JP3965926B2 - 多光軸光電センサの設定用機器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、複数の光軸毎に遮光状態を検知してその検知結果を出力する多光軸光電センサに関するもので、特に、センサに対し、その検知動作の定義を設定するための機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的な多光軸光電センサは、複数の投光素子が一列に配置された投光部と、投光素子と同数の受光素子が一列に配置された受光部とを、各投受光素子を一対一の関係で向かい合うように配置して成る。前記投光部と受光部とは、通信線を介して接続されており、投光部側で各投光素子を順次発光させるとともに、受光部側で各投光素子に対応する受光素子から前記投光素子の発光動作に同期するタイミングで得た受光量を取り出すことにより、光軸毎の遮光状態を順に検知するようにしている。さらに受光部では、各光軸毎の検知結果を用いて検知エリアに物体があるか否かを判別し、その判別結果を示す信号(以下、「物体検知信号」という。)を出力する。
【0003】
この種のセンサは、通常は、いずれか一光軸において遮光状態を検知すると、物体検知信号をオンにするように設定される。しかしながらセンサの設置場所やセンサの使用目的によっては、特定の光軸における検知結果を無効にしたり、所定数以上の光軸が遮光された場合のみ物体検知信号をオンにするなど、検知動作の内容に種々の条件を設定しなければならない場合がある。
【0004】
図14は、特定光軸の無効化を必要とする具体例であって、図中、101は投光部を、102は受光部を、103は機械を、それぞれ示す。この例では、機械103の危険領域に合わせて投受光部101,102を設置したとき、図14(1)に示すように、光軸の一部(図中、P1,P2,P3と示す。)が機械103に遮断された状態となるため、通常の設定では正常な検知動作を行うことは不可能となる。このような場合には、図14(2)に点線で示すように、遮断される各光軸P1,P2,P3をあらかじめ無効化して、有効な光軸のみで検知を行うように設定する。
なお、このように一部の光軸を無効化する処理は、「フィックスブランキング」と呼ばれている。
【0005】
図15は、遮光光軸数の設定を必要とする第2の例を示す。この例での多光軸光電センサは、ワークを差し込んで曲げ加工を行うタイプのプレス機において、作業者の手が危険領域に近づいたとき、物体検知信号をオンにしてプレス動作を停止させるように設定されている。しかしながら通常の検知動作によれば、作業者の手よりも厚みの薄いワークにより光軸が遮光された場合でもプレス動作が停止してしまうので、作業者の手の大きさに応じた数の光軸が遮光状態となったときに物体検知信号を出力するように設定する必要がある。(このような遮光される光軸の基準数を検出対象に合わせて設定する処理を、「フローティングブランキング」と呼んでいる。)
【0006】
従来、フィックスブランキングを行うには、センサをティーチングモードにした上で投受光動作を行わせ、遮光状態となった光軸やその光軸の数を記憶させるようにしている。他方、フローティングブランキングについては、センサを専用のコントローラやパーソナルコンピュータなどの設定用の機器に接続し、これらの機器でユーザーが検出対象の物体の大きさに応じて決定した遮光光軸数の入力を受け付けて、この入力値をセンサに送信するようにしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この種の多光軸光電センサには、機械の作動などにより生じる危険領域に作業者の身体が近づいたことを検知して機械を停止させるなど、事故防止のための対応をとる目的で使用されるセンサ(以下、「安全用センサ」という。)として使用されるものと、コンベア上を搬送されるワークを検出するなど、安全防止を目的としないセンサ(以下、「非安全用センサ」という。)として使用されるものとがある。
【0008】
安全用センサについては、誤った設定を行うと、人身事故を引き起こす虞があるため、ティーチング作業を慎重に行う必要がある。たとえば前記フィックスブランキングの設定時に、塵芥などのノイズによって遮光状態となるべきでない光軸が遮光状態となって、誤った光軸の無効化設定が行われると、検知時に、この誤設定された光軸に入った人体が入っても、それを検知することができなくなり、人体が危険領域に入る前に機械を停止できなくなる虞が生じる。
【0009】
また人体が検知された場合に、この人体が危険領域に入るまでに機械を停止できるように、センサを危険領域から十分に離れた位置に設置する必要がある。この安全確保のために必要な距離(以下、「安全距離」という。)は、センサが物体検知信号を出力してから機械が停止するまでの間に人体が移動する距離よりも十分に大きく設定しなければならない。特に前記フローティングブランキングを設定する場合、検出可能な物体が大きくなるほど、物体検知にかかる時間が遅れるので、安全距離をより長く設定する必要がある。
したがってこの安全距離が確保できていない状態でフローティングブランキングが設定されると、たとえ人体を検知しても、その人体が危険領域に入る前に機械を停止できない、という事態が生じる。
【0010】
また光軸毎の遮光状態の検知は、前記したように、受光素子により得られた受光量をしきい値と比較することにより行われるが、安全用センサにおいて、このしきい値を自由に設定できるようにすると、安全を確保するには不十分なレベルにまでセンサの感度が低下する虞がある。
【0011】
このようなことから、特に安全用センサに対する設定は、設定の趣旨や内容を熟知している熟練者が行うのが望ましい。しかしながらたとえ熟練者が設定を行っても、フィックスブランキングの設定時にノイズの混入を見落としたり、フローティングブランキングの設定時に安全距離の算出を誤ったり、安全用センサであるのに、非安全用センサであると勘違いして設定を行うなどのミスを起こす虞がある。
【0012】
一方、非安全用センサについては、用途や作業環境などに応じて設定を柔軟に変更できるようにするのが望ましい。また現場サイドでは、複数のセンサに対する設定を1台の機器で行うようにしたいという要望があるので、この要望に応じて、コンソールのような携帯型の設定用機器により各センサの設定を行うことができるようにするのが望ましい。
しかしながらこの種の設定用機器を、安全用センサと非安全用センサとの両方で共用できるようにすると、一般の作業者が、作業を行いやすくするために安全用センサの設定を勝手に変更し、その結果、誤った設定がなされてしまう可能性がある。
【0013】
この発明は上記問題点に着目してなされたもので、多光軸光電センサに検知動作の定義を設定する際に、人為的ミスなどにより誤まった設定がなされるのを防止し、センサの使用目的に応じた正しい設定が行われるようにすることを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明が適用される多光軸光電センサは、長手形状の機体を有する投光部および受光部を、投受光面を対向させて配備して成る。投光部および受光部の内部には、それぞれ複数の投光素子、複数の受光素子が機体の長手方向に沿って配備されるほか、投受光動作を制御するための制御回路や通信回路などが組み込まれている。各通信回路は、通信線を介して接続されており、この通信線を介した信号のやりとりにより、各光軸を順に有効化して遮光状態を検知し、その検知結果を出力する。
【0015】
この発明にかかる設定用の機器は、上記の多光軸光電センサに接続されて、検知動作の定義を設定するためのものである。ここでいう「検知動作の定義」とは、前記フィックスブランキングやフローティングブランキングのほか、各光軸の遮光状態を判断するためのしきい値,検知信号として出力される信号の種類,外部入力信号(センサと機械側の駆動系との間に介在させるリレーからの信号など)を受け付けるか否かなど、センサの検知動作に関わる種々の条件についての定義を意味する。
【0016】
設定用の機器は、型式,用途,機能などが異なる複数のセンサに接続可能な機器であって、コンソールのような携帯型の機器であるのが望ましい。ただし、必ずしも多光軸光電センサに専用の設定用機器として構成する必要はなく、ノート型コンピュータや汎用の携帯電子機器に教示用のプログラムを組み込んで設定用機器として使用することもできる。
【0017】
この発明にかかる設定用の機器は、複数種の多光軸光電センサのうちの任意の1つに着脱自由かつ通信可能に接続される接続手段と、事故防止のための対応をとる目的で出力信号が使用される安全用センサ、および前記の目的で出力信号が使用されることのない非安全用センサのいずれに設定するかによって各センサを分類することにより設けられた複数のグループに、それぞれそのグループのセンサの使用目的に適した設定の内容と当該グループに属するセンサの識別情報とを対応づけて記憶するメモリと、前記接続手段により接続されたセンサからそのセンサの識別情報を受信し、その受信情報に基づき前記メモリを照合して前記接続されたセンサの属するグループを判別する判別手段と、前記判別手段が判別したグループに対応づけられて前記メモリに記憶されている設定の内容に基づいて前記検知動作の定義を示す設定データを作成し、この設定データを前記接続されたセンサに送信することにより、前記接続されたセンサへの設定処理を行う設定手段とを、具備する。
【0018】
上記した設定の内容は、各グループに許可された設定項目を示すテーブルとして示すことができる。この発明では、安全用センサおよび非安全用センサについて、それぞれ少なくとも1種類のテーブルを設定することができ、また安全用センサ,非安全用センサについて、それぞれ複数のテーブルを設けることもできる。また1グループにつき1センサと考えて、センサの型式毎に個別にテーブルを設けることも可能である。
【0019】
また各グループ毎のテーブルを設定する代わりに、各種設定項目につき、それぞれ各グループ毎にその項目にかかる設定が許可されているか否かを、フラグのようなデータにより示すこともできる。
さらに設定の内容としては、許可された設定項目に限らず、フローティングブランキングにおいて遮光光軸数として設定できる数値範囲や、フィックスブランキングにおいて一連の無効化された光軸による領域の数など、設定における制限をグループ毎に示すこともできる。
【0020】
『センサの識別情報』は、たとえばセンサの型式であって、センサ側を、起動時に自発的にデータ送信を行うように構成し、接続機器側で、センサからのデータ送信を受け付けるようにして、センサの所属するグループを示すデータを取り込むことができる。ただし、接続機器側において、センサにデータ送信を求めるコマンドを送り、このコマンドに対するセンサからの応答を受け付けるようにすれば、センサが稼働している時でも、適宜、設定を変更することが可能になる。
【0021】
上記構成によれば、センサから受信した識別情報によりそのセンサの所属するグループを判別し、このグループに対応した設定の内容に基づいてセンサへの設定処理を行うので、作業者のミスにより、安全用センサに事故防止に適さない設定が行われるのを防止することができる。
【0022】
好ましい態様によれば、前記メモリに記憶される設定の内容のうち、安全用センサが属するグループに対する設定の内容に関して、非安全用センサが属するグループに許可されている所定の設定項目についての設定が禁止される。
この態様が適用される設定項目として、たとえば光軸の遮光状態を判別するためのしきい値の変更があげられる。この場合、検知レベルを維持して安全を確保するために、安全用センサについては、検知レベルを引き下げる虞のある設定を禁止するのが望ましい。他方、非安全用センサについては、使用目的などに応じて、しきい値をある程度変更できるようにして、使い勝手を向上することができる。
【0023】
また上記構成の接続用機器においては、判別手段が接続されているセンサを安全用センサのグループに属すると判別したとき、設定手段による処理が行われている間、このセンサからの信号が物体を検知したときと同様の状態になるように設定するためのコマンドを、前記接続されているセンサに送信する手段を、さらに具備させるのが望ましい。このようにすれば、安全用センサに対する設定処理時には、本来の物体検知状態と同様に機械の動作を停止させるなどの処理が行われるので、設定処理中の事故を防止でき、安全な環境下で設定作業を進めることができる。
【0024】
他の好ましい態様のセンサは、設定データを入力するための操作部をさらに備える。またメモリには、前記安全用センサのグループに対し、センサから危険領域までの間に確保すべき安全距離について所定の制限値が記憶されており、前記設定手段は、前記接続されたセンサが前記判別手段により安全用センサのグループに属すると判別され、かつ前記操作部において、このセンサから物体検知信号を出力する場合の最小の遮光光軸数を入力する操作が行われたとき、当該センサから検知エリアに入った物体に対する応答時間および光軸間の間隔を表すパラメータを入力し、これらのパラメータを用いて前記操作部から入力された遮光光軸数に対応する安全距離を算出し、算出された安全距離が前記制限値を下回る場合には、前記入力された最小の遮光光軸数をセンサに設定しないように構成される。
【0025】
上記構成の設定用機器によれば、フローティングブランキングの設定時に、ユーザーの入力した遮光光軸数に対応する安全距離を算出するためのパラメータを取り込んで安全距離を算出し、その算出結果により適正な安全距離が確保されているか否かを判別する。このようにユーザーの入力したデータを教示データとしてセンサに設定する場合に、センサ側から取り込んだパラメータにより教示データの適否を判別した上で教示データを確定するので、人為ミスにより誤った設定が行われるのを防止することができる。
【0026】
他の好ましい態様のセンサでは、前記メモリは、無効光軸およびこの無効光軸の集合により形成される無効領域の数について、所定の制限値が格納される。また、前記設定手段は、接続されているセンサに投受光動作を行わせて、遮光状態となった光軸を無効に設定するための設定データを作成したとき、この設定データによる無効光軸および無効領域の数をそれぞれ前記メモリ内の対応する制限値と比較し、いずれかの数が制限値を上回る場合には、前記作成された設定データをセンサに送信しないように構成される。
【0027】
上記構成によれば、フィックスブランキングの設定時に、ノイズの混入により無効化されるべきでない光軸が無効化されていることに気づかずに設定を行おうとするなど、制限値を超えた設定が行われる場合に、この設定データのセンサへの送信が禁止されるので、ノイズにより誤った設定が行われるのを防止することができる。
【0028】
さらに好ましい態様の接続機器には、前記メモリに、各グループに対応づけられる情報および前記設定手段の動作に関するプログラムを含む電子データが格納され、電子データの改訂版を具備する機器からその改訂された電子データの送信を受け付ける手段と、受け付けた電子データにより前記メモリのデータを書き換える手段とが、設けられる。
【0029】
なお、上記の電子データとは、検知動作の定義を教示する上での処理手順を示すプログラムのほか、前記設定テーブルなどの固定データを含むが、必ずしも全てのプログラムや固定データが変更された場合に限らず、一部のプログラムまたはデータが変更された場合も、データが改訂されたものと考えることができる。また前記改訂されたデータを具備する機器(パーソナルコンピュータなど)からのデータ送信を受けるには、この機器と設定用機器とを通信線を介して接続するか、無線による通信によって機器間でデータをやりとりできるように構成する必要がある。
このような構成によれば、新たに型式の異なるセンサが販売されたり、センサへの設定の内容が変更されても、接続用機器を買い換える必要がなく、変更に簡単かつ速やかに対応することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の一実施例にかかる多光軸光電センサの構成を示す。
この多光軸光電センサSは、複数の投光素子11が配備された投光部1と、前記投光素子11と同数の受光素子21が配備された受光部2とを、投受光面を対向させて配備したものである。投光部1には、前記投光素子11のほか、各投光素子11を個別に駆動する駆動回路12,光軸順次選択回路13,制御回路16,通信回路17,電源回路18などが組み込まれる。また受光部2には、前記受光素子21のほか、各受光素子21毎のアンプ22およびアナログスイッチ23,光軸順次選択回路25,制御回路26,制御回路26への入力用のアンプ24,通信回路27,電源回路28などが組み込まれる。
【0031】
投受光部1,2の各制御回路16,26は、CPUやメモリを具備するマイクロコンピュータなどにより構成される。各通信回路17,27は、RS485に準拠する通信インターフェースであって、同じくRS485に対応するタイプの2本の通信線6A,6Bを介して、投受光部1,2間における信号のやりとりを制御する。
【0032】
各電源回路18,28は、共通の外部電源5(直流電源)から電源の提供を受け、それぞれ同じ装置内(投光部1または受光部2内)の各部に電源を供給する。なお、外部電源5から各電源回路18,28への電源供給は、2本の電源ライン7A,7Bをそれぞれ分岐させて、一方を投光部1側の電源回路18に、他方を受光部2側の電源回路28に接続することにより行われる。したがって投光部1と受光部2とは、前記通信線6A,6Bおよび電源ライン7A,7Bにより接続された状態となる。
【0033】
投光部1側の制御回路16は、所定の時間毎にタイミング信号を発生させて、これを光軸順次選択回路13に与える。光軸順次選択回路13は、各投光素子11の駆動回路12を順に制御回路16に接続するためのゲート回路であって、この回路における切替処理により、前記制御回路16からのタイミング信号が各駆動回路12に順に与えられて、各投光素子11の順次発光動作が実現する。
さらに前記タイミング信号は、通信回路17,27を介して受光部2側の制御回路26にも与えられる。
【0034】
受光部2において、各受光素子21からの出力(以下、受光出力」という。)は、アンプ22,アナログスイッチ23を介して制御回路26への入力ライン29に送出される。制御回路26は、投光部1からのタイミング信号を光軸順次選択回路25に送って、各光軸のアナログスイッチ23を順にオン動作させ、発光した投光素子11に対応する受光素子21からの受光出力を取り込むとともに、各受光出力をそれぞれ所定のしきい値と比較するなどして、各光軸が遮光状態であるか否かを判別する。すべての光軸に対する受光出力の取り込みが終了すると、制御回路26は、光軸毎の判別結果をまとめて最終的な判別処理を行って、その判別結果を示す物体検知信号を生成し、これを図示しない出力回路を介して外部に出力する。
【0035】
さらにこの実施例では、前記投受光部1,2間において、分岐コネクタ4により通信線6A,6Bや電源ライン7A,7Bを中継しつつ、これらのラインを外部に分岐させて、設定用のコンソール3を接続するようにしている。
【0036】
前記コンソール3は、稼働前のセンサSをティーチングモードにして、前記したフィックスブランキングやフローティングブランキングなど、種々の検知動作の定義を設定するためのものである。
図2は、前記コンソール3の外観を示す。機体の前面には、数値やメッセージなどを表示するための表示器31A,31Bのほか、コンソール3に設定されている制御モードを報知するための複数の報知用ランプ32や押釦キー33などが設けられる。また機体の上面には、前記分岐コネクタ4からの接続ケーブル57を接続するための接続端子(図示せず。)が設けられる。
【0037】
前記押釦キー33は、センサSをティーチングモードに設定したり、設定用のデータやコマンドを入力するためのものである。表示部31A,31Bは、押釦キー33の操作内容に応じたデータを表示したり、フィックスブランキングの設定時などに、光軸毎の受光量、または遮光状態の検知結果を必要に応じて表示したり、ティーチング済の設定データを呼び出して表示するのに用いられる。
【0038】
図1に戻って、前記コンソール3の機体内部には、マイクロコンピュータによる制御回路36のほか、通信回路37,電源回路38,表示回路34,入力部35などが組み込まれる。通信回路37は、投受光部2の通信回路と同様に、RS485規格のインターフェースであり、前記分岐コネクタ4により分岐された通信線6A,6Bに接続される。電源回路38は、分岐コネクタ4により分岐された電源ライン7A,7Bに接続されており、外部電源5からの電源を取り込んでコンソール3内の各部に供給する役割を果たす。
【0039】
表示回路34は、前記機体前面の表示器31A,31Bに情報を表示したり、報知用ランプ32を点灯させるための制御を行う表示用インターフェースである。また入力部35は、押釦キー33による入力を受け付けて、その入力内容を制御回路36に伝える入力用インターフェースである。
【0040】
前記制御回路36は、CPUのほか、プログラムや後記する設定項目テーブルなどが書き込まれたフラッシュROMを具備するもので、入力部35を介して押釦キー33からの入力を取り込みながら、前記投光部1及び受光部2との通信によりセンサSに各種検知動作の定義を設定したり、センサSから現在の設定内容を取り込んで表示器31A,31Bに表示させるなどの処理を行う。
【0041】
上記構成によれば、投光部1,受光部2,およびコンソール3の各通信回路17,27,37にRS485規格のインターフェースを組み込むことによって、各機器間においてそれぞれ個別に双方向通信を行うように設定されるので、コンソール3では、投光部1,受光部2のいずれに対しても、個別の設定処理を行うことができる。物体検知に関わる定義の殆どは、受光部2側の制御回路26に設定されるが、フィックスブランキングのように、実際の検知処理結果を登録する必要のある処理では、投光部1にコマンドを送信して投光動作を行わせながら、受光部2側で得られた検知結果を取り込んで、光軸の無効化処理などを行い、その結果を受光部2に設定することになる。
【0042】
図3は、前記投受光部1,2の外観を分岐コネクタ4の取り付け例とともに示す。なお、この図3上では投受光部1,2の各部材の構成を示す符号にP,Qを付けているが、以下の説明では、投受光部1,2の両方の構成に言及する場合は、各構成に共通する数字部分のみを示すことにする。
【0043】
この実施例の投光部1および受光部2の機体本体は、両端が開口された長手形状のケース体51により構成される。ケース体51の両端開口部には、それぞれ蓋体54が密封固定され、各蓋体54の上面には、それぞれ接続用のコネクタ52,53が設けられている。これら上下位置のコネクタ52,53は、前記通信線6A,6Bや電源ライン7A,7Bのほか、入出力用の複数の信号線を中継するためのもので、下方のコネクタ53は雄コネクタ,上方のコネクタ52は雌コネクタとして、それぞれ同一径に形成される。
【0044】
また各コネクタ52P,52Q,53P,53Qの端子配置はいずれも同様であるが、各端子が扱う信号には、投光部1,受光部2によって若干の違いがある。ただし、前記通信線6A,6Bおよび電源ライン7A,7Bについては、いずれのコネクタでも同じ位置の端子を使用する。
【0045】
投光部1および受光部2は、それぞれ下方の雄コネクタ53P,53Qがケーブル58を介して図示しない配線基盤などに取り付けられる。前記分岐コネクタ4は、T字コネクタであって、コネクタ53P,53Qのいずれか一方(図示例では、受光部2側のコネクタ53Q)とケーブル58Qとの間で信号を中継するとともに、分岐路は、前記コンソール3への接続用ケーブル57に接続される。なおこの分岐コネクタ4により分岐されるのは前記通信線6A,6Bおよび電源ライン7A,7Bのみであり、その他の信号線については、接続用コネクタ53からケーブル58への中継用の信号路のみが形成される。
なお、図中、55a,55b,55cは、各部材の接続を固定させるためのローレット、56,59は中継用のコネクタである。
【0046】
前記したように、投受光部1,2の各雄コネクタ53P,53Qは、同一径であり、通信線6A,6Bおよび電源ライン7A,7B用の端子が同じ位置に配置されているので、分岐コネクタ4は、図4に示すように、投光部1および受光部2のいずれのコネクタ53P,53Qにも接続することができる。
【0047】
また分岐コネクタ4の中継用の各接続口は、一方が雄コネクタ53に、他方が雌コネクタ52にそれぞれ対応するように形成されている。したがって分岐コネクタ4は、上方の雌コネクタ52P,52Qにも接続することができるので、センサの設置場所などの条件に応じて接続に最適のコネクタを選択して分岐コネクタ4を取り付けることができ、コンソール3の接続や取り外しをきわめて容易に行うことが可能となる。また分岐コネクタ4自身も簡単に取り外すことができるので、センサの設置場所を変更する場合などにも容易に対応することができる。
【0048】
さらにコンソール3は、必要に応じて分岐コネクタ4に接続することができるので、複数のセンサが配備される環境においても、各センサに同様の分岐用コネクタを取り付けておけば、共通のコンソール3を使用することができ、設定用の機器にかかるコストを削減することができる。このことから、この実施例では、コンソール3に、安全用センサ,非安全用センサの両方のタイプに対応する設定を行うためのプログラムを組み込んで、各種センサに対する設定を1台のコンソール3で行うようにしている。
【0049】
さらにこのコンソール3は、設定用のプログラムが変更されたり、新しい型式のセンサが発売された場合にも継続して使用できるように、適宜、制御回路36のプログラムや固定データを書き換えることができるように構成される。
【0050】
この書き換え処理は、図5に示すように、コンソール3を、RS485・RS232C変換器80を介して、バージョンアップ用の電子データを具備するパーソナルコンピュータ81に接続した上で、コンソール3の動作モードを後記する書き換えモードに切り替えて行われる。
なお、バージョンアップ時のコンソール3の通信回路37は、専用ケーブルとして形成された通信線61によって変換器80に接続される。また電源回路38も、独立の電源ライン71によって外部電源5´に接続される。
【0051】
つぎにこの実施例のコンソール3による処理の内容を、具体的に説明する。なお、このコンソール3による通信や設定は、投光部1または受光部2、もしくは投受光部1,2の両方に対して行われるので、以下の説明では、設定処理の対象を投受光部1,2を含む単体のセンサSとして説明する。
【0052】
この実施例のコンソール3は、安全用,非安全用のいずれのセンサにも適用できるように、前記制御回路36内に各種センサ毎の設定項目テーブルを組み込んでいる。各設定項目テーブルは、それぞれ安全用センサ,非安全用センサに対して設定が許可された項目を示すもので、安全用センサ対応のテーブルと非安全用センサ対応のテーブルとに共通する項目もあれば、いずれか一方のテーブルにのみ設けられる項目もある。
【0053】
たとえば、前記フィックスブランキングやフローティングブランキングの設定については、安全用,非安全用のいずれのセンサの設定項目テーブルにも含まれている。一方、光軸毎の遮光状態を判別するためのしきい値の変更については、非安全用センサ対応のテーブルには設定項目として含まれているが、安全用センサ対応のテーブルでは、センサの感度が低下することがないように、設定項目からはずし、センサSにあらかじめ設定されたしきい値を保持するようにしている。
なお、安全用センサ,非安全用センサの各設定項目テーブルには、それぞれ複数の型式のセンサを対応させることができ、また前記書き換えモードを利用して、新たな型式のセンサを追加することもできる。
【0054】
この実施例のコンソール3は、ユーザーが誤って目的のセンサに対応しない設定項目テーブルを呼び出してティーチングを行うことがないように、接続されたセンサSからそのセンサSの型式を取り込み、この型式に応じた設定項目テーブルを自動的に呼び出すようにしている。また各種設定項目について、あらかじめ設定値の上限となる制限値を登録しておき、一般ユーザーがこの制限値を越える設定を行った場合は、その設定値がセンサに送信されるのを禁止するようにしている。特にフローティングブランキングを設定する場合には、安全距離が確保されていない状態での設定が行われることがないように、接続されたセンサSの光軸数,光軸間の間隔,検知エリアに入った物体を検知して検知出力を行うまでの応答時間など、安全距離を算出するためのパラメータ(以下、「センサパラメータ」と総称する。)を取り込んで設定された遮光光軸数に対応する安全距離を算出し、この算出結果が制限値を越えていないかどうかを確認するようにしている。
【0055】
なお、上記の設定値の適否を判別するための制限値には、後記する通常モードFの機能を用いて、現場管理者などの特定のユーザーにより入力された値が採用される。ただし制限値はこれに限らず、あらかじめ制御回路36内にデフォルトの値を設定することもできる。またこのデフォルトの制限値を、前記設定項目テーブル内に組み込むようにしてもよい。
【0056】
またこの実施例のセンサSには、複数種の動作モードが設定されており、コンソール3からの指令に応じて制御モードを切り替えることによって、適宜、通常の検知動作を終了して設定変更を受け付けるようにしている。ただし一連の投受光処理の途中でモードを切り替えると、遮光状態にあるのにこの検知が出力されずにモードが切り替わり、危険状態が発生する虞があるので、後記するように、センサS側の投受光処理が終了した時点でモードを切り替えるようにしている。
【0057】
図6は、センサSに設定される動作モードと各モード間の関係とを概略的に示す。この実施例のセンサSには、通常モード,設定モード,読み書きモードの3つの動作モードが存在する。このうち通常モードは、通常の物体検知処理を行うためのモードであり、読み書きモードは、コンソール3からティーチングのためのコマンドを受け付けてこれを実行するためのモードである。設定モードは、通常モードと読み書きモードとの中間に位置するモードであって、通常モードと同様に投受光動作を行っているが、検知出力については、通常モードにおいて物体を検知した時と同様の状態になるように設定されている。(たとえば、物体検知時の出力信号のレベルがLレベルであれば、同様にLレベルの信号を出力する。)
【0058】
この実施例のセンサSは、電源が立ち上げられた直後に通常モードが設定されるが、コンソール3から設定モードへの突入命令を受け付けると、設定モードに切り替えられる。さらに設定モードにおいては、コンソール3からの読み書きモードへの突入命令によって読み書きモードに切り替えられ、読み書きモードにおいて、コンソール3からの読み書きモード終了命令を受け付けると、読み書きモードを終了して設定モードに戻る。また設定モードにおいて、コンソール3から設定モード終了命令を受けると、システムをリセットすることによって、電源が立ち上げられた直後の通常モードに戻る。
【0059】
図7はコンソール3側に設定される動作モードと各モード間の関係を示す。このコンソール3には、センサSへの設定用機器として動作するための通常モードと、前記したプログラムや設定データの更新のための書き換えモードとの2種類のモードが存在し、通常はディップスイッチをオフにすることにより、通常モードが設定される。
【0060】
通常モードは、図中、A〜Fの6つの動作モードに細分化される。
通常モードAは、センサSから前記した型式やセンサパラメータなどのデータ送信を受け付けてセンサSの種類を判別するモードであり、通常モードBは、判別した型式に応じて、ティーチング時のセンサS側の動作モードを変更する処理を行うモードである。
【0061】
通常モードCは、前記押釦キー33によるユーザーの入力操作に待機するモードであり、このモードにおいてユーザーの入力がなされると、その入力内容に応じて以下のモードD,E,Fのいずれかが実行され、再び、通常モードCに戻るように設定されている。
【0062】
通常モードDは、前記通常モードCにおいて、所定の設定項目についての設定を行う設定命令(既に設定されたデータを変更する命令も含む。)が入力された場合に、この命令を実行するモードであって、ユーザーの指定した設定項目について、センサ側に入力された設定値を登録させる処理を行う。通常モードEは、通常モードCにおいて、センサSに現在設定されている設定値をモニタする命令が入力された場合に、この命令を実行するモードであって、センサS側からユーザーの指定した設定項目についての設定値を取り込んで、これを前記表示器31A,31Bに表示するなどの処理を行う。
【0063】
さらに通常モードFは、ユーザーがティーチングのための設定値の制限値を入力したときに、これを受け付けてメモリ内に登録したり、ユーザーがティーチング終了後にセンサSを書込みロック状態に設定するためのコマンドを入力したときに、これを受け付けてセンサSを設定値の変更が不可能な状態に設定するなど、設定値の変更に制約を設けるための処理を行うためのものである。なお、この通常モードFについては、現場管理者など特定のユーザーの入力のみを受け付けるように、まずパスワードの登録を行って、その後、登録されたパスワードの入力を伴うコマンドのみを受け付けるようにするのが望ましい。
【0064】
センサSへの設定を行う際には、まず通常モードAにおいて接続されているセンサSから型式を取り込んでそのセンサSの種類を判別した後、通常モードBにおいて、前記センサSに、そのセンサSの種類に応じた動作モードを設定する。以下、通常モードCにおいてコマンドの入力がなされる都度、そのコマンドの内容に応じて通常モードD,E,Fのいずれかを実行することによってセンサSに各種項目についての設定を行うことになる。
【0065】
なお、コンソール3側の通常モードA〜Fにおいて、センサSからデータを取り込んだり、センサSに設定データやコマンドを送信するためには、事前にセンサSに設定モード突入命令や読み書きモード突入命令を送ってセンサS側の動作モードを読み書きモードに切り替えておく必要がある。ただし、センサS側が通常の検知動作を行っている途中にモードの切替が行われると、センサSの検知エリアに物体が入っているのにこれを検知できない危険状態が生じる虞があるので、この実施例では、モードの切替えについては、センサS側に権限をもたせている。具体的には、1サイクル分の投受光処理が終了した時点で、センサS側がコンソール3に、モードを切り替えるかどうかを確認し、コンソール3からの切替の指示があれば、つぎのモードに移行するようにしている。
【0066】
またこの実施例では、ティーチング時には、コンソール3上で設定データの内容を決定してからセンサSに設定データやコマンドを送信することになるので、センサSは、コンソール3からの送信を受けるまでは待機状態となる。この実施例では、設定対象のセンサSが安全用センサである場合には、この待機状態下でのセンサを前記設定モードにすることにより、センサSからの検知出力を物体を検知したときと同じ状態として、機械の動作を止めるなどの安全対策をとるようにしている。他方、設定対象のセンサSが非安全用センサである場合には、前記待機状態下の空き時間にも物体検知ができるように、前記センサSを通常モードに設定するようにしている。
【0067】
図8は、前記センサSの3つのモードにおける処理手順を示す。(図中、各ステップは「st」と示す。)なお、ここに示す手順は、安全用センサ,非安全用センサのいずれについても共通である。
まず電源が立ち上げられると、通常モードが開始されて、1サイクル分の投受光処理が実行される(st1)。なお、ここでは図示していないが、この1サイクル分の投受光処理により物体を検知した場合には、物体検知状態を示すレベルに設定された検知信号を出力する。
【0068】
つぎのst2では、コンソール3に対し、設定モードに突入するか否かを確認するための信号を送信するようにしている。この信号に対し、コンソール3から後記する突入命令を受け取ると、st3が「YES」となり、通常モードを終了して設定モードを開始する。
【0069】
設定モードでは、まずst4において、受光部2からの検知出力を物体検知状態を示すレベルに設定した後、つぎのst5において、1サイクル分の投受光処理を実行する。
つぎのst6では、コンソール3に対し、読み書きモードに突入するか否かを確認するための信号を送信するようにしている。この信号に対し、コンソール3から突入命令が返送されると、st7が「YES」となり、設定モードを終了して読み書きモードへと進む。
【0070】
一方、前記読み書きモードへの突入確認用の信号に対し、コンソール3から設定モードの終了命令が返送されると、st8が「YES」となってst9に進み、ソフトウェアリセット命令を実行することによって設定モードを終了し、通常モードへと戻る。
【0071】
読み書きモードは、投受光処理を行わなずに、コンソール3からのコマンドに応じた処理のみを行うもので、コンソール3からコマンドが送信されると、st10からst11を経由してst12に進み、コマンドに応じた処理を実行する。ただし送信されたコマンドが読み書きモードの終了命令である場合は、st11が「YES」となり、読み書きモードから設定モードへと戻る。
【0072】
図9は、前記コンソール3が起動してからティーチング処理開始に至るまで(前記図7の通常モードCの段階に至るまで)の手順を示す。(図中、各ステップは「ST」と示す。)
まず起動時には、ST1において、ディップスイッチをチェックする。ここでディップスイッチがオンであれば、ST1が「YES」となって図示しないプログラムの書換え処理手順を実行する。一方、ディップスイッチがオフであれば、以下、センサSからの確認信号に待機する。
【0073】
接続されたセンサSが通常モード下にあれば、前記図8のst1〜3に示したように、このセンサSからは、1サイクル分の投受光処理を行う毎に、設定モードへの確認用の信号が送信される。この信号を受け付けると、ST2が「YES」となってST3に進み、前記センサSからの確認信号に対し設定モードへの突入命令を送信する。
【0074】
送信を終えた後は、再びST2に戻って、センサSからの再度の信号送信に待機する。先の突入命令により設定モードに切り替えられたセンサSは、図8のst5,6において、1サイクル分の投受光処理を行う毎に読み書きモードへの突入確認用の信号を送信しているから、この信号を受け付けると、ST4からST5に進み、前記センサSからの確認信号に対し読み書きモードへの突入命令を送信する。
【0075】
この突入命令を受けたセンサSは、前記したように読み書きモードに切り替えられてコンソール3からのコマンドに待機するようになる。コンソール3側では、ST6において、前記読み書きモードに入ったセンサSに対し、型式やセンサパラメータの送信を要求するコマンドを送ってこれらのデータを取り込み、さらにつぎのST7で前記取り込んだデータからセンサの種類を判別する。
【0076】
つぎに、ST8では、センサSに読み書きモード終了命令を送信して、センサSを読み書きモードから設定モードに戻す。ここで前記ST7において判別したセンサSの種類が安全用センサであれば、つぎのST9が「YES」となってST10に進み、前記2種類の設定項目テーブルのうち、安全用センサ対応の設定項目テーブルの方を選択する。
【0077】
一方、センサSが非安全用センサである場合は、ST9からST11に進んで、前記センサSからの読み書きモードへの突入確認用の信号送信に待機する。ここで信号が送信されると、ST11からST12に進んで、設定モード終了命令を送信することにより、センサS側に、本体をリセットして通常モードに復帰する処理を行わせる。
【0078】
こうしてセンサSを通常モードに復帰させると、つぎのST13では、前記2種類の設定項目テーブルのうち、非安全用センサ対応の設定項目テーブルの方を選択する。
【0079】
このように、センサSから取り込んだ型式に基づき、設定項目テーブルを選択するとともに、センサSの種類に応じてセンサSの動作モードを設定モードまたは通常モードのいずれかに設定する。この設定が終了すると、ST14に進み、前記表示器31A,31Bに選択した設定項目テーブルの設定項目を表示して、ユーザーの項目選択に待機する。
【0080】
なお、安全用センサについては、ST10の処理によりティーチング時に設定モードを維持して安全を確保する必要があるので、ティーチング時に設定やモニタのためのコマンドを送信する際に、設定モードから読み書きモードに切り替えてコマンドを送信した場合は、速やかに設定モードに復帰するのが望ましい。(勿論、読み書きモード下においても、センサの検知出力を物体検知時と同じ状態に設定する必要がある。)
【0081】
一方、非安全用センサについては、前記ST12の処理により通常モードに復帰させてティーチング時の待機時間中に検知動作を行わせているから、設定やモニタのためのコマンドを送信する際には、まず通常モードの投受光処理が終了するのを待って設定モードに切り替え、さらに設定モードから読み書きモードに切り替えてコマンドを送信し、しかる後に通常モードに復帰させる必要がある。
【0082】
つぎにコンソール3による設定処理の具体例として、代表的なティーチングであるフィックスブランキングとフローティングブランキングの設定にかかる手順を順に説明する。図10は、フィックスブランキングの設定時の手順を、ST21〜32の符号により示し、図11は、フローティングブランキングの設定時の手順を、ST41〜52の符号により示す。
【0083】
まずフィックスブランキングの設定においては、ユーザーが設定項目を選択したことに応じて、前記表示器31A,31Bにティーチング処理開始の確認用メッセージを表示する。この表示に対し、ユーザーが確定操作を行うと、ST22からST23に進み、センサSから各光軸の遮光状態の検知結果を取り込んで、各光軸が遮光または非遮光のいずれの状態にあるかを判別する。
【0084】
つぎのST24では、遮光状態と判定された光軸を無効光軸として設定する。なお、光軸を無効化する処理は、光軸毎に設定されたフラグをオン設定する処理により行うことができる。
【0085】
つぎにST25で、表示器に、設定されたデータの送信を行うかどうかを確認するメッセージを表示する。ここでユーザーが確定操作を行うと、ST26が「YES」となり、以下の判別処理を順に実行する。
【0086】
ST27では、センサSが書込みロック状態に設定されているかどうかをチェックする。つぎのST28では、前記無効化処理により、検知エリアに設定された無効領域(1または複数の連続する光軸が無効化されている領域)の数を制限値N1と比較する。さらにつぎのST29では、無効化された光軸の総数を制限値N2と比較する。
【0087】
上記の判別処理において、センサSが書込みロック状態ではなく、無効領域数,無効光軸数のいずれもそれぞれの制限値N1,N2の範囲内にあれば、ST30に進み、各光軸につき前記有効,無効を示すフラグデータをセンサSに送信し、これらデータをメモリ内に登録させる。
【0088】
一方、センサSが書込みロック状態に設定されているか、無効領域数または無効光軸数が制限値N1,N2を越えている場合は、ST31に移行し、前記表示器31A,31Bに「送信不可」を示すメッセージなどを表示した後、ST22に戻って再入力に待機する。ここでユーザーが再度、ティーチング開始のための確定操作を行うと、再び前記ST23以下の処理により、各光軸毎の検知結果を取り込んで、設定データを作成し直すことになる。よって最初の設定時に、ノイズの混入により無効領域数または無効光軸数が制限値を越えてセンサSへの教示が禁止されても、再度の検知結果の取り込みにより適正な設定データが作成された場合は、ST30に進んで、センサSに設定データが送信されることになる。
【0089】
なお、ST21またはST25の確認メッセージに対し、ユーザーが確定操作を行わずにキャンセル操作を行った場合、または、ST31の「送信不可」のメッセージに対してキャンセル操作を行った場合には、ST32またはST33が「YES」となり、設定処理は中止される。
【0090】
つぎにフローティングブランキングの設定においては、ユーザーが設定項目を選択したことに応じて、前記表示器31A,31Bに、遮光光軸数を入力する画面を提示する(ST41)。ここでユーザーが遮光光軸数を入力すると、ST42からST43に進み、入力された数を遮光光軸数として決定した後、つぎのST44で、前記表示器31A,31Bに、設定データの送信を行うかどうかを確認するメッセージを表示する。
【0091】
このメッセージに対し、ユーザーが確定操作を行うと、ST45からST46に進んで、センサSが書込みロックされているかどうかを判別する。さらに書込みロックがなされていない場合は、つぎのST47において、前記遮光光軸数を制限値N3と比較する。
【0092】
遮光光軸数が制限値N3以内であれば、ST47からST48に進み、前記センサSから型式とともに取り込んだセンサパラメータを用いて、前記遮光光軸数に対応する安全距離を算出する。
この安全距離をSとすると、Sは、つぎの(1)式により算出される。
S=K×T+C ・・・(1)
【0093】
上記(1)式において、Kは検出物体(たとえば手)の移動速度であり、あらかじめコンソール3に設定された標準的な値が使用される。Tは、センサSが物体を検知してから機械が停止するまでの応答時間、すなわちセンサSから取り込んだセンサSの応答時間とあらかじめ入力された機械の応答時間(またはデフォルトの応答時間)とを加算した値に相当する。Cは、物体がセンサの検知エリアに入ってからセンサに検知されるまでにかかる時間に応じて設定されるオフセット値であって、センサから取り込んだ光軸間の間隔と前記遮光光軸数とに基づき、センサが検知可能な最小の物体の大きさを求め、この物体が大きくなるほどCの値も大きくなるように設定される。
【0094】
たとえば、前記図15のようにプレス機に入り込む手を検知対象とする場合、フローティングブランキングの遮光光軸数としてユーザーの指の厚みに対応する光軸数が設定されている場合は、検知エリアに入ったユーザーの手をすぐに検知することができるので、Cの値を小さくすることができる。これに対し、遮光光軸数がユーザーの腕の厚みに対応する数に設定されている場合は、ユーザーの手が検知されるまでにかなりの時間がかかり、検知された時点でユーザーの指先は、センサSの検知エリアよりかなり先まで進んでいるから、前記Cの値を大きくする必要がある。
【0095】
この実施例では、センサSの応答時間と最小の検知物体を特定するための光軸の間隔とをセンサSから取り込むようにしているので、前記応答時間Tおよびオフセット値Cを正確に求めることができる。
【0096】
よって、ST48で算出された安全距離は、前記遮光光軸数に対応する物体について、安全を確保するのに必要な距離を精度良く反映したものとなる。つぎのST49では、この安全距離を制限値D0と比較する。ここで安全距離が制限値D0以内であれば、ST49からST50に進み、前記遮光光軸数を前記センサSに送信し、設定データとしてメモリ内に登録させる。
なお、前記制限値D0は、前記通常モードFの機能を用いてセンサSの検知領域から危険領域までの実際の距離に所定のオフセット値を加算した値を入力し、制御回路36内に登録しておくのが望ましい。
【0097】
一方、センサSが書込みロックされている場合や、遮光光軸数または安全距離のいずれかが制限値N3,D0を越えている場合は、ST51に進み、前記表示器31A,31Bに「送信不可」を示すメッセージなどを表示した後、ST42に戻って、遮光光軸数の再入力を受け付ける。したがって前回に誤った遮光光軸数が入力された場合も、再入力時に正しい値を入力すれば、その入力値に対してST50までの処理を進めて、前記再入力された遮光光軸数をセンサSに送信して設定することが可能となる。
【0098】
なお、前記ST41の入力画面、ST44の確認メッセージの表示画面、またはST51の「送信不可」のメッセージ表示画面に対してキャンセル操作が行われた場合は、設定処理を中止する。
【0099】
このように、この実施例では、フィックスブランキングやフローティングブランキングにおいて、センサSに設定データを送信する前に、その設定データを制限値と照合することによりノイズや誤入力による誤った設定データがセンサS側に送信されるのを禁止するようにしたから、安全用センサについて、誤った設定により通常モード時のセンサに誤動作が生じるのを防止でき、危険状態が発生するのを防止することができる。
【0100】
特に、フィックスブランキングの設定においては、無効領域および無効光軸数の2つのパラメータを用いて、設定データの適否をチェックするので、ノイズにより誤った光軸が無効化されて物体を正しく検知できない状態になるのを防止することができる。またフローティングブランキングの設定においては、人身事故につながりかねない安全距離をセンサパラメータを用いて精度良く求め、ユーザが入力した設定値の適否を判別するので、不適正な遮光光軸数がセンサSに設定されるのを確実に防止することができる。
【0101】
ところで前記図1〜3の構成によれば、複数のセンサを、両端部のコネクタ52を介して複数接続した場合も、同様に、マルチドロップ通信を行うように構成することができる。したがってこのシステムでも、前記分岐コネクタ4を用いてコンソール3を接続するようにすれば、各センサにそれぞれ個別に検知動作の定義を設定することが可能となる。
【0102】
図12は、複数の多光軸センサ(図中SA,SBの2個のみ示す。)を接続した場合の構成例を示す。なお、この図12では、各投光部1A,1Bおよび受光部2A,2Bの構成のうち、図示しない投受光動作に関わる構成については、いずれのセンサも図1と同様の構成を具備するので図示を省略し、通信に関与する構成(制御回路16,26,通信回路17,27)および電源回路18,28のみを示す。
【0103】
この実施例では、前記両端部の接続用コネクタ52,53を介して各センサSA,SBが投光部毎,受光部毎に連結される。最上位のセンサSAの投光部1Aと受光部2Aとは、図1の実施例と同様に通信線6A,6Bおよび電源ライン7A,7Bによって接続されており、またセンサ間においては、前記接続用コネクタ52,53により、通信線6A,6Bおよび電源ライン7A,7Bがシリアルに中継される。さらに各投受光部の通信回路17,27は通信線6A,6Bに、電源回路18,28は電源ライン7A,7Bに、それぞれ接続されて、各投受光部が一連に接続される。
【0104】
さらにこの実施例では、最上位のセンサSAの投受光部1A,1B間の通信線6A,6Bおよび電源ライン7A,7Bを、前記図1と同様に、分岐コネクタ4により中継するとともに、外部に分岐させて、コンソール3を接続するようにしている。
【0105】
図12の構成によれば、各投受光部1,2およびコンソール3には、それぞれ個別のアドレスが割り当てられるので、センサ間,同じセンサの投受光部1,2間,および各センサとコンソール3との間で、それぞれ個別に双方向通信を行うことができる。
たとえば上位センサから順に検知動作を行うように設定されている場合、上位センサSA側の投光部1Aまたは受光部2Aからつぎに動作すべきセンサの投光部2Aまたは受光部2Bにコマンドを送信することにより、センサ間での検知処理の引き継ぎが行われる。また各センサにおいては、投光部1A,1Bから対応する受光部2A,2Bにあてて各光軸毎のタイミング信号を送信することにより、単体のセンサにおけるのと同様に投受光動作を同期させて、一連の物体検知処理を実行する。また下位のセンサSBの投光部1Bまたは受光部2Bは、上記のセンサSAの投光部1Aまたは受光部2Aに対し、一連の検知動作が終了する都度、自機における最終的な検知結果を出力する。
【0106】
さらにコンソール3が接続された場合は、コンソール3と各センサSA,SBとの間で個別に通信を行って、各センサの型式やセンサパラメータを取り込み、さらにセンサの型式(種類)に応じた動作モードを設定した上で各種の教示を行うことになる。
【0107】
なお、前記したように、各センサの投受光部1,2の接続用コネクタ52,53は、同一径に形成されているので、上記構成における分岐コネクタ4は、図13に示すように、いずれの位置にある接続用コネクタ52,53にも取り付けることができる。したがってユーザーは、これらセンサSA,SBの設置環境や各センサSA,SBの位置関係などに応じて、各接続用コネクタの中からコンソール3を接続するのに最適な場所を選択することができ、利便性を大幅に向上することができる。
【0108】
【発明の効果】
この発明によれば、安全用センサおよび非安全用センサの双方に対する設定を、1台の設定用機器により行うことが可能になる。また設定用機器を1台にしても、安全用センサに対し、誤って、非安全用センサに対応する設定を行ったり、誤った設定値を設定するなど、事故防止に適さない設定が行われるのを防止することができ、センサの使用目的に応じた正しい設定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例にかかるコンソール3と多光軸光電センサとの接続状態を示すブロック図である。
【図2】コンソール3の外観を示す正面図である。
【図3】投受光部の外観および分岐コネクタの取付例を示す正面図である。
【図4】分岐コネクタの取付例を示す正面図である。
【図5】コンソール3のプログラムや設定データを書き換える際の構成を示すブロック図である。
【図6】センサ側の動作モードと各モード間の関係とを示す説明図である。
【図7】コンソール3側の動作モードと各モード間の関係とを示す説明図である。
【図8】センサの各動作モードにおける処理手順を示すフローチャートである。
【図9】コンソール3が起動してからティーチング可能な状態になるまでの処理手順を示すフローチャートである。
【図10】フィックスブランキングの設定におけるコンソール3の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】フローティングブランキングの設定におけるコンソール3の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】複数のセンサを接続する場合の設定用システムの構成を示すブロック図である。
【図13】分岐コネクタの取付例を示す正面図である。
【図14】フィックスブランキングの概念を示す説明図である。
【図15】フローティングブランキングの概念を示す説明図である。
【符号の説明】
S 多光軸光電センサ
1 投光部
2 受光部
3 コンソール3
6A,6B 通信線
16,26,36 制御回路
17,27,37 通信回路
Claims (6)
- 複数の光軸毎に遮光状態を検知し、その検知結果に基づき物体の有無を示す信号を出力する多光軸光電センサに接続されて、このセンサに検知動作の定義を設定するための機器であって、
複数種の多光軸光電センサのうちの任意の1つに着脱自由かつ通信可能に接続される接続手段と、
事故防止のための対応をとる目的で出力信号が使用される安全用センサ、および前記の目的で出力信号が使用されることのない非安全用センサのいずれに設定するかによって各センサを分類することにより設けられた複数のグループに、それぞれそのグループのセンサの使用目的に適した設定の内容と当該グループに属するセンサの識別情報とを対応づけて記憶するメモリと、
前記接続手段により接続されたセンサからそのセンサの識別情報を受信し、その受信情報に基づき前記メモリを照合して前記接続されたセンサの属するグループを判別する判別手段と、
前記判別手段が判別したグループに対応づけられて前記メモリに記憶されている設定の内容に基づいて前記検知動作の定義を示す設定データを作成し、この設定データを前記接続されたセンサに送信することにより、前記接続されたセンサへの設定処理を行う設定手段とを、具備して成る多光軸光電センサの設定用機器。 - 前記メモリに記憶される設定の内容のうち、安全用センサが属するグループに対する設定の内容に関しては、非安全用センサが属するグループに許可されている所定の設定項目についての設定が禁止されている、請求項1に記載された多光軸光電センサの設定用機器。
- 前記判別手段が接続されているセンサを安全用センサのグループに属すると判別したとき、前記設定手段による処理が行われている間、このセンサからの信号が物体を検知したときと同様の状態になるように設定するためのコマンドを、前記接続されているセンサに送信する手段を、さらに具備する請求項1に記載された多光軸光電センサの設定用機器。
- 請求項1〜3のいずれかに記載された設定用機器であって、
設定データを入力するための操作部をさらに備え、
前記メモリには、前記安全用センサのグループに対し、センサから危険領域までの間に確保すべき安全距離について所定の制限値が記憶されており、
前記設定手段は、前記接続されたセンサが前記判別手段により安全用センサのグループに属すると判別され、かつ前記操作部において、このセンサから物体検知信号を出力する場合の最小の遮光光軸数を入力する操作が行われたとき、当該センサから検知エリアに入った物体に対する応答時間および光軸間の間隔を表すパラメータを入力し、これらのパラメータを用いて前記操作部から入力された遮光光軸数に対応する安全距離を算出し、算出された安全距離が前記制限値を下回る場合には、前記入力された最小の遮光光軸数をセンサに設定しないように構成される、多光軸光電センサの設定用機器。 - 請求項1〜3のいずれかに記載された設定用機器であって、
前記メモリには、無効光軸およびこの無効光軸の集合により形成される無効領域の数について、所定の制限値が格納されており、
前記設定手段は、接続されているセンサに投受光動作を行わせて、遮光状態となった光軸を無効に設定するための設定データを作成したとき、この設定データによる無効光軸および無効領域の数をそれぞれ前記メモリ内の対応する制限値と比較し、いずれかの数が制限値を上回る場合には、前記作成された設定データをセンサに送信しないように構成される、多光軸光電センサの設定用機器。 - 請求項1に記載された設定用機器であって、
前記メモリには、前記各グループに対応づけられる情報および前記設定手段の動作に関するプログラムを含む電子データが格納されており、前記電子データの改訂版を具備する機器からその改訂された電子データの送信を受け付ける手段と、受け付けた電子データに より前記メモリのデータを書き換える手段とを、さらに具備する多光軸光電センサの設定用機器。
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