JP3962576B2 - インキ組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般にインキ組成物に関するものであり、より特定的には、生分解性を有するように改良されたインキ組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の環境問題に対する意識の高まりから、天然素材または生分解性合成素材を利用した商品の開発が盛んに行なわれている。
【0003】
このような世の中の流れから包装用素材として、ポリ乳酸フィルム等の生分解性フィルムが使用され始めると、従来使用されてきたウレタン系、アクリル系、芳香族ポリエステル等をインキバインダとして使用する非生分解性インキではなく、生分解性を有するインキが必要となってくる。
【0004】
以上の実情に鑑み、本出願人は、既に、乳酸系ポリエステルをインキバインダとして使用した生分解性インキを提案している(特開平8−92518号公報)。
【0005】
また、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、またはポリビニルアルコールを含有する樹脂をインキバインダとして使用した生分解性インキ(特開平8−319445号公報)や、エステルおよびアミド基を有する生分解性共重合体をインキバインダとして使用した生分解性インキ(特開平9−132709号公報)や、インキバインダとして使用可能な、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を主成分とする熱硬化型生分解性樹脂組成物(特開平10−251368号公報)や、脂肪族ポリエステルをインキバインダとして使用した生分解性磁性インキ組成物(特開平10−25439号公報)なども既に開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記インキ組成物は、インキ顔料の分散性、インキの安定性に問題があり、これらの特性において優れた生分解性インキの開発が望まれていた。そこで、本発明の目的は、インキ顔料の分散性およびインキの安定性において、従来のポリ乳酸インキよりも優れたインキ組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、生分解性を有するインキ組成物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記式(1)および/または式(2)で表わされるスルホン酸塩含有構造を分子鎖中に含むヒドロキシ酸系ポリエステルと、インキ顔料と、溶剤とを含むインキ組成物であることを特徴としているので、インキ顔料の分散性およびインキの安定性に優れたインキ組成物を提供することができる。
【0008】
【化5】
【0009】
[式(1)において、Xは炭素数20以下のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基または、水素、水酸基、ニトロ基、アミノ基、アシル基、スルホン酸基、アルコキシル基およびハロゲンを示し、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムまたは下記式(2)で表わされるアミンを示す。また、m1は0〜3の整数であり、m2は1〜4の整数であって、m1+m2は、1≦m1+m2≦4の関係を満たす。また、n1は1以上の整数を示す。]
【0010】
【化6】
【0011】
[式(2)において、R1は炭素数20以下のアルキリデン基を示し、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムまたは下記式(3)で表わされるアミンを示す。]
【0012】
【化7】
【0013】
[式(3)において、R2、R3、R4およびR5はそれぞれ独立に水素、アルキル基、フェニル基またはベンジル基を示す。]
また、上記ヒドロキシ酸系ポリエステルは下記式(4)で表わされるスルホン酸塩含有構造を含んでいることが好ましい。
【0014】
【化8】
【0015】
[式(4)において、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムまたは上記式(3)で表わされるアミンを示す。また、n2は1以上の整数を示す。]
また、上記ヒドロキシ酸系ポリエステルにおいてスルホン酸塩の濃度が5〜100当量/106gであることが好ましい。
【0016】
また、上記ヒドロキシ酸系ポリエステルが乳酸系ポリエステルの場合には、上記ポリエステル中に乳酸残基が80モル%以上含まれていることが好ましい。
【0017】
また、この場合に上記ヒドロキシ酸系ポリエステルがL−乳酸残基とD−乳酸残基とを含んでいる場合には、L−乳酸残基のモル数(L)とD−乳酸残基のモル数(D)のモル比(L/D)が1〜9であることが好ましい。
【0018】
また、上記ヒドロキシ酸系ポリエステルの還元粘度(ηSP/C)は0.3〜1.5dl/gであることが好ましい。
【0019】
また、上記ヒドロキシ酸系ポリエステルのガラス転移点(Tg)は35〜60℃であることが好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のインキ組成物について、詳細に説明する。
【0021】
(ヒドロキシ酸系ポリエステル)
本発明のインキ組成物には、下記式(1)および/または式(2)で表わされるスルホン酸塩含有構造を分子鎖中に含むヒドロキシ酸系ポリエステルが含まれている。
【0022】
式(1)で表わされるスルホン酸塩含有構造は、以下のような構造となっている。
【0023】
【化9】
【0024】
式(1)において、Xは炭素数20以下のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基または、水素、水酸基、ニトロ基、アミノ基、アシル基、スルホン酸基、アルコキシル基およびハロゲンを示し、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムまたは下記式(3)で表わされるアミンを示す。尚、式(1)において、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムであることがインキ顔料の分散性の面から好ましい。
【0025】
式(1)において、(X)m1におけるm1は上記置換基を示すXの芳香族環に対する結合数であり、m1は0〜3の整数である。また、(SO3M)m2におけるm2はスルホン酸塩を示すSO3Mの芳香族環に対する結合数であり、m2は1〜4の整数であって、m1+m2は、1≦m1+m2≦4の関係を満たす。また、n1は1以上の整数を示す。
【0026】
ここで、Xで示される置換基は一つの芳香族環に2つ以上結合することができる。この場合に結合しているXで示される置換基は2種類以上の異なる構造をとることもでき、1種類の構造のみをとることもできる。これはSO3Mで示されるスルホン酸塩も同様である。
【0027】
また、上記式(1)で表わされるスルホン酸塩含有構造は上記ヒドロキシ酸系ポリエステルの分子鎖の主鎖および側鎖のいずれを問わず、上記ヒドロキシ酸系ポリエステル中に含有されていればよく、その他の主な構成要素としては、後述するヒドロキシ酸の残基等がある。
【0028】
すなわち、上記式(1)で表わされるスルホン酸塩含有構造は上記ヒドロキシ酸系ポリエステルの分子鎖の間および/または分子鎖末端に位置している。よって、その構造が分子鎖の間に位置する場合には、上記式(1)または(4)で表わされるその他のスルホン酸塩含有構造のCOO−基の双方が後述するヒドロキシ酸残基等と結合していることとなり、その構造が分子鎖末端に位置する場合には、COO−基の一方が後述するヒドロキシ酸残基等と、COO−基の他方が水素、アルキル基、ヒドロキシアルキル基等と結合していることとなる。
【0029】
また、式(2)で表わされるスルホン酸塩含有構造は、以下のような構造となっている。
【0030】
【化10】
【0031】
式(2)において、R1は炭素数20以下のアルキリデン基を示し、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムまたは下記式(3)で表わされるアミンを示す。尚、式(2)において、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムであることがインキ顔料の分散性の面から好ましい。
【0032】
ここで、式(2)で表わされるスルホン酸塩含有構造は、一つのヒドロキシ酸系ポリエステルの分子鎖の末端に結合し、その分子鎖末端の片方または両方に含有され得る。
【0033】
本発明で用いられるヒドロキシ酸系ポリエステルの分子鎖中には上記式(1)または(2)で表わされるスルホン酸塩含有構造のいずれか一方が含有されていればよく、これら両方の構造が含有されていてもよい。
【0034】
また、式(3)で表わされるアミンは、以下のような構造をとっている。
【0035】
【化11】
【0036】
式(3)において、R2、R3、R4およびR5は置換基を示しており、それぞれ独立に水素、アルキル基、フェニル基またはベンジル基を示す。
【0037】
また、式(3)において、R2、R3、R4およびR5はそれぞれが独立して置換基の種類を選択することができ、R2、R3、R4およびR5はそれぞれ他の置換基と同一の置換基を示していてもよく、異なる置換基を示していてもよい。また、式(3)で表わされるアミンは一つのヒドロキシ酸系ポリエステル中において2種類以上の異なる構造をとることもできるし、1種類の構造のみをとることもできる。
【0038】
また、本発明に用いられるヒドロキシ酸系ポリエステルには、下記式(4)で表わされるスルホン酸塩含有構造が含有されていることが好ましい。
【0039】
【化12】
【0040】
式(4)において、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムまたは上記式(3)で表わされるアミンを示す。尚、式(4)において、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムであることがインキ顔料の分散性の面から好ましい。
【0041】
また、上記式(4)で表わされるスルホン酸塩含有構造は上記ヒドロキシ酸系ポリエステルの分子鎖の主鎖および側鎖のいずれを問わず、上記ヒドロキシ酸系ポリエステル中に含有されていればよく、その他の主な構成要素としては、後述するヒドロキシ酸の残基等である。
【0042】
すなわち、上記式(4)で表わされるスルホン酸塩含有構造は上記ヒドロキシ酸系ポリエステルの分子鎖の間および/または分子鎖末端に位置している。よって、その構造が分子鎖の間に位置する場合には、上記式(1)または(4)で表わされるその他のスルホン酸塩含有構造のCOO−基の双方が後述するヒドロキシ酸残基等と結合していることとなり、その構造が分子鎖末端に位置する場合には、COO−基の一方が後述するヒドロキシ酸残基等と、COO−基の他方が水素、アルキル基、ヒドロキシアルキル基等と結合していることとなる。
【0043】
(ヒドロキシ酸系ポリエステルの製造方法)
本発明に用いられるヒドロキシ酸系ポリエステルは、下記式(5)で表わされるスルホン酸塩含有化合物と以下に述べるヒドロキシ酸とを共重合することにより製造される。
【0044】
【化13】
【0045】
式(5)において、R6およびR7は、それぞれ独立に水素、アルキル基、ヒドロキシアルキル基を示し、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムまたは上記式(2)で表わされるアミンを示す。尚、式(5)において、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムであることがインキ顔料の分散性の面から好ましい。
【0046】
式(5)において、R6およびR7はそれぞれが独立してその種類を選択することができ、R6およびR7はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0047】
ここで、下記式(6)で表わされるスルホン酸塩含有化合物を用いて共重合することが好ましい。
【0048】
【化14】
【0049】
式(6)において、R6およびR7は、それぞれ独立に水素、アルキル基、ヒドロキシアルキル基を示し、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムまたは上記式(3)で表わされるアミンを示す。尚、式(6)において、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムであることがインキ顔料の分散性の面から好ましい。
【0050】
得られた共重合体中には、上記式(5)または(6)で表わされるスルホン酸塩含有化合物のブロック共重合体および/またはランダム共重合体が含まれていてもよい。
【0051】
また、上記式(5)または(6)で表わされるスルホン酸塩含有化合物は1種類だけでなく、2種類以上を共重合させることもできる。
【0052】
本発明のヒドロキシ酸系ポリエステルとは、全成分(ジオール、ジカルボン酸、ヒドロキシ酸等)中、ヒドロキシ酸が60モル%以上からなるポリエステルであり、ヒドロキシ酸成分は好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上である。
【0053】
本発明に用いられるヒドロキシ酸は、1分子中にアルコール性ヒドロキシ基とカルボキシル基を有する化合物である。ヒドロキシ酸としては、上述の乳酸の他、グリコール酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、10−ヒドロキシステアリン酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸等が用いられる。また、カプロラクトンのようなヒドロキシ酸の分子内エステル、ラクチドのようなα−ヒドロキシ酸から水分子を失って生成した環式エステルも用いられる。
【0054】
尚、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸や、ビスフェノール−A、ビスフェノール−Aのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール等は少量であれば共重合されていてもよい。
【0055】
また、上記ヒドロキシ酸についても1種類だけでなく、2種類以上を共重合させることもできる。
【0056】
上記スルホン酸塩含有化合物と上記ヒドロキシ酸との共重合は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。たとえば、乳酸の二量体であるラクチドと、上記スルホン酸塩含有化合物とを溶融混合し、公知の開環重合触媒、たとえば、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトナート等を使用して加熱開環重合させる方法や、加熱および減圧による直接脱水重縮合を行なう方法等が挙げられる。上記スルホン酸塩含有化合物を、重合の開始時から重合終了までの間に添加することで本発明で用いられるヒドロキシ酸系ポリエステルが得られる。
【0057】
(ヒドロキシ酸系ポリエステルの組成)
上記のようにして得られたヒドロキシ酸系ポリエステルは、ポリエステル中のスルホン酸塩の濃度が5〜100当量/106gであることが好ましい。5当量/106g未満であると、より良好なインキ顔料の分散性、およびインキの安定性が得られない傾向にある。また、100当量/106gを超えると、より良好な生分解性、塗膜物性を有する生分解性インキが得られない傾向にある。尚、スルホン酸塩の濃度が5当量/106g以上含まれていれば、後述する乳酸以外のヒドロキシ酸は0%でもよい。
【0058】
また、上記のようにして得られたヒドロキシ酸系ポリエステルが乳酸系ポリエステルである場合には、乳酸残基が80モル%以上含まれていることが好ましい。より好ましくは90モル%以上である。80モル%未満では、より良好な生分解性及び塗膜物性は得られない傾向にある。また、質量の観点からは、乳酸残基を好ましくは90質量%以上含有していることが好ましく、95質量%以上含有していればさらに好ましく、97質量%以上含有していれば最も好ましい。
【0059】
また、上記ヒドロキシ酸系ポリエステルがL−乳酸残基とD−乳酸残基とを含んでいる場合には、L−乳酸残基のモル数(L)とD−乳酸残基のモル数(D)のモル比(L/D)が1〜9であることが好ましい。より好ましくは1〜5.6である。L/Dが9を超えると、使用溶剤に対する当該ポリエステルの溶解性からインキ用バインダとしてより良好な使用ができにくくなる傾向にある。L/Dが1未満(D−乳酸過剰)であると、より安価に製造することができにくくなる傾向にある。
【0060】
なお、乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸のいずれをも用いることができる。
【0061】
(ヒドロキシ酸系ポリエステルの物性)
また、上記のようにして得られたヒドロキシ酸系ポリエステルの還元粘度(ηSP/C)は0.3〜1.5dl/gであることが好ましい。還元粘度が0.3dl/gよりも低いと、印刷時のインキのハジキ等の原因となる場合があり、また、還元粘度が1.5dl/gよりも高いと、インキ粘度が増大し、より良好な印刷性が得られない場合がある。
【0062】
なお、当該還元粘度は、サンプル濃度0.125g/25ml、測定溶剤クロロホルム、測定温度25℃で、ウベローデ粘度管を用いて測定した値である。
【0063】
また、上記ヒドロキシ酸系ポリエステルのガラス転移点(Tg)は35〜60℃であることが好ましい。より好ましくは、40〜55℃である。35〜60℃の範囲であれば、より良好な生分解性フィルムへの付着強度、耐ブロッキング性が得られる。
【0064】
また、ガラス転移点Tgは、たとえば、上記ヒドロキシ酸系ポリエステルの共重合成分の割合を変化させることにより調整することができる。尚、当該ガラス転移点は、DSC(示差走査熱量計)法により測定した値である。
【0065】
上記ヒドロキシ酸系ポリエステルは、好ましくは生分解性を有する。ここで生分解性とは、分解の一過程において、生物の代謝が関与して、低分子量化合物に変換する性質をいう。
【0066】
(インキ組成物)
本発明のインキ組成物は、上記ヒドロキシ酸系ポリエステルにインキ顔料および溶剤を混合することにより得られる。
【0067】
本発明に用いられるインキ顔料は、通常用いられるものであれば特に限定されず、たとえば、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、アルミニウム粉、雲母、チタン粉等の無機顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料各種の有機顔料等が挙げられる。これらは、1種類でも2種類以上でも用いることができる。
【0068】
また、本発明に用いられる溶剤は、上記ヒドロキシ酸系ポリエステルの溶解性、作業性、乾燥速度等の点から、好ましくはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、イソプロピルアルコール等が用いられる。これらは、1種類でも2種類以上でも用いることができる。
【0069】
(インキ組成物の製造方法)
本発明のインキ組成物は、従来公知の方法であれば特に限定されず、通常用いられる方法によって製造される。たとえば、上記ヒドロキシ酸系ポリエステルを上記溶剤に溶解させ、これに上記インキ顔料を配合し、ボールミルやペイントシェーカー等を用いて分散させる等の方法でインキ組成物を製造することができる。
【0070】
ここで、上記各成分の配合量は、ヒドロキシ酸系ポリエステル100質量部に対して、インキ顔料を1〜1000質量部、溶剤を100〜2000質量部配合するのが好ましい。より好ましくは、ヒドロキシ酸系ポリエステル100質量部に対して、インキ顔料2〜500質量部であり、溶剤200〜1500質量部である。
【0071】
また、上記各成分以外にも必要に応じて、多官能イソシアネート、多官能エポキシ、メラミン等の架橋剤、顔料分散剤、粘度調整剤等を配合することができる。
【0072】
【実施例】
以下、本発明のインキ組成物について、実施例を用いてより詳細に説明する。
【0073】
(実施例1)
DL−ラクチド500部、5−ナトリウムスルホ−イソフタル酸のエチレングリコールジエステル3.56部、開環重合触媒としてオクチル酸錫0.1部を4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、190℃で1時間加熱し、開環重合させることにより、分子鎖の主鎖中にスルホン酸塩を含有するポリエステル樹脂(i)を得た。
【0074】
次に、上記ポリエステル樹脂(i)100部をメチルエチルケトン(MEK)100部、酢酸エチル100部からなる混合溶剤に溶解させ、カーボンブラック100部とをボールミル中で混合分散化し、黒色のインキ組成物(I)を得た。
【0075】
(実施例2)
DL−ラクチド500部、3−ナトリウムスルホ−n−プロパノール1.62部、開環重合触媒としてオクチル酸錫0.1部を4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、190℃で1時間加熱し、開環重合させることにより、分子鎖の末端にスルホン酸塩を含有するポリエステル樹脂(ii)を得た。
【0076】
ポリエステル樹脂(ii)についても、実施例1と同様な方法で黒色のインキ組成物(II)を作製した。
【0077】
(実施例3)
DL−ラクチド500部、5−ナトリウムスルホ−イソフタル酸のエチレングリコールジエステル0.89部、開環重合触媒としてオクチル酸錫0.1部を4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、190℃で1時間加熱し、開環重合させることにより、分子鎖の末端にスルホン酸塩を含有するポリエステル樹脂(iii)を得た。
【0078】
ポリエステル樹脂(iii)についても、実施例1と同様な方法で黒色のインキ組成物(III)を作製した。
【0079】
(実施例4)
DL−ラクチド500部、5−ナトリウムスルホ−イソフタル酸のエチレングリコールジエステル12.46部、開環重合触媒としてオクチル酸錫0.1部を4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、190℃で1時間加熱し、開環重合させることにより、分子鎖の末端にスルホン酸塩を含有するポリエステル樹脂(iv)を得た。
【0080】
ポリエステル樹脂(iv)についても、実施例1と同様な方法で黒色のインキ組成物(IV)を作製した。
【0081】
(比較例1)
DL−ラクチド500部、重合開始剤としてグリコール酸2.25部、開環重合触媒としてオクチル酸錫0.1部を4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、190℃で1時間、加熱開環重合を実施しポリエステル樹脂(v)を得た。ポリエステル樹脂(v)についても、実施例1と同様な方法で黒色のインキ組成物(V)を作製した。
【0082】
(比較例2)
東洋紡績株式会社製の芳香族ポリエステル樹脂であるバイロンRV103(R)(vi)を用い実施例1と同様にして黒色のインキ組成物(VI)を得た。
【0083】
上記実施例1〜4および比較例1〜2のポリエステル樹脂の組成および物性を下記の表1に示す。
【0084】
<インキ性能および生分解性の評価>
上記実施例および比較例で得たインキ組成物を用い、グラビア印刷機でポリL−乳酸フィルム上に印刷し、印刷フィルムを得た。この印刷フィルムを用いて、インキ性能(インキ顔料分散性、インキ安定性、印刷性、接着性)および生分解性の評価を以下のようにして行なった。尚、インキ安定性、印刷性、接着性および生分解性の評価については、5段階評価とし、5(極めて良好)〜1(不良)で評価した。実用上は4以上が合格レベルである。
【0085】
1) インキ顔料分散性:グロスメーターでインキ顔料の分散性を評価した。
2) インキ安定性:インキの経時変化を目視で調べ、インキ顔料の分離、沈降の有無の程度を目視で評価した。
【0086】
3) 印刷性:ポリL−乳酸フィルム上にグラビア印刷を実施し、インキのハジキの有無等を目視で評価した。
【0087】
4) 接着性:碁盤目を切り、セロテープ(R)剥離により密着性を評価した。
5) 生分解性:上記印刷フィルム10cm×10cmをコンポスター(生ゴミ処理機、三井ホーム社製(MAM))中に入れ、14日後にサンプルの形態(分解の程度)を目視で評価した。分解の程度の大きいものを良好とした。
【0088】
その結果を表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
尚、還元粘度は、サンプル濃度0.125g/25ml、測定溶剤クロロホルム、測定温度25℃で、ウベローデ粘度管を用いて測定した。また、ガラス転移点はDSC法により測定した。また、表1において、乳酸残基は、仕込み量を規定している。ただし、500MHzのNMRにより実施例および比較例のポリエステル樹脂中にも、乳酸残基が同じ量含まれていることが確認された。
【0091】
さらに、ポリエステル樹脂中のL−乳酸とD−乳酸のモル比は、仕込み量から求めているが、ポリエステル樹脂中のL−乳酸とD−乳酸とのモル比を旋光光度計(堀場製作所製SEPA−200)を用いて決定したものと、同じであることを確認した。また、スルホン酸塩濃度は仕込量から算出した。
【0092】
表1に示すとおり、実施例1〜4のインキ組成物は比較例1〜2のインキ組成物と比べて、特にインキ顔料分散性およびインキ安定性に優れる結果となった。
【0093】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0094】
【発明の効果】
上述したように本発明によれば、上記スルホン酸塩含有構造を含むヒドロキシ酸系ポリエステルがインキ組成物中に含まれていることから、インキ顔料の分散性およびインキの安定性に優れた特に生分解性のインキ組成物を提供することができる。
【0095】
本発明のインキ組成物は、たとえば、ポリ乳酸フィルム等の生分解性フィルムを基材とした印刷ラベル、包装用フィルム等に使用でき、また、紙用の生分解性インキとしても広く用いることができる。
Claims (7)
- 下記式(1)および/または(2)で表わされるスルホン酸塩含有構造を分子鎖に含むヒドロキシ酸系ポリエステルと、インキ顔料と、溶剤とを含むことを特徴とするインキ組成物。
- 前記ヒドロキシ酸系ポリエステルのスルホン酸塩の濃度が5〜100当量/106gであることを特徴とする請求項1または2に記載のインキ組成物。
- 前記ヒドロキシ酸系ポリエステルは、乳酸残基が80モル%以上含まれていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインキ組成物。
- 前記ヒドロキシ酸系ポリエステルは、L−乳酸残基とD−乳酸残基とを含み、L−乳酸残基のモル数(L)とD−乳酸残基のモル数(D)のモル比(L/D)が1〜9であることを特徴とする請求項4に記載のインキ組成物。
- 前記ヒドロキシ酸系ポリエステルの還元粘度(ηSP/C)が0.3〜1.5dl/gであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のインキ組成物。
- 前記ヒドロキシ酸系ポリエステルのガラス転移点(Tg)が35〜60℃であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のインキ組成物。
Priority Applications (1)
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