JP3969258B2 - 車両用空調装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、停車時に車両エンジンを自動停止させるアイドルストップ車に搭載された、車両用空調装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球環境保護、車両エンジンの燃費向上等を目的にして、信号待ち等の停車時に車両エンジンを自動的に停止する車両(ハイブリッド車等のアイドルストップ車)が増加する傾向にある。このようなアイドルストップ車に搭載され、冷凍サイクルの圧縮機を車両エンジンにより駆動している車両用空調装置が、以下の特許文献1および特許文献2に示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−180260号公報
【0004】
【特許文献2】
特開2000−374288号公報
当該空調装置においては、アイドルストップ停車時には圧縮機をできるだけ停止させて、車両エンジンの燃費向上を図るようにしている。圧縮機を停止させれば蒸発器の温度TEは上昇するが、車両走行中に蒸発器が十分冷却されていれば、数十秒程度の間は蒸発器の熱容量により車室内への吹出空気を冷却できる。しかしながら、アイドルストップ停車中における乗員の空調フィーリングが限度を超えて著しく損なわれないように、アイドルストップ停車中に蒸発器の温度TEが所定温度TEO0よりも高くなった場合には圧縮機を再駆動させている。
【0005】
因みに、上記特許文献1および2に記載の圧縮機は車両エンジンとモータにより切替駆動されるようになっており、アイドルストップ停車中における圧縮機の再駆動はモータで行い、その後、モータのみの駆動では動力不足となった場合にはエンジンにより圧縮機を駆動させるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、蒸発器温度TEが上昇する過程において蒸発器表面の凝縮水が乾ききるときに、凝縮水に溶解していた臭い成分が蒸発器から離脱して送風空気とともに車室内へ吹き出され、乗員に不快感を与えるといった問題が従来より知られている。
【0007】
ここで、蒸発器のうち冷媒流れの下流部は上流部よりも温度が高くなっており、蒸発器には少なからず温度分布に偏差が生じている。よって、一般的になされているように蒸発器温度TEを冷媒流れ略中央部位で検出すると、蒸発器の冷媒流れ下流部では検出された蒸発器温度TEよりも高温となっている。
【0008】
そして、上記特許文献1および2に記載の空調装置では前述の所定温度TEO0を、このような蒸発器の温度分布偏差に拘わらず固定した値としているので、アイドルストップ停車直前における上記温度分布偏差が大きい場合には、蒸発器の冷媒流れ下流部にて、上述のように臭い成分が離脱する程度に温度上昇してしまう。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、アイドルストップ車に搭載された車両用空調装置において、乗員の空調フィーリングが限度を超えて著しく損なわれない程度に燃費向上を図りつつ、蒸発器からの臭い発生の抑制を図ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、少なくとも車両エンジン(20)により駆動される、冷凍サイクルの圧縮機(1)と、圧縮機(1)の作動により冷媒が循環して、車室内吹出空気を冷却する蒸発器(5)とを備え、車両エンジン(20)を自動停止させるアイドルストップ停車時に、圧縮機(1)を停止させ、アイドルストップ停車中に蒸発器(5)の温度(Te)が所定温度(TEO0)よりも高くなった場合には、圧縮機(1)を再駆動させるようにした車両用空調装置において、
蒸発器(5)は、蒸発器(5)のうち冷媒流れの下流部は冷媒流れの他の部位よりも温度が高くなるという温度分布の偏差を有しており、アイドルストップ停車直前における蒸発器(5)に流入する冷媒流量が少ないほど、前記温度分布の偏差が大きいと見なして所定温度(TEO0)を低い温度に可変して設定する手段(S1000)を備えることを特徴としている。
【0011】
これにより、アイドルストップ停車時には圧縮機(1)を停止させて燃費向上を図りつつも、アイドルストップ停車中に蒸発器(5)の温度(Te)が所定温度(TEO0)よりも高くなった場合には圧縮機(1)を再駆動させるので、乗員の空調フィーリングが限度を超えて著しく損なわれてしまうことを防止できる。
【0012】
しかも、所定温度(TEO0)を、アイドルストップ停車直前における蒸発器(5)の温度分布偏差が大きいほど低い温度に可変して設定するので、蒸発器(5)の冷媒流れ下流部にて、臭い成分が離脱する程度に温度上昇してしまうことを抑制できる。
【0013】
なお、アイドルストップ停車直前における蒸発器(5)の温度分布偏差が小さい場合には、所定温度(TEO0)を高い温度に可変して設定するため、所定温度(TEO0)を低い温度に固定した場合に比べて圧縮機(1)を停止させてから再駆動するまでの時間を長くできるので、燃費を向上できる。
【0015】
ここで、アイドルストップ停車直前における蒸発器(5)の冷媒流量を検出する手段として、圧縮機(1)が可変容量タイプのものである場合において圧縮機(1)容量から推定する手段や、冷媒流量を直接検出する手段等が挙げられる。
【0017】
これにより、停車時における車両エンジン(20)の停止時間すなわちアイドルストップ停車時間を、長くすることができ、燃費向上を図ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各実施形態を図に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用空調装置の全体構成を示すものである。空調用の冷凍サイクルRは、周知のごとく、圧縮機1、凝縮器2、受液器3、減圧手段をなす膨張弁4、蒸発器5から構成されている。
【0020】
空調ケース6は車室内へ向かって空調空気が流れる通路を形成するものであって、この空調ケース6内に蒸発器5が配置されている。この蒸発器5は空調空気を冷却する冷房用熱交換器であって、膨張弁4からの低圧の気液2相冷媒が送風機7の送風空気から吸熱して蒸発することにより空気を冷却する。
【0021】
送風機7は遠心式送風ファン7aとファン駆動用モータ7bを有している。送風機7の吸入口7cには図示しない内外気切替箱を通して外気または内気が吸入される。空調ケース6内で、蒸発器5の下流側にはヒータコア8が配置されている。
【0022】
ヒータコア8は温水を熱源として空調空気を加熱する暖房用熱交換器であって、空調ケース6内においてヒータコア8の側方(上方)にはバイパス通路8aが形成されている。そして、このバイパス通路8aを通過する冷風とヒータコア8を通過する温風との風量割合を調整するために、ヒータコア8に隣接して板状のエアミックスドア9が回動可能に設けてある。このエアミックスドア9はサーボモータ9aにより駆動される。
【0023】
冷温風の混合により所望温度になった空気は、吹出モード切替ドア11、12、13により開閉されるデフロスタ開口部14、フェイス開口部15、フット開口部16を経て車室内の各部(窓ガラス内面、乗員上半身側、乗員足元側)に吹き出される。吹出モード切替ドア11、12、13もエアミックスドア9と同様に図示しないサーボモータにより駆動される。なお、ヒータコア8には車両エンジン20の温水(冷却水)が循環するようになっている。
【0024】
車両エンジン20は車両走行用の駆動源および圧縮機1等の補機の駆動源となる。また、モータ21は車両エンジン20の作動時には車両エンジン20により駆動されて発電機として作用する発電機兼電動機(モータジェネレータ)である。このモータ21は、車両エンジン20の停止時に圧縮機1等の補機を駆動する駆動源としての役割と、車両エンジン20の作動時(車両走行中)に車両エンジン20により駆動され車載蓄電池50を充電する発電機としての役割と、車両エンジン20を始動する始動用モータ(スタータ)としての役割とを果たす。
【0025】
より具体的にモータ21を説明すると、モータ21は3相交流回転電機であって、モータとして作動する時には、駆動回路から供給される3相交流電圧により回転子に回転力を発生する3相交流モータとなり、また、発電機として作動する時には、車両エンジン20により回転子が回転駆動されて起電力を発生する3相交流発電機となる。モータ21の発電作用による3相交流電圧は直流に整流されて車載蓄電池50を充電する。
【0026】
車両エンジン20のクランクシャフトには電磁クラッチ22が備えられ、車両エンジン20の回転がこの電磁クラッチ22を介してクランクプーリ23に伝達されるようになっている。このクランクプーリ23の回転は、ベルト24を介して圧縮機1のプーリ1aおよびモータ21のプーリ21aに伝達される。圧縮機1のプーリ1aには電磁クラッチ25が備えられ、この電磁クラッチ25により圧縮機1への回転伝達が断続されようになっている。
【0027】
以上により、圧縮機1は車両エンジン20とモータ21とにより切替駆動される構成になっている。すなわち、停車時等の車両エンジン20の停止時には、圧縮機1をモータ21により駆動するが、車両エンジン20の作動時(車両走行中)には、車両エンジン20によって圧縮機1を駆動する。
【0028】
なお、図1では図示を省略したが、クランクプーリ23の回転はベルト24を介して図示しない冷却水ポンプ、パワーステアリング駆動用油圧モータ等の補機にも伝達されるようになっている。従って、車両エンジン20の停止時に、これらの補機を圧縮機1と同様にモータ21により駆動することができる。
【0029】
また、車両エンジン20のクランクシャフトの電磁クラッチ22の代わりに、車両エンジン20からクランクプーリ23側へのみ回転動力を伝達し、モータ21から車両エンジン20側への動力伝達を遮断するクラッチ機構(一方向クラッチ)を使用してもよい。但し、この場合はエンジン始動機能のために、別途、専用のスタータが必要となる。
【0030】
また、圧縮機1にプーリ1aを複数設け、各プーリ1aに、車両エンジン20から圧縮機1に動力を伝達するベルト24と、モータ21から圧縮機1に動力を伝達するベルト24とを別々に設けるようにしてもよい。
【0031】
また、本実施形態の圧縮機1は、吐出容量(圧縮機1回転当たりの冷媒吐出量)を変化させることができる可変容量型圧縮機である。可変容量型圧縮機1の構成は周知であり、例えば、特許第2661121号公報に記載のものを使用することができる。この公知例の可変容量型圧縮機1は、回転軸に連結された斜板を有し、この斜板の回転により冷媒の吸入、圧縮、吐出を行うピストンを往復動させる。
【0032】
そして、上記斜板に作用する制御圧力を調整する電磁式圧力制御装置1bを有し、この電磁式圧力制御装置1bの電磁コイルに供給する電流量Inによって制御圧力を調整するようになっている。この制御圧力の調整により、斜板の傾斜角度を変えてピストンのストロークを変化させ、これにより、吐出容量を変化させることができる。従って、電磁式圧力制御装置1bは容量可変手段を構成するもので、上記電流量Inは連続制御、デューティ制御のいずれで制御してもよい。
【0033】
車両エンジン20、モータ21および補機(少なくとも空調装置を含む)はそれぞれ制御部30、31、32を備えている。この制御部30、31、32はマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されるもので、各制御部相互の間で信号を通信し合うようになっている。これらの制御部30、31、32には車載蓄電池50から車両エンジン20のイグニッションスイッチ51を介して電源を供給するようになっている。
【0034】
空調用制御部32には、入力センサとして、外気温Tamを検出する外気温センサ33、車室内温度Trを検出する内気温センサ34、車室内への日射量Tsを検出する日射センサ35、蒸発器5の冷却度合としての吹出空気温度(蒸発器温度)Teを検出する蒸発器温度センサ36、ヒータコア8の温水温度Twを検出する水温センサ37、電磁式圧力制御装置1bの電磁コイルに供給する電流量Inを検出する冷媒流量センサ44、車速SPDを検出する車速センサ45等が接続されている。
【0035】
なお、車速センサ45からの信号は、エンジン制御部30を介して空調制御部32に入力されるようにしてもよい。
【0036】
また、車室内の計器盤近傍に配置された空調操作パネル38には、車室内の設定温度Tsetを設定する温度設定器39、圧縮機1の断続信号を出すエアコンスイッチ40、吹出モードの切替信号を出す吹出モードスイッチ41、送風機7の風量切替信号を出す風量切替スイッチ42、内外気切替信号を出す内外気切替スイッチ43等の操作部材が設けられ、これらの操作部材の操作信号も空調用制御部32に入力される。
【0037】
次に、本実施形態の作動を図2のフローチャートに基づいて説明する。空調制御部32は図2のフローチャートに従って演算・処理を実行する。
【0038】
(1)通常空調制御フロー
図2の制御ルーチンは車両エンジンのイグニッションスイッチ51の投入によりスタートし、最初に、ステップS100で信号読込を行う。
【0039】
すなわち、各種センサ33〜37の検出による車室内温度Tr、外気温度Tam、温水温度(冷却水温)Tw、日射量Ts、蒸発器吹出温度Te等の車両環境状態を示す信号、空調操作パネル38からの車室内の設定温度Tset等の操作信号、エンジン制御部30からのエンジン稼働信号、モータ(MG)制御部31からのモータ稼働信号、電磁式圧力制御装置1bの電磁コイルに供給する電流量Inおよび車速SPDの信号等を読込む。
【0040】
次に、ステップS200でエアコンスイッチ40がONかOFFかを判定する。エアコンスイッチ40のON時には、次にステップS300に進み、車室内への吹出空気の目標吹出温度TAO、送風機7の目標風量レベルBLW、エアミックスドア9の目標開度SW、目標蒸発器吹出温度TEOを通常のオートエアコン制御と同様に演算する。
【0041】
すなわち、目標吹出温度TAOは車室内を乗員の設定した設定温度Tsetに維持するために必要な車室内への吹出温度であって、TAOはTset、Tam、Tr、Tsに基づいて演算する。送風機7の目標風量レベルBLWはTAOに基づいて演算し、エアミックスドア9の目標開度SWは、TAO、Te、Twに基づいて演算し、蒸発器12の目標吹出温度TEOはTAO、Tam等に基づいて演算する。
【0042】
次に、ステップS400に進み、ステップS100で読込んだ車速SPD信号に応じ、車速が低下して車両の減速が開始されていない場合には、ステップS300で演算した通常のオートエアコン制御と同様の演算結果のままステップS1300に進む。
【0043】
これに反し、減速が開始された場合には、図3に示すステップS500以降の減速時制御およびアイドルストップ停車時制御のフローへ進む。ステップS500以降のこれらの制御では、通常のオートエアコン制御の演算結果であるTEOを変更して圧縮機1を制御する。減速時およびアイドルストップ停車時の空調制御フローの詳細は後述する。
【0044】
ステップS1300では、ステップS300で算出したエアミックスドア目標開度SW、目標蒸発器吹出温度TEO、目標風量レベルBLWの各種制御信号を各種制御手段へ出力する。
【0045】
すなわち、エアミックスドア9についてはその実際の開度が目標開度SWとなるようにエアミックスドア9の駆動用サーボモータ9aの作動角が制御される。また、送風機7の風量については、目標風量レベルBLWが得られるように送風機7の駆動モータ7bの印加電圧を制御する。この駆動モータ7bの印加電圧制御は連続制御だけでなく、パルス幅変調制御(PWM制御)でもよい。
【0046】
また、圧縮機1の制御については、温度センサ36により検出される実際の蒸発器吹出温度Teが目標値TEOとなるように、可変容量型圧縮機1の容量を可変制御する。可変容量型圧縮機1の最小容量でも、蒸発器吹出温度Teが目標値TEOより低いとき、および圧縮機1の作動の不要時は、電磁クラッチ25を遮断して圧縮機1を停止する。
【0047】
(2)減速時およびアイドルストップ停車時の空調制御フロー
図3に示すステップS500以降が減速時およびアイドルストップ停車時の空調制御(エコラン空調制御)のフローである。図4に示すタイムチャートは、車両が減速してアイドルストップ停車する過程において、通常空調制御、減速時空調制御、アイドルストップ停車時空調制御、通常空調制御と制御が移り変わった場合の、車速SPD、目標蒸発器温度TEO、蒸発器温度センサ36による蒸発器温度Te、圧縮機1の吐出容量としての電流量Inの変化を示している。
【0048】
まず、ステップS500では、その時の、電磁式圧力制御装置1bの電磁コイルに供給された電流量Inn-1および目標吹出温度TEOn-1を記憶する。次に、ステップS600に進み、ステップS300で算出したTEOの値を下限値に変更する。なお、下限値とは、蒸発器5がフロスとしない程度の低温(例えば3〜4℃)である。
【0049】
次に、ステップS700に進み、車速SPD信号等に基づいて減速中であるか否かを判定し、減速中でなければステップS1200に進み、ステップS600にて変更された目標吹出温度TEOをステップS300にて算出された通常空調制御時の目標吹出温度TEOの値に戻す。
【0050】
一方、減速中であればステップS900に進み、ステップS600にて変更された下限値TEOに基づいて圧縮機1の駆動を制御する。すなわち、実際の蒸発器吹出温度Teが目標値TEOとなるように、可変容量型圧縮機1の容量を可変制御する。図4のタイムチャートでは圧縮機1の吐出容量を最大にしている。
【0051】
そして、ステップS900にて車両が停止したか否かを判定し、車両停止と判定されなければステップS700に戻り、ステップS800による減速時空調制御を続ける。車両停止と判定されれば、ステップS1000に進み、ステップS500にて記憶した電流量Inn-1および目標吹出温度TEOn-1に基づいて所定値TEO0を算出して設定する。
【0052】
具体的には、アイドルストップ停車直前における圧縮機1の吐出容量が小さいほど、アイドルストップ停車直前における蒸発器5の温度分布偏差が大きいとみなし、所定値TEO0を低く設定している。本実施形態では、電流量Inn-1の値が小さいほど吐出容量が小さくなるようになっている。また、アイドルストップ停車直前における目標吹出温度TEOn-1が高いほど、アイドルストップ停車直前における蒸発器5の温度分布偏差が大きいとみなし、所定値TEO0を低く設定している。
【0053】
すなわち、所定値TEO0は、アイドルストップ停車直前における蒸発器5の温度分布偏差が大きいほど低い温度に可変し、温度分布偏差が小さいほど高い温度に可変して設定される。なお、図4中の実線TEOLoは、所定値TEO0が低い温度に設定された場合の目標蒸発器温度TEOおよび実際の蒸発器温度Teの値を示し、図4中の一点鎖線TEOHiは、所定値TEO0が高い温度に設定された場合の目標蒸発器温度TEOおよび実際の蒸発器温度Teの値を示している。
【0054】
なお、圧縮機1をモータ21により駆動するときは、圧縮機1を車両エンジン20により駆動するときに比して、圧縮機1の能力を低下させるようになっており、本実施形態では、所定値TEO0はアイドルストップ停車直前における目標吹出温度TEOn-1よりも高い温度に設定している。
【0055】
次に、ステップS1100に進み、アイドルストップ停車時空調制御を行う。具体的には、実際の蒸発器5温度Teが温度上昇して所定値TEO0以上になるとモータ21を駆動させることにより圧縮機1を再駆動させる。そして、モータ21を駆動させるだけでは蒸発器5による冷房能力が不足する場合には、図4のタイムチャートに示すように車両エンジン20を始動させてエンジン20を駆動源として圧縮機1を駆動させるとともに、ステップS100に進み、通常空調制御を行う。
【0056】
以上より、本実施形態によれば、アイドルストップ停車時に圧縮機1を停止させ、アイドルストップ停車中に蒸発器5の温度TEが所定温度TEO0よりも高くなった場合には圧縮機1を再駆動させるようにした車両用空調装置において、上記所定温度TEO0を、アイドルストップ停車直前における蒸発器5の温度分布偏差が大きいほど低い温度に可変して設定する。これにより、上記温度分布偏差が大きい場合であっても蒸発器5の冷媒流れ下流部にて臭い成分が離脱する程度に温度上昇してしまうことを抑制でき、上記温度分布偏差が小さい場合には圧縮機1を停止させてから再駆動するまでの時間を長くでき、ひいては燃費を向上できる。
【0057】
また、本実施形態では、ステップS800の減速時空調制御により減速エネルギーを利用して蒸発器5温度を下げるようにしているので、アイドルストップ停車時点からモータ21駆動するまでの時間を長くすることができ、ひいては燃費をより一層向上できる。
【0058】
また、本実施形態では、所定値TEO0を、アイドルストップ停車直前における目標吹出温度TEOn-1よりも高い温度に設定しているので、アイドルストップ停車時点からモータ21駆動するまでの時間を長くすることができ、ひいては燃費をより一層向上できる。
【0059】
(他の実施形態)
なお、上述の実施形態では、圧縮機1として可変容量型圧縮機を用い、可変容量型圧縮機1の容量を可変制御することにより蒸発器温度Teを目標値TEOとなるように制御する場合について説明したが、圧縮機1として通常の固定容量型圧縮機を用い、この固定容量型圧縮機1の作動を電磁クラッチ25により断続して、圧縮機1の稼働率を変化させることにより蒸発器吹出温度Teを目標値TEOとなるように制御してもよい。
【0060】
また、上述の実施形態では、発電機を兼ねるモータ21を圧縮機1の駆動源として用いているが、モータ21を圧縮機1等の補機の駆動源専用とし、発電機を別途独立に設けてもよい。また、上述の実施形態では、圧縮機1と駆動用モータ21とを別体で構成しているが、圧縮機1に駆動用モータ21を一体に構成してもよい。要は、エンジン稼働時には、車両エンジン20により圧縮機1を駆動し、エンジン停止時にはモータ21により圧縮機1を駆動することができる圧縮機駆動機構であればよい。従って、圧縮機1、車両エンジン20、モータ21、および発電機相互間の接続関係は種々変更可能である。
【0061】
さらに、本発明の実施にあたりモータ21を廃止してもよい。具体的には、ステップS1100のアイドルストップ停車時空調制御において、実際の蒸発器5温度Teが温度上昇して所定値TEO0以上になると車両エンジン20を始動させてエンジン20を駆動源として圧縮機1を再駆動させるとともに、ステップS100に進み、通常空調制御を行うようにしてもよい。
【0062】
また、図1では、圧縮機1の電磁クラッチ25の断続用出力信号をエンジン制御部30から出力する例を示しているが、圧縮機1の電磁クラッチ25の断続用出力信号を空調制御部32から出力してもよいことはもちろんである。
【0063】
また、図1において別々に示したエンジン制御部30、モータ制御部31、および空調制御部32を1つの制御装置として統合してもよいことはもちろんである。
【0064】
また、本発明の車両用空調装置は、乗用車への適用に限られるものではなくバスに適用してもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用空調装置の全体システム図である。
【図2】図1のシステムの作動を示すフローチャートである。
【図3】図2の要部を示すフローチャートである。
【図4】図1のシステムによるタイムチャートを示す図である。
【符号の説明】
1…圧縮機、5…蒸発器、20…車両エンジン、TEO0…所定温度。
Claims (1)
- 少なくとも車両エンジン(20)により駆動される、冷凍サイクルの圧縮機(1)と、
前記圧縮機(1)の作動により冷媒が循環して、車室内吹出空気を冷却する蒸発器(5)とを備え、
前記車両エンジン(20)を自動停止させるアイドルストップ停車時に、前記圧縮機(1)を停止させ、
前記アイドルストップ停車中に前記蒸発器(5)の温度(Te)が所定温度(TEO0)よりも高くなった場合には、前記圧縮機(1)を再駆動させるようにした車両用空調装置において、
前記蒸発器(5)は、前記蒸発器(5)のうち冷媒流れの下流部は冷媒流れの他の部位よりも温度が高くなるという温度分布の偏差を有しており、
前記アイドルストップ停車直前における前記蒸発器(5)に流入する冷媒流量が少ないほど、前記アイドルストップ停車直前における前記温度分布の偏差が大きいと見なして前記所定温度(TEO0)を低い温度に可変して設定する手段(S1000)を備えることを特徴とする車両用空調装置。
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