JP3908532B2 - 溶接用アルミニウム合金ワイヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、Fe,CrおよびMnを含有する溶接用アルミニウム合金ワイヤに関するものであり、より詳細には、ワイヤの送給性を向上する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
船舶や車両などに用いられているアルミニウムやアルミニウム合金を溶接する際には、アーク溶接法(例えば、TIG溶接法や消耗電極式ガスシールドアーク溶接法など)が従来から採用されている。特に消耗電極式ガスシールドアーク溶接法(例えば、MAG溶接法やMIG溶接法など)では連続溶接が可能であり、広く用いられている。
【0003】
図1は、消耗電極式ガスシールドアーク溶接装置の一例を説明する図である。スプール1に巻かれた5〜10kg程度の溶接用アルミニウム合金ワイヤ(以下、「溶接用ワイヤ」や単に「ワイヤ」と称する場合がある)2は、送給装置3に備えられたガイドローラ4を介した後プッシュ方式の送給ローラ5で送り出され、フレキシブルなコンジットチューブ6を介してその端部に接続された溶接トーチ(以下「トーチ部」と称する場合がある)7内に送られる。溶接トーチ7内では、通電チップ(以下「チップ部」と称する場合がある)8によってワイヤに接触給電され、ワイヤ先端と母材9との間にアークが発生する。この発生したアークによって母材9は溶融して掘り下げられ、一方ワイヤは大気と遮断されたシールドガス中で溶滴状となり、母材9側に移行して溶融プールを生成し、この溶融プールが凝固することによって溶接部が形成される。
【0004】
上記の様な溶接を行う際に良好な溶接部を得るためには、コンジェットチューブ内やトーチ部、チップ部などにおける溶接用ワイヤの送給性が重要な要件となる。つまり、溶接用ワイヤの送給性が悪くなると、通電チップを通過する際のワイヤの通過速度(送給速度)が不安定になるので、良好な溶接部が得られるように予め設定されている溶接電流とアーク電圧との関係が維持できなくなるからである。このような不具合現象を一般に「アーク不安定」と称しており、この結果良好な溶接部を形成できず、融合不良や形状不良を起こすのである。さらに、通電チップを通過する際のワイヤの通過速度が不安定になると、ワイヤがチップ部において過剰に通電され、溶融したワイヤが通電チップへ融着するといった事態を招くこともある。
【0005】
送給性を向上させたアーク溶接用アルミニウムワイヤとして、例えば、特開平5-277786号公報には、線状の溶接用アルミニウムワイヤの表面に油を付着させたものが提案されている。しかし、ワイヤに油を付け過ぎると水素増加によるブローホールの発生といった新たな問題が生じることになる。
【0006】
一方、溶接用アルミニウム合金ワイヤとしては、Al−Mg系合金(例えば、JIS Z3232 A5356やA5183,A5556,A5554など)が広く用いられているが、これは例えば鋼ワイヤと比べると柔らかいので、送給ローラで削られ易く、アルミ微粉がコンジットチューブ内に堆積してワイヤの定速送給を阻害することがある。そこで、本発明者らはワイヤ表面の平滑度を高めることによって送給ローラで削られ難くしたワイヤを先に提案しており(特開平7-32186号公報)、効果を挙げている。しかしながら、このワイヤを製造する際の条件制御が難しく、さらなる改良が望まれていた。
【0007】
さらに、溶接後の継手部には、ある程度の強度が必要となるが、強度を向上させる手段としては、ワイヤの成分組成を調整する方法が一般的である。例えば、ワイヤにFeやCr,Mnなどの元素を含有させることによって継手強度を高める方法がある(例えば、「溶接学会誌」(2001)Vo.70,P.45やJIS Z3604 選定指針組合わせ表など)。しかし、ワイヤにこの様な元素を含有させると、溶接後の継手強度は高くなるものの、ワイヤの送給性が却って劣化して安定したアーク溶接が実現できないことがあった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワイヤの送給性を向上させることによって安定したアーク溶接が可能であり、且つ、溶接後の継手における強度を確保できる溶接用アルミニウム合金ワイヤを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明に係る溶接用アルミニウム合金ワイヤとは、Fe,CrおよびMnを夫々含有する溶接用アルミニウム合金ワイヤであって、Fe,CrおよびMnの固溶量の総和が0.160質量%以下(0質量%を含む)であり、且つ、Feの固溶量が0.015質量%以下(0質量%を含む)、Crの固溶量が0.1質量%以下(0質量%を含む)である点に要旨を有し、さらにMnの固溶量が0.15質量%以下(0質量%を含む)であることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る溶接用アルミニウムワイヤの成分として、Fe:1質量%以下(0質量%を含まない)、Cr:0.01〜0.5質量%およびMn:0.01〜1.2質量%、を夫々含有することによって溶接後の継手の強度を向上させることができる。本発明では、さらに他の元素として、Mg:1.5〜6質量%を含有することによって一層の効果を奏する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、上記課題を解決すべく様々な角度から検討した結果、アーク不安定になる現象は、
▲1▼コンジットチューブ(送給経路)が長い場合や、
▲2▼溶接トーチの近傍でコンジットチューブを強く曲げた場合、
▲3▼コンジェットチューブの巻き径が小さい場合、
▲4▼長時間連続して溶接を行う場合、
などに顕著に生じることを知った。そして、これらの様な場合であっても安定したアーク溶接を実現できる溶接用アルミニウム合金ワイヤの実現を目指してさらに鋭意検討を重ねた。その結果、溶接用ワイヤを低耐力化すると、上記課題を見事に解決できることを見出し、本発明を完成した。以下、本発明の作用効果について説明する。
【0012】
上記の様な場合に特にアーク不安定が発生する原因について検討したところ、この原因は溶接用ワイヤに付いた癖にあることが分かった。すなわち、上述した様に溶接用ワイヤはスプールに巻かれているのが一般的であるが、このとき溶接用ワイヤは塑性変形して「巻き癖」が付くのである。そして、巻き癖の付いた溶接用ワイヤがコンジットチューブ内を通ると、ワイヤとコンジェットチューブとの間に摩擦抵抗が発生するので、送給径路が長ければ長いほど抵抗が大きくなり送給速度を不安定とし、これによってアーク発生も不安定になるのである。また、コンジェットチューブが強く曲げられている場合やコンジェットチューブが小さい径で束ねられている場合では、このチューブ内を溶接用ワイヤが通るときに癖が付いてしまうこととなる。さらに、長時間連続して溶接すると、スプールに巻かれている溶接用ワイヤの巻き径は徐々に小さくなるので、これに伴って溶接用ワイヤの癖も顕著になるのである。
【0013】
本発明者らは、溶接用ワイヤに癖を付き難くするか或いはワイヤに付いた癖が直りやすければ、ワイヤの送給性を向上させることができ、アーク不安定といった不具合が生じないのではないかという着想の下で検討した。そして、本発明者らは、この様なワイヤを実現するためには、ワイヤの耐力を小さくすれば良いことに想到した。しかしながら、その一方で溶接後の継手強度は、少なくとも従来程度に確保する必要があるので、ワイヤには各種元素を含有させる必要がある。
【0014】
こうした観点から本発明では、溶接後の継手強度を確保するために溶接用アルミニウム合金ワイヤの成分としてFe,CrおよびMnを夫々含有し、且つ、ワイヤの耐力をできる限り小さくするためにワイヤ中におけるFe,CrおよびMnの固溶量の総和と、FeとCrの各固溶量を適切に規定して、継手部の強度とワイヤの耐力とのバランスを図ったのである。各成分の固溶量の範囲を限定した理由は下記の通りである。
【0015】
Fe,CrおよびMnの固溶量の総和が 0.160 %(「質量%」の意味。以下同じ。)以下( 0 %を含む)
溶接後の継手強度を確保するためには、Fe,CrおよびMn元素をワイヤに含有させる必要があるが、これらの元素がワイヤ中に多く固溶すると、固溶強化が起こりワイヤの耐力が大きくなる。ワイヤの耐力が大きくなると、ワイヤに付いた癖が直り難くなるので、ワイヤを送給する際の抵抗が大きくなって送給性が低下する。よって、アーク発生が不安定になるのである。本発明ではワイヤに含有しているFe,CrおよびMn等の元素は、化合物として存在していることが好ましく、ワイヤに固溶しているFe,CrおよびMnの量は、総量で0.160%以下、好ましくは0.15%以下に低減することが必要である。尚、ワイヤに固溶している各元素の総量は0%であることが最も好ましい。
【0016】
Feの固溶量が 0.015 %以下( 0 %を含む)
Feは、溶接用アルミニウム合金ワイヤを固溶強化させやすい元素であるので、前記各元素の固溶量の総和が本発明で規定する範囲であっても、Feの固溶量が0.015%を超えるとワイヤの耐力が大きくなってワイヤに付いた癖が直り難くなる。よって、ワイヤの送給抵抗が大きくなり、安定したアークを実現できない。ワイヤの耐力を小さくするためには、ワイヤ中におけるFeの固溶量を0.015%以下にする必要がある。好ましくは固溶量を0.014%以下にするのが望ましい。
【0017】
Crの固溶量が 0.1 %以下( 0 %を含む)
Crは、Feと同様にアルミニウム合金ワイヤを固溶強化させやすい元素であるので、Crの固溶量が0.1%を超えるとワイヤの耐力が大きくなり、ワイヤの送給性を低下させる。よって、安定したアークを実現することができない。耐力が小さいワイヤにするためには、ワイヤ中におけるCrの固溶量を0.1%以下にする必要がある。好ましくは固溶量を0.09%以下にするのが推奨される。
【0018】
本発明では、ワイヤ中におけるFe,CrおよびMnの固溶量の総和と、FeとCrの各固溶量が上記範囲を満足することが重要であり、Mnの固溶量は特に限定されないが、ワイヤの耐力を一層小さくしてワイヤの送給性を向上させるといった観点から、ワイヤ中におけるMnの固溶量は0.15%以下であることが好ましい。より好ましくは0.13%以下にすることが推奨される。
【0019】
本発明に係る溶接用アルミニウム合金ワイヤは、少なくともFe,CrおよびMnを含有するものであり、その含有量は特に限定されないが、溶接後の継手強度を確保する観点から、Fe:1%以下(0%を含まない)、Cr:0.01〜0.5%、Mn:0.01〜1.2%の範囲に制御することが好ましい。尚、これらの範囲は、ワイヤ中に含有させている各元素の範囲であり、ワイヤ中に存在している固溶体も含む。これら各成分の限定理由は下記の通りである。
【0020】
Fe: 1 %以下( 0 %を含まない)
Feは、一般的にアルミニウムワイヤ中に不純物として含有しているが、その含量が1%を超えると溶接後の継手部分に化合物を生じやすくなり、この化合物が継手強度を低下させる原因となる。よって、本発明ではFe含量を1%以下にすることが好ましく、より好ましくは0.9%以下にすることが望ましい。尚、本発明では、溶接後の継手強度を確保するために、Feを含有する必要があるので、Fe含有量が0%の場合は本発明ではない。
【0021】
Cr: 0.01 0.5
Crは、溶接後の継手部におけるAlの結晶粒を微細化すると共に、結晶粒径を均一化して継手強度を向上させる元素であり、その効果を得るためには0.01%以上含有することが好ましい。より好ましくは0.02%以上含有するのが良い。しかし、その含量が0.5%を超えると、溶接後に粗大な金属間化合物を生成して継手強度を低下させる原因になるので、好ましい上限は0.5%、より好ましい上限は0.4%である。
【0022】
Mn: 0.01 1.2
Mnは、溶接後の継手部におけるAlの結晶粒を微細化すると共に、結晶粒径を均一化して継手強度を向上させる元素である。また、AlやFeと結合してAl−Fe−Mn系の化合物を生成して、継手強度を向上させることができる。この様な効果を得るためには、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上含有するのが良い。しかし、Mn含量が1.2%を超えると、溶接後の継手部に巨大な化合物を生成して強度を低下する原因となるので、好ましい上限は1.2%、より好ましい上限は1.1%である。
【0023】
本発明に係る溶接用アルミニウム合金ワイヤの好ましい化学成分組成は上記の通りであり、残部は基本的にアルミニウムおよび不可避不純物(ZrやV,Ag,Bi,Pb,Gaなど)からなるが、必要に応じてさらに他の元素としてMgを1.5〜6%含有することが推奨される。この理由は下記の通りである。
【0024】
Mg: 1.5 6
Mgは、溶接後の継手部で固溶強化を起こし、継手部の強度を高める元素である。この様な効果を得るためには、Mgを好ましくは1.5%以上、より好ましくは2%以上含有することが望ましい。しかし、過剰に含有すると、ワイヤを伸線加工する際に割れが発生し易くなるので、好ましくい上限は6%、より好ましい上限は5.5%である。
【0025】
また、Mgを含有する溶接用アルミニウム合金ワイヤであって、その成分組成が5000系であるときは、前記不可避不純物としてSiを含有することがある。Si含有量が1%超になると、溶接後の継手部にMg−Si系化合物などを生成して、継手部の強度を低下させる原因となるので、Si含量を好ましくは1%以下、より好ましくは0.9%以下に抑制することが望ましい。
【0026】
さらに必要に応じて上記各元素に加えて、CuやZn,Ti,Sn,Ni,Bなどの各元素をワイヤに含有させると、溶接後の継手部における強度をさらに高めることができる。本発明では、各元素の含有量の好ましい上限は夫々0.1%であり、二種以上の元素を含有するときは総量で0.2%以下にすることが推奨される。
【0027】
本発明はワイヤの耐力を小さくすることによって、ワイヤに癖を付き難くするか、癖がワイヤに付いていても直りやすくしてワイヤの送給による抵抗を小さくして、アークの発生を安定にするものであるが、ワイヤの耐力は引張試験で測定したときに300〜480N/mm2程度であることが好ましいことを確認している。ワイヤの耐力が300N/mm2未満では、ワイヤが例えばコンジェットチューブ内を通過するときに、座屈しやすくなってワイヤの送給が停止することがある。しかし、ワイヤの耐力が480N/mm2を超えると、ワイヤに付いた癖が直り難くなるので、ワイヤとコンジェットチューブ内壁との摩擦力が大きくなり好ましくない。
【0028】
本発明に係る溶接用アルミニウム合金ワイヤを製造するに際しては、ワイヤ中に存在する各元素の固溶量が本発明の要件を満足するものであれば特に限定されない。例えば、下記に示す方法が挙げられる。
【0029】
アルミニウム鋳塊は、半連続鋳造法(DC鋳造)や連続鋳造法などで製造すれば良い。但し、ワイヤ中の各元素の固溶量は、アルミニウム鋳塊時での固溶量に大きく影響を受けるので、アルミニウム鋳塊を製造するに際して固溶量を低減することが好ましい。例えば、アルミニウム鋳塊を製造する際の凝固速度や冷却速度を遅くする方法が挙げられる。
【0030】
得られたアルミニウム鋳塊は、熱間圧延や熱間伸線、熱間押出しによってφ5〜20mm程度の線材にすれば良い。熱間で加工することによって、各元素の析出を促進できるので、ワイヤ中における固溶量を低減できるからである。このときの加熱温度は400〜550℃程度が好ましい。
【0031】
本発明では、得られたアルミニウム鋳塊に均質化処理を施すか、または熱間加工(熱間圧延や熱間伸線、熱間押出し)で得られた前記線材に均質化処理を施すことが好ましい。この処理によってアルミニウム中に固溶しているFe,CrおよびMnの拡散をさらに促進できるので、Al−Fe−Mn系の化合物を生成させやすくできるからである。この様な観点から、本発明では均質化温度を500〜600℃程度、保持時間を3時間以上にすることが好ましい。均質化温度が500℃未満のときや、保持時間が3時間未満の比較的短時間であれば、Fe,CrおよびMnが充分に拡散せずワイヤ中に固溶したままとなり、その結果ワイヤの耐力や継手部の強度が大きくなる原因になる場合があるからである。
【0032】
但し、均質化処理を施す時期は特に限定されず、前記アルミニウム鋳塊の表面層を面削した後に均質化処理を行って熱間圧延等の予備加熱と兼ねても良いし、熱間圧延等で得られた線材に改めて均質化処理を施しても良い。また、前記アルミニウム鋳塊に均質化処理を施した後、表面層を面削し、これを再加熱して熱間圧延等を行う方法は、圧延等の前に鋳塊表面に生成した酸化皮膜が少なくなるので、表面品質向上の観点から好ましい手段である。
【0033】
熱間圧延等で得られた前記線材は、冷間圧延、冷間伸線またはダイス伸線した後、線材表面の皮を剥いてφ3〜7mm程度のワイヤ原線とする。そして、このワイヤ原線に中間焼鈍を施した後、φ0.8〜3mm程度にダイス伸線やロール圧延伸線すると本発明に係る溶接用ワイヤを製造することができる。
【0034】
前記ワイヤ原線に中間焼鈍を施す理由は、加工による転移を除去できるのでワイヤの強度や耐力を制御することができるからである。また、中間焼鈍を施すことによってワイヤ中の各元素は拡散するので、ワイヤ中の固溶量も制御することができる。中間焼鈍の条件は、焼鈍温度を300〜500℃程度、保持時間を3時間以上にすることが好ましい。300℃未満では各成分が充分に拡散せず、本発明の要件を満足する様に固溶量を低減することが難しいからであり、逆に500℃を超えるとFe,CrおよびMn以外の元素(例えばMg)がワイヤに固溶して強度が高くなり過ぎることがあるからである。尚、前記中間焼鈍は、伸線加工(ダイス伸線やロール伸線)と適宜組み合わせて複数回行うことによって、ワイヤ中の固溶量をさらに低減することができるが、製造コストや生産性の観点から中間焼鈍は多くても3回程度までとすることが好ましい。
【0035】
また、アルミニウム鋳塊からワイヤ原線に加工するまでの間の総減面加工率を95%以上とし、この様なワイヤ原線に中間焼鈍を施すと、各元素がワイヤ中に化合物として生成し易くなり、ワイヤ中の固溶量を低減し易いことを本発明者らは確認している。
【0036】
本発明に係る溶接用アルミニウム合金ワイヤは、消耗電極式ガスシールドアーク溶接法(例えば、MAG溶接法やMIG溶接法など)で用いることが好ましく、特にMIG溶接法に採用するのが好適である。
【0037】
また、本発明に係る溶接用アルミニウム合金ワイヤは、種々のアルミニウム製部材を溶接する際に用いることができるが、特に溶接後の継手部に強度が要求される際に用いると、本発明の効果を充分に発揮することができる。例えば、構造用部材を溶接する際に本発明のワイヤを用いることができる。この構造用部材の材質は特に限定されず、例えば、3000系(Al−Mn−Mg系)、5000系(Al−Mg系)および6000系(Al−Mg−Si系)など公知のものが挙げられ、これらアルミニウム合金製の加工材(例えば、板材、押出し材、鍛造材など)を溶接する際に用いれば良い。
【0038】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0039】
【実施例】
表1に示す成分を含有するアルミニウム合金の鋳塊(φ150mm×4000mm)に均質化処理を施した後、熱間圧延してφ5〜20mm程度のアルミニウム線材を得た。この線材を冷間伸線した後、皮を剥いでφ3〜7mm程度のワイヤ原線とした。原線に中間焼鈍を施したものをロール圧延伸線でφ1.2mmとし、巻き径がφ400mm程度になる様にスプールに巻いたものを供試材(溶接用アルミニウム合金ワイヤ)とした。表1に均質化処理の均熱条件[温度(℃)と時間(h)]と、熱間圧延の開始温度(℃)、中間焼鈍の条件[温度(℃)と時間(h)]を夫々示す。
【0040】
但し、No.7の供試材は、アルミニウム合金の鋳塊を冷間圧延したものをワイヤ原線として上記と同様の加工を行なった。
【0041】
【表1】
Figure 0003908532
【0042】
供試材(No.1〜8)中のFe,CrおよびMnの固溶量は、供試材を熱フェノールで残渣抽出したものをICP(誘導結合プラズマ)発光分析して算出した。このとき、残渣を漉すフィルターは、メッシュサイズが0.2μmのものを用いた。表2に、ワイヤ中におけるFe,CrおよびMnの各固溶量とこれら固溶量の総和を示す。
【0043】
【表2】
Figure 0003908532
【0044】
JIS Z2241に準拠して供試材の引張試験を行った。試験条件は次の通りである。試験温度:室温、標点間距離(GL):50mm、クロスヘッド速度:1mm/min(一定)、N数:5本の平均値。表3に、引張り特性として、耐力(N/mm2)、強度(N/mm2)、伸び(%)を夫々示す。
【0045】
下記に示す溶接装置を用いて溶接するときの、供試材ワイヤの送給性、送給抵抗、アーク安定性、安定アーク継続時間、溶接後の継手強度を調べた。結果を表3に示す。
【0046】
<溶接装置>
電源:CPDWP350
送給装置:「CMWH147」(商品名:ダイヘン社製)
トーチ:「WTCA2501」(商品名:ダイヘン社製)
コンジットチューブ:「プラライナ U2962M06」(商品名:ダイヘン社製)、3m
チップ:「TIP023010」(商品名:トーキンアーク社製)のφ1.2mmCO2チップ。
【0047】
<溶接条件>
条件:220A、25V
ワイヤの送り速度:50cm/min
溶接時間:最大2分間
径路:全長3mのコンジットチューブの途中にφ170mmのループを1つ作り、且つ、トーチ直上で曲率半径100mmに曲げた(前記図1参照)。
【0048】
<送給性>
溶接中に前記図1の送給装置からワイヤが送り出されるときの抵抗を測定することによって、送給性を評価した。このときの評価基準は、○:抵抗が小さく良好、△:時折抵抗値が変動、×:抵抗が大きく不良、である。
【0049】
<アーク安定性>
溶接中の溶接電流およびアーク電圧の変動でアーク安定性を評価した。このときの評価は、○:良い、△:時折変動する、×:悪い、である。
【0050】
<安定アーク継続時間>
アーク溶接を最大2分間行い、チップの融着の有無を見た。
【0051】
溶接後の継手強度は次の様に測定した。
【0052】
<継手強度>
板厚:8mm、ギャップ:4mm、開先角度:90℃で、裏当金を付け、開先を横向にして2層パルス溶接を行った。この継手部の強度をJIS Z3121の方法に従って測定した。
【0053】
下記に示す条件で溶接した後に、コンジットチューブ内に堆積したアルミ合金粉の量を測定した。
【0054】
<アルミ合金粉量>
溶接条件:170A,22〜23V、送り速度:50cm/minで溶接した後、コンジット内に堆積したアルミ合金粉を溶剤で流しながら濾紙に採取してアルミ合金粉の発生量を比較した。但し、供試材によって溶接時間が異なるので、5分間に発生したアルミ合金粉量に換算した値を表3に示す。
【0055】
【表3】
Figure 0003908532
【0056】
表1〜表3から次の様に考察できる。No.1〜6は、ワイヤ中の元素(Fe,CrおよびMn)の総固溶量および各元素の固溶量が、本発明で規定する範囲にあるので、引張り特性の耐力が小さくなっている。よって、ワイヤに付いている癖は直りやすく、送給抵抗が小さい。このとき送給抵抗の変動幅が小さいので、安定したアークを継続して実現できている(チップ融着は無かった)。さらに、ワイヤにはFe,CrおよびMnを含有しているので、溶接後における継手部の強度も充分確保している。
【0057】
一方、No.7及びNo.8は、本発明で規定する少なくとも何れかの要件を満足していない比較例である。No.7は、ワイヤの耐力が大きくなり、ワイヤが変形し難い。よって、ワイヤの送給性が悪く、送給抵抗の変動幅が大きくなってアークが不安定となり、最終的にはチップ部で融着を発生している。尚、このワイヤはFe,CrおよびMnを含有しているが、安定した溶接ができなかったので、溶接後の継手強度も若干低下した。
【0058】
No.8は、Fe,CrおよびMnの各固溶量は本発明で規定する範囲を満足するが、これらの固溶量の総和が本発明で規定する範囲から外れている。よって、ワイヤの耐力が若干大きくなり、送給性が悪くなるので、溶接中にチップ部でワイヤの融着を発生した。従って、安定した溶接ができなかったので、溶接後の継手強度も低下した。
【0059】
【発明の効果】
上記のような構成を採用すると、安定したアークを実現できる溶接用アルミニウム合金ワイヤを提供することができる。また、本発明に係る溶接用ワイヤは、Fe,CrおよびMnを含有しているので、溶接後の継手部における強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 消耗電極式ガスシールドアーク溶接法の一例を説明する図である。
【符号の説明】
1:スプール 2:溶接用ワイヤ
3:送給装置 4:ガイドローラ
5:送給ローラ 6:コンジットチューブ
7:溶接トーチ 8:通電チップ
9:母材

Claims (5)

  1. Fe,CrおよびMnを夫々含有する溶接用アルミニウム合金ワイヤであって、
    Fe:1質量%以下(0質量%を含まない)、
    Cr:0.01〜0.5質量%および
    Mn:0.01〜1.2質量%を夫々含有し、
    残部がアルミニウムおよび不可避不純物からなり、
    Fe,CrおよびMnの固溶量の総和が0.160質量%以下(0質量%を含む)であり、且つ、
    Feの固溶量が0.015質量%以下(0質量%を含む)、Crの固溶量が0.1質量%以下(0質量%を含む)であることを特徴とする溶接用アルミニウム合金ワイヤ。
  2. Mnの固溶量が0.15質量%以下(0質量%を含む)である請求項1に記載の溶接用アルミニウム合金ワイヤ。
  3. 他の元素として、
    Mg:1.5〜6質量%を含有するものである請求項1または2に記載の溶接用アルミニウム合金ワイヤ。
  4. 他の元素として、
    Si:1質量%以下(0質量%を含まない)を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の溶接用アルミニウム合金ワイヤ。
  5. 更に他の元素として、
    Cu:0.1質量%以下(0質量%を含まない)、
    Zn:0.1質量%以下(0質量%を含まない)、
    Ti:0.1質量%以下(0質量%を含まない)、
    Sn:0.1質量%以下(0質量%を含まない)、
    Ni:0.1質量%以下(0質量%を含まない)および
    B :0.1質量%以下(0質量%を含まない)よりなる群から選ばれる1種の元素、
    またはこの群から選ばれる2種以上の元素を合計で0.2質量%以下(0質量%を含まない)を含有するものである請求項1〜4のいずれかに記載の溶接用アルミニウム合金ワイヤ。
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