JP3974012B2 - 電気化学ディバイス用電解質、その電解液または固体電解質並びに電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム電池及びリチウムイオン電池の電気化学ディバイス用として利用される優れたサイクル特性、貯蔵特性を示す電解質、電解液または固体電解質、及びそれを用いたリチウム電池及びリチウムイオン電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の携帯機器の発展に伴い、その電源として電池やキャパシタのような電気化学的現象を利用した電気化学ディバイスの開発が盛んに行われるようになった。また、電源以外の電気化学ディバイスとしては、電気化学反応により色の変化が起こるエレクトロクロミックディスプレイ(ECD)が挙げられる。
【0003】
これらの電気化学ディバイスは、一般に一対の電極とその間を満たすイオン伝導体から構成される。このイオン伝導体には、溶媒、高分子またはそれらの混合物中に電解質と呼ばれるカチオン(A+)とアニオン(B-)からなる塩類(AB)を溶解したものが用いられる。この電解質は溶解することにより、カチオンとアニオンに解離して、イオン伝導する。ディバイスに必要なイオン伝導度を得るためには、この電解質が溶媒や高分子に十分な量溶解することが必要である。実際は水以外のものを溶媒として用いる場合が多く、このような有機溶媒や高分子に十分な溶解度を持つ電解質は現状では数種類に限定される。例えば、リチウム電池用電解質としては、LiClO4、LiPF6、LiBF4 、LiAsF6、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2 、LiN(SO2CF3)(SO2C4F9)およびLiCF3SO3のみである。カチオンの部分はリチウム電池のリチウムイオンのように、ディバイスにより決まっているものが多いが、アニオンの部分は溶解性が高いという条件を満たせば使用可能である。
【0004】
しかしながら、既存の電解質は種々の問題を持っており、新規のアニオン部を有する電解質が要望されている。具体的にはClO4イオンは爆発性、AsF6イオンは毒性を有するため安全上の理由で使用できない。唯一実用化されているLiPF6も耐熱性、耐加水分解性などの問題を有する。LiN(CF3SO2)2、LiN(SO2C2F5)2 、LiN(SO2CF3)(SO2C4F9)およびLiCF3SO3は安定性が高く、イオン伝導度も高いため非常に優れた電解質であるが、電池内のアルミニウムの集電体を電位がかかった状態で腐食するため使用が困難である(非特許文献1、非特許文献2)。
【0005】
また、ディバイスの応用範囲が多種多様化している中で、それぞれの用途に対する最適な電解質が探索されているが、既存の電解質ではアニオンの種類が少ないため最適化も限界に達している。そこで、上記の既存する電解質を数種混ぜて個々の電解質の特徴を合せ持った電解液組成を探索したり、その一方で、更なる高機能化を目指して新規な電解質を開発しているのが現状である(非特許文献3、特許文献1、特許文献2)。
【0006】
【非特許文献1】
K. Kinoshita et al, Electrochemical and Solid-State Letters, 4, A42(2001)
【非特許文献2】
R.T.Atanasoski et al, J. Power Sources, 68, 320(1997)
【非特許文献3】
L. Peter and J.Arai, J. Applied Electrochemistry, 29, 1053(1999)
【特許文献1】
特開2001−110450
【特許文献2】
特開2001−143750
【0007】
【問題点を解決するための手段】
本発明者らは、かかる従来技術の問題点に鑑み鋭意検討の結果、新規の化学構造的な特徴を有する電解質を数種類組み合わせた系を見出し本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、一般式(1)で示される化学構造式よりなる化合物及び一般式(2)で示される化学構造式よりなる化合物を少なくとも含むリチウム電池及びリチウムイオン電池用電解質で、
【0009】
【化2】
【0010】
ただし、Mは、B、またはP、Aa+は、リチウムイオン、aは、1、bは、1、pは、1、mは、MがBの場合1または2、MがPの場合1、2、または3、nは、MがBの場合0または2、MがPの場合0、2、または4、qは、0または1をそれぞれ表し、R1、R2は、それぞれ独立で、H、ハロゲン、C1〜C10のアルキル、またはC1〜C10のハロゲン化アルキル、R3は、C1〜C10のアルキレン、C1〜C10のハロゲン化アルキレン、C6〜C20のアリーレン、またはC6〜C20のハロゲン化アリーレン、R4は、ハロゲン、またはX2R7、X1は、O、またはNR5、X2は、O、R5は、C1〜C10のアルキル、X3は、O、R7は、C1〜C10のハロゲン化アルキルをそれぞれ表すリチウム電池及びリチウムイオン電池用電解質であり、該電解質を非水溶媒に溶解したものよりなるリチウム電池及びリチウムイオン電池用電解液または該電解質をポリマーに溶解したものよりなるリチウム電池及びリチウムイオン電池用固体電解質、及び少なくとも正極、負極、電解液または固体電解質からなり、該電解液または固体電解質に該電解質を含むリチウム電池及びリチウムイオン電池を提供するものである。
【0011】
なお、本発明で用いるアルキル、ハロゲン化アルキル、アリール、ハロゲン化アリールは、分岐や水酸基、エーテル結合等の他の官能基を持つものも含む。
【0012】
以下に、本発明をより詳細に説明する。
【0013】
ここで、まず本発明で使用される一般式(1)で示される化合物及び一般式(2)で示される化合物の具体例を次に示す。
【0014】
【化3】
【0015】
【化4】
【0016】
ここではAa+としてリチウムイオンが挙げられる。
【0017】
電気化学的なディバイス等の用途を考慮した場合、リチウムイオンが好ましい。Aa+のカチオンの価数aは、1から3が好ましい。3より大きい場合、結晶格子エネルギーが大きくなるため、溶媒に溶解することが困難になるという問題が起こる。そのため溶解度を必要とする場合は1がより好ましい。アニオンの価数bも同様に1から3が好ましく、特に1がより好ましい。カチオンとアニオンの比を表す定数pは、両者の価数の比b/aで必然的に決まってくる。
【0018】
本発明の構成の一部である一般式(1)及び一般式(2)で示される電解質は、イオン性金属錯体構造を採っており、その中心となるMは、B、またはPである。B、またはPの場合、合成の容易性のほか、低毒性、安定性、コストとあらゆる面で優れた特性を有する。
【0019】
次に、一般式(1)及び一般式(2)で表される電解質(イオン性金属錯体)の特徴となる配位子の部分について説明する。以下、ここではMに結合している有機または無機の部分を配位子と呼ぶ。
【0020】
一般式(1)及び一般式(2)中のX 1 は、O、またはNR 5 、X 2 は、Oであり、これらのヘテロ原子を介してMに結合する。ここで、O、S、N以外で結合することは、不可能ではないが合成上非常に煩雑なものとなる。この化合物の特徴として同一の配位子内にX1以外のカルボキシル基(−COO−)によるMとの結合があるため、これらの配位子がMとキレート構造を構成している。このキレートの効果により、この化合物の耐熱性、化学的安定性、耐加水分解性が向上している。この配位子中の定数qは0または1であるが、特に、0の場合はこのキレートリングが五員環になるため、キレート効果が最も強く発揮され安定性が増すため好ましい。また、カルボキシル基による電子吸引効果により中心のMの負電荷が分散し、アニオンの電気的安定性が増すため、非常にイオン解離しやすくなり、溶媒への溶解度やイオン伝導度などが大きくなる。また、その他の耐熱性、化学的安定性、耐加水分解性も向上する。
【0021】
R1とR2は、それぞれ独立で、H、ハロゲン、C1〜C10のアルキル、またはC1〜C10のハロゲン化アルキルから選ばれるものよりなるが、好ましくはR1とR2の少なくとも一方がフッ素化アルキルであり、さらに好ましくは、R1とR2の少なくとも一方がトリフルオロメチル基である。R1とR2に電子吸引性のハロゲンやハロゲン化アルキルが存在することにより、中心のMの負電荷が分散し、アニオンの電気的安定性が増すため、非常にイオン解離しやすくなり、溶媒への溶解度やイオン伝導度、触媒活性などが大きくなる。また、その他の耐熱性、化学的安定性、耐加水分解性も向上する。特にこのハロゲンがフッ素の場合がより効果が大きく、さらにはトリフルオロメチル基の場合が最も効果が大きくなる。
【0022】
R3は、C1〜C10のアルキレン、C1〜C10のハロゲン化アルキレン、C 6 〜C20のアリーレン、またはC 6 〜C20のハロゲン化アリーレンから選ばれるものよりなるが、好ましくは中心のMとキレートリングを形成したとき、5〜10員環を作るものが好ましい。10員環よりも大きい場合はキレート効果が小さくなるため、好ましくない。また、R3が水酸基やカルボキシル基を構造内に有する場合は、この部分でさらに、中心のMに結合を作ることも可能である。
【0023】
R4は、ハロゲン、またはX 2 R 7 から選ばれるものよりなるが、好ましくはフッ素が好ましい。
【0024】
R 5 は、C1〜C10のアルキルから選ばれるものよりなる。この部分は、他の部分と異なり電子吸引性基は必要ない。ここに電子吸引性基を導入した場合、N上の電子密度が低下して、中心のMに配位することができなくなる。
【0025】
R7は、C1〜C10のハロゲン化アルキルから選ばれるものよりなるが、好ましくはC1〜C10のフッ素化アルキルである。R7に電子吸引性のハロゲン化アルキルが存在することにより、中心のMの負電荷が分散し、アニオンの電気的安定性が増すため、非常にイオン解離しやすくなり、溶媒への溶解度やイオン伝導度などが大きくなる。また、その他の耐熱性、化学的安定性、耐加水分解性も向上する。特にこのハロゲン化アルキルがフッ素化アルキルの場合がより効果が大きくなる。また、ここまでに説明した配位子の数に関係する定数mおよびnは、中心のMの種類によって決まってくるものである。
【0026】
以上、前記したこれらの電解質は単独で使用しても、実用上十分な電池特性が発揮されるが、両者または同じ一般式の電解質同士を混合することで電池を充電した状態で、例えば、40℃以上の高温環境下で長時間保存した際、自己放電量が低減されて貯蔵特性が改善されることが本発明により見出された。その原理の詳細は明らかではないが、初回の充電時に両電解質の一部が正、負極表面でわずかに分解してその配位子からなる皮膜が形成されることによって、後続する電解液溶媒の分解や電極の活性劣化を防止するものと推測される。
【0027】
これらの電解質の使用割合は、リチウム電池及びリチウムイオン電池のサイクル特性や保存安定性の向上効果を考慮すると、以下に示す範囲が好ましい。一般式(1)の電解質と一般式(2)の混合、あるいは同じ一般式の電解質同士で混合され、各電解質のモル比は、1:99〜99:1、好ましくは5:95〜95:5である。
【0028】
本発明の電解質を用いて電気化学ディバイスを構成する場合、その基本構成要素としては、イオン伝導体、負極、正極、集電体、セパレーターおよび容器等から成る。
【0029】
イオン伝導体としては、電解質と非水系溶媒又はポリマーの混合物が用いられる。非水系溶媒を用いれば、一般にこのイオン伝導体は電解液と呼ばれ、ポリマーを用いれば、ポリマー固体電解質と呼ばれるものになる。ポリマー固体電解質には可塑剤として非水系溶媒を含有するものも含まれる。
【0030】
非水溶媒としては、本発明の電解質を溶解できる非プロトン性の溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ラクトン類、ニトリル類、アミド類、スルホン類等が使用できる。また、単一の溶媒だけでなく、二種類以上の混合溶媒でもよい。具体例としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメトキシエタン、アセトニトリル、プロピオニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、およびγ−ブチロラクトン等を挙げることができる。
【0031】
ただし、二種類以上の混合溶媒にする場合、式中のAa+がLiイオンである電解質の場合は、これらの非水溶媒のうち誘電率が20以上の非プロトン性溶媒と誘電率が10以下の非プロトン性溶媒からなる混合溶媒に溶解することにより電解液を調製することが好ましい。特に、リチウム塩ではジエチルエーテル、ジメチルカーボネート等の誘電率が10以下の非プロトン性溶媒に対する溶解度が低く単独では十分なイオン伝導度が得られず、また、逆に誘電率20以上の非プロトン性溶媒単独中では、溶解度は高いもののその粘度も高い為にイオンが移動し難くなり、やはり十分なイオン伝導度が得られない。これらを混合すれば、適当な溶解度と移動度を確保することができ十分なイオン伝導度を得ることができる。
【0032】
また、電解質に混合するポリマーとしては、該化合物を溶解できる非プロトン性のポリマーであれば特に限定されるものではない。例えば、ポリエチレンオキシドを主鎖または側鎖に持つポリマー、ポリビニリデンフロライドのホモポリマーまたはコポリマー、メタクリル酸エステルポリマー、ポリアクリロニトリルなどが挙げられる。これらのポリマーに可塑剤を加える場合は、上記の非プロトン性非水溶媒が使用可能である。これらのイオン伝導体中における本発明の混合電解質濃度は、0.1mol/dm3以上、飽和濃度以下、好ましくは、0.5mol/dm3以上、1.5mol/dm3以下である。0.1mol/dm3より濃度が低いとイオン伝導度が低いため好ましくない。
【0033】
負極材料としては、特に限定されないが、リチウム電池の場合、リチウム金属やリチウムと他の金属との合金および金属間化合物が使用される。また、リチウムイオン電池の場合、ポリマー、有機物、ピッチ等を焼成して得られたカーボンや天然黒鉛、金属酸化物等のインターカレーションと呼ばれる現象を利用した材料が使用される。
【0034】
正極材料としては、特に限定されないが、リチウム電池及びリチウムイオン電池の場合、例えば、LiCoO2 、LiNiO2 、LiMnO2、LiMn2 O4 等のリチウム含有酸化物、TiO2 、V2 O5、MoO3 等の酸化物、TiS2 、FeS等の硫化物、あるいはポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、およびポリピロール等の導電性高分子が使用される。
【0035】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例により限定されるものではない。
【0036】
実施例1
エチレンカーボネート50vol%とジメチルカーボネート50vol%の混合溶媒中に、
【0037】
【化5】
【0038】
の構造を有するホウ酸リチウム誘導体を0.99mol/dm3と
【0039】
【化6】
【0040】
の構造を有するホウ酸リチウム誘導体を0.01mol/dm3とを溶解した電解液を調製し、この電解液を用いてLiCoO2を正極材料、天然黒鉛を負極材料としてセルを作製し、実際に電池の充放電試験を実施した。試験用セルは以下のように作製した。
【0041】
LiCoO2粉末90重量部に、バインダーとして5重量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電材としてアセチレンブラックを5重量部混合し、さらにN,N−ジメチルホルムアミドを添加し、ペースト状にした。このペーストをアルミニウム箔上に塗布して、乾燥させることにより、試験用正極体とした。また、天然黒鉛粉末90重量部に、バインダーとして10重量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を混合し、さらにN,N−ジメチルホルムアミドを添加し、スラリー状にした。このスラリーを銅箔上に塗布して、150℃で12時間乾燥させることにより、試験用負極体とした。そして、ポリエチレン製セパレータに電解液を浸み込ませてセルを組み立てた。
【0042】
次に、以下のような条件で保存試験を実施した。まず、環境温度25℃で充電放電を10サイクル行い、最後に充電させて60℃に保持した恒温室中に120時間保管した。この時、充電、放電時の電流密度は0.35mA/cm2 、充電は4.2V、放電は3.0V(vs.Li/Li+ )まで行った。保管後、電池を25℃まで自然冷却し、同条件で放電させて自己放電率を調べた。次いで、1サイクルの充放電を実施して放電容量回復率を調べた。その結果、自己放電率20%、放電容量回復率86%であった。
【0043】
実施例2
エチレンカーボネート50vol%とジエチルカーボネート50vol%の混合溶媒中に、実施例1と同様に
【0044】
【化7】
【0045】
の構造を有するホウ酸リチウム誘導体を0.90mol/dm3と
【0046】
【化8】
【0047】
の構造を有するホウ酸リチウム誘導体を0.10mol/dm3とを溶解した電解液を調製し、この電解液を用いて実施例1と同様にLiCoO2を正極材料、天然黒鉛を負極材料としたセルを作製し、実施例1と同様に保存試験を実施した。その結果、自己放電率15%、放電容量回復率90%であった。
【0048】
実施例3
エチレンカーボネート50vol%とエチルメチルカーボネート50vol%の混合溶媒中に、
【0049】
【化9】
【0050】
の構造を有するホウ酸リチウム誘導体を0.80mol/dm3と
【0051】
【化10】
【0052】
の構造を有するホウ酸リチウム誘導体を0.20mol/dm3とを溶解した電解液を調製し、この電解液を用いて実施例1と同様にLiCoO2を正極材料、天然黒鉛を負極材料としたセルを作製し、実施例1と同様に保存試験を実施した。その結果、自己放電率17%、放電容量回復率88%であった。
【0053】
実施例4
エチレンカーボネート50vol%とエチルメチルカーボネート50vol%の混合溶媒中に、
【0054】
【化11】
【0055】
の構造を有するホウ酸リチウム誘導体を0.80mol/dm3と
【0056】
【化12】
【0057】
の構造を有するホウ酸リチウム誘導体を0.20mol/dm3とを溶解した電解液を調製し、この電解液を用いて実施例1と同様にLiCoO2を正極材料、天然黒鉛を負極材料としたセルを作製し、以下のような条件で定電流充放電試験を実施した。環境温度60℃で充電、放電ともに電流密度0.35mA/cm2 で行い、充電は、4.2V、放電は、3.0V(vs.Li/Li+ )まで行った。その結果、500回充放電を繰り返したが500回目の容量は初回の93%という結果が得られた。
【0058】
比較例1
エチレンカーボネート50vol%とジメチルカーボネート50vol%の混合溶媒中に、
【0059】
【化13】
【0060】
の構造を有するホウ酸リチウム誘導体を1.0mol/dm3を溶解した電解液を調製し、この電解液を用いて実施例1と同様にLiCoO2を正極材料、天然黒鉛を負極材料としたセルを作製し、同様に保存試験を実施した。その結果、自己放電率30%、放電容量回復率80%であった。
【0061】
比較例2
エチレンカーボネート50vol%とジエチルカーボネート50vol%の混合溶媒中に、
【0062】
【化14】
【0063】
の構造を有するホウ酸リチウム誘導体を1.0mol/dm3を溶解した電解液を調製し、この電解液を用いて実施例1と同様にLiCoO2を正極材料、天然黒鉛を負極材料としたセルを作製し、同様に保存試験を実施した。その結果、自己放電率28%、放電容量回復率78%であった。
【0064】
比較例3
エチレンカーボネート50vol%とエチルメチルカーボネート50vol%の混合溶媒中に、
【0065】
【化15】
【0066】
の構造を有するホウ酸リチウム誘導体を1.0mol/lを溶解した電解液を調製し、実施例1と同様に、LiCoO2を正極材料、天然黒鉛を負極材料としたセルを作製し、実施例4と同じ条件で定電流充放電試験を実施した。その結果、500回充放電を繰り返したが500回目の容量は初回の25%という結果が得られた。
【0067】
【発明の効果】
本発明は、リチウム電池、リチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等の電気化学ディバイス用として利用される従来の電解質に比べ、優れたサイクル特性、高温貯蔵特性を有する電解質であり、その電解液または固体電解質並びにこれらを用いた電池を可能としたものである。
Claims (5)
- 一般式(1)で示される化学構造式よりなる化合物及び一般式(2)で示される化学構造式よりなる化合物を少なくとも含むリチウム電池及びリチウムイオン電池用電解質。
Aa+は、リチウムイオン、
aは、1、
bは、1、
pは、1、
mは、MがBの場合1または2、MがPの場合1、2、または3、
nは、MがBの場合0または2、MがPの場合0、2、または4、
qは、0または1をそれぞれ表し、
R1、R2は、各々独立で、H、ハロゲン、C1〜C10のアルキル、またはC1〜C10のハロゲン化アルキル、
R3は、C1〜C10のアルキレン、C1〜C10のハロゲン化アルキレン、C 6 〜C20のアリーレン、またはC 6 〜C20のハロゲン化アリーレン、
R4は、ハロゲン、またはX2R7、
X1は、O、またはNR5、X2は、O、
R5は、C1〜C10のアルキル、
X3は、O、
R7は、C1〜C10のハロゲン化アルキルをそれぞれ表す。 - 少なくとも請求項1記載の電解質を非水溶媒に溶解したものよりなることを特徴とするリチウム電池及びリチウムイオン電池用電解液。
- 非水溶媒が、誘電率が20以上の非プロトン性溶媒と誘電率が10以下の非プロトン性溶媒からなる混合溶媒であることを特徴とする請求項2記載のリチウム電池及びリチウムイオン電池用電解液。
- 少なくとも請求項1記載の電解質をポリマーに溶解したものよりなることを特徴とするリチウム電池及びリチウムイオン電池用固体電解質。
- 少なくとも正極、負極、電解液または固体電解質からなり、該電解液または固体電解質に請求項1に記載の電解質を含むことを特徴とするリチウム電池及びリチウムイオン電池。
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