JP3959675B2 - ウレタン化合物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な構造を有するウレタン化合物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ジイソシアナート化合物のイソシアナート基がブロック化剤でブロックされた化合物は知られている。
しかし、構造的に2個の2,4−トリレンジイソシアナートのそれぞれの2位のイソシアナート基をポリオールで結合し、且つそれぞれの4位のイソシアナート基をブロックした化合物は見当たらない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、構造的に2個の2,4−トリレンジイソシアナートのそれぞれの2位のイソシアナート基をポリオールで結合した新規なウレタン化合物及びその4位のイソシアナート基をブロックした新規な化合物を提供する事にある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、 一般式(A)
【化3】
(式中、Rは数平均分子量500〜10,000のポリオール残基である。)で表されるウレタン化合物、及び
一般式(B)
【化4】
(式中、Rは数平均分子量500〜10,000のポリオール残基、Xはケトオキシム化合物残基である。)で表されるウレタン化合物に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の一般式(A)及び(B)で表されるウレタン化合物としては、その式中のRが水酸基価から計算した数平均分子量500〜10,000、好ましくは1,000〜4,000のポリオール残基であるもので、ポリアルキレンエーテルジオール、ポリエステルジオール及びこれらのジオールにラクトンモノマーを開環付加重合反応させて得られるラクトン変性ジオールから選ばれた一種または二種以上のポリオールの残基であるものが好ましい。
【0006】
上記一般式(A)で表されるウレタン化合物は、例えば後述する合成法で得られた一般式(B)で表されるウレタン化合物を脱ケトオキシム反応により得ることもできるが、該一般式の化合物のイソシアナート基がアミノ基である化合物を調製し、ついでかかるアミノ基をイソシアナート基に変換することにより合成することもできる。
【0007】
また、一般式(A)及び(B)で表されるウレタン化合物については、例えば次のような合成方法で合成される。
先ず、2,4−トリレンジイソシアナート(TDI)とケトオキシム化合物(ブロック化剤)を2,4−TDIの2位NCOと4位NCOの反応性の違い(2位のNCOはオルト位のメチル基による立体障害により、4位NCOの方が2位NCOより反応性が高い)を利用して、4位NCOのみをケトオキシム化合物と反応させ、2位のイソシアナート基を残存したTDIを合成し、次いでこれと数平均分子量500〜10,000のポリオールとを反応させるという方法で合成できる。尚、ここでいう数平均分子量とは水酸基価から計算した分子量を意味する。
【0008】
上記ポリオールとしては、ポリアルキレンエーテルジオール、ポリエステルジオール及びこれらのジオールにラクトンモノマーを開環付加重合反応させて得られるラクトン変性ジオールから選ばれた一種または二種以上の数平均分子量500〜10,000、好ましくは1,000〜4,000のポリオールである。
【0009】
かかるポリアルキレンエーテルジオールとしては、通常、エチレンオキサイド、1,2−及び1,3−プロピレンオキサイド、1,2−、2,3−及び1,4−ブチレンオキサイド、アルキルテトラヒドロフラン等の分子内環状エーテル化合物の単独重合又は2種類以上のランダム共重合、ブロック共重合等で得られるものが挙げられる。特に1,4−ブチレンオキサイド(テトラヒドロフラン)単独又はそれを含む2種以上のアルキレンオキサイドの開環重合物及び付加重合物が好ましい。
【0010】
ポリエステルジオールとしては、二価アルコ−ルと二塩基性カルボン酸との反応生成物が挙げられる。遊離ジカルボン酸の代わりに、対応の無水物又は低級アルコ−ルのジエステル或いはその混合物もポリエステルの製造に使用することができる。特に、炭素数が2〜10のアルキレングリコールとアジピン酸からのポリエステルジオールが好ましい。
【0011】
ポリエステルジオールの構成成分である二価アルコ−ルとしては、特に限定はしないが、エチレングリコ−ル、1,3−及び1,2−プロピレングリコ−ル、1,4−及び1,3−及び2,3−ブチレングリコ−ル、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサングリコ−ル、1,8−オクタンジオ−ル、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル、1,4−ビス−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサン、2−メチル−1,3−プロパンジオ−ル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオ−ル、ジエチレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、トリプロピレングリコ−ル、ジブチレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル等が挙げられる。
【0012】
また、二塩基性カルボン酸としては、脂肪族、脂環族、芳香族及び/又は複素環式とすることができ、不飽和であっても或いは例えばハロゲン原子で置換されても良い。これらカルボン酸としては、限定はしないが、例えばコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメチン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロイソフタル酸、無水ヘキサヒドロイソフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、ダイマ−脂肪酸、例えばオレイン酸、ジメチルテレフタレ−ト及び混合テレフタレ−トが挙げられる。
【0013】
本発明のウレタン化合物の構成成分であるポリオールとしては、ポリアルキレンエーテルジオール、ポリエステルジオール及びこれらのジオールにラクトンモノマーを開環付加重合反応させて得られるラクトン変性ジオールも適当である。この際のラクトンモノマーとしては、バレロラクトン、メチルバレロラクトン、ε−カプロラクトン、トリメチルカプロラクトン等の1種又は2種以上を用いることが可能である。特にε−カプロラクトンが好ましく用いられる。
ラクトンの変性量については特に限定はないが、ポリオール100重量部にラクトンモノマー10〜100重量部を開環付加重合反応させるのが最も好適である。
【0014】
ラクトン変性方法としては特に限定はないが、一般に無溶媒下、テトライソプロピルチタネ−ト、テトラブチルチタネ−ト、オクチル酸第1スズ、亜鉛アセチルアセトネート等の触媒存在下に、ポリオールと前述した様な各種ラクトンモノマ−とを、110℃〜220℃で反応させることにより得る事ができる。
【0015】
本発明の上記一般式(B)のウレタン化合物は、上記一般式(A)のウレタン化合物のイソシアナート基2個が−NHCOOX基(X:ケトオキシム化合物残基)となっているものである。かかる−NHCOOX基を構成するケトオキシム化合物としては、シクロヘキサノンオキシム、アセトキシム、 メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、ベンゾフェノンオキシム等が挙げられる。
【0016】
本発明の上記一般式(A)のウレタン化合物及び一般式(B)のウレタン化合物は、活性水素含有化合物、即ち各種ポリオールやポリアミンと反応して得られる樹脂材料に有用である。特に、上記一般式(B)の化合物は、2位の基がブロックイソシアナート基で、4位の基がポリオール残基で結合されているウレタン基であるウレタン化合物に比べて、活性水素含有化合物特にポリアミンとの配合物のポットライフ(可使時間)が長くなるという特徴を有している。ポットライフ(可使時間)が短いと、使用に際してポリアミンとの配合物の粘度が、加工工程の前に又は、加工工程中に増粘して加工ができなくなるといった、加工上の問題が生じるが、上記一般式(B)のウレタン化合物は、ポットライフ(可使時間)が長く、加工適性に優れている。
【0017】
【実施例】
次に、本発明のウレタン化合物について、その実施例及び応用例を示し、本発明を更に具体的に説明する。本発明はこれら実施例例、応用例に限定されるものではない。尚、実施例、応用例中の部及び%は断りのない限り重量に関するものである。又、分子量とは水酸基価から計算した数平均分子量を指すものとする。
【0018】
[実施例1]4位モノブロック2,4−TDI
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた3リットル4つ口丸底フラスコに、2,4−ジイソシアナトトルエン1,000gとn−ヘプタン1,000gを入れ攪拌溶解し、内温を10〜15℃に保った。シクロヘキサノンオキシム260gを粉末状にし、内温を10〜15℃に保ちながら約1時間かけて投入した。結晶が析出し、系は白濁した。投入後内温を10〜15℃に保ちながら2時間攪拌した。生成した結晶を桐山ロートにて吸引濾過し、結晶をn−ヘプタン500gにて2回洗浄し、窒素雰囲気下、n−ヘプタンを除いた。結晶をサンプリングし、イソシアネート当量を測定した。測定結果はNCO当量293であった。
次にこの結晶を、ジ−n−ブチルアミンと反応させて、イソシアネート基を尿素基にし、H−NMRを測定した。
NMRスペクトル(DMSO溶媒)
9.40ppm 4位シクロヘキサノンオキシムカーバメートのN-H(2位ジブチルウレア)
8.15ppm 4位ジブチルウレアのプロトンのN-H(2位ジブチルウレア)
9.60ppm 4位シクロヘキサノンオキシムカーバメートのN-H(2位シクロヘキサノンオキシムカーバメート)
8.25ppm 4位ジブチルウレアのN-H(2位シクロヘキサノンオキシムカーバメート)
それぞれのプロトンの積分値から9.40ppmの 4位シクロヘキサノンオキシムカーバメートのN-H(2位ジブチルウレア)のピークの積分値から目的の4位モノブロック2,4−TDIが約90%の収率で生成している事を確認した。
【0019】
[実施例2]一般式(B)においてRがPTGL−2000、Xがシクロヘキサノンオキシムのウレタン化合物
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた2リットル4つ口丸底フラスコに、分子量2000のPTGL−2000(保土ヶ谷化学製 THFとメチル化THFの共重合体)800gと合成例1で得られた4位モノブロック2,4−TDI 236gを入れ80℃で4時間反応させてウレタン化合物を得た。得られたウレタン化合物の粘度は25℃で1,080dPa.sであった。
それをH−NMR分析したところ、4位のイソシアナート基がシクロヘキサノンオキシムでブロックされた、上記一般式(B)で表されるウレタン化合物に相当するものが確認された。
H−NMRスペクトル(ピリジン溶媒)
10.40ppm 4位シクロヘキサノンオキシムカーバメートのN-H(2位PTGL2000カーバメート)
10.73ppm 4位PTGL2000カーバメートのN-H(2位PTGL2000カーバメート)
10.50ppm 4位シクロヘキサノンオキシムカーバメートのN-H(2位シクロヘキサノンオキシムカーバメート)
10.80ppm 4位PTGL2000カーバメートのN-H(2位シクロヘキサノンオキシムカーバメート)
それぞれのプロトンの積分値から目的のウレタン化合物が約80%の収率で生成している事を確認した。
【0020】
[実施例3]一般式(A)においてRがPTGL−2000の化合物
温度計、攪拌機を備えた1リットル4つ口丸底フラスコに、合成例2で得られた化合物500gを入れ、減圧下、160℃に加熱しながら約30分攪拌した。得られたウレタン化合物の粘度は25℃で875dPa.sであった。
赤外分析したところ、イソシアネート基及びウレタン結合及びエーテル結合が存在し、また4位にイソシアナート基も存在することから、上記一般式(A)で表されるウレタン化合物に相当するものが確認された。
次に得られたウレタン化合物の、NCO当量を測定したところ1199であった。このウレタン化合物365gにシクロヘキサノンオキシム38gを反応させ、ウレタン化合物を得た。得られたウレタン化合物の粘度は25℃で1,130dPa.sであった。
それをH−NMR分析したところ、4位のイソシアナート基がシクロヘキサノンオキシムでブロックされた、上記一般式(B)で表されるウレタン化合物に相当するものが確認された。
H−NMRスペクトル(ピリジン溶媒)
10.40ppm 4位シクロヘキサノンオキシムカーバメートのN-H(2位PTGL2000カーバメート)
10.73ppm 4位PTGL2000カーバメートのN-H(2位PTGL2000カーバメート)
10.50ppm 4位シクロヘキサノンオキシムカーバメートのN-H(2位シクロヘキサノンオキシムカーバメート)
10.80ppm 4位PTGL2000カーバメートのN-H(2位シクロヘキサノンオキシムカーバメート)
それぞれのプロトンの積分値から上記一般式(B)で表されるウレタン化合物が約80%の収率で生成している事を確認した。
【0021】
[実施例4]一般式(B)においてRが3−メチルペンタンジオールとアジピン酸からの数平均分子量2000のポリエステル、Xがシクロヘキサノンオキシムであるウレタン化合物
窒素導入管、冷却用コンデンサー、温度計、攪拌機を備えた2リットル4つ口丸底フラスコに、数平均分子量2000の3−メチルペンタンジオールとアジピン酸からのポリエステル P−2010(クラレ製)800gと合成例1で得られた4位モノブロック2,4−TDI 236gを入れ80℃で4時間反応させてウレタン化合物を得た。得られたウレタン化合物の粘度は25℃で2,568dPa.sであった。
それを分析したところ、4位のイソシアナート基がシクロヘキサノンオキシムでブロックされた、上記一般式(B)で表されるウレタン化合物に相当するものが確認された。
H−NMRスペクトル(ピリジン溶媒)
10.38ppm 4位シクロヘキサノンオキシムカーバメートのN-H(2位P-2010カーバメート)
10.70ppm 4位PTGL2000カーバメートのN-H(2位P-2010カーバメート)
10.48ppm 4位シクロヘキサノンオキシムカーバメートのN-H(2位シクロヘキサノンオキシムカーバメート)
10.80ppm 4位P-2010カーバメートのN-H(2位シクロヘキサノンオキシムカーバメート)
それぞれのプロトンの積分値から上記一般式(B)で表されるウレタン化合物が約80%の収率で生成している事を確認した。
【0022】
[実施例5]一般式(A)においてRがP−2010の化合物
温度計、攪拌機を備えた1リットル4つ口丸底フラスコに、合成例4で得られた化合物500g入れ、減圧下、160℃に加熱しながら約30分攪拌した。
得られたウレタン化合物の粘度は25℃で1690dPa.sであった。
赤外分析したところ、イソシアネート基及びウレタン結合が存在し、また4位にイソシアナート基も存在することから、上記一般式(A)で表されるウレタン化合物に相当するものが確認された。
次に得られたウレタン化合物の、NCO当量を測定したところNCO当量
1204であった。このウレタン化合物を365gにシクロヘキサノンオキシム38gを反応させ、ウレタン化合物を得た。得られたウレタン化合物の粘度は25℃で1,130dPa.sであった。
それを分析したところ、4位のイソシアナート基がシクロヘキサノンオキシムでブロックされた、上記一般式(B)で表されるウレタン化合物に相当するものが確認された。
H−NMRスペクトル(ピリジン溶媒)
10.38ppm 4位シクロヘキサノンオキシムカーバメートのN-H(2位P-2010カーバメート)
10.70ppm 4位PTGL2000カーバメートのN-H(2位P-2010カーバメート)
10.48ppm 4位シクロヘキサノンオキシムカーバメートのN-H(2位シクロヘキサノンオキシムカーバメート)
10.80ppm 4位P-2010カーバメートのN-H(2位シクロヘキサノンオキシムカーバメート)
【0023】
[応用例1]
実施例1で得られた、一般式(B)で表されるウレタン化合物100重量部を60℃に加温して4,4’−メチレン−ビス−2−メチルシクロヘキシルアミンを8.2重量部 顔料(大日本インキ製 ダイラックカラー)5重量部をブレンドし、脱泡した。この配合物のポットライフは60℃で約7時間あり、加工上の問題はなく、加工適性の優れたものであった。
この配合物を、160℃金型に注入し、160℃で15分間加熱処理を行い、硬化させた。冷却後、成型品を型から取りはずした。
得られた注型品は、従来のエーテルタイプウレタンプレポリマーのMBOCA硬化による注型品に比較して、機械的性能で遜色無いものであった。
【0024】
【発明の効果】
本発明は、新規なウレタン化合物を提供する。特に4位のイソシアナート基がブロックされた一般式(B)で表されるウレタン化合物については、活性水素含有化合物との配合品のポットライフが長いため、使用に際して、顔料等の添加剤を添加混合したり、減圧脱泡したりしている間に粘度が高くなるなどのポットライフに関係するトラブルが無くなり加工適性に優れている。
Claims (5)
- Rが、ポリアルキレンエーテルジオール、ポリエステルジオール及びこれらのジオールにラクトンモノマーを開環付加重合反応させて得られるラクトン変性ジオールから選ばれた一種または二種以上のポリオールの残基である請求項1又は2に記載のウレタン化合物。
- ポリアルキレンエーテルジオールが、テトラヒドロフランの単独又は共重合体である請求項1〜3のいずれかに記載のウレタン化合物。
- ポリエステルジオールが、炭素数2〜10のアルキレングリコールとアジピン酸からなるポリエステルジオールである請求項1〜4のいずれかに記載のウレタン化合物。
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