JP3906633B2 - 画像形成装置および画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、像形成・転写処理を互いに異なる複数のトナー色について繰り返して各トナー色のトナー像を転写ドラム上で重ね合わせてカラー画像を形成する画像形成装置および画像形成方法に関するものである。なお、この明細書では、「像形成・転写処理」とは、感光体および転写ドラムを副走査方向に回転させながら、感光体上にトナー像を形成した後、当該トナー像を転写ドラムに転写する一連の処理を意味する。
【0002】
【従来の技術】
この種の画像形成装置としては、例えば図14に示すものがある。この画像形成装置は、回転駆動される感光体21に互いに異なる複数のトナー色、例えばイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色のトナー像を形成可能となっている。そして、各トナー像は感光体21上に形成された後、感光体21と同期して回転する転写ドラム41Dに一次転写される(像形成・転写処理)。すなわち、転写ドラム41Dの1回転につき1色のトナー像が一次転写され、転写ドラム41Dが4回転することでカラー画像が形成される。そして、それに続いて、このカラー画像はカセットや手差しトレイなどから給紙されてくるシート部材Sに二次転写される。
【0003】
ここで、良好なカラー画像を得るためには、複数色のトナー像を相互にレジストしながら重ね合わせる必要がある。そこで、上記画像形成装置では、例えば転写ドラム41Dの基準位置を検出するためのセンサ40が転写ドラム41Dの近傍に配置されており、転写ドラム41Dが1回転するごとにセンサ40から出力される信号を基準信号として像形成・転写処理を行っている。より具体的には、基準信号が出力されるごとに所定タイミングで感光体21上にトナー像を形成した後、感光体21と同期して一定の速度で回転する転写ドラム41D上に当該トナー像を一次転写することによって、複数色のトナー像を正確に重ね合わせている。したがって、センサ40から基準信号が出力されてから一次転写が完了するまでの間、転写ドラム41Dを感光体21に同期して一定速度で回転駆動する必要がある。
【0004】
しかしながら、転写ドラム41Dに対して二次転写処理を行うための二次転写ローラや転写ドラム41Dのクリーニング処理を行うためのクリーニング部などの当接手段400が適当なタイミングで一時的に当接する。そのため、転写ドラム41D上での各トナー像が相互にずれてしまう、つまりレジストズレが生じてしまい、画像品質の低下を招いてしまうことがある。
【0005】
そこで、このような問題を解決するために、例えば特開2000−75586号公報に記載された発明では、各トナー像を形成するために転写ドラム41Dを4回転させるのに加え、さらに転写ドラム41Dを追加回転させるとともに、この追加回転時に当接手段400を転写ドラム41Dに当接させたり、転写ドラム41Dから離間させている。このように、追加回転中に当接手段400による二次転写処理やクリーニング処理を行い、レジストズレの防止を図っている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に記載された従来技術によれば、転写ドラム41Dを追加回転させている間、次の像形成・転写処理を行うことができず、追加回転させる分だけスループットの低下を招いてしまう。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、高スループットで、しかも高品質な画像を形成することができる画像形成装置および画像形成方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明は、像形成・転写処理を互いに異なる複数のトナー色について繰り返して各トナー色のトナー像を転写ドラム上で重ね合わせてカラー画像を形成する画像形成装置および画像形成方法に関するものである。特に、当接手段が前記像形成・転写処理を繰り返している際に前記転写ドラムに離当接することによって発生する負荷変動に応じて、回転駆動力を前記感光体および前記転写ドラムに伝達する複数の動力伝達部材の少なくとも1つが弾性変形する装置および方法を発明の対象としている。
【0009】
そして、上記目的を達成するため、この発明は、
(A)転写処理中に当接手段が前記転写ドラムに当接し、その当接状態のまま転写処理を完了することで発生するレジストズレを補正するためのレジスト制御量Raと、
(B)転写処理開始前から当接手段が前記転写ドラムに当接しており、その状態で転写処理が開始され、しかも、その転写処理途中で当接手段が前記転写ドラムから離間することで発生するレジストズレを補正するためのレジスト制御量Rbと、
(C)前記垂直同期信号の検出時点において前記転写ドラムに当接していた当接手段が該垂直同期信号の検出後且つ転写開始前に離間し、その後、その離間状態のまま転写処理を行う際に生じるレジストズレを補正するためのレジスト制御量Rcと
を、弾性変形によって生じる前記転写ドラム上でのトナー像の相対的なレジストズレを補正するために必要なレジスト制御量として予め記憶部に記憶しておき、カラー画像を形成する際には前記記憶部から前記レジスト制御量を読み出し、前記レジスト制御量に基づき前記複数のトナー色のうち少なくとも1色以上のトナー色について、前記当接手段の離当接タイミングより前に予めトナー像の転写開始位置を補正している。
【0010】
このように構成された発明では、像形成・転写処理の繰返し中に、転写ドラムへの当接手段の離当接が実行されるため、転写ドラムを追加回転させるとともに、その追加回転中に当接手段による二次転写処理やクリーニング処理を行っていた従来技術に比べ、優れた処理効率を有し、高いスループットが可能となる。
【0011】
また、各トナー像についての像形成・転写処理中に当接手段が転写ドラムに対して離当接することによってレジストズレが発生するが、その主要因は、転写ドラムに対する当接手段の離当接によって生じる動力伝達部材の弾性変形にある。特に、この種の画像形成装置では、駆動源からの回転駆動力を精度良く感光体および転写ドラム側に伝達するために、動力伝達部材としてポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルサイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド(PI)等の樹脂材料で成形されたギアを用いることが多く、当接手段が転写ドラムに対して離当接することによって生じる負荷変動に応じてギアが弾性変形し、これがレジストズレの主要因のひとつとなっていた。なお、レジストズレの発生要因については、後の「C.レジストズレの発生要因の解析について」の項で詳述する。
【0012】
そこで、この発明では、このようなレジストズレを補正するために必要なレジスト制御量Ra、Rb、Rcを予め記憶部に記憶しておき、カラー画像を形成する際には記憶部からレジスト制御量Ra、Rb、Rcが読み出され、そのレジスト制御量Ra、Rb、Rcに基づき複数のトナー色のうち少なくとも1色以上のトナー色について、当接手段の離当接タイミングより前に予めトナー像の転写開始位置が補正される。したがって、レジストズレを抑制して高品質なカラー画像が得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
A.装置構成について
図1は、この発明にかかる画像形成装置の一の実施形態を示す図である。また、図2は図1の電気的構成を示すブロック図である。この画像形成装置は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてフルカラー画像を形成したり、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成する装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令(印字要求内容を示す信号)が制御ユニット1に与えられると、制御ユニット1内に設けられたメインコントローラ11が画像形成装置のエンジン部Eの動作指示に適した形式のジョブデータ(印字情報)に変換し、エンジンコントローラ12に与える。これを受けたエンジンコントローラ12はジョブデータに応じて画像形成装置のエンジン部Eを制御している。
【0014】
このエンジン部Eでは、プロセスユニット2の感光体21にトナー像を形成可能となっている。すなわち、プロセスユニット2は、図1の矢印方向に回転可能な感光体21を備えており、さらに感光体21の周りにその回転方向に沿って、帯電手段としての帯電ローラ22、現像手段としての現像器23Y,23C,23M,23K、および感光体用クリーナブレード24がそれぞれ配置されている。帯電ローラ22は帯電バイアス回路(図示省略)から帯電バイアスが印加されており、感光体21の外周面に当接して外周面を均一に帯電させる。なお、感光体21および後で説明する中間転写ドラム41Dを回転駆動するための構成については、図14に示す構成と同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0015】
そして、この帯電ローラ22によって帯電された感光体21の外周面に向けて露光ユニット3からレーザ光Lが照射される。この露光ユニット3は、図1に示すように、画像信号に応じて変調駆動される半導体レーザなどの発光素子31を備えており、この発光素子31からのレーザ光Lが高速モータ32によって回転駆動される多面鏡33に入射されている。そして、多面鏡33によって反射されたレーザ光Lはレンズ34およびミラー35を介して感光体21上に主走査方向(図1の紙面に対して垂直な方向)に走査して画像信号に対応する静電潜像を形成する。なお、符号36は主走査方向における同期信号、つまり水平同期信号HSYNCを得るための水平同期用読取センサである。
【0016】
こうして形成された静電潜像は現像部23によってトナー現像される。すなわち、この実施形態では現像部23として、イエロー用の現像器23Y、シアン用の現像器23C、マゼンタ用の現像器23M、およびブラック用の現像器23Kが軸中心に回転自在に設けられている。これらの現像器23Y,23C,23M,23Kは回転位置決めされるとともに、感光体21に対して選択的に当接し、トナーを感光体21の表面に付与する。これによって、感光体21上の静電潜像が顕在化される。そして、現像部23で現像されたトナー像は、一次転写領域TR1で転写ユニット4の中間転写ドラム41D上に一次転写される。
【0017】
また、一次転写領域TR1から周方向(図1の矢印方向)に進んだ位置には、感光体用クリーナブレード24が配置されており、一次転写後に感光体21の外周面に残留付着しているトナーを掻き落とす。
【0018】
転写ユニット4の中間転写ドラム41Dは感光体21と当接しながら、モータなどの駆動源(図14の符号81)からの回転駆動力を受けて回転し、一次転写領域TR1で感光体21上のトナー像が中間転写ドラム41D上に一次転写される。そして、カラー画像を印字する場合には、感光体21上に形成される各色のトナー像を中間転写ドラム41D上に重ね合わせてカラー像を形成する。また、モノクロ画像を印字する場合には、感光体21上のブラックトナー像のみを中間転写ドラム41D上に形成する。この一次転写領域TR1の近傍には、中間転写ドラム41Dの基準位置を検出するためのセンサ40が配置されており、主走査方向とほぼ直交する副走査方向における同期信号、つまり垂直同期信号VSYNCを得るための垂直同期用読取センサとして機能する。
【0019】
また、この転写ユニット4には、この中間転写ドラム41Dに転写された中間トナー像をシート部材Sに二次転写する二次転写ローラ48と、感光体21および中間転写ドラム41Dを同期して回転駆動する感光体/転写媒体駆動部41aとを備えている。そして、カラー画像を印字する場合には、給排紙ユニット6によってカセット、手差しトレイあるいは増設カセット(図示省略)からシート部材Sを取出して二次転写領域TR2に搬送するとともに、このシート部材Sにカラー像を二次転写する。
【0020】
さらに、この二次転写領域TR2の近傍には、中間転写ドラム41Dに対して接離可能にクリーニング部49が設けられており、適当なタイミングで中間転写ドラム41Dに当接して、二次転写後に中間転写ドラム41Dの外周面に残留付着しているトナーについては、クリーニング部49によって掻き落される。
【0021】
さらに、搬送経路(図1の1点鎖線)に沿って二次転写領域TR2の下流側には、定着ユニット5が配置されており、搬送経路に沿って搬送されてくるシート部材S上のトナー像をシート部材Sに定着する。そして、当該シート部材Sはさらに搬送経路に沿って排出トレイ(図示省略)に搬送される。
【0022】
次に、図2を参照しつつ図1の画像形成装置の電気的構成について説明する。この画像形成装置に設けられたメインコントローラ11は、CPU111と、ホストコンピュータなどの外部装置との間で信号の授受を行うインターフェース112と、このインターフェース112を介して与えられた画像を記憶するための画像メモリ113とを備えており、上記したようにジョブデータ(印字情報)を作成し、エンジンコントローラ12に与える。
【0023】
エンジンコントローラ12はCPU121を有しており、エンジン部Eからの入力信号として水平同期用読取センサ36から水平同期信号HSYNCを、また垂直同期用読取センサ40から垂直同期信号VSYNCを、さらに定着ユニット5に設けられた温度センサ51から定着温度を示す温度信号を、それぞれ受けている。また、これらの入力信号および各種情報などに基づき、CPU121は動力伝達ユニット(図14の符号9)を介して駆動源(図14の符号81)から与えられる回転駆動力を受けて感光体21と中間転写ドラム41Dとを同期して回転駆動する感光体/転写媒体駆動部41aを駆動制御するための駆動指令信号を感光体/転写媒体駆動制御回路122に与え、この感光体/転写媒体駆動制御回路122によって感光体/転写媒体駆動部41aを制御して感光体21の表面速度および中間転写ドラム41Dの表面速度Vを加減速制御している。また、CPU121は後述するレジスト制御量の読出し処理、シーケンスフラグの更新処理などを実行する。
【0024】
また、エンジンコントローラ12には、転写ユニット4を制御する専用の制御回路として、感光体/転写媒体駆動制御回路122以外にも転写ローラ離当接制御回路123およびクリーナ離当接制御回路124をさらに備えている。この転写ローラ離当接制御回路123はCPU121からの指令信号に基づき二次転写ローラ用駆動部48aを制御して適当なタイミングで二次転写ローラ48を中間転写ドラム41Dに対して離当接させる。一方、クリーナ離当接制御回路124はCPU121から指令信号に基づきCB信号をクリーナ用駆動部49aを与えることでクリーナ用駆動部49aを制御して適当なタイミングでクリーニング部49を中間転写ドラム41Dに対して離当接させる。
【0025】
なお、図中の符号125はエンジン部Eを制御するための制御データやCPU121における演算結果などを一時的に記憶するためのRAMであり、さらに符号126はCPU121で行う演算プログラムや後で詳述する3種類のレジスト制御量Ra,Rb,Rcなどを予め記憶するROMである。
【0026】
B.基本動作について
図3は、上記のように構成された画像形成装置の基本動作を示すフローチャートである。このような画像形成装置では、像形成・転写処理を繰り返している際に、二次転写ローラ48やクリーニング部49などの当接手段が中間転写ドラム41Dに当接すると、後の「C.レジストズレの発生要因の解析について」の項で詳述するように種々のレジストズレが発生するが、レジスト制御量だけ転写開始位置を補正することでレジストズレを抑制して画像品質を向上させている。
【0027】
この画像形成装置では、予めレジスト制御量が求められ、記憶部たるROM126に記憶されている。この実施形態では、3種類の初期レジスト制御量として以下のレジスト制御量Ra,Rb,Rc、つまり、
Ra:一次転写処理中にクリーニング部49が当接し、その当接状態のまま一次転写処理を完了することで発生するレジストズレを補正するためのレジスト制御量、
Rb:像形成・転写処理において、一次転写開始前からクリーニング部49が当接しており、その当接状態で一次転写処理が開始され、しかも、その処理途中でクリーニング部49が離間することで発生するレジストズレを補正するためのレジスト制御量、
Rc:像形成・転写処理において、当接状態にあるクリーニング部49が一次転写開始前に離間し、その後、その離間状態のまま一次転写処理を行う際に生じるレジストズレを補正するためのレジスト制御量、
がROM126に記憶されている。
【0028】
そして、装置電源が投入されると、ホストコンピュータなどの外部装置からの画像信号、つまり印字要求を待つ(ステップS1)。そして、印字要求があると、その印字モードがモノクロ印字か、カラー印字であるかを判断し(ステップS2)、モノクロ印字と判断した場合には、レジスト制御することなく、通常の画像形成処理を実行してステップS1に戻る。一方、ステップS2でカラー印字であると判断した場合には、3つのシーケンスフラグF0,F1,F2のうちから印字シーケンス状態に応じたシーケンスフラグを選択的に設定する(ステップS3)。なお、このステップS3の詳細については、後の「D.シーケンスフラグの更新について」の項で詳述する。
【0029】
そして、そのシーケンスフラグに応じたレジスト制御量を設定した(ステップS4)後、各トナー色についての像形成・転写処理にあたって、感光体21を所定の加減速可能期間の間に加減速制御して潜像形成位置を基準潜像形成位置に対して副走査方向にレジスト制御量だけシフト移動させる(ステップS5)。これによって一次転写される中間転写ドラム41D上でのトナー像の転写位置も副走査方向にレジスト制御量だけ移動する。こうして、転写開始位置を補正してレジストズレを抑制する。なお、この詳細については、後の「E.転写開始位置の補正について」の項で詳細に説明する。
【0030】
このようにしてレジスト制御量に基づきレジストズレを抑制しながら、カラー画像の形成が完了すると、ステップS6で印字を終了したか否かを判断し、印字終了と判断した場合には、ステップS1に戻り、次の印字要求を待つ。一方、印字が終了していないと判断した場合には、ステップS2に戻り、上記と同様の処理を繰り返す。
【0031】
C.レジストズレの発生要因の解析について
ここでは、転写開始位置の補正を全く行わずに図1の画像形成装置を図4に示す動作シーケンスで動作させた場合のレジストズレの発生状況について、図4ないし図8を参照しつつ詳述する。
【0032】
図4は、図1の画像形成装置における動作シーケンスの一例を示すタイミングチャートである。同図に示すように、装置電源が投入された後、あるいは画像形成装置のスリープモードが解除されると、中間転写ドラム41Dが回転駆動されて垂直同期用読取センサ40から垂直同期信号VSYNCが間欠的に出力される。そして、垂直同期信号VSYNCがタイミングVT1〜VT7,…で出力されるごとに、一定時間をおいてイエロー静電潜像、シアン静電潜像、マゼンタ静電潜像およびブラック静電潜像がこの順序で繰り返して感光体21上に形成される。各静電潜像が形成された後、現像器23Y,23C,23M,23Kのうちの一の現像器が選択的に感光体21に当接して感光体21上の静電潜像を顕在化し、そのトナー像を中間転写ドラム41D上に一次転写する。したがって、各色のトナー像はすべて感光体21上の所定位置、つまり基準潜像形成位置に形成されることとなり、感光体21と同期して回転する中間転写ドラム41Dに対しても同一位置で一次転写される(各トナー色についての像形成・転写処理)。
【0033】
そして、上記像形成・転写処理を4色分繰り返すと、4色のトナー像が中間転写ドラム41D上で重ね合わせてカラー画像が形成される。こうしてカラー画像が得られると、二次転写ローラ48がシート部材Sを挟んで中間転写ドラム41Dに当接してシート部材Sにカラー画像を二次転写するとともに、CB信号に応じてクリーニング部49が中間転写ドラム41Dに当接して当該ドラム表面に残存しているトナーが除去される。このような動作が繰り返されてカラー画像が形成されたシート部材Sが順次標準排紙トレイに排紙される。
【0034】
これが図4の動作シーケンスに従った画像形成装置の動作概要であるが、このような動作と副走査方向におけるレジストズレ量との関係について調べると、1枚目と2枚目以降とで異なる結果が得られた。このような相違点は動作シーケンスの相違に起因するものであり、以下、1枚目の画像形成を行う動作シーケンス(以下、「第1印字シーケンス」という)と、2枚目以降の画像形成を行う動作シーケンス(以下、「第2印字シーケンス」という)とに分けて説明する。また、この種の装置では、空転処理に伴う第3印字シーケンスが存在するため、これについても併せて説明する。
【0035】
C−1.第1印字シーケンス
まず、装置電源が投入される(あるいは画像形成装置のスリープモードが解除される)と、中間転写ドラム41Dが回転駆動されて垂直同期用読取センサ40から垂直同期信号VSYNCがタイミングVT1〜VT3で順次出力されるが、最初のタイミングVT1に対応してイエロートナー像Y1が中間転写ドラム41D上に一次転写され、またタイミングVT2に対応してシアントナー像C1がイエロートナー像Y1に重ねて中間転写ドラム41D上に一次転写され、さらにタイミングVT3に対応してマゼンタトナー像M1がイエロートナー像Y1およびシアントナー像C1に重ねて中間転写ドラム41D上に一次転写される。この間、中間転写ドラム41Dのクリーニング処理および二次転写処理は行われず、当接手段(二次転写ローラ48およびクリーニング部49)は中間転写ドラム41Dから離間している。このため、これら3つのトナー像Y1,C1,M1は、いずれも中間転写ドラム41D上の同一位置に重ね合わされ、副走査方向において正確にレジストされる。つまり、これら3つのトナー像Y1,C1,M1の転写開始位置はすべて基準転写開始位置に一致し、しかもそれらの転写後端位置も基準転写後端位置にすべて一致している。
【0036】
次に、タイミングVT4で垂直同期信号VSYNCが出力されると、図5に示すように、所定時間T10後に露光ユニット3にVIDEO信号が与えられてブラックトナー像K1に相当する静電潜像を他のトナー色と同様に所定の基準潜像形成位置に形成しながら、ブラック用現像器23Kによってトナー現像する。そして、垂直同期信号VSYNCの出力(タイミングVT4)から一定時間T20経過した時点より一次転写処理を開始する。この時点では、イエロートナー像Y1、シアントナー像C1およびマゼンタトナー像M1の場合と同様に、クリーニング部49は中間転写ドラム41Dから離間しており、その結果、ブラックトナー像K1の転写開始位置も他のトナー像Y1,C1,M1と同様に基準転写開始位置に一致している。そして、離間継続中においては中間転写ドラム41Dの表面速度Vは一定であり、ブラックトナー像K1は既に一次転写されている他のトナー像Y1,C1,M1と正確にレジストされながら、重ね合わされていく。
【0037】
しかしながら、ブラックトナー像K1の一次転写後半に差し掛ったある時点、つまりタイミングt1で、クリーニング部49の動作を制御するCB信号がLレベルからHレベルに立ち上がり、クリーニング部49が中間転写ドラム41Dに当接してブラックトナー像K1がその他のトナー像Y1,C1,M1に対して副走査方向にずれてしまう。すなわち、タイミングt1でクリーニング部49が中間転写ドラム41Dに当接し、中間転写ドラム41Dの搬送負荷として作用し、中間転写ドラム41Dに回転駆動力を与える動力伝達部材91(図14)が弾性変形し、瞬間的に副走査方向に伸びA27が生じる。その結果、(−)方向にレジストズレ量A27だけレジストズレが生じる。
【0038】
また、タイミングt1以降、次にCB信号が再度LレベルからHレベルに立ち上がるまでクリーニング部49は中間転写ドラム41Dに当接した状態に維持されて中間転写ドラム41Dのクリーニング処理を実行するのであるが、ブラックトナー像K1の一次転写処理はタイミングt2までその当接状態のまま継続される。その結果、最終的なブラックトナー像K1の副走査方向におけるレジストズレ量は、ズレ量(−A27)となり、ブラックトナー像K1の転写後端位置は基準転写後端位置から(−)方向にズレ量A27だけずれる。ただし、図5(および後で説明するレジストズレ状況を示す図)において、太実線は対応トナー色のトナー像についてのレジストズレを示す一方、太破線はレジストズレ発生状況の理解を助けるための補助線である。
【0039】
このように、1枚目のカラー画像については、後半部分でブラックトナー像K1のみが他のトナー像Y1,C1,M1からずれ、特にカラー画像の最後尾部分ではレジストズレ量(−A27)だけずれてしまう。より詳しくは、図5に示すように、1枚目のブラックトナー像については、像形成・転写中での副走査方向におけるレジストズレは、振れ幅中心AC1を中心として副走査方向の(+)および(−)方向にそれぞれズレ量(A27/2)の範囲内で発生し、画像品質の低下を招いている。なお、クリーニング部49の当接前に二次転写ローラ48も中間転写ドラム41Dに当接して同様のレジストズレが発生するのであるが、それに対応するレジストズレ量はクリーニング部49のそれに比べて小さく、発明の基本原理の理解を容易にするため、ここでは中間転写ドラム41Dに対する二次転写ローラ48の離当接によるレジストズレを無視して説明する。
【0040】
C−2.第2印字シーケンス
このようなレジストズレは1枚目のみに生じるものではなく、2枚目のカラー画像においても現れる。すなわち、2枚目のイエロートナー像Y2を形成するために、図6に示すように、タイミングVT5で垂直同期信号VSYNCが出力されてから所定時間T10経過した後にそのイエロートナー像Y2を形成するためのVIDEO信号が露光ユニット3に与えられる。そして、イエロートナー像Y2に相当する静電潜像を感光体21上に形成しながら、イエロー用現像器23Yによってトナー現像する。また、垂直同期信号VSYNCの出力(タイミングVT5)から一定時間T20経過した時点、つまりタイミングt3より一次転写処理を開始する。
【0041】
ところが、垂直同期信号VSYNCの出力タイミングVT5からしばらくすると、上記したようにタイミングt1でクリーニング部49が中間転写ドラム41Dに当接し、動力伝達部材91の弾性変形によって副走査方向に瞬間伸びA27が生じる。しかも、その当接状態が後述するように次にCB信号がHレベルに立ち上がるまで継続されるため、一次転写開始タイミングt3では、副走査方向におけるレジストズレ量は、ズレ量(−A27)となる。
【0042】
また、中間転写ドラム41Dが約1周分だけクリーニング部49を通過すると、ドラム全周がクリーニングされてクリーニング処理が完了するので、タイミングt4でCB信号が再度LレベルからHレベルに立ち上がり、クリーニング部49が中間転写ドラム41Dから離間する。したがって、当接時とは逆に、中間転写ドラム41Dに与えられていた負荷が解放されるため、動力伝達部材91は元の状態に戻り、副走査方向におけるレジストズレ量はゼロとなる。
【0043】
このように、2枚目のカラー画像については、イエロートナー像Y2の転写開始位置が基準転写開始位置から大きくずれてしまう。しかも、一次転写の進行中、ズレ量は一定であるが、一次転写中にタイミングt4でクリーニング部49が離間すると、今度は逆にレジストズレ量はゼロに戻る。すなわち、図6に示すように、2枚目のイエロートナー像Y2については、像形成・転写中での副走査方向におけるレジストズレは、振れ幅中心AC2を中心として副走査方向の(+)および(−)方向のそれぞれにズレ量(A27/2)の範囲内で発生し、画像品質の低下を招いている。
【0044】
また、イエロートナー像Y2に続いて形成されるシアントナー像C2についても、クリーニング部49の離当接による影響を受けて転写開始位置が基準転写開始位置からずれてしまう。この現象について、図7を参照しつつ説明する。
【0045】
2枚目のシアントナー像C2を形成するために、タイミングVT6で垂直同期信号VSYNCが出力されてから所定時間T10経過した後にそのシアントナー像C2を形成するためのVIDEO信号が露光ユニット3に与えられる。そして、シアントナー像C2に相当する静電潜像を感光体21上に形成しながら、シアン用現像器23Cによってトナー現像する。また、垂直同期信号VSYNCの出力(タイミングVT6)から一定時間T20経過した時点、つまりタイミングt5より一次転写処理を開始する。
【0046】
ここでは、垂直同期信号VSYNCの出力タイミングVT6時点では、上記したようにクリーニング部49は中間転写ドラム41Dに当接しており、タイミングt4(CB信号が再度LレベルからHレベルに立ち上がる)でクリーニング部49が中間転写ドラム41Dから離間する。すると、上記したように、今度は当接時とは逆に、中間転写ドラム41Dに与えられていた負荷が解放されて動力伝達部材91は元の状態に戻り、副走査方向におけるレジストズレ量はレジスト量A27だけ(+)方向に増える。そして、それ以降は、次にCB信号が再度LレベルからHレベルに立ち上がるまで離間状態に保たれる。その結果、シアントナー像C2の一次転写開始時点(タイミングt5)では、副走査方向におけるレジストズレ量は、ズレ量(+A27)となる。
【0047】
このように、2枚目のシアントナー像C2については、像形成・転写中での副走査方向におけるレジストズレは、振れ幅中心AC3を中心として振幅量0となっており、一次転写処理中においてレジストズレ量は変化しないものの、振れ幅中心AC3自体が副走査方向(+)にズレ量A27だけ平行シフトしており、これによって画像品質の低下を招いている。すなわち、4色のトナー色のうち第2番目のトナー色については、その一次転写処理中に当接手段(二次転写ローラ48やクリーニング部49)は中間転写ドラム41Dに対して離当接していないにもかかわらず、レジストズレが発生している。したがって、レジストズレを抑えて高品質のカラー画像を形成するためには、第2番目のトナー色において発生するレジストズレを如何に抑制するかが重要となってくる。
【0048】
上記のようにしてシアントナー像C2の一次転写が完了すると、次にマゼンタトナー像M2のトナー像形成および一次転写処理を行うのであるが、その処理の間、クリーニング部49は中間転写ドラム41Dから離間した状態のままであるため、1枚目と同様に副走査方向におけるレジストズレは発生せず、ズレ量はゼロとなる。したがって、マゼンタトナー像M2については、像形成・転写中での副走査方向におけるレジストズレは、レジストズレ量がゼロの軸(図5、図6などにおける1点鎖線AC0)を振れ幅中心とし、その振幅量もゼロとなっている。このことから、図4に示す動作シーケンスで画像形成を行う画像形成装置では、マゼンタトナー像を基準トナー像とし、その転写開始位置および転写後端位置を、それぞれ「基準転写開始位置」および「基準転写後端位置」とすることができる。
【0049】
また、マゼンタトナー像M2の一次転写が完了すると、2枚目のブラックトナー像の像形成および一次転写処理を行うのであるが、この場合、1枚目と同様に一次転写途中でクリーニング部49が中間転写ドラム41Dに当接し、動力伝達部材91の弾性変形によって副走査方向に瞬間伸びA27が生じて副走査方向において(−)方向にレジストズレが発生する。なお、動作シーケンスに対するレジストズレ量の変化を示すプロファイル(以下においては、単に「プロファイル」と称する)は図5と同一であり、像形成・転写中での副走査方向におけるレジストズレは、振れ幅中心AC1を中心として副走査方向の(+)および(−)方向にそれぞれズレ量(A27/2)の範囲内で発生し、画像品質の低下を招いている。
【0050】
さらに、2枚目のカラー画像に続いて、3枚目以降のカラー画像を連続的に形成する場合、上記した2枚目と同様のレジストズレが発生する。
【0051】
C−3.第3印字シーケンス
さらに、この種の画像形成装置では、中間転写ドラム41Dを空転させることがある。例えばホストコンピュータなどの外部装置からの画像信号の間隔が一定以上あくと、中間転写ドラム41Dを空転させるが、2回以上空転させる必要がある場合には、一旦装置を止めてしまう。このとき、クリーニング部49は中間転写ドラム41Dに当接状態となっている。そして、新たに画像形成を開始する場合には、中間転写ドラム41Dが回転駆動されて画像形成が開始されるが、最初のイエロートナー像を一次転写する際、図7に示す2枚目以降のシアントナー像の場合と同様のレジストズレが発生する。
【0052】
すなわち、図8に示すように、画像形成が再開されて中間転写ドラム41Dが回転駆動されると、垂直同期用読取センサ40から垂直同期信号VSYNCがタイミングVT01で出力され、そのタイミングVT01から一定時間A14後にクリーニング部49が中間転写ドラム41Dから離間した後、イエロートナー像の一次転写が開始される。そのため、上記「C−2.第2印字シーケンス」のシアントナー像C2の場合と同様の理由により、転写開始位置が(+)方向にズレ量A27だけずれる。つまり、像形成・転写中での副走査方向におけるレジストズレは、振れ幅中心AC4を中心として振幅量0となっており、一次転写処理中においてレジストズレ量は変化しないものの、振れ幅中心AC4自体が副走査方向(+)にズレ量A27だけ平行シフトしており、これによって画像品質の低下を招いている。
【0053】
そして、続くシアンおよびマゼンタトナー像の一次転写はクリーニング部49が常時中間転写ドラム41Dから離間した状態で実行されるため、レジストズレは発生しないが、最後のブラックトナー像については、第1および第2印字シーケンスの場合と同様に一次転写している最中にクリーニング部49および二次転写ローラ48が中間転写ドラム41Dに当接して(−)方向にズレ量A27のレジストズレが発生する。
【0054】
C−4.レジスト制御量の設定・記憶について
以上のように、像形成・転写処理を繰り返している間に、クリーニング部49などの当接手段が中間転写ドラム41Dに離当接すると、離当接タイミングに応じて所定のレジストズレ量が発生する。このプロファイル自体は装置構成や動作条件などによって決まる固有のものであり、装置構成や動作シーケンスを変更しない限り当該プロファイル自体は変化しないが、レジストズレ量に基づき少なくとも1色以上のトナー色についてトナー像の転写開始位置を副走査方向に移動させることで基準トナー像に対するレジストズレをゼロまたは抑制することができる。例えばシアントナー像C2については、図7に示すように、シアントナー像C2の転写開始位置が基準転写開始位置に対して(+)方向にズレ量A27となっており、それ以降ではレジストズレ量の増減が見られないため、シアントナー像C2の転写開始位置がレジストズレ量A27だけ(−)方向にずれるように制御することによって、レジストズレ量をゼロにすることができる。
【0055】
したがって、この実施形態では、上記したように実際の画像形成処理に先立って、装置構成および動作シーケンス等から上記したと同様の解析を予め行ってレジストズレ量を導出し、そのレジストズレ量をゼロあるいは抑制するために必要なレジスト制御量を求めている。具体的には、ブラックトナー像K1,K2,…については、「C−1.第1印字シーケンス」の項で説明したように、中間転写ドラム41Dへのクリーニング部49の当接によって副走査方向に伸びA27が生じる。したがって、この半分の値だけ予め転写開始位置を副走査方向にずらしておくことでブラックトナー像K1,K2,…のレジストズレを最小限に抑えることができる。そこで、この実施形態では、レジスト制御量Raを、
Ra=A27/2
に設定している。
【0056】
また、イエロートナー像Y2などについては、「C−2.第2印字シーケンス」の項で説明したように、一次転写開始タイミングでは、副走査方向におけるレジストズレ量はズレ量(−A27)となる一方、一次転写処理中に中間転写ドラム41Dに与えられていた負荷が解放されて副走査方向におけるレジストズレ量はゼロとなる。したがって、ブラックトナー像の場合と同様に、この半分の値だけ予め転写開始位置を副走査方向にずらしておくことで、そのレジストズレを最小限に抑えることができる。そこで、この実施形態では、レジスト制御量Rbを、
Rb=A27/2
に設定している。
【0057】
さらに、シアントナー像C2やイエロートナー像Ynなどについては、「C−2.第2印字シーケンス」および「C−3.第3印字シーケンス」の項で説明したように、一次転写開始時点で、レジストズレ量A27が生じているが、一次転写をしている間では、副走査方向におけるズレは発生しない。そこで、この実施形態では、この値(レジストズレ量A27)だけ予め副走査方向の(−)方向にずらしておくことでシアントナー像C2やイエロートナー像Ynなどのレジストズレをゼロに抑えることができるため、初期レジスト制御量Rcを、
Rc=−A27
に設定している。
【0058】
そして、これらのレジスト制御量Ra,Rb,Rcを予めROM126に記憶しておき、実際の画像形成処理においてROM126からレジスト制御量を読み出し、そのレジスト制御量に基づき少なくとも1色以上のトナー色についてトナー像の転写開始位置を副走査方向に補正することによって、レジストズレを抑制し、高品質な画像を形成することができる。
【0059】
D.シーケンスフラグの更新について
図9は、図3のシーケンスフラグの更新内容を示すフローチャートである。このシーケンスフラグの更新処理では、まず印字内容が1枚目のカラー印字であるか否かを判断する(ステップS31)。そして、1枚目であると判断した場合、つまり第1印字シーケンスが実行されることを検出すると、シーケンスフラグF0を設定する(ステップS32)。一方、ステップS31で、2枚目以降であると判断した場合には、ステップS33に進んで、空転処理が行われているか否かを判断する。
【0060】
空転処理が行われていない、つまり連続印字の場合には、第2印字シーケンスが実行されることから、シーケンスフラグF1を設定する(ステップS34)。一方、空転処理が行われている場合、第3印字シーケンスが実行されることから、シーケンスフラグF2を設定する(ステップS35)。
【0061】
以上のようにして、シーケンスフラグ更新処理(ステップS3)によって印字シーケンスが検出され、それに対応するシーケンスフラグが設定・更新されるが、各シーケンスフラグF0,F1,F2は上記レジスト制御量と以下のような関連付けがなされている。
【0062】
<シーケンスフラグF0:第1印字シーケンス>
第1印字シーケンスは、図9に示したように1枚目のカラー印字、つまり電源投入やスリープモード解除の後に行う1枚目のカラー画像を形成する場合のものである。このように電源投入時点やスリープモード解除時点では、中間転写ドラム41Dにトナーは残留しておらず、そのまま像形成・転写処理を実行することができるため、1枚目のカラー画像形成におけるイエロー、シアン、マゼンタの各トナー像を一次転写する間、クリーニング部49も二次転写ローラ48も中間転写ドラム41Dから離間しており、これらの一次転写を行っている際には、レジストズレは発生しない。これに対し、図5を用いて詳述したようにブラックトナー像を一次転写している最中にはクリーニング部49および二次転写ローラ48が中間転写ドラム41Dに当接してレジストズレが発生する。
【0063】
そこで、第1印字シーケンスでは、フラグF0が設定され、表1に示すように、このシーケンスフラグF0に対応してイエロートナー像Y1、シアントナー像C1、マゼンタトナー像M1のレジスト制御量として「0」が設定される一方、ブラックトナー像K1のレジスト制御量として制御量Raが設定される。
【0064】
【表1】
【0065】
<シーケンスフラグF1:第2印字シーケンス>
第2印字シーケンスは、図9に示したように2枚目以降のカラー印字を連続して行う場合のものである。このように2枚目以降では、図6を用いて詳述したようにイエロートナー像の転写開始位置が副走査方向にずれ、また一次転写中においてもクリーニング部49などの中間転写ドラム41Dへの離当接によってレジストズレ量が変化する。シアントナー像の像形成・転写中にも、図7を用いて説明したように、転写開始位置が副走査方向にずれる。しかも、ブラックトナー像についても、1枚目と同様に、一次転写している最中にクリーニング部49および二次転写ローラ48が中間転写ドラム41Dに当接してレジストズレが発生する。
【0066】
そこで、第2印字シーケンスでは、フラグF1が設定され、表1に示すように、このシーケンスフラグF1に対応してイエロートナー像Y2のレジスト制御量として制御量Rbが設定され、シアントナー像C2のレジスト制御量として制御量Rcが設定され、マゼンタトナー像M2のレジスト制御量として「0」が設定されるとともに、ブラックトナー像K2のレジスト制御量として制御量Raが設定される。
【0067】
<シーケンスフラグF2:第3印字シーケンス>
第3印字シーケンスは、図9に示したように2枚目以降のカラー印字であるが、その直前に空転処理が行われた場合のものである。このように空転処理が存在する場合、次のn枚目(n≧2)の画像形成を開始すると、すでに説明したように、垂直同期信号VSYNCが出力されてイエロー用の像形成・転写処理が開始された後で、しかもイエロートナー像を一次転写する前に、クリーニング部49が中間転写ドラム41Dから離間し、転写開始位置が副走査方向にずれる(図8)。そして、続くシアンおよびマゼンタトナー像の像形成・転写処理は常時クリーニング部49が中間転写ドラム41Dから離間した状態で実行されるため、レジストズレは発生しないが、最後のブラックトナー像については、第1および第2印字シーケンスの場合と同様に一次転写している最中にクリーニング部49および二次転写ローラ48が中間転写ドラム41Dに当接してレジストズレが発生する。
【0068】
そこで、この印字シーケンスでは、フラグF2が設定され、表1に示すように、このシーケンスフラグF2に対応してイエロートナー像のレジスト制御量として制御量Rcが設定され、シアントナー像およびマゼンタトナー像のレジスト制御量として「0」が設定されるとともに、ブラックトナー像のレジスト制御量として制御量Raが設定される。
【0069】
E.転写開始位置の補正について
実際に、1枚目からカラー画像を順次印字する場合、以下のようにして転写開始位置が補正されてレジストズレが抑制される。1枚目のカラー画像を印字する場合には、図3のステップS3で第1印字シーケンスに対応するシーケンスフラグF0が設定されるため、図3のステップS4でイエロートナー像Y1、シアントナー像C1およびマゼンタトナー像M1のレジスト制御量として「0」がそれぞれ設定される一方、ブラックトナー像K1のレジスト制御量として初期レジスト制御量Ra(=A27/2)が設定される。したがって、イエロートナー像Y1、シアントナー像C1およびマゼンタトナー像M1はすべて感光体21上の所定位置、つまり基準潜像形成位置に形成されることとなり、感光体21と同期して回転する中間転写ドラム41Dに対しても同一位置で一次転写される。その結果、これら3つのトナー像Y1,C1,M1の転写開始位置はすべて基準転写開始位置に一致し、しかもそれらの転写後端位置も基準転写後端位置にすべて一致している。
【0070】
一方、ブラックトナー像K1については、レジスト制御量として初期レジスト制御量Raが設定されていることから、図10に示すように、タイミングVT4で出力された垂直同期信号VSYNCを基準として加減速可能期間T11のタイミングt11で、感光体21を加減速制御してブラックトナー像の潜像形成位置を基準潜像形成位置に対し副走査方向の(+)側に制御量Ra(=A27/2)だけシフト移動させる。ここで、「加減速可能期間」とは、VIDEO信号がHレベルにあり、露光処理が停止している間の期間をいう。また、この加減速可能期間T11においては、1つ前のトナー像(マゼンタトナー像M1)の一次転写処理を継続中であるが、この実施形態では中間転写ドラム41Dは感光体21と同期して駆動制御されるため、感光体21および中間転写ドラム41Dの加減速制御と並行して一次転写されるトナー像に乱れは生じない。
【0071】
上記のようにして感光体21の上に形成された潜像を現像器23Kで顕在化し、そのブラックトナー像K1を中間転写ドラム41D上に一次転写する。その結果、ブラックトナー像K1の転写開始位置は基準転写開始位置に対して(+)方向にレジスト制御量Raだけずれる。
【0072】
そして、図10に示すように、この一次転写処理が進行し、その後半部分に差し掛ったタイミングt1で、クリーニング部49の動作を制御するCB信号がLレベルからHレベルに立ち上がり、クリーニング部49が中間転写ドラム41Dに当接してブラックトナー像K1がその他のトナー像Y1,C1,M1に対して副走査方向にずれるが、最終的なブラックトナー像K1の副走査方向におけるレジストズレ量は、(−)方向にズレ量(A27/2)となる。つまり、ブラックトナー像K1の転写開始位置を基準転写開始位置に対して(+)方向にレジスト制御量Raだけ移動させることで、ブラック色についての振れ幅中心AC1を基準トナー色であるマゼンタ色についての振れ幅中心AC0と一致させており、こうすることで、すべてのトナー色について像形成・転写処理中における各トナー色ごとの副走査方向におけるレジストズレの振れ幅中心が相互に一致している。
【0073】
この結果、この実施形態では、ブラックトナー像K1は他のトナー像Y1,C1,M1に対して転写開始側で(+)方向に(A27/2)だけずれるとともに、転写後端側で(−)方向に(A27/2)だけずれており、最大ズレ量はレジスト制御を行わない場合(図5)の半分になる。
【0074】
次に、1枚目のカラー画像形成に続いて2枚目のカラー画像を形成する場合(第2印字シーケンス)では、図3のステップS3でシーケンスフラグとしてフラグF1が設定された後、以下のようにして、レジストズレを抑えて高品質な画像形成が可能となる。
【0075】
すなわち、ステップS4でそのシーケンスフラグF1に対応するレジスト制御量が設定される。つまり、イエロートナー像Y2のレジスト制御量として初期レジスト制御量Rb(=A27/2)が設定され、シアントナー像C2のレジスト制御量として初期レジスト制御量Rc(=−A27)が設定され、マゼンタトナー像M2のレジスト制御量として「0」が設定されるとともに、ブラックトナー像K2のレジスト制御量として初期レジスト制御量Ra(=A27/2)が設定される。そして、各トナー像についてレジスト制御が実行される。
【0076】
まず、イエロートナー像Y2については、レジスト制御量として初期レジスト制御量Rbが設定されていることから、図11に示すように、タイミングVT5で出力された垂直同期信号VSYNCを基準として加減速可能期間T11のタイミングt11で、感光体21を加減速制御してイエロートナー像の潜像形成位置を基準潜像形成位置に対して副走査方向の(+)側に制御量Rb(=A27/2)だけシフト移動させる。そして、この潜像を現像器23Yで顕在化する。
【0077】
そして、タイミングt1でCB信号がLレベルからHレベルに立ち上がり、離間していたクリーニング部49が中間転写ドラム41Dに当接すると、動力伝達部材91(図14)が弾性変形することによって伸びA27が発生し、一次転写開始タイミングt3では、副走査方向におけるレジストズレ量は、ズレ量(−A27/2)となる。そして、イエロートナー像Y2の一次転写後半でクリーニング部49が中間転写ドラム41Dから離間すると、逆に動力伝達部材91が元の状態に戻ってレジストズレが(+)方向に変化し、最終的にはイエロートナー像Y2の転写後端側でのズレ量は(+A27/2)となる。その結果、ブラックトナー像K1と同様に、最大ズレ量はレジスト制御を行わない場合(図6)の半分になり、基準トナー像(マゼンタトナー像M2)に対する最大ズレ量はレジスト制御を行わない場合(図6)に比べて大幅に縮小される。
【0078】
このように、この実施形態では、感光体21上での潜像形成位置をレジスト制御量Rbだけ基準潜像形成位置に対して副走査方向にシフト移動させることで2枚目のイエロートナー像Y2の転写開始位置を調整している。これにより、イエロー色についての振れ幅中心AC2を基準トナー色であるマゼンタ色についての振れ幅中心AC0と一致させている。このため、基準トナー像(マゼンタトナー像M2)に対するズレ量を振れ幅(A27/2)の範囲内に抑制することができる。
【0079】
イエロートナー像Y2に続いて、シアントナー像C2の像形成・転写処理が行われるが、このシアントナー像C2のレジスト制御量として初期レジスト制御量Rc(=−A27)が設定されている。そのため、図12に示すように、タイミングVT6で出力された垂直同期信号VSYNCを基準として加減速可能期間T11のタイミングt11で、感光体21の表面速度および中間転写ドラム41Dの表面速度Vを一時的に遅くすることで、一定速度で回転駆動する場合(基準トナー像、つまりマゼンタトナー像の場合)に比べて感光体21の回転量および中間転写ドラム41Dの搬送量をズレ量A27だけ少なくする。その結果、感光体21上での潜像形成位置が基準潜像形成位置に対して副走査方向にレジスト制御量Rcだけシフト移動する。
【0080】
そして、上記のようにして感光体21の上に形成された潜像を現像器23Cで顕在化し、そのシアントナー像C2を中間転写ドラム41D上に一次転写する。したがって、クリーニング部49の離当接によるレジストズレ量(A27)と、感光体21上でのトナー像C2のシフト量Rcとが一致してシアントナー像C2の転写開始位置は基準転写開始位置と一致する。
【0081】
また、シアントナー像C2の中間転写ドラム41Dへの一次転写処理が開始される前のタイミングt4でCB信号がLレベルからHレベルに立ち上がり、当接していたクリーニング部49が中間転写ドラム41Dから離間しているため、一次転写処理中でのレジストズレは生じない。このため、シアントナー像C2の転写後端位置は転写後端位置と一致する。
【0082】
このように、この実施形態では、レジスト制御量Rcに基づき感光体21および中間転写ドラム41Dを加減速制御することで、シアン色についての振れ幅中心AC3を基準トナー色であるマゼンタ色についての振れ幅中心AC0と一致させている。このため、基準トナー像(マゼンタトナー像M2)に対するズレ量をゼロに抑制することができる。
【0083】
シアントナー像C2に続いてマゼンタトナー像M2の像形成・転写処理が実行されるが、この像形成・転写処理においては、クリーニング部49および二次転写ローラ48の離当接は一切なく、マゼンタトナー像M2の転写開始位置および転写後端位置はそれぞれ基準転写開始位置および転写後端位置と一致する。
【0084】
こうして、3色のトナー像Y2,C2,M2が完了すると、次に最終トナー色、つまりブラックトナー像K2の像形成・転写処理が実行される。この像形成・転写処理では、1枚目のブラックトナー像K1の場合と同様に、感光体21上での潜像形成位置をレジスト制御量Raだけ副走査方向にシフト移動させることで、ブラック色についての振れ幅中心AC1を基準トナー色であるマゼンタ色についての振れ幅中心AC0と一致させている。
【0085】
したがって、基準トナー像に対して転写開始側で(+)方向に(A27/2)だけずれるとともに、転写後端側で(−)方向に(A27/2)だけずれており、最大ズレ量はレジスト制御を行わない場合(図5)の半分になる。
【0086】
このように、2枚目についても、すべてのトナー色について、転写処理中における各トナー色ごとの副走査方向におけるレジストズレの振れ幅中心が相互に一致するように、各トナー色ごとに対応するレジスト制御量に基づき感光体21の表面速度および中間転写ドラム41Dの表面速度を同期して加減速制御することでトナー像の転写開始位置を補正している。つまり、ここでは4色のトナー色のうちイエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)の3色について各トナー像の転写開始位置をレジスト制御量に基づき補正している。その結果、シアントナー像C2を基準トナー像であるマゼンタトナー像M2に完全にレジストさせることができるとともに、イエロートナー像Y2およびブラックトナー像K2については基準トナー像に完全にレジストすることができないまでも、レジストズレ量を最小限に抑えることができ、高品質な画像形成が可能となる。
【0087】
また、シーケンスフラグF2が設定されている場合には、イエロートナー像Ynのレジスト制御量として初期レジスト制御量Rcが設定され、シアントナー像Cnおよびマゼンタトナー像Mnのレジスト制御量として「0」が設定されるとともに、ブラックトナー像Knのレジスト制御量として初期レジスト制御量Raが設定される。そして、各トナー像についてレジスト制御が実行される。
【0088】
まず、イエロートナー像Ynについては、レジスト制御量として初期レジスト制御量Rcが設定されていることから、図13に示すように、タイミングVT01で出力された垂直同期信号VSYNCを基準として加減速可能期間T11のタイミングt11で、感光体21の表面速度および中間転写ドラム41Dの表面速度Vを一時的に遅くすることで、一定速度で回転駆動する場合(基準トナー像、つまりマゼンタトナー像の場合)に比べて感光体21の回転量および中間転写ドラム41Dの搬送量をズレ量A27だけ少なくする。その結果、感光体21上での潜像形成位置が基準潜像形成位置に対して副走査方向にレジスト制御量Rc(=−A27)だけシフト移動する。
【0089】
そして、上記のようにして感光体21の上に形成された潜像を現像器23Yで顕在化し、そのイエロートナー像Ynを中間転写ドラム41D上に一次転写する。したがって、クリーニング部49の離当接によるレジストズレ量(A27)と、感光体21上でのトナー像Ynのシフト量Rcとが一致してイエロートナー像Ynの転写開始位置は基準転写開始位置と一致する。
【0090】
また、イエロートナー像Ynの中間転写ドラム41Dへの一次転写処理が開始される前のタイミングt4でCB信号がLレベルからHレベルに立ち上がり、当接していたクリーニング部49が中間転写ドラム41Dから離間しているため、一次転写処理中でのレジストズレは生じない。このため、イエロートナー像Ynの転写後端位置は転写後端位置と一致する。
【0091】
このように、この実施形態では、レジスト制御量Rcに基づき感光体21および中間転写ドラム41Dを加減速制御することで、イエロー色についての振れ幅中心AC4を基準トナー色であるマゼンタ色についての振れ幅中心AC0と一致させている。このため、基準トナー像(マゼンタトナー像Mn)に対するズレ量をゼロに抑制することができる。
【0092】
イエロートナー像Ynに続いて、シアントナー像Cnおよびマゼンタトナー像Mnの像形成・転写処理が順次行われるが、これらの像形成・転写処理においては、クリーニング部49および二次転写ローラ48の離当接は一切なく、両トナー色についての振れ幅中心は相互に一致しており、両トナー像CnおよびMnの転写開始位置および転写後端位置はそれぞれ基準転写開始位置および転写後端位置と一致する。
【0093】
こうして、3色のトナー像Yn,Cn,Mnが完了すると、次に最終トナー色、つまりブラックトナー像Knの像形成・転写処理が実行される。この像形成・転写処理では、第1および第2印字シーケンスの場合と同様に、レジスト制御量Raに基づき感光体21および中間転写ドラム41Dを加減速制御することで、ブラック色についての振れ幅中心AC1を基準トナー色であるマゼンタ色についての振れ幅中心AC0と一致させている。したがって、基準トナー像に対して転写開始側で(+)方向に(A27/2)だけずれるとともに、転写後端側で(−)方向に(A27/2)だけずれており、最大ズレ量はレジスト制御を行わない場合(図5)の半分になる。
【0094】
このように、空転処理後のカラー印字についても、4色のトナー色のうちイエロー(Y)およびブラック(K)の2色について各トナー像の転写開始位置をレジスト制御量に基づき補正している。つまり、すべてのトナー色について、転写処理中における各トナー色ごとの副走査方向におけるレジストズレの振れ幅中心が相互に一致するように、各トナー色ごとのレジスト制御量に基づき感光体21および中間転写ドラム41Dを加減速制御することで、トナー像の転写開始位置を補正している。その結果、イエロートナー像Yn、シアントナー像Cnおよびマゼンタトナー像(基準トナー像)Mnを完全にレジストさせることができるとともに、ブラックトナー像Knについては基準トナー像に完全にレジストすることができないまでも、レジストズレ量を最小限に抑えることができ、高品質な画像形成が可能となる。
【0095】
F.作用効果について
以上のように、この実施形態によれば、次のような作用効果が得られる。まず第1に、像形成・転写処理の繰返し中に、転写ドラム41Dへの当接手段(二次転写ローラ48やクリーニング部49)の離当接を実行しているため、転写ドラム41Dを追加回転させるとともに、その追加回転中に二次転写処理やクリーニング処理を実行していた従来技術に比べ、優れた処理効率で高いスループットが得られる。
【0096】
また、像形成・転写処理の繰返し中に、転写媒体である中間転写ドラム41Dへの当接手段(二次転写ローラ48やクリーニング部49)の離当接を実行しているため、上記において説明したように動力伝達部材91の弾性変形を引き起こし、これがレジストズレの主要因となる。しかしながら、印字シーケンス状態に応じてレジストズレを補正するために必要なレジスト制御量を予めROM126に記憶しておき、実際の画像形成時には印字シーケンスに対応するレジスト制御量をROM126から読み出し、そのレジスト制御量に基づき4色のトナー色のうち少なくとも1色以上のトナー色についてトナー像の転写開始位置を補正することでレジストズレを最小限に抑えることができる。より具体的には、この実施形態では、ブラック、イエローおよびシアン色について、像形成・転写処理中における各トナー色ごとの副走査方向におけるレジストズレの振れ幅中心AC1,AC2(またはAC4)およびAC3を基準トナー色であるマゼンタ色についての振れ幅中心AC0に一致させることで、すべてのトナー色の間でのレジストズレを最小限に抑制して高品質なカラー画像が得られる。
【0097】
また、ズレ量を抑制するために動力伝達部材91を高剛性材料、例えば金属やセラミック材料などを用いて成形し、弾性変形を抑制することも考えられるが、これらの高剛性材料の精密加工により動力伝達部材91を製造した場合、当該部材のコストが大幅に増大し、延いては画像形成装置の製造コストを引き上げてしまう。また、既に設計・製造されている装置に対しては、そのまま適用できず、装置改良が必要となってしまう。これに対して、上記実施形態によれば、装置構成に依存せずにレジストズレを抑制し、画像品質を向上させることができ、より安価で汎用性の高い技術といえる。
【0098】
G.その他
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、ROM126に記憶する代わりに、例えば転写ユニット4に対して記憶部を組み込んでおき、転写ユニット4の組立段階で当該転写ユニット4のみを単独で駆動させてレジスト制御量を求め、転写ユニット4の記憶部に記憶させるようにしてもよい。この場合、転写ユニット4の製造組立時点でレジスト制御量を求めることができ、他のユニット、例えばプロセスユニット2や露光ユニット3などの完成を待つことなく、レジスト制御量を求めることができるため、装置全体の組立作業効率を向上させることができる。
【0099】
また、画像形成装置全体が組み上がった段階でレジスト制御量を求め、ROM126に記憶するようにしてもよい。こうすることで、転写ユニット4以外のユニットがレジスト制御量に与える影響を反映した結果が得られ、転写ユニット4単独でレジスト制御量を求める場合に比べて精度の高いレジスト制御量が得られる。
【0100】
また、上記実施形態では、レジスト制御量に応じて転写開始位置を調整するために、感光体21と中間転写ドラム41Dとを同期して可変速制御することで、感光体21上での潜像形成位置をレジスト制御量に応じて副走査方向にシフト移動させているが、感光体21上での潜像形成位置をシフト移動させる方法としては、上記感光体/転写媒体駆動制御以外に、露光タイミングを制御することでも可能である。また、感光体/転写媒体駆動制御と露光タイミング制御とを組み合わせてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、感光体21と中間転写ドラム41Dとを同一の感光体/転写媒体駆動部41aで駆動制御することで両者を同期して駆動しているが、感光体21を駆動制御する感光体駆動部と、中間転写ドラム41Dを駆動制御する転写媒体駆動部とを設け、これらの感光体駆動部と転写媒体駆動部との連係によって感光体21と中間転写ドラム41Dとを同期駆動するようにしてもよい。
【0102】
また、感光体駆動部と転写媒体駆動部とを別個に設けた場合には、感光体21を一定速度で回転駆動する一方、中間転写ドラム41Dのうちトナー像の形成されない領域が一次転写領域TR1に位置している期間(一次転写を行わない期間)において、レジスト制御量に基づき中間転写ドラム41Dのみを可変速制御して転写開始位置を調整するようにしてもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、シーケンスフラグの更新処理(ステップS3)によって印字シーケンスに対応するシーケンスフラグを更新・設定することで印字シーケンスに対応するレジスト制御量を設定しているが、予め求められた3種類のレジスト制御量Ra,Rb,Rcを印字シーケンスと対応したテーブル形式でROM126などの記憶部に記憶するようにしてもよい。
【0104】
すなわち、3つの印字シーケンスに1対1で対応してシーケンスフラグF0,F1,F2が設けられているが、表1に示すようにシーケンスフラグと、各シーケンスフラグに対応する印字シーケンスに応じたレジスト制御量とを相互に関連付けた状態で記憶部に記憶してもよい。この場合、シーケンスフラグの更新処理(ステップS3)によって印字シーケンスに対応するシーケンスフラグが設定されると、そのシーケンスフラグに対応するレジスト制御量を記憶部中のテーブルから一括して読み出し、当該レジスト制御量に基づき4色のトナー色のうち少なくとも1色以上のトナー色についてトナー像の転写開始位置を補正することで、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0105】
また、上記実施形態では、マゼンタ色を基準トナー色とし、その他のトナー色(イエロー、シアンおよびブラック色)の振れ幅中心がマゼンタ色について振れ幅中心に一致させているが、マゼンタ色以外のトナー色を基準トナー色としてもよい。ただし、この実施形態では、4つのトナー色をイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびブラック(K)の順番で行い、マゼンタのトナー像が第3番目に一次転写されるため、上記したように当接手段(二次転写ローラ48やクリーニング部49)の離当接による影響を最も受けないため、マゼンタ色は基準トナー色とする上で好適であるといえる。また、基準トナー色を設けずに、すべてのトナー色についての振れ幅中心を適当な位置、例えば図7に示すように直線AC00(「副走査方向におけるレジストズレ量=k」)で相互に一致させるようにしてもよい。この場合、すべてのトナー色についてトナー像の転写開始位置を補正することになる。
【0106】
また、上記実施形態では、3種類の印字シーケンスに区分けし、各印字シーケンスに対応する識別変数をそれぞれ設定しているが、印字シーケンスの区分け数はこれに限定されるものではなく、区分け数が2以上であれば、上記実施形態と同様の作用効果、つまりシーケンスが変化するごとにレジスト制御量を新たに求め直す必要がなくなり、優れた制御性が得られる。
【0107】
また、上記実施形態では、中間転写ドラム41Dを回転駆動する駆動源として例えばDCモータを採用し、レジスト制御量に基づきDCモータを加減速制御することでレジスト制御しているが、DCモータの代わりにステッピングモータなどのパルスモータを用い、レジスト制御量に基づきパルス駆動制御することでレジスト制御するようにしてもよい。
【0108】
さらに、上記実施形態にかかる画像形成装置は、ホストコンピュータなどの外部装置よりインターフェース112を介して与えられた画像を複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどのシート部材に印字するプリンタであるが、本発明は複写機やファクシミリ装置などの電子写真方式のカラー画像形成装置、つまり複数色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成する画像形成装置全般に適用することができる。
【0109】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、像形成・転写処理の繰返し中に、転写ドラムに対して当接手段を離当接させており、転写ドラムを追加回転させるとともに、追加回転中に当接手段による二次転写処理やクリーニング処理を行っていた従来技術に比べ、優れた処理効率で画像形成を行うことができ、高いスループットを得ることができる。
【0110】
また、各トナー像についての像形成・転写処理中に当接手段が転写ドラムに対して離当接することによってレジストズレが発生するが、このようなレジストズレを補正するために必要なレジスト制御量を予め記憶部に記憶しておき、カラー画像を形成する際には記憶部からレジスト制御量が読み出され、そのレジスト制御量に基づき複数のトナー色のうち少なくとも1色以上のトナー色についてトナー像の転写開始位置を補正するように構成しているので、レジストズレを解消、あるいは抑制することができ、高品質なカラー画像が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる画像形成装置の一の実施形態を示す図である。
【図2】図1の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図1の画像形成装置の基本動作を示すフローチャートである。
【図4】この発明にかかる画像形成装置における動作シーケンスの一例を示すタイミングチャートである。
【図5】図1の画像形成装置において、レジスト制御を行うことなしにブラックトナー像を転写した際のレジストズレ状況を示す図である。
【図6】図1の画像形成装置において、レジスト制御を行うことなしにイエロートナー像を転写した際のレジストズレ状況を示す図である。
【図7】図1の画像形成装置において、レジスト制御を行うことなしにシアントナー像を転写した際のレジストズレ状況を示す図である。
【図8】図1の画像形成装置において、レジスト制御を行うことなしにイエロートナー像を転写した際のレジストズレ状況を示す図である。
【図9】図3のシーケンスフラグの更新内容を示すフローチャートである。
【図10】図1に示す画像形成装置においてブラックトナー像を転写する際のレジスト制御内容を示す図である。
【図11】図1に示す画像形成装置においてイエロートナー像を転写する際のレジスト制御内容を示す図である。
【図12】図1に示す画像形成装置においてシアントナー像を転写する際のレジスト制御内容を示す図である。
【図13】図1に示す画像形成装置においてイエロートナー像を転写する際のレジスト制御内容を示す図である。
【図14】この発明の背景技術となる画像形成装置の全体構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1…制御ユニット(制御手段)
3…露光ユニット(露光手段)
4…転写ユニット
9…動力伝達ユニット(動力伝達手段)
12…エンジンコントローラ(制御手段)
21…感光体
41D…中間転写ドラム(転写媒体)
41a…感光体/転写媒体駆動部
48…二次転写ローラ(当接手段)
49…クリーニング部(当接手段)
81…駆動源
91…動力伝達部材
121…CPU(制御手段)
126…ROM(記憶部)
400…当接手段
C1,C2,Cn…シアントナー像
K1…ブラックトナー像
M1,M2…マゼンタトナー像
Ra,Rb,Rc…レジスト制御量
Y1,Y2,Yn…イエロートナー像
Claims (2)
- 感光体および転写ドラムを副走査方向に回転させるとともに、前記転写ドラムの回転周期と同周期で検出される信号である垂直同期信号の検出結果に基づいて前記感光体上にトナー像を形成した後、前記垂直同期信号の検出時点から所定時間経過後に当該トナー像を前記転写ドラムに転写する一連の処理を像形成・転写処理としたとき、当該像形成・転写処理を互いに異なる複数のトナー色について繰り返して各トナー色のトナー像を前記転写ドラム上で重ね合わせてカラー画像を形成する画像形成装置において、
回転駆動力を発生する駆動源と、
複数の動力伝達部材を有し、これら複数の動力伝達部材によって前記駆動源からの回転駆動力を前記感光体および前記転写ドラムに伝達する動力伝達手段と、
前記像形成・転写処理を繰り返している際に前記転写ドラムに対して一時的に当接する当接手段と、
装置各部を制御する制御手段とを備え、
前記当接手段が前記転写ドラムに離当接することによって発生する負荷変動に応じて前記複数の動力伝達部材の少なくとも1つが弾性変形するように構成されており、
前記弾性変形によって生じる前記転写ドラム上でのトナー像の相対的なレジストズレを補正するために必要なレジスト制御量を予め記憶する記憶部をさらに備え、
前記記憶部は、
(A)転写処理中に当接手段が前記転写ドラムに当接し、その当接状態のまま転写処理を完了することで発生するレジストズレを補正するためのレジスト制御量Raと、
(B)転写処理開始前から当接手段が前記転写ドラムに当接しており、その状態で転写処理が開始され、しかも、その転写処理途中で当接手段が前記転写ドラムから離間することで発生するレジストズレを補正するためのレジスト制御量Rbと、
(C)前記垂直同期信号の検出時点において前記転写ドラムに当接していた当接手段が該垂直同期信号の検出後且つ転写開始前に離間し、その後、その離間状態のまま転写処理を行う際に生じるレジストズレを補正するためのレジスト制御量Rcと
を前記レジスト制御量として記憶し、
前記制御手段は、カラー画像を形成する際には前記記憶部から前記レジスト制御量を読み出し、前記レジスト制御量に基づき前記複数のトナー色のうち少なくとも1色以上のトナー色について、前記当接手段の離当接タイミングより前に予めトナー像の転写開始位置を補正することを特徴とする画像形成装置。 - 複数の動力伝達部材によって駆動源からの回転駆動力を感光体および転写ドラムに伝達して前記感光体および前記転写ドラムを副走査方向に回転させるとともに、前記転写ドラムの回転周期と同周期で検出される信号である垂直同期信号の検出結果に基づいて前記感光体上にトナー像を形成した後、前記垂直同期信号の検出時点から所定時間経過後に当該トナー像を前記転写ドラムに転写する一連の処理を像形成・転写処理としたとき、当該像形成・転写処理を互いに異なる複数のトナー色について繰り返して各トナー色のトナー像を前記転写ドラム上で重ね合わせてカラー画像を形成する画像形成方法において、
前記像形成・転写処理を繰り返している際に当接手段が前記転写ドラムに一時的に当接することによって負荷変動が生じ、その負荷変動に応じて前記複数の動力伝達部材の少なくとも1つが弾性変形するように構成されており、
前記弾性変形によって生じる前記転写ドラム上でのトナー像の相対的なレジストズレを補正するために必要なレジスト制御量を予め記憶部に記憶しておくレジスト制御量記憶工程と、
カラー画像を形成する際には、前記記憶部から前記レジスト制御量を読み出し、前記レジスト制御量に基づき前記複数のトナー色のうち少なくとも1色以上のトナー色について、前記当接手段の離当接タイミングより前に予めトナー像の転写開始位置を補正する補正工程と
を備え
前記レジスト制御量記憶工程は、
(A)転写処理中に当接手段が前記転写ドラムに当接し、その当接状態のまま転写処理を完了することで発生するレジストズレを補正するためのレジスト制御量Raと、
(B)転写処理開始前から当接手段が前記転写ドラムに当接しており、その状態で転写処理が開始され、しかも、その転写処理途中で当接手段が前記転写ドラムから離間することで発生するレジストズレを補正するためのレジスト制御量Rbと、
(C)前記垂直同期信号の検出時点において前記転写ドラムに当接していた当接手段が該垂直同期信号の検出後且つ転写開始前に離間し、その後、その離間状態のまま転写処理を行う際に生じるレジストズレを補正するためのレジスト制御量Rcと
を前記レジスト制御量として前記記憶部に記憶することを特徴とする画像形成方法。
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