JP3937568B2 - 曲面体表面における金属パターン形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、曲面体の表面に金属パターンを形成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の屈曲したリヤーガラスの表面に金属線が配設されて、霜取り用の伝熱線として使用されたり、電波の受信線すなわちアンテナとして使用されている。また、近年は年々小型化する電気製品におけるケース等の曲面体に、配線パターン等の金属パターンを形成することが、各種の電子装置の小型化、高性能化に伴って一層増加することが予想される。
【0003】
従来、曲面体への金属パターンの形成方法としては、先ずプレス等で所望の形状に形成した金属片を所望の位置に貼り付ける方法がある。この方法は、大きなパターンに対しては有効であるが、例えば配線パターンのような微細なパターンでは採用し難い。
【0004】
別の方法として、電気めっきや無電解めっき法によって所望のパターンに形成しためっき金属を転写する方法がある。
【0005】
めっき金属パターン転写法の通常の工程は図5の通りである。
基板として、めっきでき、且つ、めっき金属を容易に剥離することができるステンレス鋼鈑51を使用し、フォトレジスト52を塗布し、所望のパターンを有するフォトマスク53を通して露光し(図5(a))、現像して所望のめっき部分以外がフォトレジスト52で覆われた基板51を得る(図5(b))。
【0006】
所望の厚さまでめっき54し、必要なら研磨して平らにし(図5(c))。フォトレジスト52を剥離し(図5(d))、表面に粘着材55が塗布され金属パターンが転写される部材(この発明で被転写体と云う)56と貼り合わせ(図5(e))、両者を引き剥がし、めっき金属54を被転写体56へ転写する(図5(f))。
【0007】
この方法を平板で使用して、例えばプリント配線基板が製造されている。また、転写するのではなく剥離しただけのものとして、スクリーン版用のメッシュがある。さらに、曲面被転写体への適用例として、電気カミソリのメッシュ部の製造がある。この場合、転写するのではなく剥離する。
【0008】
曲面体同士の間で転写して、金属パターンを曲面体の表面に形成する方法はこれまで知られていない。本発明は、曲面体同士の間の転写によって曲面体表面に金属パターンを形成する方法を提供する。
【0009】
この場合、全面に金属を一応に形成する場合以外は、何らかの方法でめっきされない領域、すなわちめっきに対するマスクされた領域を設けるか、全面にめっきした後エッチング法を使用して所望のパターンを残す必要があるが、この場合もエッチングに対するマスク作用を有する領域を設ける必要がある。めっき金属転写法において、めっきを防止する機能を有する層を一般にめっきマスク層、または単にマスク層と呼んでいる。本発明ではめっきマスク層と呼ぶ。
【0010】
このめっきマスク層によって囲繞形成された凹部(導電パターン部)に析出しためっき金属を被転写体に転写する工程において、従来の方法では、めっきマスク層であるフォトレジスト52を剥離している。その理由は、もし生産性を向上するため、これを剥離せずに転写すると、被転写体上の粘着材にめっきマスク層の一部あるいは全部が粘着されてしまい、剥離時に破損してしまうか、あるいは逆に粘着剤がめっきマスク層に付着してしまい、繰り返し使用する時の障害となってしまうからである。このため生産性が低いと云う問題点があった。
【0011】
この問題を回避するための改良された工程では、フォトレジストを剥離する代わりに粘着材を電着し、めっきマスク層を剥離することなく、表面に粘着材が塗布されてない被転写体と貼り合わせ、その後両者を引き剥がすようにしている。
【0012】
粘着剤のパターンニングに再度めっきを使用すると云う巧妙な方法である。この改良によって、粘着剤層が必要部分にだけ形成されるので、めっきマスク層に粘着剤が付着することが少なくなった。
【0013】
しかし、電着工程が一つ増える上にそのような電着性を有する粘着剤は高価であり、また粘着特性等が十分でない場合があった。また、めっきマスクの側面は粘着剤と接しているので、めっきマスク層が損傷することがあり、また一般的にはフォトレジストのめっきマスク層は転写時の加圧によって損傷するので、実際上はめっきマスク層は毎回、或いは2〜3回毎に剥離し、形成し直す必要があった。
【0014】
めっきマスク層の損傷対策のさらに改良した方法が特開平6−175340号公報に提案されている。これは、めっき転写用の基板の表面全面に剥離性樹脂層を形成する方法である。しかし、この方法には以下に示す問題点があった。
【0015】
すなわち、これはマスキング層として絶縁層を基板の全面に、例えばイオンプレーティング法、真空蒸着法、スパッタリング法等の各種の薄膜形成法で形成し、次にこの層をフォトリソグラフィによってパターンニングし、その後、この状態の基板の全面にシリコーン樹脂等の剥離性樹脂層を、例えば掛け流し法、スピンコート法、ロールコート法等の方法によって形成するものであり、工程が長い上に剥離性樹脂層の厚さの調整が困難であった。
【0016】
剥離性樹脂層の厚さは0.005〜0.1μm程度が好ましく、0.005μm未満であると、外力による剥離性樹脂層の破断等が生じてマスキング層の保護が不十分となって好ましくない。また、剥離性樹脂層の厚さが0.1μmを越えると、めっき金属が凹部内に形成されなかったり、凹部の形状が所定の形状からずれてしまったりするので好ましくない。
【0017】
しかし、このような制約を満足すれば、線巾5μm、厚さ1μmと云う微細な銅パターンを形成することができる。ところが、実際には凹凸のある表面に、この厚さ精度を保って塗布することはかなり難しい。特に、凹部内の厚さにむらがあると、電気抵抗のむらとなり、析出速度のムラとなり、めっき金属の厚さムラとなって、導電パターンの均一性が低下すると云う問題点があった。
【0018】
また、この改良のさらなる改良が特開平6−283842号公報に開示されている。すなわち、剥離性層に電着可能な導電性のオルガノポリシロキサンを使用し、厚さを所望値で一定とするため電着塗布を利用した方法である。さらにこの発明では粘着層も電着性粘着物を使用して必要な場所にのみ粘着剤層を形成している。しかし、この方法は工程が長い上に、電着マスクの側面には剥離性層は形成されないので、上記の場合と同様に粘着剤との間で付着や損傷の問題が発生した。また、転写時の加圧等の機械的作用により、電着マスクが傷つき、作用が不完全になることもあり、問題であった。
【0019】
一方、配線パターンについては、例えば特公平6−101617号公報に提案されているように、導電性ペーストを使用し、印刷用語で云う水転写に類似の技術を利用する方法や、特公平2−41189号公報に提案されているようにゴム板へ印刷したものを転写する方法がある。
【0020】
何れも、最初は平面上に導電性ペーストのパターンを形成し、その後曲面に変形している。円筒形への曲面化は困難でないが、球面状への曲面化は難しい。また、その際に導電性ペーストの柔軟性を利用している。このため、変形が大きいと欠陥が発生してしまうので、曲率が大きいものは難しい上に、導電率が金属と比較してかなり低いと云う問題があった。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
第1に、導電性ぺーストでなく、金属のパターンを曲面体の表面に形成する方法を提供する。その場合、めっき法やエッチング法の様に、マスクパターンを毎回形成したり、除去する必要がない方法を提供する。
【0022】
第2に、金属パターンの形成が望まれる曲面体と被転写体との形状精度が低いと隙間が発生し、金属パターンの正常な転写が期待できないので、高い形状精度で正常な転写が行える方法を提供する。
【0023】
第3に、単に金属パターンを転写すると曲面の上に出っ張った状態に転写されるが、出来るだけ曲面内に埋まった状態になるほうが好ましい場合がある。例えば、筐体内面に形成する配線パターンがこの一例である。この問題点も解決できる方法を提供する。
【0024】
【課題を解決するための手段】
そのため、本発明は、金属パターンの形成が望まれる曲面体と似通った曲面を有する部材の前記曲面に形成した溝部を除く所要面を非導電性材料によって被覆し、この非導電性材料によって被覆されていない前記溝部をめっきしてめっき金属を形成し、このめっき金属を曲面体形成用型枠部材の表面に接着剤を介して転写し、この型枠部材で囲われた曲面体形成空隙に曲面体形成部材を注入硬化させ、この注入硬化で形成する曲面体に前記めっき金属を転写することを特徴とする曲面体表面における金属パターン形成方法を提供する。
【0025】
また、前記金属パターン形成方法において、溝部を含む所要面全面を被覆した非導電性材料を擦り現像して溝部の非導電性材料が除去されたことを特徴とする曲面体表面における金属パターン形成方法を提供する。
【0026】
つぎに、本発明に至るに際して検討した技術の基本的なプロセスの一例を図1に基づいて説明する。
金属パターンを形成したい被転写体1の所要曲面の逆型(メス型)2を作成する(図1(a))。
【0027】
逆型2の所要面をめっき可能状態(電気めっきなら導電性付与。無電解めっきなら活性化処理)且つめっき金属が容易に剥離する易剥離性表面3にする(図1(b))。
【0028】
易剥離性表面3上で所望の導電体パターン部に相当する部分以外の部分をめっきレジスト4で被覆する(図1(c))。
【0029】
易剥離性表面3の上に所望の金属をめっきしてめっき金属5を配設する(図1(d))。
【0030】
形成されためっき金属5を被転写体1の表面に転写用粘着剤6を塗布して位置合わせしながら押し付け、逆型2と被転写体1を引き剥がしてめっき金属5を被転写体1に転写する(図1(e))。
【0031】
めっき金属5を形成する逆型2は、被転写体1のメス型であるが、その作成方法は型取り用シリコーン樹脂を使用して、被転写体1から第1の型を取り、続いて第1の型から第2の型を取り(形状は被転写体に同じになる)、そこへ型取り用プラスチックを注入してメス型をとる方法がある。型取り用プラスチックとしては、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系のものが使用できる。
【0032】
また、逆型2をゴム弾性を有する素材、例えばウレタンゴム系、ニトリルゴムクロロプレンゴム等で形成し、その背面側を剛体で支持するように構成すると、図1(e)に示しためっき金属5を被転写体1の表面に押し付けて転写させる際に密着性が向上する利点がある。
【0033】
また、被転写体が射出成形法のように母型を使用して形成されるものであるときは、その母型から型取り用のシリコーン樹脂型を一度取れば、それが上記の第2の型に相当するものになる。
【0034】
もちろん、このように型取りせずに放電加工等の機械加工によってメス型を作成することも可能である。この場合、材質はかなり自由に選定することができる。例えば、ステンレス鋼を使用すれば、そのままめっき金属転写体として使用してもめっき金属が容易に剥離するものとなる。
【0035】
プラスチック製めっき金属転写体の表面をめっき金属が容易に剥離するものとする方法としては、真空蒸着法等で表面にニッケル、クロム等のめっき金属易剥離性金属層を形成する方法がある。しかし、曲面体にはあまり適した方法ではない。無電解めっき法によって形成するのが好適である。すなわち、プラスチックへの金属めっき法として知られる無電解めっき法を使用することができる。さらに、その無電解めっき層の上に電気めっき法でクロム等を析出させても良い。
【0036】
本発明者らはめっきマスク材を種々検討した結果、シリコーン樹脂が好ましいことを確認した。シリコーン樹脂としては、多くのものが使用可能であるが、好ましいものは、第1にパン焼き釜の内面に使用される付着防止用のものがある。焼き付け型としては例えば東芝シリコーン社のYSR6209がある。常温乾燥型としては、例えば同社製のTSR144がある。
【0037】
また、型取り用のものも使用可能である。例えば、縮合型の同社製TSE350,TSE3502,XE3508,TSE3562がある。また、付加重合タイプのものとして同社製のYE5623,TSE3450,TSE3466がある。またミラブルタイプのものも好ましい。何れにしても、硬度、粘着剤への不粘着性、引き裂き強さ等の物性によって選定する。
【0038】
しかし、シリコーン樹脂はめっき部には不要であるばかりか、めっき厚さのムラの原因になったりして却って不都合な場合が多いことも確認し、めっきマスク部だけをシリコーン樹脂とする方法を開発した。
【0039】
曲面体への所望のパターンの形成方法としては、凸曲面に対しては、レーザ加工法等のビームによる加熱分解除去法がある。例えば、シリコーン樹脂を一様な厚さに塗布した部材をX−Y−Zステージとゴニオヘッドを組み合わせた3軸加工ヘッドに取り付けてビームを照射し、所要部分を加熱分解して除去する。
一方、この方法が適用できない程度の曲率の凹曲面(すなわち最終的にめっきパターンを形成するのは凸曲面)については、逆型である凸曲面に所望のめっきマスクパターンを形成し、めっきを行い、このめっきパターンを先ず仮の凹曲面に転写し、さらに目的の凸曲面に転写する。
【0040】
利用可能なレーザの種類としては、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、ルビーレーザ、銅イオンレーザ、エキシマーレーザ等がある。
【0041】
また、いわゆるリフトオフ法によってシリコーン樹脂をパターンニングする方法がある。この方法を説明すると、先ず電着タイプのネガ型フォトレジスト(例えば、関西ペイント製ゾンンネEDUV376)を電着法で所定の厚さ、例えば20μmの厚さにコートし乾燥させる。そして、配線パターン以外の部分を、(1)黒インキを使用した手書き、(2)水圧転写法による黒インキの転写、(3)インキジェットプリンタによる黒インキの吹き付け等の方法で、フォトレジストの上面を黒くし、これを露光し、所定の現像液に漬け、黒インキで覆われた部分のフォトレジストを溶解・除去し、黒インキで覆われていなかった部分のフォトレジストだけを残す。続いて、シリコーン樹脂用のプライマを全面にスプレーし、さらに室温硬化型のシリコーンゴム剤を塗布し、一定厚さで硬化させる。最後に、硬化したフォトレジストを剥離液で剥離して、所望の電着パターン以外はシリコーンゴム剤で被覆された型を得る。
【0042】
さらにまた、いわゆる水なしオフセット版に使用される膨潤−剥離現像法も利用される。
【0043】
一方、めっき金属転写体の素材としては、第1に被転写体自体、または熱膨張率が被転写体とほぼ同一のものを使用し、その上に導電層である金属層や金属酸化物層を形成する。金属層の形成方法としては、無電解めっき法、電気めっき法、金属箔貼着法、真空蒸着法等の真空成膜法がある。また、ステンレス材はそのままで、めっき金属が容易に剥離する性質があるので、プレスや切削加工等の方法で成形できれば使用可能である。一般に表面を研磨して使用する。研磨した方がめっき金属が剥離し易くなる。
【0044】
また、金属酸化物層は、めっき金属が容易に剥離する性質を持ったものを使用し、中でも銅の酸化膜、ニッケルの酸化膜、クロムの酸化膜、チタンの酸化膜、スズの酸化膜、インジュームの酸化膜であるか、または上記金属の混合物または合金の酸化膜が好適である。その形成法としては、陽極酸化法、ゾルゲル法、熱酸化法、自然酸化法等がある。酸化物層の厚さは、めっき可能な電気電導度が得られる厚さが必要であり、そのためにも上記のものが好適である。抵抗値としては、シート抵抗で1kΩ以下が実用的である。
【0045】
〔検討技術よりなる例〕
図2および図3に基づいて、自動車の湾曲したリヤーガラスの凹面側にアンテナ用の配線パターンを形成した例を説明する。
【0046】
通常、リヤーガラス11は熱強化ガラス製であって、すでに所定の曲面に形成されている。但し、曲面の形状は曲面形成プロセスでの加熱状況の相違によって、各ガラスで若干異なる。
【0047】
多数のリヤーガラス11の中から、曲率が最大に近いものを選びだすか、意図的に作成して、その凹面側(裏面と記述することもある)にフッ素系の離型剤12を塗布し、リヤーガラス11の裏面と型枠13との間に型取り用のエポキシ樹脂を流し込んで硬化させ、厚さ約3mmの型14を作成した(図2(a))。
【0048】
エポキシ樹脂製の型14は若干の柔軟性があり、曲率が多少異なるリヤーガラス11に対しても、裏面から押し付ければガラス面に密着する。
【0049】
型14のリヤーガラス11と接した凸面側を洗浄し、無電解めっきの前処理(表面粗化、感受性化、活性化)を行った。次に、無電解ニッケルめっき15を2μm施した。さらにその上にニッケル電気めっき16を10μm施し、さらにクロムめっき17を3μm施した。さらにその上に、シリコーン樹脂用のプライマー(東芝シリコーン製ME151)18を塗布した(図2(b))。
【0050】
そして、プライマー18の上に室温硬化型シリコーン樹脂(東芝シリコーン製TSE3450)による厚さ100μmの層を、以下のようにして形成した。
【0051】
すなわち、最初に使用したリヤーガラス11の裏面に界面活性剤を塗布してシリコーン樹脂離型層19を形成し、このシリコーン樹脂離型層19と前記型14のクロムめっき17との間隙を、100μmに保ち、この間隙に前記室温硬化型シリコーン樹脂に所定量の硬化剤を加えたもの(シリコーン樹脂20と云う)を入れて硬化するまで放置した(図2(c))。
【0052】
なお、シリコーン樹脂離型層19と前記型14のクロムめっき17との間隙を精確に100μmに保つ方法としては、例えば図3に示したようにして型14を保持することで可能となる。31はクッション、32は高さ調節ねじである。
【0053】
室温硬化型シリコーン樹脂20が硬化するのを待ってリヤーガラス11と型14とを引き剥がすと、シリコーン樹脂20は型14の方に接着した状態で剥離した(図2(d))。
【0054】
型14の内面に支持具をセットし、レーザ加工用の支持具ごと3軸回転ヘッドに取り付け(何れも図示せず)、YAGレーザを使用して、シリコーン樹脂20の所望の部位を加熱分解し、残渣のシリカ粉末を水洗除去し、クロムめっき17に達する溝21を形成した。このようにして、所望のアンテナ配線パターン部にクロムめっき17が露出し、他の部分がシリコーン樹脂20で覆われているめっき金属転写体22を得た(図2(d))。
【0055】
このめっき金属転写体22の溝21部分に下記組成のめっき浴を使用して、ニッケル23を厚さ50μm析出した。次に、エポキシ系接着剤24をその表面に塗布したところ、シリコーン樹脂20の部分ははじかれて、ニッケル23の上に集まった。過剰の接着剤を拭き取った後に(図2(d))、金属パターンを形成すべきリヤーガラス11Nに位置合わせしながら、押しつけて、めっき金属転写体22を密着させた。エポキシ系接着剤24が硬化したのち、めっき金属転写体22を引き剥がすとニッケル23がリヤーガラス11N内面に転写し、金属パターンが形成された(図2(e))。
【0056】
ニッケルめっき浴 めっき条件
NiSO2・7H2O 240(g/l) pH 5
NiCl2・6H2O 45(g/l) 浴温 45℃
H3BO3 30(g/l) 電流密度 4(A/dm2)
【0057】
【発明の実施の形態】
つぎに本発明を図4に基づいて、携帯電話のABS樹脂製ケース41の内側に銅線による配線パターンを形成した実施の形態により説明する。
【0058】
先ず、適宜のケース41の所要部に、配線パターンに対応する溝42をレーザ加工法を用いて形成した。溝42の幅は配線パターンの幅とし、深さは配線パターンの厚さ(例えば30μm)より30μm深くした(図4(a))。
【0059】
ケ−ス21全面に酸素プラズマ処理を行って、表面を親水化した。そして、溝42の部分にアクリル系の吸水性樹脂43を埋め込んだのち、全面に室温硬化型シリコーン樹脂(東芝製TSE3540)に硬化剤を規定量添加したもの(以下これをシリコーン樹脂44と云う)を厚さ20μm塗布し、硬化させた(図4(b))。なお、このシリコーン樹脂44は、前記図2と同様の要領で所望の厚さ(例えば、5〜30μm程度に)形成される。
【0060】
シリコーン樹脂44の硬化を待って、オフセット印刷に使用する水なし版(例えば、東レTAP版)用の現像液に浸漬し、吸水性樹脂43が膨らんだ部分のシリコーン樹脂44をブラシで擦り現像し、さらに溝42部分の吸水性樹脂43を除去した(図4(c))。
【0061】
溝42の部分に無電解めっきを行うため、塩化スズ溶液による感受性化処理と続いて塩化パラジュームの溶液による活性化処理を行った。シリコーン樹脂44の部分は液をはじき、これらの処理を受付けなかった。
【0062】
溝42に無電解ニッケルめっき45を厚さ5μm施し、その上に無電解銅めっき46を厚さ30μm施した(図4(d))。
【0063】
その上にエポキシ系粘着剤(チバガイギー社アラルダイト)47を塗布した。粘着剤47はシリコーン樹脂44の部分からはじかれて、銅めっき46の上に集まって硬化した。さらにその上に未乾燥状態では接着性があるが、水分が蒸発して乾燥すると接着性を失う澱粉糊等の水溶性の接着剤48を塗布し、接着剤48がエポシキ系粘着剤47の上に集まり(図4(d))、半乾燥状態になった時、ケース41を製造するための注入用型49に嵌め込み(図4(e))、接着剤48が乾燥してから、ケース41を取り外すと銅めっき46等の金属パターンはその上のエポシキ系粘着剤47等と共に、注入型49の方へ転写した(図4(f))。
【0064】
そして、注入型49、50の間にケースを成形するためのABS樹脂51を注入し(図4(g))、冷却後、注入型49、50を開きABS樹脂51で新たに成形したケース41Nを取り出すと、ケース41の溝42に銅めっき46等して形成した配線パターンはケース41Nの方へ転写していた(図4(h))。
【0065】
接着剤48は水溶性であるので、必要であればこれを水洗除去し、生じた表面の凹み部に、ケースを成形するために使用したABS樹脂51を埋め込んで、銅めっき46等の金属パターンを被覆することもできる。
【0066】
なお、粘着剤47は、銅めっき46との密着性を考慮してエポシキ系を使用したが、他のタイプであっても良い。また、ケース41を成形する樹脂と同じタイプの粘着剤を使用することも当然考えられる。
【0067】
また、エポシキ系粘着剤47を使用しないで、直接水溶性粘着剤を塗布するようにしても良いが、その場合は型49、50から外した後で、水溶性粘着剤を水洗除去してから、その凹み部に樹脂を埋め込むことが必要となる。
【0068】
また、溝42に無電解銅めっき46を直接行うようにすることもできるが、図のように無電解ニッケルめっき45、無電解銅めっき46と二回に分けてめっきする方がめっきが安定して行える利点がある。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、金属パターンを形成する曲面体表面にめっきマスクを形成し、この曲面体表面に電気めっきや無電解めっきを直接行う従来技術と違って、めっきマスクをめっき金属転写体に形成するので、曲面体にめっきマスクを形成すると云う手間のかかる工程数が激減する。
【0070】
すなわち、従来法では製品の数と同数のめっきマスク作成工程が必要であったのに対し、めっき金属転写体を形成する時の1回で済む。めっき金属転写体の耐久性にもよるが、通常100回程度の転写には耐えられるので、めっきマスクを形成する工程が100分の1以下に減少する。
【0071】
また、従来法ではめっきマスクが製品上に残っては不都合な場合には剥離する必要があったが、本発明の方法では不要である。
【0072】
また、従来法では凸曲面への金属パターンの形成より凹曲面への金属パターンの形成の方が困難であったが、本発明は転写法であるので凹曲面への転写も極めて容易に行える。
【0073】
また、従来法では金属パターンを形成する曲面体をめっき液に浸漬する必要があり、このためめっき液による曲面体の汚染や、逆に曲面体によるめっき液の汚染の問題があり、適用可能な曲面体の材質が制限されていた。しかし、本発明の方法では曲面体の材質には殆ど制限がない。また、曲面体のサイズが大きく、その一部に金属パターンを形成する場合にも所要の金属パターン程度のめっき金属転写体を使用できるので、めっき浴槽のサイズ等が小さくで済む。
【0074】
また、従来法ではめっき金属と曲面体の間の接着力はそれほど強くない場合が多かったが、本発明の方法では金属パターンと曲面体を接着剤で接着するので、強い接着強度が得られる。
【0075】
また、本発明は、導電性ペーストを用いた従来の金属パターン形成方法と違ってめっき金属をパターン状に形成するので、電気抵抗が小さく、摩耗にも強いため、電気配線用の金属パターン形成に適する。
【0076】
さらに、曲面体の表面に形成した金属パターンを、簡単に埋め込んだ状態にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 検討技術の基本的プロセスの一例を示す説明図である。
【図2】 検討技術よりなる例を示す説明図である。
【図3】 検討技術よりなる例の一工程を示す説明図である。
【図4】 本発明の実施形態を示す説明図である。
【図5】 従来技術を示す説明図である。
【符号の説明】
1 被転写体
2 逆型
3 易剥離性表面
4 レジスト
5 めっき金属
6 転写用粘着剤
11、11N リヤーガラス
12 離型剤
13 型枠
14 型
15 無電解ニッケルめっき
16 ニッケル電気めっき
17 クロムめっき
18 プライマー
19 シリコーン樹脂離型層
20 シリコーン樹脂
21 溝
22 めっき金属転写体
23 ニッケル
24 エポキシ系接着剤
31 クッション
32 高さ調節ねじ
41、41N ケース
42 溝
43 吸水性樹脂
44 シリコーン樹脂
45 無電解ニッケルめっき
46 無電解銅めっき
47 エポキシ系粘着剤
48 (水溶性)接着剤
49、50 注入型
51 ABS樹脂
Claims (2)
- 金属パターンの形成が望まれる曲面体と似通った曲面を有する部材の前記曲面に形成した溝部を除く所要面を非導電性材料によって被覆し、この非導電性材料によって被覆されていない前記溝部をめっきしてめっき金属を形成し、このめっき金属を曲面体形成用型枠部材の表面に接着剤を介して転写し、この型枠部材で囲われた曲面体形成空隙に曲面体形成部材を注入硬化させ、この注入硬化で形成する曲面体に前記めっき金属を転写することを特徴とする曲面体表面における金属パターン形成方法。
- 溝部を含む所要面全面を被覆した非導電性材料を擦り現像して溝部の非導電性材料が除去されたことを特徴とする請求項1記載の曲面体表面における金属パターン形成方法。
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