JP3969765B2 - 熱可塑性樹脂成形体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は艶消し熱可塑性樹脂成形体およびその製造方法に関する。さらに詳述すると本発明は、ABS系樹脂に優れた艶消し外観性を付与することのできる特定の架橋ゴム含有樹脂とABS系樹脂とを同時に成形機に供給し成形する(以下、直接成形と称する。)方法により得られた優れた艶消し性、良外観性を有し、かつ衝撃強度、剛性等の物性バランスにも優れた熱可塑性樹脂成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ゴム状重合体にスチレンとアクリロニトリル等との混合物をグラフト共重合させた、いわゆるABS系樹脂は、その優れた耐衝撃性、成形性および良好な表面光沢を有することから、種々の用途に使用されている。一方、用途によっては落ち着き感、高級感のある表面光沢の低い艶消し外観を有する材料も望まれており、特に自動車内装部品の場合は、反射光による視界妨害を回避するといった安全上の理由からも艶消し外観が要求されている。
【0003】
表面光沢の低い艶消し外観性を供えた樹脂組成物に対する要求に対して、成形品の表面に艶消し塗料を塗布する方法が用いられているが、塗装工程にコストがかかることや、塗料用溶剤による環境汚染の問題がある。
【0004】
また、従来所望の特性を有した成形体は、単軸押出機、二軸押出機あるいはバンバリーミキサー等の混練機を用いて所望の物性を有した樹脂ペレットを得て、この樹脂ペレットを成形して得られていた。従来のこの方法では、樹脂ペレットを得るのに混練操作を経るので特にABS系樹脂が劣化し衝撃強度の低下を招いていた。また混練操作に多大なコストが発生し、経済的に不利であった。更に所望の特性のレベルに応じてそれぞれ異なった樹脂ペレットが必要という品種管理の煩雑さがあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の成形体を得る際に生じている課題も解決し、直接成形が可能でかつ優れた艶消し性を付与することができる架橋ゴム含有樹脂とABS系樹脂とを直接成形して得られた艶消し性に優れた熱可塑性樹脂成形体を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、下記の特定の架橋ゴム含有樹脂とABS系樹脂とを直接成形することによってその目的が達成できることを知見した。本発明の方法に依れば艶消し特性を有する成形体が、前記で述べたような事前の混練操作を経ずに簡便に得られ、また混練操作を経ないため、熱履歴が少なく、衝撃強度に優れた成形体を得ることが出来る。
【0007】
すなわち本発明は、(1)芳香族ビニル単量体単位60〜90重量%、シアン化ビニル単量体単位10〜40重量%およびこれらと共重合可能なビニル単量体単位0〜20重量%とからなるビニル共重合体30〜70重量%の存在下でシアン化ビニル−ジェン系共重合体ゴム、またはシアン化ビニル−ジェン系共重合体ゴムと架橋可能なゴム状重合体との混合物30〜70重量%を架橋させて得られる架橋ゴム含有樹脂(A)1〜25重量部と、ABS(アクリロニトリル−ブタジェン−スチレン)樹脂、α−メチルスチレン系耐熱ABS(アクリロニトリル−ブタジェン−α−メチルスチレン)樹脂、及びマレイミド系耐熱ABS(アクリロニトリル−ブタジェン−スチレン−N−フェニルマレイミド)から選ばれた一種のABS系樹脂(B)75〜99重量部とを同時に静止型混合器を設置した射出成形機に供給し成形することを特徴とする熱可塑性樹脂成形体の製造方法(但し、(A)と(B)との合計量は100重量部である。)である。
【0008】
(2)(1)の架橋ゴム含有樹脂(A)25〜70重量%と、ABS(アクリロニトリル−ブタジェン−スチレン)樹脂、α−メチルスチレン系耐熱ABS(アクリロニトリル−ブタジェン−α−メチルスチレン)樹脂、及びマレイミド系耐熱ABS(アクリロニトリル−ブタジェン−スチレン−N−フェニルマレイミド)から選ばれた一種のABS系樹脂(B)30〜75重量%を溶融混合して得た熱可塑性樹脂(C)4〜35重量部とABS系樹脂(B)65〜96重量部とを同時に静止型混合器を設置した射出成形機に供給し成形することを特徴とする熱可塑性樹脂成形体の製造方法(但し、(C)と成形機に供給する(B)との合計量は100重量部である。)である。
【0009】
【発明の実施の形態】
すなわち本発明は、芳香族ビニル単量体単位60〜90重量%、シアン化ビニル単量体単位10〜40重量%およびこれらと共重合可能なビニル単量体単位0〜40重量%とからなるビニル共重合体30〜70重量%の存在下でシアン化ビニル−ジェン系共重合体ゴム、またはシアン化ビニル−ジェン系共重合体ゴムと架橋可能なゴム状重合体との混合物30〜70重量%を架橋させて得られる架橋ゴム含有樹脂(A)1〜25重量部とABS系樹脂(B)75〜99重量部とを同時に成形機に供給し成形して熱可塑性樹脂成形体を得る方法である。
また、上記の架橋ゴム含有樹脂(A)25〜70重量%とABS系樹脂(B)30〜75重量%とを溶融混合した熱可塑性樹脂(C)4〜35重量部とABS系樹脂(B)65〜96重量部を同時に成形機に供給し成形して熱可塑性樹脂成形体を得る方法である。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、架橋ゴム含有樹脂(A)について説明する。架橋ゴム含有樹脂(A)は、ビニル共重合体の存在下でシアン化ビニル−ジェン系共重合体ゴム、またはシアン化ビニル−ジェン系共重合体ゴムと架橋可能なゴム状重合体との混合物を架橋させて得られた物である。
ビニル共重合体に用いられる芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン系単量体およびその置換単量体が挙げられ、これらの中でスチレンが特に好ましい。
【0011】
シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル等が挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。
【0012】
また、これらと共重合可能なビニル単量体としては、メチルアクリル酸エステルやエチルアクリル酸エステル等のアクリル酸エステル単量体、メチルメタクリル酸エステルやエチルメタクリル酸エステル等のメタクリル酸エステル単量体、アクリル酸やメタクリル酸等のビニルカルボン酸単量体およびアクリル酸アミドやメタクリル酸アミド等の単量体が挙げられる。
【0013】
このビニル共重合体は、芳香族ビニル単量体単位60〜90重量%、シアン化ビニル単量体単位10〜40重量%およびこれらと共重合可能なビニル単量体単位0〜40重量%とからなる。好ましくは芳香族ビニル単量体単位65〜80重量%、シアン化ビニル単量体単位20〜35重量%およびこれらと共重合可能なビニル単量体単位0〜20重量%とからなる。この範囲を逸脱すると、ABS系樹脂(B)との相溶性が劣り、成形体の衝撃強度が低下する。
【0014】
重合方法は、公知のいずれの重合技術も採用可能であって、例えば懸濁重合、乳化重合、溶液重合等が採用できる。
【0015】
架橋ゴム含有樹脂(A)は、前記のビニル共重合体30〜70重量%とゴム成分30〜70重量%とをバンバリーミキサー等を用いて溶融混合し、有機過酸化物の存在下で混合と同時に架橋を行ういわゆる動的架橋法により作成することが出来る。
【0016】
ゴム成分を架橋する時にビニル共重合体30〜70重量%、好ましくは35〜65重量%を混合することにより、ビニル共重合体の非存在下よりも架橋時の溶融粘度が低下し、より均一に架橋されたゴム成分が含有された樹脂として得られるのでABS系樹脂(B)との直接成形性が良好となる。この範囲を逸脱すると、架橋ゴム含有樹脂(A)とABS系樹脂(B)から直接成形して得られる熱可塑性樹脂成形体の外観が不良となる。
【0017】
本発明のビニル共重合体の存在下で架橋させるゴム成分としては、シアン化ビニル−ジェン系共重合体ゴムが用いられる。具体的にはアクリロニトリル−ブタジェン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジェン−スチレン共重合体ゴム、アクリロニトリル−イソプレン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジェン−イソプレン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジェン−アクリル酸共重合体ゴム、およびこれらのゴム中の共役ジェン単量体単位を水素化したゴム等が挙げられる。これらの中でアクリロニトリル−ブタジェン共重合体ゴムおよびアクリロニトリル−ブタジェン−スチレン共重合体ゴムが特に好ましい。
【0018】
本発明で架橋させるゴム成分としては、前記シアン化ビニル−ジェン系共重合体ゴム成分は必須である。シアン化ビニル−ジェン系共重合体ゴムを含まないと、架橋ゴム含有樹脂(A)とABS系樹脂(B)との相溶性が劣り、直接成形して得られた熱可塑性樹脂成形体の衝撃強度が低下したり、外観性が不良となる。
【0019】
また、前記のシアン化ビニル−ジェン系共重合体ゴムと架橋可能なゴム状重合体の例としては、ポリブタジェンゴム、スチレン−ブタジェン共重合体ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリクロロプレンゴム等の共役ジェン系重合体ゴムなどが挙げられ、特にスチレン−ブタジェン共重合体ゴムを組み合わせて用いるのが好ましい。
【0020】
なお、シアン化ビニル−ジェン系共重合体ゴムの割合は、使用するゴム成分中少なくとも20重量%以上であり、好ましくは30重量%以上である。シアン化ビニル−ジェン系共重合体ゴムの割合が20重量%未満では、架橋ゴム含有樹脂(A)とABS系樹脂(B)との相溶性が劣り、直接成形して得られた熱可塑性樹脂成形体の衝撃強度が低下したり、外観が不良となる。
【0021】
架橋剤として用いる有機過酸化物については特に制限が無く、公知のゴムの過酸化物架橋に用いるものであればよい。例えばベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等が挙げられる。
【0022】
架橋ゴム含有樹脂(A)は、ゴム成分が十分架橋していることが必要であり、ゲル分(架橋ゴム含有樹脂(A)をメチルエチルケトンに温度25℃で48時間浸漬したときの不溶解分を取り出し、溶媒を完全に乾燥させて不溶解分をゴム成分重量に対する100分率として求めた)が80重量%以上、好ましくは90重量%以上になるように架橋させることが望ましい。
【0023】
本発明で用いるABS系樹脂(B)の具体例としては、ABS(アクリロニトリル−ブタジェン−スチレン)樹脂、α−メチルスチレン系耐熱ABS(アクリロニトリル−ブタジェン−α−メチルスチレン)樹脂、マレイミド系耐熱ABS(アクリロニトリル−ブタジェン−スチレン−N−フェニルマレイミド)樹脂が挙げられる。
【0024】
本発明の架橋ゴム含有樹脂(A)とABS系樹脂(B)から得られた熱可塑性樹脂成形体の組成は、架橋ゴム含有樹脂(A)1〜25重量部、好ましくは2〜20重量部、ABS系樹脂(B)75〜99重量部、好ましくは80〜98重量部が良い。架橋ゴム含有樹脂(A)が1重量部未満では、熱可塑性樹脂成形体の艶消し性が十分でないとともに、直接成形時、ABS系樹脂(B)との混合が不十分となり外観不良が発生しやすくなる。25重量部以上では、熱可塑性樹脂成形体にフローマーク等の外観不良が発生しやすくなるとともに、剛性が低下する。なお、架橋ゴム含有樹脂(A)とABS系樹脂(B)との組成の合計量は100重量部である。
【0025】
また、本発明では架橋ゴム含有樹脂(A)25〜70重量%とABS系樹脂(B)30〜75重量%とを、あらかじめ溶融混合した熱可塑性樹脂(C)4〜35重量部とABS系樹脂(B)65〜96重量部、好ましくは熱可塑性樹脂(C)8〜30重量部とABS系樹脂(B)70〜92重量部とを直接成形し、優れた艶消し外観を有する成形体を得ることも出来る。この範囲を逸脱すると、艶消し性、良外観性、剛性等の物性バランスに優れた成形体を得ることが出来ない。本プロセスによる成形体は経済的には、前記に説明した架橋ゴム含有樹脂(A)とABS系樹脂(B)とを直接成形した成形体に比べて不利ではあるが、溶融混合するABS系樹脂を種々選択し、熱可塑性樹脂(C)に艶消し性以外の機能を付与できる等のメリットがある。例えば、溶融混合するABS系樹脂(B)として耐熱性ABS樹脂を選択すれば、熱可塑性樹脂(C)に艶消し性と耐熱性の二つの機能が付与される。なお、熱可塑性樹脂(C)の重量部と直接成形するABS系樹脂(B)の重量部の合計量は100重量部である。
【0026】
なお、本発明で用いるABS系樹脂(B)としては、溶融混合するABS系樹脂と直接成形に供するABS系樹脂は同一のものである必要はない。
【0027】
この熱可塑性樹脂(C)の溶融混合方法には、特に制限はなく、公知の手段を用いることが出来る。その手段としては、例えばバンバリーミキサー、混合ロールおよび一軸または二軸押出機が挙げられる。
【0028】
この本発明の架橋ゴム含有樹脂(A)および/または熱可塑性樹脂(C)には、溶融混練時に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤を目的に合わせて配合しておくことが出来る。
【0029】
また、架橋ゴム含有樹脂(A)または熱可塑性樹脂(C)とABS系樹脂(B)とを同時に成形機に供給する際に、上記の添加剤を同時に供給することもできるし、これらの添加剤がマスターバッチ化されたものを用いることもできる。
【0030】
本発明で熱可塑性樹脂成形体を得るのに用いる成形機としては、射出成形機、シート成形機、ブロー成形機、射出−ブロー成形機等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
本発明において、架橋ゴム含有樹脂(A)または熱可塑性樹脂(C)とABS系樹脂(B)とを成形機に供給する方法としては、タンブラーミキサーやVブレンダー等の公知の装置を用いてプリブレンドしたものを供給する方法や、成形機の供給口に、両材料を別々に定量的に供給する方法も採用することが出来る。特に供給する方法にこだわるものではない。また、目的に応じて着色剤あるいは着色剤マスターバッチを同時に供給することも出来る。
【0032】
成形機のシリンダー設定温度は、架橋ゴム含有樹脂(A)、熱可塑性樹脂(C)の組成、ABS系樹脂(B)の種類によりその最適値が決まる。具体的に、本発明の場合は220℃〜280℃が好ましい。
【0033】
また、射出成形の場合は、成形機シリンダーとノズルの間に、公知の静止型混合器、例えばスルーザータイプ、ケニックスタイプ、東レタイプ等を設置することにより、より高品質の艶消し外観性を有する成形体を得ることが出来る。
【0034】
さらに、射出成形機のスクリューは、最も汎用性の高いフルフライトスクリューを用いることが出来るが、より混練性の高いダルメージタイプ、ピンタイプ、マドックタイプのスクリューを用いることも出来る。
【0035】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例中の部、%は、ことわりのない限り重量基準で表す。
【0036】
実験例1 架橋ゴム含有樹脂(A)で用いるビニル共重合体の製造例
撹拌機を供えた反応缶中にスチレン75部、アクリロニトリル25部、第三リン酸カルシウム2.5部、t−ドデシルメルカプタン0.5部、ベンゾイルパーオキサイド0.2部およびイオン交換水250部を仕込み、温度70℃に昇温し重合を開始させた。重合開始から7時間後に温度を75℃に昇温して3時間保ち重合を完結させた。重合率は97%に達した。得られた反応液を塩酸水にて中和し、脱水乾燥し、白色ビーズ状の共重合体を得た。
【0037】
実験例2 架橋ゴム含有樹脂(A)の製造例
実験例1で得た共重合体50部、アクリロニトリル−ブタジェン共重合体ゴム(アクリロニトリル単位30%)20部およびスチレン−ブタジェン共重合体ゴム(スチレン単位70%)30部を温度160℃のバンバリーミキサーを用いて十分溶融混合した後にゴム成分の架橋剤である有機過酸化物1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン0.5部を添加して7分間動的架橋を行わせた後シート出しを行い、このシートをペレット成形機によりペレット化して架橋ゴム含有樹脂を得た。このペレット化した架橋ゴム含有樹脂の一定量をメチルエチルケトンに温度25℃で48時間浸漬し、溶媒を完全に蒸発させ、ゲル分(不溶解分を混合物中のゴム成分重量に対する100分率として求めた)を測定したところ98%であった。これを架橋ゴム含有樹脂A−1とした。
【0038】
実験例3 架橋ゴム含有樹脂(A)の製造例
実験例1で得た共重合体50部、スチレン−ブタジェン共重合体ゴム(スチレン単位30%)50部を温度160℃のバンバリーミキサーを用いて十分溶融混合した後にゴム成分の架橋剤である有機過酸化物1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン0.5部を添加して7分間動的架橋を行わせた後シート出しを行い、このシートをペレット成形機によりペレット化して架橋ゴム含有樹脂を得た。このペレットのゲル分を測定したところ99%であった。これを架橋ゴム含有樹脂A−2とした。
【0039】
実験例4 架橋ゴム含有樹脂(A)の製造例
実験例2で、実験例1で得た共重合体20部、アクリロニトリル−ブタジェン共重合体ゴム(アクリロニトリル単位30%)30部およびスチレン−ブタジェン共重合体ゴム(スチレン単位70%)50部とした以外は同様に行った。ゲル分は99%であった。これを架橋ゴム含有樹脂A−3とした。
【0040】
ABS系樹脂(B)としては、B−1として電気化学工業株式会社製ABS樹脂「GR−2000」を、またB−2として同社製マレイミド系耐熱性ABS樹脂「K−095」を用いた。そのB−1とB−2の物性を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
実験例5 熱可塑性樹脂(C)の製造例
架橋ゴム含有樹脂A−1を50%、ABS系樹脂B−1を50%を混合し、温度220℃にて一軸押出機で押出した後、ペレット化し、これを熱可塑性樹脂C−1とした。同様にA−1を49%、B−2を49%、カーボンブラック2%を溶融混合したものをC−2とした。
【0043】
実施例1〜6
架橋ゴム含有樹脂A−1または熱可塑性樹脂C−1、C−2およびABS系樹脂B−1、B−2を、それぞれ定量フィーダーにて、表2に示す割合で射出成形機に供給し、試験片を成形した。成形は川口鉄工株式会社製射出成形機K−125に東レエンジニア株式会社製静止型混合器(ミキシングノズル)TMN−16−06を取り付けて行った。その他の射出成形条件は次の通りである。
シリンダー設定温度:240℃、
射出圧力:最小充填圧力+5kg/cm2G、
射出速度:40%、
金型温度:60℃、
スクリュー:フルフライトタイプ、
このようにして得られた試験片を用いて、各種物性測定および外観評価を行い、表2にその結果を示した。
【0044】
【表2】
【0045】
比較例1〜5
架橋ゴム含有樹脂A−1、A−2、A−3とABS系樹脂B−1、B−2を表3に示す割合で用いた以外は、実施例と同様の方法で行った。その物性測定および外観評価を表3に併せて示した。
【0046】
比較例6
架橋ゴム含有樹脂A−1の20%とABS系樹脂B−1の80%とを、40mm単軸押出機にて温度230℃で押出し、ペレットを得た。このペレットを用い、実施例と同一の成形条件にて試験片を作成した。その物性測定および外観評価を表3に併せて示した。
【0047】
【表3】
【0048】
物性測定および外観評価は次の方法で行った。
(1)艶消し性(光沢度):縦80mm、横50mm、肉厚2mmの大きさの角板をサイドゲート(1点)で前記射出成形条件にて成形し、スガ試験機社製光沢計「UGV−4D」を用いて入射角60度、反射角60度での反射率の測定を行った。
(2)耐熱性(熱変形温度):肉厚1/4インチの試験片を用い、荷重18.6kg/cm2で、ASTM D−648に準じて測定した。
(3)耐衝撃性(アイゾット衝撃強度):肉厚1/4インチのノッチ付き試験片を用い、ASTM D−256に準じて測定した。
(4)剛性(曲げ弾性率):肉厚1/4インチの試験片を用い、曲げ速度15mm/minで、ASTM D−790に準じて測定した。
(5)外観:縦127mm、横127mm、肉厚2mmの角板をサイドゲート(2点)で前記射出成形条件にて成形し、その成形品の外観を目視し、以下の基準で判定した。
○:表面に不良現象(フローマーク、シルバーストリーク)が発生していない。
×:表面に不良現象(フローマーク、シルバーストリーク)が発生している。
【0049】
表2の実施例に示す通り、本発明の架橋ゴム含有樹脂(A)または熱可塑性樹脂(C)とABS系樹脂(B)とを直接成形した成形体は優れた艶消し性、良外観性を有し、かつ剛性、衝撃強度等の物性バランスにも優れている。一方、表3の比較例に示す通り、本発明の範囲を逸脱した成形体は、これらの優れた品質を保持することが出来ない。
【0050】
【発明の効果】
以上、説明した通り、本発明の架橋ゴム含有樹脂とABS系樹脂との直接成形体は優れた艶消し性を有しており、自動車部品や電気部品等の広範囲な分野で極めて有用である。また、直接成形という経済的に優れたプロセスを採用することができるため、産業上の利用価値は極めて大きい。
Claims (2)
- 芳香族ビニル単量体単位60〜90重量%、シアン化ビニル単量体単位10〜40重量%およびこれらと共重合可能なビニル単量体単位0〜20重量%とからなるビニル共重合体30〜70重量%の存在下でシアン化ビニル−ジェン系共重合体ゴム、またはシアン化ビニル−ジェン系共重合体ゴムと架橋可能なゴム状重合体との混合物30〜70重量%を架橋させて得られる架橋ゴム含有樹脂(A)1〜25重量部と、ABS(アクリロニトリル−ブタジェン−スチレン)樹脂、α−メチルスチレン系耐熱ABS(アクリロニトリル−ブタジェン−α−メチルスチレン)樹脂、及びマレイミド系耐熱ABS(アクリロニトリル−ブタジェン−スチレン−N−フェニルマレイミド)から選ばれた一種のABS系樹脂(B)75〜99重量部とを同時に静止型混合器を設置した射出成形機に供給し成形することを特徴とする熱可塑性樹脂成形体の製造方法(但し、(A)と(B)との合計量は100重量部である。)
- 請求項1の架橋ゴム含有樹脂(A)25〜70重量%と、ABS(アクリロニトリル−ブタジェン−スチレン)樹脂、α−メチルスチレン系耐熱ABS(アクリロニトリル−ブタジェン−α−メチルスチレン)樹脂、及びマレイミド系耐熱ABS(アクリロニトリル−ブタジェン−スチレン−N−フェニルマレイミド)から選ばれた一種のABS系樹脂(B)30〜75重量%を溶融混合して得た熱可塑性樹脂(C)4〜35重量部とABS系樹脂(B)65〜96重量部とを同時に静止型混合器を設置した射出成形機に供給し成形することを特徴とする熱可塑性樹脂成形体の製造方法(但し、(C)と成形機に供給する(B)との合計量は100重量部である。)
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