JP3982400B2 - ガラス保護フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス保護フィルムに関するものである。
【0002】
更に詳しくは、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等の表示ガラス、中でも、特にフラットディスプレイ用の表示ガラス保護フィルムとして、あるいは、公共施設、一般家屋、ビルなどの建築物や、自動車用、新幹線、電車車両の窓ガラスの保護用として、好適なガラス保護フィルムに関するものである。
【0003】
【従来の技術】
ガラスは、優れた光線透過性、ガスバリア性、寸法安定性等から、さまざまな用途に使用されている。ガラスは、建築物や自動車、特に平面CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等に代表されるフラットディスプレイの分野では、より高性能なガラスが提供されている。
【0004】
しかしながら、ガラスの欠点として、破損しやすい、または破損によってガラスが飛散することが挙げられる。この問題は、フラットディスプレイの分野において顕著である。フラットディスプレイは、薄肉化および軽量化の要求から、表示用ガラス自体についても薄肉化する傾向にあり、それに伴い使用時において破損しやすいといった問題がある。
【0005】
このようなガラスの破損やさらに破損によって起こるガラスの飛散に関する問題に対し、ガラスに熱可塑性樹脂からなるフィルムを貼りつけることにより防止する方法が種々提案されている。
【0006】
例えば、ポリエチレンテレフタレート層とセバシン酸共重合−ポリエチレンテレフタレート層からなる多層積層フィルムをガラス表面に貼りつけることにより、ガラスの破損および飛散を大幅に防止できることが提案されている(特許文献1)。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−190997号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、該特許文献1に記載の方法では、ガラスの破損や飛散を防止することに効果はあるものの、多層積層フィルムを構成するセバシン酸共重合−ポリエチレンテレフタレート層のガラス転移温度が低いために、しだいに結晶化が生じ白化することとなり、ヘイズが大きくなる現象が生じていた。また、フィルムの耐引裂性は向上するものの、耐衝撃性については効果が少なく、ガラスの破損そのものを防ぐ効果はあまりないものであった。従って、低いヘイズが継続して求められ、かつガラスの破損そのものを防ぎたい用途、たとえばフラットディスプレイに用いられるガラス保護フィルムとしては使用できなかった。
【0009】
本発明は、かかる問題を解決し、例えばフラットディスプレイ用ガラスなどの表示用ガラス保護に好ましく使用され得る、あるいは前述した公共施設や各種車両の窓ガラスなどの保護に好適に使用され得るガラス保護フィルムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、ヘイズが3%以下であり、ガラス転移温度の差が40℃以下である少なくとも2種の熱可塑性樹脂層から構成される多層構造を有し、衝撃強度が8〜40Jであることを特徴とするガラス保護フィルムを提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、望ましい実施の形態を例にとって詳細に説明する。
【0012】
本発明のガラス保護フィルムは、ヘイズが3%以下であることを要する。より好ましくは2.5%以下であり、もっとも好ましくは2%以下である。ヘイズが上記した範囲を越える場合には、ディスプレイ用のガラス保護フィルムとして、視認性の点から画像が鮮明とならなかったり、同様の理由で窓ガラスの保護フィルムとしても具体的用途によっては好ましくないものである。
【0013】
本発明で用いられる少なくとも2種の熱可塑性樹脂は、それらのガラス転移温度の差が40℃以下であること以外は特に限定されない。上記ガラス転移温度の差は好ましくは30℃以下であり、最も好ましくは25℃以下である。上記範囲であることにより、製膜の熱処理工程においてヘイズの上昇および耐衝撃性の低下を効果的に抑制できる。
【0014】
本発明のガラス保護フィルムを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、それぞれ50℃以上であることが好ましい。熱可塑性樹脂のガラス転移温度が50℃より低い場合には、ガラス保護フィルムとして使用した際に、太陽光やディスプレイから発せられる熱により、寸法変化や変色、あるいは白化を引き起こす可能性が生じてくる。
【0015】
該ガラス転移温度の上限は、特に限定されないが、結晶性の熱可塑性樹脂の場合は250℃以下であることが好ましく、220℃以下であることがより好ましい。250℃を越えると、製膜性が困難となる場合があるので注意する必要がある。
【0016】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。本発明においては、耐衝撃性、透明性、熱安定性の観点から、特にポリエステルであることが好ましく、エチレンテレフタレートまたはエチレン−2,6−ナフタレートを主たる成分とするポリエステルの場合より好ましい。特に、ポリエチレンテレフタレートは、安価であり、非常に多岐にわたる用途に用いることができ、効果が高い。
【0017】
これらの樹脂は、ホモ樹脂であってもよく、共重合またはブレンドであってもよい。共重合しうるジカルボン酸成分としてイソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレン酸、1,5−ナフタレン酸、2,6−ナフタレン酸、4,4’−ジフェニルカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、セバシン酸、ダイマー酸が挙げられる。また、共重合しうるグリコール成分として、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0018】
本発明では、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリエチレンナフタレートを主たる成分とする層と、エチレンテレフタレートおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールを主たる構成成分とする共重合ポリエステルを主たる成分とする層とが、厚み方向に交互に積層されていることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートを主たる成分とする層と、エチレンテレフタレートおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールを主たる構成成分とする共重合ポリエステルを主たる成分とする層とが、厚み方向に交互に積層されていることがより好ましい。このような構成の場合に、本発明の目的とする耐衝撃性、高透明性を効率よく同時に達成できる。
【0019】
また、本発明の効果が損なわれない範囲内において、これらの樹脂の中に、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、結晶核剤、難燃剤、不活性無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤などが添加されていてもよい。また、フィルム表層部に、これらの機能を持たせた層を設けることも可能である。本発明に使用する熱可塑性樹脂の製造方法は、特に限定されず公知の方法を使用することができる。
【0020】
本発明のガラス保護フィルムにおいて、その積層構成は少なくとも2層であること以外は特に限定されないが、8〜256層の範囲の場合が好ましく、より好ましくは16〜128層の範囲であり、最も好ましくは32〜128層の範囲である。2層以上の多層積層構造を有することにより、厚み方向への衝撃の伝播が妨げられ、より大きなガラス破損防止効果が得ることができる。また、上記範囲を越える場合には、製品の透明性や生産性が悪化する観点から一般には好ましくない。
【0021】
また、少なくとも2種の熱可塑性樹脂層の各積層厚み比(A、Bの2種であれば、該厚み比=層Aのトータル厚み/層Bのトータル厚み)は、特に限定されるものではないが、1/2〜1/30の範囲内が好ましい。
【0022】
本発明のガラス保護フィルムは、衝撃強度が8〜40Jの範囲であることを要する。より好ましくは10〜40Jの範囲である。上記衝撃強度は振り子型衝撃試験機を用いて測定した衝撃吸収エネルギーを指す。上記範囲未満では、ガラス保護フィルムとしての強度が不足し、ガラスの破損および破損後のガラス片の飛散を効果的に防止できない。また、上記範囲よりも大きい場合では取り扱い性の観点から好ましくない。
【0023】
本発明のガラス保護フィルムは、長手方向および幅方向のうち少なくとも一方の破断伸度が100〜300%の範囲であることが好ましい。より好ましくは130〜250%の範囲である。また、そのときの破断応力は120〜400MPaの範囲内を示すものであることが好ましく、中でも150〜250MPaの範囲がより好ましい。破断伸度および破断応力が上記範囲未満では、ガラス保護フィルムとしての防爆性能が不足し、ガラスの破損および破損後のガラス片の飛散を効果的に防止できない。また、上記範囲以上では取り扱い性の観点から好ましくない。
【0024】
本発明のガラス保護フィルムは、好ましくは全光線透過率が90%以上である。全光線透過率が上記の範囲より低い場合には、ガラス保護フィルムとして、視認性の点から不十分であり好ましくない。
【0025】
全光線透過率を上げる方法としては特に限定されないが、たとえば多界面構造を構成する各熱可塑性樹脂間の屈折率差を小さくする方法、1種類以上の熱可塑性樹脂が島状分散する場合はその分散径を0.1μm以下にする方法などが好ましく用いられる。
【0026】
本発明のガラス保護フィルムは、フィルム厚みが10〜500μmであることが好ましく、より好ましくは20〜400μm、さらに好ましくは50〜200μmである。フィルム厚みが上記範囲未満であると高い耐衝撃性のフィルムを製造しにくく、また、上記範囲よりも大きい場合では全光線透過率の高いフィルムを製造しにくくなるため、一般に好ましくない。
【0027】
本発明のガラス保護フィルムは、その使用の一態様として、フラットディスプレイ用ガラスの前面に貼り付けて用いてもよい。フラットディスプレイとは、たとえば平面CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等であり、特に平面CRTディスプレイのガラス保護フィルムとして好適に用いられる。また、他の使用態様として、建材用や車両用等の窓ガラスの少なくとも片面に貼り付けて用いてもよい。また、これら用途以外でも本発明のガラス保護フィルムの特徴を活かすことができるガラス保護用途があれば、その用途にももちろん使用することができる。
【0028】
本発明のガラス保護フィルムの製造方法の具体例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂をペレットなどの形態で用意する。
【0030】
ペレットは、必要に応じて、熱風中あるいは真空下で十分に乾燥させ後、固有粘度が低下しないように窒素気流下あるいは真空下で熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱された溶融押出機に供給し、口金より押し出し、表面温度が熱可塑性樹脂のガラス転移点以下のキャスティングドラム上で冷却して未延伸フィルムを作る。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ、急冷固化させるのが好ましい。また、溶融押出機中で異物や変質ポリマーを除去するために各種フィルター、例えば、燒結金属、多孔性セラミック、サンド、金網などの素材からなるフィルターを用いることがヘイズ低減のために好ましい。
【0031】
フィルターの濾過精度は、使用する不活性粒子の粒径によって適宜選択することが好ましいが、本発明者らの各種知見によれば、特に、ヘイズを3%以下とするためには、例えば粒径30μmの異物や変質ポリマーを除去できる濾過精度の、好ましくは金網からなるフィルターを用いることが肝要であり、また、2.5%以下とするためには、例えば粒径20μmの異物や変質ポリマーを除去できる濾過精度の、好ましくは金網からなるフィルターを用いること、特にヘイズを2.0%と以下にするためには、例えば粒径14μmの異物や変質ポリマーを除去できる濾過精度の、好ましくは金網からなるフィルターを用いて濾過をすることなどが重要である。
【0032】
さらに、各種フィルターを経た後、ポリマー流路にギヤポンプ等を使用し、押出量を均一化することが各層の積層斑を低減するために好ましい。
【0033】
多層フィルムを得るための方法としては、2台以上の押出機を用いて異なる流路から送り出された熱可塑性樹脂を、マルチマニホールドダイやフィールドブロックやスタティックミキサー等を用いて多層に積層する方法等を使用することができる。また、これらを任意に組み合わせても良い。
【0034】
次に、この未延伸フィルムをフィルム長手方向および/または幅方向に延伸する。延伸方法としては、未延伸フィルムをロールやステンターを用い縦方向、横方向に逐次延伸する逐次二軸延伸法がある。また、未延伸フィルムをステンターを用い縦延伸及び横延伸を同時に行う同時二軸延伸法は、逐次二軸延伸法に比べ工程が短くなるのでコストダウンにつながり、延伸破れやロール傷が発生しにくいため、本発明のフラットディスプレイ用ガラス保護フィルムとして特に有効である。さらに、縦横二方向に逐次延伸したフィルムを再度縦方向に延伸する、いわゆる再縦延伸法は、縦方向を高強度化するのに極めて有効である。
【0035】
上記した再縦延伸法に続けて、再度横方向に延伸する再縦再横延伸法は、横方向にもさらに強度を付与したい場合に極めて有効である。また、フィルムの縦方向に2段以上延伸し、引き続きフィルムの横方向に延伸を行う縦多段延伸法が本発明においては特に有効である。
【0036】
本発明において、例えば、逐次二軸延伸法を用いる場合、長手方向の延伸の条件は使用する熱可塑性樹脂により異なるが、通常は2〜15倍が好ましく、ポリエステル樹脂を用いた場合には2.5〜10倍、さらには3.0〜5倍の範囲が好ましい。また、延伸速度1000〜50000%/分の速度で、延伸温度は、構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg以上、(ガラス転移温度+50℃)以下の範囲が好ましく、長手方向に延伸することにより一軸配向フィルムを得る。
【0037】
次に行う幅方向の延伸は、従来から用いられているテンターを用いて、延伸温度を、構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg以上、(ガラス転移温度Tg+80℃)以下、より好ましくは熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg以上、(ガラス転移温度Tg+40℃)以下の範囲とし、延伸倍率を2.0〜10倍、より好ましくは2.5〜5倍の範囲として行えばよい。その際の延伸速度は特に限定されないが、1000〜50000%/分が好ましい。さらに、必要に応じてこの二軸配向フィルムを再度長手方向、幅方向の少なくとも一方向に延伸を行ってもよい。この場合、再度行う縦延伸は延伸温度を構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂の(ガラス転移温度Tg+20℃)以上(ガラス転移温度+120℃)以下が好ましく、より好ましくは(ガラス転移温度Tg+50℃)以上(ガラス転移温度+100℃)以下の範囲とし、延伸倍率は1.2倍〜2.5倍が好ましく、1.2倍〜1.7倍がより好ましい。また、その後に再度行う横延伸は延伸温度を構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂の(ガラス転移温度Tg+20℃)以上(ガラス転移温度Tg+150℃)とすることが好ましく、より好ましくは(ガラス転移温度Tg+50℃)以上(ガラス転移温度+130℃)以下の範囲とし、延伸倍率は1.02倍〜2倍の範囲が好ましく、1.1倍〜1.5倍の範囲がより好ましい。
【0038】
また、同時二軸延伸法により延伸する場合は、リニアモーターを利用した駆動方式によるテンターを用いて同時二軸延伸する方法が好ましい。同時二軸延伸の温度としては、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg以上、(ガラス転移温度Tg+50℃)以下であることが好ましい。延伸温度がこの範囲を大きくはずれると、均一延伸ができなくなり、厚みむらやフィルム破れが生じ好ましくない。延伸倍率は、縦方向、横方向それぞれ3〜10倍とすればよい。延伸速度としては特に限定されないが、2000〜50000%/分が好ましい。
【0039】
次に、熱収縮率の低減および平面性を付与するために、必要に応じて熱処理を行う。本発明の効果である前述したとおりの低いヘイズを得るために、および長手方向および幅方向のうち少なくとも一方の破断伸度が100〜300%の範囲であり、そのときの破断応力が120〜400MPaの範囲であるという高い耐衝撃性を得るために、熱処理条件としては、定長下、微延伸下、弛緩状態下のいずれかで、(構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg)〜(構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移点+100℃)の範囲で0.5〜60秒間行うことが好適であり、(構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg+40℃)〜(構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移点+80℃)の範囲で0.5〜10秒間行うことがもっとも好適である。上記範囲以下では熱収縮率が大きくなり、上記した範囲以上ではヘイズが高く、耐衝撃性が低下する方向である。
【0040】
特に、全光線透過率が90%以上の本発明にかかるフラットディスプレイ用ガラス保護フィルムは、フィルムの一方の表層に反射防止膜を有することにより得ることができる。反射防止膜としては特に限定されず、従来から知られている技術等を用いることができる。
【0041】
このようにそれぞれの方法で二軸配向し熱処理を施したフィルムを、室温まで徐冷しワインダーにて巻き取る。冷却方法は、二段階以上に分けて室温まで徐冷するのが好ましい。このとき、長手方向、幅方向に0.5〜10%程度のリラックス処理を行うことは、熱寸法安定性を低減するのに有効である。冷却温度としては、一段目が(熱処理温度−20℃)〜(熱処理温度−80℃)、二段目が(一段目の冷却温度−30℃)〜(一段目の冷却温度−40℃)の範囲が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0042】
上述した方法において、特に、衝撃強度が8〜40Jのガラス保護フィルムを製造するには、ガラス転移温度が40℃以下である少なくとも2種類の熱可塑性樹脂から構成される多層構造を有し熱処理を(構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg)〜(構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移点+100℃)の範囲で0.5〜60秒間行うことが肝要であり、更に、10〜40Jの衝撃強度を有するガラス保護フィルムを製造するには、熱処理を(構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg+40℃)〜(構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移点+80℃)の範囲で0.5〜10秒間行うことが肝要である。
【0043】
また、長手方向および幅方向のうち少なくとも一方の破断伸度が100〜300%の範囲であり、また、そのときの破断応力が120〜400MPaの範囲内を示すガラス保護フィルムを製造するには、前述の通りに熱処理条件を設定することが肝要であり、更に、該破断伸度が130〜250%の範囲であって、そのときの破断応力が150〜250MPaの範囲であるガラス保護フィルムを製造するには、熱処理を(構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg+40℃)〜(構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移点+80℃)の範囲で0.5〜10秒間行うことが肝要である。
【0044】
また、全光線透過率が70%以上である本発明のガラス保護フィルムを製造するには、構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度が以上であることが肝要であり、更に、全光線透過率が80%以上である本発明のガラス保護フィルムを製造するには、熱処理を(構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg)〜(構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移点+100℃)の範囲で0.5〜60秒間行うことおよび層数が256層以下であることが肝要であり、更に、全光線透過率が90%以上である本発明のガラス保護フィルムを製造するには、構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度の差が25℃以下であることが肝要である。
【0045】
また、フィルム厚みは、上述のプロセスにおいて延伸倍率を該厚みに対応して適宜に設定することにより所望の厚みを有する本発明のガラス保護フィルムを得ることができるものである。
【0046】
本発明に使用した物性値の評価法を記載する。
物性値の評価法:
(1)全光線透過率およびヘイズ:
直読式ヘイズメーター(スガ試験機器製作所)を用いて測定した。ヘイズ(%)は拡散透過率を全光線透過率で除し、100を乗じて算出した。測定に当たっては、n数は10としてそれらの平均値を求めた。
(2)衝撃強度:
Testing Machines inc.製の振り子型衝撃試験機を用いて測定した。測定は三角錐の形をしたハンマーを枠に固定したフィルムに垂直に衝撃を加えて破断したときのハンマー持ち上げ位置と振り上がり位置との位置エネルギーの差を指針により読みとり、衝撃吸収エネルギー(J)を求めた。そして、これを衝撃強度(J)とした。
【0047】
ハンマーの形は、底面の一辺が62mm、高さが25mmの三角錐の形状であり、これに10kgの重りをつける。サンプルフィルムの打撃点からハンマー持ち上げ位置までの高さは300mmである。なお、試験は枠に貼るフィルムの向きを90゜変えてそれぞれ10サンプルを測定し、それらの平均値を採用した。
(3)ガラス飛散防止試験:
JIS A5759−1998 A法に従って測定した。測定に当たっては、n数は5として2枚以上ガラスが破損しなかった場合を、優秀という意味で「◎」、2枚以上破損してもガラスが飛散しなかった場合を良好という意味で「○」、2枚以上ガラスが破損しさらに飛散した場合を不可という意味で「×」とした。◎と○を合格とした。
(4)層構成および層厚み:
フィルムの層構成は、フィルムの断面観察より求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡HU−12型((株)日立製作所製)を用い、フィルムの断面を3000〜200000倍に拡大観察し、断面写真を撮影、層構成および各層厚みを測定した。測定に当たっては、n数は5としてそれらの平均値を求めた。
(5)ガラス転移温度:
示差走査熱量計として、セイコー電子工業(株)製DSC RDC220、データ解析装置として同社製ディスクステーション SSC/5200を用いて測定した。測定条件としては、アルミパンにサンプル約5mgを封入し、300℃で5分間保持、液体窒素で急冷した後、昇温速度20℃/分で測定した。測定に当たっては、n数は5としてそれらの平均値を求めた。
(6)破断応力および破断伸度:
ASTM−D882に規定された次の方法に従って、インストロンタイプの引張試験機(オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100”)を用いて測定した。幅10mmの試料フィルムを、試長間100mm、引張り速度200mm/分の条件で引張る。得られた張力−歪曲線の破断点より、破断応力および破断伸度を求める。測定は25℃、65%RHの雰囲気下で行う。測定に当たっては、n数は10としてそれらの平均値を求めた。
【0048】
【実施例】
実施例1
熱可塑性樹脂Aとして、固有粘度0.8のポリエチレンテレフタレート(以下PETと称す)を用いた。また熱可塑性樹脂Bとしてシクロヘキサンジメタノールが10mol%共重合された共重合ポリエステル(以下、PETGと称す)を用いた。これら熱可塑性樹脂AおよびBは、それぞれ乾燥した後、押出機に供給した。
【0049】
熱可塑性樹脂AおよびBは、それぞれ、押出機にて280℃の溶融状態とし、ギヤポンプおよびフィルタを介した後、フィードブロックにて合流させた。合流した熱可塑性樹脂AおよびBは、スタティックミキサーに供給し、熱可塑性樹脂Aが33層、熱可塑性樹脂Bが32層からなる厚み方向に交互に積層された構造とした。ここで、積層厚み比がA/B=5になるよう、吐出量にて調整した。このようにして得られた計65層からなる積層体をTダイに供給しシート状に成形した後、静電印加しながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化した。
【0050】
得られたキャストフィルムは、90℃に設定したロール群で加熱し、縦方向に3.2倍延伸後、テンターに導き、100℃の熱風で予熱後、横方向に3.3倍延伸した。延伸したフィルムは、テンター内でリラックス率3%および150℃の熱風にて熱処理を行い、室温まで徐冷後、巻き取った。得られたフィルムの厚みは150μmであった。得られた結果を表1に示した。
実施例2
積層装置としては、8層マルチマニホールドダイのみを用い、熱可塑性樹脂Aが4層、熱可塑性樹脂Bが3層からなる積層フィルムとした以外は、実施例1と同様の装置・条件で、計7層からなる延伸フィルムを得た。ただし、樹脂の吐出量を調整しフィルムの厚みが150μmとなるようにした。得られた結果を表1に示した。
比較例1
実施例1と同様の装置・条件で、次の単膜フィルムを得た。すなわち、押出機は1台のみを使用し、フィールドブロックおよびスタティックミキサーは用いず、熱可塑性樹脂としては、固有粘度0.8のポリエチレンテレフタレートを用いて、単膜フィルムとした。得られたフィルムの厚みは150μmであった。得られた結果を表1に示した。
比較例2
実施例1と同様の装置・条件で、次の単膜フィルムを得た。すなわち、押出機は1台のみを使用し、フィールドブロックおよびスタティックミキサーは用いず、熱可塑性樹脂としては、シクロヘキサンジメタノールが10mol%共重合された共重合ポリエステル(イーストマン製 PETG9921)を用い、単膜フィルムとした。得られたフィルムの厚みは150μmであった。得られた結果を表1に示した。
比較例3
熱処理温度を200℃とした以外は実施例1と同様にしてフィルムを製膜した。得られたフィルムの厚みは150μmであった。得られた結果を表1に示した。
比較例4
熱可塑性樹脂Bにジカルボン酸成分としてセバシン酸20モル%及びテレフタル酸30モル%とジオール成分としてエチレングリコール50モル%をしめる共重合ポリエステル(以下、PET/Sと称す)を使用し、延伸倍率を縦方向に3.0倍、横方向に3.3倍に延伸した以外は実施例1と同様にしてフィルム厚みが150μmとなる延伸フィルムを得た。
【0051】
このフィルムはガラス飛散防止試験の結果は良好であったが、ヘイズが高く聡明性が必要となるガラス保護フィルムとしては適さないものであった。得られた結果を表1に示した。
【0052】
【表1】
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、ガラスの破損防止および飛散防止を目的とした耐衝撃性と、ガラスに貼りつけた際の視認性を両立したガラス保護フィルムを提供することができる。
【0054】
特に、フラットディスプレイ等の表示用ガラスの保護フィルムとして好適なガラス保護フィルムが提供されるものである。
【0055】
特に、請求項2記載の本発明のガラス保護フィルムによれば、保護されるガラス厚み方向への衝撃の伝播が妨げられ、より大きなガラス破損防止効果を得ることができる。
【0056】
また、請求項3記載の本発明のガラス保護フィルムによれば、特に、防爆性能がより高く、ガラスの破損および破損後のガラス片の飛散をより効果的に防止できるとともに、取り扱い性の観点から好ましいガラス保護フィルムが提供される。
【0057】
また、請求項4記載の本発明のガラス保護フィルムによれば、特により視認性の良好な優れたガラス保護フィルムが提供される。
【0058】
また、請求項5記載の本発明のガラス保護フィルムによれば、使用に際して、特に太陽光やディスプレイから発せられる熱を受けたとしても、寸法変化や変色、あるいは白化を引き起こすことが少ない優れたガラス保護フィルムが提供される。
【0059】
また、請求項6記載の本発明のガラス保護フィルムによれば、特により高い耐衝撃性とより高い全光線透過率を有する優れたガラス保護フィルムが提供される。
【0060】
請求項7記載の本発明のガラス保護フィルムによれば、特により高い耐衝撃性とより高い透明性を有する優れたガラス保護フィルムが提供される。
【0061】
請求項8もしくは9記載の本発明のガラス保護フィルムによれば、特にフラットディスプレイ用ガラスの保護フィルムとして好適なガラス保護フィルムが提供される。
【0062】
請求項10記載の本発明のガラス保護フィルムによれば、特にフラットディスプレイである平面CRTディスプレイ用ガラスの保護フィルムとして好適なガラス保護フィルムが提供される。
Claims (9)
- ヘイズが3%以下であり、かつ全光線透過率が90%以上であり、ガラス転移温度の差が40℃以下である少なくとも2種の熱可塑性樹脂層から構成される多層構造を有し、衝撃強度が8〜40Jであることを特徴とするガラス保護フィルム。
- 層構造が8層以上256層以下の多層構造からなる請求項1に記載のガラス保護フィルム。
- 長手方向および幅方向のうち少なくとも一方の破断伸度が100〜300%の範囲であり、そのときの破断応力が120〜400MPaの範囲である請求項1または請求項2に記載のガラス保護フィルム。
- フィルムを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度が、50℃以上であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のガラス保護フィルム。
- フィルム厚みが10μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のガラス保護フィルム。
- フィルムを構成する熱可塑性樹脂の少なくとも一つがエチレンテレフタレートおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールを主たる成分とするポリエステルである請求項1から請求項5のいずれかに記載のガラス保護フィルム。
- フラットディスプレイ用のガラスの保護フィルムであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のガラス保護フィルム。
- フラットディスプレイの前面に貼り付けて用いられることを特徴とする請求項7記載のガラス保護フィルム。
- フラットディスプレイが、平面CRTディスプレイであることを特徴とする請求項7または8記載のガラス保護フィルム。
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