JP6263296B2 - 異種材料溶接用ワイヤ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、Fe系被溶接材とAl系被溶接材とを溶接するための異種材料溶接用ワイヤ及びその製造方法に関するものである。
特許第5689492号公報(特許文献1)には、アルミニウム材又はアルミニウム合金材と鋼材との異材接合において、継手強度を高めると共に、接合部の割れを抑制することができ、更に伸線加工時に破断が生じにくい異材接合用溶加材(異種材料溶接用ワイヤ)が開示されている。この従来の異種材料溶接用ワイヤは、少なくとも、Si:1.0〜6.0質量%と、Ti:0.01〜0.30質量%と、Zr:0.01〜0.30質量%を含有し、残部がアルミニウム及び不可避不純物であるアルミニウム合金からなる皮材内に、充填率がワイヤ全体の質量に対して2.0〜20.0質量%となるように粉状のフラックスを管状の、金属外皮内に充填している。
特許第4256886号公報(特許文献2)には、鋼材とアルミニウム合金材との異材同士を接合するためのフラックスコアードワイヤにおけるフラックスとして、AlF3をフラックスコアードワイヤ全質量に対して0.1〜15質量%含み、かつ塩化物を含まないフッ化物組成とするとともに、フラックスコアードワイヤ全質量に対して0.3〜20質量%充填することが開示されている。このフラックスコアードワイヤは、管状の金属外皮内に粉状のフラックスを充填して製造される。またこの文献の[0066]段落には、「フラックスコアードワイヤ中のフラックス量が、フラックスコアードワイヤ全重量に対して1質量%以下の場合には、共通して、金属粉を添加した。金属粉は、共通して、外皮と同じA4047相当の組成のアルミニウム合金粉末(粒度150μm)とし、フラックスコアードワイヤ全重量に対して20質量%添加した。」と記載されており、フラックスの量が少なくなったときのフラックスの添加方法として、フラックスに金属粉を添加して見掛けの量を増量して、フラックスを充填することを可能にしていることが記載されている。
また最近、Fe系被溶接材とAl系被溶接材の接合を低電流で実現したいという要望が出てきている。そしてこの要望を実現するためには、Al系被溶接材の溶け込み過剰を防いで、Fe系被溶接材をろう付け状態で接合すると好ましい溶接結果が得られることが判ってきた(非特許文献1)。
さらに特許第4263879号公報(特許文献3)には、管状の金属外皮と導電性心線との間に、フラックスが存在している溶接用ワイヤが開示されており、この溶接用ワイヤのフラックス充填率は、6.5〜30%であり、好ましくは15.5〜19.5%である。特許第5444293号公報(特許文献4)には、その製造方法が開示されている。この従来技術では、導電性心線の線径が管状の金属外皮の内径と比べて小さく、フラックスは特許文献1及び2に記載の従来の技術と同様に、管状の金属外皮内に粉状のフラックスを充填している。
特許第5689492号公報 特許第4256886号公報 特許第4263879号公報 特許第5444293号公報
技術論文 新日鉄技報 第393号(2012年)自動車ボディにおける鋼板とアルミニウム合金板との異種金属接合技術/新日鐵住金 鉄鋼研究所 接合研究センター
従来の溶接用ワイヤのフラックスは、アークの安定と溶融池の大気からの遮蔽に用いられるものである。そのためこのフラックスの目的達成のためには、それなりに多くのフラックスを金属外皮内に充填する必要がある。しかしながら特許文献1では、フラックス充填率と溶け込みの関係については何ら開示されていない。このことは特許文献1には、ワイヤ全体の質量に対してフラックス充填率が5質量%の実施例において効果が得られることが開示されているだけで、特許請求の範囲で特定されているフラックス充填率(2〜20%)の全範囲において効果が得られることが開示されていないことから裏付けられている。
特許文献2にも記載されているが、低電流で溶接を行う場合で、Al系被溶接材の溶け込み過剰を防いで、Fe系被溶接材をろう付け状態で接合するためには、従来の溶接で使用しているフラックスの量は、少ないことが好ましいという事実がある。特にレーザーによる高速溶接において、フラックス量が多いと溶接時に未溶融のフラックスが残存することがあるので、この点からもフラックス量を少なくする必要がある。特許文献2には、フラックス量が、フラックスコアードワイヤ全重量に対して1質量%以下の場合には、金属粉を添加して見掛けの量を増量して、フラックスを金属外皮内に充填することを可能にできる旨が記載されている。しかしながら実際に本願発明者が、確認試験を行ったところ、1質量%よりも多い5質量%程度のフラックスを管状の金属外皮内に充填する場合にも、フラックスの充填ムラの発生を抑制するためには、金属粉を粉状のフラックスに添加して見かけの量を増やす必要があることが判った。
また発明者は、特許文献3及び4に記載の従来の技術のように、管状の金属外皮と導電性心線との間に、フラックスを存在させることにより、フラックスの充填率を少なくすることを試みた。しかしながらこの従来の技術を用いても、フラックスの充填率が少なくなると、フラックスが管状の金属外皮と導電性心線との間に局所的に存在する状態が発生し、ワイヤの周方向全体に大きなバラツキを生じさせることなく、フラックスを存在させることができなかった。これは、特許文献3及び4に記載の従来技術は、フラックス充填率が本発明より高い領域を前提としているためである。
本発明の目的は、フラックス充填率を少なくすると同時に充填ムラの発生を抑制することを可能にする異種材料溶接用ワイヤの製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、Fe系被溶接材とAl系被溶接材の接合を低電流で実現することができるフラックスの充填量が少ない異種材料溶接用ワイヤを提供することにある。
本発明のFe系被溶接材とAl系被溶接材とを溶接するための異種材料溶接用ワイヤの製造方法により製造する異種材料溶接用ワイヤは、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる管状の金属外皮内に、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる導電性心線が配置されており、金属外皮と導電性心線との間に、被溶接材料の表面から酸化皮膜を除去する機能を少なくとも有するフラックスが存在しているものである。そしてフラックスの充填率はワイヤ全体の質量に対して4.9質量%以下である。
本発明の第1の製造方法では、導電性心線を形成するための導電性心線材料の表面にフラックスの材料と溶媒とを混練したフラックスペーストを塗布してコーティング層を備えたコーティング導電性心線材料を形成する。次に、コーティング導電性心線材料が中心に位置するように、コーティング導電性心線材料の外側に管状の金属外皮を形成するための管状の金属外皮材料を形成することにより線引き用ワイヤを形成する。そして線引き用ワイヤを所定の外径寸法になるまで線引き作業を行う。
また本発明の第2の製造方法では、長手方向と直交する横断面形状が円弧状を呈する金属外皮材料の内表面にフラックスの材料と溶媒とを混練したフラックスペーストを塗布してコーティング層を備えたコーティング金属外皮材料を形成する。次に、コーティング金属外皮材料の内部に導電性心線を形成するための導電性心線材料を配置した状態で、コーティング金属外皮材料を成形して導電性心線材料の外側に管状の金属外皮材料を形成することにより線引き用ワイヤを形成する。そして線引き用ワイヤを所定の外径寸法になるまで線引き作業を行う。
本発明の製造方法では、導電性心線材料の表面にフラックスペーストを塗布してコーティング層を備えたコーティング導電性心線材料を形成するか、金属外皮材料の内表面にフラックスペーストを塗布してコーティング層を備えたコーティング金属外皮材料を形成して、その後に管状の金属外皮材料を形成することにより線引き用ワイヤを形成する。このようにして、コーティング層がワイヤの周方向全体にわたって形成される結果、フラックスの充填率が低い場合でも、コーティング層中の溶媒が無くなった後に、フラックスがワイヤの長さ方向及び周方向全体に分散して配置されることになる。
いずれにしても本発明の製造方法によれば、フラックスの充填率が少なくなる場合においても、ワイヤ中に局所的にフラックスの大きな偏りが生じていない異種材料溶接用ワイヤを製造することができる。
なおコーティング層を溶媒が一部残る程度まで乾燥した後に、管状の金属外皮材料を形成するのが好ましい。このようにするとコーティング層の厚みに大きな偏りを生じさせることがない。
本発明のFe系被溶接材とAl系被溶接材とを溶接するための異種材料溶接用ワイヤでは、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる管状の金属外皮内に、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる導電性心線が配置されている。そして金属外皮と導電性心線との間に、被溶接材料の表面から酸化皮膜を除去する機能を少なくとも有するフラックスが存在している。フラックスの充填率は、異種材料溶接用ワイヤ全体の質量に対して4.9質量%以下と少ない。本発明においては、金属外皮と導電性心線との間のフラックスが乾燥コーティング層として存在している。
本願明細書において、「乾燥コーティング層」とは、「フラックスの材料と溶媒とを混練したフラックスペーストを塗布して形成したコーティング層が、乾燥されて形成されたフラックスの粉体であり、コーティング層が存在している部分にフラックスの粉体が存在するもの」である。乾燥コーティング層の形で、フラックスが設けられると、ワイヤの周方向全体にわたって少ない量のフラックスを大きな偏りなく配置することができる。
本発明の異種材料溶接用ワイヤによれば、フラックスの量を少なくした場合でも、溶接時にフラックスを安定して溶接部に供給することができる。その結果、本発明の異種材料溶接用ワイヤによれば、低電流域でもアークが安定するため、Al系被溶接材の溶け込み過剰を防いで、Fe系被溶接材をろう付け状態で接合することが可能になった。
コーティング層の厚みは、フラックスの量によって定まることになるが、フラックスの充填率が0.2〜4.9質量%の場合には、最大で200μm以下である。
なお異種材料溶接用ワイヤの外径寸法であるが、現在市場で使用されている溶接機で使用可能なワイヤの外径寸法と同じく、1.0mm〜2.0mm程度であるのが好ましい。
ミグ溶接に用いる場合で、Fe系被溶接材が炭素鋼またはステンレス鋼であり、Al系被溶接材がアルミニウム合金製であれば、金属外皮よりも固相線温度が低いアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる導電性心線を用いるのが好ましい。これは、金属外皮よりも融点が低い導電性心線を内包することにより、ソリッドワイヤを不活性シールドガスで溶接した場合に見られるような細く伸びた液柱が発生しない溶滴移行となり、安定したアークが得られるためである。
本発明の異種材料溶接用ワイヤをミグ溶接で使用する場合には、異種材料溶接用ワイヤの外径寸法は1.0mm〜1.6mmであり、フラックス充填率は異種材料溶接用ワイヤ全体の質量に対して0.2〜1.8質量%であることが好ましい。この範囲内のフラックス充填率であれば、ミグ溶接において低電流域でもアークが安定するため、Al系被溶接材の溶け込み過剰を防いで、Fe系被溶接材をろう付け状態で接合することができる。
なおミグ溶接に用いる場合、フラックス充填率が異種材料溶接用ワイヤ全体の質量に対して1.0〜1.8質量%であれば、よりアーク安定性が増し、それに伴いスパッタが減少し、良好なビードが形成されるという効果が得られる。
本発明の異種材料溶接用ワイヤをレーザー溶接で使用する場合には、異種材料溶接用ワイヤの外径寸法は1.0mm〜2.0mmであり、フラックス充填率は異種材料溶接用ワイヤ全体の質量に対して1.0〜4.9質量%であることが好ましい。この範囲内のフラックス充填率であれば、レーザー溶接において、未溶融のフラックスが残存せず、溶融状態が安定し、良好なビードが形成され、かつAl系被溶接材の溶け込み過剰を防いで、Fe系被溶接材をろう付け状態で接合することができる。
なおレーザー溶接に用いる場合、フラックス充填率が異種材料溶接用ワイヤ全体の質量に対して1.3〜4.4質量%であれば、より溶融状態が安定することにより、さらになじみ性が向上し、良好なビードが形成されるという効果が得られる。
フラックスは、酸化皮膜を除去する目的のため、KAlF系金属弗化物を主成分とし、CsAlF4 ,CsF,KF,NaF,LiF,CeF,AlF3等の金属弗化物のいずれか1種以上を添加する場合がある。さらにAl,Si,Cu,Zn,Mnのいずれか1種以上の金属粉末を添加したものを用いることもできる。なおフラックスには、CsAlF4 ,CsF,KF,NaF,LiF,CeF,AlF3等の金属弗化物のいずれか1種以上を添加しなくてもよい。
(A)は線引き用ワイヤを製造する装置の概略を示す図であり、(B)は該装置の一部の拡大断面図である。 (A)は図1(A)の装置を用いて製造した線引き用ワイヤを線引きして製造した異種材料溶接用ワイヤの断面の一例を示す写真であり、(B)は特許文献4に示された従来の製造方法を用いて、粉末のフラックスを金属外皮と導電性心線との間に充填して製造した線引き用ワイヤを線引きして製造した異種材料溶接用ワイヤの断面の一例を示す写真である。 (A)は線引き用ワイヤを製造する他の装置の概略を示す図であり、(B)は該装置の一部の拡大断面図である。 本実施の形態の異種材料溶接用ワイヤの模擬横断面である。 実施例及び比較例のワイヤ構造、金属外皮、導電性心線の種類、固相線温度差、フラックス充填率、フラックス供給方法、内包フラックスの種類を表示した表1を示す図である。 実施例及び比較例の異種材料溶接用ワイヤを用いた評価試験の評価結果を示す表2を示す図である。 (A)乃至(C)は、引張試験で用いた試験片の継手形状を示す図である。
[製造方法の説明]
以下、本発明の異種材料溶接用ワイヤの製造方法の実施の形態及び該方法によって製造する異種材料溶接用ワイヤについて詳細に説明する。図1(A)は本発明の第1の製造方法を実施する製造装置の一部の概略を示す図であり、図1(B)は図1(A)の丸印で囲んだ部分Bの概略拡大断面図である。
フラックスの乾燥コーティング層を含む異種材料溶接用ワイヤの製造方法(第1の方法発明の実施の形態)について説明する。まず、図示しない金属板送出コイルから送り出されたアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる細長い金属外皮材料101は、第1次成形ロール装置102により、幅方向の断面が円弧状になるように成形される。図示しないワイヤ送出コイルから送り出されたアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる導電性心線材201がガイドローラ202及び203を介してコーティング装置204へ送給される。コーティング装置204では、図1(B)に示すように一対のフェルトF1及びF2の間を通過する導電性心線材201にフラックスペーストが塗布される。フラックスペーストは、粉末のフラックス材料と溶媒[例えばエチルアルコール(C2H5OH)]の液状混合物である。フラックスペーストは、アプリケータ205からフェルトF1及びF2に供給される。フェルトF1及びF2の間を通過した導電性心線材201の外周面には、全体的にフラックスペーストが塗布されてコーティング層Cが形成される。コーティング層Cを備えたコーティング導電性心線材料206がガイドローラ207に到達する前に、図示しない乾燥装置により、コーティング層Cは一部に溶媒が残る程度まで(すなわちフラックスが脱落しない程度まで)乾燥される。この状態では、コーティング層が導電性心線材201から脱落することはない。なお、本実施の形態では、アプリケータ205を用いてコーティング導電性心線材料206を形成したが、フラックスペーストを溜めた浸漬槽内に導電性心線材201を浸漬して通過させることによりコーティング層を形成するようにしてもよい。
次に、円弧状の金属外皮材料103で囲まれた領域内にコーティング導電性心線材料206が挿入されて、コーティング導電性心線材料206と金属外皮材料103とを合流させる。最終線径が標準寸法である1.2mmの場合、線引き工程後に得られるワイヤの断面積に対する導電性心線の断面積の割合が10〜40%になるように、金属外皮材料101と導電性心線材201の材質、寸法が選択されている。次に、第2次成形ロール装置301により、金属外皮材料103の合わせ目の間隔寸法を減少させるように、金属外皮材料103を成形して、コーティング導電性心線材料206の外周を管状の金属外皮材料で囲んで、線引き用ワイヤ208を形成する。この後、線引き用ワイヤ208は、公知の線引き装置を用いて線引きを行う。線引きを行う際には、コーティング層中の溶媒は、殆ど無くなっており、コーティング層は乾燥コーティング層となっている。線引き作業では、ワイヤの断面積を段階的に減少させ、乾燥コーティング層のフラックスの粉末を加圧により高密度化して所定の線径に加工し、その後乾燥を経て完成する。なお、上記製造工程は適宜分断できる。
図2(A)は図1(A)の装置を用いて製造した線引き用ワイヤを線引きして製造した異種材料溶接用ワイヤの断面の一例を示す写真である。図2(B)は、特許文献4に示された従来の製造方法を用いて、粉末のフラックスを金属外皮と導電性心線との間に充填して製造した線引き用ワイヤを線引きして製造した異種材料溶接用ワイヤの断面の一例を示す写真である。図2(A)及び(B)のいずれの場合もフラックスの充填率は、ワイヤ全体の質量に対して約4.7質量%の場合である。図2(A)に示す本実施の形態で製造した異種材料溶接用ワイヤ1は、金属外皮3と導電性心線5との間に乾燥コーティング層からなるフラックスの層7を備えている。図2(B)には、図2(A)の構成と同様の部分に図1に付した符号にダッシュを付した符号を付してある。図2(B)の従来法を用いて製造したワイヤの断面を見ると判るように、フラックスの充填率が小さくなると、フラックスが管状の金属外皮3´と導電性心線5´との間に存在するフラックスの層7´には、存在量に局所的な偏りが生じている。これに対して、本実施の形態の方法で製造した図2(A)に示すワイヤのように、乾燥コーティング層の形で、フラックスの層7が設けられると、ワイヤの周方向全体にわたって少ない量のフラックスを大きな偏りなく配置することができている。
図3(A)は、本発明の第2の製造方法を実施する製造装置の一部の概略を示す図であり、図3(B)は図3(A)の丸印で囲んだ部分Bの概略拡大断面図である。図3(A)及び(B)においては、図1(A)及び(B)に示した部材と同じ部材には、図1(A)及び(B)に付した符号と同じ符号を付してある。図1(A)の製造装置と比べて、図3(A)の製造装置では、長手方向と直交する横断面形状が円弧状を呈する金属外皮材料103の内表面にフラックスの材料と溶媒とを混練したフラックスペーストを塗布してコーティング層Cを備えたコーティング金属外皮材料104を形成する。次に、コーティング金属外皮材料104の内部に導電性心線を形成するための導電性心線材料201を配置した状態で、コーティング金属外皮材料104を第2次成形ロール装置301により成形して、導電性心線材料の外側に管状の金属外皮材料を形成することにより線引き用ワイヤ208を形成する。なお第2の製造方法でも、コーティング層Cは、第2次成形ロール装置301に入る手前までには一部に溶媒が残る程度、すなわちフラックスが金属外皮材料の内面から脱落しない程度まで、図示しない乾燥装置によって乾燥されている。第2の製造方法を用いても、第1の製造方法と同様に、乾燥コーティング層の形で、フラックスの層7が設けられるため、ワイヤの周方向全体にわたって少ない量のフラックスを大きな偏りなく配置することができる。
[本実施の形態の異種材料溶接用ワイヤ]
上記の製造方法によって製造した本実施の形態の異種材料溶接用ワイヤは、Fe系被溶接材とAl系被溶接材とを溶接するための異種材料溶接用ワイヤである。本実施の形態の異種材料溶接用ワイヤ1は、図4に示す模擬横断面(ワイヤの長手方向と直交する方向に切断した断面)に示されるように、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる管状の金属外皮3内に、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる導電性心線5が配置され、金属外皮3と導電性心線5との間に、被溶接材料の表面から酸化皮膜を除去する機能を少なくとも有し且つ溶融金属の合金元素としての金属粉を含むフラックスの層7もしくは金属粉を含まない金属弗化物のフラックスの層7が、乾燥コーティング層の形で存在している。そして本実施の形態の異種材料溶接用ワイヤ1の外径寸法は1.0〜2.0mmである。この寸法は、既存の溶接機で使用する溶接用ワイヤの一般的な線径寸法である。またフラックス充填率は、異種材料溶接用ワイヤ1全体の質量に対して0.2〜4.9質量%である。
本実施の形態のワイヤ1で使用する、金属弗化物フラックスのように、粒子が微細で流動性に劣る僅かなフラックス7を、特許文献1に記載の従来の溶接用ワイヤのように、金属外皮の中に包む構造を採用すると、僅かな量のフラックスをワイヤの長手方向及び周方向に大きなバラツキなく存在させることができない。そこで本実施の形態では、僅かな量のフラックスをワイヤ1の内部に乾燥コーティング層の形で存在させたので、管状の金属外皮3と導電性心線5との間にフラックスの層7が長手方向及び周方向に大きなバラツキなく存在する。
(フラックスの種類)
アルミニウム又はアルミニウム合金の接合において、母材表面のアルミニウム酸化皮膜は、溶融金属の流れ、広がりを阻害するため除去する必要がある。このため、フラックスにて、母材表面の酸化皮膜を除去する。特にアルカリ金属弗化物のフラックスは、母材表面のアルミニウム酸化皮膜を溶融アルカリにて溶かし、表面を活性にして溶融金属との濡れを容易にする作用がある。
本実施の形態で使用するフラックスとしては、例えば、KAlF系金属弗化物、CsAlF4,AlF3,CsF,NaF,KF,LiF,CeF等の金属系弗化物のいずれか1種以上を含有するフラックス、またはそれらのフラックスにAl,Si,Cu,Zn,Mnのいずれか1種以上の金属粉末を添加させたものを用いることができる。
特に好ましい本実施の形態では、良好な濡れ性を持たせ、かつブローホールを低減する目的で、ミグ溶接においては、フラックスとして、KAlF系金属弗化物を主成分とし、AlF3,CsF,LiF,NaF,CeF等の金属弗化物を1種以上含有させたフラックスを用いるのが好ましい。また、レーザー溶接においては、フラックスとして、KAlF系金属弗化物を主成分とし、かつCsAlF4を必須成分とし、NaF,KF等の金属弗化物を1種以上添加させたフラックスを用いるのが好ましい。
(実施例と比較例)
以下、本発明の異種材料溶接用ワイヤの実施例と比較例を用いて溶接試験を実施した結果を説明する。図5に示した表1には、乾燥コーティング層をフラックスの層として備えた、本発明の異種材料溶接用ワイヤの実施例1〜20の構造、金属外皮、導電性心線の種類、固相線温度差、フラックス充填率、フラックス供給方法、内包フラックスの種類を表示した。また表1には、本発明の効果を比較確認するために乾燥コーティング層を用いてフラックス充填率を多くした比較例1と、乾燥コーティング層を用いずに粉状のフラックスを充填した比較例2と、フラックスコアードワイヤの比較例3〜5の構造、金属外皮、導電性心線の種類、固相線温度差、フラックス充填率、フラックス供給方法、内包フラックスの種類を示した。以下の実施例1〜20及び比較例1においては、異種材料溶接用ワイヤ1の外径寸法は1.2mmまたは1.6mmとし、金属外皮3の内径寸法及び導電性心線5の外径寸法を変え且つ乾燥コーティング層としてフラックスを充填することにより、金属外皮3と導電性心線5との間に形成される僅かの隙間の寸法を変えることにより、フラックス充填率を変えている。比較例3〜5については、特許文献1及び2に示すワイヤと同様に、導電性心線を用いることなく金属外皮の内部に粉状のフラックスだけを充填している。
図5に示した表1において、各行には、実施例1〜20及び比較例1〜5の異種材料溶接用ワイヤの構造、金属外皮、導電性心線の種類、固相線温度差、フラックス充填率、フラックス供給方法、内包フラックスの種類を示してある。実施例1〜19の異種材料溶接用ワイヤは、いずれも、金属外皮より導電性心線の固相線温度が低くなるよう金属外皮にアルミニウム、導電性心線にAl−Si系合金を使用し、実施例20は、金属外皮及び導電性心線にアルミニウムを使用し、金属外皮と導電性心線の間に乾燥コーティング層としてフラックスを存在させている。なお、実施例19は、導電性心線にCuメッキを施した心線を用いたため、フラックス中への金属粉末は無添加である。
また、実施例1〜20の異種材料溶接用ワイヤで使用しているフラックスは、いずれも、KAlF系,CsAlF4,AlF3,CsF,NaF,KF,LiF,CeF等の金属弗化物フラックスの中でいずれか1種以上のフラックスにAl,Si,Cu,Mn,Znのいずれか1種以上の金属粉末を添加したものか、または金属粉末が無添加のものである。そして実施例1〜18の溶接ワイヤでは、導電性心線の化学成分として、Siを含有した上で、さらにCu,Mn及びZnからなる3種の合金元素の中から少なくとも1種の元素をフラックスが含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる。
(溶接用ワイヤの化学成分)
以下溶接用ワイヤに含まれる化学成分について説明する。
Si:アルミニウム又はアルミニウム合金と鋼材の接合において、Siは鋼材側の接合界面にFeSiAl系の層を薄く形成し、FeとAlの相互拡散を抑えるため、FeAlからなる脆い金属間化合物(IMC)の生成抑制に効果的であり、継手強度の向上に大きく寄与する。また、濡れ性を向上させ、ビードのなじみ性、 形状を向上させる。ただし、添加量が少ない場合は充分な効果が得られず、添加量が多い場合は、鋼材側接合界面のFeSiAl系の層の形態が変化し、FeとAlの相互拡散抑制効果が薄れ、FeAl系の脆いIMCが成長し、継手強度を低下させるため、適正量を含有する。
Cu:Cuはマトリックスに固溶し強度向上に寄与する。また、固溶限以上のCuを添加した場合、析出強化により強度向上に寄与する。ただし、添加量が少ない場合は充分な効果が得られず、添加量が多い場合は、溶接割れ感受性を著しく高め、CuAl系金属間化合物の増加によるじん性低下を生じ、さらにアルミニウム又はアルミニウム合金と鋼材の接合においては、鋼材側接合界面のFeAl系金属間化合物の生成を助長するため、適正量を含有する。
Mn:Mnはマトリックスに固溶し強度向上に寄与する。ただし、添加量が多い場合は、結晶粒粗大化、粗大金属間化合物生成による強度及びじん性低下を生じるため、適正量を含有する。
Zn:Znはビードのなじみ性向上、さらにアルミニウム又はアルミニウム合金と鋼材の接合において、鋼材側接合界面のFeAl系IMC生成抑制に寄与し継手強度を向上させるが、添加量が多い場合は、溶接金属のブローホールを増加させ継手強度を低下させるとともに、溶接時のヒューム発生量を増加させるため、適正量を含有する。
(評価結果)
図6に示した表2には、表1に示した実施例1〜20及び比較例1〜5の異種材料溶接用ワイヤを用いた評価試験の評価結果が示されている。評価試験では、継手形状、母材組合せ(アルミニウム合金と炭素鋼及びステンレス鋼の組合せ)及び接合方法の相違に応じて、ミグ溶接及びレーザー溶接にて1パスで作製した際のミグ溶接におけるアークの安定性、レーザー溶接における溶融状態、スパッタ発生状態、作製された試験体についてのビード形状、溶接金属部の割れの有無、引張試験における破断荷重、鋼材側界面(炭素鋼及びステンレス鋼側界面)の金属間化合物(IMC)層の厚さの確認試験を行った。なお継手の試験片としては、1パスで作製したフレア溶接継手の試験片[図7(A)]、重ね溶接継手の試験片[図7(B)]または突合せ溶接継手の試験片[図7(C)]のいずれかを用いた。
また、図7(A)のフレア溶接継手の試験片は、アルミニウム合金A6061(JIS H 4000)と電気亜鉛メッキ鋼板(JIS G 3313、SECCT)又はアルミニウム合金A6022と合金化溶融亜鉛メッキ鋼板(GA270MPa)の組合せとした。板厚は、アルミニウム合金は1.2または1.5mm、亜鉛メッキ鋼板は0.8mmとした。
図7(B)の重ね溶接継手の試験片は、アルミニウム合金A5052、A6061,A7N01(JIS H 4000)と炭素鋼板(JIS G 3141,SPCCT及びJIS G 3135,SPFC590)又は溶融亜鉛メッキ鋼板(GI270MPa)及び980MPa級鋼板の組合せとした。板厚は、アルミニウム合金は1.2または2.0mm、炭素鋼板は0.8または1.0mmとした。
図7(C)に示した突合せ溶接継手の試験片は、アルミニウム合金A6061(JIS H 4000)と1200MPa級鋼板又はSUS304(JIS G 4305)の組合せとし、板厚は、アルミニウム合金は1.0mm、1200MPa級鋼板及びSUS304は1.6mmとした。なお、裏板は炭素鋼板(JIS G 3141,SPCCT)とし、板厚は1.2mmとした。
(溶接条件)
ミグ溶接では、径1.2mmの異種材料溶接用ワイヤを用い、下向姿勢により交流パルス溶接又は直流パルス溶接にて、電流65〜122A、電圧12.0〜16.2V、溶接速度600〜2000mm/minの条件で行った。一方、レーザー溶接は、径1.2及び1.6mmの異種材料溶接用ワイヤを用い、下向姿勢によりファイバーレーザーにて、レーザー出力2〜4kW、溶接速度500〜1000mm/minの条件で行った。各実施例及び比較例において実際に採用した試験条件は、上記の範囲の中から最良の条件を選択した。また、いずれの溶接方法もシールドガスとしてアルゴンを使用した。
(ミグ溶接におけるアーク安定性)
ミグ溶接におけるアーク安定性の評価では、主にアーク移行形態、アーク長の変動有無、アークの集中性(片側母材へのアーク片寄り有無)を確認し、アーク長の変動がなく、アークの集中性が良好で安定したスプレー移行のアークが得られた場合を○(良好)とし、いずれか1つでも劣る場合について、程度により△(許容範囲)又は×(不良)とした。
(レーザー溶接における溶融状態)
レーザー溶接における溶融状態の評価では、レーザー照射下の異種材料溶接用ワイヤの溶融状況を高速度カメラにて観察し、金属外皮、導電性心線、フラックスが正常に溶融し溶融池を形成している場合を○(良好)とし、いずれかが未溶融の状態で溶融池に供給されている場合又は安定した溶融池が形成されない場合について、程度により△(許容範囲)又は×(不良)とした。
(スパッタの発生状態)
スパッタ発生状態の評価では、目視による溶接時のスパッタ発生状態の観察及び溶接後の試験片表面へのスパッタの付着状況を観察し、スパッタ発生がほとんどなく、付着もないものを〇(良好)とし、発生は若干あるが、除去出来る程度のものを△(許容範囲)とし、発生が多く付着が多いものを×(不良)とした。
(ビード形状)
ミグ及びレーザー溶接にて作製した継手のビード形状の評価では、目視により継手表面のビード形状を確認するとともに、溶接ビードの断面形状についても光学顕微鏡を用いて約15倍に拡大し観察した。なお、光学顕微鏡観察用試料は、継手から切り出した溶接継手断面を樹脂に埋め込んでバフ研磨仕上げを施した。
継手表面のビード形状については、全長に渡り均一なビード幅で融合不良がなく、過剰溶け込みがないことが好ましく、溶接ビードの断面形状については、アルミニウム合金母材及び炭素鋼及びステンレス鋼板の表面にビードが広がりフランク角が大きく、炭素鋼及びステンレス鋼板側はブレージングにて接合されており、アルミニウム合金側では過剰溶け込み、アンダーカットがないことが好ましい。これらの条件を全て満たす場合を◎(極めて良好)とし、一方、融合不良及びその他評価項目において著しい欠陥があったものを×(不良)とし、それ以外は程度により〇又は△とし、合格とした。
(溶接金属部の割れ)
ミグ及びレーザー溶接にて作製した継手の溶接金属部の割れの評価では、溶接継手断面について光学顕微鏡を用いて約15〜400倍に拡大し溶接金属部の割れの有無を確認し、溶接金属部の割れがない場合を○(良好)、溶接金属部の割れが発生している場合を×(不良)とした。
なお、光学顕微鏡観察用試料は、継手から切り出した溶接継手断面を樹脂に埋め込んでバフ研磨仕上げを施し、ノーエッチングの状態にて確認した。
(引張試験)
ミグ及びレーザー溶接にて作製した継手の引張試験では、図7(A)〜(C)に示す溶接継手から溶接方向に直角に20mm幅の引張試験片を採取し、テンシロン万能材料試験機を使用し、アルミニウム合金母材及び炭素鋼及びステンレス鋼板に引張荷重を付加し、破断荷重を測定した。
フレア溶接継手及び重ね溶接継手の引張試験評価は、測定した破断荷重が、亜鉛メッキ鋼板(JIS G 3313 SECCT)の引張強さ規定である270MPa以上を基準とし、フレア溶接継手及び重ね溶接継手から採取し加工した引張試験片の亜鉛メッキ鋼板の断面積が16mm2であることから、破断荷重として4320Nを超えれば○(良好)、超えなければ×(不良)と判断した。
また、突合せ溶接継手の引張試験評価は、測定した破断荷重が、アルミニウム合金(JIS H 4000 A6061P−T4)の引張強さ規定である205MPa以上を基準とし、突合せ溶接継手から採取し加工した引張試験片のアルミニウム合金の断面積が20mm2であることから、破断荷重として4100Nを超えれば○(良好)、超えなければ×(不良)と判断した。
(IMC幅)
ミグ及びレーザー溶接にて作製した継手の金属間化合物(IMC)の評価では、溶接継手断面について光学顕微鏡を用いて約400倍に拡大し、炭素鋼及びステンレス鋼板側界面の全長に渡りIMC層の厚さを測定した。アルミニウム又はアルミニウム合金と鋼板の接合において、鋼板側界面に生成するFeAl系のIMC層は、継手強度を著しく低下させるため、層の厚さを低く抑えることが好ましく、最大幅が4μm以下の場合を良好(○)とし、5μm以上の場合を×(不良)とした。
(試験結果)
(結果説明:ミグアーク安定性/レーザー溶融状態/スパッタ発生状態)
図6の表2に示す各試験結果に基づいて、本実施の形態の効果を具体的に説明する。実施例1〜7,9,14〜18は、金属外皮にアルミニウム、導電性心線にAl−Si合金を用い、金属外皮よりも導電性心線の固相線温度が低い組合せとした。これらの実施例では、ミグ溶接において、65〜122Aの低電流域でも液柱(溶融柱)の不安定な挙動が抑制され、アーク長の変動がなく、アークの集中性が良好で安定したスプレー移行のアークが得られている。実施例20は、金属外皮及び導電性心線にアルミニウムを用い、両者の固相線温度に差がなかったため、ミグ溶接において、効果が得られず、アークの集中性がやや弱かった。
また、実施例8,10〜13,19は、本発明のフラックス充填率の規定範囲を満たしており、レーザー溶接を行っている。これらの実施例では、金属外皮、導電性心線、フラックスが正常に溶融し、濡れ性の良い健全な溶融池が形成されていた。
これに対し、比較例1,2は、いずれもフラックス充填率が5.1質量%と高く、本発明のフラックス充填率の規定範囲を満たしていない。比較例1は、乾燥コーティング層によりフラックスの層を形成したため溶融状態は安定していたが、スパッタ発生量が多くなった。また、比較例2は、粉末添加のため、溶融状態が悪く、スパッタ発生量も増加し健全な溶融池が形成されなかった。
(結果説明:ビード形状)
ビード形状の評価結果において、実施例1〜7,9,14〜18は、ミグ溶接用であり、金属外皮よりも導電性心線の固相線温度が低い組合せである。そして、適正なフラックス充填率、フラックス供給方法、フラックスの種類、化学成分に調整されており、良好なビード形状が得られている。これらの中で、実施例1〜5,7,9,14,15,17,18はフラックス充填率が1.0〜1.8%の範囲内であることから、よりアーク安定性が増し、さらに良好なビードが形成されるという効果が得られている。また、実施例20は、金属外皮と導電性心線に固相線温度差がなく、ミグ溶接におけるアークの安定性にやや劣ったため、ビード幅がわずかに乱れた。
一方、実施例8,10〜13,19はレーザー溶接用であり、適正なフラックス充填率、フラックス供給方法、フラックスの種類、化学成分に調整されており、良好なビード形状が得られている。これらの中で、実施例11〜13,19はフラックス充填率が1.3〜4.4%の範囲内であることから、より溶融状態が安定し、さらになじみ性が向上し、良好なビードが形成されるという効果が得られている。
これに対し、比較例3〜5は、本発明の多層断面ワイヤ[図2(A)または図4]ではなく、特許文献1及び2に示されるフラックスコアードワイヤであり、フラックスを粉末添加しており、かつ比較例4及び5はフラックス充填率が本発明の範囲を超えている。このため、比較例4及び5は、フラックスの影響が強くなり、アルミニウム母材側にアンダーカットが発生した。また、比較例3は、フレア継手において、アルミニウム合金側のほぼ全長に渡り過剰溶け込みによる溶け落ちが発生し、ビード形状が不合格となった。
従来法を用いた比較例3〜5では、粉末の粒子が微細で流動性に劣る金属系弗化物を安定して供給することができなかった。しかし、実施例1〜20では、本発明ワイヤへのフラックス供給方法として、あらかじめフラックスペーストのフラックスコーティング層を形成した導電性心線もしくは金属外皮を用いることにより、0.2〜4.9%のフラックス充填率域にてバラツキなく供給することができるため、フラックスの効果が安定して得られ、より良好なビード形状が得られている。
(結果説明:溶接金属部の割れ)
溶接金属部の割れ確認結果において、実施例1〜20は本発明の範囲内のフラックス充填率、フラックス供給方法、フラックスの種類であり、Si,Cu,Mn,Znが適正量含有されており、残部がAlからなる組成を備えているため、析出物による過度なマトリックスの硬化もなく、溶接金属に割れは確認されなかった。
(結果説明:破断荷重, IMC幅)
継手の引張試験結果において、実施例1〜13、16〜20は、本発明の範囲内のフラックス充填率、フラックス供給方法、フラックスの種類であり、かつAl−Si−Cu系の化学組成であり、いずれもSiによるIMC生成抑制効果によりIMC層の厚さは4μm以下に抑制された上で、Cuの固溶強化及び析出強化により、充分な破断荷重が得られた。
実施例14は、本発明の範囲内のフラックス充填率、フラックス供給方法、フラックスの種類であり、かつAl−Si−Mn系の化学組成であり、いずれもSiによるIMC生成抑制効果によりIMC層の厚さは4μm以下に抑制された上で、Mnの固溶強化及び析出強化により、充分な破断荷重が得られた。
実施例15は、本発明の範囲内のフラックス充填率、フラックス供給方法、フラックスの種類であり、かつAl−Si−Zn系の化学組成であり、SiとZnによるIMC生成抑制効果によりIMC層の厚さは4μmに抑制された上で、Znの効果によりビードのなじみ性、溶け込み形状が向上しており、充分な破断荷重が得られた。
比較例1及び2は、フラックス充填率がいずれも5.1質量%となり、本発明のフラックス充填率の規定範囲を満たしておらず、フラックスの影響が過剰となり、レーザー溶接において、深溶け込みとなり、アルミニウム合金側に溶け落ちが発生し、充分な破断荷重が得られなかった。また、溶接金属中のFe含有量が増加し、炭素鋼板側界面のIMC層の厚さが5μm以上となった。
比較例4,5は、フラックス充填率が5.9質量%、6.7質量%であり、かつ粉末添加であることから、本発明のフラックス充填率及びフラックス供給方法を満たしておらず、ミグ溶接においてアルミニウム合金側でアンダーカットが発生し、アンダーカット部より破断したため、充分な破断荷重が得られなかった。また、溶接金属中のFe含有量が増加し、炭素鋼及びステンレス鋼板側界面のIMC層の厚さが5μm以上となった。
比較例3は、粉末添加であり、本発明のフラックス供給方法を満たしておらず、フレア継手において、アルミニウム合金側のほぼ全長に渡り過剰溶け込みによる溶け落ちが発生し、充分な破断荷重が得られなかった。
一般的にろう付けでは、あらかじめフラックスを母材の表面に塗布し、溶融フラックスが母材表面の酸化皮膜を除去する。その後、溶融金属がその上に流れ界面が接合される。しかし比較例3〜5の従来構造のフラックスコアードワイヤでろう付けした場合、フラックスがワイヤの中心部に配置されているため、フラックスが溶けにくく、ろう付け本来の効果が得られ難い。これに対し、フラックスがワイヤ表面近くに配置された本発明の実施例1〜20の多層断面構造ワイヤでは、フラックスの溶け出す時機が早く、ろう付け本来の効果が得られやすい。
以上より、本発明の異種材料溶接用ワイヤは、乾燥コーティング層からなるフラックスの層を備えていることにより、ミグ及びレーザー溶接によるFe系被溶接材とAl系被溶接材の異材接合において、溶接作業性及びビード形状に優れ、溶接割れのない健全な高強度の継手の作製を実現することが確認された。
本発明の方法によれば、導電性心線材料の表面にフラックスペーストを塗布してコーティング層を備えたコーティング導電性心線材料を形成するか、金属外皮材料の内表面にフラックスペーストを塗布してコーティング層を備えたコーティング金属外皮材料を形成して、その後に管状の金属外皮材料を形成し、その内部に導電性心線を配置することにより線引き用ワイヤを形成する。このようにして、コーティング層がワイヤの長さ方向及び周方向全体にわたって形成される結果、フラックスの充填率が低い場合でも、コーティング層中の溶媒が無くなった後に、フラックスがワイヤの長さ方向及び周方向全体に分散して配置されることになる。
本発明の方法により製造した異種材料溶接用ワイヤによれば、フラックス充填率が低い場合でも、乾燥コーティング層としてフラックスの層が長さ方向及び周方向全体にわたって存在するので、低電流域でもアークが安定しAl系被溶接材の溶け込み過剰を防いで、Fe系被溶接材をろう付け状態で接合することが可能になった。
1 異種材料溶接用ワイヤ
3 金属外皮
5 導電性心線
7 乾燥コーティング層

Claims (13)

  1. アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる管状の金属外皮内に、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる導電性心線が配置されており、
    前記金属外皮と前記導電性心線との間に、被溶接材料の表面から酸化皮膜を除去する機能を少なくとも有するフラックスが存在しており、
    前記フラックスの充填率がワイヤ全体の質量に対して4.9質量%以下であるFe系被溶接材とAl系被溶接材とを溶接するための異種材料溶接用ワイヤの製造方法であって、
    前記導電性心線を形成するための導電性心線材料の表面に前記フラックスの材料と溶媒とを混練したフラックスペーストを塗布してコーティング層を備えたコーティング導電性心線材料を形成し、
    前記コーティング導電性心線材料が中心に位置するように、前記コーティング導電性心線材料の外側に前記管状の金属外皮を形成するための管状の金属外皮材料を形成することにより線引き用ワイヤを形成し、
    前記線引き用ワイヤを所定の外径寸法になるまで線引き作業を行うことを特徴とする異種材料溶接用ワイヤの製造方法。
  2. 前記コーティング層を前記溶媒が一部残る程度まで乾燥した後、前記管状の金属外皮材料を形成する請求項1に記載の異種材料溶接用ワイヤの製造方法。
  3. アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる管状の金属外皮内に、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる導電性心線が配置されており、
    前記金属外皮と前記導電性心線との間に、被溶接材料の表面から酸化皮膜を除去する機能を少なくとも有するフラックスが存在しており、
    前記フラックスの充填率がワイヤ全体の質量に対して4.9質量%以下であるFe系被溶接材とAl系被溶接材とを溶接するための異種材料溶接用ワイヤの製造方法であって、
    長手方向と直交する横断面形状が円弧状を呈する金属外皮材料の内表面に前記フラックスの材料と溶媒とを混練したフラックスペーストを塗布してコーティング層を備えたコーティング金属外皮材料を形成し、
    前記コーティング金属外皮材料の内部に前記導電性心線を形成するための導電性心線材料を配置した状態で、前記コーティング金属外皮材料を成形して前記導電性心線材料の外側に管状の金属外皮材料を形成することにより線引き用ワイヤを形成し、
    前記線引き用ワイヤを所定の外径寸法になるまで線引き作業を行うことを特徴とする異種材料溶接用ワイヤの製造方法。
  4. 前記コーティング層を前記溶媒が一部残る程度まで乾燥した後、前記管状の金属外皮材料を形成する請求項3に記載の異種材料溶接用ワイヤの製造方法。
  5. アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる管状の金属外皮内に、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる導電性心線が配置されており、
    前記金属外皮と前記導電性心線との間に、被溶接材料の表面から酸化皮膜を除去する機能を少なくとも有するフラックスが存在しており、
    前記フラックスの充填率がワイヤ全体の質量に対して4.9質量%以下であるFe系被溶接材とAl系被溶接材とを溶接するための異種材料溶接用ワイヤにおいて、
    前記金属外皮と前記導電性心線との間の前記フラックスが乾燥コーティング層として存在していることを特徴とする異種材料溶接用ワイヤ。
  6. 前記Fe系被溶接材は炭素鋼またはステンレス鋼であり、
    前記導電性心線は、前記金属外皮よりも固相線温度が低いアルミニウム合金からなる請求項5に記載の異種材料溶接用ワイヤ。
  7. 前記フラックスの充填率が0.2〜4.9質量%であり、
    前記乾燥コーティング層の厚みが、最大で200μm以下である請求項5に記載の異種材料溶接用ワイヤ。
  8. 前記溶接はミグ溶接であり、
    前記異種材料溶接用ワイヤの外径寸法が1.0mm〜1.6mmであり、
    前記フラックスの充填率が前記異種材料溶接用ワイヤ全体の質量に対して0.2〜1.8質量%であることを特徴とする請求項6または7に記載の異種材料溶接用ワイヤ。
  9. 前記フラックスの充填率が前記異種材料溶接用ワイヤ全体の質量に対して1.0〜1.8質量%である請求項8に記載の異種材料溶接用ワイヤ。
  10. 前記溶接はレーザー溶接であり、
    前記異種材料溶接用ワイヤの外径寸法が1.0mm〜2.0mmであり、
    前記フラックスの充填率が前記異種材料溶接用ワイヤ全体の質量に対して1.0〜4.9質量%であることを特徴とする請求項7に記載の異種材料溶接用ワイヤ。
  11. 前記フラックスの充填率が前記異種材料溶接用ワイヤ全体の質量に対して1.3〜4.4質量%である請求項10に記載の異種材料溶接用ワイヤ。
  12. 前記フラックスが、溶融金属の合金元素としての金属粉を含む請求項5乃至11のいずれか1項に記載の異種材料溶接用ワイヤ。
  13. 前記フラックスは、KAlF系金属弗化物を主成分とし、CsAlF4,KF,NaF,LiF,CeF,CsF,Al 3 金属弗化物のいずれか1種以上が添加されており、さらにAl,Si,Cu,Zn,Mnのいずれか1種以上の金属粉末が添加されている請求項5乃至12のいずれか1項に記載の異種材料溶接用ワイヤ。
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