JP3953758B2 - ジェット推進艇の排気構造の排気構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、艇体のポンプ室にジェット推進機を設け、このポンプ室に排気管をつなぐことにより、エンジンの排気ガスをポンプ室に排気するジェット推進艇の排気構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
ジェット推進艇は、艇体の後部にジェットポンプを取付け、このジェットポンプをエンジンで駆動することにより艇底から水を吸込み、吸込んだ水を後方に噴射して推進する船艇である。
【0003】
このジェット推進艇として、例えば特開2000−282840「ジェット推進艇の排気構造」が知られている。この公報には、ジェット推進艇から発生する排気騒音を低減する内容が開示されている。この技術によれば、エンジンにつないだ排気管に消音用のレゾネータを備え、このレゾネータで排気騒音を共鳴させることで排気騒音を消音させて排気騒音の低減を図ることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ジェット推進艇においては、排気管の排出口からエンジン側に水が侵入することを阻止するために、排気管の一部を上に凸の略U字形に形成することがある。排気管の一部を略U字形に形成することで排気管の長さが比較的長くなり、この長い排気管の共鳴音を減衰させるためには、レゾネータの長さを排気管に合せて長く設定する必要がある。
従って、この長いレゾネータを艇体の内部に取付けるためには、艇体の内部に十分な収容スペースを確保する必要がある。
【0005】
しかし、艇体の内部は限られた空間であり、この限られた空間にレゾネータ用の比較的大きな収容スペースを確保するためには、艇体の内部に取付ける多種の艇付属部品のレイアウトを十分に検討する必要がある。
このため、レゾネータ用の収納スペースを確保してレゾネータを取付けるためには、比較的長い検討時間を必要があるので、ジェット推進艇の排気騒音を低減することは難しいとされていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、排気騒音の低減を簡単におこなうことができるジェット推進艇の排気構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の請求項1は、艇体の後部にトンネル状のポンプ室を設け、このポンプ室にジェット推進機を設け、このジェット推進機に駆動用のエンジンを連結し、このエンジンから延ばした排気管の排気口をポンプ室に臨ませ、このポンプ室内に消音用のレゾネータを配置すると共に、このレゾネータに前記排気管を連通させたジェット推進艇の排気構造において、前記排気管で前記レゾネータの周壁を貫通することによりレゾネータ内に前記排気口を配置すると共に、この排気口に対向する前記レゾネータの周壁に開口を設け、前記排気口から排出される排気ガス、および排気ガスと共に排出される冷却水を前記開口まで導くことを特徴とする。
【0008】
ここで、ジェット推進機はトンネル状のポンプ室の中央に備えてあるので、ポンプ室の天井壁や左右壁の壁面近傍には空間がデッドスペースとして残存している。
そこで請求項1において、消音用のレゾネータをポンプ室内に配置することで、ポンプ室内のデッドスペースを有効利用してレゾネータを取付けことにした。このため、レゾネータを収容するための収容スペースを艇体の内部に確保するために、長い検討時間をかける必要がないのでレゾネータを簡単に取付けることができる。
【0009】
また、請求項1は、排気管でレゾネータの周壁を貫通することによりレゾネータ内に排気口を配置すると共に、この排気口に対向するレゾネータの周壁に開口を設けたことを特徴とする。
【0010】
レゾネータ内に排気口を配置し、この排気口に対向するレゾネータの周壁に開口を設けた。このため、排気口から排出した排気ガスや排気ガスと共に排出される冷却水を効率よくレゾネータの開口まで導くことができる。
【0011】
請求項2は、開口を支持梁で第1、第2の開口に区分けし、この支持梁に弁体を取付けることにより、この弁体に備えた一対のフラップで前記第1、第2の開口を開閉可能としたことを特徴とする。
【0012】
レゾネータの開口を第1、第2の開口に区分けし、区分けした各々の開口をそれぞれ個別のフラップで閉止する構成にした。フラップを個別に分けることで、フラップのコンパクトを図ることができるので、それぞれのフラップで第1、第2の開口を迅速に閉じることができる。
このため、第1、第2の開口から水が侵入する前に、第1、第2の開口をフラップで閉じることができる。
【0013】
請求項3は、支持梁には、排気口に向けて突出させたV断面又は略V断面のガイド部を設けたことを特徴とする。
【0014】
支持梁に排気口に向けて突出させたV断面又は略V断面のガイド部を備えたので、排気ガスや排気ガスと共に排出される冷却水を、ガイド部で案内して第1、第2の開口に円滑に導くことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る排気構造(第1実施形態)を備えたジェット推進艇の側面図である。
ジェット推進艇10は、艇体11の前部11aに取付けた燃料タンク14と、この燃料タンク14の後方に設けたエンジン15と、このエンジン15の後方に設けたポンプ室16と、このポンプ室16に設けたジェットポンプ(ジェット推進機)20と、エンジン15に吸気側を取付けるとともに排気側をポンプ室16に取付けたジェット推進艇の排気構造30と、燃料タンク14の上方に取付けた操舵ハンドル25と、この操舵ハンドル25の後方に取付けたシート27とからなる。
【0016】
ジェットポンプ20は、艇底12の開口13から後方へ延びたハウジング21を有し、このハウジング21内にインペラ22を回転自在に取り付け、インペラ22をエンジン15の駆動軸23に連結したものである。
ジェットポンプ20によれば、エンジン15を駆動してインペラ22を回転させることにより、艇底12の開口13から吸引した水をハウジング21の後端開口を介して操舵管(操舵ノズル)24から艇体11の後方へ噴射することができ、リバースバケット26を操舵ノズル24の後方に移動することで操舵ノズル24から噴射した水を前方に向けて案内することができる。
【0017】
この船艇10によれば、燃料タンク14からエンジン15に燃料を供給してエンジン15を駆動し、このエンジン15の駆動力を駆動軸23を介してインペラ22に伝え、インペラ22を回転することにより艇底12の開口13から水を吸引し、吸引した水をハウジング21の後端を通して操舵ノズル24から噴射して推進することができる。
【0018】
図2は本発明に係るジェット推進艇の排気構造(第1実施形態)の側面図である。
ジェット推進艇の排気構造30は、エンジン15の排気マニホールド(図示しない)に排気管31を繋ぎ、この排気管31の端部32をポンプ室16の天井壁17に貫通させ、この天井壁17に配置したレゾネータ40に排気管31の端部32を貫通させ、レゾネータ40の底壁41の開口46(図4も参照)をポンプ室16の内部空間16aに臨ませたものである。
【0019】
排気管31は、排気マニホールドに繋いだエキゾーストパイプ34と、このエキゾーストパイプ34の出口に繋いだエキゾーストボディ35と、このエキゾーストボディ35の出口側に繋いだマフラー36と、このマフラー36の出口36aに繋いだ連結管37と、連結管37の排気口に繋いだテールパイプ38とからなり、テールパイプ38の端部(すなわち、排気管31の端部)32をポンプ室16の天井壁17に取付けたものである。
【0020】
連結管37は、凸部37aが上位となるように折曲げたパイプである。連結管37の凸部37aを上位に配置することで、万が一テールパイプ38から連結管37内に水が侵入した場合でも、侵入した水は連結管37の凸部37aを乗り越えることができないので、エンジン15側に水が侵入することを阻止できる。すなわち、この連結管37はウォータロックの機能を備えている。
【0021】
ポンプ室16は、内部空間16aが前後方向に延びるようにトンネル状に形成したもので、中央にジェットポンプ20を備え、後端開口側にブラケット11aを介して上下方向にリバースバケット26を備える。また、ジェットポンプ20のハウジング21後端に操舵管(操舵ノズル)24を左右方向にスイング自在に備える。
【0022】
図1に示す操舵ハンドル25で操舵ケーブルを操作して操舵ノズル24を左右方向にスイングすることで艇体11の操舵方向をコントロールすることができる。また、操舵ハンドル25のレバーでリバースケーブル28aを操作してリバースバケット26を操舵ノズル24の後方に配置することで艇体11を後進させる。
【0023】
図3は本発明に係るジェット推進艇の排気構造(第1実施形態)の分解斜視図である。
レゾネータ40は、蛇行させた状態に折曲げ、折曲げた各々の部位を互に隣接させることで、レゾネータ40の全体をほぼ平板状にまとめた部材である。
このレゾネータ40は、テールパイプ38の端部32に取付ける基部42と、この基部42に一体成形したレゾネータ本体50とからなる。
【0024】
基部42は、内部に中空部43を備えた略矩形状の枠体であり、枠体の上壁42a(すなわち、レゾネータの周壁)に取付口44(図5に示す)を開け、この取付口44にパッキン45を取付けたものである。テールパイプ38の端部32をパッキン45に差込んで、テールパイプ38の排気口(すなわち、排気管31の排気口)33を基部42の中空部43に臨ませることができる。
【0025】
レゾネータ本体50は、基部42の右後コーナ42cから蛇行状態に延ばした断面矩形状の中空管であり、この中空管を基部42の中空部43に連通させたものである。
このレゾネータ本体50は、基部42の右後コーナ42cから第1折曲げ部51を反時計回り方向にほぼ180゜折曲げ、この第1折曲げ部51の先端から第1延長部52を基部42の右辺42dに沿って前方向に延ばし、この第1延長部52の先端から第2折曲げ部53を時計回り方向にほぼ180゜折曲げ、この第2折曲げ部53の先端から第2延長部54を第1延長部52の右辺52aに沿って後方向に延ばし、この第2延長部54の先端から第3折曲げ部55を時計回り方向にほぼ90゜折曲げ、この第3折曲げ部55の先端から第3延長部56を第1折曲げ部51の後辺51a及び基部42の後辺42eに沿って延ばしたものである。
なお、第3延長部56の先端56a、すなわちレゾネータ本体50の先端を閉塞状態に形成する。
【0026】
このように、レゾネータ本体50を蛇行させた状態に折曲げることにより、レゾネータ40をコンパクトに抑えながらレゾネータ40の長さL1を所望の長さに確保することができる。レゾネータ40を所望の長さに確保することができるので、長い排気管の共鳴音を減衰することができ、排気騒音の消音効果を十分に高めることができる。
【0027】
また、レゾネータ40を湾曲状に折曲げることで第1隙間61及び第2隙間62ができる。これらの第1隙間61及び第2隙間62にそれぞれ第1リブ63(図5に示す)及び第2リブ64(図5に示す)を備えることで、第1隙間61を構成する両壁面を一体に連結することができ、第2隙間62を構成する両壁面を一体に連結することができる。
【0028】
これにより、レゾネータ40の全体をほぼ矩形体状(平板状)にまとめることができる。レゾネータ40を板状にまとめることで、レゾネータ40のコンパクト化を図ることができ、レゾネータ40を比較的小さい収容スペースに配置することができる。
【0029】
このように蛇行状に折曲げたレゾネータ40によれば、レゾネータ本体50の中空部50a(図5に示す)を基部42の中空部43に連通することで、レゾネータ本体50をテールパイプ38を通して連結管37に連通することができる。これにより、連結管37よりの共鳴音を減衰して、排気騒音を下げることができる。
【0030】
このように構成した板状のレゾネータ40の前壁40aに前取付けブラケット65(図2に示す)を備え、後壁40bに後取付けブラケット66を備える。
前取付けブラケット65をボルト67,67でポンプ室16の前壁18aに取付け、後取付けブラケット66をボルト67,67でポンプ室16の天井壁17に取付けることにより、ポンプ室16の天井壁17にレゾネータ40を取付けることができる。
【0031】
ここで、一般的に艇体11の内部は多種の艇付属部品を取付けるため、余分なスペースは残されていない。しかし、艇体11の天井壁17(壁面)近傍には比較的スペースが残されている場合が多い。
そこで、天井壁17近傍に残されているデッドスペースを有効利用するために、図2に示すようにレゾネータ40をポンプ室16内の天井壁17に沿わせるようにした。
【0032】
さらに、ポンプ室16は艇体11の外部にあたり、このポンプ室16の天井壁17にレゾネータ40を沿わせることで、艇体11の外部にレゾネータ40を取付けることが可能になる。艇体11の外部にレゾネータ40を取付けることで、レゾネータ40を収容するための収容スペースを艇体11の内部に確保する必要がない。
このように、レゾネータ40をポンプ室16内の天井壁17に沿わせることで、レゾネータ40を簡単に取付けることができる。
【0033】
加えて、レゾネータ40をポンプ室16の天井壁17に取付けることで、テールパイプ38をポンプ室16の天井壁17に取付けることができる。このため、テールパイプ38に連通させる連結管37を極力短くできるので、テールパイプ38を備えるためのスペースを艇体11内に比較的簡単に確保できる。
従って、レゾネータ40をより簡単に取付けることができる。
【0034】
図4は本発明に係るジェット推進艇の排気構造(第1実施形態)の要部を示す分解斜視図である。
ジェット推進艇の排気構造30は、レゾネータ40の底壁41に開口46を備え、この開口46に支持ブラケット80を介して弁体70を備える。以下、開口46、弁体70及び支持ブラケット80について説明する。
【0035】
レゾネータ40の開口46は、略矩形状に形成した排気用の穴であり、この開口46の対向する前後両辺44a,44bに支持梁48を渡すことにより第1開口47aと第2開口47bとに区分けしたものである。
支持梁48は、基部42の中空部43(図5参照)に臨む面に、V断面又は略V断面のガイド部49を備える。このガイド部49をV断面又は略V断面に形成することにより、ガイド部49をテールパイプ38の排気口33に向けて先細状に突出させることができる。
なお、支持梁48にガイド部49を形成することで、支持梁48の下面側(ポンプ室16に臨む面側)には凹条部48aを備えることになる。
【0036】
弁体70は、全体を略矩形状に形成したゴム製の部材であって、その略中央に支持梁48に当接可能な取付部71を備え、この取付部71に突条部72を備え、この突状部72の内側の空間に補強リブ72a・・・を一定間隔をおいて形成し、突条部72を支持梁48の凹状部48aに係合可能に形成し、取付部71の両側(左右側)にそれぞれ第1、第2のフラップ74,76を備える。
第1フラップ74は周縁74b〜74dに補強リブ75を備え、第2フラップ76は周縁76b〜76dに補強リブ77を備える。
支持ブラケット80は、弁体70の取付部71に当接可能な支え部81を備え、この支え部81から斜め下方に延びた傾斜部82を備える。
【0037】
この弁体70をレゾネータ40の底壁41に取付ける際には、支持梁48の凹状部48aに弁体70の突条部72を係合することで、弁体70の取付部71を支持梁48に位置決めし、この取付部71に支持ブラケット80の支え部81を当て、この状態で、底壁41の取付孔41a,41a、弁体70の取付孔78,78、支持ブラケット80の取付孔83,83及びナット86,86にリベット85,85を打ち込むことにより、図5に示すように底壁41と支持ブラケット80とで弁体70の取付部71を挟持する。
【0038】
弁体70に備えた第1、第2のフラップ74,76は、それぞれのフラップ74,76の自重により各折曲り部74a,76aで折曲がり下方に垂下する。このとき、第1フラップ74を支持ブラケット80の傾斜部82で支えることにより、第1フラップ74を傾斜状態(図5に示す)に保つことができる。
一方、第2フラップ76は、折曲り部76aで折曲がることで、図5に示すように鉛直に垂下した状態になる。
【0039】
図5は図3の5−5線断面図であり、ポンプ室16の天井壁17の裏面に遮熱板19を取付け、この遮熱板19の裏面側にレゾネータ40を設け、ポンプ室16の天井壁17の取付口17a及び遮熱板19の取付口19aにテールパイプ38の端部32を挿入するとともに、パッキン45にテールパイプ38の端部32を嵌め込むことによりテールパイプ38でレゾネータ40の周壁(基部42の上壁42a)を貫通させてテールパイプ38の排気口33をレゾネータ40の基部42内(中空部43)に配置し、この排気口33に対向するレゾネータ40の周壁(底壁)41に開口46を設けることにより、この開口46をポンプ室16の内部空間16aに臨ませ、支持梁48の上流側の面(すなわち、テールパイプ38の排気口33に対向する面)にガイド部49を排気口33に向けて突出させた状態を示す。
【0040】
このように、排気管31のテールパイプ38でレゾネータ40の周壁を貫通することによりレゾネータ40内(基部42の中空部43)に排気口33を配置すると共に、この排気口33に対向するレゾネータ40の底壁41に開口46を設けたので、テールパイプ38の排気口33から排出した排気ガスを効率よくレゾネータ40の開口46(第1、第2の開口47a,47b)まで導き、第1、第2の開口47a,47bからポンプ室16の内部空間16aに排気することができる。
加えて、支持梁48の上流側の面に、テールパイプ38の排気口33に向けてガイド部49を突出させることで、排出口33から流出した排気ガスをガイド部49で案内して第1、第2の開口47a,47bに円滑に導くことができる。
【0041】
また、この図は、レゾネータ40の底壁41に形成した開口46を支持梁48で第1、第2の開口47a,47bに区分けし、この支持梁48に弁体70を取付けた状態を示す。
レゾネータ40の開口41を支持梁48で第1、第2の開口47a,47bに区分けし、これらの第1、第2の開口47a,47bを第1、第2のフラップ74,76を閉止可能に構成したので、第1、第2のフラップ74,76をコンパクトに形成することができる。
【0042】
従って、第1、第2の開口47a,47bをそれぞれ第1、第2のフラップ74,76で迅速に開閉することができる。このため、第1、第2の開口47a,47bからレゾネータ40内に水が侵入する前に、第1、第2の開口47a,47bをそれぞれ第1、第2のフラップ74,76で閉じることができる。
【0043】
次に、この図においてレゾネータ40から排気ガスを排出する例を説明する。弁体70に備えた第1、第2のフラップ74,76は、それぞれのフラップ74,76の自重により各折曲り部74a,76aで下方に折れ曲がる。このとき、第1フラップ74を支持ブラケット80の傾斜部82で支えることにより、第1フラップ74を傾斜状態に保つことができる。一方、第2フラップ76は自重により折曲げ部76aで折曲り、略鉛直状態まで垂下する。
これにより、レゾネータ40の底壁41に備えた第1、第2の開口47a,47bを開放することができる。
【0044】
ここで、レゾネータ40の開口46をテールパイプ38の排気口33に対向させているので、テールパイプ38の排気口33から排出した排気ガスや排気ガスと共に排出される冷却水を、レゾネータ40の開口46(すなわち、第1、第2の開口47a,47b)まで矢印の如く効率よく導くことができる。
加えて、支持梁48の上流側の面にV断面又は略V断面のガイド部49を設けることで、テールパイプ38の排出口33から流出した排気ガスや排気ガスと共に排出される冷却水を、ガイド部49で案内して第1、第2の開口47a,47bに円滑に導くことができる。
なお、第1フラップ74を支持ブラケット80の傾斜部82で支える理由については図7で詳しく説明する。
【0045】
図6は図2の6−6線断面図であり、ポンプ室16の中央にジェットポンプ20を備え、ポンプ室16の天井壁17にデッドスペースを有効利用してレゾネータ40を取付け、ジェットポンプ20の上方、すなわちジェットポンプ20の左側にリバースケーブル28a及びパイプ28bを備え、ジェットポンプ20とレゾネータ40との間にケーブル28cを備え、ジェットポンプ20の右側に操舵ケーブル28dを備え、ジェットポンプ20の略上面まで海水87が侵入している状態を示す。
【0046】
リバースケーブル28aは、リバースバケット26(図2参照)を操作するためのケーブルであり、パイプ28bは、冷却水を取入れるためのパイプである。また、ケーブル28cは、トリム用のケーブルであり、操舵ケーブル28dは、操舵ノズル(図2参照)を操作するためのケーブルである。
【0047】
次に、図7に基づいてレゾネータ40の開口46(第1、第2の開口47a,47b)から海水が侵入することを防止する例を説明する。
図7は本発明に係る第1実施形態の弁体で海水の侵入を防ぐ状態を説明する図である。
運転中のジェット推進艇10が万一反転した場合、第1フラップ74が自重で開放位置P1(想像線で示す位置)から閉塞位置P2(実線で示す位置)まで移動して、レゾネータ40の第1開口47aを第1フラップ74で閉じる。
同時に、第2フラップ76が自重で開放位置P3(想像線で示す位置)から閉塞位置P4(実線で示す位置)まで移動して、レゾネータ40の第2開口47bを第2フラップ76で閉じる。
【0048】
開口46を区分けし、区分けした第1、第2の開口47a,47bを第1、第2のフラップ74,76でそれぞれ個別に閉止するように構成したので、第1、第2のフラップ74,76をコンパクトに形成することができる。
第1、第2のフラップ74,76をコンパクトにすることで、それぞれのフラップ74,76を開放位置(P1,P3)から閉塞位置(P2,P4)まで短い時間で移動することができる。よって、第1、第2の開口47a,47bに海水が到達する前に、第1、第2の開口47a,47bを各々のフラップ74,76で閉じることができる。
【0049】
ここで、第1フラップ74を支持ブラケット80の傾斜部82で斜めに支えた理由について説明する。
運転中のジェット推進艇10が万一反転した場合、ポンプ室16内の海水87がポンプ室16の天井壁17に向って落下する。このとき、ポンプ室16の左壁18b近傍の海水87は左壁18bに沿ってスムーズに矢印▲1▼の如く落下するので、レゾネータ40の第1開口47aに比較的速く到達してしまう。このため、第1開口47aを弁体70の第1フラップ74で迅速に閉じる必要がある。
【0050】
そこで、ジェット推進艇10の通常運転の際には、図5に示すように第1フラップ74を支持ブラケット80の傾斜部82で支えることで傾斜状態に保つようにした。このため、ジェット推進艇10が万一反転した場合には、第1フラップ74を開放位置P1から閉塞位置P2まで迅速に移動させることができる。従って、ポンプ室16の左壁18bに沿って落下した海水87が第1開口47aに到達する前に、第1開口47aを第1フラップ74で閉じて、海水87が第1開口47aからレゾネータ40内に侵入することを防ぐことができる。
【0051】
一方、ポンプ室16の右壁18c近傍の海水87は第2開口47bに向って矢印▲2▼の如く落下する。第2開口47bは右壁18cから離れていると共に、第2開口47bの近傍にはケーブル28cが延びているので、このケーブル28cで海水87の落下を遮ることができる。
よって、海水87が第2開口47bに到達するまでに比較的時間がかかる。このため、弁体70の第2フラップ76で第2開口47bを閉じるまでにある程度の時間を確保することが可能になる。
【0052】
そこで、ジェット推進艇10の通常運転の際には、図5に示すように第2フラップ76を鉛直に垂下させるようにした。このため、排気ガスを第2開口47bからより効率よく排出することができる。
そして、ジェット推進艇10が反転したときには、右壁18cから離れていると共にケーブル28cで遮られて、海水87が第2開口47bに到達する前に、第2フラップ76を想像線で示す開放位置P3から実線で示す閉塞位置P4まで移動させて第2フラップ76で第2開口47bを閉じて、海水87が第2開口47bからレゾネータ40内に侵入することを防ぐことができる。
【0053】
次に、第2実施形態を図8〜図9に基づいて説明する。なお、第2実施形態において第1実施形態と同一部材については同一符号を付して説明を省略する。
図8は本発明に係るジェット推進艇の排気構造(第2実施形態)の要部断面図である。
ジェット推進艇の排気構造90は、レゾネータ40をトンネル状のポンプ室16の左壁18bに沿わせて取付けた点で第1実施形態と異なるだけで、その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0054】
すなわち、ジェット推進艇の排気構造90は、ポンプ室16の左壁18bの裏面に遮熱板19を取付け、この遮熱板19の裏面側にレゾネータ40を設け、ポンプ室16の左壁18bの取付口18d及び遮熱板19の取付口19aにテールパイプ38の端部32を挿入するとともに、パッキン45にテールパイプ38の端部32を嵌め込むことにより、テールパイプ38の排気口33を基部42の中空部43に臨ませ、レゾネータ40の底壁41の開口46をポンプ室16の内部空間16aに臨ませた状態を示す。
開口46は、第1実施形態と同様に、支持梁48で第1開口47a及び第2開口47bに区分けしたものである。
【0055】
また、この図は、支持梁48にガイド部49をテールパイプ38の排気口33に向けて設け、支持梁48の凹状部48aに弁体92の突条部72を係合することで、弁体92の取付部71を支持梁48に位置決めし、この取付部71に支持ブラケット80の支え部81を当て、この状態で、第1実施形態と同様にリベット85,85(奥側のみを図示する)を打ち込むことにより底壁41と支持ブラケット80とで弁体92の取付部71を挟持した状態を示す。
弁体92は、第1実施形態の弁体70から第2フラップ76を除去したもので、その他の構成は弁体70と同じである。
【0056】
弁体92に備えた第1フラップ74に自重がかかることにより、折曲り部74aから下方に折れ曲がる。このとき、第1フラップ74を支持ブラケット80の傾斜部82で支えることにより、第1フラップ74を傾斜状態に保つ。
これにより、レゾネータ40の底壁41に備えた第1開口47aを開放することができる。一方、第2開口47bはフラップを備えていないので常時開放状態を保つ。
よって、テールパイプ38の排気口33から排気した排気ガスを、ガイド部で案内して矢印の如く第1、第2の開口47a,47bに導くことができる。
【0057】
次に、レゾネータ40の開口46から海水が侵入することを防止する例を図9に基づいて説明する。
図9は本発明に係る第2実施形態の弁体で海水の侵入を防ぐ状態を説明する図である。
ジェット推進艇が、万一走行中に反転した場合、ポンプ室16内の海水87がポンプ室16の天井壁17に向って落下する。このとき、ポンプ室16の左壁18b近傍の海水87はレゾネータ40の底壁41に沿って矢印▲3▼の如く落下するので、レゾネータ40の第2開口47bを通過してしまう。このため、海水87が第2開口47bから侵入することがないので、第2開口47bにはフラップを設けない構成にした。
また、第2開口47bは、反転時に水面より上になる位置に開口させた。
【0058】
一方、ポンプ室16の中央の海水87は天井壁17に落下した海水87が、第1開口47aに向って矢印▲4▼の如く流れる。そこで、第1開口47aに第1フラップ74を設け、第1フラップ74を想像線で示す開放位置P5から実線で示す閉塞位置P6まで移動させて第1フラップ74で第1開口47aを閉じて、海水87が第1開口47aからレゾネータ40内に侵入することを防ぐようにした。
【0059】
第2実施形態のジェット推進艇の排気構造90は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
すなわち、第2実施形態によれば、レゾネータ40をポンプ室16内の左壁17に沿わせることで(図8参照)、壁面近傍に残されているデッドスペースを有効利用することができる。加えて、レゾネータを艇体11の外部に取付けることで、レゾネータ40を収容するための収容スペースを艇体11の内部に確保する必要がない。
このように、ポンプ室16の天井壁17にレゾネータ40を沿わせることで、レゾネータ40をより簡単に取付けることができる。
【0060】
また、第2実施形態によれば、レゾネータ40の開口46をテールパイプ38の排気口33に対向させているので、テールパイプ38の排気口33から排出した排気ガスを効率よくレゾネータ40の開口46(すなわち、第1、第2の開口47a,47b)まで導くことができる。
【0061】
さらに、第2実施形態によれば、開口46を第1、第2の開口47a,47bに区分けして、第1フラップ74で第1開口47aを閉止するように構成したので第1フラップ74をコンパクトに形成することができる。
第1フラップ74をコンパクトにすることで、第1フラップ74を開放位置から閉塞位置まで短い時間で移動することができるので、第1開口47aから水が侵入する前に、第1開口47aを第1フラップ74で閉じることができる。
【0062】
加えて、第2実施形態によれば、支持梁48の上流側の面にV断面又は略V断面のガイド部49を設けることで、テールパイプ38の排出口33から流出した排気ガス及び排気ガスと共に排出される冷却水を、ガイド部49で案内して第1、第2の開口47a,47bに円滑に導くことができる。
【0063】
なお、前記第1実施形態では、レゾネータ40をポンプ室16の天井壁17に設け、第2実施形態では、レゾネータ40をポンプ室16の左壁17bに設けた例について説明したが、これに限らないで、ポンプ室16のその他の壁面に設けることも可能である。また、レゾネータ40をポンプ室16内の壁面以外の部位に設けることも可能である。
【0064】
さらに、前記実施形態では、レゾネータ底壁41の開口46を矩形としたが、これに限らないで、例えば開口46を円形等のその他の形状に形成することも可能である。
加えて、前記実施形態では、レゾネータ40を蛇行状に形成した例について説明したが、これに限らないで、例えばレゾネータを直線状に形成し、このレゾネータをポンプ室16のデッドスペースに配置することも可能である。
【0065】
また、前記第1、第2実施形態では、通常状態において第1フラップ74を支持ブラケット80の傾斜部82で斜めに支えた例について説明したが、第1フラップ74の傾斜状態は任意に選択することができる。加えて、第1実施形態においては、支持ブラケット80から傾斜部82を除去して第1フラップ74を鉛直に垂下することも可能である。
さらに、前記実施形態では、支持梁48にガイド部49を一体に形成した例につて説明したが、これに限らないで、支持梁48に別部材のガイド部49を取付けるように構成することも可能である。
【0066】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、ポンプ室内のデッドスペースを有効利用して消音用のレゾネータを配置することにした。このため、艇体の内部にレゾネータを収容するための収容スペースを確保するために、長い検討時間をかける必要はない。
従って、レゾネータを簡単に取付けることができるのでジェット推進艇の排気騒音をより簡単に低減することが可能になる。
【0067】
さらに、レゾネータ内に排気口を配置し、この排気口に対向するレゾネータの周壁に開口を設けた。このため、排気口から排出した排気ガスや排気ガスと共に排出される冷却水を効率よくレゾネータの開口まで導くことができるので、レゾネータの開口から排気ガスを円滑に排出することができる。
【0068】
請求項2は、レゾネータの開口を第1、第2の開口に区分けし、区分けした各々の開口をそれぞれ個別のフラップで閉止する構成にした。フラップを個別に分けることで、フラップのコンパクトを図ることができるので、それぞれのフラップで第1、第2の開口を迅速に閉じることができる。
従って、第1、第2の開口から水が侵入する前に、第1、第2の開口をフラップで閉じることができるので、レゾネータ内に水が侵入することを防ぐことができる。
【0069】
請求項3は、支持梁に排気口に向けて突出させたV断面又は略V断面のガイド部を備えたので、排気ガスや排気ガスと共に排出される冷却水を、ガイド部で案内して第1、第2の開口に円滑に導くことができる。
従って、排出口から排出した排気ガスをレゾネータ内から効率よく排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る排気構造(第1実施形態)を備えたジェット推進艇の側面図
【図2】本発明に係るジェット推進艇の排気構造(第1実施形態)の側面図
【図3】本発明に係るジェット推進艇の排気構造(第1実施形態)の分解斜視図
【図4】本発明に係るジェット推進艇の排気構造(第1実施形態)の要部を示す分解斜視図
【図5】図3の5−5線断面図
【図6】図2の6−6線断面図
【図7】本発明に係る第1実施形態の弁体で海水の侵入を防ぐ状態を説明する図
【図8】本発明に係るジェット推進艇の排気構造(第2実施形態)の要部断面図
【図9】本発明に係る第2実施形態の弁体で海水の侵入を防ぐ状態を説明する図
【符号の説明】
10,90…ジェット推進艇、11…艇体、15…エンジン、16…ポンプ室、17…ポンプ室の天井壁(艇体の壁面)、18b…ポンプ室の左壁、20…ジェットポンプ(ジェット推進機)、30,90…ジェット推進艇の排気構造、32…排気管、33…排気口(排気管の排気口)、38…テールパイプ、40…レゾネータ、41…レゾネータの底壁(周壁)、42a…上壁(レゾネータの周壁)、46…開口、47a…第1開口、47b…第2開口、48…支持梁、49…ガイド部、70,92…弁体、74…第1フラップ、76…第2フラップ。
Claims (3)
- 艇体の後部にトンネル状のポンプ室を設け、このポンプ室にジェット推進機を設け、このジェット推進機に駆動用のエンジンを連結し、このエンジンから延ばした排気管の排気口をポンプ室に臨ませ、このポンプ室内に消音用のレゾネータを配置すると共に、このレゾネータに前記排気管を連通させたジェット推進艇の排気構造において、
前記排気管で前記レゾネータの周壁を貫通することによりレゾネータ内に前記排気口を配置すると共に、この排気口に対向する前記レゾネータの周壁に開口を設け、
前記排気口から排出される排気ガス、および排気ガスと共に排出される冷却水を前記開口まで導くことを特徴とするジェット推進艇の排気構造。 - 前記開口を支持梁で第1、第2の開口に区分けし、この支持梁に弁体を取付けることにより、この弁体に備えた一対のフラップで前記第1、第2の開口を開閉可能としたことを特徴とする請求項1記載のジェット推進艇の排気構造。
- 前記支持梁には、前記排気口に向けて突出させたV断面又は略V断面のガイド部を設けたことを特徴とする請求項2記載のジェット推進艇の排気構造。
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