JP3917388B2 - 潤滑油組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スピンドルモータ等の回転体の軸受部に用いられる動圧流体軸受用の潤滑油組成物(以下、潤滑油とよぶ)に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハードディスク装置等のディスクを回転して記録再生する装置、あるいはレーザビームプリンタのポリゴンミラー回転用モータ等では、より高速回転が要求されるだけでなく、回転精度の向上や、小型化、低消費電力化が求められている。このため、これらに用いられるスピンドルモータでは、回転性能のより一層の向上と小型化、および低コスト化を図るために軸受部を動圧流体軸受に置きかえる取組みがなされている。動圧流体軸受においては、動圧溝の形状や精度と同時に潤滑油の特性が信頼性を含めた軸受性能に非常に大きく影響する。
【0003】
すなわち、スピンドルモータの起動直後や停止直前で動圧が不十分なときには、回転軸と軸受部との間の金属接触を抑制するような境界潤滑特性が要求される。一方、連続運転時には回転に伴う発熱が生じても、潤滑油の酸化、分解、および蒸発等の劣化の少ない安定した流体潤滑特性が要求される。さらに、モータの駆動電力を低減するためには、摩擦係数の小さい低粘度の潤滑油も求められている。
【0004】
従来、動圧流体軸受に用いられてきた潤滑油としては、低温での流動性が優れているDOS(セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル)を代表とするジエステルや、高粘度で安定性の大きなトリメチロールプロパンと1価脂肪酸のトリエステルがある。またスピンドルモータの低温始動性の改善と回転トルク低減のために、例えば特開2000−336383号公報では、潤滑油の基油をネオペンチルグリコールのカプリル酸とカプリン酸の混合エステルとして低粘度、低蒸発損失で、かつ、体積抵抗率の低い潤滑油が示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、潤滑油の蒸発、酸化、および分解等の劣化に対する安定性を向上させるためには、潤滑油に用いる基油として分子量が大きく、分子が分解しにくい高粘度の材料が適している。しかしながら、高粘度の基油を用いた潤滑油では、軸受損失が大きくなり、スピンドルモータの消費電力が大きくなるだけでなく、軸受部自体での発熱も大きくなるので潤滑油の劣化を促進させる。また、粘度は、特に低温で著しく増加するので、低温での軸受損失はさらに大きくなり、極端な場合にはスピンドルモータを起動できなくなることも生じる。例えば、従来用いられてきたジエステルやトリエステルの40℃における粘度は10〜30mPa・sであり、0℃では50〜80mPa・sとさらに大きくなり、このような粘度の潤滑油では軸受損失が大きくなり、低消費電力化を実現できない。
【0006】
さらに、ジエステルは加水分解が生じ易く、また、トリエステルは長時間の使用で重合し高粘度化する性質がある。日本機械学会発行の論文「流体軸受モータの軸受温度計測」(IIP2001情報・知能・精密機器部門講演会 講演論文集、社団法人 日本機械学会発行)に記載されているように、スピンドルモータの回転速度が1.5m/秒を超えるような高速回転領域では、モータ部のコイルによる発熱が軸受部に伝導し、軸受部の温度が100℃を超えることが報告されている。このような温度条件でジエステルやトリエステルを含む潤滑油を用いると、潤滑油の加水分解や重合化が促進されるため、上記のような高速回転条件では動圧流体軸受を安定して長期間使用できなかった。
【0007】
一方、低粘度かつ低蒸発損失の潤滑油として、例えば特開2000−336383号公報では、ネオペンチルグリコールのカプリル酸とカプリン酸の混合エステルを基油として用いた潤滑油が示されている。しかしながら、混合剤の一つであるネオペンチルグリコールとカプリル酸とのエステルは低粘度であり、この低粘度エステル成分の分解により、潤滑油全体の劣化が促進され、粘度変化が生じる。このような粘度変化が生じると、スピンドルモータの回転異常やトルクの増加が起こるため、信頼性を損なうだけでなく、低消費電力化も実現できない。
【0008】
本発明は、低温においても低粘度で、かつ、粘度変化と蒸発損失が小さく、しかも高温まで酸化、分解が生じ難く、安定な動圧流体軸受用の潤滑油を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の潤滑油組成物は、回転軸と軸受との間に充填されて動圧を発生し前記回転軸を非接触支持する動圧流体軸受に使用される潤滑油組成物の基油が、ポリオールと脂肪酸からなる(化3)の構造で表されるエステル系からなり、前記基油の0℃における粘度が48mPa・s以下で、かつ40℃における粘度が12mPa・s以下であって、
前記基油が(化3)で表され、アルキル基であるRがC 7 15 、C 8 17 、またはC 9 19 から選ばれた1種類であり、
さらにはヒンダードフェノール系酸化防止剤もしくはヒンダードアミン系酸化防止剤のうち、少なくとも1種を0.1重量%以上添加剤として含んでおり、
前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、その構造中に少なくとも1つの(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)を含んでおり、
またさらには(化4)の構造で示されるトリグリセライドを5重量%以下添加剤として含んでおり、
前記(化4)で表されるトリグリセライドのR1、R2、およびR3は同一構造あるいは少なくとも1つが異なる構造を有し、xの値が15から21、yの値が29から43、およびzの値が0から1の範囲のそれぞれ整数値であることを特徴とする。
【化3】
Figure 0003917388
ただし、Rはアルキル基である。
【化4】
Figure 0003917388
ただし、R1、R2、およびR3はCxHyOzからなる不飽和もしくは飽和の直鎖構造あるいは分岐構造である。
【0013】
このような潤滑油の組成とすることにより、低温状態まで低粘度を維持でき、かつ、高温でも分解や酸化を生じないので、低温で使用しても軸受損失が小さく、また、潤滑油の温度が高くなる高速回転でも安定して使用できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の動圧流体軸受に用いられる潤滑油は、その基油がポリオールと脂肪酸からなる(化3)の構造で表されるエステル系からなり、0℃における粘度が48mPa・s以下で、かつ40℃における粘度が12mPa・s以下の特性を有しているものである。
【0015】
(化3)で表される構造で、かつ、上記の粘度範囲を有するエステル系材料を基油として用いることで、低温状態まで低粘度となり、低温から高温まで軸受損失の小さな動圧流体軸受を実現できる。なお、0℃における粘度が48mPa・s以下であれば軸受損失は許容できる値となるが、40mPa・s以下とすればさらに軸受損失を低減できる。また、40℃における粘度を12mPa・s以下としたが、0℃での粘度が48mPa・sで、40℃での粘度が12mPa・sであれば温度変動による粘度変化が許容値内とできるので、軸受損失を広い温度範囲で低減できる。
【0016】
さらに、(化3)で表される構造中のアルキル基であるRがC715、C817、またはC919から選ばれた1種類のみからなる基油をふくむ潤滑油である。アルキル基であるRを上記から選ばれた1種類のみとしたことで、粘度を所定の値にできるだけでなく、基油中に粘度の異なる材料が混合して存在することがない。混合エステルを用いる場合には、長時間使用すると混合成分中の低粘度成分が早く分解され、これにより潤滑油の劣化が促進される現象が生じる。一方、構造中のアルキル基を全く同一とし、さらに1種類のみからなる基油を用いることで粘度を所定値としながら、耐熱性の高い非常に安定な潤滑油が得られることを見出した。
【0017】
さらに、潤滑油には、ヒンダードフェノール系酸化防止剤もしくはヒンダードアミン系酸化防止剤のうち、少なくとも1種を添加剤として含んでおり、その添加剤の一つであるヒンダードフェノール系酸化防止剤の場合には、その構造中に少なくとも1つの(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)を含み、この添加剤の総量が少なくとも0.1重量%以上としたものである。なお、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)は少なくとも一つを含めばよく、2個、3個、あるいは4個を含んでいてもよい。
【0018】
エステル系の基油に対して、ヒンダードフェノール系あるいはヒンダードアミン系の酸化防止剤を0.1重量%以上添加することで、高速回転時に動圧流体軸受部の加熱により潤滑油が高温になっても、酸化を生じず潤滑油の特性劣化を防止できる。このヒンダードフェノール系酸化防止剤あるいはヒンダードアミン系酸化防止剤は加熱によりそれ自体が酸化することで、基油の酸化を防止する性質を有しており、使用目的に応じて最適添加量が異なるが、少なくとも0.1重量%以上添加すれば酸化防止に効果がある。また、添加量が多くなりすぎると基油の性能を劣化させるので、添加量の上限値としては10重量%とすることが望ましく、さらには8重量%以下が基油の性能の劣化をほとんど生じない範囲としてより望ましい。
【0019】
また、潤滑油には(化4)の構造で示されるトリグリセライドを添加剤として含んでいる。
【0021】
ただし、R1、R2、およびR3はCxHyOzからなる不飽和もしくは飽和の直鎖構造あるいは分岐構造であり、さらに、R1、R2、およびR3は同一構造あるいは少なくとも1つが異なる構造を有し、xの値が15から21、yの値が29から43、およびzの値が0から1の範囲の整数値である。より具体的には、zの値が0のときには、不飽和もしくは飽和の直鎖アルキル基あるいは分岐アルキル基の構造であり、zの値が1のときには、構造中にOH基を有し、不飽和もしくは飽和の直鎖構造あるいは分岐構造である。構造中にOH基を有するようにすると、軸受部材の金属との濡れ性が改善されるので潤滑特性が向上できる。また、xおよびyの値については、これらの値を大きくするとトリグリセライドは固体となり基油との相溶性が悪くなるだけでなく、粘度も大きくなる。また、小さすぎると起動時の潤滑特性を低下させるので、これらを両立させる条件として上記の値が望ましい範囲である。
【0022】
さらに、この添加剤の総量を5重量%以下としたものである。トリグリセライドの添加量を多くすると基油の性能を低下させるが、添加した場合の性能の許容限界が5重量%であり、3重量%以下とすれば潤滑油の寿命の低下を防ぐこともでき、さらに望ましい。
【0023】
上記の構造を有するトリグリセライドを5重量%以下添加することで、起動直後や停止直前で、動圧が小さくなるときに生じる金属接触状態での摺動性を向上できるので、ハードディスク装置のようにスピンドルモータを頻繁に起動したり、停止する場合でも、回転軸と軸受部の摩擦、摩耗を低減でき、信頼性の高い動圧流体軸受を実現できる。
【0024】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明を詳しく説明する。
【0025】
(実施例1)
実施例1の潤滑油は以下のとおり調整した。基油は(化3)で示される構造で、RはC715の直鎖飽和アルキル基である。基油の酸化を防止するための添加剤として、4つの(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を1重量%添加した。
【0026】
(実施例2)
実施例2の潤滑油は以下のとおり調整した。基油は(化3)で示される構造で、RはC817の直鎖飽和アルキル基である。基油の酸化を防止するための添加剤として、4つの(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を1重量%添加した。
【0027】
(実施例3)
実施例3の潤滑油は以下のとおり調整した。基油は(化3)で示される構造で、RはC919の直鎖飽和アルキル基である。基油の酸化を防止するための添加剤として、4つの(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を1重量%添加した。
【0028】
(実施例4)
実施例4の潤滑油は以下のとおり調整した。基油は(化3)で示される構造で、RはC817の直鎖飽和アルキル基である。基油の酸化を防止するための添加剤として、4つの(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を1重量%添加した。さらに、(化4)で示されるトリグリセライドを1重量%添加した。ただし、R1、R2、およびR3は同一構造で、CxHyOzの構造を有し、xの値が17、yの値が33、zの値が1である。
【0029】
(比較例1)
従来、動圧流体軸受に用いられてきた潤滑油であるDOS(セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル)を、比較例1として用いた。
【0030】
(比較例2)
ネオペンチルグリコールとカプリル酸とのエステルと、ネオペンチルグリコールとカプリン酸とのエステルの2種類を混合した混合エステルを基油とした潤滑油を比較例2として用いた。
【0031】
【表1】
Figure 0003917388
【0032】
なお、実施例1から実施例4までの潤滑油について、基油の主成分量を(表1)に示す。(表1)よりわかるように、実施例1から実施例4までの潤滑油の基油の主成分量はそれぞれ85重量%以上を有する。
【0033】
上述の4つの実施例および2つの比較例の潤滑油について、粘度、粘度の安定性、蒸発量、耐酸化性、高温安定性、および摩擦係数を測定した結果について以下に述べる。
【0034】
【表2】
Figure 0003917388
【0035】
表2に、0℃と40℃での粘度を示す。実施例1から実施例4の潤滑油は全て比較例1の潤滑油よりも低粘度であった。また、実施例3の潤滑油を除けば、本実施例の潤滑油は比較例2の潤滑油よりも低粘度であった。特に、従来ハードディスク装置のスピンドルモータに使用されている比較例1に比べると、実施例1では0℃で48%、40℃で38%、実施例2では0℃で31%、40℃で26%、実施例3では0℃で11%、40℃で8%、実施例4では0℃で31%、40℃で25%程度小さな粘度であった。また比較例2に比べると、実施例1では0℃で26%、40℃で19%、実施例2では0℃で3%、40℃で3%、実施例4では0℃で2%、40℃で3%程度、それぞれ小さな粘度であった。
【0036】
したがって、従来使用されてきた比較例1の潤滑油に比べて、本実施例の潤滑油は低温および高温状態ともに粘度が小さく、このため動圧流体軸受の軸受損失を小さくできる。また、同じエステル系である比較例2の潤滑油に比べても、本実施例1、2および4では粘度が小さく、軸受損失を低減できる。
【0037】
【数1】
Figure 0003917388
【0038】
スピンドルモータの回転速度を高精度に保持するために、広い温度範囲で潤滑油の粘度変化が小さいことも重要であり、この粘度変化を評価した。評価方法としては、(表2)に示す粘度のデータを用いて、粘度Yと絶対温度Tの逆数の関係を(数1)で示される指数関数で近似し、定数Bの値により粘度変化を比較した。
【0039】
(数1)において、AおよびBは定数である。定数Bは曲線の傾きを示し、温度に対する粘度の変化率を表している。すなわち、定数Bの値が小さいほど、温度に対する潤滑油の粘度変化が小さいことを表す。この結果を(表2)にB値として示す。本4つの実施例の潤滑油のB値は、比較例1と比較例2のそれぞれのB値より小さく、温度変化によっても粘度の変動が生じ難い結果が得られた。
【0040】
粘度変化が大きいということは、粘度が高くなる低温側では軸受損失が大きくなり、また粘度が低くなる高温側では潤滑油膜が破断して金属接触により焼き付きが生じ易くなることを意味する。このような潤滑油を用いたモータを搭載した装置が冬季の屋外で使用されたり、夏季の車内に放置後使用されるような温度変化の大きな条件でも、本実施例の潤滑油では粘度変化が比較例よりも小さいので、これらの実施例を用いた動圧流体軸受ならびにその動圧流体軸受を用いたスピンドルモータは、広い温度範囲で、かつ高速回転領域であっても、安定した回転性能を得ることができる。
【0041】
次に、蒸発損失の測定結果について説明する。蒸発損失については、実施例1から実施例4の潤滑油、および比較例1,2の潤滑油をそれぞれ入れたガラスビーカーを100℃の恒温槽中で、120時間放置後の重量減量を蒸発損失として、重量%で求めた。この結果を(表2)に蒸発量として示す。実施例2、3、4の蒸発損失は比較例1、2の蒸発損失よりも格段に低い結果が得られた。すなわち、実施例2、3、4の潤滑油は蒸発損失が少ないので、長期間稼動させても潤滑油が欠如することがなく、スピンドルモータの寿命を向上できる。
【0042】
次に、潤滑油が回転軸と軸受部材である金属と高温状態で長時間接触するときの耐熱安定性を高温加速試験により評価した。高温加速試験は、実際のスピンドルモータの駆動時における潤滑油の状態を考慮し、シェーカ付きの加熱式オイルバスを用いて以下の手順で行った。まず実施例1から実施例4の潤滑油、および比較例1、2の潤滑油をステンレス鋼製の試験管におのおの注入した。潤滑油を注入した試験管のそれぞれに回転軸および軸受部材と同一の金属材料を潤滑油中に浸した。この金属材料としては、軸受部材としてよく使用される銅合金からなる円柱棒の表面に、表面硬化のために一般的に行われているニッケルリンめっき皮膜を形成したものを用いた。これらの試験管を150℃に加熱したシェーカ付きの加熱式オイルバスに浸し、振動させて高温加速試験を行った。シェーカの振動により、ステンレス製の試験管とニッケルリンめっきされた銅合金棒とが常時接触するので、それぞれの金属表面には常に新生面が形成されて境界潤滑条件を実現することができる。
【0043】
評価方法としては、上記した高温加速試験の一定時間経過毎におのおのの潤滑油を一定量採取して粘度を測定し、その粘度変化による評価と、627時間経過後の全酸価数を測定して評価した。耐熱性に劣る潤滑油や、金属を触媒にして分解や劣化する潤滑油の場合には、高温状態や金属の添加による触媒作用によりその粘度が変化するので、粘度変化を測定することで潤滑油の耐熱性を評価することができる。また、全酸価数とは、1gの被測定試料中に含まれる酸性成分を中和するために必要とされる水酸化カリウムの量をミリグラム単位で示した量である。全酸価数の値が大きい場合は、高温状態で潤滑油が酸化し、さらに分解等が進行して、その結果酸性成分が生成されたことを意味する。したがって、全酸価数の値が大きい潤滑油は酸化、分解等の劣化が生じていること示しており、耐熱性を評価することができる。
【0044】
高温加速試験での粘度変化を測定した結果を図1に示す。横軸は高温状態に保持した時間を示し、縦軸は一定時間経過毎の粘度を示す。なお、粘度の測定は40℃で行った。比較例1の潤滑油の場合には、時間経過とともにほぼ直線的に粘度が増加しており、軸受部が高温になるような使用条件では軸受損失が大きくなるので使用は困難である。また、比較例2の潤滑油は約170時間経過後から粘度変化が生じており、比較例1に比べると耐熱性が良好であるが、長期間の信頼性に問題があることが見出された。
【0045】
一方、実施例1から実施例4の潤滑油は、高温加速試験の時間経過による粘度変化がほとんど見られず、耐熱性安定性が格段に良好であることが確認された。
【0046】
【表3】
Figure 0003917388
【0047】
これらの潤滑油について、627時間経過後の全酸価数を測定した結果を(表3)に示す。実施例1から実施例4の潤滑油ともに比較例1、2よりも全酸価数の値が小さく、耐熱性が良好であることが確認された。特に、実施例1、3は全酸化数の値が0であり、高温状態でも分解が生じず、非常に安定な潤滑油であることが見出された。一方、比較例1の潤滑油の場合には、全酸価数の値が大きいので高温加速試験により分解が生じていることがわかる。すなわち、比較例1の潤滑油は、耐熱安定性が悪く、したがって粘度変化も大きいことが明確となった。
【0048】
また、比較例2の潤滑油の場合には、実施例2の全酸価数の値に比べてやや大きい値であったが、粘度変化は実施例2に比べて明らかに大きかった。この結果から、比較例2の潤滑油は、組成物である混合エステルが分解しているのではなく、化学的に重合して粘度変化を生じていることが判明した。すなわち、混合エステルからなる基油を用いた比較例2の潤滑油は高温状態で化学的な重合が生じるが、本発明の(化3)でRがC715、C817、あるいはC919のいずれか1種類のみからなるエステル系の基油を用いた潤滑油は高温でも安定であることがわかった。
【0049】
なお、実施例2の潤滑油と実施例4の潤滑油とを比較すると、実施例4の潤滑油の方が全酸価数の値は実施例2の潤滑油に比べて約60%小さい結果が得られたことから、トリグリセライドは基油の分解を抑制する効果もあることが明らかとなった。
【0050】
なお、ニッケルリンめっきを施した銅合金材料で粘度変化が生じなかった実施例1から実施例4の潤滑油について、直接銅合金材料を用いた高温加速試験も行った。この結果を図2に示す。試験条件は上述の高温加速試験と同様である。図からわかるように、銅合金材料を用いても粘度変化が生じないことが明らかとなり、耐熱安定性が良好であることが見出された。
【0051】
ただし、回転軸および軸受部に使用する金属材料については、上述の銅合金あるいはニッケルリンめっきした銅合金のみでなく、種々の材料が使用される可能性があり、その場合には材料に応じて表面にめっき等によるコーティングや潤滑油中に金属の腐食を防止する防止剤や金属不活性剤を添加してもよい。
【0052】
【表4】
Figure 0003917388
【0053】
次に、金属接触が生じたときの摺動特性を評価した結果について述べる。金属接触は動圧流体軸受が搭載されたモータの起動直後や停止直前で油膜が破断するときに生じ、摩擦係数が大きくなり、このため大きな摩耗が発生する。この評価法としては、ピンオンディスク試験装置を用いて摩擦係数を測定することで行った。ピンオンディスク試験には、一般的に回転軸に用いられているステンレス製のピンと、軸受部で使用されることがあるニッケルリンめっき皮膜を形成した銅合金製のディスクを使用した。試験条件としては、ピンとディスクの相対速度を0.16m/秒、ピンに付加する荷重を624mNに設定して行った。試験結果を(表4)に示す。
【0054】
実施例1から実施例4の潤滑油の場合には少なくとも比較例1、2の潤滑油に比べて小さな摩擦係数が得られた。その中で、実施例4の潤滑油は最も低摩擦係数が得られ、トリグリセライドの添加効果が明確に確認された。
【0055】
実施例1から実施例4の潤滑油について、比較例1、2の潤滑油との性能を比較した結果をまとめると以下のようである。
【0056】
すなわち、実施例1の潤滑油は低粘度、耐熱性が良好であるが、蒸発量が比較例2の混合エステルを基油とした潤滑油に比べてやや大きい。しかし、低粘度であるため潤滑油自体の摩擦による発熱は小さく、このために比較例2にくらべて発熱が抑制される。したがって、蒸発量がやや大きくても全体としては比較例2より高温安定性を有する。
【0057】
実施例2および4については、比較例1、2にくらべて全ての点で良好な特性を有しており、耐熱性が大きく、軸受損失の小さな潤滑油であることがわかる。
【0058】
一方、実施例3については、比較例2の混合エステルからなる潤滑油に比べて粘度が大きい。しかしながら、蒸発量が非常に小さく、しかも全酸価数の値が0であり、耐熱性が良好である。この結果、粘度が大きいため潤滑油自体の摩擦で発熱が生じても、酸化や分解等が生じることがなく、高信頼性の動圧流体軸受が得られる。
【0059】
以上のように、本実施例の潤滑油は比較例に比べて総合的な特性が良好であり、高温信頼性に優れた潤滑油を実現することができた。
【0060】
なお、本発明の潤滑油は、動圧流体軸受が使用される環境や条件に応じて、例えば油性剤、金属腐食防止剤、あるいは金属不活性剤等の各種添加剤をさらに加えてもよい。
【0061】
ところで、実施例1の潤滑油は最も粘度が低く、耐熱性に優れているので、例えばカメラ一体型ビデオレコーダの回転ヘッドドラム駆動用モータやモバイル機器用のスピンドルモータの動圧流体軸受用の潤滑油として好適である。
【0062】
また実施例2および実施例4の潤滑油は、比較例に比べてすべての点で良好な性能を有しており、バランスのとれた潤滑油である。実施例4の潤滑油はさらに摩擦係数が小さいので、モータを頻繁に起動、停止する用途に好適である。
【0063】
さらに、実施例3の潤滑油は、比較例2の潤滑油に比べて粘度が大きいが、蒸発損失が小さく、耐酸化分解性、耐熱性に優れているので、高い信頼性と長寿命が要求される動圧流体軸受用の潤滑油として好適である。
【0064】
【発明の効果】
本発明の潤滑油は動圧流体軸受に使用され、その基油がポリオールと脂肪酸からなる(化3)で表されるエステル系からなり、粘度が0℃において48mPa・s以下、40℃において12mPa・s以下である基油からなる構成である。また、RはC715、C817、またはC919から選ばれた1種類である基油の構成である。また、潤滑油には添加剤として少なくとも1つの(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤、もしくはヒンダードアミン系酸化防止剤のうち少なくとも1種を含み、さらに、添加剤としてトリグリセライドを含んだ構成である。
【0065】
このような潤滑油の組成とすることにより、低温状態まで低粘度を維持でき、かつ、高温でも分解や酸化を生じず、耐熱安定性が大きい。さらに、蒸発損失が小さく、少なくとも銅合金あるいはニッケルリンめっき銅合金材料では変質が生じない。したがって、低温で使用しても軸受損失が小さく、また、潤滑油の温度が高くなる高速回転でも信頼性良く使用できるので、高速回転や広い温度範囲で使用可能な動圧流体軸受を実現できるという大きな効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例と比較例の潤滑油のニッケルリンめっき銅合金に対する高温加速試験の結果を示す図
【図2】本発明の実施例の潤滑油の銅合金に対する高温加速試験の結果を示す図

Claims (1)

  1. 回転軸と軸受との間に充填されて動圧を発生し前記回転軸を非接触支持する動圧流体軸受に使用される潤滑油組成物の基油が、ポリオールと脂肪酸からなる(化1)の構造で表されるエステル系からなり、前記基油の0℃における粘度が48mPa・s以下で、かつ40℃における粘度が12mPa・s以下であって、
    前記基油が(化1)で表され、アルキル基であるRがC 7 15 、C 8 17 、またはC 9 19 から選ばれた1種類であり、
    さらにはヒンダードフェノール系酸化防止剤もしくはヒンダードアミン系酸化防止剤のうち、少なくとも1種を0.1重量%以上添加剤として含んでおり、
    前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、その構造中に少なくとも1つの(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)を含んでおり、
    またさらには(化2)の構造で示されるトリグリセライドを5重量%以下添加剤として含んでおり、
    前記(化2)で表されるトリグリセライドのR1、R2、およびR3は同一構造あるいは少なくとも1つが異なる構造を有し、xの値が15から21、yの値が29から43、およびzの値が0から1の範囲のそれぞれ整数値である
    ことを特徴とする潤滑油組成物。
    Figure 0003917388
    ただし、Rはアルキル基である。
    Figure 0003917388
    ただし、R1、R2、およびR3はCxHyOzからなる不飽和もしくは飽和の直鎖構造あるいは分岐構造である。
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