【0053】
ステップS515での印字が終了すると、CPU401は、通常の2パス印字を連続して実行するために、マスクパターンセレクタ406において図15(b)のマスクパターンを選択し、このマスクパターンを使用してステップS501からステップS507までの処理を順次繰り返す。
【0054】
続いて、マルチパス印字の中断直前から再開直後までのマスクパターンセレクタ406によるマスクパターンの選択について説明する。
【0055】
図11は2パス印字を行なう際にマスクパターンセレクタ406において選択されるマスクパターンを示す図である。図14は、マスクパターンセレクタ406の回路構成を示す図である。
【0056】
図14に示すように、2パス印字の場合には、CPU401はマスクパターンセレクタ406のマスクパターンP1〜P3(図11参照)から所定のマスクパターンを選択する。
<2パス印字動作でのマスクパターン選択>
図11において、黒く塗りつぶされた領域が印字領域であり、白い領域はマスクされることによって印字されない領域である。図22は、図11の2パス印字動作中に印字を中断及び再開させる際のマスクパターンセレクタ406によるマスクパターンの選択と、被記録材搬送動作の連携動作を示すフローチャートである。
【0057】
先ず、通常の2パス印字動作について説明する。
【0058】
図22に示すように、マルチヘッド410の吐出口を制限するためのマスクパターンとして図11のマスクP1が選択される。そして、印字中断要求フラグを監視し(ステップS1701)、図11のマスクP1を使用して画像出力を行い(ステップS1702)、1/2バンド幅ずつ被記録材を搬送して(ステップS1703)、画像データがインタフェース404を経由して転送されていれば(ステップS1704でNO)、ステップS1701へ戻り、インタフェース404を経由した画像データ転送が終了していれば(ステップS1704でYES)、2パス印字動作を終了。
【0059】
ステップS1701からステップS1704までを繰り返すことによって2パス印字を実行中に、CPU401が印字中断要求フラグのセットを判定すると(ステップS1701でYES)、マスクパターンを図11のマスクP1からマスクP2に切り換える(ステップS1705)。
【0060】
次に、2パス印字のために間引き処理された画像データに対して図11のマスクP2によりマスクされた画像を出力する(ステップS1706)。そして、ステップS1706の後に記録材搬送動作を実行せずに、ヘッド回復動作などによる印字中断状態に移行する(ステップS1707)。その後、2パス印字動作を再開する際に、マスクパターンを図11のマスクP3に切り換えて(ステップS1708)、2パス印字のために間引き処理された画像データに対して図11のマスクP3によってマスクされた画像を出力する(ステップS1709)。次に、マスクパターンを図11のマスクP1に切り換える(ステップS1710)。そして、1/2バンド幅ずつ被記録材を搬送して(ステップS1703)、マスクP1のマスクパターンで通常の2パス印字を継続する。
【0061】
以上のように、2パス印字を行いながら印字動作を中断させる際に、途中までの印字動作一旦完了させることによって、休止時間間隔に起因する濃度ムラが生じないように2パス印字を行うことが可能となる。また、印字動作の休止から再開までの印字休止期間に被記録材の搬送動作が行われないようにマスクパターンを選択することによって、出力画像のつなぎ目で送りムラが発生しないように制御可能となる。
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、マルチパス印字動作例として2パス印字動作を説明したが、他のパス数(例えば、3パスや4パス)の場合でも適用できる。
<3パス印字動作でのマスクパターン選択その1>
そこで、図12及び図13を参照して3パス印字動作について説明する。
【0062】
図12、13は、3パス印字動作を中断及び再開する際に、3パスによる重ね印字が完了していない領域をスキャンするインク吐出口のみからインクを吐出させ、かつ、中断から再開までの間に被記録材搬送動作を行なわないようなマスクパターンと被記録材搬送動作を示す図である。
【0063】
3パス印字の場合には、マスクパターンによりインクの吐出が可能なインク吐出口と被記録材の搬送動作の組み合わせは、図12と図13の2通り存在するが、吐出口を限定するためのマスクパターンとしては図12及び図13のP1〜P5及びP4’の6パターンから適宜選択されて印字される。
【0064】
マスクパターンセレクタ406は、これら6パターンから所定のマスクパターンを選択し、各マスクパターンで被記録材の搬送動作を適宜実行することによって、時間差ムラを生じることなく、印字を中断及び再開することが可能である。
【0065】
先ず、図12と図23を参照して図12のマスクパターンを用いた印字動作について説明する。
【0066】
図23は、図12のマスクパターンでの3パス印字中に印字を中断及び再開させる際の、マスクパターンセレクタ406によるマスクパターン選択と、被記録材搬送動作の連携動作を示すフローチャートである。
【0067】
先ず、通常の3パス印字動作について説明する。
【0068】
図23に示すように、マルチヘッド410のインク吐出口を制限するためのマスクとして図12のマスクP1が選択される。そして、印字中断要求フラグを監視し(ステップS1801)、図12のマスクP1を使用して画像を出力し(ステップS1802)、1/3バンド幅ずつ被記録材を搬送して(ステップS1803)、画像データがインタフェース404を経由して転送されていれば(ステップS1804でNO)、ステップ1801へ戻り、インタフェース404を経由した画像データ転送が終了していれば(ステップS1804でYES)、3パス印字動作による印字を終了する。
【0069】
ステップS1801からステップS1804までを繰り返すことによって3パス印字を実行中、CPU401が印字中断要求フラグのセットを判定すると(ステップS1801でYES)、マスクパターンを図12のP1からP2に切り換え、3パス印字のために間引き処理された画像データに対して図12のマスクP2によりマスクされた画像を出力する(ステップS1805)。ここで、1/3バンド幅だけ被記録材搬送を行なう(ステップS1806)。
【0070】
次に、マスクパターンを図12のP2からP3に切り換え、3パス印字のために間引き処理された画像データに対してマスクP3によりマスクされた画像を出力する(ステップS1807)。そして、ステップS1807の後に被記録材搬送動作を実行せずに、ヘッド回復動作などによる印字中断状態に移行する(ステップS1808)。その後、印字動作を再開するが、先ずマスクパターンを図12のP3からP4に切り換え、3パス印字のために間引き処理された画像データに対してマスクP4によりマスクされた画像を出力する(ステップS1809)。さらに、マスクパターンを図12のP5に切り換え、3パス印字のために間引き処理された画像データに対してマスクP5によりマスクされた画像を出力する(ステップS1810)。これで3パス印字における3パス目が完了する。その後、マスクパターンをP1に切り換えて(ステップS1811)、マスクP1を用いた通常の3パス印字を継続する。3パス印字を行う際に中断及び再開の前後でインク吐出口を限定するためのマスクパターンは、P1→P2→P3→P4→P5→P1の順に選択される。
<3パス印字動作でのマスクパターン選択その2>
次に、図13と図24を参照して図13のパターンでの印字動作について説明する。
【0071】
図24は、図13のマスクパターンでの3パス印字を実行中に印字を中断及び再開させる際の、マスクパターンセレクタ406によるマスクパターン選択と、被記録材搬送動作の連携動作を示すフローチャートである。
【0072】
先ず、通常の3パス印字動作について説明する。
【0073】
図24に示すように、マルチヘッドのインク吐出口を制限するために図13のマスクP1が選択される。そして、印字中断要求フラグを監視し(ステップS1901)、図13のマスクP1を使用して画像の出力し(ステップS1902)、1/3バンド幅ずつ被記録材を搬送する(ステップS1903)。そして、画像データがインタフェース404を経由して転送されていれば(ステップS1904でNO)、ステップS1901へ戻り、インタフェース404を経由した画像データ転送が終了していれば(ステップS1904でYES)、3パス印字動作による印字を終了する。
【0074】
ステップS1901からステップS1904までを繰り返すことによって3パス印字を実行中に、CPU401が印字中断要求フラグのセットを判定すると(ステップS1901)、マスクパターンを図13のP1からP2に切り換え、3パス印字のために間引き処理された画像データに対してマスクP2によりマスクされた画像を出力する(ステップS1905)。次に、マスクパターンをP2からP4に切り換え、3パス印字のために間引き処理された画像データに対してマスクP4によりマスクされた画像を出力する(ステップS1906)。そして、ステップS1906の後に被記録材搬送動作を実行せずに、ヘッド回復動作などによる印字中断状態に移行する(ステップS1907)。その後、印字動作を再開するが、先ずマスクパターンを図13のP4からP4’に切り換え、3パス印字のために間引き処理された画像データに対してマスクP4’によりマスクされた画像を出力する(ステップS1908)。ここで、1/3バンド幅の被記録材搬送を行なう(ステップS1909)。
【0075】
次に、マスクパターンを図13のP5に切り換え、3パス印字のために間引き処理された画像データに対してマスクP5によりマスクされた画像を出力する(ステップS1910)。これで3パス印字の3パス目が完了する。そして、マスクパターンをP1に切り換えて(ステップS1911)、マスクP1を用いた通常の3パス印字を継続する。マスクパターンの選択は、図13に示すようにP1→P2→P4→P4’→P5→P1の順に選択される。
【0076】
以上のように、図12及び図13のマスクパターンを使用した場合、3パス印字を行ないながら印字動作を中断させる場合に途中までのパス印字を一旦完了させることにより、休止時間間隔に起因する濃度ムラが生じないように3パス印字を完了させることが可能となる。
【0077】
また、印字動作の中断から再開までの印字休止期間中に被記録材の搬送動作が行われないようにマスクパターンを選択することによって、出力画像のつなぎ目で送りムラが発生しないように制御可能となる。
【0078】
尚、パターンセレクタ406は、図12及び図13に示す6種類のマスクパターンから所望のマスクを選択することもできる。
[第3の実施形態]
次に、図18〜図20を参照して4パス印字動作について説明する。
【0079】
図18〜20は、4パス印字動作を中断する際に、4パス印字が完了していない領域をスキャンするインク吐出口のみからインクを吐出させ、かつ、4パス印字再開時まで被記録材搬送動作を行なわないようなマスクパターンと被記録材搬送動作を示す図である。
【0080】
マスクパターンセレクタ406は、10種類のマスクパターンから所定のマスクパターンを選択し、各パターンで被記録材の搬送動作を適宜実行することによって、時間差ムラを生じることなく、印字の中断及び再開を実行することが可能である。
<4パス印字動作でのマスクパターン選択その1>
次に、図18と図25を参照して図18のマスクパターンを用いた4パス印字動作について説明する。
【0081】
図25は、図18の4パス印字を実行中に印字を中断及び再開させる際のマスクパターンセレクタ406によるマスクパターンの選択と、被記録材搬送動作の連携動作を示すフローチャートである。
【0082】
先ず、通常の4パス印字動作について説明する。
【0083】
図25に示すように、マルチヘッド410のインク吐出口を制限するためのマスクとして図15のマスクQ1が選択される。そして、4パス印字動作中に印字中断要求フラグを監視し(ステップS2001)、マスクQ1を使用して画像を出力し(ステップS2002)、1/4バンド幅ずつ被記録材を搬送する(ステップS2003)。そして、画像データがインタフェース404を経由して転送されていれば(ステップS2004でNO)、ステップ2001へ戻り、インタフェース404を経由した画像データ転送が終了していれば(ステップS2004でYES)、4パス印字動作による印字を終了する。
【0084】
ステップS2001からステップS2004までを繰り返すことによって4パス印字を実行中に、CPU401が印字中断要求フラグのセットを判定すると(ステップS2001でYES)、マスクパターンを図18のQ1からQ2に切り換える。そして、4パス印字のために間引き処理された画像データに対してマスクQ2によりマスクされた画像を出力する(ステップS2005)。ここで、1/4バンド幅の被記録材搬送を行う(ステップS2006)。さらに、マスクパターンを図18のQ2からQ3に切り換え、4パス印字のために間引き処理された画像データに対してマスクQ3によりマスクされた画像を出力する(ステップS2007)。ここで、再び1/4バンド幅の被記録材搬送を行う(ステップS2008)。さらに、マスクパターンを図18のQ3からQ4に切り換え、4パス印字のために間引き処理された画像データに対してマスクQ4によりマスクした画像を出力する(ステップS2009)。次に、被記録材搬送動作を実行せずに、ヘッド回復動作などによる印字中断状態に移行する(ステップS2010)。その後、印字動作を再開するが、先ずマスクパターンを図18のQ5に切り換えた後、4パス印字のために間引き処理された画像データに対してマスクQ5によりマスクされた画像を出力する(ステップS2011)。そして、マスクパターンをQ6に切り換えてマスクされた画像を出力する(ステップS2012)。さらに、マスクパターンをQ6からQ7に切り換えてマスクされた画像を出力する(ステップS2013)。ここまでの処理で4パス印字の4パス目が完了する。
【0085】
次に、マスクパターンをQ1に切り換えて(ステップS2014)、マスクQ1を用いる通常の4パス印字を継続する。図18に示すように、マスクパターンは、Q1→Q2→Q3→Q4→Q5→Q6→Q7→Q1の順に選択されて4パス印字を完了させる。
<4パス印字動作でのマスクパターン選択その2>
図26は、図19の4パス印字を実行中に印字を中断及び再開させる際の、マスクパターンセレクタ406によるマスクパターン選択と、被記録材搬送動作の連携動作を示すフローチャートである。
【0086】
先ず、通常の4パス印字動作について説明する。
【0087】
図26に示すように、マルチヘッドのインク吐出口を制限するためのマスクパターンとして図19のマスクQ1を選択する。そして、印字中断要求フラグを監視し(ステップS2101)、図19のマスクQ1を使用して画像を出力し(ステップS2102)、1/4バンド幅ずつ被記録材を搬送する(ステップS2103)。そして、画像データがインタフェース404を経由して転送されていれば(ステップS2104でNO)、ステップ2101へ戻り、インタフェース404を経由して画像データ転送が終了していれば(ステップS2104でYES)、4パス印字動作による印字を終了する。
【0088】
ステップS2101からステップS2104までを繰り返すことによって4パス印字を実行中、CPU401が印字中断要求フラグのセットを判定すると、マスクパターンを図19のQ1からQ2に切り換える。そして、4パス印字のために間引き処理された画像データに対してマスクQ2によりマスクされた画像を出力する(ステップS2105)。ここで、1/4バンド幅だけ被記録材を搬送する(ステップS2106)。次に、マスクパターンを図19のQ2からQ3に切り換え、4パス印字のために間引き処理された画像データに対してマスクQ3によりマスクされた画像を出力する(ステップS2107)。さらに、マスクパターンを図19のQ3からQ5に切り換え、4パス印字のために間引き処理された画像データに対してマスクQ5によりマスクされた画像を出力する(ステップS2108)。次に、被記録材搬送動作を実行せずに、ヘッド回復動作などによる印字中断状態に移行する(ステップS2109)。その後、印字動作を再開するが、先ずマスクパターンを図19のQ5’に切り換え、4パス印字のための間引き処理された画像データに対してマスクQ5’によりマスクされた画像を出力する(ステップS2110)。そして、マスクパターンを図19のQ6’に切り換えてマスクされた画像を出力する(ステップS2111)。ここで、1/4バンド幅の被記録材搬送を行なう(ステップS2112)。さらに、マスクパターンを図19のQ6’からQ7に切り換えてマスクされた画像を出力する(ステップS2113)。ここまでの処理で4パス印字の4パス目が完了する。
【0089】
さらに、図19のマスクQ1に切り換えて(ステップS2114)、マスクQ1を用いた通常の4パス印字動作を継続する。図19に示すように、マスクパターンは、Q1→Q2→Q3→Q5→Q5’→Q6’→Q7→Q1の順に選択されて4パス印字を完了させる。
<4パス印字動作でのマスクパターン選択その3>
図27は、図20の4パス印字を実行中に印字を中断及び再開させる際の、マスクパターンセレクタ406によるマスクパターン選択と、被記録材搬送動作の連携動作を示すフローチャートである。
【0090】
先ず、通常の4パス印字動作について説明する。
【0091】
図27に示すように、マルチヘッドのインク吐出口を制限するためのマスクとして図20のマスクQ1が選択される。そして、印字中断要求フラグを監視し(ステップS2201)、図20のマスクQ1を使用して画像を出力し(ステップS2202)、1/4バンド幅ずつ被記録材を搬送する(ステップS2203)。そして、画像データがインタフェース404を経由して転送されていれば(ステップS2204でNO)、ステップS2201へ戻り、インタフェース404を経由して画像データ転送が終了していれば(ステップS2204でYES)、4パス印字動作による印字を終了する。
【0092】
ステップS2201からステップS2204までを繰り返すことによって4パス印字を実行中に、CPU401が印字中断要求フラグのセットを判定すると(ステップS2201でYES)、マスクパターンを図20のQ1からQ2に切り換える。そして、4パス印字のために間引き処理された画像データに対してマスクQ2によりマスクされた画像を出力する(ステップS2205)。次に、被記録材搬送を行なわずに、マスクパターンを図20のQ2からQ6に切り換え、4パス印字のために間引き処理された画像データに対してマスクQ6によりマスクされた画像を出力する(ステップS2206)。さらに、マスクパターンを図20のQ6からQ5’に切り換え、4パス印字のために間引き処理された画像データに対してマスクQ5’によりマスクされた画像を出力する(ステップS2207)。更に、被記録材搬送動作を実行せずに、ヘッド回復動作などによる印字中断状態に移行する(ステップS2208)。その後、印字動作を再開するが、先ずマスクパターンを図20のQ8に切り換え、4パス印字のために間引き処理された画像データに対してマスクQ8によりマスクされた画像を出力する(ステップS2209)。ここで、1/4バンド幅の被記録材搬送を行なう(ステップS2210)。次に、マスクパターンを図20のQ6’に切り換えてマスクされた画像を出力する(ステップS2211)。ここで再度、1/4バンド幅の被記録材搬送を行なう(ステップS2212)。さらに、マスクパターンを図20のQ6’からQ7に切り換えてマスクされた画像を出力する(ステップS2213)。ここまでの処理で4パス印字の4パス目が完了する。
【0093】
さらに、図20のマスクQ1に切り換えて(ステップS2214)、マスクQ1を用いた通常の4パス印字を継続する。図20に示すように、マスクパターンは、Q1→Q2→Q6→Q5’→Q8→Q6’→Q7→Q1の順に選択されて4パス印字を完了させる。
【0094】
尚、上記4パス印字では、パターンセレクタ406は、図18〜20に示す10種類のマスクパターンから所望のマスクを選択することもできる。
[他の実施形態]
第1〜第3の実施形態では、図4の回路構成により、マスクパターンセレクタ406でマスクパターンを選択し、バンドメモリ407から読み込んだ画像データに対して、マルチパス印字のための第1マスクパターンに1スキャン中の画像記録領域を限定するための第2マスクパターンを掛け合わせた新たなマスクパターンを使用することによってインク吐出口を限定していた。しかし、インク吐出口の領域を制限するのに他の方法によって同様の効果を得ることも可能である。例えば、バンドメモリ407から画像データを読み込む際に第2マスクパターンを用いてマスク処理を行ない、マルチパスデータ処理部408に出力することによっても実現可能である。バンドメモリ407には1バンド分の印字のための画像データが書き込まれているので、バンドメモリ407から画像データを読み込む際のマスクパターンとして、マスクパターンセレクタ406において選択された第2マスクパターンを用いてマスク処理を行なってからマルチパスデータ処理部408に出力することによって実現可能となる。このデータ読み込み時のマスク処理は、インク吐出口のノズル列を制限するためのマスク処理であるので、2パス印字ではインク吐出口を図11のP1〜P3により、3パス印字では図12及び図13のP1〜P5、P4’により、4パス印字では図18乃至20のQ1〜Q8、Q5’、Q6’により選択された夫々処理される。これらのマスクパターンを用いてデータ読み込み時にマスク処理を行なうことによって、インク吐出可能なノズル列を指定することが可能となる。そして、マスクパターンセレクタ406によるマスクパターン選択と、被記録材搬送の動作とを連動させることによって、第1〜第3の実施形態と同様に、濃度ムラと送りムラを抑えたマルチパス印字の休止及び再開動作が可能となる。
【0095】
以上の実施の形態は、特にインクジェット記録方式の中でも、インク吐出を行わせるために利用されるエネルギーとして熱エネルギーを発生する手段(例えば電気熱変換体やレーザ光等)を備え、前記熱エネルギーによりインクの状態変化を生起させる方式を用いることにより記録の高密度化、高精細化が達成できる。
【0096】
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書、同第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式はいわゆるオンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて膜沸騰を越える急速な温度上昇を与える少なくとも1つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に1対1で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長、収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも1つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状をすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。
【0097】
このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書、同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた記録を行うことができる。
【0098】
記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体の組み合わせ構成(直線状液流路または直角液流路)の他に熱作用面が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4558333号明細書、米国特許第4459600号明細書を用いた構成も本発明に含まれるものである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスロットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギーの圧力波を吸収する開口を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59−138461号公報に基づいた構成としても良い。
【0099】
さらに、記録装置が記録できる最大記録媒体の幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドとしては、上述した明細書に開示されているような複数記録ヘッドの組み合わせによってその長さを満たす構成や、一体的に形成された1個の記録ヘッドとしての構成のいずれでもよい。
【0100】
加えて、上記の実施の形態で説明した記録ヘッド自体に一体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドのみならず、装置本体に装着されることで、装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッドを用いてもよい。
【0101】
また、以上説明した記録装置の構成に、記録ヘッドに対する回復手段、予備的な手段等を付加することは記録動作を一層安定にできるので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧あるいは吸引手段、電気熱変換体あるいはこれとは別の加熱素子あるいはこれらの組み合わせによる予備加熱手段などがある。また、記録とは別の吐出を行う予備吐出モードを備えることも安定した記録を行うために有効である。
【0102】
さらに、記録装置の記録モードとしては黒色等の主流色のみの記録モードだけではなく、記録ヘッドを一体的に構成するか複数個の組み合わせによってでも良いが、異なる色の複色カラー、または混色によるフルカラーの少なくとも1つを備えた装置とすることもできる。
【0103】
以上説明した実施の形態においては、インクが液体であることを前提として説明しているが、室温やそれ以下で固化するインクであっても、室温で軟化もしくは液化するものを用いても良く、あるいはインクジェット方式ではインク自体を30°C以上70°C以下の範囲内で温度調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあるように温度制御するものが一般的であるから、使用記録信号付与時にインクが液状をなすものであればよい。
【0104】
加えて、積極的に熱エネルギーによる昇温をインクの固形状態から液体状態への状態変化のエネルギーとして使用せしめることで積極的に防止するため、またはインクの蒸発を防止するため、放置状態で固化し加熱によって液化するインクを用いても良い。いずれにしても熱エネルギーの記録信号に応じた付与によってインクが液化し、液状インクが吐出されるものや、記録媒体に到達する時点では既に固化し始めるもの等のような、熱エネルギーの付与によって初めて液化する性質のインクを使用する場合も本発明は適用可能である。このような場合インクは、特開昭54−56847号公報あるいは特開昭60−71260号公報に記載されるような、多孔質シート凹部または貫通孔に液状または固形物として保持された状態で、電気熱変換体に対して対向するような形態としてもよい。本発明においては、上述した各インクに対して最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
【0105】
さらに加えて、本発明に係る記録装置の形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として一体または別体に設けられるものの他、リーダ等と組み合わせた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を取るものであっても良い。
【他の実施形態】
なお、本発明は、複数の機器(例えばホストコンピュータ、インタフェイス機器、リーダ、プリンタなど)から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置(例えば、複写機、ファクシミリ装置など)に適用してもよい。
【0106】
また、本発明の目的は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
【0107】
この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0108】
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
【0109】
また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0110】
さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0111】
本発明を上記記憶媒体に適用する場合、その記憶媒体には、先に説明したフローチャートに対応するプログラムコードを格納することになるが、簡単に説明すると、図28のメモリマップ例に示す各モジュールを記憶媒体に格納することになる。
すなわち、少なくとも「第1のマスクパターンにより各走査における間引き画像を形成する間引き画像モジュール」と、「記録動作を中断する際に、画像記録が未完了のパスの記録動作を完了させるように第2のマスクパターンを選択するマスクパターン選択モジュール」と、「第1のマスクパターンに第2のマスクパターンを掛け合わせて画像を記録する記録モジュール」に対応する各モジュールのプログラムコードを記憶媒体に格納すればよい。
【0112】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、記録動作を中断する際に、画像記録が未完了のパスの記録動作を完了させるように第2のマスクパターンを選択することにより、出力される画像データに印字休止期間に起因する濃度ムラ(時間差ムラ)が発生しなくなり、長時間に亘ってインク供給処理やヘッド回復処理を行なう場合でも印字ムラのない画像の記録が可能となる。
【0113】
また、記録動作を再開させる場合には、被記録材の搬送を行なわずに記録動作を再開できるようにインク吐出口のマスクを選択するので、被記録材の搬送動作に伴う送りムラがなくなり、記録動作の中断から再開の前後での画像のつなぎ目が目立たなくなる。
【0114】
【図面の簡単な説明】
【図1】2パス印字動作を休止及び再開させた場合のヘッド位置とインク吐出口の変化を示す図である。
【図2】従来の画像記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図3】一般的なインクジェット方式の画像記録装置を示すブロック構成図である。
【図4】本発明に係る実施形態の画像記録装置の概略ブロック図である。
【図5】CPU401の制御動作を示すフローチャートである。
【図6】2パスに設定されたマルチパス印字時のヘッド位置と記録画像を示す図である。
【図7】被記録材に2パス印字を行なった場合の出力画像を示す図である。
【図8】被記録材に2パス印字を行なった場合の出力画像を示す図である。
【図9】1パス目と2パス目との時間間隔が短い場合を示す図である。
【図10】1パス目と2パス目との時間間隔が長い場合を示す図である。
【図11】2パス印字を行なう際にマスクパターンセレクタ406において選択されるマスクパターンを示す図である。
【図12】3パス印字動作を中断及び再開する際のマスクパターンと被記録材搬送動作を示す図である。
【図13】3パス印字動作を中断及び再開する際のマスクパターンと被記録材搬送動作を示す図である。
【図14】マスクパターンセレクタ406の回路構成を示す図である。
【図15】2パス印字に用いるマスクパターンを示す図である。
【図16】2パス印字に用いるマスクパターンを示す図である。
【図17】2パス印字に用いるマスクパターンを示す図である。
【図18】4パス印字動作を中断する際のマスクパターンと被記録材搬送動作を示す図である。
【図19】4パス印字動作を中断する際のマスクパターンと被記録材搬送動作を示す図である。
【図20】4パス印字動作を中断する際のマスクパターンと被記録材搬送動作を示す図である。
【図21】2パス印字動作に用いる千鳥状及び反転千鳥状のマスクパターンを示す図である。
【図22】図11の2パス印字動作中に印字を中断及び再開させる際のマスクパターンセレクタ406によるマスクパターンの選択と、被記録材搬送動作の連携動作を示すフローチャートである。
【図23】図12のマスクパターンでの3パス印字中に印字を中断及び再開させる際の、マスクパターンセレクタ406によるマスクパターン選択と、被記録材搬送動作の連携動作を示すフローチャートである。
【図24】図13のマスクパターンでの3パス印字を実行中に印字を中断及び再開させる際の、マスクパターンセレクタ406によるマスクパターン選択と、被記録材搬送動作の連携動作を示すフローチャートである。
【図25】図18の4パス印字を実行中に印字を中断及び再開させる際のマスクパターンセレクタ406によるマスクパターンの選択と、被記録材搬送動作の連携動作を示すフローチャートである。
【図26】図19の4パス印字を実行中に印字を中断及び再開させる際の、マスクパターンセレクタ406によるマスクパターン選択と、被記録材搬送動作の連携動作を示すフローチャートである。
【図27】図20の4パス印字を実行中に印字を中断及び再開させる際の、マスクパターンセレクタ406によるマスクパターン選択と、被記録材搬送動作の連携動作を示すフローチャートである。
【図28】本発明のプログラムモジュールを記憶媒体に格納した場合のメモリマップ例を示す図である。
【符号の説明】
401 CPU
402 ROM
403 RAM
404 インタフェース
405 操作・表示部
406 マスクパターンセレクタ
407 バンドメモリ
408 マルチパスデータ処理部
409 ヘッドコントローラ
410 マルチヘッド
801 インク滴
Claims (1)
- 複数のインク吐出口を備えるヘッドを被記録材の単位記録領域に対して3回走査させることにより画像を記録する画像記録装置において、
前記被記録材を搬送する搬送手段と、
各走査で記録に用いるインク吐出口を定めるための第2のマスクパターンを選択するパターンセレクタと、
前記第2のマスクパターンと、前記単位記録領域に記録すべき画像データを前記3回の走査に分けるための第1のマスクパターンとに基づき、前記画像データを間引いて各走査の間引き画像データを生成する生成手段と、
前記搬送手段、前記パターンセレクタ及び前記ヘッドを制御することにより、前記間引き画像データに基づいて記録中断前及び記録再開後における記録を実行させる制御手段と、を有し、
前記制御手段は、
(A)記録中断直前の2回の走査の間で前記被記録材を搬送し、記録再開直後の2回の走査の間で前記被記録材を搬送しないよう前記搬送手段を制御し、且つ記録中断直前に記録が完了される単位記録領域に対する当該記録中断直前の2回の走査で異なるインク吐出口群を用いるように前記第2のマスクパターンを選択し、記録再開直後に記録が開始される単位記録領域に対する当該記録再開直後の2回の走査で同一のインク吐出口群を用いるように前記第2のマスクパターンを選択するよう前記パターンセレクタを制御することにより、前記記録中断前及び記録再開後における記録を実行させる第1の記録動作と、
(B)記録中断直前の2回の走査の間で前記被記録材を搬送せず、記録再開直後の2回の走査の間で前記被記録材を搬送するよう前記搬送手段を制御し、且つ記録中断直前に記録が完了される単位記録領域に対する当該記録中断直前の2回の走査で同一のインク吐出口群を用いるように前記第2のマスクパターンを選択し、記録再開直後に記録が開始される単位記録領域に対する当該記録再開直後の2回の走査で異なるインク吐出口群を用いるように前記第2のマスクパターンを選択するよう前記パターンセレクタを制御することにより、前記記録中断前及び記録再開後における記録を実行させる第2の記録動作と、を選択的に実行可能であることを特徴とする画像記録装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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