JP2004066711A - ガラス保護フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】ガラス保護用途、特に建材や自動車用の窓ガラスおよびフラットディスプレイ等の表示用ガラスの保護に好適なガラス保護フィルムを提供すること。
【解決手段】少なくとも2種の熱可塑性樹脂から構成され多層構造を有する基材の少なくとも片面にハードコート層を有するフィルムであって、前記熱可塑性樹脂の少なくとも1つが2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシアルコキシフェニル)プロパン基および/またはシクロヘキサン基を有するガラス転移温度が50℃以上のポリエステルを含むことを特徴とするガラス保護フィルム。
【選択図】なし
【解決手段】少なくとも2種の熱可塑性樹脂から構成され多層構造を有する基材の少なくとも片面にハードコート層を有するフィルムであって、前記熱可塑性樹脂の少なくとも1つが2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシアルコキシフェニル)プロパン基および/またはシクロヘキサン基を有するガラス転移温度が50℃以上のポリエステルを含むことを特徴とするガラス保護フィルム。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス保護フィルムに関するものである。更に詳しくは、建材や自動車用の窓ガラス、あるいはCRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等の表示ガラスの保護に好適なガラス保護フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガラスは、優れた光線透過性、ガスバリア性、寸法安定性等から、さまざまな用途に使用されている。特に、平面CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等に代表されるフラットディスプレイの分野では、より高性能なガラスが提供されている。
【0003】
しかしながら、これらの用途では、フラットディスプレイに対する薄肉化および軽量化の要求から、表示用ガラス自体についても薄肉化する傾向にあり、それに伴い使用時において破損しやすいといった問題がある。また、地震などの災害で窓ガラスが破損した場合に、飛散したガラス破片により怪我をする問題がある。さらに、窃盗、強盗等の犯罪を目的とした外部侵入者がガラス窓を破壊することにより建物内部へ侵入する場合、ガラスを破壊もしくはガラスの一部を破損し施錠を開錠または破損することが考えられる。
【0004】
このようなガラスの破損やさらに破損によって起こるガラスの飛散等の問題に対し、ガラスに熱可塑性樹脂からなるフィルムを貼りつけることにより防止する方法が種々提案されている。
【0005】
例えば、特開平6−190997号公報には、ポリエチレンテレフタレート層とセバシン酸共重合−ポリエチレンテレフタレート層からなる多層積層フィルムをガラス表面に貼りつけることにより、ガラスの破損および飛散を大幅に低減できることが記載されている。
【0006】
また、ガラスには光線透過機能が必要であり、ガラス保護フィルムの表面が傷つき透明性の低下を防止するために、フィルム表面にハードコート層を設ける技術が提案されている。例えば、特開2002−36441号公報には、貼り合わせた樹脂フィルムの表層にシリコン系ハードコート層を設けることにより耐衝撃性にも優れたハードコートフィルムが記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開平6−190997号公報に記載の方法では、ガラスの飛散を防止することに効果はあるものの、多層積層フィルムを構成するセバシン酸共重合−ポリエチレンテレフタレート層のガラス転移温度が低いために、しだいに結晶化が生じ白化することとなり、ヘイズが大きくなる現象が生じていた。また、フィルムの耐引裂性は向上するものの、耐衝撃性については効果が小さく、ガラスの破損そのものを防ぐ効果は小さかった。また、このフィルムにハードコート層を設けると、衝撃時に亀裂がハードコート層を伝わって伝播するために、その耐衝撃性はさらに低下してしまう。従って、低いヘイズが継続して求められ、かつガラスの破損そのものを防ぎたい用途、たとえばフラットディスプレイ用ガラス保護フィルムとしては使用できなかった。
【0008】
また、特開2002−36441号公報に記載の方法では、衝撃を受けてフィルムに亀裂が生じた後の亀裂の展開を防止するのに有効である耐引裂性が低いため、ガラス飛散に対し十分でなかった。
【0009】
本発明は、かかる問題を解決し、建材や自動車用の窓ガラスおよび表示用ガラスの保護に好適なガラス保護フィルムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成をとる。すなわち、本発明は、少なくとも2種の熱可塑性樹脂から構成され多層構造を有する基材の少なくとも片面にハードコート層を有するフィルムであって、前記熱可塑性樹脂の少なくとも1つが2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシアルコキシフェニル)プロパン基および/またはシクロヘキサン基を有するガラス転移温度が50℃以上のポリエステルを含むことを特徴とするガラス保護フィルムをその骨子とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、望ましい実施の形態を例にとって詳細に説明する。
【0012】
本発明には少なくとも2種の熱可塑性樹脂を使用する。熱可塑性樹脂は、少なくとも1つが2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシアルコキシフェニル)プロパン基および/またはシクロヘキサン基を有するガラス転移温度が50℃以上のポリエステルを含むこと以外特に限定されない。2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシアルコキシフェニル)プロパン基および/またはシクロヘキサン基を有するポリエステルは、これらの成分を100%含むものであっても良いし、ガラス転移温度が50℃以上であれば、その他の共重合成分を含んでいても構わない。
【0013】
本発明に使用できる熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、アクリル樹脂などが挙げられ、用途に応じ適宜使用される。本発明においては、耐衝撃性、透明性、熱安定性の観点から、特にポリエステル樹脂を使用することが好ましく、エチレンテレフタレートまたはエチレン−2,6−ナフタレートを主たる成分とするポリエステルが好ましく使用される。特に、ポリエチレンテレフタレートは、高透明、かつ安価であり、非常に多岐にわたる用途に用いることができ、好ましい。
【0014】
これらの樹脂はホモ樹脂であってもよく、共重合またはブレンドであってもよい。例えば、ポリエステルに共重合しうるジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレン酸、1,5−ナフタレン酸、2,6−ナフタレン酸、4,4’−ジフェニルカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、セバシン酸、ダイマー酸等が挙げられる。また、グリコール成分としては、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、サンジメタノールなどが挙げられる。
【0015】
本発明において、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシアルコキシフェニル)プロパン基および/またはシクロヘキサン基を有するポリエステルのガラス転移温度は50℃以上であることを要する。より好ましくは60℃以上である。ガラス転移温度が50℃より低い場合には、ガラス保護フィルムとして使用した際に、太陽光やディスプレイから発せられる熱により、寸法変化や変色、あるいは白化を引き起こすため好ましくない。かかる観点から、使用する熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、それぞれ50℃以上であることが好ましく、より好ましくは60℃以上である。
【0016】
本発明に使用する熱可塑性樹脂には、本発明の効果が妨げられない限りにおいて、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、結晶核剤、難燃剤、不活性無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤などが添加されていてもよい。また、多層構造を有する基材の表層部に、これらの機能を持たせた層を設けることも可能である。
【0017】
本発明に使用する熱可塑性樹脂の製造方法は特に限定されず、公知の方法を使用することができる。
【0018】
本発明に使用する基材は、少なくとも2種の熱可塑性樹脂から構成され、かつ、多層構造を有している必要がある。ただし、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシアルコキシフェニル)プロパン基および/またはシクロヘキサン基を有するガラス転移温度が50℃以上のポリエステルを含み2層以上の層構成を有していれば、その構成には何ら制限はない。好ましくは、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリエチレンナフタレートを主たる成分とする層と、1,4−シクロヘキサンジメタノールを有する共重合ポリエステルを主たる成分とする層とが、厚み方向に交互に積層されていることである。より好ましくは、ポリエチレンテレフタレートを主たる成分とする層と、1,4−シクロヘキサンジメタノールを有する共重合ポリエステルを主たる成分とする層とが、厚み方向に交互に積層されていることである。ここで、主たる成分とは60モル%以上であることを言う。このような構成の場合に、衝撃時の起きるハードコート層の亀裂がフィルム厚み方向へ伝播することを効率よく防止出来るため、本発明の目的とする耐衝撃性、耐引裂性、高透明性を効率よく同時に達成できる。
【0019】
本発明で使用する、ハードコート層および緩衝層等を含まない基材の積層構成は少なくとも2層であること以外は特に限定されないが、5〜256層の範囲の場合が好ましく、より好ましくは16〜128層の範囲であり、特に好ましくは32〜128層の範囲である。2層以上の多層積層構造を有することにより、厚み方向への衝撃の伝播が妨げられ、大きなガラス破損防止効果を得ることができる。また、256層を越えると製品の透明性や生産性が低下傾向となる。
【0020】
本発明では、基材の少なくとも片面にハードコート層を設ける必要がある。ここで言うハードコートは鉛筆硬度H以上のものをいう。好ましくは2H以上であり、より好ましくは4H以上である。硬度を上げ耐擦傷性を向上させる方法としては、通常のハードコートの硬度を上げる方法により行うことが出来るが、ハードコート層の層厚みを通常より薄くして、ハードコート層割れを防止する方法が好ましく使用される。
【0021】
ハードコート層を構成する成分としては特に限定されないが、1分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート含有化合物を反応せしめてなる樹脂を含むことが好ましい。ここで、反応には、重合や共重合、変性等の概念を含む。
【0022】
多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用しても良い。
【0023】
ハードコート層を構成する樹脂は、多官能(メタ)アクリレートのみの組み合わせからなる樹脂であっても良いし、その他の公知の反応成分を含んでいても構わない。好ましくは、多官能(メタ)アクリレートを80モル%以上含んでいることである。
【0024】
ハードコート層の厚さは、用途に応じて適宜選択されるが、通常0.5μm〜30μm、好ましくは1〜8μmである。ハードコート層の厚さが0.5μm未満では表面硬度が低下傾向となり傷が付きやすくなる。また、30μmより大きいと、衝撃を受けたときにクラックがハードコート層を伝って伝播するために耐衝撃性が落ちやすくなる。加えて、硬化膜がもろくなりフィルムを折り曲げたときにクラックが入りやすくなる。
【0025】
本発明において、基材層とハードコート層の間にさらに緩衝層を設けることが好ましい。緩衝層は、主に衝撃を吸収する目的で導入される。緩衝層を構成する成分としては特に限定されないが、ウレタンアクリレートを主たる成分とするのが好ましい。ここで、主たるとは60モル%以上であることを言う。
【0026】
ウレタンアクリレートは、ポリウレタン系オリゴマーとアクリレートを反応せしめてなる樹脂を含むことが好ましい。
【0027】
ここで、アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0028】
ポリウレタン系オリゴマーは、ポリイソシアネートとポリオールとを縮合反応せしめて得ることができる。ポリイソシアネートの具体例としては、メチレン・ビス(p−フェニレンジイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート・ヘキサントリオールの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンのアダクト体、1,5−ナフチレンジイソシアネート、チオプロピルジイソシアネート、エチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート二量体、水添キシリレンジイソシアネート、トリス(4−フェニルイソシアネート)ネオフォスフェートなどが挙げられる。また、ポリオールの具体例としては、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのポリエーテル系ポリオール、ポリアジペートポリオール、ポリカーボネートポリオールなどのポリエステル系ポリオール、アクリル酸エステル類とヒドロキシエチルメタアクリレートとのコポリマーなどが挙げられる。
【0029】
緩衝層の厚さは、用途に応じて適宜選択されるが、通常0.5μm〜30μm、好ましくは1〜20μmである。緩衝層の厚さが0.5μm未満では衝撃の吸収力の増加が小さく、また、30μmより大きいと、ヘイズが高くなり透明性が低下しやすくなる。
【0030】
本発明のガラス保護フィルムは、衝撃強度が18〜200J/mmの範囲である事が好ましい。より好ましくは25〜200J/mmの範囲である。上記衝撃強度はロードセル付インパクトテスタ用いて測定した衝撃吸収エネルギーを指す。18J/mm未満では、ガラス保護フィルムとしての強度が低いため、ガラスの破損および破損後のガラス片の飛散を効果的に防止できないことがある。また、200J/mmを越えると取り扱い性が低下傾向となる。
【0031】
本発明のガラス保護フィルムはヘイズが0.1%以上4%以下であることが好ましい。より好ましくは0.1%以上2.5%以下であり、特に好ましくは0.1%以上1.5%以下である。4%を越えると、ディスプレイ用のガラス保護フィルムとして、視認性の点から画像の鮮明性が不足することがある。
【0032】
本発明のガラス保護フィルムは、長手方向および/または幅方向の熱収縮率が5%以下が好ましく、より好ましくは3%以下であり、もっとも好ましくは2.5%以下である。上記範囲以上であると、ガラスに貼り合わせた後の温度環境によりフィルムが変形し、しわが発生することがある。なお、熱収縮率は幅10mm長さ150mm測定長100mmのサンプルを150℃30分熱処理したときの寸法変化を言う。
【0033】
本発明のガラス保護フィルムは、可視光線透過率が87%以上であることが好ましい。より好ましくは可視光線透過率が88%以上であり、特に好ましくは可視光線透過率が89%以上である。可視光線透過率が87%未満の場合には、ディスプレイ用のガラス保護フィルムとして、視認性の点で問題となることがある。
【0034】
可視光線透過率を上げる方法としては特に限定されないが、たとえば多層構造を構成する各熱可塑性樹脂間の屈折率差を小さくする方法、1種類以上の熱可塑性樹脂が粒子を含有する場合はその分散径を0.1μm以下にする方法などが好ましく用いられる。
【0035】
本発明のガラス保護フィルムは、フィルム総厚みが10〜2000μmであることが好ましく、より好ましくは20〜400μm、さらに好ましくは50〜200μmである。フィルム総厚みが10μm未満であると高い耐衝撃性のフィルムを製造しにくく、また、2000μmを越えると、可視光線透過率の高いフィルムを製造しにくくなる。
【0036】
本発明のガラス保護フィルムの用途は特に限定されないが、好ましくは、フラットディスプレイ用ガラスの保護フィルムとして用いられる。具体的には、例えば、フラットディスプレイ用ガラスの前面に貼り付けて用いることができる。フラットディスプレイとは、たとえば、平面CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等であり、特にプラズマディスプレイや平面CRTディスプレイのガラス保護フィルムとして好適に用いられる。
【0037】
次に本発明のガラス保護フィルムの製造方法の具体例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂をペレットなどの形態で用意する。ペレットは、必要に応じて、熱風中あるいは真空下で十分に乾燥させた後、固有粘度が低下しないように窒素気流下あるいは真空下で仮保管し、次いで熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱された溶融押出機に供給し、口金より押し出し、さらに表面温度が熱可塑性樹脂のガラス転移点以下のキャスティングドラム上で冷却して未延伸フィルムを作製する。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ、急冷固化させるのが好ましい。また、溶融押出機中で異物や変質ポリマーを除去するために各種フィルター、例えば、燒結金属、多孔性セラミック、サンド、金網などの素材からなるフィルターを用いることがヘイズ低減のために好ましい。フィルターの濾過精度は、使用する不活性粒子の粒径によって適宜選択することが好ましいが、特に、ヘイズを4%以下、好ましくは2.5%以下とするためには、粒径20μmの異物や変質ポリマーを除去できる濾過精度金網からなるフィルターを用いることが好ましい。さらに、フィルターを経た後、ポリマー流路にギヤポンプ等を使用し、押出量を均一化することが、各層の積層斑を低減するために好ましい。
【0039】
多層フィルムを得るための方法としては、2台以上の押出機を用いて異なる流路から送り出された熱可塑性樹脂を、マルチマニホールドダイやフィールドブロックやスタティックミキサー等を用いて多層に積層する方法等を使用することができる。また、これらを任意に組み合わせても良い。
【0040】
次に、この未延伸フィルムをフィルム長手方向および/または幅方向に延伸する。延伸方法としては特に限定されず、例えば、未延伸フィルムをロールやステンターを用い縦方向、横方向に逐次延伸する逐次二軸延伸法がある。また、未延伸フィルムをステンターを用い縦延伸及び横延伸を同時に行う同時二軸延伸法があり、この方法は、逐次二軸延伸法に比べ工程が短くなるのでコストダウンにつながり、また、延伸破れやロール傷が発生しにくい為、本発明の用ガラス保護フィルムの製造方法として特に有効である。さらに、縦横二方向に延伸したフィルムを再度縦方向に延伸する、再縦延伸法は、縦方向を高強度化するのに有効である。上記再縦延伸法に続けて、再度横方向に延伸する。この再縦再横延伸法は、横方向にもさらに強度を付与したい場合に有効である。また、フィルムの縦方向に2段以上延伸し、引き続きフィルムの横方向に延伸を行う縦多段延伸法も使用することができ、本発明において特に有効な製造方法である。
【0041】
こうして得られた延伸フィルムの表面に、グラビアコーターやメタリングバー等の公知のコーティング技術を用いて、コーティングを施すことにより、易接着層や易滑層、高光線透過性を付与しても構わない。これらのコーティングは二軸延伸後にオフラインで施してもかまわないし、縦延伸の工程と横延伸の工程の間においてインラインで施してもかまわない。
【0042】
本発明において、例えば、逐次二軸延伸法を用いた場合、長手方向の延伸の条件は使用する熱可塑性樹脂により異なるが、通常は2〜15倍が好ましく、ポリエステル樹脂を主たる樹脂に用いた場合には2.5〜10倍、さらには3.0〜5倍の範囲が好ましい。また、延伸速度は1000〜50000%/分の速度、延伸温度は、構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上ガラス転移温度+50℃以下の範囲が好ましい。
【0043】
逐次二軸延伸法を用いた場合、次に行う幅方向の延伸は、公知のテンターを用いて行うことができる。ここで、延伸温度は好ましくは、構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上ガラス転移温度+80℃以下、より好ましくは熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上ガラス転移温度+40℃以下の範囲とし、延伸倍率を好ましくは2.0〜10倍、より好ましくは2.5〜5倍の範囲として行えばよい。その際の延伸速度は特に限定されないが、1000〜50000%/分の範囲が好ましい。
【0044】
さらに、必要に応じてこの二軸配向フィルムを再度長手方向、幅方向の少なくとも一方向に延伸を行ってもよい。この場合、再度行う縦延伸は延伸温度を構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度+20℃以上ガラス転移温度+120℃以下が好ましく、より好ましくはガラス転移温度+50℃以上ガラス転移温度+100℃以下の範囲とし、延伸倍率は1.2倍〜2.5倍が好ましく、1.2倍〜1.7倍がより好ましい。
【0045】
また、その後に再度行う横延伸は、延伸温度を構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度+20℃以上ガラス転移温度+150℃とすることが好ましく、より好ましくはガラス転移温度+50℃以上ガラス転移温度+130℃以下の範囲とし、延伸倍率は1.02倍〜2倍の範囲が好ましく、1.1倍〜1.5倍の範囲がより好ましい。
【0046】
また、同時二軸延伸法を用いて延伸する場合は、リニアモーターを利用した駆動方式によるテンターを用いて同時二軸延伸する方法が好ましい。同時二軸延伸の温度としては、熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上ガラス転移温度+50℃以下であることが好ましい。延伸温度がこの範囲を大きくはずれると、均一延伸できなくなり、厚みむらやフィルム破れが生じるため好ましくない。延伸倍率は、縦方向、横方向それぞれ3〜10倍とすればよい。延伸速度としては特に限定されないが、2000〜50000%/分の範囲が好ましい。
【0047】
延伸後のフィルムは、熱収縮率の低減および平面性を付与するために、必要に応じて熱処理を行う。本発明の効果である低いヘイズを得るために、熱処理条件としては、定長下、微延伸下、弛緩状態下のいずれかで、構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度〜構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度+100℃の範囲で0.5〜60秒間行うことが好適であり、構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度+40℃〜構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度+80℃の範囲で0.5〜10秒間行うことが特に好適である。熱処理温度が構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度未満では熱収縮率が大きくなり、構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度+100℃を越えるとヘイズが高く、耐衝撃性が低下する傾向となる。
【0048】
可視光線透過率が87%以上、好ましくは88%以上、より好ましくは89%以上のガラス保護フィルムは、例えば、フィルムの一方の表層に反射防止膜を設けることで、より一層容易に得ることができる。反射防止膜としては特に限定されず従来から知られている技術等を用いることができる。
【0049】
二軸延伸し熱処理を施したフィルムは、室温まで徐冷しワインダーにて巻き取られる。ここで、冷却は、二段階以上に分けて室温まで徐冷するのが好ましい。このとき、長手方向、幅方向に0.5〜10%程度のリラックス処理を行うことは、熱寸法安定性を低減するのに有効である。冷却温度としては、一段目が(熱処理温度−20℃)〜(熱処理温度−80℃)、二段目が(一段目の冷却温度−30℃)〜(一段目の冷却温度−40℃)の範囲が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0050】
本発明に使用した物性値の評価法を記載する。
物性値の評価法:
(1)全光線透過率、ヘイズ
直読式ヘイズメーター(スガ試験機器製作所)を用いて測定した。測定に使用した波長は590nmである。ヘイズ(%)は拡散透過率を全光線透過率で除し、100を乗じて算出した。
【0051】
(2)面衝撃吸収エネルギー
ASTM D 3763に準拠して、グラフィックインパクトテスタ(東洋精機(株)社製)を用いて測定した。面吸収エネルギーは錐体が突き抜ける際の全吸収エネルギーを単位厚み(1mm)で換算した。
【0052】
(3)鉛筆硬度:
JIS K 5400に準拠して、手かき法により測定した。
【0053】
(4)ガラス飛散防止試験
JIS R3206 の落球試験に従って測定した。ガラスが飛散しなかった場合を「○」、ガラスが破損しさらに飛散した場合を「×」とした。○を合格とした。
【0054】
【実施例】
実施例1
熱可塑性樹脂Aとして、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(以下PETと称す)を用いた。また熱可塑性樹脂Bとしてシクロヘキサンジメタノールが30mol%共重合された固有粘度0.73の共重合ポリエステル(以下、PETGと称す)を用いた。これら熱可塑性樹脂AおよびBは、それぞれ乾燥した後、押出機に供給した。
【0055】
熱可塑性樹脂AおよびBは、それぞれ、押出機にて280℃の溶融状態とし、ギヤポンプおよびフィルタを介した後、フィードブロックにて合流させた。合流した熱可塑性樹脂AおよびBは、スタティックミキサーに供給し、熱可塑性樹脂Aが17層、熱可塑性樹脂Bが16層からなる厚み方向に交互に積層された構造とした。ここで、全積層厚み比がA/B=5になるよう、吐出量にて調整した。このようにして得られた計33層からなる積層体をTダイに供給しシート状に成形した後、静電印加しながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化した。
【0056】
得られたキャストフィルムは、90℃に設定したロール群で加熱し、縦方向に3.0倍延伸し1軸延伸フィルムを得た。このフィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、その処理面に、ポリエステル/メラミン架橋剤/平均粒径140nmのシリカ粒子からなる積層形成膜塗液を塗布した。塗布された一軸延伸フィルムをテンターに導き、100℃の熱風で予熱後、横方向に3.5倍延伸した。延伸したフィルムは、テンター内でリラックス率5%および150℃の熱風にて熱処理を行い、室温まで徐冷後、巻き取った。得られたフィルムの厚みは100μmであった。
【0057】
ペンタエリスリトールヘキサアクリレート51重量部(以下、部は重量部を表す)、ポリエステルアクリレート7部、ヒドロキシプロピルアクリレート3部、および開始剤“イルガキュア184”(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)5部を、トルエン27部、メチルエチルケトン27部、イソプロピルアルコール18部、酢酸ブチル18部の混合溶液に溶解させ、ハードコート塗布液を調製した。このハードコート塗布液を、上記フィルムの片面にバーコーターを用いて塗工し、120℃で乾燥後、紫外線480mJ/cm2を照射して、硬化させ、厚さ1μmのハードコート層を設けた。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0058】
実施例2
ハードコート塗工前に、緩衝層としてウレタンアクリレート(”紫光UV−6300B”、日本合成(株)製)をドライ厚みで2μm塗工する以外は実施例1と同様にしてフィルム厚みが103μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0059】
実施例3
スクエアーミキサーの段数を調整して計17層とした以外は実施例2と同様にしてフィルム厚みが103μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0060】
実施例4
スクエアーミキサーの段数を調整して計65層とした以外は実施例2と同様にしてフィルム厚みが103μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0061】
実施例5
熱処理温度を230℃とした以外は実施例2と同様にしてフィルム厚みが103μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0062】
比較例1
実施例1と同様の装置・条件で、次の単膜フィルムを得た。すなわち、押出機は1台のみを使用し、フィールドブロックおよびスタティックミキサーは用いず、熱可塑性樹脂としては、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートを用いて、単膜フィルムとした。得られたフィルムの厚みは100μmであった。また、これに実施例1と同様にしてハードコートを塗工した。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0063】
比較例2
実施例1と同様の装置・条件で、次の単膜フィルムを得た。すなわち、押出機は1台のみを使用し、フィールドブロックおよびスタティックミキサーは用いず、熱可塑性樹脂としては、シクロヘキサンジメタノールが30mol%共重合された共重合ポリエステルを用い、単膜フィルムとした。得られたフィルムの厚みは100μmであった。また、これに実施例1と同様にしてハードコートを塗工した。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0064】
比較例3
実施例1と同様の装置・条件で、次の単膜フィルムを得た。すなわち、押出機は1台のみを使用し、フィールドブロックおよびスタティックミキサーは用いず、熱可塑性樹脂としては、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートを用いて、単膜フィルムとした。得られたフィルムの厚みは100μmであった。また、これに実施例2と同様にして緩衝層を塗工した。ただしハードコートは塗工しない。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0065】
比較例4
ハードコート層を塗工しない以外は実施例2と同様にして厚み102μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0066】
比較例5
熱可塑性樹脂Bにジカルボン酸成分としてセバシン酸20モル%及びテレフタル酸30モル%とジオール成分としてエチレングリコール50モル%を用いた共重合ポリエステル(以下、PET/Sと称す)を使用した以外は実施例1と同様にしてフィルム厚みが101μmとなるフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0067】
表1から、本発明のガラス保護フィルムは、面衝撃吸収エネルギーが大きくガラスの飛散も無く、全ての評価項目が優れていた。一方、熱可塑性樹脂組成の異なる比較例1〜3,5は、面衝撃吸収エネルギーが低くガラス飛散も顕著であった。また、ハードコート層の無い比較例3,4は、鉛筆硬度が低かった。
【0068】
【表1】
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、ガラスの破損防止および飛散防止を目的とした耐衝撃性と、フィルムの表面の耐擦傷性を両立したガラス保護フィルムを提供することができ、特に建材用途および/またはフラットディスプレイ等の表示用ガラスの保護フィルムとして好適なガラス保護フィルムが提供されるものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス保護フィルムに関するものである。更に詳しくは、建材や自動車用の窓ガラス、あるいはCRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等の表示ガラスの保護に好適なガラス保護フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガラスは、優れた光線透過性、ガスバリア性、寸法安定性等から、さまざまな用途に使用されている。特に、平面CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等に代表されるフラットディスプレイの分野では、より高性能なガラスが提供されている。
【0003】
しかしながら、これらの用途では、フラットディスプレイに対する薄肉化および軽量化の要求から、表示用ガラス自体についても薄肉化する傾向にあり、それに伴い使用時において破損しやすいといった問題がある。また、地震などの災害で窓ガラスが破損した場合に、飛散したガラス破片により怪我をする問題がある。さらに、窃盗、強盗等の犯罪を目的とした外部侵入者がガラス窓を破壊することにより建物内部へ侵入する場合、ガラスを破壊もしくはガラスの一部を破損し施錠を開錠または破損することが考えられる。
【0004】
このようなガラスの破損やさらに破損によって起こるガラスの飛散等の問題に対し、ガラスに熱可塑性樹脂からなるフィルムを貼りつけることにより防止する方法が種々提案されている。
【0005】
例えば、特開平6−190997号公報には、ポリエチレンテレフタレート層とセバシン酸共重合−ポリエチレンテレフタレート層からなる多層積層フィルムをガラス表面に貼りつけることにより、ガラスの破損および飛散を大幅に低減できることが記載されている。
【0006】
また、ガラスには光線透過機能が必要であり、ガラス保護フィルムの表面が傷つき透明性の低下を防止するために、フィルム表面にハードコート層を設ける技術が提案されている。例えば、特開2002−36441号公報には、貼り合わせた樹脂フィルムの表層にシリコン系ハードコート層を設けることにより耐衝撃性にも優れたハードコートフィルムが記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開平6−190997号公報に記載の方法では、ガラスの飛散を防止することに効果はあるものの、多層積層フィルムを構成するセバシン酸共重合−ポリエチレンテレフタレート層のガラス転移温度が低いために、しだいに結晶化が生じ白化することとなり、ヘイズが大きくなる現象が生じていた。また、フィルムの耐引裂性は向上するものの、耐衝撃性については効果が小さく、ガラスの破損そのものを防ぐ効果は小さかった。また、このフィルムにハードコート層を設けると、衝撃時に亀裂がハードコート層を伝わって伝播するために、その耐衝撃性はさらに低下してしまう。従って、低いヘイズが継続して求められ、かつガラスの破損そのものを防ぎたい用途、たとえばフラットディスプレイ用ガラス保護フィルムとしては使用できなかった。
【0008】
また、特開2002−36441号公報に記載の方法では、衝撃を受けてフィルムに亀裂が生じた後の亀裂の展開を防止するのに有効である耐引裂性が低いため、ガラス飛散に対し十分でなかった。
【0009】
本発明は、かかる問題を解決し、建材や自動車用の窓ガラスおよび表示用ガラスの保護に好適なガラス保護フィルムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成をとる。すなわち、本発明は、少なくとも2種の熱可塑性樹脂から構成され多層構造を有する基材の少なくとも片面にハードコート層を有するフィルムであって、前記熱可塑性樹脂の少なくとも1つが2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシアルコキシフェニル)プロパン基および/またはシクロヘキサン基を有するガラス転移温度が50℃以上のポリエステルを含むことを特徴とするガラス保護フィルムをその骨子とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、望ましい実施の形態を例にとって詳細に説明する。
【0012】
本発明には少なくとも2種の熱可塑性樹脂を使用する。熱可塑性樹脂は、少なくとも1つが2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシアルコキシフェニル)プロパン基および/またはシクロヘキサン基を有するガラス転移温度が50℃以上のポリエステルを含むこと以外特に限定されない。2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシアルコキシフェニル)プロパン基および/またはシクロヘキサン基を有するポリエステルは、これらの成分を100%含むものであっても良いし、ガラス転移温度が50℃以上であれば、その他の共重合成分を含んでいても構わない。
【0013】
本発明に使用できる熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、アクリル樹脂などが挙げられ、用途に応じ適宜使用される。本発明においては、耐衝撃性、透明性、熱安定性の観点から、特にポリエステル樹脂を使用することが好ましく、エチレンテレフタレートまたはエチレン−2,6−ナフタレートを主たる成分とするポリエステルが好ましく使用される。特に、ポリエチレンテレフタレートは、高透明、かつ安価であり、非常に多岐にわたる用途に用いることができ、好ましい。
【0014】
これらの樹脂はホモ樹脂であってもよく、共重合またはブレンドであってもよい。例えば、ポリエステルに共重合しうるジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレン酸、1,5−ナフタレン酸、2,6−ナフタレン酸、4,4’−ジフェニルカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、セバシン酸、ダイマー酸等が挙げられる。また、グリコール成分としては、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、サンジメタノールなどが挙げられる。
【0015】
本発明において、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシアルコキシフェニル)プロパン基および/またはシクロヘキサン基を有するポリエステルのガラス転移温度は50℃以上であることを要する。より好ましくは60℃以上である。ガラス転移温度が50℃より低い場合には、ガラス保護フィルムとして使用した際に、太陽光やディスプレイから発せられる熱により、寸法変化や変色、あるいは白化を引き起こすため好ましくない。かかる観点から、使用する熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、それぞれ50℃以上であることが好ましく、より好ましくは60℃以上である。
【0016】
本発明に使用する熱可塑性樹脂には、本発明の効果が妨げられない限りにおいて、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、結晶核剤、難燃剤、不活性無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤などが添加されていてもよい。また、多層構造を有する基材の表層部に、これらの機能を持たせた層を設けることも可能である。
【0017】
本発明に使用する熱可塑性樹脂の製造方法は特に限定されず、公知の方法を使用することができる。
【0018】
本発明に使用する基材は、少なくとも2種の熱可塑性樹脂から構成され、かつ、多層構造を有している必要がある。ただし、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシアルコキシフェニル)プロパン基および/またはシクロヘキサン基を有するガラス転移温度が50℃以上のポリエステルを含み2層以上の層構成を有していれば、その構成には何ら制限はない。好ましくは、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリエチレンナフタレートを主たる成分とする層と、1,4−シクロヘキサンジメタノールを有する共重合ポリエステルを主たる成分とする層とが、厚み方向に交互に積層されていることである。より好ましくは、ポリエチレンテレフタレートを主たる成分とする層と、1,4−シクロヘキサンジメタノールを有する共重合ポリエステルを主たる成分とする層とが、厚み方向に交互に積層されていることである。ここで、主たる成分とは60モル%以上であることを言う。このような構成の場合に、衝撃時の起きるハードコート層の亀裂がフィルム厚み方向へ伝播することを効率よく防止出来るため、本発明の目的とする耐衝撃性、耐引裂性、高透明性を効率よく同時に達成できる。
【0019】
本発明で使用する、ハードコート層および緩衝層等を含まない基材の積層構成は少なくとも2層であること以外は特に限定されないが、5〜256層の範囲の場合が好ましく、より好ましくは16〜128層の範囲であり、特に好ましくは32〜128層の範囲である。2層以上の多層積層構造を有することにより、厚み方向への衝撃の伝播が妨げられ、大きなガラス破損防止効果を得ることができる。また、256層を越えると製品の透明性や生産性が低下傾向となる。
【0020】
本発明では、基材の少なくとも片面にハードコート層を設ける必要がある。ここで言うハードコートは鉛筆硬度H以上のものをいう。好ましくは2H以上であり、より好ましくは4H以上である。硬度を上げ耐擦傷性を向上させる方法としては、通常のハードコートの硬度を上げる方法により行うことが出来るが、ハードコート層の層厚みを通常より薄くして、ハードコート層割れを防止する方法が好ましく使用される。
【0021】
ハードコート層を構成する成分としては特に限定されないが、1分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート含有化合物を反応せしめてなる樹脂を含むことが好ましい。ここで、反応には、重合や共重合、変性等の概念を含む。
【0022】
多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用しても良い。
【0023】
ハードコート層を構成する樹脂は、多官能(メタ)アクリレートのみの組み合わせからなる樹脂であっても良いし、その他の公知の反応成分を含んでいても構わない。好ましくは、多官能(メタ)アクリレートを80モル%以上含んでいることである。
【0024】
ハードコート層の厚さは、用途に応じて適宜選択されるが、通常0.5μm〜30μm、好ましくは1〜8μmである。ハードコート層の厚さが0.5μm未満では表面硬度が低下傾向となり傷が付きやすくなる。また、30μmより大きいと、衝撃を受けたときにクラックがハードコート層を伝って伝播するために耐衝撃性が落ちやすくなる。加えて、硬化膜がもろくなりフィルムを折り曲げたときにクラックが入りやすくなる。
【0025】
本発明において、基材層とハードコート層の間にさらに緩衝層を設けることが好ましい。緩衝層は、主に衝撃を吸収する目的で導入される。緩衝層を構成する成分としては特に限定されないが、ウレタンアクリレートを主たる成分とするのが好ましい。ここで、主たるとは60モル%以上であることを言う。
【0026】
ウレタンアクリレートは、ポリウレタン系オリゴマーとアクリレートを反応せしめてなる樹脂を含むことが好ましい。
【0027】
ここで、アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0028】
ポリウレタン系オリゴマーは、ポリイソシアネートとポリオールとを縮合反応せしめて得ることができる。ポリイソシアネートの具体例としては、メチレン・ビス(p−フェニレンジイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート・ヘキサントリオールの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンのアダクト体、1,5−ナフチレンジイソシアネート、チオプロピルジイソシアネート、エチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート二量体、水添キシリレンジイソシアネート、トリス(4−フェニルイソシアネート)ネオフォスフェートなどが挙げられる。また、ポリオールの具体例としては、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのポリエーテル系ポリオール、ポリアジペートポリオール、ポリカーボネートポリオールなどのポリエステル系ポリオール、アクリル酸エステル類とヒドロキシエチルメタアクリレートとのコポリマーなどが挙げられる。
【0029】
緩衝層の厚さは、用途に応じて適宜選択されるが、通常0.5μm〜30μm、好ましくは1〜20μmである。緩衝層の厚さが0.5μm未満では衝撃の吸収力の増加が小さく、また、30μmより大きいと、ヘイズが高くなり透明性が低下しやすくなる。
【0030】
本発明のガラス保護フィルムは、衝撃強度が18〜200J/mmの範囲である事が好ましい。より好ましくは25〜200J/mmの範囲である。上記衝撃強度はロードセル付インパクトテスタ用いて測定した衝撃吸収エネルギーを指す。18J/mm未満では、ガラス保護フィルムとしての強度が低いため、ガラスの破損および破損後のガラス片の飛散を効果的に防止できないことがある。また、200J/mmを越えると取り扱い性が低下傾向となる。
【0031】
本発明のガラス保護フィルムはヘイズが0.1%以上4%以下であることが好ましい。より好ましくは0.1%以上2.5%以下であり、特に好ましくは0.1%以上1.5%以下である。4%を越えると、ディスプレイ用のガラス保護フィルムとして、視認性の点から画像の鮮明性が不足することがある。
【0032】
本発明のガラス保護フィルムは、長手方向および/または幅方向の熱収縮率が5%以下が好ましく、より好ましくは3%以下であり、もっとも好ましくは2.5%以下である。上記範囲以上であると、ガラスに貼り合わせた後の温度環境によりフィルムが変形し、しわが発生することがある。なお、熱収縮率は幅10mm長さ150mm測定長100mmのサンプルを150℃30分熱処理したときの寸法変化を言う。
【0033】
本発明のガラス保護フィルムは、可視光線透過率が87%以上であることが好ましい。より好ましくは可視光線透過率が88%以上であり、特に好ましくは可視光線透過率が89%以上である。可視光線透過率が87%未満の場合には、ディスプレイ用のガラス保護フィルムとして、視認性の点で問題となることがある。
【0034】
可視光線透過率を上げる方法としては特に限定されないが、たとえば多層構造を構成する各熱可塑性樹脂間の屈折率差を小さくする方法、1種類以上の熱可塑性樹脂が粒子を含有する場合はその分散径を0.1μm以下にする方法などが好ましく用いられる。
【0035】
本発明のガラス保護フィルムは、フィルム総厚みが10〜2000μmであることが好ましく、より好ましくは20〜400μm、さらに好ましくは50〜200μmである。フィルム総厚みが10μm未満であると高い耐衝撃性のフィルムを製造しにくく、また、2000μmを越えると、可視光線透過率の高いフィルムを製造しにくくなる。
【0036】
本発明のガラス保護フィルムの用途は特に限定されないが、好ましくは、フラットディスプレイ用ガラスの保護フィルムとして用いられる。具体的には、例えば、フラットディスプレイ用ガラスの前面に貼り付けて用いることができる。フラットディスプレイとは、たとえば、平面CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等であり、特にプラズマディスプレイや平面CRTディスプレイのガラス保護フィルムとして好適に用いられる。
【0037】
次に本発明のガラス保護フィルムの製造方法の具体例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂をペレットなどの形態で用意する。ペレットは、必要に応じて、熱風中あるいは真空下で十分に乾燥させた後、固有粘度が低下しないように窒素気流下あるいは真空下で仮保管し、次いで熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱された溶融押出機に供給し、口金より押し出し、さらに表面温度が熱可塑性樹脂のガラス転移点以下のキャスティングドラム上で冷却して未延伸フィルムを作製する。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ、急冷固化させるのが好ましい。また、溶融押出機中で異物や変質ポリマーを除去するために各種フィルター、例えば、燒結金属、多孔性セラミック、サンド、金網などの素材からなるフィルターを用いることがヘイズ低減のために好ましい。フィルターの濾過精度は、使用する不活性粒子の粒径によって適宜選択することが好ましいが、特に、ヘイズを4%以下、好ましくは2.5%以下とするためには、粒径20μmの異物や変質ポリマーを除去できる濾過精度金網からなるフィルターを用いることが好ましい。さらに、フィルターを経た後、ポリマー流路にギヤポンプ等を使用し、押出量を均一化することが、各層の積層斑を低減するために好ましい。
【0039】
多層フィルムを得るための方法としては、2台以上の押出機を用いて異なる流路から送り出された熱可塑性樹脂を、マルチマニホールドダイやフィールドブロックやスタティックミキサー等を用いて多層に積層する方法等を使用することができる。また、これらを任意に組み合わせても良い。
【0040】
次に、この未延伸フィルムをフィルム長手方向および/または幅方向に延伸する。延伸方法としては特に限定されず、例えば、未延伸フィルムをロールやステンターを用い縦方向、横方向に逐次延伸する逐次二軸延伸法がある。また、未延伸フィルムをステンターを用い縦延伸及び横延伸を同時に行う同時二軸延伸法があり、この方法は、逐次二軸延伸法に比べ工程が短くなるのでコストダウンにつながり、また、延伸破れやロール傷が発生しにくい為、本発明の用ガラス保護フィルムの製造方法として特に有効である。さらに、縦横二方向に延伸したフィルムを再度縦方向に延伸する、再縦延伸法は、縦方向を高強度化するのに有効である。上記再縦延伸法に続けて、再度横方向に延伸する。この再縦再横延伸法は、横方向にもさらに強度を付与したい場合に有効である。また、フィルムの縦方向に2段以上延伸し、引き続きフィルムの横方向に延伸を行う縦多段延伸法も使用することができ、本発明において特に有効な製造方法である。
【0041】
こうして得られた延伸フィルムの表面に、グラビアコーターやメタリングバー等の公知のコーティング技術を用いて、コーティングを施すことにより、易接着層や易滑層、高光線透過性を付与しても構わない。これらのコーティングは二軸延伸後にオフラインで施してもかまわないし、縦延伸の工程と横延伸の工程の間においてインラインで施してもかまわない。
【0042】
本発明において、例えば、逐次二軸延伸法を用いた場合、長手方向の延伸の条件は使用する熱可塑性樹脂により異なるが、通常は2〜15倍が好ましく、ポリエステル樹脂を主たる樹脂に用いた場合には2.5〜10倍、さらには3.0〜5倍の範囲が好ましい。また、延伸速度は1000〜50000%/分の速度、延伸温度は、構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上ガラス転移温度+50℃以下の範囲が好ましい。
【0043】
逐次二軸延伸法を用いた場合、次に行う幅方向の延伸は、公知のテンターを用いて行うことができる。ここで、延伸温度は好ましくは、構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上ガラス転移温度+80℃以下、より好ましくは熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上ガラス転移温度+40℃以下の範囲とし、延伸倍率を好ましくは2.0〜10倍、より好ましくは2.5〜5倍の範囲として行えばよい。その際の延伸速度は特に限定されないが、1000〜50000%/分の範囲が好ましい。
【0044】
さらに、必要に応じてこの二軸配向フィルムを再度長手方向、幅方向の少なくとも一方向に延伸を行ってもよい。この場合、再度行う縦延伸は延伸温度を構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度+20℃以上ガラス転移温度+120℃以下が好ましく、より好ましくはガラス転移温度+50℃以上ガラス転移温度+100℃以下の範囲とし、延伸倍率は1.2倍〜2.5倍が好ましく、1.2倍〜1.7倍がより好ましい。
【0045】
また、その後に再度行う横延伸は、延伸温度を構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度+20℃以上ガラス転移温度+150℃とすることが好ましく、より好ましくはガラス転移温度+50℃以上ガラス転移温度+130℃以下の範囲とし、延伸倍率は1.02倍〜2倍の範囲が好ましく、1.1倍〜1.5倍の範囲がより好ましい。
【0046】
また、同時二軸延伸法を用いて延伸する場合は、リニアモーターを利用した駆動方式によるテンターを用いて同時二軸延伸する方法が好ましい。同時二軸延伸の温度としては、熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上ガラス転移温度+50℃以下であることが好ましい。延伸温度がこの範囲を大きくはずれると、均一延伸できなくなり、厚みむらやフィルム破れが生じるため好ましくない。延伸倍率は、縦方向、横方向それぞれ3〜10倍とすればよい。延伸速度としては特に限定されないが、2000〜50000%/分の範囲が好ましい。
【0047】
延伸後のフィルムは、熱収縮率の低減および平面性を付与するために、必要に応じて熱処理を行う。本発明の効果である低いヘイズを得るために、熱処理条件としては、定長下、微延伸下、弛緩状態下のいずれかで、構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度〜構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度+100℃の範囲で0.5〜60秒間行うことが好適であり、構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度+40℃〜構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度+80℃の範囲で0.5〜10秒間行うことが特に好適である。熱処理温度が構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度未満では熱収縮率が大きくなり、構成比率のもっとも高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度+100℃を越えるとヘイズが高く、耐衝撃性が低下する傾向となる。
【0048】
可視光線透過率が87%以上、好ましくは88%以上、より好ましくは89%以上のガラス保護フィルムは、例えば、フィルムの一方の表層に反射防止膜を設けることで、より一層容易に得ることができる。反射防止膜としては特に限定されず従来から知られている技術等を用いることができる。
【0049】
二軸延伸し熱処理を施したフィルムは、室温まで徐冷しワインダーにて巻き取られる。ここで、冷却は、二段階以上に分けて室温まで徐冷するのが好ましい。このとき、長手方向、幅方向に0.5〜10%程度のリラックス処理を行うことは、熱寸法安定性を低減するのに有効である。冷却温度としては、一段目が(熱処理温度−20℃)〜(熱処理温度−80℃)、二段目が(一段目の冷却温度−30℃)〜(一段目の冷却温度−40℃)の範囲が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0050】
本発明に使用した物性値の評価法を記載する。
物性値の評価法:
(1)全光線透過率、ヘイズ
直読式ヘイズメーター(スガ試験機器製作所)を用いて測定した。測定に使用した波長は590nmである。ヘイズ(%)は拡散透過率を全光線透過率で除し、100を乗じて算出した。
【0051】
(2)面衝撃吸収エネルギー
ASTM D 3763に準拠して、グラフィックインパクトテスタ(東洋精機(株)社製)を用いて測定した。面吸収エネルギーは錐体が突き抜ける際の全吸収エネルギーを単位厚み(1mm)で換算した。
【0052】
(3)鉛筆硬度:
JIS K 5400に準拠して、手かき法により測定した。
【0053】
(4)ガラス飛散防止試験
JIS R3206 の落球試験に従って測定した。ガラスが飛散しなかった場合を「○」、ガラスが破損しさらに飛散した場合を「×」とした。○を合格とした。
【0054】
【実施例】
実施例1
熱可塑性樹脂Aとして、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(以下PETと称す)を用いた。また熱可塑性樹脂Bとしてシクロヘキサンジメタノールが30mol%共重合された固有粘度0.73の共重合ポリエステル(以下、PETGと称す)を用いた。これら熱可塑性樹脂AおよびBは、それぞれ乾燥した後、押出機に供給した。
【0055】
熱可塑性樹脂AおよびBは、それぞれ、押出機にて280℃の溶融状態とし、ギヤポンプおよびフィルタを介した後、フィードブロックにて合流させた。合流した熱可塑性樹脂AおよびBは、スタティックミキサーに供給し、熱可塑性樹脂Aが17層、熱可塑性樹脂Bが16層からなる厚み方向に交互に積層された構造とした。ここで、全積層厚み比がA/B=5になるよう、吐出量にて調整した。このようにして得られた計33層からなる積層体をTダイに供給しシート状に成形した後、静電印加しながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化した。
【0056】
得られたキャストフィルムは、90℃に設定したロール群で加熱し、縦方向に3.0倍延伸し1軸延伸フィルムを得た。このフィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、その処理面に、ポリエステル/メラミン架橋剤/平均粒径140nmのシリカ粒子からなる積層形成膜塗液を塗布した。塗布された一軸延伸フィルムをテンターに導き、100℃の熱風で予熱後、横方向に3.5倍延伸した。延伸したフィルムは、テンター内でリラックス率5%および150℃の熱風にて熱処理を行い、室温まで徐冷後、巻き取った。得られたフィルムの厚みは100μmであった。
【0057】
ペンタエリスリトールヘキサアクリレート51重量部(以下、部は重量部を表す)、ポリエステルアクリレート7部、ヒドロキシプロピルアクリレート3部、および開始剤“イルガキュア184”(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)5部を、トルエン27部、メチルエチルケトン27部、イソプロピルアルコール18部、酢酸ブチル18部の混合溶液に溶解させ、ハードコート塗布液を調製した。このハードコート塗布液を、上記フィルムの片面にバーコーターを用いて塗工し、120℃で乾燥後、紫外線480mJ/cm2を照射して、硬化させ、厚さ1μmのハードコート層を設けた。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0058】
実施例2
ハードコート塗工前に、緩衝層としてウレタンアクリレート(”紫光UV−6300B”、日本合成(株)製)をドライ厚みで2μm塗工する以外は実施例1と同様にしてフィルム厚みが103μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0059】
実施例3
スクエアーミキサーの段数を調整して計17層とした以外は実施例2と同様にしてフィルム厚みが103μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0060】
実施例4
スクエアーミキサーの段数を調整して計65層とした以外は実施例2と同様にしてフィルム厚みが103μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0061】
実施例5
熱処理温度を230℃とした以外は実施例2と同様にしてフィルム厚みが103μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0062】
比較例1
実施例1と同様の装置・条件で、次の単膜フィルムを得た。すなわち、押出機は1台のみを使用し、フィールドブロックおよびスタティックミキサーは用いず、熱可塑性樹脂としては、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートを用いて、単膜フィルムとした。得られたフィルムの厚みは100μmであった。また、これに実施例1と同様にしてハードコートを塗工した。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0063】
比較例2
実施例1と同様の装置・条件で、次の単膜フィルムを得た。すなわち、押出機は1台のみを使用し、フィールドブロックおよびスタティックミキサーは用いず、熱可塑性樹脂としては、シクロヘキサンジメタノールが30mol%共重合された共重合ポリエステルを用い、単膜フィルムとした。得られたフィルムの厚みは100μmであった。また、これに実施例1と同様にしてハードコートを塗工した。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0064】
比較例3
実施例1と同様の装置・条件で、次の単膜フィルムを得た。すなわち、押出機は1台のみを使用し、フィールドブロックおよびスタティックミキサーは用いず、熱可塑性樹脂としては、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートを用いて、単膜フィルムとした。得られたフィルムの厚みは100μmであった。また、これに実施例2と同様にして緩衝層を塗工した。ただしハードコートは塗工しない。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0065】
比較例4
ハードコート層を塗工しない以外は実施例2と同様にして厚み102μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0066】
比較例5
熱可塑性樹脂Bにジカルボン酸成分としてセバシン酸20モル%及びテレフタル酸30モル%とジオール成分としてエチレングリコール50モル%を用いた共重合ポリエステル(以下、PET/Sと称す)を使用した以外は実施例1と同様にしてフィルム厚みが101μmとなるフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0067】
表1から、本発明のガラス保護フィルムは、面衝撃吸収エネルギーが大きくガラスの飛散も無く、全ての評価項目が優れていた。一方、熱可塑性樹脂組成の異なる比較例1〜3,5は、面衝撃吸収エネルギーが低くガラス飛散も顕著であった。また、ハードコート層の無い比較例3,4は、鉛筆硬度が低かった。
【0068】
【表1】
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、ガラスの破損防止および飛散防止を目的とした耐衝撃性と、フィルムの表面の耐擦傷性を両立したガラス保護フィルムを提供することができ、特に建材用途および/またはフラットディスプレイ等の表示用ガラスの保護フィルムとして好適なガラス保護フィルムが提供されるものである。
Claims (15)
- 少なくとも2種の熱可塑性樹脂から構成され多層構造を有する基材の少なくとも片面にハードコート層を有するフィルムであって、前記熱可塑性樹脂の少なくとも1つが2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシアルコキシフェニル)プロパン基および/またはシクロヘキサン基を有するガラス転移温度が50℃以上のポリエステルを含むことを特徴とするガラス保護フィルム。
- 前記基材が少なくとも5層以上の多層構造を有する請求項1に記載のガラス保護フィルム。
- ハードコート層の厚みが1μm以上8μm以下である請求項1または請求項2に記載のガラス保護フィルム。
- ハードコート層が1分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート含有化合物を反応せしめてなる樹脂を含む請求項1から請求項3のいずれかに記載のガラス保護フィルム。
- ハードコート面の鉛筆硬度が2H以上である請求項1から請求項4のいずれかに記載のガラス保護フィルム。
- 基材とハードコート層の間にさらに緩衝層を設けた請求項1から請求項5のいずれかに記載のガラス保護フィルム。
- 緩衝層がウレタンアクリレートを主たる成分とする請求項6に記載のガラス保護フィルム。
- 面衝撃強度が18〜200J/mmの範囲である請求項1から請求項7のいずれかに記載のガラス保護フィルム。
- ヘイズが0.1%以上4%以下である請求項1から請求項8のいずれかに記載のガラス保護フィルム。
- 長手方向および/または幅方向の熱収縮率が5%以下である請求項1から請求項9のいずれかに記載のガラス保護フィルム。
- 可視光線透過率が87%以上である請求項1から請求項10のいずれかに記載のガラス保護フィルム。
- フィルム総厚みが10μm以上2000μm以下である請求項1から請求項11のいずれかに記載のガラス保護フィルム。
- フラットディスプレイ用ガラスの保護フィルムである請求項1から請求項12のいずれかに記載のガラス保護フィルム。
- フラットディスプレイがプラズマディスプレイである請求項13に記載のガラス保護フィルム。
- フラットディスプレイが平面CRTディスプレイである請求項13に記載のガラス保護フィルム。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006150755A (ja) * | 2004-11-29 | 2006-06-15 | Jsr Corp | 衝撃吸収積層構造体、lcd、プラズマディスプレイ、有機elディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ又は電子ペーパー用衝撃吸収積層構造体、及びディスプレイ装置 |
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-
2002
- 2002-08-08 JP JP2002231128A patent/JP2004066711A/ja active Pending
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