JP3909259B2 - 内径加工用スローアウェイチップ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、OA機器用部品、電子部品、小径ベアリング等の精密小型製品に対して高精度に極小内径の加工が可能な内径加工用スローアウェイチップに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、極小径の内径加工が可能な内径加工用スローアウェイチップとして、図5に示すように、工具ホルダ21の先端部に多角形形状のスローアウェイチップ22を装着したものが用いられており、また、特開平11−320217号において、図6に示すような工具ホルダへの取付部(クランプ用部位)の側面に先端に切刃稜を具備する小径棒状部を形成したスローアウェイチップが提案され、極小径の内径加工が可能となると記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平11−320217号に記載された内径加工用スローアウェイチップでは、加工時の寸法精度および研削面の面粗度が不十分である場合があり、これを解消するために切刃稜部に円弧状ノーズ切刃稜部分を形し、該円弧状ノーズ切刃稜部分を研磨加工によって切刃稜を所定形状に加工する方法が考えられるが、円弧状ノーズ切刃稜部分のみを研磨加工すると加工時の位置ずれによって研磨される領域がばらつき、切刃稜の形状が図7に示すようにノーズ部から横逃げ面の間に不連続なエッジ20ができてしまい、被削材の加工面粗さが悪くなる恐れがあるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、高精度な加工および平滑な被削材の加工面を達成しうる内径加工用スローアウェイチップを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について検討した結果、工具本体への取付部から先端に切刃稜を具備する小径棒状部を突出させた内径加工用スローアウェイチップの切刃稜を前逃げ面から円弧状ノーズ切刃稜部分を経由して横逃げ面に段差が残存するように研磨加工することにより、研削に関与する円弧状ノーズ切刃稜部分から段差部までの横逃げ面にわたる領域を所望する形状に確実にでき、バラツキのない確実な加工が可能となることから、高精度で被削材の加工面粗度が高い加工が可能となることを知見した。
【0006】
すなわち、本発明の内径加工用スローアウェイチップは、工具ホルダーへの取付部と、この取付部に連続する先端側に切刃稜を備えた小径棒状部とからなる内径加工用スローアウェイチップであって、前記切刃稜のノーズに円弧状部を形成するとともに、前記切刃稜に連続する横逃げ面に段差部を形成し、前記円弧状部に沿った逃げ面から前記横逃げ面の段差部にわたる面領域が研磨加工された面でなるとともに、前記横逃げ面において、前記段差部が研磨加工有無の境界となっていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の内径加工用スローアウェイチップにおいて、前記切刃稜に沿った前逃げ面から前記横逃げ面の段差部にいたる研磨面を備え、この研磨面の表面粗さ(Ry)が2μm以下であること、前記円弧状部を2分割する外挿線L1と前記段差部と前記円弧状部の先端とを結ぶ直線L2とのなす角が35°〜55°であること、並びに、前記段差部の突出高さhが0.1〜0.5mmであることが望ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の内径加工用スローアウェイチップ(以下、単にチップと略す。)について、その一実施例であるチップ1を工具ホルダ2に装着した内径加工用切削工具(以下、単に工具と略す。)Aを基に説明する。
【0009】
図1によれば、チップ1は、工具ホルダー2のチップホルダ3内にチップ1の平板状基部8(工具ホルダーへの取付部)が配設され、ネジ部材6にて固着されている。
【0010】
また、図1によれば、チップ1は、主面が概略多角形(図1では長方形の一端にテーパーを設けた五角形)の平板状基部8と、平板状基部8から突出する小径棒状部10と、小径棒状部10の先端に配設される切刃稜11とを具備している。また、切刃稜11のノーズには円弧状部14が形成されている。
【0011】
本発明によれば、上記チップ1は、切刃稜11についての要部拡大図である図2に示すように、切刃稜11の前逃げ面13から(円弧状部14に沿った逃げ面を経由して)横逃げ面15の途中までにわたって段差部16が残存するように研磨加工が施され、横逃げ面15に研磨加工有無の境界による段差部16が形成されており、これによって、切刃稜11における円弧状部14に沿った逃げ面から横逃げ面にわたる切削に関与する領域を所定形状に確実に仕上げることができる。その結果、被削材に対して高精度な加工が可能となるとともに、被削材加工面の面粗度をばらつきなく確実に平滑なものとすることができる。
【0012】
ここで、段差部16が切削中に被削材と接触することなく、切削に関与する横逃げ面を確実に平滑な形状として安定した切削加工を行うことができるとともに、研磨加工に要する費用および時間を節約し、かつ切刃稜11の強度を維持するために、前記円弧状部14を2分割する外挿線L1と段差部16と円弧状ノーズ切刃稜部分14の先端とを結ぶ直線L2とのなす角θが15°〜80°、特に30°〜60°、さらに45°〜55°であることが望ましく、段差部16の高さhと円弧状ノーズ切刃稜部分14の曲率半径Rの比が0.1〜0.5、特に0.1〜0.2であることが望ましい。なお、本発明において円弧状ノーズ切刃稜部分14の先端とは、前記円弧状部14とこれを2分割する外挿線L1との交点を意味する。
【0013】
なお、前記円弧状部14を2分割する外挿線L1は、円弧状部14の両端側の2つの直線状切刃稜の二等分線である。
【0014】
さらに、前記研磨加工に際しては、被削材加工面の面粗度を向上させるために、研磨加工を施した面の表面粗さ(Ry)が2μm以下、特に1μm以下の表面粗さであることが望ましい。
【0015】
また、本発明によれば、図3の側面図に示すように、切刃稜11に連続するすくい面11aを下に凸状の湾曲面としブレーカとして機能させることもでき、これによって、切削時に発生する切屑を良好に加工穴外に排出することができる。
【0016】
なお、図3における小径棒状部10のA−A断面の形状は、図4に示すように、加工済みの被削材と接触することなく極小径の内径加工が容易にでき、切り屑の排出性を高め、小径棒状部10の機械的強度を維持する点で、(a)円、(b)楕円、(c)所望によりコーナーRを有する多角形、(d)側面領域がカットされた円形、またはそれらを部分的に組み合わせた形状が好適に使用できる。また、小径棒状部10の突き出し長さw2は平板状基部8の長手方向の長さw1に対する比w2/w1が0.15〜1.8であることが望ましい。
【0017】
さらに、その小径棒状部6の先端部分は、製造が容易な点および小径棒状部10のつけ根部分の強度を向上する点で厚みを減じることもでき、平板状基部8の厚みt1に対する小径棒状部6の厚みt2は、小径の穴加工ができるとともに小径棒状部6の剛性、強度を高めて小径棒状部6のたわみや破損を防止できる点で、厚み比(t2/t1)が0.1〜1、特に0.15〜0.5であることが望ましい。
【0018】
また、平板状基部8には厚さ方向に貫通するクランプねじ用の貫通孔18が配設されており、貫通孔18および工具ホルダー2のチップポケット3内に形成されるネジ孔(図示せず)内にネジ部材6をネジ止めすることによってチップ1をホルダ2に装着することができる。なお、貫通孔18のすくい面側の周縁にはテーパーを形成することが望ましい。
【0019】
さらに、平板状基部8の裏面(着座面)にはチップ1の反りによる拘束力低下を防止するために3つの突起(図示せず)を設けることも可能である。
【0020】
さらにまた、チップ1をクランプする形態としては、上記クランプネジによるねじ止め以外にも、ホルダーシャンク4へクランプ駒を装着してクランプオン方式とする方法であってもよく、この場合にはチップ本体8には貫通孔18に代えて凹状のクランプ駒の受け部(図示せず)を設けるか、またはチップ本体8の主面が平坦面であってもよい。
【0021】
また、上述したチップ1を保持するホルダ2は、例えば、図1に示されるような断面が角形をなす柱状のホルダーシャンク4の先端にチップポケット3が形成された形状からなり、工具ホルダー2のホルダーシャンク4が刃物台(図示せず)の所定位置に固定される。
【0022】
そして、上記構成からなる本発明の内径加工用スローアウェイチップは、高精度で平滑な加工面の内径加工が可能であることから、特に加工径が8mm以下、さらに4mm以下の極小径の内径加工が可能であることから、例えば、パソコン等のOA機器や電子部品、精密部品の加工に適し、精度よく加工することが可能となる。
【0023】
以上、本発明の実施形態を図に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の目的を逸脱しない限り任意の形態とすることができることは言うまでもない。
【0024】
例えば、本実施形態では平板状基部2の周面から小径棒状部10を一体的に突出させたものであって、工具ホルダー2への固定部としての平板状基部2を設けたチップを説明するが、本発明はこれに限定されず、例えば、工具ホルダーへの固定部として円柱状の取付部を設け、この取付部を工具取付穴を設けた工具ホルダーの該工具取付穴に挿入固定するタイプの内径加工用スローアウェイチップであっても良い。
【0025】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明の内径加工用スローアウェイチップによれば、工具ホルダーへの取付部と、この取付部に連続する先端側に切刃稜を備えた小径棒状部からなる内径加工用スローアウェイチップであって、前記切刃稜のノーズに円弧状部を形成するとともに、この切刃稜に連続する横逃げ面に段差部を形成し、前記円弧状部に沿った逃げ面から前記横逃げ面の段差部にわたる面領域が研磨加工された面でなるとともに、前記横逃げ面において、前記段差部が研磨加工有無の境界となっていることにより、円弧状ノーズ切刃稜部分から横逃げ面にわたる領域を所望する形状に確実にでき、バラツキのない確実な加工が可能となることから、高精度で被削材の仕上げ面粗度が高い加工が可能となる。
【0026】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の内径加工用スローアウェイチップをチップホルダに装着した内径加工用切削工具の一例を示す正面図である。
【図2】図1の内径加工用の切刃稜部分についての要部拡大図である。
【図3】図1の内径加工用スローアウェイチップの側面図である。
【図4】図3の内径加工用スローアウェイチップにおける小径棒状部A−A断面の形状を説明するための図である。
【図5】従来の内径加工用スローアウェイチップの一例を備えた内径加工用切削工具を示す正面図である。
【図6】従来の内径加工用スローアウェイチップの他の一例を備えた内径加工用切削工具を示す正面図である。
【図7】図6の内径加工用スローアウェイチップの切刃稜部分の要部拡大図である。
【符号の説明】
A 内径加工用切削工具(工具)
1 スローアウェイチップ(チップ)
2 工具ホルダー
3 チップポケット
4 ホルダーシャンク
6 ネジ部材
8 チップ本体
w1 長手方向の長さ
t1 厚み
10 小径棒状部
w2 突き出し長さ
t2 小径棒状部の先端部分の厚み
11 切刃稜
L1 円弧状ノーズ切刃稜部分を2分割する外挿線
L2 段差部と円弧状ノーズ切刃稜部分の先端とを結ぶ直線
θ 直線L1と直線L2とのなす角
h 段差部の突出高さ
13 前逃げ面
14 円弧状部(ノーズ)
R 曲率半径15 横逃げ面
16 段差部
18 貫通孔
Claims (4)
- 工具ホルダーへの取付部と、この取付部に連続する先端側に切刃稜を備えた小径棒状部とからなる内径加工用スローアウェイチップであって、前記切刃稜のノーズに円弧状部を形成するとともに、前記切刃稜に連続する横逃げ面に段差部を形成し、前記円弧状部に沿った逃げ面から前記横逃げ面の段差部にわたる面領域が研磨加工された面でなるとともに、前記横逃げ面において、前記段差部が研磨加工有無の境界となっていることを特徴とする内径加工用スローアウェイチップ。
- 前記切刃稜に沿った前逃げ面から前記横逃げ面から前記前逃げ面の段差部にいたる研磨面を備え、この研磨面の表面粗さ(Ry)が2μm以下であることを特徴とする請求項1記載の内径加工用スローアウェイチップ。
- 前記円弧状部を2分割する外挿線L1と前記段差部と前記円弧状部の先端とを結ぶ直線L2とのなす角が35°〜55°であることを特徴とする請求項1または2記載の内径加工用スローアウェイチップ。
- 前記段差部の突出高さhが0.1〜0.5mmであることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の内径加工用スローアウェイチップ。
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