JP3929576B2 - リン酸化1,5−アンヒドログルシトールに作用する酵素を産生する微生物、当該微生物が産生する酵素及びそれを使用したリン酸化1,5−アンヒドログルシトールの定量方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な微生物、それが産生する酵素及び当該酵素を使用した1,5−アンヒドログルシトールの定量方法に関する。より詳細には、リン酸化1,5−アンヒドロ−D−グルシトール類に作用する酵素を産生する微生物及び当該微生物が産生し、リン酸化1,5−アンヒドロ−D−グルシトール類を酸化し得る酵素、並びに当該酵素を使用したリン酸化1,5−アンヒドロ−D−グルシトールの定量方法に関し、かかる酵素及び定量方法は、臨床検査などにおける1,5−アンヒドロ−D−グルシトール(以下、1,5−AGという)の定量に有用である。
【0002】
【従来の技術】
1,5−AGはグルコース類似の構造を有するポリオールであり、ヒトでは血液、髄液、尿などに存在し、糖尿病患者では1,5−AG濃度が低下することが知られており、糖尿病の重要なマーカーとして注目されている。
従来、1,5−AGはガスクロマトグラフィーにより定量されていた(検査と技術、21巻、No.6、407〜412、1982年)。しかし、この方法で定量するには特別な装置が必要であり、また操作が繁雑で熟練を要するため、臨床検査の分野で多数の検体を測定するには支障があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、操作性の改善を目的として1,5−AGの定量に酵素を用いた方法が報告されている。例えば特開昭63−185397号には1,5−AGを酸化する酵素を用いて過酸化水素を産生させて1,5−AGを定量する方法が開示されている。しかし、このような酸化酵素を用いる方法は、生体試料中のビリルビンやアスコルビン酸などの還元性物質の影響を受けるという問題がある。更に、使用する酵素の1,5−AGに対する基質特異性が低いため、臨床検査のような各種/多量の糖類を含む試料から微量の1,5−AGのみを測定することは困難で、各種糖類の測定値に与える影響が大きい。特に、グルコースの正の影響が大きいため、これらの対策として、たとえば前記特開昭63−185397号や特開平7−231796号では、強塩基性陰イオン交換樹脂やホウ酸処理法が開示されている。また特開平5−304996号では同様にpHを7.2〜8.5に調整する方法が開示されている。しかし、これらの方法はいずれも操作が繁雑であるという欠点があり、自動分析装置を用いて多数の検体を迅速に測定するには難点を持っていた。
【0004】
このような臨床検査における実状を考慮して、自動化に適した検査方法の開発が行われ、特開平6−303995号、特開平6−189755号あるは特開平6−239704号に示すように、酸化還元酵素を用いた1,5−AGの測定方法が検討されてきた。しかし、各種/多量の糖類を含む臨床検体試料中から微量の1,5−AGを分別測定することは困難であった。特に、酸化酵素、例えば、ピラノースオキシダーゼを用いた方法では混在する糖類の測定値に与える影響が指摘されている(臨床化学、第23巻、第2号、188〜194、1994年)。このような実状は精密かつ高精度を要求される臨床検査の分野では改善されなければならない問題である。
【0005】
本発明者等はこのような従来の方法を改良して、臨床検査における検体試料の測定に適応できる方法、特に自動分析装置に利用できる方法について鋭意研究を行った。その結果、リン酸化1,5−AGに作用する微生物を見出し、またこの微生物からリン酸化1,5−AGに作用し得る酸化還元酵素の分離に成功した。そして、この酵素を、電子受容体の存在下にリン酸化1,5−AGに作用させて、その酸化還元物を測定することにより、リン酸化1,5−AGの測定が可能になることが確認され、更にその反応を利用することによって、1,5−AGを高精度で測定できることを見出した。詳しくは、リン酸基供与体の存在下で、1,5−AGにリン酸化酵素を作用させてリン酸化1,5−AGを生成し、次いで本発明の酵素を作用させることにより1,5−AGの測定が可能になる。
これらの方法は操作が繁雑でなく、反応条件が穏和なため自動分析装置での測定が可能となり、日常の臨床検査で多数の試料測定に有用であることが分かり、本発明を完成するに至った。本発明はかかる知見に基づいてなされたもので、リン酸化1,5−AGに作用する酸化還元酵素を産生する微生物及び当該微生物が産生する酸化還元酵素並びに当該酵素を使用したリン酸化1,5−AGの定量方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた本発明の要旨は、
▲1▼リン酸化1,5−AGに作用する酸化還元酵素を産生するデレヤ属に属する微生物;
▲2▼微生物が、デレヤ エスピー α-15(FERM BP−6140)である上記▲1▼記載の微生物;
▲3▼下記の理化学的性質及び生化学的性質を有する酵素;
a)リン酸化1,5−AGに作用する;
b)SDS−PAGEによる推定分子量が約67kDaである;
c)ゲル濾過法による推定分子量が約55kDaである;
d)10mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.0)で平衡化したDEAE型樹脂ゲルに吸着し、0.3M NaClを含有する同緩衝液で溶出する;
▲4▼リン酸化1,5−アンヒドログルシトールに、電子受容体の存在下、上記▲3▼記載の酵素を作用させることを特徴とするリン酸化1,5−アンヒドログルシトールの定量方法;
▲5▼1,5−アンヒドログルシトールをリン酸化し、生成したリン酸化1,5−アンヒドログルシトールに、電子受容体の存在下、上記▲3▼記載の酵素を作用させることを特徴とする1,5−アンヒドログルシトールの定量方法;
にある。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明による上記の微生物は、リン酸化1,5−AGに作用する酸化還元酵素を産生する。当該酵素はリン酸化1,5−AG及び1,5−AGの定量に有用である。
本発明の微生物の具体例であるデレヤ エスピー α-15株の菌学的性質は以下のとおりである。
(a)形態学的性状
1. 細胞の形及び大きさ: カン菌
2. 細胞の多形性の有無: なし
3. 運動性の有無: あり
4. 胞子の有無: なし
5. グラム染色性: 陰性
【0008】
(b)各培地における生育状態
1. 肉汁寒天平板培養: 乳白色/良好
2. 肉汁寒天斜面培養: 乳白色/良好
3. 肉汁液体培養: 乳白色/良好
【0009】
(c)生理学的性質
1. 硝酸塩の還元: 陽性
2. 脱窒反応: 陰性
3. VP反応: 陰性
4. インドールの生成: 陰性
5. 硫化水素の生成: 陰性
6. クエン酸の利用: 陰性
7. 色素の生成: 陰性
8. ウレアーゼ: 陰性
9. オキシダーゼ: 陰性
10. カタラーゼ: 陽性
11. 生育の範囲: pH6.0〜8.0/30℃付近
12. 酸素に対する態度: 好気性
13. O-Fテスト: 無変化型
14. 下記の糖類からの酸の生成
L−アラビノース: 陽性
D−キシロース : 陽性
D−グルコース : 陽性
D−マンノース : 陰性
D−フルクトース: 陽性
D−ガラクトース: 陽性
麦芽糖 : 陽性
ショ糖 : 陽性
乳糖 : 陽性
トレハロース : 陽性
D−ソルビット : 陽性
D−マンニット : 陽性
イノシット : 陽性
グリセリン : 陽性
【0010】
(d)その他の諸性質
1. β-ガラクトシダーゼ: 陽性
2. アルギニンジヒドラーゼ: 陰性
3. リジンデカルボキシラーセ: 陰性
4. オルニチンデカルボキシラーゼ: 陰性
5. トリプトファンデアミナーゼ: 陰性
6. ゼラチナーゼ: 陰性
7. α−メチル−D−グルコシドでの増殖: 陽性
8. NaClの要求性: 陽性
【0011】
以上の菌学的性質から、Bergey's Manual of Determinative Bacteriology (Ninth Edition)に基づいて検索したところ、本菌株はデレヤ(Deleya)属の細菌に比較的類似しているが、上記の諸性質と一致するものは見出されなかった。そこで、本発明菌はデレヤ属に属する新種の菌株と判断し、デレヤ エスピー α-15(Deleya sp. α-15)と命名した。また、この菌株は工業技術院生命工学工業技術研究所に「受託番号FERM BP−6140」として寄託されている。
【0012】
本発明菌の培養は、当該菌株が良好に生育できるものであれば、いかなる培地及び培養条件であってもよく、かかる培養により増殖させて必要量の菌体を得ることができる。上記の培地は、適当な炭素源、窒素源、無機イオン及びその他必要な成分を含有させることができる。
培地の炭素源としては、グルコース、α−メチル−D−グルコシドなどが利用できる。また、窒素源としては、ペプトン、酵母エキス、肉エキスなどの有機窒素源、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなどの無機窒素源が利用できる。更に、無機イオンとしては、リン酸イオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン、銅イオン、マンガンイオンなどが利用できる。また、必要に応じて、培地には、ビタミン類、細胞増殖因子などの成分を添加することもできる。
【0013】
本発明菌の培養方法としては、常法に準じ、振盪培養法などの液体培地を用いる培養方法、寒天培地などの固体培地を用いる培養方法が利用でき、好気的条件下に行われる。培養温度は25〜40℃、好ましくは30℃付近、培養途中のpHは6〜8、好ましくは7付近にて行われる。培養日数としては、菌体量、培地組成などに応じて適宜設定できるが、通常1〜2日、好ましくは1日である。
【0014】
本発明の酵素は、本発明の微生物の粉砕物の水溶性画分から得ることができる。即ち、本発明の酵素は、培養した本発明の微生物を適当な緩衝液(例えば、リン酸緩衝液等、pH6程度)中で慣用の方法(例えば、フレンチプレス等)で粉砕し、次いで遠心分離して夾雑物を除去した水溶性画分に含まれている。
上記の水溶性画分からの本発明の酵素の分離・精製は、慣用の蛋白質精製法(例えば、塩析、透析、遠心分離、電気泳動、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー等)に準じて行うことができる。より具体的には、上記の水溶性画分に硫酸アンモニウム等の塩を加え、夾雑蛋白を塩析して除去し、次いで透析により塩を除去し;得られた水溶液をDEAE型イオン交換クロマトグラフィーで精製し;溶出液をゲル濾過法で精製することにより、精製された本発明の酵素を得ることができる。
【0015】
かくして得られた本発明の酵素(以下、α−15 GDHという)は、下記の理化学的性質及び生化学的性質を有していた。
a)リン酸化1,5−AGに作用する;
b)SDS−PAGEによる推定分子量が約67kDaである;
c)ゲル濾過法による推定分子量が約55kDaである;
d)10mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.0)で平衡化したDEAE型樹脂ゲルに吸着し、0.3M NaClを含有する同緩衝液(pH6.0)で溶出する。
【0016】
本発明におけるリン酸化1,5−AGの定量方法は、リン酸化1,5−アンヒドログルシトールに、電子受容体の存在下、前記のα−15 GDHを作用させることからなり、その酵素反応を反応式(1)に示す。
【0017】
【化1】
【0018】
本発明に使用される電子受容体としては特に制限はなく、例えば、酸素、フェナジンメトサルフェート(PMS)、メトキシ−PMS(m-PMS)、ジクロロフェノールインドフェノール(DCIP)、フェロセン、フェロセン誘導体、ニトロテトラブルーテトラゾリウム塩(NTB)、チトクロームC、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(リン酸)酸化型(NAD(P))、フラビンモノヌクレオチド(FMN)などが例示される。
【0019】
本発明の方法を、下記の反応式(2)に示す例をもってより具体的に説明する。この反応において、リン酸化1,5−AGはα−15 GDHの作用により酸化されると共に共存するm-PMSは還元され、生成した還元型m-PMSでNTBを還元してフォルマザンを生成させて、これを波長570nmの吸光度で測定することにより、リン酸化1,5−AGの定量を行うことができる。
なお、リン酸化1,5−AGは、例えば、下記の反応式(3)、(4)又は(5)に示す方法を用いて、1,5−AGをリン酸基供与体の存在下でリン酸化することにより生成することができる。反応式(3)又は(4)に示す酵素反応は公知の反応であり、従来法に準じて実施することができ、使用される試薬組成物、反応条件などは従来法に準じて設定することができる。また、反応式(5)に示す反応は、文献(例えば、The Journal of Biological Chemistry Vol.269, No.26, 17537-17541, 1994; 同誌 Vol.270, No.51, 30453-30457, 1995)に記載されているADP-dependent Hexokinase(以下、ADP-dependent HKという)を用いる方法で、本反応では特に効率よく1,5−AGをリン酸化することができることを本発明者らは見出した。
【0020】
【化2】
【0021】
【化3】
【0022】
【化4】
【0023】
【化5】
【0024】
また、下記の反応式(6)に示される反応は本発明の他の例を示すもので、この例ではα−15 GDHの作用によりリン酸化1,5−AGは酸化されると共に共存するDCIPは還元されるので、波長600nmの吸光度で測定することにより、リン酸化1,5−AGの定量を行うことができる。
【0025】
【化6】
【0026】
本発明のリン酸化1,5−AGの定量方法は、適当な緩衝液中で行われ、用いられる酵素の使用量は、試料中のリン酸化1,5−AG濃度などに応じて適宜調整することができる。
この酵素反応に使用される試薬組成物の好ましい例としては、MES−NaOH緩衝液(50mM, pH5.5)、0.1mM m-PMS、0.01〜2.00mM DCIP、0.01〜10% BSA、1〜10 U/ml α−15 GDHなどが挙げられる。
また、1,5−AGをリン酸化する酵素反応で使用される試薬組成物の好ましい例としては、50〜100mM リン酸緩衝液(pH7.3)、0.1〜10mM MgCl2、10〜30mM KCl、2〜5mM ATP、0.1〜50mM PEP(フォスホエノールピルビン酸)、1〜20 U/ml PK(ピルビン酸キナーゼ)、10〜1000 U/ml HK(又はGK);又は50〜100mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)、0.1〜10mM MgCl2、10〜30mM KCl、2〜10mM ADP若しくはCDP、1〜1000 U/ml ADP-dependent HKなどが挙げられる。
【0027】
反応式(1)、(2)及び(6)の基質であるリン酸化1,5−AGは、反応式(3)、(4)又は(5)に示されるように、常法に準じ1,5−AGにグルコキナーゼ(GK)、ヘキソキナーゼ(HK)又はADP-dependent HKを作用させることにより生成させることができる。従って、反応式(3)、(4)又は(5)により、1,5−AGからリン酸化1,5−AGを生成させ、ついで反応式(1)、(2)又は(6)によりリン酸化1,5−AGを測定することにより1,5−AGを測定することが可能になる。
【0028】
上記の方法に用いるリン酸化酵素HK(Hexokinase, EC 2.7.1.1)、ADP-dependent HK(EC登録なし)及びGK(Glucokinase, EC 2.7.1.2)は特に限定されないが、Alternaria sp., Bacillus sp., Aerobacter aerogenes, Aspergillus oryzae, Bacillus stearothermopilus, Collectotrichum trifolii, Collectotrichum trunctum, Escherichia coli, Fusarium roseum, Gibberella fujikuroi, Leuconostoc mesenteroides, Saccharomyces cerevisiae, Pyrococcus furiosusなど微生物由来の酵素が適する。
また、血清などの試料中の1,5−AGを測定する場合は、特開平5−76397号に示す試料中のグルコースの消去法を用いることにより、多量のグルコースを含む血清試料中の1,5−AGを正確に測定することもできる。なお、血清試料中のグルコースの消去に関する方法はこれらに限定されるものではない。
【0029】
【発明の効果】
本発明菌はリン酸化1,5−AGを炭素源として利用できるので、本発明菌の産生する酵素はリン酸化1,5−AGに作用しリン酸化1,5−AGの酵素定量、ひいては1,5−AGの酵素定量法に有用である。
また、本発明の方法によれば、リン酸化1,5−AG及び1,5−AGを簡便にして且つ高精度で定量することができ、更に自動分析装置による測定が可能であるので、多数の試料を迅速に処理することができるという効果を奏する。
【0030】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
菌株の取得
唯一の炭素源としてα−メチル−D−グルコシドを添加したM9培地寒天プレート(培地1リットル当り、Na2HPO4 6g、KH2PO4 3g、NaCl 30g、NH4Cl 1g、α−メチル−D−グルコシド 4g、MgSO4 1mM、CaCl2 0.1ml、寒天15gを含有)に、日本各地で採取した海水試料を加え、30℃で好気的に培養した。コロニーを単離し、下記のグルコース デヒドロゲナーゼ(GDH)活性試験に付し、GDH活性を有するコロニーを選択・分離した。
GDH活性試験は、各コロニーの細胞を10mM リン酸緩衝液(3%NaCl含有、pH6.0)で3回洗浄した後、0.75mM 2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCIP)、0.75mM フェナジンメトサルフェート(PMS)及び100mM α−メチル−D−グルコシドを含有する25mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)に加え、DCIPの消色を観察し、消色が認められたコロニーはGDH活性を有すると判断した。
その結果、幾つかのGDH活性を有するコロニーが見出され、そのうちGDH活性が特に強い株を単離した(デレヤ エスピー α-15株)。
【0031】
実施例2
デレヤ エスピー α - 15株の培養
上記の菌株を、1リットル当り10gポリペプトン、1g酵母抽出物、30gNaCl、2g K2HPO4、10g α−メチル−D−グルコシドを含有する培地(pH7.0)中で、30℃にて12〜48時間好気的に培養した。培養細胞を分離し、3% NaClを含有する10mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.0)で洗浄した。1リットルの培養液から約10g(湿潤重量)の細胞を得た。
【0032】
実施例3
酵素(α−15 GDH)の分離・精製
後期対数期にある上記の培養細胞をフレンチプレス(1500kgf)で粉砕した後、超遠心(4℃、69800×g、90分間)して上清の水溶性画分(10mM リン酸カリウム緩衝液、pH6.0)を分離した。この画分に硫酸アンモニウムを30%となるように添加して析出物を廃棄し、水溶液は10mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.0)を用いて透析した。透析後の水溶液は、DEAE−トヨパールカラム(内径22mm×20cm)に付し、更に10mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.0)で平衡化したDEAE−5PWカラム(内径5mm×5cm)に付した。0〜0.45M NaClを含有する10mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.0)を用いた直線勾配法で溶出したところ、目的物質は0.3M NaClにて溶出した。
溶出液を、0.3M NaClを含有する10mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.0)で平衡化したTSKgel G3000カラム(内径8mm×30cm)に付し、GDH活性画分を分離して本発明の酵素を含む溶液を得た。
得られた酵素液を、8−25%ポリアクリルアミド勾配ゲル(ファルマシア社製、PhastGel gradient 8-25)を用いたSDS−電気泳動法(硝酸銀染色)で分子量を測定したところ、約67kDaであった。
また、前述のTSKgel G3000を用いたゲル濾過法で分子量を測定したところ、約55kDaであった。なお、分子量標準として、低分子量スタンダードキット(ファルマシア社製)を使用した。
【0033】
実施例4
本発明の酵素(α−15 GDH)を用いたリン酸化1,5−AGの定量
本発明の酵素の存在下、リン酸化1,5−AGを酸化すると共にDCIPを還元する酵素反応(反応式6)を利用し、種々の濃度のリン酸化1,5−AGを試料として検量線を作成した。即ち、本発明の酵素溶液20μlと50mM MES緩衝液(pH5.5)に0.1mM DCIP、0.1% BSAを含む試薬300μlを混和して37℃で5分間予備加温した後、生理的食塩水に種々の濃度のリン酸化1,5−AGを溶解した試料80μlを添加して消費されるDCIPを600nmの吸光度で測定した。リン酸化1,5−AG濃度と吸光度の関係を図1に示す。図1に示されるように、本発明の酵素を用いた測定法は良好な直線性を示した。
【0034】
実施例5
本発明の酵素(α−15 GDH)を用いた1,5−AGの定量
ヘキソキナーゼ(HK)又はグルコキナーゼ(GK)を用いて1,5−AGをリン酸化する酵素反応(反応式4)と、本発明の酵素を用いてリン酸化1,5−AGを酸化する酵素反応(反応式2)を組み合わせ、種々の濃度の1,5−AGを用いて検量線を作成した。即ち、0.1%トリトンX−100、0.1% BSA、10mM MgCl2、20mM PEP(フォスホエノールピルビン酸)、20mM KCl、5mM ATP、500 U/ml HK、10 U/ml PK(ピルビン酸キナーゼ)、1.3mM NTB(ニトロテロラブルーテトラゾリウム塩)及び0.13mM m-PMS(メトキシ-フェナジンメトサルフェート)を含む50mM トリス-塩酸緩衝液(pH8.0)の第一試薬320μに1,5−AG試料20μlを加え、37℃下で5分間予備加温した後、0.1%トリトンX−100、0.1% BSA、60 U/mlの本発明の酵素を含む50mM トリス-塩酸緩衝液(pH8.0)の第二試薬80μlを加え5分間加温した。その後、570nmにおける吸光度を測定した。図2にその検量線を示す。図2に示されるように、本発明の酵素を用いた測定法は良好な直線性を示した。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の酵素を用いたリン酸化1,5−AGの定量における検量線を示す図である。
【図2】本発明の酵素を用いた1,5−AGの定量における検量線を示す図である。
Claims (4)
- リン酸化1,5−アンヒドロ−D−グルシトールに作用する酸化還元酵素を産生するデレヤ属に属するデレヤ エスピー α - 15(FERM BP−6140)。
- 下記の理化学的性質及び生化学的性質を有する酵素。
a)電子受容体の存在下、リン酸化1,5−アンヒドロ−D−グルシトールを酸化する;
b)SDS−PAGEによる推定分子量が約67kDaである;
c)ゲル濾過法による推定分子量が約55kDaである;
d)10mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.0)で平衡化したDEAE型樹脂ゲルに吸着し、0.3M NaClを含有する同緩衝液で溶出する。 - リン酸化1,5−アンヒドログルシトールに、電子受容体の存在下、請求項2記載の酵素を作用させることを特徴とするリン酸化1,5−アンヒドログルシトールの定量方法。
- 1,5−アンヒドログルシトールをリン酸化し、生成したリン酸化1,5−アンヒドログルシトールに、電子受容体の存在下、請求項2記載の酵素を作用させることを特徴とする1,5−アンヒドログルシトールの定量方法。
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JPH10179143A (ja) | 1998-07-07 |
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