JP3960429B2 - ワークチャック - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば液晶カラーディスプレイやプラズマカラーディスプレイに使用されるカラーフィルター等の製造装置とその方法に係り、具体的にはガラス等からなる基板であるワーク上にマスクのマスクパターンを露光転写する際、好適に使用出来る露光装置のワークチャック及びその制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近接露光等は、表面に感光剤を塗布した透光性のワーク(基板)を近接露光装置のワークステージ上に載置されたワークチャック上に保持すると共に、該ワークをマスクステージに保持されたマスクに接近させて両者のすき間を数10μm〜数100μmにし、次いで、マスクのワークから離間する側から照射装置によってワーク上に露光用の光を照射することにより該ワーク上に該マスクに描かれたマスクパターンを露光転写するようにしたものである。
【0003】
ところで、最近では大型の液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等の量産化への対応が要請されており、この場合、色むら等がない被露光パターンの高精度化及び高能率化が必要となる。
高能率化の一例としては、例えば、図3に示すように、一枚のワークで複数のディスプレイを作る、いわゆる多面取りという方法がある。この例では、1000mm×1200mmのワークで18インチディスプレイ用材DPを9面分作れるようにしている。
【0004】
このような場合、ワークより小さいマスクを用い、該マスクをワークに近接して対向配置した状態で該ワークをマスクに対してステップ移動させて各ステップ毎にワークに向けてパターン露光用の光を照射し、これにより、マスクMに描かれた複数のマスクパターンをワーク上に露光転写して一枚のワークに複数のディスプレイ用材DPを作成する、分割逐次近接露光方式が提案されている(例えば特開2002−365810号公報参照)。
【0005】
またウエハ、シャドウマスク等の被露光部材を露光装置に吸引保持する保持装置として、被露光部材を載置する載置テーブルの上面に、外部から導かれた吸引路に連通して、チャック面に被露光部材の有無により吸着・非吸着状態を自動的に切換える構造を有する複数のチャック本体を配置し、被露光部材の有無、大きさに応じ吸引経路を自動的に開閉できるものが知られている(例えば実開平6−74244号公報)。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−365810号公報(図1〜図6、第6頁右欄14〜20行)
【特許文献2】
実開平6−74244号公報(図1〜図3、図4、図6)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年一枚のワーク(基板)で出来るだけ多くのカラーフィルタを製造し、スループットを高めるため基板のサイズが益々大型化すること(例えば1100×1300)や、基板の軽量化のための薄肉化要求などにより、特許文献1に開示されるような分割逐次近接露光装置等による製造工程において、使用されるワークに最初から変形が生じていたり、或いはワークの搬送、載置、吸着などの取り扱い時、ワークの支持方法や吸着のムラなどに起因して、ワークに変形が生じたり、ワークの内部に歪やこれらのムラなどが生じる。このため露光により製造されたカラーフィルタ等のパターン精度が悪くなり、色むらなどが発生するなどの課題があった。しかしながら前記特許文献1に開示の分割逐次近接露光装置においても、このような課題を解決するための具体的なワークチャックの開示はされていない。又図14に示す特許文献2に開示の露光装置に使用される吸引保持装置は、被露光物の大小、有無に応じ吸着・非吸着状態を自動的に切換える構造を有する複数のチャックを載置テーブル上に配しているので、被露光部材の有無、大きさに応じて吸着領域を自動的に選択ですることは出来るものの、被露光物であるワークが大型化して且つ重くなった場合、この吸引保持装置ではチャックの小型化に限界があること、またチャックに吸引源を導く吸引路を載置テーブル内に設ける必要から、載置テーブルの剛性保持のためその配置や本数等に制限が生じ、ワークを均一に吸着固定することが困難となってくる。またワーク載置面を清浄な正圧空気でクリーニングして後、吸着固定する場合やワークの変形矯正等で吸着領域の正圧、負圧状態を切換えて用いる際は、この従来技術では対応が出来ない。
【0008】
本発明はこのような技術課題に着目して成されたもので、カラーフィルタの多面取り露光等ワークが大型化した状態においも、カラーフィルタの露光パターンにおける色むら等を防止して、高精度、高スループットの露光を達成するためのワークチャックを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の請求項1に係るワークチャックの発明は、ワークに対しパターン露光用の照射手段の光を受けてワークの露光面に露光すべきパターンを有するマスクと、前記マスクに対向配置され被露光材としてのワークを保持して、前記マスクと相対的に対向する位置を変えて、前記ワーク上に前記マスクのパターンを露光するようにしたワークチャックにおいて、
前記ワークを載置するワーク載置面に、複数の吸着領域と、該吸着領域の内側には前記ワークを支持するランドと、該ランドを除く部分には凹部とを設け、前記複数の吸着領域の夫々は、周囲に領域壁を設け、該領域壁のうち、少なくとも隣接して設けられている吸着領域の境界にある領域壁は、載置面での平面形状で波型状に形成され、前記ワークが載置された前記複数の吸着領域を吸着及び非吸着状態に選択的に制御する正負圧制御装置を備えたことを特徴とする。
【0010】
同じく本発明の請求項2に係るワークチャックの発明は、前記吸着領域は、前記ワーク載置面内で直交する中心軸の少なくとも1つの軸に対し、軸対称位置に設けられたことを特徴とする。
同じく本発明の請求項3に係るワークチャックの発明は、前記ワーク載置面内で、直交する中心軸の少なくとも1つの軸に対し、軸対称位置に離間して設けられ、当該ワーク載置面に対し垂直方向に同一の高さで進退するリフトピンを有することを特徴とする。
【0011】
同じく本発明の請求項4に係るワークチャックの発明は、前記正負圧制御装置を、前記複数の吸着領域の吸着状態を、前記露光時と非露光時とで選択的に変化させるよう制御することを特徴とする。
同じく本発明の請求項5に係るワークチャックの発明は、前記正負圧制御装置を、前記複数の吸着領域を正圧、負圧及び大気圧状態の何れかに選択制御することを特徴とする。
【0012】
同じく本発明の請求項6に係るワークチャックの発明は、前記正負圧制御装置は、前記ワーク形状に応じて選択された吸着領域を正圧、負圧及び大気圧状態の何れかに選択的に制御することを特徴とする。
同じく本発明の請求項7に係るワークチャックの発明は、ワーク載置面に垂直な方向で分割された前記載置面を構成する上部分割チャックと、該上部分割チャックを支持する基部チャックとを備え、前記上部分割ワークチャックと前記基部チャックとは着脱可能な締結手段で一体化されてなることを特徴とする。
【0013】
同じく本発明の請求項8に係るワークチャックの発明は、前記上部分割チャックは前記ワーク載置面内で複数に分割されていることを特徴とする。
【0014】
同じく本発明の請求項9に係るワークチャックの発明は、前記ランドは、前記ワーク載置面での平面形状が、正方形、長方形、円形、楕円形、波型の1種又はこれらの2種以上の組み合わせからなることを特徴とする。
同じく本発明の請求項10に係るワークチャックの発明は、前記ランドのワーク載置面には、選択的に正圧、負圧及び大気圧状態の何れかに制御された凹部を有することを特徴とする。
【0015】
同じく本発明の請求項11に係るワークチャックの発明は、前記ワーク載置面の周縁辺に沿って、前記領域壁の高さより低い逃げ凹部を有することを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図を参照して説明する。
図1は本発明のワークチャックが使用される好例としての分割逐次近接露光装置の一部を分解した説明的斜視図、図2は図1のマスクステージ部分の拡大斜視図、図3は18インチカラーディスプレイ用材DPを9面取りしたワークW(1000mm×1200mm)の平面図、図4は図3のステップ露光の場合に用いるマスク例の平面図、図5の図5(a)は本発明の第1の実施形態におけるワークチャックのワーク載置面を示す平面図,図5(b)は図5(a)のX−X断面におけるワークチャックのワーク載置面近傍の断面図、図6の図6(a)は図5(a)にあるA部付近を代表例として示す、ワーク載置面の吸着領域にある領域壁とランドの形状の一例を示す平面図、同じく図6(b)は図5(a)にあるA部付近を代表例として示す、ワーク載置面の吸着領域にある領域壁とランドの形状を示す他の例を示す平面図、同じく図6(c)は図5(a)にあるA部付近を代表例として示す、ワーク載置面の吸着領域にある領域壁とランドの形状を示す他の例を示す平面図、図7の図7(a)は図5(a)のA部付近を代表例として示す、ワークチャックのワーク載置面のワークチャック周縁辺に沿う直線状の領域壁とこの領域壁に交わる波型領域壁とに囲まれた吸着領域と、その内側にある波型ランドを示す平面図、図7(b)は図7(a)におけるランドが図6(a)〜図6(c)で示されるランドを配した時の配置を示す平面模式図、同じく図7(c)は図6(a)〜図6(c)、図7(a)〜図7(b)及び図7(d)と同様に用いられるランドの上端面を選択的に正圧・負圧及び大気圧状態とするための、ランド凹部を有する正負圧型ランドを示す断面図、図7(d)は図5(a)のA部付近を代表例として示す、ワークチャックのワーク載置面の吸着領域内にあるランド(図6(a)〜図6(c))とランドの上端面を選択的に正圧・負圧及び大気圧状態とするための凹部を有する正負圧型ランドを組み合わせ配置した平面模式図、図7(e)は図7(b)に適用した例として、ワークチャックの周縁辺に沿って設けたレジスト逃げを示すB矢視方向の正面図、図8はワークチャックの吸着領域を選択的に正圧、負圧及び大気圧状態に制御する正負圧制御装置の1例を示すブロック図。図9は本発明のワークチャックの第2の実施の形態で、ワークチャックのZ方向粗動に係るZ方向粗動装置の正面図。図10の図10(a)は、本発明の第3の実施形態におけるワークチャックのワーク載置面を示す平面図、図10(b)〜図10(d)はワークのサイズに応じて図10(a)のワーク載置面の吸着領域どのように使用するかの例を示した模式図。図11は本発明の第4の実施形態におけるワークチャックのワーク載置面を示す平面図。図12の図12(a)は本発明の第5の実施の形態における分割型のワークチャックの正面図、図12(b)は図12(a)において、ワーク載置面で上部分割チャックを4等分割した例を示す平面図。図13は本発明ワークチャックのワーク載置面にある載置面パターンを形成する方法の一例として本発明の第6の実施形態を示すホトエッチング法の工程順序を示したフローチャート図。そして図14は従来のワークチャックである吸引保持装置の平面図である。
【0017】
まず、本発明の実施形態におけるワークチャックがワークステージ上に載置され好適に使用される、特開2002−365810号公報等によって知られている分割逐次近接露光装置に付いて、その構成と作動について簡単に説明する。図1〜図4において符号1はマスクMを保持するマスクステージ、2はワークW(以下被露光材である基板を単にワークWと言う)を保持するワークステージ、3はパターン露光用の照射手段としての照明光学系、4はマスクステージ1及びワークステージ2を支持する装置ベースであり、ワークWは、マスクMに対向配置されて該マスクMに描かれたマスクパターンPを露光転写すべく表面(マスクMの対向面)に感光剤(レジスト)が塗布されている。
【0018】
説明の便宜上、照明光学系3から説明すると、照明光学系3は、紫外線照射用の光源である例えば高圧水銀ランプ31と、該高圧水銀ランプ31から照射された光を集光する凹面鏡32と、凹面鏡32の焦点近傍に切替え自在に配置された二種類のオプチカルインテグレータ33a,33bと、平面ミラー35,36及びこれらを経由して入射する光束を平行な光束として露光面に導く曲面ミラー37と、平面ミラー36とオプチカルインテグレータ33a,33bとの間に配置されて照射光路を開閉制御する露光制御用シャッター34とを備えている。
【0019】
露光時に露光制御用シャッター34を開制御されると、高圧水銀ランプ31から照射された光が、図1に示す光路Lを経て、マスクステージ1に保持されるマスクMひいてはワークステージ2に配設又は載置固定されたワークチャック8に保持されるワークW(図1では共に図示せず。)の表面に対して垂直にパターン露光用の平行光として照射され、これにより、マスクMのマスクパターンPがワークW上に露光転写されるようになっている。
【0020】
次に、マスクステージ1及びワークステージ2の順に説明する。
マスクステージ1はマスクステージベース11を備えており、該マスクステージベース11は装置ベース4から突設されたマスクステージ支持台12に支持されてワークステージの上方に配置されている。
マスクステージベース11は、図2に示すように、長方形状とされて中央部に開口111を有しており、該開口111にはマスク保持枠13がX,Y方向に移動可能に装着されている。
【0021】
次にワークチャック8を載置しているワークステージ2は、装置ベース4上に設置されており、マスクMとワークWとの対向面間のすき間を所定量に調整するZ軸送り台(ギャップ調整手段)6と、該Z軸送り台6上に配設されてワークステージ2をY軸方向に移動させるワークステージ送り機構7とを備えている。
Z軸送り台6は、装置ベース4上に立設された上下粗動装置61によってZ軸方向に粗動可能に支持されたZ軸粗動ステージ62と、該Z軸粗動ステージ62の上に上下微動装置63を介して支持されたZ軸微動ステージ64とを備えている。上下粗動装置61には例えば空圧シリンダが用いられ、単純な上下動作を行うことによりZ軸粗動ステージ62を予め設定した位置までマスクMと基板Wとのすき間の計測を行うことなく昇降させる。
【0022】
一方、上下微動装置63は、モータとボールねじとくさびとを組み合わせてなる可動くさび機構を備えており、この実施の形態では、例えばZ軸粗動ステージ62の上面に設置したモータ631によってボールねじのねじ軸632を回転駆動させるようにすると共にボールねじナット633をくさび状に形成してそのくさび状ナット633の斜面をZ軸微動ステージ64の下面に突設したくさび641の斜面と係合させ、これにより、可動くさび機構を構成している。
【0023】
そして、ボールねじのねじ軸632を回転駆動させると、くさび状ナット633がY軸方向に水平微動し、この水平微動運動が両くさび633,641の斜面作用により高精度の上下微動運動に変換される。
この可動くさび機構からなる上下微動装置63は、Z軸微動ステージ64のY軸方向の一端側(図1の手前側)に2台、他端側に1台合計3台設置され、それぞれが独立に駆動制御されるようになっており、これにより、上下微動装置63は、マスクMと基板Wとのすき間を計測しつつ目標値までZ軸微動ステージ64の高さを微調整する機能に加えて、水平面に対する傾斜の微調整を行うチルト機能をも有するものになっている。
【0024】
ワークステージ送り機構7は、Z軸微動ステージ64の上面にX軸方向に互いに離間配置されてそれぞれY軸方向に沿って延設された二組のリニアガイド71と、該リニアガイド71のスライダ(図示せず。)に取り付けられたY軸送り台72と、Y軸送り台72をY軸方向に移動させるY軸送り駆動装置73とを備えており、Y軸送り駆動装置73のモータ731によって回転駆動されるボールねじ軸732に螺合されたボールねじナット(図示せず。)にY軸送り台72が連結されている。
【0025】
そして、このY軸送り台72の上には、ワークステージ2が取り付けられ、また、該ワークステージ2のY軸送り誤差を検出する送り誤差検出手段74としてのレーザ干渉計743,744のミラー741,742が設置されている。ミラー741はY軸送り台72の幅方向の一側でY軸方向に沿って延びており、ミラー742はY軸送り台72のY軸方向の一端側にX軸方向に互いに離間して二か所配置されている。
【0026】
送り誤差検出手段74は、ミラー741に対向配置されて装置ベース4に支持された真直度検出用のレーザ干渉計743と、2個のミラー742にそれぞれ対向配置されて装置ベース4支持された2台の傾斜及びY軸方向距離検出用のレーザ干渉計744とを備えている。各レーザ干渉計743,744よりY軸送り台72ひいては第1の分割パターンの露光に続いて第2の分割パターンをつなぎ露光する際に基板Wを次のエリアに送る段階で発生するワークステージ2の送り誤差を検出してその検出信号を補正制御手段(図示せず。)に出力するようにしている。補正制御手段はこの検出信号に基づいてつなぎ露光のための位置決め補正量を算出して、その算出結果をマスク位置調整手段14(及び必要に応じて上下微動装置63)の駆動回路に出力し、これにより、該補正量に応じてマスク位置調整手段14等が駆動されて位置ずれが補正される。
【0027】
以上の様にワークチャック8を配設又は載置固定したワークステージ2は、マスクMに対し上下粗動装置61と上下微動装置63とによってZ方向に位置調整され、またY軸方向にはワークステージ送り機構7によって位置調整が成されるようになっている。そしてマスクMはマスク保持枠13によってXY方向に位置調整が行われる。
【0028】
そして図4に示すX方向に3つのマスクパターンPを有するマスクMをマスクステージ1に載置して、Y方向に位置調整されるワークチャック8上に載置されたワークWの被露光面上に、XY方向に位置調整されるマスクMのマスクパターンPを相対的に移動させながら、照明光学系3によって図3に示す9面の多面取り露光や、多層の露光を行うものである。
以上本発明の特徴であるワークチャック8が、ワークワークステージ2の上に装着され使用される分割逐次近接露光装置全体の作動について説明した。
【0029】
次に本発明のワークチャック8に係る第1の実施の形態を図5〜図8によって説明する。図5(a)はワークチャック8のワーク載置面WSを平面図で示している。符号81a、81b、81c、81dはワーク載置面WSにおいて、X−Y軸の軸対称位置に配設されている独立した4つの吸着領域を示している。また図5(a)の左右対称位置(X方向で)にあるフォーク溝85は、ワークWをワーク載置面WSと一定の位置関係に保たれているプリアライメントテーブル(図示せず)から、フォークによってワーク載置面WS上にワークWを載置する際に、フォークの進退、上下に必要なスペースとして設けられたものである。
まずワークチャック8のワーク載置面WSに設けられた吸着領域81a〜81dは、その設けられている位置、大きさ等は異なるが、基本構造は全て同じなので、便宜的に中央の吸着領域81aを代表例としてその構成を説明する。
【0030】
中央の吸着領域81aは四角状に連続した領域壁811で囲まれ、この領域壁811で囲まれた領域の内側には、平面側から見ると図6(a)で例示されるように、規則的に配置された複数の四角状のランド812(ランド812についての詳細は後述する)が設けられ、吸着領域81aの領域壁811とランド812を除く部分はワーク載置面WS内で連通する凹部813となっている。そして領域壁811とランド812は同じ高さ(紙面に垂直なZ方向で)に仕上げられ、これらの上端面はワークWを吸着支持する際のワーク載置面WSとなる。また図5(a)のX−X断面図である図5(b)によって示されるように、凹部813は領域壁811とランド812よりZ方向において低く、そしてワーク載置面WS内で互いに連通する様に形成されている。この吸着領域81aの凹部813は、ワークWを吸着する時には負圧(真空)に、またワークWをローディングする等の際、ワーク被吸着面WVに清浄な圧縮空気を吹き付けてワークWに帯電している静電気を除去しつつ除塵したり、同様にアンローディングする時には領域壁811及びランド812の上端面からワークWを離しやすくするため、凹部813に正圧の圧縮空気を導入するためのものである。又同様に大気圧状態にしてワークWに正圧力や負圧力を及ぼさないようにするものである。このため図5(b)に示すように、外部から正負圧配管814aをワークチャック8の内部を通って吸着領域81aの下まで導き、この正負圧配管814aと凹部813を連通する正負圧孔815がランド812と干渉しない様に凹部813の底部に開口されている。このように凹部813を負圧や正圧又は大気圧状態にするため、この凹部813の底部から領域壁811又はランド812のワーク載置面WS(上端面)までの距離(凹部深さ)は、ワークWがワークチャック8のワーク載置面WSに吸着固定されたとき、その弾性変形によって凹部813の底部に接触しない程度以上有ればよく、また後述するワークチャック8のワーク載置面WSをホトエッチング法等で製作する場合は、小さいほうが製作コストを低減するため望ましいので、これらを考慮すれば0.5〜1.0mm程度が好ましい。
【0031】
次に吸着領域81aを、凹部813を介して選択的且つ独立に正、負圧及び大気圧状態にするための正負圧制御装置86について、図8のブロック図を用い説明する。
図8中、吸着領域81aの凹部813を負圧にする負圧配管路865は、負圧発生源である真空ポンプ861、手動で負圧配管路865の開閉をするストップバルブ862v、負圧配管路865の圧力又は流量を調整するエアーレギュレータ863vを連結する配管回路で構成され、3位置、3ポートの電磁切換弁867aの入力ポートP1に配管接続されている。
【0032】
一方吸着領域81aの凹部813を正圧にする正圧配管路866は、圧縮空気源(図示せず)から正圧配管路866を手動で開閉するストップバルブ862p、正圧配管路866の圧力を調整するエアーレギュレータ863p、そして導かれた圧縮空気を清浄にろ過するフィルタ864を連結する配管回路で構成され、この正圧配管路866は3位置、3ポート電磁切換弁867aのもう一方の入力ポートP2に配管接続されている。
【0033】
そして電磁切換弁867aの出力ポートP3は中央の吸着領域81aの凹部813に正、負圧源を導くための正負圧配管814aに配管接続されている。電磁切換弁867aの中央位置はスプリングS1、S2により(スプリングセンタ)中立位置となっており、この時は励起により負圧位置869にする電磁ソレノイド869Vも、同じく励起により正圧位置870にする電磁ソレノイド870Pも非励起状態となっており、この位置では負圧の入力ポートP1と正圧の入力ポートP2のどちらも出力ポートP3とはブロック状態となっている。この状態では吸着領域81aを大気圧状態(正、負圧状態のどちらでもない)にすることが出来る。そして正負圧配管814aを負圧状態にするには、上述の電磁切換弁867aの電磁ソレノイド869vの励起によって負圧位置869に切換えて行われ(この時電磁ソレノイド870pは非励起状態)、同様に正圧状態にするには、電磁ソレノイド870pの励起によって正圧位置870に切換えられて(この時電磁ソレノイド869vは非励起状態)行われる。このような、電磁ソレノイド869v、870pの励起、非励起及び中立状態は、これらが接続されている制御装置896によって制御されるようになっている。
【0034】
以上の様にして中央の吸着領域81aにおける正負圧状態の制御をすることが出来るのである。
図5(a)に示す他の吸着領域81b〜81dに付いても吸着領域81aと同様に、各々の正負圧配管814b〜814dに接続して設けた、電磁切換弁867b〜867dを制御装置896の指令に基づいて、各々選択的且つ独立の正負圧又は大気圧状態となるよう制御が出来るので説明は省略する。
【0035】
また図5(a)において吸着領域81b及び81dには、それぞれ正負圧配管814bと814dが各2本導かれている例を示しているが、これらの本数に限定されるものではなく、要はこれら複数の正負圧配管814bと814dが幾本あっても、各々独立した配管系として1本に統合されそれぞれの結合先が、電磁切換弁867bと867dの出力ポートP3に接続され、制御装置896によって吸着領域81b及び81dの正負圧及び大気圧状態を独立に制御すれば良いのである。
【0036】
また同様にX軸の軸対称位置にY方向に離間して2か所設けられた吸着領域81cについても、正負圧配管814C1とこれに,開口端が止めネジSBで閉鎖された814C2の2本が交わって結合された状態が図示されているが、この例も2つの正負圧配管を統合し1本の正負圧配管814C1とし、電磁切換弁867Cの出力ポートP3に接続しさえすれば、同様の制御を行うことが出来る。
【0037】
以上の様に、複数ある吸着領域を独立の正負圧及び大気圧状態とするため、その正負圧配管の配管本数や配管方法を制限するものではない。
次に本発明の目的であるワークWに変形、歪を与えない様、制御装置896により、吸着領域81a〜81dをどのように正圧、負圧及び大気圧状態にして使用するかの正負圧制御方法の1例について説明する。
【0038】
前記したようにワークWはプリアライメントステージから搬送ロボットのフォークによって運ばれ,(ワークチャック8の)ワーク載置面WSの所定位置に載置される。この状態ではまだワークWを固定する吸着力が働いていないので、僅かの外力や振動でワークWの載置位置がずれてしまう恐れがある。これを防止するためワークWの載置が終わると、まず中央の吸着領域81aを負圧状態にし、ワークWをワーク載置面WSに仮止めすることのために使用できる。
【0039】
次に、この仮止め状態でワークステージ送り機構7によりワークステージ2を露光位置へ移動させる。その際、大型のワークステージ2の移動により、わずかであるがワークステージ2、ひいてはワークチャック8のワーク載置面WSが変形をきたす。従ってワークWがこの時点で全面吸着されていると、ワークチャック8に比べて剛性の低いワークWもこれに倣って変形してしまう。しかし本実施形態では、中央の吸着領域81aのみが吸着された状態であるため、このようなワークWの変形を防止することが出来る。
【0040】
このとき、ワークWが静電気を帯電していると、吸着させたくない周辺領域が、この静電気により吸着してしまったり、周囲の異物をワーク被吸着面WVに吸着したり、或いは最初からワーク被吸着面WVに異物が付着していると、この異物のためワークWがワーク載置面WSで吸着固定されたとき、変形や歪を受け露光されたパターンの色むらなどの原因となる場合がある。このような原因を取り除くためワーク被吸着面WVの除電や除塵を行うエアーブローを行うことがより好ましいが、図5(a)のワークチャック8を例として次の様に行うことが出来る。
【0041】
中央の吸着領域81aを負圧(吸着)状態のままにして、それ以外の吸着領域81b〜81dを圧力、時間等を調整した正圧状態にして、ワーク被吸着面WVに対しエアーブローを行う。このことにより、ワークWの吸着領域領81b〜81dに対向しているワーク被吸着面WVが、この時点でワークWに静電気により吸着してしまうことを防止できるとともに、ワーク被吸着面WVがクリーニングされ、それによって除電、除塵をすることが出来る。なおこの時、中央の吸着領域81aのみの負圧状態でエヤーブローを行うと、ワークWを変形させるなどの危険性がある場合は、吸着領域81aの他に吸着領域81bも同様に負圧状態にし、他の吸着領域81c、81dは上に述べた様に正圧状態にしてエヤーブローを行うことも出来る。
【0042】
最後に先にクリーニングのため正圧状態、あるいは正圧も負圧にもなっていない大気圧状態であった吸着領域81b〜81dを負圧状態にして、ワークWの周辺を吸着状態にして全面を吸着させる。なおこの後一旦中央の吸着領域81aを正圧状態に切換えてエアーブローを行い、中央部の真空破壊を行い、その後再度中央の吸着領域81aを負圧に切換え、全面吸着させるようにしても良い。この様にワーク載置面WSにある、選択的且つ独立に正負及び大気圧状態に出来る各吸着領域を上の様な順序で、その正負圧状態を制御すれば、ワークWが移動等に際して所定の位置からずれることもない。また大型化したワークWであっても、ワークチャック8が移動に際に僅かに変形したとしても、この時点でワークWが吸着されているのは、比較的小面積の中央部のみで、周辺部はワークチャック8の変形の影響(例えば吸着力によって作用するせん断力の影響等)を回避できる。そしてワークWを露光位置等に移動後、安定した状態でワークWをワーク被吸着面WV全面に吸着すれば、ワークWの変形、歪を抑制することが出来る。特に先に述べた様にエアーブローを併用することにより更にこれらの効果は向上させることが出来る。またエアーブローによりワーク被吸着面WVの全面をクリーニングする様に使用することが出来る。
【0043】
次にワークチャック8の露光位置等への移動時、ワークWの変形等が問題にならない場合であってもワークWが反ったり、波打っている場合も、上に述べたようにワークWに露光されたパターンの色むら等の原因になる。このような場合の、ワークWを変形矯正しながら、ワークWをワーク載置面WSに吸着固定させる方法について、クリーニング方法と同様、図5(a)の吸着領域81a〜81dを用いて説明する。ワークWに変形があるとき、吸着領域81a〜81dを一度に負圧状態にし吸着固定したり、或いはワーク載置面WSの周辺にある吸着領域81cや81dを、中央の吸着領域81aや81bより先に負圧状態にすると、ワークWの変形がかえってワーク載置面WSに拘束された状態になり、せっかく平坦度が良好に仕上げられているワーク載置面WSにワークWの被吸着面WVを習わせて,変形の少ない吸着固定することができ難くなる。このためまず中央の吸着領域81aのみを負圧状態にし、他の吸着領域81b〜81dを非吸着状態とする。次いで吸着領域81bを負圧状態にした後、ワーク載置面WS周囲にある吸着領域81c又は81dのいずれかを、先に負圧状態にしてから、最後に残りの吸着領域を負圧するように負圧制御する。
【0044】
このようにすれば、ワークWの変形を、ワーク載置面の中心から、周縁辺88に向け追い出すように矯正しながら、最後にワークWをワークW載置面に習わせた均一な吸着ができるので、マスクMのマスクパターンPをワーク被露光面WEに色むら等が生じることがなく、また精度の良いパターンを露光することが出来る。
【0045】
以上説明した様に本発明のワークチャック8では、そのワーク載置面WSに独立して正負圧及び大気圧状態に制御出来る複数の吸着領域を有しているので、小型のワークWに比べ取り扱いの困難な大型化したワークWにおいても、ワーク載置面WSでワークWの位置がずれないように仮止めることや、またワークWのワーク被吸着面WVの全面をクリーニングする様に使用することも、さらにワークWの変形を矯正しながら、最後にワークW載置面に習わせた均一な吸着できる等の操作が単独または組み合わせて行うことが出来、ワークWのワーク被吸着面WVをワーク載置面WSに吸着する際発生する変形や歪を防止して、ワークWの被露光面に露光されるパターンの色むら等が生じることがなく、また精度の良いパターンを露光することが出来る様にしたものである。
【0046】
以上説明した様に図5(a)では、ワークチャック8の載置面WSに設けた4つの吸着領域を用い説明した。これらの複数の吸着領域を設け、ワークWをワーク載置面WSに均一に吸着する点から見れば、ワーク載置面WS上のX軸又はY軸の軸対称位置に設けることが望ましいが、これに限るものではなく、またワークWのサイズによりその数も適宜選択することが出来る。
【0047】
次に本発明における第1の実施形態のワークチャック8にある吸着領域を構成する、領域壁811、ランド812、凹部813の例を説明する。以後これら領域壁811、ランド812、凹部813で形成される吸着領域の平面形状を総称し吸着領域パターンVPと言う。また既に図6(a)のランドについては簡単に前で説明したがここで再度他の例と共に説明する。
【0048】
図6の図6(a)〜図6(c)及び図7の図7(a)〜図7(d)に示す吸着領域パターンVPは,吸着領域81a〜81dのどのものにも適用できる領域壁811、ランド812及び凹部813の特徴を示したもので、図7(c)の断面図を除けば全て平面図で示している。そして便宜的に図5(a)のA部付近を例として特徴的に示したものである。
【0049】
図6(a)では領域壁811に囲まれた吸着領域の内側に四角形状のランド812が規則的に配列されその余の部分が凹部813とされている。そして図5(a)に示すように、凹部813は正負圧孔815が設けられている。このランド812の形状は、ワーク載置面の面積を均一に分配配置でき、且つ載置面積も大きく出来るので、ワークWの吸着時の変形や歪を小さく出来、またミーリング加工等を用い凹部813を加工するだけで、領域壁811及びランド812を形成できるので、加工の汎用性の点でも有利である。
【0050】
図6(b)の円形状のランド812は同程度の大きさ、配置分布とした場合、図6(a)の四角形状のランド812に比べワークWの支持面積は少なくなるが、ワークWを吸着した際ランド812に丸味があるため、ワークWへの応力集中を避けることが出来、内部歪緩和の効果がある。
【0051】
また図6(c)では長方形状の短辺端が円形の丸味を有するランド812の形状としている。このため図6(a)、図6(b)に比べ、支持面積を大きく且つ図6(b)と同様に応力集中緩和効果を持たせることが出来る。なおランド812の配置に均一性が求められる場合、或いは後述の様にマスクMのマスクパターンPとワーク載置面WSの吸着領域パターンVPの形状、方向性が一致し支障がある場合、図6(c)のようにランド812の長手方向がY方向と一方向に揃うのではなく、種々の方向の配列を組み合わせることも出来る。以上説明した図6(a)〜図6(c)の吸着領域パターンVPでは領域壁811が連続した直線状で囲まれ、この領域壁811の内側で、ランド812を除く部分はワーク載置面WS内で互いに連通した凹部813として示している。
【0052】
次に図7の図7(a)、図7(b)の吸着領域パターンVPについて説明する。
一般にワークWの被露光面WEに露光されるマスクパターンPは規則的で直線状ものが多い。そしてこのマスクパターンPと先に説明したような吸着領域パターンVPが重畳した関係になると、ワークWがワーク載置面WSに吸着固定されたときに発生する吸着歪によって、ワーク被露光面WEに露光されるマスクパターンPの精度低下をまねいたり、色むら等を起こしてしまう。この点に着目しこの図7(a)、図7(b)では、マスクMによるマスクパターンPとこの吸着歪を一致させないようなワーク載置面WSの吸着領域パターンVPとすることにより、吸着歪による色むら等の原因を除去するものである。
【0053】
そこで図7(a)、図7(b)の両図において、ワーク載置面WSにある吸着領域パターンVPは、マスクMのマスクパターンPの露光エリアと関係のない(外にある)ワークチャック8の周縁辺88に最も近くにあって、この周縁辺88に沿って延びる領域壁811のみは加工を容易にするため直線状領域壁811Sとするが、この領域壁811Sの内側にあって、露光エリアに関係する領域壁811では波型状領域壁811Wとしている。そして直線状領域壁811Sと波型状領域壁811Wとは互いに交わって連続した領域壁811を形成している。また露光エリアに関係する直線状領域壁811Sより内側に設けられた吸着領域での領域壁811は全て波型状の連続した領域壁811Wのみを用い吸着領域を形成している(このことは後述の図11でも説明するが、この図7(a)、図7(b)では吸着領域パターンVPの部分図であるため図示を省略)。
【0054】
また図7(a)のランド812は波型状領域壁811Wと類似の波型状ランド812Wが複数本、直線状領域壁811S又は波型状領域壁811Wが延びる方向に設けられている。また先に説明した図5(a)の吸着領域81a〜81dの凹部813と同様に、凹部813が直線状領域壁811S又は波型状領域壁811Wと波型状ランド812Wを除く吸着領域に設けられている。また図5(a)に示したと同様に、直線状領域壁811S及波型状領域壁811Wと波型状ランド812Wの上端面は同一高さとされ、凹部813が正圧、負圧又は大気圧に制御されるようになっている。なお波型状ランド812Wは凹部813全体を正圧、負圧又は大気圧にする正負圧孔815を出来るだけ少数とするため、互いに交差しないようにして、ワーク載置面WS内で全体が連通するようにすることが好ましい。
【0055】
図7(b)の吸着領域パターンVPは、図7(a)でのランド812が波型状ランド812Wではなく先に説明した図6(a)〜図6(c)等に示すように、波型以外のランド812を適用していること及び、隣り合う吸着領域同士の波型状領域壁811Wが接していないことのみが異なり、その余のことは図7(a)同様である。そして規則的に配したランド812の形状を省略してその位置を模式的に点(ドット)で示している。
【0056】
以上図7(a)及び図7(b)に示される特徴である波型の波型状領域壁811W及び波型状ランドについて説明したが、この形状の目的はワークWに露光されるマスクパターンPと吸着領域パターンVPが、露光有効エリアで異なっていれば良いのであって、連続した波型状に限るものではなく鋸状でもよく、又波型状ランド812W2については不連続の形状でも同様の効果を有するものである。
次に領域壁のうち、少なくとも隣り合う吸着領域同士の境界部にある領域壁811及び波型状領域壁811Wを不要にすることが出来る、他の例について図7(c)の断面図を用い説明する。
【0057】
この例において、ランド812はワークチャック8の載置面WSとなる上端面に、ランド凹部812aを設け、このランド凹部812aによって図5(a)及び図5(b)で説明した凹部813と同様の方法で、このランドの上端面を正圧、負圧又は大気圧状態にする機能を持たせた正負圧型ランド812Vとしたものである。このことにより、図5(a)に示した様に、正負圧型ランド812Vのみを正負圧或いは大気圧状態に出来るので、少なくとも隣り合う吸着領域同士の境界部にある領域壁811及び波型状領域壁811Wを設ける必要がなくなる(省略することが出来る)。従ってマスクパターンPと吸着領域パターンVPとが重畳することがなくなる。また正負圧配管814a〜814dや、これと連通する正負圧孔815の配置や設置位置など、ワークWをワーク載置面WSに均一に吸着固定するため、その設計上の自由度を増すことが出来る。またワーク載置面WSのクリーニングも可能となる。
【0058】
なお、図7(c)を用いる場合、各吸着領域を囲む領域壁はなくても良いので、同一の正負圧、或いは大気圧状態に制御される一群の正負圧型ランド812Vが分布するエリアを1つの吸着領域と定義し制御するものとする。図5(a)を用い一例を示せば、領域壁811を省略した状態での各吸着領域81a〜81dエリア内に正負圧型ランド812Vを所望の複数個配置した状態を各吸着領域81a〜81dとして、先述の図8の正負圧制御装置86を用い同様に、これら吸着領域81a〜81dを選択的且つ独立に正圧、負圧、或いは大気圧状態に制御するものである。このようにすれば、ワークWの支持を目的としている最外周縁に沿った領域壁811も省略することも出来る。
【0059】
次に図7(d)では、この図7(c)に示した正負圧型ランド812Vと図6(a)〜図6(c)等に示すランド凹部812aを有さないランド812とを組み合わせ、例えば図5(a)に示す吸着領域81a〜81dに適用した例を模式的平面図で示したものである。この様にすることにより正負圧型ランド812VのみによりワークWの吸着を行うことも出来るため、隣り合う吸着領域同士の境界部にある領域壁811及び波型状領域壁811Wを設ける必要がなくなる。又同様にワークWの支持を目的としている最外周縁に沿った領域壁811も省略することも出来る。従ってマスクパターンPと吸着領域パターンVPとが重畳することを防止できる。ワークWのワーク載置面WSでの吸着固定がより均一にでき、かつ上述の様にワーク載置面WSのクリーニングも可能となり、色むら等の少ない露光パターンを形成することができる。
【0060】
次に図5(a)のワークチャック8の周縁辺88に設けたレジスト逃げRrに付いて、図7(b)の吸着領域パターンVPに適用した例を用い、図7(e)によって説明するが、このレジスト逃げRrは図6(a)〜図6(c),図7(a)及び図7(d)に示す吸着領域パターンVPについても同様に適用できる。
図7(b)において、直線状領域壁811Sはワークチャック8の周縁辺88に対し、X方向(図の左右方向)にk1、同じくY方向に(図の上下方向に)k2だけワークチャック8の中心側に入った位置に設けられている。そして図7(e)は平面図である図7(b)を矢視B方向から見たレジスト逃げRrを正面部分図で示している。
【0061】
そして図7(e)は、ワーク載置面WS上に載置されその状態でワークWの被露光面WEにレジストReが塗布されている。そして被露光面WEから余分のレジストReがレジスト逃げRrに溜められた状態を模式的に示している。このように領域壁811Sの、周縁辺88に向けてX方向にk1(k2に付いても同様に)、同じくZ方向にhの空間で示されるレジスト逃げRrを周縁辺88に沿って設けることによって、ワーク載置面WSにワークWが吸着されたとき、ワークWの露光面に塗布された余分のレジストReがワークWの裏面に回りこみ、領域壁811Sの上端面(ワーク載置面WS)とワークWの裏面(ワーク被吸着面WV)との間に入り込み、余分のレジストRe(の凹凸)により領域壁811Sの上端面とワークWの裏面との密着が悪くなったり、吸着によるワークWの変形の原因になったりすることを防止することが出来る。
【0062】
また図5(a)で説明した吸着領域81a〜81dの領域壁811やランド812のエッジには微小面取りをして、ワークWへの応力集中緩和を施しておくことが望ましい。
またランド812の支持間隔は出来るだけ小さくし、均一に配置させることがワークWの吸着時にワークWの、内部歪や変形を防止する上で好ましいが、正負圧孔815を設けるスペースや、ワークWの必要な吸着力からも制限を受けるので、1個のランド812の支持面積は20〜50mm2で、中心間ピッチとして20〜60mmの範囲に選択するのが好ましい。
次に本発明のワークチャック8に係る第2の実施形態を図9の正面図を用いて説明する。
【0063】
正面図で示されている図9のZ方向粗動装置50は、ワークステージ2とワークチャック8、それにワークステージ2対しワークチャック8をZ方向に進退させるZ方向粗動機構540と、ワークWがプリアライメントテーブルから搬送ロボットのフォーク等でワークチャック8のワーク載置面WSの上方(Z方向上方)に搬送されたとき、ワークWをワーク載置面WSの上方で仮置く際に用いるリフトピン560を包含するものである。図1に示される露光装置との関係で言えば図9のZ方向粗動装置50におけるZ方向に進退させるZ方向粗動機構540は、図1の上下粗動装置61に代わるものである。従って、図9に示すZ方向粗動装置50を用いる場合は、図1における上下粗動装置61及びZ軸粗動ステージ62を省くことが出来る。
【0064】
すなわち図1において、上下微動装置63を直に装置ベース4に固定し、同様にワークステージ2からZ方向上部に向けた位置に図9のZ方向粗動装置50を配して用いれば、その余は図1に示す分割逐次近接露光装置の機構及び動作と同様の関係で用いることが出来る。
またこれに加え上下微動装置63及びZ軸微動ステージ64もY軸送り台72とワークステージ2との間に配置するようにしても良い。
【0065】
図9のZ方向粗動装置50を、図1における上下粗動装置61に代えて用いる目的は、図9のZ方向粗動装置50におけるワークチャック8には、第1の実施形態のワークチャック8の様にフォーク溝85を設けなくても、Z方向にフォーク溝85に相当する空間を作ってフォーク溝85に相当するスペースを確保することが出来る様にしたためである。このフォーク溝85の省略によってワークチャック8の剛性を高められること、またワーク載置面WSをより広く活用出来るのでワークWを均一にワーク載置面WSに吸着出来るなど、大型化したワークWの変形、歪を減じる有利な構造とすることが可能となり、ワークWのワーク被露光面WE上に露光されるパターンの色むら等を防止できる様にしたものである。
【0066】
又吸着領域の分け方としては、例えば図5(a)で、フォーク溝85を省いて、吸着領域81b及び吸着領域81cと吸着領域81dとが隣接するような、吸着領域パターンVPとすることが出来る。そして各吸着領域パターンVPは、例えば図6(a)〜図6(c)、図7(a)〜7(b)、図7(d)のいずれかとすることが出来る。特に図7(a)と図7(b)、及び先述の様に図7(c)の正負圧型ランド812Vを単独または適宜組み合わせた図7(d)に例示の吸着領域パターンVPにすることにより、隣接する吸着領域壁同士の境界部に直線状の領域壁811を省略できるなど、露光パタンの色むらを抑制するのにより好ましいことである。
【0067】
図9においてワークチャック8、ワークステージ2、ワークW、マスクM、ワーク載置面WS、ワーク被吸着面WVは第1の実施形態と同一であるから同一の符号を用いて説明する。また図9でのZ方向粗動装置50はZ軸方向で下からワークステージ2、Z方向粗動機構540、ワークチャック8、ワークWの順に配され、そしてワークWはZ方向において近接露光位置前の上下粗動位置状態にある関係でマスクMに対向している。またワークWはまだ、ワークチャック8のワーク載置面WSと離間した状態でフロントチャック570(後述の)とリフトピン560とで支持された状態で示されている。
【0068】
ワークステージ2の上にはZ方向粗動機構540(図9の紙面に垂直なY方向にも離間して複数設けられているが図示、説明を省略する)が設けられ、このZ方向粗動機構540はワークチャック8をワークステージ2に対しZ方向に(矢視の方向に)上下粗動をするものである。そしてZ方向粗動機構540にはX方向に延びたボールネジ542とこのボールネジ542をX方向両端(図9の左右方向)でワークステージ2に固定されて軸支する軸受箱544が設けられている。ボールネジ542はX方向ほぼ中央から、左右対称(X方向)に右ネジと左ネジの関係になるようなボールネジ溝が施されている。そしてこのボールネジ542の右、左ネジ溝の左右対称位置にはボールネジ542と同一の右、左ネジ溝の関係になっているナット541がそれぞれ螺合し、この各々のナット541にはリニアガイドのスライダ546が固定されている。このためワークステージ2に設けられたボールネジ駆動モータ543によりボールネジ542を、例えば時計方向周りに回転させれば上述の関係から、ナット514に固定されたスライダ546がX方向で互いに近接し、同様に反時計方向に回転させればスライダ546がX方向で、互いに離間する方向にそれぞれ移動させることが出来る。またこの移動に際しこのスライダ546は、ワークステージ2に固定された案内レール547によってボールネジ542の軸方向(X方向)と平行に精度良く案内されるようになっている。
【0069】
次にワークチャック8にはリンク連結部材531が固定され、このリンク連結部材531とスライダ546とは、リンク530とリンクピン530aによってピン結合されている。このためボールネジ542を回転させるボールネジ駆動モータ543の回転方向と回転数を制御装置896(図8に示す)によって制御することにより、スライダ546のX方向での移動方向と移動量を決定することが出来る。この関係を用いスライダ546がX方向に近接する方向にボールネジ542を回転させれば、ワークステージ2に対しワークチャック8はその回転数に応じた移動量だけZ方向に下降し、同様にスライダ546がX方向に離間する方向にボールネジ542を回転させれば、その回転数に応じた移動量だけ、ワークチャック8をZ方向に上昇させることが出来る。
【0070】
このワークチャック8のZ方向移動に際し、ワークチャック8をZ軸方向に移動案内する案内ロッド521が、ワークステージ2に固定されてZ方向に立設されている。
またワークチャック8のZ方向移動をスムーズに行ためのカウンターバランスシリンダ550が、Z軸方向のワークステージ2とワークチャック8との間に設けられ、ボールネジ駆動モータ543の回転方向とその回転数に同期して、Z方向にワークチャック8を進退出来るようになっている。このカウンターバランスシリンダ550のZ軸方向移動のための給気源(エヤー)は、図8の正負圧制御装置86において、正圧配管866に接続した電磁切換弁(図示せず)と制御装置896によって制御することが出来る。
【0071】
以上説明したようにZ方向粗動機構540は、ワークWの大型化に呼応し重量の重くなったワークチャック8をワークステージ2に対しZ方向に円滑、高速そして精度良く移動出来るようZ方向粗動装置50に設けられたものである。
次にZ方向粗動装置50において、ワークWをワークチャック8のワーク載置面WSの上方で支持し、ワークWの位置がずれないように仮止める機構に付いて述べる。
【0072】
リフトピン560はそのZ方向上部では、ワークチャック8に設けられたリフトピン孔561に挿通、案内され、下部をワークステージ2に固定されたリフトピン受板549に支持固定されている。なおこのリフトピン560とリフトピン孔561との隙間は、ワークチャック8のワーク載置面WSに設けた各吸着領域の正負圧状態を壊すことがないよう、且つ挿通ができる様に形成されている。あるいはこのようにする代わりに、リフトピン孔561を囲むようにワーク載置面WS上にランド812及び領域壁811(または正負圧型ランド812V)と同じ高さの新たなランド812を設け、このランド812にリフトピン560を挿通するようにしても良い。またワーク被吸着面WVを支持するリフトピン560の上端面はワークWを水平に支持するため、Z方向に同一の高さになっている。そして図9に示すようにワークWのワーク被吸着面WVとワークチャック8のワーク載置面WSとのZ軸方向の間には間隙Zfが形成されるようになっている。この間隙ZfはZ方向において、リフトピン560の上端面の高さに対するワークチャック8のワーク載置面WSの下降位置との調節で任意に設定出来る。しかしこの時の最小の間隙ZfはワークWをプリアライメントステージから搬送ロボットのフォークで、予め定められたリフトピン560の上端面上の位置(XY平面内において)に載置する時、またこの後フォークが下降、後退する時、フォークがワーク被吸着面WVとワークチャック8のワーク載置面WSと接触干渉しないような間隙Zfとなっている。また図9の左端(X方向)に示されているフロントチャック570はワークステージ2から立設され、そのZ方向での上端面はリフトピン560の上端面と同一の高さになっている。このためワークWがプリアライメントテーブルから搬送ロボットのフォークで搬送され、リフトピン560の上端面で仮に載置されたとき、(図9に図示するように)フロントチャック570の上端面もワーク被吸着面WVを支持する様になっている。そしてフロントチャック570の上端面には凹部570aが外部の正負圧配管570cと正負圧孔570bによって連通されているので、ワークWがリフトピン560の上端面で、仮の載置がされたときワークWが動かないように固定吸着をすることが出来る。このフロントチャック570の上端面の凹部570aに連通する、正負圧配管570cは例えば図8に示す正負圧配管814aと同様の配管と制御をすることが出来る。
【0073】
次にこのZ方向粗動装置の作動の例を図9を用い説明する。
図9ではワークチャック8がZ軸方向後退位置にあり、リフトピン560の上端面にワークWがプリアライメントステージからフォークによって搬送されて後、載置され、フロントチャック570が先に述べた正負圧制御装置86の制御装置896によって制御され吸着状態になっている。この状態からZ方向粗動機構540のボールネジ駆動モータ543を制御装置896の指令に基づいて駆動し、ワークチャック8のワーク載置面WSをワーク被吸着面WVと接触する上昇端位置までに上昇するよう駆動させる。その後の動作及び使用方法は図5(a)に示すワークチャック8と同様なので省略する。そして、Z方向においてワーク被露光面WEを近接露光位置に調整するのは、図1の上下微動装置63によってZ方向微動位置調整を同様にして行うことが出来る。
【0074】
又ワークチャック8には第1の実施形態と同様に、各吸着領域を正圧、負圧又は大気圧状態に制御するための正負圧配管814a〜814dが導かれている。次に本発明に係る第3の実施形態のワークチャック8について、図10の図10(a)〜図10(d)を用い説明する。
図10(a)は図5(a)と同様に平面図で示したワークチャック8のワーク載置面WSを示すものである。そしてこのワークチャック8は、図9で説明したリフトピン560のあるZ方向粗動装置50を使用したものである。
【0075】
第1の実施形態の図5(a)に示した吸着領域81a〜81dが、図10(a)ではX方向(左右方向)に中央の吸着領域81eとこの吸着領域81eを挟んでX方向にY軸の軸対称位置に2箇所の吸着領域81fが,そしてY方向上方に1つの吸着領域81g、計4つの独立した吸着領域が示されている。
そして図10(a)の吸着領域81e〜81gの黒●で示した位置には、図9で説明したリフトピン560が配設されている。また吸着領域81e〜81gに有る領域壁811、ランド812及び凹部813は、図6(a)〜図6(c)、図7(a)〜図7(b)、図7(c)の正負圧型ランド812を単独または適宜組み合わせた図7(d)に例示の吸着領域パターンVPを組み合わせ同様に使用できる。従って図10(a)では、これら領域壁811、ランド812及び凹部813を、直線、ドット、その余の空白でそれぞれ模式的に示している。
【0076】
また図7(e)に示すワークチャック8の周縁辺88に設けた、レジスト逃げRrも同様に適用できる。
そしてこの図10(a)で示したワークチャック8は次の様な特徴がある。
図10(b)〜図10(d)のハッチング部は大きさが種々異なるワークWの平面の大きさを模式的に示したものである。
【0077】
図10(b)では、ほぼ正方形のワークWを、このワークWの寸法に見合う吸着領域81eで、また同様に図10(c)では吸着領域81eと2つの吸着領域81fで、そして図10(d)では吸着領域81eと吸着領域81gとでそれぞれワークWを吸着していることを示している。
このようにワークWの寸法やそのXY方向の寸法比が異なっても、この第3の実施の形態のワークチャック8は、ワークWに応じて、ワーク載置面WSに独立した複数の吸着領域を設けることにより、本発明の第1の実施の形態のワークチャック8が有する特徴の他に、ワークWの載置に汎用性を持たせることが出来る。
【0078】
なお図10(b)〜図10(d)のハッチングしない吸着領域(白い部分)は、ワークWの載置に不要な部分なので(正圧、負圧にする必要がないので)、第1の実施形態の図8に示した正負圧制御装置86において、この非使用の吸着領域に連結する正負圧配管を負圧配管路865及び正圧配管路866から遮断するため、該当する電磁切換弁を中央のスプリングセンタ位置にしておけば良い。そして使用部分の吸着領域の正負圧制御は第1の実施形態と同様、エヤブローやワークWの変形矯正、吸着等が出来るように制御を行うことができる。
【0079】
また図5(a)に示すワークチャック8では、ワークWを搬送するためにフォーク溝85を設けているが、このフォーク溝85を設ける代わりに図10(a)に示すように、フォークの進退時、フォークが矢視X1とX2又はY1とY2の位置と方向どちらからでもリフトピン560と干渉しないように、リフトピン560が存在しないスペースを確保することによって(図9にZ方向においても同様に説明したように)、フォーク溝85を省略することができる。またリフトピンのこれ以外の配置と数を特に限定するものではないが、ワークWを均一に支持するため、図10(a)に示すようにXY軸に対し軸対称位置に配置することが望ましい。
【0080】
また図10(c)あるいは図10(d)のハッチングに対応するようなワークWの場合は、第1の実施形態で述べたように、まずワークWをワーク載置面WSに載置した時点では、吸着領域81eのみを吸着し,ワークチャック8をセット完了後(露光直前に)、残りの吸着領域81f或いは吸着領域81gを吸着領域するようにしても良い。更に吸着領域81eを図5(a)の例の様に、複数の吸着領域に分割し、第1の実施形態で説明したように、中央の吸着領域(図5(a)の吸着領域81a相当)のみ吸着領域させるようにしても良く、第1の実施形態と同様な方法で、エヤーブローを行うようにしても良い。
【0081】
また吸着領域81e〜吸着領域81(g)の中にあるランド812は波型状ランド812W或いは図6(a)〜図6(c)、それに図7(c)に示した正負圧型ランド812を単独または適宜組み合わせた図7(d)の吸着領域パターンVPとすることができる。そして図7(e)等に示すようなレジスト逃げRrを設けることも同様に適用できる。
【0082】
また図10(a)に示すワークチャック8では、図9のZ方向粗動装置50を用いているので、フォーク溝85を省略でき、そのためワークチャック8の剛性を高く出来、前述の様にワーク被露光面WE上に、色むらが生じ難いワークチャック8の構造とする特徴も併せ持つことが出来る。
次に本発明の第4の実施形態に係るワークチャック8の説明を図11の平面図を用い説明する。
【0083】
図11のワークチャック8は吸着領域の具体な配置と、この吸着領域を構成する吸着領域パターンVPを、図7(a)、図7(b)に示すように様にした例を示すもので、その余のことは図10(a)〜図10(d)に説明した特徴と同様である。
そして先に述べたように、露光エリアで吸着領域パターンVPとマスクMによるマスクパターンPが重畳することによる吸着歪の影響をなくすることが出来るので、ワークWに露光される露光パターンの色むら等の発生を防止することも同様に行うことが出来るのである。
【0084】
まず吸着領域の配置では、ワーク載置面WSのX方向に見て、中央に吸着領域81hとY軸の軸対称位置にそれぞれ2つの吸着領域81i、その外方に吸着領域81jをそれぞれ配し、Y方向に吸着領域81k、吸着領域81lの計7つの吸着領域を配している。つまり図10(a)のものより多くの吸着領域を細かく配しているので、ワークWの寸法変化や、XY方向の寸法比の違いにより細かく対応できるようになっている。
また各吸着領域の■印の位置にはリフトピン560を配置し、図10(a)と同様にフォーク挿入のためリフトピン560の配設されていない矢視X1とX2及びY1とY2で示されるスペースがX,Y方向の2方向設けている。
【0085】
又図7(a)及び図7(b)の吸着領域を構成する吸着領域パターンVPは、マスクMのパターンと重畳の危険のないワークチャック8の周縁辺88の最も近くで沿う領域壁のみは、加工が容易なように直線状領域壁811Sとしているが、ワーク載置面WSにおいて、この直線状領域壁811Sより内側にある領域壁は波型状領域壁811Wとしている。また吸着領域81h〜吸着領域81lの中にあるランドは、波型状ランド812W或いは図6(a)〜図6(c)、図7(c)に示した正負圧型ランド812を単独または適宜組み合わせた図7(d)のような吸着領域パターンVPを用いること、及び図7(e)に示すようなレジスト逃げRrを設けることも、図10(a)のワークチャック8と同様に適用できる。
次に本発明の第5の実施形態であるワークチャック8を図12の図12(a)〜図12(b)に示す様にZ方向又はXY平面で分割した例について説明する。
【0086】
先に説明した様に図5(a)、図10(a)、図11のワークチャック8では、独立した複数の吸着領域を載置面WSに設け、大型のワークWでも最終的に変形や歪のない吸着を行うことが出来ることを説明してきた。しかしこれらのワークチャック8を大型のワークWに適用する場合、ワークWの大きさに応じてワークチャック8のワーク載置面WSが大型化(大面積化)し、それに伴って重量も大きくなり、ワークチャック8のワーク載置面WSにある吸着領域パターンVPの加工等の際、その取り扱いが困難となり、精度低下等の原因になる恐れがある。またワーク載置面WSの一部が、ワークWの搬送又は吸着時の破損事故等により損傷したり或いは摩耗等が生じても、それによりワークチャック8全体を製作し直さなければならなくなりコストが高くなる。また研磨などで補修しようとする場合も、大型化したワークチャック8全体を露光装置から取り外したり、或いは再び組み付けたりしなければならず、その作業に多大の時間を必要として生産性の低下をまねいてしまう。
【0087】
この様にワークWの大型化に伴う新たな課題を解決するため、この第5の実施の形態では、まず図12(a)に示す様に、一体のワークチャック8をZ方向で、より加工精度が必要され、しかも損傷等を受け易いワーク載置面WSを含む、上部分割チャック8aと、その余の基部チャック8bとに分割し、これらを別体状態で加工して後、上部分割チャック8aと基部チャック8bとを着脱可能なネジ等の締結手段で一体的に組み立て完成し、先に説明した図5(a)、図10(a)、図11に示すワークチャック8と同一の構造と目的が果たせるようにしたものである。この際ワークチャック8に導かれている図5(a)で説明した、正負圧配管814a〜814dや、ワークチャック8の露光の際等に生じる熱に対しワークチャック8を一定の恒温に保つための冷却配管814CPなどは、ワークチャック8の外部から基部チャック8bに接続するようにする。
【0088】
なお図示を省略しているが、基部チャック8bには図9で説明したような複数のリフトピン560を、そして上部分割チャック8aには、このリフトピン560が挿通可能なリフトピン孔561を設け、スプリング等を用い上部分割チャック8aのワーク載置面WSに対しリフトピン560を進退自在とすることも出来る。又図9に示すワークチャック8を図12(a)の様に上部分割チャック8aと基部チャック8bに分け、一体的に組み立てて後、共通のリフトピン560が挿通できるリフトピン孔561をそれぞれのチャックに設けるようにしても良い。
【0089】
そしてこの基部チャック8bに上部分割チャック8aを上述のネジ等の着脱可能な締結手段で一体的に組み立て完成した状態では、上部分割チャック8aの必要部分に正圧、負圧或いは大気圧状態にする又冷却等を制御するための供給源が連通するような構造にすれば、上のような外部からの接続配管に煩らわされず、上部分割チャック8aのみを基部チャック8bから着脱容易とすることが出来、ワークチャック8のメインテナンス時間が極めて短縮できる。
【0090】
又同様の目的のため、図12(b)の様に、上部分割チャック8aのみ4分割して複数の上部分割チャック8aとして、基部チャック8bに一体的に着脱できるよう一体化する組み立て構造にすれば、交換やメインテナンスを必要とする部分のみの上部分離チャック8aに施すことが出来、結果としてワークチャック8を比較的容易に、且つ高精度に加工が出来、このことによりカラーフィルター等の色むらを軽減することができ、更に製作、手直し加工等の時間も短縮できスループットも向上できる。
【0091】
また本実施形態は、図5(a),図10(a)、図11に示すワークチャック8の構造において、上部分離チャック8aの分割単位を、各吸着領域毎に対応する様な分割構造とすることにも同様に適用できるものである。またこの際1つの吸着領域が広くなる場合は、吸着領域を適宜細分化した複数の上部分離チャック8aを設ける構造にしても良い。
【0092】
次に本発明の第6の実施形態として、ワークチャック8のワーク載置面WSにある、吸着領域パターンVPの形成方法の1例を説明する。図13はその形成法としてホトエッチング法を適用した場合の工程順序を示したものである。
吸着領域パターンVPには、図5(a)、図10(a)、図11に示すようにワーク載置面WSに複数の吸着領域が配置されており、この吸着領域には、図6(a)〜図6(c)、図7(a)〜図7(b)、図7(c)に示した正負圧型ランド812を単独または適宜組み合わせた図7(d)のような吸着領域パターンVPが存在する。この様に複雑で、しかも大型化した、吸着領域パターンVPを有する板状体は、本発明が使用の態様としている、図1に示すような分割逐次近接露光装置を用い、図13の様な工程でなるホトエッチング法によって製作するのが好適である。
【0093】
図13のP3工程の吸着領域パターンVPをホトエッチング法等の露光によって製作する場合、予め用意するマスクパターンPを、図5(a)のワーク載置面WSにある吸着領域パターンVPを例に説明する。まずワーク載置面WSにある吸着領域パターンVPをXY平面内で両軸に対称となるよう4等分割し、この4等分割された吸着領域パターンVPのうち、点対称位置の関係にある2枚(2種類)の吸着領域パターンVPとなるマスクパターンPを有するマスクMを用意する。すなわちこの2種類のマスクパターンPは図5(a)のワーク載置面WSの平面上の中心とXY直角座標での座標原点を一致させた場合、XY座標の第1象限と第3象限或いは第2象限と第4象限の吸着領域パターンVPの関係になるものである。そしてこれら2種類のマスクパターンPを有するマスクMを図1のマスクステージ1に載置して、被露光物であるワークチャック8のワーク載置面WSをマスクMに近接対向させ、相対的にX、Y又はθ方向に移動させて近接露光を繰り返せれば図5(a)の吸着領域パターンVP全体のパターンを(ワーク載置面WSにある)露光により製作することが可能である。このとき図12(b)の様にワーク載置面WSがXY平面で既に4等分割された上部分割チャック8aの場合は、この点対称位置の上部分割チャック8aを上述の2種類のマスクMで各2枚作れば良いので、極めて簡単に且つ効率的に吸着領域パターンVPの製作ができる。この様に予め2種類のマスクMを用意し図13に従ってホトエッチング工程を進める。
【0094】
図13のP1工程でまずワーク載置面WSを清浄にするため脱脂して洗浄、乾燥を行う。そしてP2工程でワーク載置面WSにローラ又は刷毛などでレジストを塗布する。P3工程ではレジストを乾燥させて後、上述の様に図1の露光装置等を用い2種類のマスクMのマスクパターンPをワーク載置面WSの該当部分に露光して吸着領域パターンVPの感光パターンを作る。
【0095】
P4工程では露光させた吸着領域パターンVPを現像し次のP5工程でのエッチングすべき領域を準備する。P5工程でのエッチングでは、エッチング液の濃度やエッチング時間等を、第1の実施形態のところで述べたように凹部813の深さが0.5〜1mm程度になるように調整し行う。そしてP6工程では先の露光工程P3で感光させて得た感光パターンを剥離させ、P7工程でワーク載置面WSを洗浄にし、乾燥させる。最後のワーク載置面WSの平面仕上げは、ワーク被吸着面WVとワークチャック8のワーク載置面WSの吸着が良好となるよう、必要によって平面研削仕上げを行う工程である。
【0096】
以上の様にすれば、大型化して、複雑な吸着領域パターンVPを有するワークチャック8のワーク載置面WSを容易に加工できる。
これらに使用する、レジスト剤及び薬剤は、ワークチャック8の素材に応じて、公知のものを適宜使用できるもので、ここでは説明を省略する。また、図5(a)、図10(a)、図11に示した正負圧孔815やリフトピン孔561などの孔加工はこのホトエッチング工程の前、或いは完了後にドリル等を用い加工を行えば良い。
【0097】
また図7(e)で説明した、レジス逃げRr、は本発明のどの実施形態のワークチャック8にも同様に適用できる。
また同様に以上説明したワークチャック8はワークステージ2の上に載置固定するように別体に設けるようにした方が、ワークチャック8の加工をする際にも、又ワークWのサイズが変化した場合も、ワークチャック8のみを変更して用いることが出来るなど、対応の自由度が増すので好ましい。しかしこれに限るものではなく、以上説明してきたワークチャック8の構造、機能を、軽量化の目的などのため、直接ワークステージ2設け、ワークステージ2とワークチャック8とを一体化しても良い。
【0098】
【発明の効果】
上記の説明から明らかなように、本発明によれば、ワークチャックのワーク載置面で、ワークに対する複数の独立した吸着領域を設け、この各々の吸着領域における正圧、負圧又は大気圧状態を独立に制御できるようにしたので、大型のワークWでも変形や歪の少ない状態でワークWを吸着載置でき、ワークWに露光されるカラーフィルターなどのパターンの色むら等を防止できる。
しかも、複数の吸着領域は、周囲に領域壁を設け、該領域壁のうち、少なくとも隣接して設けられている吸着領域の境界にある領域壁は、載置面での平面形状で波型状に形成されているので、ワークWがワーク載置面に吸着固定されたときに発生する吸着歪がマスクによるマスクパターンと一致することがなく、ワーク被露光面に露光されるマスクパターンの精度低下をまねいたり、色むら等を起こすことを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明のワークチャックが使用される好例としての分割逐次近接露光装置の一部を分解した説明的斜視図である。
【図2】図2は図1のマスクステージ部分の拡大斜視図である。
【図3】図3は18インチカラーディスプレイ用材DPを9面取りしたワークW(1000mm×1200mm)の平面図である。
【図4】図4は図3のステップ露光の場合に用いるマスクの平面図である。
【図5】図5(a)は本発明の第1の実施形態におけるワークチャックのワーク載置面を示す平面図である。
図5(b)は図5(a)のX−X断面におけるワークチャックのワーク載置面近傍の断面図である。
【図6】図6(a)は図5(a)にある、A部付近を代表例として示すワーク載置面の吸着領域にある吸着領域パターン形状の一例を示す平面図である。
図6(b)は図5(a)にある、A部付近を代表例として示すワーク載置面の吸着領域にある吸着領域パターン形状を示す他の例を示す平面図である。
図6(c)は図5(a)にある、A部付近を代表例として示すワーク載置面の吸着領域にある吸着領域パターン形状を示す他の例を示す平面図である。
【図7】図7(a)は図5(a)にある、A部付近を代表例として示すワーク載置面の吸着領域にある吸着領域パターン形状の他の例を示す平面図である。
図7(b)は図7(a)におけるランドが図6(a)〜図6(c)で示されるランドを配した時の配置を示す平面模式図である。
図7(c)は図5(a)にも適用出来るランドの他の例である、正負圧型ランドを示す断面図である。
図7(d)は図5(a)にある、A部付近を代表例として示すワーク載置面の吸着領域にある吸着領域パターン形状の他の例を示す平面図である。
図7(e)は図7(b)の吸着領域パターンの適用した例として、ワークチャックの周縁辺に沿って設けたレジスト逃げを示すB矢視方向の正面図である。
【図8】図8は図5(a)に示すワークチャックの吸着領域を正圧、負圧及び大気圧状態に制御する正負圧制御装置の1例を示すブロック図である。
【図9】図9は本発明の露光装置での第2の実施の形態である、ワークチャックのZ方向粗動に係るZ方向粗動装置の正面図である。
【図10】図10(a)は、本発明の第3の実施形態におけるワークチャックのワーク載置面を示す平面図である。
図10(b)〜図10(d)はワークのサイズに応じて図10(a)のワーク載置面の吸着領域の使用例を示した模式図である。
【図11】図11は本発明の第4の実施形態におけるワークチャックのワーク載置面を示す平面図である。
【図12】図12(a)は本発明の第5の実施の形態における分割型のワークチャックの正面図である。
図12(b)は図12(a)において、ワーク載置面で上部分割チャックを4等分割した例を示す平面図である。
【図13】図13は本発明ワークチャックのワーク載置面にある載置面パターンを形成する方法の一例としてのホトエッチング法の工程順序を示したフローチャート図である。
【図14】図14は従来のワークチャックである吸引保持装置の平面図である。
【符号の説明】
W…ワーク
M…マスク
P…マスクパターン
WE…ワーク被露光面
VP…ワークチャックの吸着領域パターン
WS…ワークチャックのワーク載置面
WV…ワーク被吸着面
1…マスクステージ
2…ワークステージ
3…照明光学系(照射手段)
7…ワークステージ送り機構
8…ワークチャック
8a…上部分割チャック
8b…基部チャック
50…Z方向粗動装置
81a〜81l…吸着領域
811…領域壁
812…ランド
813…凹部
814a〜814d…正負圧配管
815…正負圧孔
85…フォーク溝
86…正負圧制御装置
867a〜867d…電磁切換弁
896:制御装置
Claims (11)
- ワークに対しパターン露光用の照射手段の光を受けてワークの露光面に露光すべきパターンを有するマスクと、前記マスクに対向配置され被露光材としてのワークを保持して、前記マスクと相対的に対向する位置を変えて、前記ワーク上に前記マスクのパターンを露光するようにしたワークチャックにおいて、
前記ワークを載置するワーク載置面に、複数の吸着領域と、該吸着領域の内側には前記ワークを支持するランドと、該ランドを除く部分には凹部とを設け、前記複数の吸着領域の夫々は、周囲に領域壁を設け、該領域壁のうち、少なくとも隣接して設けられている吸着領域の境界にある領域壁は、載置面での平面形状で波型状に形成され、前記ワークが載置された前記複数の吸着領域を吸着及び非吸着状態に選択的に制御する正負圧制御装置を備えたことを特徴とするワークチャック。 - 前記吸着領域は、前記ワーク載置面内で直交する中心軸の少なくとも1つの軸に対し、軸対称位置に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のワークチャック。
- 前記ワーク載置面内で、直交する中心軸の少なくとも1つの軸に対し、軸対称位置に離間して設けられ、当該ワーク載置面に対し垂直方向に同一の高さで進退するリフトピンを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のワークチャック。
- 前記正負圧制御装置は、前記複数の吸着領域の吸着状態を、前記露光時と非露光時とで選択的に変化させるよう制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のワークチャック。
- 前記正負圧制御装置は、前記複数の吸着領域を正圧、負圧及び大気圧状態の何れかに選択的に制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のワークチャック。
- 前記正負圧制御装置は、前記ワーク形状に応じて選択された吸着領域を正圧、負圧及び大気圧状態の何れかに選択的に制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のワークチャック。
- ワーク載置面に垂直な方向で分割された前記載置面を構成する上部分割チャックと、該上部分割チャックを支持する基部チャックとを備え、前記上部分割ワークチャックと前記基部チャックとは着脱可能な締結手段で一体化されてなることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のワークチャック。
- 前記上部分割チャックは前記ワーク載置面内で複数に分割されていることを特徴とする請求項6に記載のワークチャック。
- 前記ランドは、前記ワーク載置面での平面形状が、正方形、長方形、円形、楕円形、波型の1種又はこれらの2種以上の組み合わせからなることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載のワークチャック。
- 前記ランドのワーク載置面には、選択的に正圧、負圧及び大気圧状態の何れかに制御された凹部を有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載のワークチャック。
- 前記ワーク載置面の周縁辺に沿って、前記領域壁の高さより低い逃げ凹部を有することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載のワークチャック。
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