JP3924725B2 - 鉄道車両の駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両の駆動装置に係り、特に、発電手段と電力蓄積手段を設備し、この両手段の発生する電力を利用して鉄道車両を駆動する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄道路線において運行本数の比較的少ない地方路線では、ディーゼルエンジンを動力源とした気動車による非電化方式による旅客輸送が主流である。これは、気動車による運行方式では架線・変電設備等が必要ないため、電化路線に比べて地上側のインフラストラクチュアを簡素に構成できるため、保線作業に要する人的パワー・コストを抑えることができるためである。従来の気動車の機器制御については、例えば「非特許文献1」に述べられている。
図11に、一般的な従来の気動車の基本構成図を示す。エンジン1より出力された軸トルクは、液体変速機15に入力され、車両速度に応じて最も効率の良いエンジン回転数で加速するようにギヤ比を選択して最適トルクを出力する。転換器16は、車両の進行方向に応じてエンジンとは異なる回転方向とすることができ、前進および後進を可能とする。減速器6は、転換器16の軸トルク出力を回転数を減速することにより増幅して出力し、輪軸7を駆動して気動車を加減速する。
【0003】
【非特許文献1】
平成13年 鉄道技術連合シンポジウム予稿集 589頁 「気動車の力行制御に関する課題と対策」 滝 英将,村上 浩一,中村 英男 (財団法人 鉄道総合技術研究所)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の気動車では、保線作業に要する人的パワー・コストを抑えることができる一方で、車両側についてはエンジン・転換器など摺動部の多い機器を用いていることから、電車に比べると、メンテナンスに要する人的パワー・コストは増大する。また、従来の気動車では、省エネルギに有効な手段としてVVVFインバータ装置を用いた電車ではすでに一般的となっている電力回生ブレーキを用いることができないため、今後さらに厳しくなると考えられる環境対策におけるCO2の排出量削減目標を達成できない可能性がある。
【0005】
本発明の課題は、エンジンにより駆動される発電設備に電力蓄積設備を併用し、また、燃料電池設備に電力蓄積設備を併用し、メンテナンスに要する人的パワー・コストを抑制すると共に、地球環境にやさしい鉄道車両の駆動装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、直流電力発生手段の発生する直流電力と、電力蓄積手段の発生する直流電力をインバータ手段に供給するに際し、制御手段に電力蓄積手段に蓄積する蓄電量を車両速度に対する第1と第2の蓄電量管理基準パターンとして設定すると共に、第1と第2の蓄電量管理基準パターンに挾まれる領域と、第1の蓄電量管理基準パターンより電力蓄積手段の実蓄電量が少ない領域と、第2の蓄電量管理基準パターンより電力蓄積手段の実蓄電量が多い領域とを設定し、各領域における前記蓄電量管理基準パターンと電力蓄積手段の実蓄電量との差分に応じて直流電力発生手段の出力する直流電力量を制御し、一方、各領域毎に運転台からの運転指令に応じて直流電力発生手段と、インバータ手段と、電力蓄積手段の入出力の動作を制御する。
ここで、車両速度の減速時には、電動機がブレーキトルクを出力するようにインバータ手段を回生動作させ、インバータ手段が出力する回生電力を電力蓄積手段に吸収する。
ここで、電動機を複数台設け、複数の電動機の各々を駆動する複数のインバータ手段を備える。
ここで、電力蓄積手段は2次電池である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
図1は、本発明による鉄道車両の駆動装置の第1の実施形態の基本構成を示す。
エンジン1は、図示しない制御装置の指令に基づいた軸トルクを出力する。誘導発電機2は、エンジン1の軸トルクを入力としてこれを3相交流電力に変換して出力する。コンバータ装置3は、誘導発電機2から出力される3相交流電力を入力としてこれを直流電力に変換して出力する。ここで、コンバータ装置3は、図示しない制御装置からの電圧指令に基づいた直流電圧となるように電圧制御する。インバータ装置4は、コンバータ装置3から出力される直流電力を入力としてこれを3相交流電力に変換して出力する。誘導電動機5は、インバータ装置4が出力する3相交流電力を入力としてこれを軸トルクに変換して出力する。ここで、インバータ装置4は、誘導電動機5の出力トルクが図示しない制御装置の指令に基づいたトルクを出力するようにインバータ装置4の出力電圧および交流電流周波数を可変制御する。減速器6は、誘導電動機5の軸トルク出力を回転数の減速により増幅して出力し、輪軸7を駆動して電気車を加減速する。蓄電装置8は、コンバータ装置3とインバータ装置4間の直流部から直流電力を入力、あるいは、コンバータ装置3とインバータ装置4間の直流部に対して直流電力を出力するように接続する。
【0008】
以下、この第1の実施形態の動作を説明する。
電気車を加速するときは、インバータ装置4の入力電力をコンバータ装置3が出力する直流電力と蓄電装置8が出力する直流電力で負担する。すなわち、誘導電動機5の軸トルク出力を得るために必要なインバータ装置4の入力電力をコンバータ装置3が出力する直流電力だけで負担できない場合には、蓄電装置8が出力する直流電力で補足する。同様に、誘導電動機5の軸トルク出力を得るために必要なインバータ装置4の入力電力を蓄電装置8が出力する直流電力だけで負担できない場合には、コンバータ装置3が出力する直流電力で補足することも可能である。また、誘導電動機5で必要な出力軸トルクを得るために必要なインバータ装置4の入力電力に対してコンバータ装置3が出力する直流電力が過剰な場合には、蓄電装置8により余剰な電力を吸収する。特に、本実施形態によると、コンバータ装置3または蓄電装置8の一方から電力を得られない場合でも他方から電力を得ることができ、次駅まで退避する等の必要最小限の運転を継続できる。一方、電気車を減速するときは、誘導電動機5がブレーキトルクを出力するようにインバータ装置4を回生動作させ、インバータ装置4が出力する回生電力を蓄電装置8で吸収する。減速時に蓄電装置8で吸収した電力は、前述の電気車を加速するときに優先的に活用することにより、電気車の運転に必要なエネルギを有効活用できる。
なお、本実施形態では誘導発電機2、誘導電動機5を用いた構成としているが、これは特定の発電機あるいは電動機方式に限定するものではなく、例えば誘導発電機5の代わりに同期発電機を、誘導電動機の代わりに同期電動機を用いた構成でもよい。これは、以下に述べる各実施形態の説明においても同様である。
【0009】
図2は、本発明の第1の実施形態における蓄電装置の構成を示す。
蓄電装置8は、2次電池装置9、充放電制御装置10から構成し、コンバータ装置3とインバータ装置4間の直流部から直流電力を入力、あるいは、コンバータ装置3とインバータ装置4間の直流部に対して直流電力を出力するように接続する。また、蓄電装置8は複数の2次電池装置9を直列および並列に適当な接続とすることにより、必要な電力容量を確保する。充放電制御装置10は、蓄電装置8の出力端子と2次電池装置9の間に位置し、入力(充電)電流、出力(放電)電流の各々を制御する機能をもつ。
この構成により、以下の動作を実現する。
蓄電装置8に固有の蓄電能力で決まる充電限界値を実蓄電量が上回った場合、充放電制御装置10の入力(充電)電流を遮断してさらなる充電を抑止し、過充電による危険、故障等を回避する。このとき、出力(放電)電流は遮断せず、通常通りに出力(放電)することを可能とする。一方、蓄電装置8に固有の蓄電能力で決まる放電限界値を実蓄電量が下回った場合、充放電制御装置10の出力(放電)電流を遮断してさらなる放電を抑止し、過放電による蓄電装置8の故障等を回避する。このとき、入力(充電)電流は遮断せず、通常通りに入力(充電)することを可能とする。
なお、本実施形態では蓄電装置8を2次電池装置9を用いて構成しているが、これは特定の蓄電手段に限定するものではなく、2次電池装置9の代わりにキャパシタを用いた構成でもよい。
【0010】
図3は、本発明の第1の実施形態における制御装置の構成を示す。
エンジン1は、制御装置11の指令Seに基づいた軸トルクを出力する。誘導発電機2は、エンジン1の軸トルクを入力としてこれを3相交流電力に変換して出力する。コンバータ装置3は、誘導発電機2から出力される3相交流電力を入力としてこれを直流電力に変換して出力する。ここで、コンバータ装置3は、制御装置11からの指令Scに基づいた直流電圧となるように電圧制御する。インバータ装置4は、コンバータ装置3から出力される直流電力を入力としてこれを3相交流電力に変換して出力する。誘導電動機5は、インバータ装置4が出力する3相交流電力を入力としてこれを軸トルクに変換して出力する。ここで、インバータ装置4は、誘導電動機5の出力トルクが制御装置11からの指令Siに基づいたトルクを出力するようにインバータ装置4の出力電圧および交流電流周波数を可変制御する。減速器6は、誘導電動機5の軸トルク出力を回転数の減速により増幅して出力し、輪軸7を駆動して電気車を加減速する。
蓄電装置8は、図2に示す2次電池装置9、充放電制御装置10で構成する。制御装置11は、蓄電装置8の内部状態信号Sp1を入力として、エンジン1に運転指令Se、コンバータ装置3に運転指令Sc、インバータ装置4に運転指令Si、遮断器14a、14b、14c、14dに動作指令Sb、蓄電装置8内に配置する充放電制御装置10(図2)への動作指令Sp2を出力し、2次電池蓄電量を一定範囲内とするようにこれらの機器の総合的な動作状態を制御する。サービス電源用インバータ装置12は、コンバータ装置3とインバータ装置4間の直流電力を入力としてこれを3相交流電力に変換して出力する。さらにサービス電源用変圧器13により電気車の照明や空調機などに供給するサービス電源電圧に調整して各サービス機器に供給する。
遮断器14aは、コンバータ装置3とインバータ装置4の間の直流電力部のうちコンバータ装置3の入力端子の直近に配置し、制御装置11からの動作指令Sbに基づいてコンバータ装置3からインバータ装置4、蓄電装置8に供給する電力を遮断する。遮断器14bは、コンバータ装置3、インバータ装置4の間の直流電力部とサービス電源用インバータ装置12の間に配置し、制御装置11からの動作指令Sbに基づいてコンバータ装置3、インバータ装置4からサービス電源用インバータ装置12に供給する電力を遮断する。遮断器14cは、コンバータ装置3、インバータ装置4の間の直流電力部と蓄電装置8入出力端子の間に配置し、制御装置11からの動作指令Sbに基づいてコンバータ装置3、インバータ装置4間の直流電力部から蓄電装置8に供給する電力を遮断する。遮断器14dは、コンバータ装置3とインバータ装置4の間の直流電力部のうちインバータ装置4の入力端子の直近に配置し、制御装置11からの動作指令Sbに基づいてコンバータ装置3、蓄電装置8からインバータ装置4に供給する電力を遮断する。
【0011】
この構成により、以下の動作を実現する。
電気車を加速するときは、インバータ装置4の入力電力をコンバータ装置3が出力する直流電力と蓄電装置8が出力する直流電力で負担する。すなわち、誘導電動機5の軸トルク出力を得るために必要なインバータ装置4の入力電力をコンバータ装置3が出力する直流電力だけで負担できない場合には、蓄電装置8が出力する直流電力で補足する。同様に、誘導電動機5の軸トルク出力を得るために必要なインバータ装置4の入力電力を蓄電装置8が出力する直流電力だけで負担できない場合には、コンバータ装置3が出力する直流電力で補足することも可能である。また、誘導電動機5で必要な出力軸トルクを得るために必要なインバータ装置4の入力電力に対してコンバータ装置3が出力する直流電力が過剰な場合には、蓄電装置8により余剰な電力を吸収する。特に、この構成によると、コンバータ装置3または蓄電装置8の一方から電力を得られない場合でも他方から電力を得ることができ、次駅まで退避する等の必要最小限の運転を継続できる。
一方、電気車を減速するときは、誘導電動機5がブレーキトルクを出力するようにインバータ装置4を回生動作させ、インバータ装置4が出力する回生電力を蓄電装置8で吸収する。減速時に蓄電装置8で吸収した電力は、前述の電気車を加速するときに優先的に活用することにより、電気車の運転に必要なエネルギを有効活用できる。
エンジン1およびコンバータ装置3が故障等により動作しない間は、遮断器14aのオフによりコンバータ装置3への電力供給を遮断して機器の安全性を確保する。また、コンバータ装置3とインバータ装置4の間の直流電力部の電圧が過大になったとき、遮断器14aのオフによりコンバータ装置3への電力供給を遮断してコンバータ装置3の故障を防止する。
直流電力部の電圧がサービス電源用インバータ装置12の入力許容電圧を超過したとき、遮断器14bのオフによりコンバータ装置3、インバータ装置4からサービス電源用インバータ装置12に供給する電力を遮断して電源用インバータ装置12の故障を防止する。
蓄電装置8の蓄電許容量が超過したとき、あるいは、直流電力部との入出力電流が蓄電装置8の入出力許容電流値を超過したとき、遮断器14cのオフによりコンバータ装置3、インバータ装置4間の直流電力部から蓄電装置8に供給する電力を遮断して蓄電装置8の故障を防止する。
インバータ装置4が故障等により動作しない間は、遮断器14dのオフによりインバータ装置4への電力供給を遮断して誤動作を防止する。また、コンバータ装置3、蓄電装置8からインバータ装置4への供給電力が過大になったとき、遮断器14dのオフによりインバータ装置4への電力供給を遮断して故障を防止する。
【0012】
図4は、本発明の第2の実施形態を示す。
エンジン1は、制御装置11の指令に基づいた軸トルクを出力する。誘導発電機2は、エンジン1の軸トルクを入力としてこれを3相交流電力に変換して出力する。コンバータ装置3は誘導発電機2から出力される3相交流電力を入力としてこれを直流電力に変換して出力する。ここで、コンバータ装置3は、制御装置11からの電圧指令に基づいた直流電圧となるように電圧制御する。インバータ装置4a、4bは、コンバータ装置3から出力される直流電力を入力としてこれを3相交流電力に変換して出力する。電動機5a、5bは、それぞれインバータ装置4a、4bが出力する3相交流電力を入力としてこれを軸トルクに変換して出力する。ここで、インバータ装置4a、4bは、それぞれ誘導電動機5a、5bの出力トルクが制御装置11からのトルク指令に基づいたトルクを出力するようにインバータ装置4a、4bの出力電圧および交流電流周波数を可変制御する。減速器6a、6bは、それぞれ誘導電動機5a、5bの軸トルク出力は回転数の減速により増幅して出力し、それぞれ輪軸7a、7bを駆動して電気車を加減速する。
特に、本実施形態では、2つのインバータ装置4a、4bを備え、それぞれ減速器6a、電動機5a、輪軸7aおよび減速器6b、電動機5b、輪軸7bの別々の駆動系とすることにより、インバータ装置4a、4bのそれぞれが電力を供給する駆動系のうち、一方が動作しない場合でも他方から駆動力を得ることができ、次駅まで退避する等の必要最小限の運転を継続することができる。
蓄電装置8は、図2に示す2次電池装置9、充放電制御装置10で構成する。制御装置11は、蓄電装置8の内部状態信号Sp1を入力として、エンジン1に運転指令Se、コンバータ装置3に運転指令Sc、インバータ装置4a、4bに運転指令Si、遮断器14a、14b、14c、14d、14eに動作指令Sb、蓄電装置8内に配置する充放電制御装置10(図2)への動作指令Sp2を出力し、2次電池蓄電量を一定範囲内とするようにこれらの機器の総合的な動作状態を制御する。
サービス電源用インバータ装置12は、コンバータ装置3とインバータ装置4a、4b間の直流電力を入力としてこれを3相交流電力に変換して出力する。さらにサービス電源用変圧器13により電気車の照明や空調機などに供給するサービス電源電圧に調整して各サービス機器に供給する。
遮断器14aは、コンバータ装置3とインバータ装置4a、4bの間の直流電力部のうちコンバータ装置3の入力端子の直近に配置し、制御装置11からの動作指令Sbに基づいてコンバータ装置3からインバータ装置4a、4b、蓄電装置8に供給する電力を遮断する。遮断器14bは、コンバータ装置3、インバータ装置4a、4bの間の直流電力部とサービス電源用インバータ装置12の間に配置し、制御装置11からの動作指令Sbに基づいてコンバータ装置3、インバータ装置4a、4bからサービス電源用インバータ装置12に供給する電力を遮断する。遮断器14cは、コンバータ装置3、インバータ装置4a、4bの間の直流電力部と蓄電装置8入出力端子の間に配置し、制御装置11からの動作指令Sbに基づいてコンバータ装置3、インバータ装置4a、4b間の直流電力部から蓄電装置8に供給する電力を遮断する。遮断器14d、14eは、コンバータ装置3とインバータ装置4a、4bの間の直流電力部のうちインバータ装置4a、4bの入力端子の直近に配置し、制御装置11からの動作指令Sbに基づいてコンバータ装置3、蓄電装置8からインバータ装置4a、4bに供給する電力を遮断する。
【0013】
この構成により、以下の動作を実現する。
電気車を加速するときは、インバータ装置4a、4bの入力電力をコンバータ装置3が出力する直流電力と蓄電装置8が出力する直流電力で負担する。すなわち、誘導電動機5a、5bの軸トルク出力を得るために必要なインバータ装置4a、4bの入力電力をコンバータ装置3が出力する直流電力だけで負担できない場合には、蓄電装置8が出力する直流電力で補足する。同様に、誘導電動機5a、5bの軸トルク出力を得るために必要なインバータ装置4a、4bの入力電力を蓄電装置8が出力する直流電力だけで負担できない場合には、コンバータ装置3が出力する直流電力で補足することも可能である。また、誘導電動機5a、5bで必要な出力軸トルクを得るために必要なインバータ装置4a、4bの入力電力に対してコンバータ装置3が出力する直流電力が過剰な場合には、蓄電装置8により余剰な電力を吸収する。特に、この構成によると、コンバータ装置3または蓄電装置8の一方から電力を得られない場合でも他方から電力を得ることができ、次駅まで退避する等の必要最小限の運転を継続できる。
一方、電気車を減速するときは、誘導電動機5a、5bがブレーキトルクを出力するようにインバータ装置4a、4bを回生動作させ、インバータ装置4a、4bが出力する回生電力を蓄電装置8で吸収する。減速時に蓄電装置8で吸収した電力は、前述の電気車を加速するときに優先的に活用することにより、電気車の運転に必要なエネルギを有効活用できる。
特に、本実施形態では、2つのインバータ装置4a、4bを備え、それぞれ誘導電動機5a、減速器6a、輪軸7aおよび誘導電動機5b、減速器6b、輪軸7bの別々の駆動系とすることにより、インバータ装置4a、4bのそれぞれが電力を供給する駆動系のうち、一方が動作しない場合でも他方から駆動力を得ることができ、次駅まで退避する等の必要最小限の運転を継続することができる。エンジン1およびコンバータ装置3が故障等により動作しない間は、遮断器14aのオフによりコンバータ装置3への電力供給を遮断して機器の安全性を確保する。また、コンバータ装置3とインバータ装置4a、4bの間の直流電力部の電圧が過大になったとき、遮断器14aのオフによりコンバータ装置3への電力供給を遮断してコンバータ装置3の故障を防止する。
直流電力部の電圧がサービス電源用インバータ装置12の入力許容電圧を超過したとき、遮断器14bのオフによりコンバータ装置3、インバータ装置4a、4bからサービス電源用インバータ装置12に供給する電力を遮断して電源用インバータ装置12の故障を防止する。
蓄電装置8の蓄電許容量が超過したとき、あるいは、直流電力部との入出力電流が蓄電装置8の入出力許容電流値を超過したとき、遮断器14cのオフによりコンバータ装置3、インバータ装置4a、4b間の直流電力部から蓄電装置8に供給する電力を遮断して蓄電装置8の故障を防止する。
インバータ装置4a、4bが故障等により動作しない間は、遮断器14d、14eのオフによりインバータ装置4a、4bへの電力供給を遮断して誤動作を防止する。また、コンバータ装置3、蓄電装置8からインバータ装置4a、4bへの供給電力が過大になったとき、遮断器14d、14eのオフによりインバータ装置4a、4bへの電力供給を遮断して故障を防止する。
【0014】
図5は、本発明の蓄電装置を搭載した車両の走行状態によるエネルギ収支をもとに蓄電装置の蓄電量管理制御の一例を示す。
車両は、(A)の停止状態(あるいは低速状態)から力行により蓄電装置の蓄電エネルギをインバータ装置により運動エネルギに変換して(B)の走行状態(あるいは高速状態)に移る。一方、(B)の走行状態(あるいは高速状態)から回生ブレーキにより運動エネルギをインバータ装置により蓄電エネルギに変換して(A)の停止状態(あるいは低速状態)に移る。
理想的な平坦区間を仮定すれば、これらの運動エネルギと蓄電エネルギの和は速度によらず一定値である。しかし、実際は走行時のエネルギ損失(電気的および機械的エネルギ損失、曲線抵抗によるエネルギ損失勾配、勾配による位置エネルギの増減など)により、運動エネルギと蓄電エネルギの和は時々刻々変化する。蓄電量管理制御は、この時々刻々変化する運動エネルギと蓄電エネルギの和をできるだけ一定とするように蓄電エネルギ(蓄電装置の蓄電量)を管理する。この蓄電量管理制御により、ある速度から力行により仕様上の所定速度まで蓄電量下限値を下回らずに加速でき、また、ある速度から回生ブレーキにより停止まで蓄電量上限値を上回らずに減速できる。
図5に示している蓄電量管理基準パターンは、理想的な平坦区間を走行したときの蓄電装置の蓄電量の増減として決定する。すなわち、力行により変換した運動エネルギ分だけ蓄電量管理基準パターンは減少し、回生ブレーキにより変換された運動エネルギ分だけ蓄電量管理基準パターンが増加する。すなわち、蓄電量管理基準パターンと運動エネルギの和は概ね一定となる。
この蓄電量管理基準パターンよりも蓄電装置の実蓄電量が少ない場合、その走行状態の理想的蓄電量よりも不足していると判断し、蓄電量管理基準パターンと蓄電装置実蓄電量との差分値に基づいてコンバータ装置出力(エンジン出力)を増加して蓄電装置への充電を促進する。また、この蓄電量管理基準パターンに対して蓄電装置の実蓄電量が多い場合、その走行状態の理想的蓄電量よりも超過していると判断し、蓄電量管理基準パターンと蓄電装置実蓄電量との差分値に基づいてコンバータ装置出力(エンジン出力)を減少(あるいは停止)して蓄電装置の放電を促進する。これにより蓄電量管理基準パターンと蓄電装置実蓄電量との差分値を減少する方向に制御し、その走行状態における理想的蓄電量に近づく制御を実現する。
また、実際の制御では、エンジン、コンバータ装置の負担軽減のため、発電量増減の繰り返しを避ける必要がある。このため、蓄電量管理基準パターンに対して制御余裕を考慮し、発電量を増加するときと、減少するときの蓄電量管理基準パターンのセット値にヒステリシス特性を設ける。この制御余裕は、蓄電装置の蓄電容量の範囲内でエンジン、コンバータ装置の追従特性を考慮して決定する。
【0015】
図6は、本発明の蓄電量管理制御の詳細を示す。
充電許容限界線は、蓄電装置における蓄電量の物理的あるいは安全上の理由からこれ以上充電しないために設定する限界値、同じく放電許容限界線は、蓄電装置における蓄電量の物理的あるいは安全上の理由からこれ以上充電しないために設定する限界値である。また、蓄電量管理基準パターン(1)、蓄電量管理基準パターン(2)は、典型的なモデル区間を走行したときの蓄電装置の蓄電量の増減として決定する。このとき、力行により変換した運動エネルギ分だけ蓄電量管理基準パターンは減少し、回生ブレーキにより変換された運動エネルギ分だけ蓄電量管理基準パターンが増加する。すなわち、蓄電量管理基準パターン(1)、蓄電量管理基準パターン(2)と運動エネルギの和は概ね一定となる。蓄電量管理基準パターン(1)は速度Vmaxのときに放電許容限界線と一致するように設定する。同じく管理基準パターン(2)は速度零のときに充電許容限界線と一致するように設定する。ここで、Vmaxは車両としての最高運転速度に設定する。
なお、典型的なモデル区間としては、実路線を平均化した勾配零の理想区間を想定しているが、実路線データに基づいて複数の蓄電量管理基準パターン(1)、蓄電量管理基準パターン(2)を決定し、走行線区に応じてこれらを切り換えることにより、より効率的な蓄電量管理が可能である。
「領域A(速度Va以上)」すなわち蓄電量管理基準パターン(1)、(2)に挟まれた領域に実蓄電量がある場合
その走行状態における理想的蓄電量であると判断し、車両の走行状態にかかわらず電力を消費している補機消費電力分および走行損失(車両抵抗、機器損失など)を補填する平均的な電力のみをコンバータ装置出力(エンジン出力)として発生する。この時の補填出力は平均的な走行パターンを想定した走行シミュレーションにより決定するが、実際の走行中にリアルタイムで予測演算することも可能である。
ただし、駅出発直後などの低速域(「領域A 速度Va未満」)は、実際に必要なインバータ出力が少なく、また、駅構内静穏化のため、コンバータ装置出力(エンジン出力)は行わずに蓄電装置出力だけで走行する。
「領域B」すなわち蓄電量管理基準パターン(1)よりも実蓄電量が少ない場合
その走行状態の理想的蓄電量よりも不足していると判断し、蓄電量管理基準パターンと蓄電装置実蓄電量との差分値に基づいてコンバータ装置出力(エンジン出力)を増加して蓄電装置への充電を促進する。この時、エンジン出力を上記領域Aで設定したエンジン出力よりも大きくすることにより発電量を増やす。
「領域C」すなわち蓄電量管理基準パターン(2)に対して実蓄電量が多い場合
その走行状態の理想的蓄電量よりも超過していると判断し、蓄電量管理基準パターンと蓄電装置実蓄電量との差分値に基づいてコンバータ装置出力(エンジン出力)を減少(あるいは停止)して蓄電装置の放電を促進する。
これら「領域A」、「領域B」、「領域C」のようにコンバータ装置出力(エンジン出力)制御を行うことにより、蓄電装置実蓄電量を蓄電量管理基準パターン(1)と蓄電量管理基準パターン(2)に挟まれた領域内(蓄電量管理基準領域)に引き戻すように制御し、その走行状態における理想的蓄電量に近づく制御を実現する。
【0016】
図7は、本発明の蓄電量管理制御における各機器の動作を示す。
図6に示した蓄電状態「領域A」、「領域B」、「領域C」において、運転台からの運転指令(「力行」、「停止ブレーキ」、「惰行・停車」、「定速運転」、「抑速運転」)に応じてコンバータ/エンジン(CNV/ENG)、インバータ(INV)、蓄電装置(BTR)の動作がどのように移行するかを具体的に示す。また、各動作状態において、各機器間のエネルギの流れを矢印の方向で示す。
・蓄電量が「領域A」で速度Va未満では駅構内とみなし、運転指令に応じて次のように制御する。
力行時:エンジン/コンバータを「停止」したまま蓄電装置の出力のみで力行開始する。
停止ブレーキ時:速度によらず回生電力吸収を優先してエンジン/コンバータを「停止」する。
・蓄電量が「領域A」で速度Va以上では駅構内通過後とみなし、運転指令に応じて次のように制御する。
力行、定速運転時:蓄電装置は定常的に使用して補機消費電力と走行抵抗・機器損失分をエンジン出力で補足する。3段階発電出力(発電▲1▼〜▲3▼)ではその中間的な出力である「発電▲2▼」を割り当てる。
停止ブレーキ時:回生電力吸収を優先するため、エンジン/コンバータを「停止」する。
抑速運転時:エンジン/コンバータを「エネルギ吸収」運転して回生電力を吸収する。
・蓄電量が「領域B」のとき、運転指令に応じて次のように制御する。
力行、定速運転時:エンジン/コンバータは高出力運転「発電▲3▼」として蓄電装置の放電を抑制する。
停止ブレーキ、抑速ブレーキ時:エンジン/コンバータ「停止」で回生電力全てを吸収して蓄電量の回復を促進する。
惰行・停止時:エンジン/コンバータを中間出力運転「発電▲2▼」として蓄電量を回復する。
・「領域C」のとき、運転指令に応じて次のように制御する。
力行時:エンジン/コンバータは低出力運転「発電▲1▼」として補機消費電力補足など発電量は必要最小限とし、力行電力分は蓄電量出力のみとして放電を促進する。
停止ブレーキ時:基本的にエンジン/コンバータを「停止」として回生電力を2次電池で吸収するが、回生電力制限を行い、充電許容限界超過を防止する。
抑速運転時:エンジン/コンバータを「エネルギ吸収」運転して回生電力を吸収する。
定速運転時:一定速度を維持する出力のみ蓄電装置から補足してエンジン/コンバータを「停止」する。
惰行・停止時:次の力行時の蓄電量が十分あると判断してエンジン/コンバータを「停止」とする。
【0017】
図8は、本発明の第3の実施形態の基本構成を示す。
燃料電池17は、図示しない制御装置の指令に基づいて直流電力を出力する。出力調整装置18は、燃料電池17が出力する直流電力を入力とし、その電力を調整する機能を有する。ここで、出力調整装置18の出力電力は図示しない制御装置からの電圧指令に基づいた直流部電圧となるように電圧制御する。インバータ装置4は、出力調整装置18が出力する直流電力を入力としてこれを3相交流電力に変換して出力する。誘導電動機5は、インバータ装置4が出力する3相交流電力を入力としてこれを軸トルクに変換して出力する。ここで、インバータ装置4は、誘導電動機5の出力トルクが図示しない制御装置の指令に基づいたトルクを出力するようにインバータ装置の出力電圧および交流電流周波数を可変制御する。減速機6は、誘導電動機5の軸トルク出力を回転数の減速により増幅して出力し、輪軸7を駆動して電気車を加減速する。蓄電装置8は、出力調整装置18とインバータ装置4間の直流部から直流電力を入力、あるいは、出力調整装置18とインバータ装置4間の直流部に対して直流電力を出力できるように接続する。
【0018】
以下、この第3の実施形態の動作を説明する。
電気車を加速するときは、インバータ装置4の入力電力を出力調整装置18が出力する直流電力と蓄電装置8が出力する直流電力で負担する。すなわち、誘導電動機5の軸トルク出力を得るために必要なインバータ装置4の入力電力を出力調整装置18が出力する直流電力だけで負担できない場合には、蓄電装置8が出力する直流電力で補足する。同様に、誘導電動機5の軸トルク出力を得るために必要なインバータ装置4の入力電力を蓄電装置8が出力する直流電力だけで負担できない場合には、出力調整装置18が出力する直流電力で補足することも可能である。また、誘導電動機5で必要な出力軸トルクを得るために必要なインバータ装置4の入力電力に対し出力調整装置18が出力する直流電力が過剰な場合には、蓄電装置8により余剰な電力を吸収する。特に、この構成によると、出力調整装置18または蓄電装置8の一方から電力を得られない場合でも他方から電力を得ることができ、次駅まで退避する等の必要最小限の運転を継続できる。
一方、電気車を減速するときは、誘導電動機5がブレーキトルクを出力するようにインバータ装置4を回生動作させ、インバータ装置4が出力する回生電力を蓄電装置8で吸収する。減速時に蓄電装置8で吸収した電力は、前述の電気車を加速するときに優先的に活用することにより、電気車の運転に必要なエネルギを有効活用できる。
【0019】
図9は、本発明の第3の実施形態における制御装置の構成を示す。
燃料電池17は、制御装置11の指令Sfにより直流電力を出力する。出力調整装置18は、燃料電池17が出力する直流電力を入力とし、その電力を調整する機能を有する。ここで、出力調整装置18は、制御装置11の電圧指令Scに基づいた直流部電圧となるように電圧制御する。インバータ装置4は、出力調整装置18が出力する直流電力を入力としてこれを3相交流電力に変換して出力する。誘導電動機5は、インバータ装置4が出力する3相交流電力を入力としてこれを軸トルクに変換して出力する。ここで、インバータ装置4は、誘導電動機5の出力トルクが制御装置11からの指令Siに基づいたトルクを出力するようにインバータ装置の出力電圧および交流電流周波数を可変制御する。減速器6は、誘導電動機5の軸トルク出力は回転数の減速により増幅して出力し、輪軸7を駆動して電気車を加減速する。
蓄電装置8は、図2に示す2次電池装置9、充放電制御装置10で構成する。
制御装置11は、蓄電装置8の内部状態信号Sp1を入力として燃料電池17に運転指令Se、出力調整装置18に運転指令Sc、インバータ装置4に運転指令Si、遮断器14a、14b、14c、14dに動作指令Sb、蓄電装置8内に配置する充放電制御装置10(図2)への動作指令Sp2を出力し、2次電池蓄電量を一定範囲内とするようにこれらの機器の総合的な動作状態を制御する。
サービス電源用インバータ装置12は、出力調整装置18とインバータ装置4間の直流電力を入力としてこれを3相交流電力に変換して出力する。さらに変圧器13により電気車の照明や空調機などに供給するサービス電源電圧に調整して各サービス機器に供給する。
遮断器14aは、出力調整装置18とインバータ装置4の間の直流電力部のうち出力調整装置18の入力端子の直近に配置し、制御装置11からの動作指令Sbに基づいて出力制御装置18からインバータ装置4、蓄電装置8に供給する電力を遮断する。遮断器14bは、出力調整装置18、インバータ装置4の間の直流電力部とサービス電源用インバータ装置12の間に配置し、制御装置11からの動作指令Sbに基づいて出力調整装置18、インバータ装置4からサービス電源用インバータ装置12に供給する電力を遮断する。遮断器14cは、出力調整装置18、インバータ装置4の間の直流電力部と蓄電装置8入出力端子の間に配置し、制御装置11からの動作指令Sbに基づいて出力調整装置18、インバータ装置4間の直流電力部から蓄電装置8に供給する電力を遮断する。遮断器14dは、出力調整装置18とインバータ装置4の間の直流電力部のうちインバータ装置4の入力端子の直近に配置し、制御装置11からの動作指令Sbに基づいて出力制御装置18、蓄電装置8からインバータ装置4に供給する電力を遮断する。
【0020】
この構成により、以下の動作を実現する。
電気車を加速するときは、インバータ装置4の入力電力を出力調整装置18が出力する直流電力と蓄電装置8が出力する直流電力で負担する。すなわち、誘導電動機5で必要な軸トルク出力を得るためにインバータ装置4の入力電力を出力調整装置18が出力する直流電力だけでは負担できない場合には、蓄電装置8が出力する直流電力が補足し、逆に誘導電動機5で必要な出力軸トルクを得るために必要なインバータ装置4の入力電力に対し出力調整装置18が出力する直流電力が過剰な場合には、蓄電装置8により余剰な電力を吸収する。また、出力調整装置18または蓄電装置8のいずれか一方から電力を得られない場合でも、他方から電力を得ることができるため、次駅まで退避する等の必要最小限の運転を継続することができる。
また、電気車を減速するときは、誘導電動機5がブレーキトルクを出力するようにインバータ装置4を回生動作させ、インバータ装置4が出力する回生電力を蓄電装置8で吸収する。この動作を行うことで、減速のときに蓄電装置8で吸収した電力は、前述のように電気車を加速する場面で優先的に活用することにより、電気車の運転に必要なエネルギを有効活用できる。
燃料電池17および出力調整装置18が故障等により動作しない間は、遮断器14aのオフにより出力調整装置18への電力供給を遮断して機器の安全性を確保する。また、出力調整装置18とインバータ装置4の間の直流電力部の電圧が過大になったとき、遮断器14aのオフにより出力調整装置18への電力供給を遮断して出力調整装置18の故障を防止する。
直流電力部の電圧がサービス電源用インバータ装置12の入力許容電圧を超過したとき、遮断器14bのオフにより出力調整装置18、インバータ装置4からサービス電源用インバータ装置12に供給する電力を遮断して電源用インバータ装置12の故障を防止する。
蓄電装置8の蓄電許容量が超過したとき、あるいは、直流電力部との入出力電流が蓄電装置8の入出力許容電流値を超過したとき、遮断器14cのオフにより出力調整装置18、インバータ装置4間の直流電力部から蓄電装置8に供給する電力を遮断して蓄電装置8の故障を防止する。
インバータ装置4が故障等により動作しない間は、遮断器14dのオフによりインバータ装置4への電力供給を遮断して誤動作を防止する。また、出力調整装置18、蓄電装置8からインバータ装置4への供給電力が過大になったとき、遮断器14dのオフによりインバータ装置4への電力供給を遮断して故障を防止する。
【0021】
図10は、本発明の第4の実施形態を示す。
燃料電池17は、制御装置11の指令Sfにより直流電力を出力する。出力調整装置18は、燃料電池17が出力する直流電力を入力とし、その電力を調整する機能を有する。ここで、出力調整装置18は、制御装置11の電圧指令Scに基づいた直流部電圧となるように電圧制御する。インバータ装置4a、4bは、出力調整装置18から出力される直流電力を入力としてこれを3相交流電力に変換して出力する。電動機5a、5bは、それぞれインバータ装置4a、4bが出力する3相交流電力を入力としてこれを軸トルクに変換して出力する。ここで、インバータ装置4a、4bは、それぞれ誘導電動機5a、5bの出力トルクが制御装置11からのトルク指令に基づいたトルクを出力するようにインバータ装置4a、4bの出力電圧および交流電流周波数を可変制御する。減速器6a、6bは、それぞれ誘導電動機5a、5bの軸トルク出力は回転数の減速により増幅して出力し、それぞれ輪軸7a、7bを駆動して電気車を加減速する。
特に、本実施形態では、2つのインバータ装置4a、4bを備え、それぞれ減速器6a、電動機5a、輪軸7aおよび減速器6b、電動機5b、輪軸7bの別々の駆動系とすることにより、インバータ装置4a、4bのそれぞれが電力を供給する駆動系のうち、一方が動作しない場合でも他方から駆動力を得ることができ、次駅まで退避する等の必要最小限の運転を継続することができる。
蓄電装置8は、図2に示す2次電池装置9、充放電制御装置10で構成する。
制御装置11は、蓄電装置8の内部状態信号Sp1を入力として、燃料電池17に運転指令Se、出力調整装置18に運転指令Sc、インバータ装置4a、4bに運転指令Si、遮断器14a、14b、14c、14d、14eに動作指令Sb、蓄電装置8内に配置する充放電制御装置10(図2)への動作指令Sp2を出力し、2次電池蓄電量を一定範囲内とするようにこれらの機器の総合的な動作状態を制御する。
サービス電源用インバータ装置12は、出力調整装置18とインバータ装置4a、4b間の直流電力を入力としてこれを3相交流電力に変換して出力する。さらにサービス電源用変圧器13により電気車の照明や空調機などに供給するサービス電源電圧に調整して各サービス機器に供給する。
遮断器14aは、出力調整装置18とインバータ装置4a、4bの間の直流電力部のうち出力調整装置18の入力端子の直近に配置し、制御装置11からの動作指令Sbに基づいて出力調整装置18からインバータ装置4a、4b、蓄電装置8に供給する電力を遮断する。遮断器14bは、出力調整装置18、インバータ装置4a、4bの間の直流電力部とサービス電源用インバータ装置12の間に配置し、制御装置11からの動作指令Sbに基づいて出力調整装置18、インバータ装置4a、4bからサービス電源用インバータ装置12に供給する電力を遮断する。遮断器14cは、出力調整装置18、インバータ装置4a、4bの間の直流電力部と蓄電装置8入出力端子の間に配置し、制御装置11からの動作指令Sbに基づいて出力調整装置18、インバータ装置4a、4b間の直流電力部から蓄電装置8に供給する電力を遮断する。遮断器14d、14eは、出力調整装置18とインバータ装置4a、4bの間の直流電力部のうちインバータ装置4a、4bの入力端子の直近に配置し、制御装置11からの動作指令Sbに基づいて出力調整装置18、蓄電装置8からインバータ装置4a、4bに供給する電力を遮断する。
【0022】
この構成により、以下の動作を実現する。
電気車を加速するときは、インバータ装置4a、4bの入力電力を出力調整装置18が出力する直流電力と蓄電装置8が出力する直流電力で負担する。すなわち、誘導電動機5a、5bの軸トルク出力を得るために必要なインバータ装置4a、4bの入力電力を出力調整装置18が出力する直流電力だけで負担できない場合には、蓄電装置8が出力する直流電力で補足する。同様に、誘導電動機5a、5bの軸トルク出力を得るために必要なインバータ装置4a、4bの入力電力を蓄電装置8が出力する直流電力だけで負担できない場合には、出力調整装置18が出力する直流電力で補足することも可能である。また、誘導電動機5a、5bで必要な出力軸トルクを得るために必要なインバータ装置4a、4bの入力電力に対し出力調整装置18が出力する直流電力が過剰な場合には、蓄電装置8により余剰な電力を吸収する。特に、この構成によると、出力調整装置18または蓄電装置8の一方から電力を得られない場合でも他方から電力を得ることができ、次駅まで退避する等の必要最小限の運転を継続できる。
一方、電気車を減速するときは、誘導電動機5a、5bがブレーキトルクを出力するようにインバータ装置4a、4bを回生動作させ、インバータ装置4a、4bが出力する回生電力を蓄電装置8で吸収する。減速時に蓄電装置8で吸収した電力は、前述の電気車を加速するときに優先的に活用することにより、電気車の運転に必要なエネルギを有効活用できる。
特に、本実施形態では、2つのインバータ装置4a、4bを備え、それぞれ誘導電動機5a、減速器6a、輪軸7aおよび誘導電動機5b、減速器6b、輪軸7bの別々の駆動系とすることにより、インバータ装置4a、4bのそれぞれが電力を供給する駆動系のうち、一方が動作しない場合でも他方から駆動力を得ることができ、次駅まで退避する等の必要最小限の運転を継続することができる。
燃料電池17および出力調整装置18が故障等により動作しない間は、遮断器14aのオフにより出力調整装置18への電力供給を遮断して機器の安全性を確保する。また、出力調整装置18とインバータ装置4a、4bの間の直流電力部の電圧が過大になったとき、遮断器14aのオフにより出力調整装置18への電力供給を遮断して出力調整装置18の故障を防止する。
直流電力部の電圧がサービス電源用インバータ装置12の入力許容電圧を超過したとき、遮断器14bのオフにより出力調整装置18、インバータ装置4a、4bからサービス電源用インバータ装置12に供給する電力を遮断して電源用インバータ装置12の故障を防止する。
蓄電装置8の蓄電許容量が超過したとき、あるいは、直流電力部との入出力電流が蓄電装置8の入出力許容電流値を超過したとき、遮断器14cのオフにより出力調整装置18、インバータ装置4a、4b間の直流電力部から蓄電装置8に供給する電力を遮断して蓄電装置8の故障を防止する。
インバータ装置4a、4bが故障等により動作しない間は、遮断器14d、14eのオフによりインバータ装置4a、4bへの電力供給を遮断して誤動作を防止する。また、出力調整装置18、蓄電装置8からインバータ装置4a、4bへの供給電力が過大になったとき、遮断器14d、14eのオフによりインバータ装置4a、4bへの電力供給を遮断して故障を防止する。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、摺動部の多いエンジンによる発電設備に電力蓄積手段を併用することにより、また、燃料電池設備に電力蓄積手段を併用することにより、発電設備に対するメンテナンスが軽減するので、メンテナンスに要する人的パワー・コストを抑制することができる。また、発電設備による排気ガスの発生が減少するため、地球環境にやさしい装置の実現が可能となる。
また、発電設備または燃料電池設備に電力蓄積手段を併用することにより、発電設備および燃料電池設備または電力蓄積手段の一方から電力を得られない場合でも他方から電力を得ることができ、次駅まで退避する等の必要最小限の運転を継続することができる。
また、電力蓄積手段に蓄電量管理基準パターンを設定し、このパターンによる蓄電量と電力蓄積手段の実蓄電量との差分値を減少する方向に制御することにより、電力蓄積手段には電気車の走行状態における理想的蓄電量に近づく制御を行うことができる。
また、電気車を減速するときは、回生電力を電力蓄積手段に吸収するので、電気車を加速するときにこの吸収した回生電力を優先的に活用することにより、電気車の運転に必要なエネルギを有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による鉄道車両の駆動装置の第1の実施形態の基本構成図
【図2】本発明の蓄電装置の構成図
【図3】本発明の第1の実施形態における制御装置の構成図
【図4】本発明の第2の実施形態
【図5】本発明の蓄電量管理制御の一例を示す図
【図6】本発明の蓄電量管理制御の詳細を示す図
【図7】本発明の蓄電量管理制御の各機器の動作を示す図
【図8】本発明の第3の実施形態の基本構成図
【図9】本発明の第3の実施形態における制御装置の構成図
【図10】本発明の第4の実施形態
【図11】従来の気動車の基本構成を示す図
【符号の説明】
1…エンジン、2…誘導発電機、3…コンバータ装置、4…インバータ装置、5…電動機、6…減速機、7…輪軸、8…蓄電装置、9…2次電池装置、10…充放電制御装置、11…制御装置、12…サービス電源用インバータ装置、13…変圧器、14…遮断器、15…液体変速機、16…転換機、17…燃料電池、18…出力調整装置
Claims (5)
- エンジンにより駆動される発電手段が発生する交流電力を直流電力に変換するコンバータ手段を有する直流電力発生手段と、前記直流電力を交流電力に変換するインバータ手段と、前記直流電力を充電および放電する機能を持つ電力蓄積手段と、これらの各手段を制御する制御手段と、鉄道車両を駆動する電動機を備える鉄道車両の駆動装置において、
前記直流電力発生手段の発生する直流電力と、前記電力蓄積手段の発生する直流電力を前記インバータ手段に供給するに際し、前記制御手段に前記電力蓄積手段に蓄積する蓄電量を車両速度に対する第1と第2の蓄電量管理基準パターンとして設定すると共に、前記第1と第2の蓄電量管理基準パターンに挾まれる領域と、前記第1の蓄電量管理基準パターンより前記電力蓄積手段の実蓄電量が少ない領域と、前記第2の蓄電量管理基準パターンより前記電力蓄積手段の実蓄電量が多い領域とを設定し、
前記各領域における前記蓄電量管理基準パターンと前記電力蓄積手段の実蓄電量との差分に応じて前記直流電力発生手段の出力する直流電力量を制御し、
一方、前記各領域毎に運転台からの運転指令に応じて前記直流電力発生手段と、前記インバータ手段と、前記電力蓄積手段の入出力の動作を制御することを特徴とする鉄道車両の駆動装置。 - 燃料電池と出力調整手段を有する直流電力発生手段と、前記直流電力発生手段の発生する直流電力を交流電力に変換するインバータ手段と、前記直流電力を充電および放電する機能を持つ電力蓄積手段と、これらの各手段を制御する制御手段と、鉄道車両を駆動する電動機を備え、
前記直流電力発生手段の発生する直流電力と、前記電力蓄積手段の発生する直流電力を前記インバータ手段に供給するに際し、前記制御手段に前記電力蓄積手段に蓄積する蓄電量を車両速度に対する第1と第2の蓄電量管理基準パターンとして設定すると共に、前記第1と第2の蓄電量管理基準パターンに挾まれる領域と、前記第1の蓄電量管理基準パターンより前記電力蓄積手段の実蓄電量が少ない領域と、前記第2の蓄電量管理基準パターンより前記電力蓄積手段の実蓄電量が多い領域とを設定し、
前記各領域における前記蓄電量管理基準パターンと前記電力蓄積手段の実蓄電量との差分に応じて前記直流電力発生手段の出力する直流電力量を制御し、
一方、前記各領域毎に運転台からの運転指令に応じて前記直流電力発生手段と、前記インバータ手段と、前記電力蓄積手段の入出力の動作を制御することを特徴とする鉄道車両の駆動装置。 - 請求項1または請求項2において、車両速度の減速時には、前記電動機がブレーキトルクを出力するように前記インバータ手段を回生動作させ、前記インバータ手段が出力する回生電力を前記電力蓄積手段に吸収することを特徴とする鉄道車両の駆動装置。
- 請求項1から請求項3のいずれかにおいて、前記電動機を複数台設け、前記複数の電動機の各々を駆動する複数のインバータ手段を備えることを特徴とする鉄道車両の駆動装置。
- 請求項1から請求項4のいずれかにおいて、前記電力蓄積手段は2次電池であることを特徴とする鉄道車両の駆動装置。
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