JP3981515B2 - バリエータ用ディスクの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、トロイダル型無段変速機に装備されるバリエータ用ディスクの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図4は車両等に搭載されるトロイダル型無段変速機のバリエータを示す概略図である。このバリエータ10は、車両の動力源12により回転駆動される入力軸13を備えており、この入力軸13はその両端近傍にそれぞれ入力ディスク15を支持している。これら入力ディスク15の中心部には、複数条のスプライン溝を切ったスプライン穴15aが形成されており、入力ディスク15は前記スプライン穴15aを入力軸13のスプライン軸13aに噛合させることにより、入力軸13の軸方向への僅かな移動が許容された状態で、入力軸13と一体回転可能になっている。このように入力ディスク15の移動が許容されているのは、油圧動力源16に接続した油圧シリンダ17により例えば図において右側の入力ディスク15を左側の入力ディスク15側へ付勢することにより、バリエータ10に所要の端末負荷を加えるためである。また、前記入力ディスク15の一側面には凹湾曲状の軌道面15bが形成されている。
【0003】
前記入力軸13の軸方向中央部には、バリエータ10の出力部18が相対回転自在に支持されている。この出力部18は出力部材19と、この出力部材19にそれぞれ一体回転可能に支持された一対の出力ディスク20とを備えており、この出力ディスク20の前記入力ディスク15の軌道面15bに対向する一側面には、凹湾曲状の軌道面20bが形成されている。また、前記出力部材19の外周には動力伝達用のチェーン23と噛み合うスプロケットギヤ19aが形成されている。さらに、互いに対向する入力ディスク15の軌道面15bと出力ディスク20の軌道面20bとの間には、それぞれ各軌道面15b,20bと転がり接触する3個の円盤状のローラ21が円周等配に配置されている。各ローラ21はキャリッジ22によって回転自在に支持されているとともに、当該キャリッジ22によって各軌道面15b,20bとの相対位置を調整できるようになっている。
【0004】
このように前記バリエータ10は、入力ディスク15、出力ディスク20、及びローラ21を1組としてこれを一対設けた、いわゆるダブルキャビティ型に構成されており、入力ディスク15から出力ディスク20に対して、前記6個のローラ21を介してトルクが伝達される。また、前記6個のローラ21の位置をキャリッジ22によって調整することにより(図4の二点鎖線参照)、出力ディスク20の回転数(変速比)を増減させることができる。
【0005】
前記入力ディスク15は、例えば軸受鋼からなるものであり、その製造に際しては、切削加工にて前記スプライン穴15aや凹湾曲面からなる軌道面15bが形成されたブランクを熱処理硬化させた後、前記スプライン穴15aの内周面(最小内径面)を加工基準として、前記軌道面15bを切削或いは研削にて仕上げることが行われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記バリエータ10において、入力ディスク15と出力ディスク20との間のトルク伝達を確実に行わせるためには、各ローラ21を各ディスク15,20の軌道面15b,20bに対して高い接触圧で均等に接触させる必要がある。
ところが、従来の入力ディスク15は、熱処理硬化後において軌道面15bを仕上げる際に、その加工基準となるスプライン穴15aの歯面に熱処理歪が生じていることから、軌道面15bを高精度に仕上げることが困難である。また、入力軸13に対する入力ディスク15の組み付け精度が、入力ディスク15のスプライン穴15aと入力軸13のスプライン軸13aとの嵌合精度に依存しているので、前記スプライン穴15aの加工精度や熱処理歪等に起因して、入力軸13の軸線に対して軌道面15bの軸線が傾く等、両者の組み付け精度が悪くなる。このため、入力ディスク15の軌道面15bの曲率中心と出力ディスク20の軌道面20bの曲率中心との間で芯ずれを生じ、特定のローラ21の接触圧が極めて高くなって、当該ローラ21及び軌道面15bの耐久性が低下したり、特定のローラ21の接触圧が低下してトルク伝達が不安定になったりするという問題が生じていた。
【0007】
このような問題点を解消するために、熱処理硬化後においてスプライン穴15aの歯面を放電加工にて精密に仕上げることが考えられるが、この場合には生産性が低いとともに製造コストが高く付くという新たな問題が生じる。
この発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、前記軌道面を高精度に仕上げることができるとともに、生産性が高く製造コストも安いバリエータ用ディスクの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するためのこの発明のバリエータ用ディスクの製造方法は、一側面にローラが転走する凹湾曲状の軌道面を有し、中心部に入力軸のスプライン軸と噛合するスプライン穴を有するバリエータ用入力ディスクと、中心部に前記入力軸が相対回転可能に挿通され、前記入力ディスクの軌道面に対向する一側面に凹湾曲状の軌道面を有するバリエータ用出力ディスクとを備えるトロイダル型無段変速機の前記バリエータ用入力ディスクを製造する方法であって、
前記入力ディスクの軌道面の曲率中心と出力ディスクの軌道面の曲率中心との芯ずれを防止すべく、
前記入力軸のスプライン軸に入力ディスクのスプライン穴を噛合し、前記入力軸によって入力ディスクを保持した状態で、当該入力軸を加工基準として前記入力ディスクの外周面を仕上げた後、この外周面を加工基準として前記軌道面を仕上げることを特徴としている。
【0009】
このバリエータ用ディスクの製造方法によれば、入力軸を加工基準として仕上げた前記入力ディスクの外周面をさらに加工基準として前記軌道面を仕上げるので、当該軌道面の入力軸に対する精度を良好に確保することができる。このため、入力ディスクの軌道面の曲率中心と出力ディスクの軌道面の曲率中心との間で芯ずれが生じるのを防止することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次いで、この発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1はこの発明のバリエータ用ディスクの製造方法を示す工程図である。この製造方法は、バリエータの入力ディスクD1の製造に適用されるものであり、まず鍛造等によって得られた軸受鋼等からなる環状素材にバイト1を用いて切削加工を施して、一側面に凹湾曲面からなる軌道面2と外周側端面3とを形成するとともに、他側面及び外周面5を所定形状に形成し、さらに、中心部に複数条のスプライン溝を切ってスプライン穴4を形成する(図1a参照)。前記軌道面2、外周側端面3及び外周面5の切削加工は、所定の取り代を残した状態で行われる。また、スプライン穴4は次工程の熱処理が完了した後に入力軸6に形成されたスプライン軸6aに合致するように、熱処理歪みを考慮した寸法に形成される。
【0011】
次に、前記切削加工にて得られたブランクBに熱処理を施して、例えばHRC60〜63の硬さに硬化させる(図1b参照)。
その後、硬化させた前記ブランクBのスプライン穴4を、入力軸6の対応するスプライン軸6aに噛合させる。この状態でブランクBが軸方向に移動しないように図示しない治具を用いて当該ブランクBを入力軸6に仮止めする。
次いで、前記入力軸6を旋盤にチャックして、この入力軸6を加工基準としてブランクBの外周面5を切削にて仕上げた後、一側面の外周側端面3を切削にて仕上げる(図1c参照)。これにより前記外周面5及び外周側端面3の入力軸6に対する精度を良好に確保することができる。
【0012】
前記外周面5及び外周側端面3の切削仕上げが完了すると、ブランクBを入力軸6から取り外して、その外周面5をNC旋盤にチャックし、当該外周面5を加工基準としてバイト1を用いて軌道面2を仕上げる(図1d参照)。このように入力軸6に対する精度の良好な外周面5を加工基準とすることにより、軌道面2についても入力軸6に対する精度を良好に確保することができる。
【0013】
このようにして得られた入力ディスクD1は、図2に示すように、そのスプライン穴4を入力軸6のスプライン軸6aに噛合させた状態で、当該入力軸6の軸線と入力ディスクD1の軌道面2との相対的な位置精度を良好に確保することができるので、軌道面2の曲率中心と出力ディスクD2の軌道面8の曲率中心との間で芯ずれが生じるのを防止することができる。したがって、各軌道面2,8と各ローラ9との接触圧を均等にすることができ、これら軌道面2,8及びローラ9の耐久性を確保することができるとともに、トルク伝達を安定的に行わせることができる。
【0014】
なお、前記の実施の形態においては、ブランクBの外周面5を加工基準として軌道面2を仕上げているが、ブランクBのスプライン穴4を入力軸6のスプライン軸6aに噛合させた状態で、当該入力軸6を加工基準として、外周面5及び外周側端面3とともに軌道面2をバイト1により仕上げてもよく(図3参照)、この場合にも軌道面2の入力軸6に対する精度を良好に確保することができる。
また、ブランクBの仕上げ加工については、前記切削加工に代えて研削加工を採用してもよい。
【0015】
【発明の効果】
以上のように、請求項1記載のバリエータ用ディスクの製造方法によれば、入力軸を加工基準として仕上げた前記ディスクの外周面をさらに加工基準として軌道面を仕上げるので、当該軌道面の入力軸に対する精度を良好に確保することができる。このため、入力軸とディスクとの位置精度を高めることができ、軌道面に対して各ローラを均等に接触させて、軌道面及びローラの耐久性を確保することができるとともに、トルク伝達を安定的に行わせることができる。しかも、スプライン穴を放電加工で仕上げる場合よりも、生産性が高いとともに製造コストが安くて済む。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のバリエータ用ディスクの製造方法を示す工程図である。
【図2】入力ディスクをバリエータに組み込んだ状態を示す要部概略図である。
【図3】他の実施の形態を示す概略図である。
【図4】従来のバリエータの概略図である。
【符号の説明】
2 軌道面
4 スプライン穴
5 外周面
6 入力軸
9 ローラ
B ブランク
D1 入力ディスク
D2 出力ディスク
Claims (1)
- 一側面にローラが転走する凹湾曲状の軌道面を有し、中心部に入力軸のスプライン軸と噛合するスプライン穴を有するバリエータ用入力ディスクと、中心部に前記入力軸が相対回転可能に挿通され、前記入力ディスクの軌道面に対向する一側面に凹湾曲状の軌道面を有するバリエータ用出力ディスクとを備えるトロイダル型無段変速機の前記バリエータ用入力ディスクを製造する方法であって、
前記入力ディスクの軌道面の曲率中心と出力ディスクの軌道面の曲率中心との芯ずれを防止すべく、
前記入力軸のスプライン軸に入力ディスクのスプライン穴を噛合し、前記入力軸によって入力ディスクを保持した状態で、当該入力軸を加工基準として前記入力ディスクの外周面を仕上げた後、この外周面を加工基準として前記軌道面を仕上げることを特徴とするバリエータ用ディスクの製造方法。
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