JP3901505B2 - 弾性体履板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、装軌式車両の履帯における鉄製のシュープレートの接地面側に装着される弾性体履板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ブルドーザや油圧ショベルなどの装軌式車両の履帯として、接地面側にグローサが形成されてなる鉄製のシュープレートを多数のリンクにより無端状に連結した構造のものが用いられている。ところが、この種の履帯では舗装路面上を走行する際に路面を著しく損傷させることから、前記鉄製のシュープレートの接地面側に、ゴムなどの弾性体よりなる保護履板(弾性体履板)を装着することが行われている。
【0003】
この弾性体履板の従来技術の一例として、実用新案登録第2595443号公報に開示されたものがある。この公報に記載されている弾性体履板は、金属板を鉄製シュープレートの踏面の凹凸形状に合わせて波形に形成し、この金属板の接地面側にゴムパッドを加硫接着して構成されたものである。また、他の例として、実用新案登録第2606785号公報に開示されたものがある。この公報に記載の弾性体履板は、凹凸形状をした弾性沓材の凸部表面のみに、非接地側へ向けて取付ボルトの先端を突出させた平板状の金属板を取り付けるように構成されている。さらに、特開平10−16835号公報に開示されたものでは、平板状のプレートの非接地面側に、シュープレートの凹部に挿入され、シュープレートの取付孔に対応するボルト孔を形成した略U字形の取付ブラケットを一体結合するように構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記実用新案登録第2595443号公報および実用新案登録第2606785号公報に開示されたものでは、板金製の芯金にボルト等の締結部材を溶接した構造であるために、十分な剛性を確保することができず、撓み、歪みの発生によりボルト弛みやボルト脱落が生じ易いという問題点がある。一方、前記特開平10−16835号公報に開示されたものでは、取付ブラケットを用いてシュープレートと結合していることから、取付け強度を向上させることができる反面、荷重を受ける弾性体厚さを厚くすることができず、弾性体に対する歪集中が生じて耐久性の面で難点がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたもので、剛性のある芯金を用いることによってボルト弛みの発生を回避し、しかもグローサに関係なく荷重を受ける弾性体厚さを厚くすることができて、耐久性を向上させることのできる弾性体履板を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段および作用・効果】
前記目的を達成するために、第1発明による弾性体履板は、
履帯における鉄製のシュープレートの接地面側に装着される弾性体履板において、
鋳造、鍛造もしくは削り出しにて一体成形された芯金を備えるとともに、この芯金の少なくとも接地面側が弾性体にて被覆されてなり、
前記芯金は2個の芯金部分よりなり、各芯金部分の長手方向両端部に、前記シュープレートにボルト締結するための雌ねじ部を有するボス部が一体形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明によれば、芯金が鋳造、鍛造もしくは削り出しにて一体成形されているので、板金製のものに比べて剛性を格段に向上させることができ、ボルト弛みやボルト脱落の発生を確実に防止することができる。また、芯金が2個の芯金部分よりなるので、グローサに関係なく、荷重を受ける弾性体厚さを厚くすることが可能であり、また弾性体全体の容積を大きくすることができるので、弾性体の耐カット性を向上させることができ、全体として耐久性の向上を図ることができる。
【0008】
また、本発明によれば、各芯金部分の長手方向両端部に、前記シュープレートにボルト締結するための雌ねじ部を有するボス部が一体形成されているので、芯金と弾性体との接着部にボルト頭がある従来例のものに比べて、歪の集中がなく、耐久性をより向上させることができる。
【0009】
また、前記弾性体の接地面を投影する部位以外の部位において、前記2個の芯金部分が相互に連結されているのが好ましい(第2発明)。このようにすれば、弾性体履板の剛性をさらに向上させることができ、重負荷を受ける車両に用いて好適な弾性体履板を得ることができる。
【0010】
さらに、本発明においては、前記シュープレートへの装着時に、前記芯金が、前記シュープレートの互いに隣接するグローサ間に形成される空間内に入り込むようにされているのが好ましい(第3発明)。こうすることで、弾性体の厚さを厚くすることができる。
【0011】
前記各発明において、前記芯金の接地面側が平坦面に形成されているのが好ましい(第4発明)。こうすることで、弾性体に対する歪集中が少なく、耐久性の向上を図ることができる。また、廃却時に芯金表面からの弾性体の剥離作業を容易に行うことができ、芯金の再利用が容易に行えることになる。
【0012】
この場合、前記平坦面は、前記芯金の長手方向両端部に形成されるボス部に挟まれた部分に形成されるものとすることができる(第5発明)。これにより、主に荷重を受ける長手方向中央部における歪みの集中を少なくすることができる。
【0013】
また、前記第4発明または第5発明において、前記シュープレートへの装着時に、前記芯金接地面側の平坦面の高さが、前記シュープレートにおけるグローサの高さに略等しい高さになるようにされているのが好ましい(第6発明)。こうすることで、2個の芯金部分に挟まれた部位の弾性体表面がグローサに当接することによってそのグローサの角部により傷付けられることがない。また、弾性体が摩耗により消失しても芯金によって舗装路面を傷付けることがない。
【0014】
前記各発明において、前記2個の芯金部分に挟まれた部位における弾性体の非接地面側表面とそれに対向する前記シュープレートにおけるグローサ先端面との間に隙間が形成されるのが好ましい(第7発明)。こうすることで、2個の芯金部分に挟まれた部位の弾性体表面がグローサによって傷付けられるのを防止することができる。
【0015】
ここで、前記2個の芯金部分に挟まれた部位における弾性体の接地面側表面に溝部が設けられるのが良い(第8発明)。これにより、グローサ部に加わる荷重を低減することができる。
【0016】
前記第7発明または第8発明において、前記隙間は、各芯金部分の長手方向両端部において前記弾性体にて塞がれ、かつその塞がれた部位の弾性体の非接地面側形状が、前記隙間の内側から外側へ向かう方向に傾斜するテーパ面に形成されるのが好ましい(第9発明)。このようにすれば、両芯金部分に挟まれた部位における弾性体とグローサとの間に形成される隙間に土砂が侵入するのを防止することができる。また、弾性体にテーパ面が形成されていることにより、前記隙間内に入った水等が、弾性体が撓んだ際に外方へ排出され易くなる。なお、当該弾性体履板の装着時に前記テーパ面先端が圧縮されるように取付位置を設定すれば、土砂等の浸入に対するシール効果をより高めることができる。
【0017】
前記各発明において、前記芯金の長手方向端部が非接地面側に向けて屈曲形成されるのが好ましい(第10発明)。こうすることで、弾性体履板が岩石等に乗り上げても、この屈曲形成された部分に沿って形成される弾性体端部から岩石等が逃げることと、岩石等が固定されていて逃げないときでも荷重を屈曲した面で受けることができ、弾性体の局部的応力集中を回避することができ、弾性体の耳切れ防止を図ることができる。
【0018】
前記各発明において、前記芯金の非接地面側に支柱もしくはリブが一体形成されるのが好ましい(第11発明)。このようにすれば、地面から受けた荷重をシュープレートに確実に伝達することができるとともに、芯金の軽量化を図ることができる。
【0019】
また、前記弾性体の非接地面側であってその長手方向の中央部に、前記シュープレートに形成された貫通孔に挿入可能な弾性体突起が設けられるのが好ましい(第12発明)。こうすることで、シュープレートに形成された貫通孔から、シュープレートと弾性体履板との間に土砂等が侵入するのを防ぐことができる。また、左右の履帯リンクと前後の連結ピンとに囲まれる空間内に路面上の土砂や雪が入り込み、これら土砂や雪がスプロケット等により押し固められたとしても、この押し固め時に押し縮められた弾性体突起がスプロケット等から外れた部位でそれ自身の復元力により元の状態まで伸長されるように作用するので、履帯リンク間に入り込んだ土砂・雪等のパッキング現象を確実に回避することができる。
【0020】
さらに、前記芯金の非接地面側も前記弾性体にて被覆されるとともに、前記芯金に複数個の孔が設けられ、この孔を通して接地面側の弾性体と非接地面側の弾性体とが一体に形成されるのが好ましい(第13発明)。このようにすれば、芯金との接着が十分でない樹脂や弾性体であっても当該弾性体履板用に使用することができる。
【0021】
前記各発明において、前記2個の芯金部分に跨るように前記弾性体内にケーブル層が埋設されるのが良い(第14発明)。こうすることで、このケーブル層による補強によって各芯金部分を一体化することができるとともに、各芯金部分に挟まれた部位の弾性体がグローサによって傷付けられるのを防止することができる。なお、このケーブル層の埋設方向は弾性体履板の長手方向、幅方向、斜め方向のいずれであっても良い。また、単層であっても複層であっても良い。
【0022】
また、前記芯金の長手方向両端部の前後側面に、前記シュープレートにおけるグローサの先端部に当接させるための突起部が設けられ、かつその突起部を除く芯金の前後側面が弾性体により被覆されるのが好ましい(第15発明)。このようにすれば、突起部のない部分は芯金の前後側面も弾性体により被覆されているので、芯金と弾性体との接着剥離が生じにくくなる。
【0023】
また、前記芯金と前記弾性体との接合部近傍において、前記弾性体に溝部が形成されるのが好ましい(第16発明)。こうすることで、負荷が加わった際に溝部が変形することで歪みの集中を回避することができ、芯金と弾性体との接着剥離を防止することができる。
【0024】
さらに、前記弾性体は、複数の硬さの部分にて層状に構成されるとともに、前記芯金近傍ほど硬くなるように配されるのが好ましい(第17発明)。こうすることで、芯金と弾性体の接合部の歪集中を避けることができて、この接合部の耐久性を向上することができる。また、接地面に近接する部位の弾性体が軟らかくなっているので、路面との間の摩擦係数を確保することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
次に、本発明による弾性体履板の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
図1には、本発明の第1の実施形態に係る弾性体履板の正面図(a)、下面図(b)および側面図(c)が示されている。
【0027】
本実施形態の弾性体履板1は、図示されない履帯リンクに複数本(本実施形態では4本)のボルト2およびナット(図示せず)により取着される鉄製のシュープレート3の接地面側に、複数本(本実施形態では4本)のボルト4によって装着されるように構成されている。
【0028】
前記シュープレート3は、その踏み面の長手方向に沿って、中央部と両側部とに計3個のグローサ5,6,7を有している。また、このシュープレート3には、中央部に、そのシュープレート3を履帯リンクに取り付けるためのボルト2を挿通するボルト挿通孔8が設けられるとともに、長手方向の両端部寄りの位置に、後述する弾性体履板1の芯金12をシュープレート3に取り付けるためのボルト4を挿通するボルト挿通孔9が設けられている。さらに、前記シュープレート3には、4個のボルト挿通孔8に囲まれる位置に、円形および略楕円形の計2個の貫通孔10,11が形成されている(この例に限らず、貫通孔は方形でも良く、その数も1個でも良いし3個以上でも良い。)。
【0029】
一方、前記弾性体履板1は、芯金12にゴム等の弾性体13が被覆接着されて構成されている。ここで、前記芯金12は、弾性体履板1の幅方向に互いに所定間隔を隔てて平行に配される2個の芯金部分14,15に分割形成されている。各芯金部分14,15の接地面側は平坦面に形成され、非接地面側においては、長手方向の両端部に略円錐台形状の太径の支柱(ボス部)14a,14b;15a,15bが一体形成されるとともに、この両端部と長手方向中央部との各中間部に略円錐台形状の細径の支柱14c,14d;15c,15dが一体形成されている。また、前記両端部の支柱14a,14b;15a,15bには、前記ボルト4を螺合させるための雌ねじ部16が、平坦面とされた芯金本体を貫通する位置に至るまで形成されている。前記芯金12は、車体重量が加わっても変形しないような剛性の高い材質、例えば鋼、鋳鋼、鋳鉄等の一般的芯金材質のほか、金属系複合材、非金属系複合材等の材質にて構成され、鋳造、鍛造もしくは削り出しにて一体成形により作製される。
【0030】
前記弾性体13は、ゴム、ウレタン、樹脂、エラストマー、非金属系複合材等の比較的軟質な材料により構成されている。なお、芯金12に弾性体13を接合するには、例えば弾性体13がゴムの場合には、一般的な加硫接着などの方法が用いられる。この弾性体13は、接地面側における両端部および両側部が非接地面側に所要角度傾斜した傾斜面13a,13bにされている。
【0031】
また、前記弾性体13においては、各芯金部分14,15に挟まれた部位における弾性体13の非接地面側表面に溝部17が形成され、またその溝部17に対向する弾性体13の接地面側表面に溝部18が形成され、これによってグローサ6に加わる荷重の低減が図られている。さらに、前記各芯金部分14,15に挟まれた空間内に、前記シュープレート3における中央部のグローサ6が入り込むようになっており、このときそのグローサ6の先端面と前記溝部17表面との間に隙間が形成されるようになっている。また、各グローサ5,6,7の高さは、芯金12の接地面側の平坦面の高さと略等しい高さになるようにされている。こうして、各芯金部分14,15に挟まれた部位の弾性体13表面がグローサ6によって傷付けられるのを防止することができるとともに、グローサ6に加わる荷重を低減することができ、また弾性体が摩耗により消失しても芯金12によって舗装路面を傷付けることがないといった作用・効果を奏するものである。
【0032】
このような構成の弾性体履板1によれば、板金製のものに比べて芯金12の剛性を格段に向上させることができ、またボス部14a,14b;15a,15bに形成された雌ねじ部16にボルト4が螺合されているので、ボルト弛みやボルト脱落の発生を確実に防止することができる。また、芯金12が2分割形状とされているので、グローサに関係なく、荷重を受ける弾性体厚さを厚くすることが可能であって、耐久性の向上を図ることができる。さらに、芯金の接地面側が平坦面に形成されているので、弾性体に対する歪集中が少なく、これによっても耐久性の向上を図ることができる。しかも、廃却時に弾性体の剥離作業を容易に行うことができるので、芯金の再利用が容易に行えるという利点もある。
【0033】
図2には、本発明の第2の実施形態に係る弾性体履板における芯金形状の部分断面図が示されている。
【0034】
本実施形態の弾性体履板は、芯金形状が異なる点以外については第1の実施形態と同様である。本実施形態においては、各芯金部分20の長手方向両端部に設けられる支柱(ボス部)21を、この芯金部分20の接地面側に向けてやや突出した形状とし、両端部のボス部21に挟まれた部分の接地面側を平坦面に形成したものである。本実施形態にような構造は、芯金をシュープレートに取り付けるためのボルト4(図1参照)のねじ込み深さを十分に確保したい場合に特に有効である。
【0035】
また、本実施形態では、芯金部分20の長手方向端部が非接地面側に向けて屈曲形成されて傾斜面22が形成されている。このような傾斜面22を設けると、弾性体履板が岩石等に乗り上げても、この傾斜面22に沿って形成される弾性体端部から岩石等が逃げることと、岩石等が固定されていて逃げないときでも荷重を屈曲した面で受けることができ、弾性体の局部的応力集中を回避することができ、弾性体の耳切れを防止することができる。なお、図2において符号23にて示されるのは、第1の実施形態における支柱14c,14d;15c,15dと同様の補強用の支柱である。
【0036】
図3には、本発明の第3の実施形態に係る弾性体履板における芯金形状の部分正面図(a)、そのA−A断面図(b)およびB−B断面図(c)が示されている。
【0037】
本実施形態の弾性体履板は、やはり芯金形状が異なる点以外については第1の実施形態と同様である。本実施形態においては、芯金部分24の端部に設けられる支柱25と中間部に設けられる支柱26との間および支柱25と傾斜面27の先端部との間等にリブ28を設けたものである。このようなリブ28を設けると、地面から受けた荷重をシュープレートに確実に伝達することができるだけでなく、芯金の軽量化を図ることができる。
【0038】
図4(a)には、本発明の第4の実施形態に係る弾性体履板における芯金形状の部分下面図が示されている。
【0039】
本実施形態の弾性体履板は、芯金形状が異なる点以外については第1の実施形態もしくは第2の実施形態と同様である。本実施形態においては、各芯金部分29,30の両端部(図では一端部のみが示されている。)の前後側面に、シュープレート3のグローサ5,6,7(図1(c)参照)の先端部に当接させるための突起部29a,29b;30a,30bが設けられ、この突起部29a,29b;30a,30bを除く芯金部分の前後側面が弾性体13にて被覆されるように構成されたものである。
【0040】
このような構成の弾性体履板においては、突起部29a,29b;30a,30bがグローサ5,6,7に当接されることで、グローサ5,6,7が直接弾性体13に当接されることによる弾性体13の損傷を防止することができるとともに、突起部29a,29b;30a,30bのない部分においては芯金部分29,30の前後側面が弾性体13により被覆されているので、芯金部分29,30と弾性体13との接着剥離が生じにくくなるという利点がある。
【0041】
図4(b)に示されるのは、本実施形態の変形例であって、この例では、図4(a)に示されるものに対して、突起部31a,31b;32a,32bを芯金部分31,32のやや中央部寄りに形成したものである。この場合にも、突起部31a,31b;32a,32bのない部分における芯金部分31,32の前後側面が弾性体13により被覆されている。このような構成によっても、本実施形態と同様の作用・効果を奏し得る。
【0042】
図5(a)には、本発明の第5の実施形態に係る弾性体履板の側面図が示されている。
【0043】
本実施形態の弾性体履板は、第1の実施形態に対して弾性体33の形状が異なっているだけで、それ以外の点については第1の実施形態と基本的に異なるところがない。したがって、第1の実施形態と共通する部分には図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとする。
【0044】
本実施形態においては、弾性体33の前後側面であって各芯金部分14,15と弾性体33との接合部近傍位置に、その弾性体33の長手方向に沿って断面略U字状の溝部33a,33bを形成したものである。このような溝部33a,33bを形成すると、弾性体33に負荷が加わった際にその溝部33a,33bが変形することで、歪みの集中を回避することができ、これによって芯金部分14,15と弾性体33との接着剥離の発生を未然に防ぐことができる。
【0045】
図5(b)に示されるのは、本実施形態の変形例であって、この例では、弾性体34の前後側縁を芯金部分14,15の前後側縁よりも外側に張り出すように構成し、弾性体34に形成される溝部34a,34bをその張り出し部34c,34dと芯金部分14,15の側縁との間にそれぞれ配したものである。なお、前記張り出し部34c,34dの非接地面側表面にはグローサ5,7がそれぞれ当接するようにされている。このように溝部34a,34bを本変形例に示される位置に設けた場合にも、本実施形態と同様の作用・効果を奏し得る。
【0046】
図6には、本発明の第6の実施形態に係る弾性体履板の下面図(a)とそのC−C断面図(b)が示されている。
【0047】
本実施形態においても、第1の実施形態と共通する部分には図に同一符号を付すのみとし、その詳細な説明を省略することとする。本実施形態においては、弾性体35の非接地面側に形成された溝部17表面とグローサ6の先端面と間に形成された隙間36が、芯金の長手方向両端部(図では一端部のみが示されている。)において弾性体35の突起部35aにて塞がれるように構成されている。また、この突起部35aの隙間36に面する側の形状が、この隙間36の内側から外側に向かう方向に傾斜するテーパ面35bに形成されている。ここで、弾性体履板の装着時にテーパ面35bの先端が圧縮されるように取付位置を設定するのがシール効果を高める上で好ましい。
【0048】
本実施形態の弾性体履板によれば、芯金の長手方向両端部が突起部35aにて塞がれているので、前記隙間36内に外部から土砂等が侵入するのを防止することができる。また、この突起部35aの内側面がテーパ面35bが形成されているので、隙間36内に水等が入った場合にも、弾性体35が荷重を受けて撓んだ際にそのテーパ面35bによってその水等が外方へ排出され易くなるという利点がある。
【0049】
図7には、本発明の第7の実施形態に係る弾性体履板の正面図(a)とそのD−D断面図(b)が示されている。
【0050】
本実施形態においては、2分割された各芯金部分14,15に跨るように、幅方向に向けてかつ長手方向の全範囲に亘って弾性体37内にケーブル層38が埋設されたものである。ここで、ケーブル層38は、弾性体37の非接地面側に形成された溝部17の下方においてその溝部17に沿うように屈曲形成されている。なお、本実施形態の弾性体37においては、前記第5の実施形態における溝部33a,33bと同様の溝部37a,37bが形成されている。
【0051】
本実施形態の弾性体履板によれば、ケーブル層38による補強によって各芯金部分14,15を一体化することができるとともに、各芯金部分14,15に挟まれた部位の弾性体37がグローサによって傷付けられるのを防止することができる。また、弾性体履板そのものの耐久性の向上にも寄与する。
【0052】
本実施形態では、ケーブル層38として、単層のものを弾性体履板の幅方向に埋設したものを説明したが、このケーブル層の埋設方向は長手方向であって、あるいは斜め方向であっても良い。また、単層であっても互いに交差する複数の層であっても良い。
【0053】
図8には、本発明の第8の実施形態に係る弾性体履板の下面図(a)とそのE−E断面図(b)が示されている。
【0054】
本実施形態の弾性体履板においては、芯金の非接地面側も前記弾性体にて被覆されるとともに、2分割された各芯金部分39,40の長手方向に沿って複数個の孔39a,40aが設けられ、これら孔39a,40aを通して接地面側の弾性体41と非接地面側の弾性体41とが一体に形成されている。また、前記弾性体41は、接地面側の比較的硬度の小さな(軟らかい)弾性体層42と、非接地面側の比較的硬度の大きな(硬い)弾性体層43との2層構成とされている。
【0055】
本実施形態の弾性体履板によれば、接地面側の弾性体層42と非接地面側の弾性体層43とが複数個の孔39a,40aを介して一体化されているので、弾性体の材質として、芯金との接着が十分でない樹脂や弾性体を用いても、その接着強度が悪影響を及ぼすことがない。また、芯金の近傍が硬い弾性体層43にて形成されているので、芯金と弾性体の接合部の歪集中を避けることができて、接合部の耐久性を向上することができる。また、接地面に近接する部位が比較的軟らかい弾性体層42にて形成されているので、路面との間の摩擦係数を確保することができて、走行性能を向上させることができる。
【0056】
図9には、本発明の第9の実施形態に係る弾性体履板の部分正面図が示されている。
【0057】
本実施形態の弾性体履板においては、弾性体44の非接地面側であってその弾性体44に設けられた細径の支柱45,46の中間部に、シュープレート3に形成された貫通孔10,11に挿入可能な弾性体突起48,50が一体形成されている。
【0058】
本実施形態の弾性体履板によれば、シュープレート3に形成された貫通孔10,11が弾性体突起48,50により塞がれているので、シュープレート3と弾性体履板との間に土砂等が侵入するのを確実に防ぐことができる。また、左右の履帯リンクと前後の連結ピンとに囲まれる空間内に路面上の土砂や雪が入り込み、これら土砂や雪がスプロケット等により押し固められたとしても、この押し固め時に押し縮められた弾性体突起48がスプロケット等から外れた部位でそれ自身の復元力により元の状態まで伸長されるように作用するので、この伸長時に履帯リンク間に入り込んだ土砂・雪等が排出され、これら土砂・雪等のパッキング現象を確実に防ぐことができる。
【0059】
図10には、本発明の第10の実施形態に係る弾性体履板の正面図(a)、下面図(b)および側面図(c)が示されている。
【0060】
前記各実施形態においては、芯金を2個の芯金部分に分割形成したものを説明したが、本実施形態においては、これら分割形成された各芯金部分14,15をそれぞれの両端部(図では一端部のみが示されている。)において、連結材49によって相互に連結したものである。このようにすれば、各芯金部分14,15が両端部において一体化されるので、弾性体履板の剛性をより向上させることができる。こうして、重負荷を受ける車両に用いて好適な弾性体履板を得ることができる。
【0061】
前記連結材49を設ける位置は弾性体13の接地面を投影する部位以外の部位であれば良く、必ずしも本実施形態のものに限定されることはない。また、この連結材49は芯金形成時に一体成形により設けても良いし、各芯金部分の両端部に接合により設けても良い。
【0062】
前記各実施形態における各構成は、単独で用いても良いし、あるいは複合して用いても良い。なお、これら実施形態における弾性体履板は、小型から大型に至る各種建設機械に適用できるほか、その他、農業機械や産業機械等の装軌式車両に対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性体履板の正面図(a)、下面図(b)および側面図(c)である。
【図2】図2は、本発明の第2の実施形態に係る弾性体履板における芯金形状の部分断面図である。
【図3】図3は、本発明の第3の実施形態に係る弾性体履板における芯金形状の部分正面図(a)、そのA−A断面図(b)およびB−B断面図(c)である。
【図4】図4は、本発明の第4の実施形態に係る弾性体履板における芯金形状の部分下面図(a)およびその変形例の部分下面図(b)である。
【図5】図5は、本発明の第5の実施形態に係る弾性体履板の側面図(a)およびその変形例の側面図(b)である。
【図6】図6は、本発明の第6の実施形態に係る弾性体履板の下面図(a)とそのC−C断面図(b)である。
【図7】図7は、本発明の第7の実施形態に係る弾性体履板の正面図(a)とそのD−D断面図(b)である。
【図8】図8は、本発明の第8の実施形態に係る弾性体履板の下面図(a)とそのE−E断面図(b)である。
【図9】図9は、本発明の第9の実施形態に係る弾性体履板の部分正面図である。
【図10】図10は、本発明の第10の実施形態に係る弾性体履板の正面図(a)、下面図(b)および側面図(c)である。
【符号の説明】
1 弾性体履板
2,4 ボルト
3 シュープレート
5,6,7 グローサ
12 芯金
13,33,34,35,37,41,44 弾性体
14,15,20,24,29,30,31,32,39,40 芯金部分
14a,14b;15a,15b,21 ボス部
16 雌ねじ部
17,18 溝部
22 傾斜面
28 リブ
29a,29b;30a,30b 突起部
33a,33b,34a,34b 溝部
35b テーパ面
36 隙間
38 ケーブル層
39a,40a 孔
48,50 弾性体突起
49 連結材
Claims (17)
- 履帯における鉄製のシュープレートの接地面側に装着される弾性体履板において、
鋳造、鍛造もしくは削り出しにて一体成形された芯金を備えるとともに、この芯金の少なくとも接地面側が弾性体にて被覆されてなり、
前記芯金は2個の芯金部分よりなり、各芯金部分の長手方向両端部に、前記シュープレートにボルト締結するための雌ねじ部を有するボス部が一体形成されていることを特徴とする弾性体履板。 - 前記弾性体の接地面を投影する部位以外の部位において、前記2個の芯金部分が相互に連結されている請求項1に記載の弾性体履板。
- 前記シュープレートへの装着時に、前記芯金が、前記シュープレートの互いに隣接するグローサ間に形成される空間内に入り込むようにされている請求項1に記載の弾性体履板。
- 前記芯金の接地面側が平坦面に形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性体履板。
- 前記平坦面は、前記芯金の長手方向両端部に形成されるボス部に挟まれた部分に形成される請求項4に記載の弾性体履板。
- 前記シュープレートへの装着時に、前記芯金接地面側の平坦面の高さが、前記シュープレートにおけるグローサの高さに略等しい高さになるようにされている請求項4または5に記載の弾性体履板。
- 前記2個の芯金部分に挟まれた部位における弾性体の非接地面側表面とそれに対向する前記シュープレートにおけるグローサ先端面との間に隙間が形成される請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性体履板。
- 前記2個の芯金部分に挟まれた部位における弾性体の接地面側表面に溝部が設けられる請求項7に記載の弾性体履板。
- 前記隙間は、各芯金部分の長手方向両端部において前記弾性体にて塞がれ、かつその塞がれた部位の弾性体の非接地面側形状が、前記隙間の内側から外側へ向かう方向に傾斜するテーパ面に形成される請求項7または8に記載の弾性体履板。
- 前記芯金の長手方向端部が非接地面側に向けて屈曲形成される請求項1〜9のいずれか1項に記載の弾性体履板。
- 前記芯金の非接地面側に支柱もしくはリブが一体形成される請求項1〜10のいずれか1項に記載の弾性体履板。
- 前記弾性体の非接地面側であってその長手方向の中央部に、前記シュープレートに形成された貫通孔に挿入可能な弾性体突起が設けられる請求項1〜11のいずれか1項に記載の弾性体履板。
- 前記芯金の非接地面側も前記弾性体にて被覆されるとともに、前記芯金に複数個の孔が設けられ、この孔を通して接地面側の弾性体と非接地面側の弾性体とが一体に形成される請求項1〜12のいずれか1項に記載の弾性体履板。
- 前記2個の芯金部分に跨るように前記弾性体内にケーブル層が埋設される請求項1〜13のいずれか1項に記載の弾性体履板。
- 前記芯金の長手方向両端部の前後側面に突起部が設けられ、かつその突起部を除く芯金の前後側面が弾性体により被覆される請求項1〜14のいずれか1項に記載の弾性体履板。
- 前記芯金と前記弾性体との接合部近傍において、前記弾性体に溝部が形成される請求項1〜15のいずれか1項に記載の弾性体履板。
- 前記弾性体は、複数の硬さの部分にて層状に構成されるとともに、前記芯金近傍ほど硬くなるように配される請求項1〜16のいずれか1項に記載の弾性体履板。
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