JP3913908B2 - 自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は自動変速機の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動変速機の制御装置においては、一般に、車速とスロットル開度から予め設定された単一のギヤシフトスケジューリング用マップ(変速特性)を検索して変速比を決定している。
【0003】
さらに、車速とスロットル開度から走行抵抗、より具体的には車両の登坂あるいは降坂勾配を示すパラメータを求め、求めた勾配パラメータから予め設定された降坂用、登坂路用などの複数のマップ(変速特性)のいずれかを選択し、選択したマップを車速とスロットル開度から検索することで、登降坂にも良好な変速比となるように制御する自動変速機の制御装置も、特開平5−71625号公報などから知られている。
【0004】
ところで、近時、車両走行を誘導するナビゲーション装置を装着した車両が普及しつつある。ナビゲーション装置は、CD−ROMなどに格納した地図情報を備えると共に、GPS(Global Positioning System)などから車両の現在位置を検出し、検出された現在位置を含む走行路の地図情報などのナビゲーション情報を提供する。
【0005】
かかるナビゲーション情報を用いることによって現在走行している走行路の詳細を認識あるいは予測できることから、ナビゲーション情報を自動変速機の制御に取り入れる試みも種々なされており、例えば特開平9−229173号公報は、ナビゲーション装置に道路勾配を含む情報を記憶しておき、記憶しておいた道路勾配と決定した車速から走行抵抗を算出し、それに対応する機関回転数およびトルクを算出し、回転数およびトルクを最小燃費で発生させるように変速制御する技術を開示する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来技術においてはナビゲーション装置に全ての道路勾配情報を記憶させることから、データ量が膨大となり、演算処理も複雑となり、コスト的にも不利となる。
【0007】
さらに、ナビゲーション情報では自車位置を正確に検知できない不都合があり、特に登坂から平地走行、あるいは降坂から平地走行に切り換わるときなど、自車位置の誤差分だけ制御の応答性が低下する。
【0008】
さらに、ナビゲーション情報の道路勾配に基づいて走行抵抗を算出すると、積載重量の変化を考慮することができないので、適正に走行抵抗を求めることが困難である。
【0009】
従って、この発明の目的は従来技術の上記した不都合を解消し、車両の登坂あるいは降坂勾配を示すパラメータを求め、求めた勾配パラメータから予め設定された複数のマップ(変速特性)のいずれかを選択して登降坂にも良好な変速比となるように制御する自動変速機の制御装置において、ナビゲーション情報を変速制御に取り入れて変速比を一層適正に決定すると共に、ナビゲーション情報に道路勾配情報を含めることを必要とせずに、積載重量を推定して勾配パラメータを補正するようにした自動変速機の制御装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1項にあっては、車速とスロットル開度から車両の登坂あるいは降坂勾配を示す勾配パラメータを求め、前記求めた勾配パラメータから予め設定された複数の変速特性のいずれかを選択し、前記選択した変速特性に基づいて変速比を決定する変速制御手段を備えた自動変速機の制御装置において、前記車両の現在位置を検出し、検出された現在位置を含む走行路の登降坂状態を含む走行路情報を出力する走行路情報出力手段、前記走行路情報に基づいて前記車両が所定の補正区間にあるか否か判定する補正区間判定手段、前記走行路情報に基づいて前記車両が所定の積載重量推定区間にあると判断されるとき、前記勾配パラメータを所定値と比較し、前記勾配パラメータが前記所定値以上の場合に前記車両の積載重量推定値を算出する積載重量推定値算出手段、および前記算出された積載重量推定値に基づいて前記所定の補正区間を走行するとき前記勾配パラメータを補正する勾配パラメータ補正手段を備えると共に、前記変速制御手段は、前記補正された勾配パラメータに基づいて前記複数の変速特性のいずれかを選択し、前記選択した変速特性に基づいて変速比を決定する如く構成した。
【0011】
これによって、走行路情報(ナビゲーション情報)を変速制御に取り入れて変速比を一層適正に決定することができると共に、ナビゲーション情報に道路勾配情報を含めることを必要とせずに、積載重量を推定して勾配パラメータを補正することができ、それに基づいて適正に変速比を決定することができる。
【0012】
さらに、ナビゲーション情報では補正区間などの情報を記憶すれば足り、道路勾配情報を必要としないので、データ量としても僅少で足りると共に、演算処理量も低減し、コスト的にも有利となる。さらに、ナビゲーション情報で自車位置を正確に検知できない場合でも、その影響を受けることがない。
【0013】
さらに、山岳路の登降坂、特に降坂路を走行するときなど、3速領域などが多用されるように変速比を決定することができ、ドライバビリティを向上させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に即してこの発明の実施の形態を説明する。
【0015】
図1はこの発明に係る自動変速機の制御装置を全体的に示す概略図である。
【0016】
図1において、車両(後述する駆動輪Wなどで断片的に示す)1は、内燃機関(以下「エンジン」という)Eおよび自動変速機(以下「トランスミッション」という)Tを備える。
【0017】
内燃機関Eのクランクシャフト10は、トランスミッションTのトルクコンバータ12を介してメインシャフトMS(変速機入力軸)に接続される。図示のトランスミッションTは平行軸式であって、メインシャフトMSとそれに平行に設けられたカウンタシャフトCSとセカンダリシャフトSSとを備える。それぞれのシャフト上には、ギヤが支持される。
【0018】
具体的には、メインシャフトMS上には、メイン1速ギヤ14、メイン3速ギヤ16、メイン4速ギヤ18、およびメインリバースギヤ20が支持されると共に、カウンタシャフトCS上には、メイン1速ギヤ14に噛合するカウンタ1速ギヤ22、メイン3速ギヤ16に噛合するカウンタ3速ギヤ24、メイン4速ギヤ18に噛合するカウンタ4速ギヤ26、およびメインリバースギヤ20にリバースアイドルギヤ28を介して噛合されるカウンタリバースギヤ30が支持される。
【0019】
他方、セカンダリシャフトSS上には、第1セカンダリ2速ギヤ32および第2セカンダリ2速ギヤ34が支持される。上記においてメインシャフトMS上に相対回転自在に支持されたメイン1速ギヤ14を1速用油圧クラッチC1でメインシャフトMS上に結合すると、1速(変速段あるいは変速比)が確立する。
【0020】
1速用油圧クラッチC1は、2速〜4速変速段の確立時にも係合状態に保持されるため、カウンタ1速ギヤ22は、ワンウェイクラッチCOWを介して支持される。尚、後述するレンジにおいて1,2レンジが選択されたときに駆動輪W側から内燃機関Eを駆動できる、換言すればエンジンブレーキとして機能するように、1速ホールドクラッチCLHが設けられる。
【0021】
また、セカンダリシャフトSS上に相対回転自在に支持された第2セカンダリ2速ギヤ34を2速用油圧クラッチC2でセカンダリシャフトSS上に結合すると、メイン3速ギヤ16、カウンタ3速ギヤ24、第1セカンダリ2速ギヤ32を介して、2速(変速段あるいは変速比)が確立する。
【0022】
カウンタシャフトCS上に相対回転自在に支持されたカウンタ3速ギヤ24を3速用油圧クラッチC3でカウンタシャフトCS上に結合すると、3速(変速段あるいは変速比)が確立する。
【0023】
更に、カウンタシャフトCS上に相対回転自在に支持されたカウンタ4速ギヤ26をセレクタギヤSGでカウンタシャフトCSに結合した状態で、メインシャフトMS上に相対回転自在に支持されたメイン4速ギヤ18を4速−リバース用油圧クラッチC4RでメインシャフトMS上に結合すると、4速(変速段あるいは変速比)が確立する。
【0024】
カウンタシャフトCS上に相対回転自在に支持されたカウンタリバースギヤ30をセレクタギヤSGでカウンタシャフトCS上に結合した状態で、メインシャフトMS上に相対回転自在に支持されたメインリバースギヤ20を前記4速−リバース用油圧クラッチC4RでメインシャフトMS上に結合すると、後進(変速段あるいは変速比)が確立する。
【0025】
そして、カウンタシャフトCSの回転は、ファイナルドライブギヤ36およびそれに噛合するファイナルドリブンギヤ38を介してディファレンシャルDに伝達され、それからドライブシャフト40を介して駆動輪Wに伝達される。
【0026】
エンジンEの吸気路(図示せず)に配置されたスロットルバルブ(図示せず)の付近には、スロットル開度センサS1が設けられ、スロットル開度THに応じた信号を出力する。またファイナルドリブンギヤ38の付近には車速センサS2が設けられ、ファイナルドリブンギヤ38の回転速度から車速Vに応じた信号を出力する。
【0027】
メインシャフトMSの付近には入力軸回転速度センサS3が設けられてトランスミッションの入力軸回転数NMに応じた信号を出力すると共に、カウンタシャフトCSの付近には出力軸回転速度センサS4が設けられ、トランスミッションの出力軸回転数NCに応じた信号を出力する。
【0028】
車両運転席床面に装着されたシフトレバー44の付近にはシフトレバーポジションスイッチS5が設けられ、P,R,N,D4,D3,2,1の7種のレンジのうち、運転者が選択したレンジに応じた信号を出力する。
【0029】
さらに、エンジンEのクランクシャフト10の付近にはクランク角センサS6が設けられ、その回転からエンジン回転数(速度)NEに応じた信号を出力すると共に、シリンダブロック(図示せず)の適宜位置には水温センサS7が設けられ、エンジンEの冷却水温Twに応じた信号を出力する。
【0030】
また、車両運転席床面のブレーキペダル(図示せず)の付近にはブレーキスイッチS8が設けられ、ブレーキ操作が行われたときオン信号を出力すると共に、トランスミッションTの適宜位置には油温センサS9が設けられ、油温、即ち、ATF温度に応じた信号を出力する。
【0031】
これらセンサ出力は、ECU(電子制御ユニット)に送られる。
【0032】
ECUはCPU50、ROM52、RAM54、入力回路56および出力回路58から構成され、前記したセンサ出力は、入力回路56を介してECU内に入力される。ECUにおいてCPU50は、ロックアップクラッチ制御を含む後述する変速制御を行う。
【0033】
ECUは油圧制御回路Oを備える。油圧制御回路OはシフトソレノイドSL1,SL2と、トルクコンバータ12のロックアップクラッチのオン/オフ制御用ソレノイドSL3と容量(係合力)制御用ソレノイドSL4と、前記した油圧クラッチを制御するためのリニアソレノイドSL5を備える。
【0034】
CPU50は出力回路58を通じて指令値を油圧制御回路Oに送出し、シフトソレノイドSL1,SL2を励磁・非励磁して図示しないシフトバルブを切り替え、所定の変速段の油圧クラッチを解放・締結すると共に、リニアソレノイドSL5を介してクラッチ力を制御し、さらにソレノイドSL3を介してトルクコンバータ12のロックアップクラッチLをオン/オフ制御し、ソレノイドSL4を介してクラッチ容量を制御する。
【0035】
さらに、図示の装置は、ナビゲーション装置70を備える。ナビゲーション装置は、CPU72および車両走行予定地域の地図情報、山岳路であるか市街地であるかのナビゲーション情報などを記憶したCD−ROM74、およびGPSからの信号をアンテナ76を介して受信するGPS受信装置78を備える。ナビゲーション情報は、道路勾配などを含まない、比較的僅少なものする。
【0036】
ECUのCPU50とナビゲーション装置70のCPU72とは双方向通信自在に接続され、CPU50はナビゲーション装置70のCPU72を介して上記したナビゲーション情報を入力し、それに基づいて協調制御(以下「NAVI−AT協調制御」という)を行う。
【0037】
以下、この装置の動作を説明する。
【0038】
理解の便宜のため、この制御が前提とする、前記した特開平5−71625号公報に記載された変速制御について図2フロー・チャートを参照して説明する。図示のプログラムは、20msecごとに実行される。
【0039】
図2の処理を概括すると、図3に示すように、予想加速度と実加速度を求めてその差分の平均値(前記した勾配パラメータに相当)を算出し、算出値に応じて5種のシフトマップ(平坦路用、重ないし軽登坂用および重ないし軽降坂用)および後述するコーナスポーツマップのいずれかを選択し、選択したマップを検出した車速Vとスロットル弁開度THから検索して変速段(ギヤあるいは変速比)を決定する。尚、その詳細はこの公報に記載されているので、以下の説明は簡単に止める。
【0040】
先ず、S10において車速V、スロットル開度THなど必要な制御パラメータを検出あるいは算出し、S12に進んで予想加速度GGHを検索する。予想加速度は、平坦路を走行するとき車両に期待される走行加速度を3速についてのみ予め設定しておき、検出した車速Vとスロットル開度THから検索する。
【0041】
続いてS14に進み、実加速度HDELVを算出する。具体的には、検出した車速の1階差分値から車両が実際に発生している実加速度を求め、予め設定された特性を検出した車速Vとスロットル開度THから検索して補正係数を求め、それを実加速度に乗じて3速相当値に補正して算出する。
【0042】
続いてS16に進み、求めた予想加速度と実加速度の差を算出して登降坂差分PNOあるいはPKUとする。続いてS18に進み、ブレーキスイッチS8(BRK)がオンしているか否か判断し、肯定されるときはS20に進んでブレーキタイマ(ダウンカウンタ)TAMPAVBに所定値YTMPAVBをセットする(このタイマはブレーキが戻された時点でスタートする)。
【0043】
これは、ブレーキが一旦操作された後は、ブレーキが戻されても制動系の応答遅れから制動力が零にならないため、このタイマ値相当時間をブレーキ操作中とみなすための処理である。
【0044】
続いてS22に進み、D4レンジなど登降坂制御必要レンジか否か判断し、肯定されるときはS24に進み、登降坂制御必要レンジ間でレンジ切替中か否か判断する。S24で否定されるときはS26に進んでタイマTMPAHN2に所定値YTMPAHN2をセットしてスタートさせる(このタイマは時間計測してレンジ切替えが正常かどうかを確認するためのものである)。
【0045】
続いてS28に進み、フラグBRKOK2のビットを参照してブレーキ信号が正常か否か判断し、正常と判断されるときはS30に進んでレンジ切替中か否か再び判断し、否定されるときはS32に進んで第2のタイマTMPAHNの値が0に達したか否か判断する(このタイマは変速中か否か判断するためのタイマである)。
【0046】
S32でタイマ値が0と判断されるときは変速中ではないと判断してS34に進み、現在のシフト位置(ギヤあるいは変速段)SHが1速か否か判断する。これは、1速のときはダウンシフトがあり得ないことから演算を簡略にするためである。
【0047】
S34で否定されるときはS36に進み、登降坂差分の平均値(登坂あるいは降坂勾配パラメータ)PNOAVEあるいはPKUAVEを算出する。これは、登降坂差分PNOあるいはPKUの算出値と先の勾配パラメータの間で加重平均値を求めることで算出する。
【0048】
尚、S22で否定されるときはS38に進み、不要となったタイマをリセットすると共に、S42に進んで登坂あるいは降坂勾配パラメータPNOAVEあるいはPKUAVEを零にする。S28でブレーキ信号が正常ではないと判断されたときも同様である。
【0049】
またS30でレンジ切替え中と判断されてS40に進み、そこで肯定されてタイマ値が零に達したと判断された場合はレンジ切替えに長時間を要して断線などの異常が生じたと判断できるので、S42に進んで差分平均値は零とすると共に、否定されるときはS44に進み、登坂あるいは降坂パラメータを前回値のままとする。
【0050】
またS32でシフト中(変速中)と判断されたときもシフト位置(ギヤ)を確定できず、加速度も安定しないため、S44に進む。S34で肯定されて1速と判断されるときも同様である。
【0051】
続いてS45に進み、上記した変速制御とナビゲーション装置70から得られるナビゲーション情報に基づく協調制御(以下「NAVI−AT協調制御」という)を行う。これについては後述する。
【0052】
続いてS46に進んで登降坂MAPS1,2を判別する。この制御においては前記の如く、複数のマップ(変速特性)、より詳しくは図4に示す如く、重登坂用、軽登坂用、平坦路用、軽降坂用および重降坂用の5種のマップを用意すると共に、それに0から4までのマップ番号を付して特定する。尚、上記に加え、後述するNAVI−AT協調制御においては、降坂コーナ走行時用としてコーナスポーツマップなるマップも用意する。
【0053】
S46の処理は、図4および図5に示す如く、登坂あるいは降坂勾配パラメータ(差分平均値)PNOAVEあるいはPKUAVE(あるいはPKUAVE22)を基準値PNOnm,PKUnmと比較し、特定されたマップ番号が論理的に取り得る最小マップ(「MAPS1」という)と最大マップ(「MAPS2」という)を決定する作業である。
【0054】
図6に平坦路用マップの特性を、図7に軽登坂用(軽降坂用)マップの特性を、図8に重降坂用マップの特性を、図9にコーナスポーツマップの特性を示す(軽登坂マップと軽降坂マップは同一とする)。
【0055】
これらのマップは3速領域の設定で異なる。即ち、平坦路用マップに比して軽登坂(軽降坂)用マップは低スロットル開度域で拡大され、軽登坂(軽降坂)用マップに比して重降坂用は中高スロットル開度域でスロットル開度で拡大される(低スロットル開度域ではシフトアップのため逆に縮小される)。
【0056】
図2の説明に戻ると、続いてS48に進み、求めた最小マップ(MAPS1)と最大マップ(MAPS2)のいずれかを選択(決定)する。選択(決定)したマップを「MAPS」という。
【0057】
図10はその作業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【0058】
以下説明すると、S100で現在選択されているマップ(MAPS)とMAPS2(最大マップ)を比較する。論理的にはマップ番号において最大マップ≧選択マップ≧最小マップとなるように選択すべきマップを決定すれば良い。
【0059】
従って、先ずS100で現在のマップが最大マップを超えているか否か判断し、超えていると判断されるときは、選択マップのマップ番号を最小値0と仮定すればマップ番号”1,2,3,4”のいずれかになるので、S102に進み、現在の選択マップが番号2(平坦路用マップ)か否か判断する。
【0060】
S102で選択マップが番号2(平坦路用マップ)を超えていると判断されるときはマップ番号は”3,4”となり、降坂路用マップとなるので、S104に進み、選択マップのマップ番号から”1”を減算したマップに決定する。
【0061】
一方、S102で選択マップが平坦路用マップ以下と判断されるときは”2,1”のいずれかとなり、平坦路用から軽登坂用または軽登坂用から重登坂用への切り換えとなるが、マップによって3速領域が異なることから、現在4速にあるときにはマップを切り換えると直ちに3速へシフトダウンされる恐れがあり、これは運転者が予期しないシフトダウンであって好ましくない。
【0062】
それを回避するため、S106に進み、現在の変速段が3速か否か判断し、3速以下と判断される場合のみマップを平坦路用から軽登坂用へ、ないしは軽登坂用から重登坂路用へと切り換える。従って、4速にあるときはマップ切り換えは中止される。
【0063】
他方、S100で選択マップが最大マップ以下と判断されるときは上限側の条件は満足されているので、下限側について判定するためにS108に進み、選択マップがMAPS1(最小マップ)以上か否か判断し、最小マップ以上と判断されるときは前記した論理式を満足しているので、マップを切り換えない。
【0064】
S108で選択マップのマップが最小マップ未満と判断されるときは最小マップ以上の値に修正する必要があるのでS110に進み、選択マップと平坦路用マップとを比較する。
【0065】
選択マップが平坦路用より小さいと判断される場合、取るべきマップは”1,2”のいずれかと言うことになるので、S112に進み、現在のマップに1を加算して増加補正する。従って現在軽登坂用マップを使用していれば平坦路用マップに、現在重登坂用マップを使用していれば軽登坂用マップに切り換えることになる。
【0066】
S110で選択マップが平坦路用マップ以上と判断されたときは現在の選択マップの番号は”2”か”3”となり、”2”か”3”からの加算の場合には3速領域の拡大の問題がある。
【0067】
そこで、S114に進んで現在3速以下にあるか否か判断し、現在3速以下であれば予期しないシフトダウンが生じないので、S112に進んで直ちにマップ切り換えを行うと共に、4速と判断されるときはS116に進み、選択マップと平坦路用マップとを比較する。
【0068】
S116で選択マップが平坦路用マップと判断されるときはS118に進み、検出した車速Vを所定値YKUV1と比較すると共に、現在の選択マップが平坦路用マップではない、即ち軽降坂用マップと判断されるときはS120に進み、検出した車速Vを別の所定値YKUV3と比較し、それらのステップで車速が所定値以上と判断されるときはS112にジャンプしてマップ切り換えを行う。これらの処理は、運転者が予期しないダウンシフト防止のためである。
【0069】
またS118,S120で現在の車速が境界車速未満と判断されるときはS122に進み、スロットル開度が全閉付近の開度CTH以下か否か判断する。ここで否定されるときはアクセルペダルが踏まれていることを意味し、しかも4速でアクセルペダルを踏んでいることを意味するので、ダウンシフト回避のため、S112をスキップしてマップ切り換えを行わない。
【0070】
逆にS122で肯定されるときはアクセルペダルが踏まれていず、運転者の減速意図が窺えるので、S124に進み、選択マップが平坦路用のものか否か再び判断し、肯定されるときはS112に進み、マップ切り換えを行う。
【0071】
またS124で否定されるときは選択マップが軽降坂路用マップとなるので、S126に進んでブレーキ操作が行われているか否か判断して運転者が真に減速意図を有しているか否か判断する。ブレーキ操作が行われていないときは運転者が減速意図を有していないと思われるので、S112はスキップしてマップ切り換えを行わない。
【0072】
他方、ブレーキ操作中と判断されるときはS128からS136に進んで減速度データYDVOAを選択し、S138に進んで選択した減速度データYDVOAを実際の減速度DTV(ブレーキ操作中の単位時間当たりの車速の減少量)と比較し、実際の減速度DTVが選択した減速度データ以下と判断されるときは急減速と判断し、S112に進んでマップ切り換えを行う。
【0073】
即ち、ブレーキ操作が行われていて運転者が減速を意図している場合であってもシフトダウン時の減速度は高車速ほど大きいので、高車速ほどブレーキによる減速度が大きくならないと、マップが切り換え難くすると共に、比較結果から急減速が意図されていると判断されるときのみマップ切り換えを行ってダウンシフトさせる。尚、S138で実際の減速度DTVが選択した減速度データを超えると判断されるときは、S112をスキップする。
【0074】
続いて、S140に進み、決定されたマップ(番号)が”4”(重降坂用)か否か判断し、否定されるときは以降の処理をスキップすると共に、肯定されるときはS141に進み、フラグF.CSNAVI(後述)のビットが1か否か判断し、肯定されるときはS142に進み、コーナスポーツマップに切り換える。これについては後述する。
【0075】
他方、S141で否定されるときはS143に進み、検出したスロットル開度THが所定開度THREF(例えば(2/8)×WOT〔度〕)以上か否か判断し、否定されるときは以降の処理をスキップすると共に、肯定されるときはS144に進んでマップ(番号)を強制的に3(軽降坂用)に書き換える。
【0076】
これは、スロットル開度が所定開度以上踏み込まれたときは運転者がエンジンブレーキの補助を要求していず、むしろ加速を望んでいるものとみなしてマップを軽降坂用に切り換えるためである。
【0077】
図2フロー・チャートに戻ると、次いでS50に進み、検出した車速Vとスロットル開度THから決定(選択)したマップを検索し、出力シフト位置(変速段あるいは)SOを決定する。
【0078】
上記を前提として図2のフロー・チャートのS45のNAVI−AT協調制御について説明する。
【0079】
図11はその動作を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【0080】
以下説明すると、先ずS200において車両1がナビゲーション装置70を装着した車両か否か判断する。これは、前記したナビゲーション装置70のCPU72と通信可能か否かで判断する。
【0081】
S200で肯定されるときはS202に進み、ナビゲーション装置70が正常に動作しているか否か判断する。これは、ナビゲーション装置70のCPU72と通信し、ナビゲーション装置70において故障検知を示す適宜なフラグのビットが1にセットされているか否か判定することで判断する。
【0082】
S202で肯定されるときはS204に進み、GPSからの受信状態が良好か否か同様の手法で判断し、肯定されるときはS206に進み、(超過)積載重量(積載Wt)を推定する。
【0083】
図12はその作業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【0084】
以下説明すると、S300においてエンジンEの出力が正常か否か判断する。検出水温が所定範囲にあり、検出大気圧が所定大気圧以上にあって(換言すれば所定以上の高度になく)、さらに図示しないエンジン制御ECUの故障検知フラグを参照してもエンジンEに故障が検知されていないとき、エンジンEの出力が正常と判断する。
【0085】
S300で肯定されるときはS302に進み、トランスミッションTが正常か否か判断する。検出油温(ATF温度)が所定範囲にあり、さらに図示しないトランスミッション故障検知フラグを参照してトランスミッションTに故障が検知されていないとき、トランスミッションTが正常と判断する。尚、油温センサS9の設置を省略し、水温センサS7の検出値を使用しても良い。
【0086】
S302で肯定されるときはS304に進み、積載重量推定区間か否か判断する。これは、ナビゲーション装置70の情報から、現在、平坦路、即ち、勾配抵抗のない路面を走行しているか否か判断することで行う。
【0087】
S304で肯定されるときはS306に進み、前記した登坂勾配パラメータPNOAVEをしきい値#PNOHE1(図13に示す)と比較し、登坂勾配パラメータPNOAVEがしきい値#PNOHE1以上と判断されるときはS308に進み、登坂勾配パラメータPNOAVEからしきい値#PNOHE1を減算した値を(超過)積載重量推定値HWTNAVIとする。
【0088】
具体的には、図示の如く、重み係数#HKを用い、加重平均して学習制御することで(超過)積載重量推定値HWTNAVIを算出する。尚、車重(乗員数)はエンジン停止の度に変わる可能性があるので、学習値はエンジン停止後は保持しない。
【0089】
しきい値#PNOHE1は標準的な重量(2名)を積載した車両の登坂勾配パラメータを示すに足る値を実験により求めて適宜設定する。登坂勾配パラメータ(車両走行加速度)がそのしきい値以上のときは、期待する加速度が得られていない、即ち、積載重量が標準値より多いと判断し、登坂勾配パラメータPNOAVEからしきい値#PNOHE1を減算して得た差を(超過)積載重量HWTNAVIと推定する。
【0090】
図13に示す如く、乗員2名(各人体重50kgと想定)を標準とするとき、積載重量の推定値HWTNAVIは、登坂勾配パラメータPNOAVEが増加するにつれて増大するように設定される。
【0091】
一方、S304で否定され、現在、登降坂路を走行していると判断されるときはS310に進み、(超過)積載重量推定値HWTNAVIは前回値(図2フロー・チャートの前回プログラムループ時の算出値)を保持する。
【0092】
また、S300あるいはS302で否定されるときはS312に進み、積載重量は標準値とみなし、保持されている(超過)積載重量推定値HWTNAVIがあるとき、それをクリアして零にする。これは、S306で登坂勾配パラメータPNOAVEがしきい値#PNOHE1未満と判断されるときも同様である。
【0093】
図11の説明に戻ると、続いてS208に進み、NAVI協調降坂路制御を行う。
【0094】
図14はその作業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【0095】
以下説明すると、S400で登坂勾配パラメータPNOAVEを第2のしきい値#PNOH2と比較する。ここで、しきい値#PNOH2は、車両が登坂路にあることを示すに足る値を実験により求めて適宜設定する。
【0096】
S400で登坂勾配パラメータPNOAVEが第2のしきい値#PNOH2以上と判断されるときは登坂路にあると判断してS402に進み、タイマTMNAVIH(ダウンカウンタ)に所定値#TMNAVIHをセットしてスタートさせ、時間計測を開始する。
【0097】
続いてS404に進み、降坂勾配パラメータPKUAVEをPKUAVE2と書換え、S406に進み、タイマTMWTHに所定値#TMWTHをセットしてスタートさせ、時間計測を開始する。このタイマは後述するAT単独降坂制御で使用する。
【0098】
一方、S400で登坂勾配パラメータPNOAVEが第2のしきい値#PNOH2未満と判断されるときは平地あるいは降坂路にあると判断してS408に進み、登降坂補正区間、より詳しくは山岳路における距離において比較的長い、例えば1km程度の登降坂路にあるか否か判断する。これは、ナビゲーション情報から判断する。
【0099】
S408で肯定されるときはS410に進み、前記タイマTMNAVIHに所定値#TMNAVIHをセット(スタート)して時間計測を開始し、S412に進み、降坂勾配パラメータPKUAVEに前記した積載重量推定値HWTNAVIを加算して降坂勾配パラメータPKUAVEを増加補正すると共に、増加補正された値をPKUAVE2と書き換える。
【0100】
他方、S408で否定されて登降坂補正区間にないと判断されるときはS414に進み、降坂勾配パラメータPKUAVEを第3のしきい値#PKUNAVIHと比較する。ここで、しきい値#PKUNAVIHは、車両が所定勾配以上の急な降坂路にあることを示すに足る値を実験により求めて適宜設定する。
【0101】
S414で降坂勾配パラメータPKUAVEが第3のしきい値#PKUNAVIH未満と判断されるときは平地あるいは登坂路あるいは緩やかな降坂路を走行しているとみなしてS402に進むと共に、S414で降坂勾配パラメータPKUAVEが第3のしきい値#PKUNAVIH以上と判断されるときは急な降坂路を走行しているとみなしてS416に進み、前記した第1のタイマTMNAVIHの値が零に達したか否か判断する。
【0102】
S416で否定されるときはS404に進むと共に、肯定されてタイマ値が0に達したと判断されるときはS412に進み、前記した(超過)積載重量推定値HWTNAVIを降坂勾配パラメータPKUAVEに加算して増加補正し、増加補正された値をPKUAVE2と書き換える。
【0103】
図12および図14の処理について図15タイム・チャートを参照して説明すると、ナビゲーション情報および登坂勾配パラメータから平地にあると判断されるとき、換言すれば勾配抵抗の影響を受けないとき、標準値を超過する積載重量を推定する。
【0104】
次いでナビゲーション情報および登坂勾配パラメータから登降坂補正区間にあると判断されるときは、降坂勾配パラメータPKUAVEを(超過)積載重量推定値HWTNAVIだけ増加補正する。
【0105】
また、登降坂補正区間外にあっても、降坂勾配パラメータPKUAVEから急な降坂路にあると判断されるときは、その降坂路状態が所定時間#TMNANIH(より詳しくは距離において500mに相当する値)継続するときは、降坂勾配パラメータPKUAVEを同様に増加補正する。
【0106】
その結果、図4に示す如く、PKUAVE2が増加することから、図2のS46,S48ならびに図10などの処理においてマップが平坦路用から軽降坂路用、軽降坂路用から重降坂路用と切り換えられて3速域が多用され、降坂路を走行するときに運転者に意図する駆動力を与えることができる。
【0107】
特に、降坂路を走行するときにエンジンブレーキを効き易くしてブレーキ踏力を低減させることができ、降坂時のドライバビリティを向上させることができる。尚、図2あるいは図10などの処理において、PKUAVE2は、PKUAVEと等価なパラメータとして扱われる。
【0108】
この場合、ナビゲーション情報から山岳路における登降坂補正区間にあるか否か検知するので、市街地の立体交差などの短区間を登降坂補正区間と誤認することがない。また、ナビゲーション情報が誤っていたとしても、補正は、ナビゲーション情報と登坂勾配パラメータの両者が一致したときに求めた(超過)積載重量を降坂勾配パラメータに加算補正して行うので、誤ったナビゲーション情報から影響を受けることがない。
【0109】
それ以外にも、降坂勾配パラメータから降坂状態を検知して補正を行うが、降坂状態が所定時間(500m相当値)続いたときのみ行うので、同様に市街地の立体交差などの短区間で不要なマップ切り換えを行うことがない。従って、図15の市街地の立体交差等のUPDOWNと記載した箇所に破線で示すように、3速に不要にシフトダウンされることがない。
【0110】
さらに、ナビゲーション情報では補正区間などの情報を記憶すれば足り、道路勾配情報を必要としないので、データ量としても僅少で足りると共に、演算処理量も低減し、コスト的にも有利となる。さらに、ナビゲーション情報で自車位置を正確に検知できない場合でも、その影響を受けることがない。
【0111】
図11の説明に戻ると、続いてS210に進み、経路誘導中か否か判断する。これはナビゲーション装置70において経路誘導モードが選択されているか否か判定することで判断する。S210で肯定されるときはS212に進み、車両走行が経路上にあるか否か判断する。これも、ナビゲーション装置70において経路モードが選択され、かつ経路上に車両が位置しているか否か判定することで行う。
【0112】
S212で肯定されるときはS216に進み、NAVI協調降坂コーナ制御を行う。
【0113】
尚、S212で否定されるときはS214に進み、ナビゲーション情報から前方に分岐路があるか否か判断し、否定されるときはS216に進んでNAVI協調降坂コーナ制御を行うと共に、肯定されるときは、経路走行ではない場合、分岐路があるとき、運転者が分岐路のいずれを選択するか分からないので、S216(NAVI協調降坂コーナ制御)をスキップする。
【0114】
図16はそのNAVI協調降坂コーナ制御の詳細を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【0115】
以下説明すると、S500において登坂勾配パラメータPNOAVEを前記した第2のしきい値#PNOH2と再び比較し、登坂勾配パラメータPNOAVEがしきい値#PNOH2未満と判断されるときは平地あるいは降坂路を走行していると判断してS502に進み、ナビゲーション情報から進行方向前方にコーナ(湾曲路)があるか否か検出する。コーナが検知されるときは、ナビゲーション情報からコーナの曲率Rも入力する。
【0116】
S502で肯定されるときはS504に進み、スロットル開度THが所定スロットル開度#THCSNAVIを超えるか否か判断する。所定スロットル開度#THCSNAVIは、運転者がコーナでコーナスポーツマップ(特性)に基づく変速制御を意図しているか否か判断するためのしきい値であり、実験により求めて適宜設定する。
【0117】
S504で否定されるときは運転者にそのような意図が見られないと判断してS506に進み、降坂勾配パラメータPKUAVEに所定値HCUNAVInを加算して増加補正し、増加補正された値をPKUAVE2と書き換える。その結果、重降坂マップあるいは軽降坂マップが選択されることになる。所定値HCUNAVInは固定値ではなく、車速と(後述する図18(a)に示す如く)コーナの曲率Rが増加するほど増大するように設定する。
【0118】
他方、S504で肯定されるときは運転者にそのような意図が見られると判断してS508に進み、コーナスポーツマップ判定フラグF.CSNAVIのビット(初期値0)を1にセットする(その結果、図10のS141で肯定されてS142に進み、コーナスポーツマップが選択される)。次いでS510に進み、降坂勾配パラメータPKUAVE2に第2の所定値HCSNAVInを加算して増加補正する。
【0119】
この実施の形態において、図4および図5に示す如く、コーナスポーツマップは重降坂用マップ(マップ番号4)と等価な関係にあり、重降坂マップが選択される状態にあるとき、スロットル開度が前記所定値#THCSNAVIを超えればコーナスポーツマップが、然らざれば重降坂マップが選択されるように構成される。
【0120】
コーナスポーツマップは図9に示す如く、重降坂用マップに比較して3速領域が拡大されていることから、図17タイム・チャートに示す如く、降坂時にコーナを走行するとき、3速が使用され、運転者の意図通りの特性を与えることができる。
【0121】
ここで、所定値HCSNAVInも、前記した所定値HCUNAVInと同様に、車速の増加に応じて増大するように設定すると共に、図18(b)に示す如く、コーナの曲率Rが増加するにつれて増大するように設定する。
【0122】
それによって、コーナの曲率が増すにつれて3速領域が多用されることになり、運転者の意図する駆動力増加に良く応えることができ、ドライバビリティを向上させることができる。これは分岐路を経由した場合も同様である。図17の下部および図18(c)(d)に示す如く、かかる制御が行われなければ、4速に制御され、運転者の意図に良く応えることができない。尚、この実施の形態では3速、4速の場合を説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、車速、コーナ曲率、スロットル開度に応じて1速から3速の間でも適宜設定することができる。その場合には図18(a)のマップ特性をそれに応じて設定すれば良いので、詳細な説明は省略する。
【0123】
尚、図16においてS500で登坂勾配パラメータPNOAVEがしきい値#PNOH2以上と判断されるときは登坂路を走行していると推定されるので、S512に進み、前記フラグのビットを0にリセットする。S502で進行方向前方にコーナがないと判断されるときも同様である。
【0124】
図11に戻ると、S200ないしS204のいずれかで否定されるとき、即ち、ナビゲーション装置を装着していない、ナビゲーション装置が正常に動作していない、あるいはGPSの受信状態が良好ではないときは、ナビゲーション情報を使用し難いことから、S218に進み、ナビゲーション情報なしの降坂制御(以下「AT単独降坂路制御」という)を行う。
【0125】
図19はその作業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【0126】
以下説明すると、S600において降坂勾配パラメータPKUAVEを所定値#PKUWTHと比較する。所定値#PKUWTHは、単独降坂制御を行う降坂路にあるか否かを判定するためのしきい値であり、適宜実験により求めて設定する。
【0127】
S600で降坂勾配パラメータPKUAVEが所定値#PKUWTH未満と判断されるときは平地あるいは登坂路を走行しているとみなしてS602に進み、タイマTMWTH(ダウンカウンタ)に所定値#TMWTHをセットしてスタートさせ、時間計測を開始し、S604に進み、降坂勾配パラメータPKUAVEをPKUAVE2と書き換える。
【0128】
続いてS606に進み、NAVI協調降坂路制御で使用するタイマTMNAVIHに所定値#TMNAVIHをセットしてスタートさせ、時間計測を開始する。
【0129】
他方、S600で降坂勾配パラメータPKUAVEが所定値#PKUWTH以上と判断されるときは降坂路とみなしてS608に進み、前記したタイマTMWTHの値が0になったか否か判断し、否定されるときはS604に進む。
【0130】
次回以降のプログラムループにおいてS608でタイマ値が零に達して肯定されるときはS610に進み、降坂勾配パラメータPKUAVEに所定値HKUWTを加算して増加補正し、増加補正値をPKUAVE2と書き換える。
【0131】
図20はその所定値HKUWTのテーブル特性を示す説明グラフである。図示の如く、所定値HKUWTは、車速が増加するにつれて増大するように設定する。
【0132】
図21は図19に示すAT単独降坂路制御の内容を示すタイム・チャートである。
【0133】
上記した如く、所定勾配(#PKUWTH相当値)が所定時間(#TMWTH)続くとき、降坂勾配パラメータPKUAVE(PKUAVE2)は増加補正される結果、重降坂マップが選択され、3速領域が多用されることから、十分なエンジンブレーキ効果を得ることができる。
【0134】
この実施の形態は上記の如く構成したので、ナビゲーション情報を変速制御に取り入れて変速比を一層適正に決定することができると共に、ナビゲーション情報に道路勾配情報を含めることを必要とせずに、積載重量を推定して勾配パラメータを補正することができ、それに基づいて適正に変速比を決定することができる。
【0135】
さらに、ナビゲーション情報では補正区間などの情報を記憶すれば足り、道路勾配情報を必要としないので、データ量としても僅少で足りると共に、演算処理量も低減し、コスト的にも有利となる。さらに、ナビゲーション情報で自車位置を正確に検知できない場合でも、その影響を受けることがない。
【0136】
さらに、山岳路の登降坂、特に降坂路を走行するとき、3速領域を多用させることができ、エンジンブレーキを効き易くしてブレーキ踏力を低減させることができる。よって、降坂路を走行するときのドライバビリティを向上させることができる。
【0137】
この実施の形態は上記したように、車速Vとスロットル開度THから車両1の登坂あるいは降坂勾配を示す勾配パラメータPNOAVE,PKUAVEを求め、前記求めた勾配パラメータから予め設定された複数の変速特性(マップ)のいずれかを選択し、前記選択した変速特性に基づいて変速比SOを決定する変速制御手段を備えた自動変速機の制御装置において(CPU50,S10からS50)、前記車両の現在位置を検出し、検出された現在位置を含む走行路の登降坂状態を含む走行路情報(ナビゲーション情報)を出力する走行路情報出力手段(ナビゲーション装置70,CPU50)、前記走行路情報に基づいて前記車両が前記所定の、即ち登降坂補正区間にあるか否か判定する補正区間判定手段(CPU50,S45,S208,S408)、前記走行路情報に基づいて前記車両が所定の積載重量推定区間にあると判断されるとき、前記勾配パラメータPNOAVEを所定値#PNOHE1と比較し、前記勾配パラメータが前記所定値以上の場合に前記車両の積載重量推定値HWTNAVIを算出する積載重量推定値算出手段(CPU50,S45,S206,S304,S306,S308)、および前記算出された積載重量推定値に基づいて前記所定の(登降坂)補正区間あるいは降坂路を走行するとき前記勾配パラメータを補正する勾配パラメータ補正手段(CPU50,S45,S208,S400からS416)を備えると共に、前記変速制御手段は、前記補正された勾配パラメータに基づいて前記複数の変速特性のいずれかを選択し、前記選択した変速特性(マップ)に基づいて変速比SOを決定する(CPU50,S10からS50)如く構成した。
【0138】
尚、上記においてGPS信号から現在位置を検知するナビゲーション装置を用いたが、その他の手法で現在位置を検知するものであっても良い。
【0139】
【発明の効果】
請求項1項にあっては、走行路情報(ナビゲーション情報)を変速制御に取り入れて変速比を一層適正に決定することができると共に、ナビゲーション情報に道路勾配情報を含めることを必要とせずに積載重量を推定して勾配パラメータを補正することができ、それに基づいて適正に変速比を決定することができる。
【0140】
さらに、ナビゲーション情報では補正区間などの情報を記憶すれば足り、道路勾配情報を必要としないので、データ量としても僅少で足りると共に、演算処理量も低減し、コスト的にも有利となる。さらに、ナビゲーション情報で自車位置を正確に検知できない場合でも、その影響を受けることがない。
【0141】
さらに、山岳路の登降坂、特に降坂路を走行するときなど、3速領域などが多用されるように変速比を決定することができ、ドライバビリティを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る自動変速機の制御装置を全体的に示す概略図である。
【図2】図1に示す装置の動作を示すフロー・チャートである。
【図3】図2フロー・チャートの変速制御で使用する予想加速度と実加速度ならびに差分平均値(勾配パラメータ)によるマップ選択を示す説明図である。
【図4】図2フロー・チャートで使用する差分平均値(勾配パラメータによるマップ選択)を示す説明図である。
【図5】同様に、図2フロー・チャートで使用する差分平均値(勾配パラメータによるマップ選択)を示す説明図である。
【図6】図2フロー・チャートで使用する複数のマップのうち、平坦路用マップの特性を示す説明グラフである。
【図7】図2フロー・チャートで使用する複数のマップのうち、軽登坂(降坂)用マップの特性を示す説明グラフである。
【図8】図2フロー・チャートで使用する複数のマップのうち、重登坂用マップの特性を示す説明グラフである。
【図9】図2フロー・チャートで使用する複数のマップのうち、コーナスポーツマップの特性を示す説明グラフである。
【図10】図2フロー・チャートの中のMAPS決定作業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【図11】図2フロー・チャートの中のNAVI−AT協調制御の詳細を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【図12】図11フロー・チャートの中の積載重量推定作業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【図13】図12フロー・チャートで使用する値の特性を示す説明グラフである。
【図14】図11フロー・チャートの中のNAVI協調降坂路制御の詳細を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【図15】図14フロー・チャートの処理を説明するタイム・チャートである。
【図16】図11フロー・チャートの中のNAVI協調降坂コーナ制御の詳細を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【図17】図16フロー・チャートの処理を説明するタイム・チャートである。
【図18】図16フロー・チャートで使用する値の特性を示す説明グラフである。
【図19】図11フロー・チャートの中のAT単独降坂制御の詳細を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【図20】図19フロー・チャートで使用する値の特性を示す説明グラフである。
【図21】図19フロー・チャートの処理を説明するタイム・チャートである。
【符号の説明】
1 車両
E 内燃機関(エンジン)
T 自動変速機(トランスミッション)
O 油圧制御回路
50 ECUのCPU
70 ナビゲーション装置
S1 スロットル開度センサ
S2 車速センサ
Claims (1)
- 車速とスロットル開度から車両の登坂あるいは降坂勾配を示す勾配パラメータを求め、前記求めた勾配パラメータから予め設定された複数の変速特性のいずれかを選択し、前記選択した変速特性に基づいて変速比を決定する変速制御手段を備えた自動変速機の制御装置において、
a.前記車両の現在位置を検出し、検出された現在位置を含む走行路の登降坂状態を含む走行路情報を出力する走行路情報出力手段、
b.前記走行路情報に基づいて前記車両が所定の補正区間にあるか否か判定する補正区間判定手段、
c.前記走行路情報に基づいて前記車両が所定の積載重量推定区間にあると判断されるとき、前記勾配パラメータを所定値と比較し、前記勾配パラメータが前記所定値以上の場合に前記車両の積載重量推定値を算出する積載重量推定値算出手段、
および
d.前記算出された積載重量推定値に基づいて前記所定の補正区間を走行するとき前記勾配パラメータを補正する勾配パラメータ補正手段、を備えると共に、前記変速制御手段は、前記補正された勾配パラメータに基づいて前記複数の変速特性のいずれかを選択し、前記選択した変速特性に基づいて変速比を決定することを特徴とする自動変速機の制御装置。
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