JP3896365B2 - 高強度鍛造用鋼およびこれを用いた大型クランク軸 - Google Patents

高強度鍛造用鋼およびこれを用いた大型クランク軸 Download PDF

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Description

本発明は高強度鍛造用鋼に関し、より詳細には、高価な合金元素、特にNi含有量が少なく、低コストで高強度を有する大型クランク軸製造用高強度鍛造用鋼に関するものであり、この鍛造用鋼は、例えば船舶用駆動源の伝達部材として用いられる大型クランク軸用の素材などとして有効に活用できる。従って本発明は、かかる低コスト、高強度鍛造用鋼からなるクランク軸もその対象に含まれる。
船舶などの駆動力伝達に使用される大型クランク軸用の鋼としては、従来よりISO規格の36CrNiMo6、DIN規格32CrMo12、ISO規格42CrMo4に代表されるCr−Mo鋼が使用されている。これらのうちISO規格の42CrMo4は、相対的にC含有量を多くし、Cr,Mo含有量を相対的に低く抑えた鋼種であり、強度的にはやや劣るものの比較的低コストであることから、それほど高負荷がかからない用途に使用されており、一方ISO規格の36CrNiMo6は、合金元素として多量のNiを含むもので、強度や靭性などにおいては最も優れていることから、高負荷を受けるクランク軸用として使用されている。またDIN規格32CrMo12は、上記2種のCr−Mo鋼に対して中間的なコストと強度特性を有するもので、特に靭性が重視されるクランク軸用としては優れた性能を有するものとされている。
しかし最近では、海難事故などを未然に防止するため、船舶の大型クランク軸用としては、高コストではあるが高レベルの強度特性を有する高Ni含量のISO規格の36CrNiMo6が汎用されている。
ところが、Ni−Cr−Mo鋼である上記ISO規格の36CrNiMo6は、強度や靭性において優れたものではあるが、強化用の合金元素として高価なNiが多量含まれているため、鍛造用の他のCr−Mo鋼に比べると高価であり、汎用化を進めていく上で大きな障害となっている。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、高強度Ni−Cr−Mo鍛造用鋼として実用化されているISO規格の36CrNiMo6などに比べて低コストであり、しかもこれに匹敵する強度や靭性を有し、更には、近年需要者の要求が高まっている「焼入れ性」においても、上記高強度Ni−Cr−Mo鍛造用鋼に匹敵し、或いはこれを上回る性能を備えた鍛造用鋼を提供し、或いは更に該鍛造用鋼を用いた安価で強度、靭性、焼入れ性に優れた大型クランク軸を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る高強度鍛造用鋼とは、大型クランク軸の製造に用いられる高強度鍛造用鋼であって、
C :0.36〜0.45%(質量%を意味する、以下同じ)、
Si:0.15〜0.4%、
Mn:0.8〜1.2%、
Cr:1.5〜2.5%、
Mo:0.15〜0.35%、
V :0.035〜0.17%
を夫々含むと共に、Ni含有率が0.7%以下(0%を含まない)であり、且つV,Nb,Taよりなる群から選択される少なくとも1種の元素:合計で0.035〜0.35%、N:30〜250ppmを含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、更に下記(1)式の関係を満たし、ベイナイトおよびマルテンサイト主体の組織からなる点に要旨を有するものである。
[V,Nb,Taの総和(質量%)]+0.001×固溶N(ppm)≧0.068……(1)
本発明にかかる高強度鍛造用鋼は、上記の様に化学成分組成を制限した鋼成分系において、V,Nb,Taよりなる群から選択される少なくとも1種の元素と窒素(N)を積極的に含有させると共に、これら(V,Nb,Ta)含量の総和と固溶Nとの関係を前記式(1)を満たすように特定し、更にベイナイトとマルテンサイト主体の金属組織からなる鋼であって、高レベルの引張強度と靭性を有すると共に焼入れ性も非常に良好で、且つ比較的安価な鍛造用鋼を提供し得たものである。
上記基本組成の鍛造用鋼には、脱酸性元素として少量のAlが含まれてくることがあり、こうしたAlの作用は0.001%以上含有させることによって有効に発揮されるが、その効果は0.040%で飽和するので、それ以下に抑えるべきである。また、Sも有害元素として混入してくることが多く、該Sも鍛造用鋼としての靭性や疲労強度などに与える悪影響を回避するため、0.006%以下に抑えることが望ましい。
更に本発明の鍛造用鋼は、その優れた焼入れ性を活かす上で、DI値(水冷で中心部が50%マルテンサイト硬さとなる臨界直径)が30mm以上であるものが好ましく、かかる特性を備えた本発明の鍛造用鋼は、船舶用の如き大型クランク軸等の素材として極めて優れた性能を発揮する。
本発明では、相対的に多くのNiを含むNi−Cr−Ni−Mo系鍛造用鋼などに対し、Ni含有量を抑えてコスト低減を図ると共に、ごく少量のV,NbまたはTaとNを所定量含有させることによって高強度化を図ることができ、低コストで高性能の鍛造用鋼を提供し得ることになった。しかもこの鍛造用鋼は焼入れ性においても非常に優れたものであり、その優れた焼入れ性を活かして、大型鍛造製品の素材として有効に活用することができ、特に船舶用などの大型クランク軸用の素材として極めて有用である。
本発明者らは前述した様な課題の下で、Ni−Cr−Mo系の高強度鍛造用鋼として知られている特に「ISO規格の36CrNiMo6」を対象とし、合金元素として含まれるNi量を低減して低コスト化を図りつつ、これに匹敵する強度や靭性を有し、更には高強度の大型鍛造製品を製造する際に重要となる焼入れ性ついても優れた特性を発揮し得る様な鍛造用鋼の開発を期して鋭意研究を進めてきた。
その結果、前述した様なCr−Mo系の鍛造用鋼において、強化元素としてのNi量を0.7%以下に抑えた鋼種では、V,Nb,Taよりなる群から選択される元素の少なくとも1種とNをごく少量含有させ、且つ、これら(V,Nb,Taの総和)と固溶Nを前記式(1)の関係を満たす様に含有せしめたものは、Ni量低減による強度不足を補って余りある強度および靭性の向上が図られると共に、焼入れ性においても著しく優れた鍛造用鋼が得られることを知り、上記本発明に想到したものである。
すなわちNiは、前述した如く鍛造用鋼として汎用されているCr−Mo系鋼の強度や靭性を高めると共に、焼入れ性の向上にも極めて有効な元素であり、高級Cr−Mo系鍛造用鋼にとっては有用な元素である。しかしNiは高価な元素であるため、その含有率を過度に高めることは鍛造用鋼のコストアップを招き、需要者の価格上の要求を満たし得なくなる。そこで本発明では、Ni量を可及的に低減しつつ、従来のNi−Cr−Mo系鍛造用鋼に匹敵する強度特性と焼入れ性を確保可能にすることを最大の課題として開発されたものであり、Ni量低減によるコストダウンの目的を果たすには、Ni含有量を多くとも0.7%以下、好ましくは0.5%以下、更に好ましくは0.3%以下に抑えることが望まれる。
但し、Ni量の低減は、Niによる上記強度、靭性および焼入れ性の向上効果が得られ難くなることを意味しており、性能面からの需要者の要求を満たし得なくなる。そこで本発明では、Ni量の低減による性能不足をその他の元素によって補い、コスト的にも又性能面でも共に要求を満たすような鍛造用鋼の開発を期して鋭意研究を重ねた結果、特にNi含有量を低く抑えたCr−Mo系鍛造用鋼においては、V,Nb,Taよりなる群から選択される少なくとも1種の元素と、従来は有害元素として認識されている微量元素であるNを含有させると共に、上記(V,Nb,Ta)と、Nのうち固溶Nとを、前記式(1)の関係を満たすように含有せしめてやれば、コストと性能の両面を満たす鍛造用鋼が得られることを確認したのである。
こうしたV,Nb,TaとN、或いは更に固溶Nの効果を実用規模で有効に発揮させるには、上記の様にNi量を0.7%以下に制限された鍛造用鋼中に、V,Nb,Taよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を0.035%以上、より好ましくは0.045%以上で、0.35%以下、より好ましくは0.15%以下含有させると共に、Nを30ppm以上、より好ましくは40ppm以上で250ppm以下、より好ましくは100ppm以下の範囲で含有せしめ、更には前記(V,Nb,Taの総和)と固溶Nとが前記式(1)の関係を満たすように含有させることが必須の要件となる。
ちなみに、V,Nb,Taの含有量とN量、更には前記式(1)の要件を外れるときは、本願発明で意図するレベルの強度、靭性が得られなくなるばかりでなく、焼入れ性についても満足なものが得られない。
上記V,Nb,Taの総和とN、更にはそのうち固溶Nを加味した前記式(1)の要件を満たすように含有させることによって、低Ni系鍛造用鋼の強度や靭性が著しく向上する理由については、本発明者らの追究にもかかわらず未だ明確にされていないが、V,Nb,TaがNとの間で窒化物を形成すると共に、固溶Nそのものが優れた強度向上効果を発揮するものと考えられる。また、これらV,Nb,Taなどの強度向上元素は非常に高価な元素であり、少量とはいえかなりのコストアップを招くが、本発明ではこれら元素の少量添加と共に、安価なNを活用した固溶N量の増大によって強度向上を図ることにより、Vなどの多量添加による経済的負担を軽減することが可能となる。
そしてこうしたVなどやN、更には固溶Nによる強度向上作用は、Ni含量を0.7%以下に抑えたCr−Mo系鍛造用鋼に対して有効に発揮されるもので、Ni含有量が0.7%を超える高級鍛造用鋼の場合は殆ど発揮されないという極めて特異な現象として現われるのである。
従って本発明の鍛造用鋼は、Ni含有量を0.7%以下に抑えたCr−Mo系鍛造用鋼を対象とし、V,Nb,Taの総和とN(トータル窒素)および固溶Nを上記要件を満たすように特定の含有比率で含有させることにより、相対的に安価でしかもNi含有率の多い高級Cr−Mo系鍛造用鋼に匹敵する強度、靭性と焼入れ性を兼ね備えたものとして位置付けられる。
本発明の鍛造用鋼は、上記の様にNi含量が制限され、それに代わってV,Nb,Taの少なくとも1種とN、或いは更にこれらと固溶Nとを特定量含有せしめたところに特徴を有するものであるが、大型クランク軸などとして求められる強度や靭性、更には本発明で特徴とする焼入れ性をより有効に活かす上では、下記基本組成を有するCr−Mo系鍛造用鋼を選択することが必要である。
C :0.36〜0.45%(好ましくは0.38〜0.45%)
Si:0.15〜0.4%(好ましくは0.20〜0.4%)
Mn:0.8〜1.2%(好ましくは0.9〜1.2%)
Cr:1.5〜2.5%(好ましくは1.75〜2.5%)
Mo:0.15〜0.35%(好ましくは0.20〜0.35%)
を含むものであり、それら各元素の含有率を定めた理由は下記の通りである。
C :0.36〜0.45%
Cは焼入れ性を高めると共に強度向上に寄与する元素であり、十分な強度と焼入れ性を確保するには0.36%以上含有させる必要がある。Cは好ましくは0.38%以上含有するものが望ましいが、多過ぎると靭性を劣化させると共に逆V偏析を助長するので、0.45%以下にする必要があり、好ましくは0.42%以下に抑えるのがよい。
Si:0.15〜0.4%
Siは強度向上元素として作用し、十分な強度を確保するには0.15%以上含有させる必要がある。Siは好ましくは0.20%以上含有させるのがよいが、多過ぎると逆V偏析が著しくなって清浄な鋼塊が得られ難くなるので、0.4%以下にする必要があり、好ましくは0.3%以下に抑えるのがよい。
Mn:0.8〜1.2%
Mnも焼入れ性を高めると共に強度向上に寄与する元素であり、十分な強度と焼入れ性を確保するには0.8%以上含有させる必要があり、好ましくは0.9%以上含有するものが望ましい。しかしながら、多過ぎると逆V偏析を助長するので、1.2%以下にする必要があり、好ましくは1.1%以下に抑えるのがよい。
Cr:1.5〜2.5%
Crは焼入れ性を高めると共に靭性を向上させる有効な元素であり、それらの作用は1.5%以上、好ましくは1.75%以上含有させることによって有効に発揮される。しかし多過ぎると逆V偏析を助長して高清浄鋼の製造を困難にするので、2.5%以下に抑えるのがよい。
Mo:0.15〜0.35%
Moは、焼入れ性、強度、靭性の全ての向上に有効に作用する元素であり、それらの作用を有効に発揮させるには0.15%以上含有させる必要があり、好ましくは0.20%以上含有させることが望ましい。しかし、Moは平衡分配係数が小さくミクロ偏析(正常偏析)を生じ易くするので、0.35%以下、好ましくは0.30%以下に抑えるのがよい。
本発明で使用される鍛造用鋼の好ましい基本成分は上記の通りであり、残部成分は実質的にFeであるが、該鍛造用鋼中には微量の不可避不純物の含有が許容されることは勿論のこと、前記本発明の作用に悪影響を与えない範囲で更に他の元素を積極的に含有させた鍛造用鋼を使用することも可能である。積極添加が許容される他の元素の例としては、焼入れ性改善効果を有するB、脱酸効果を有するTi、MnS形態制御作用を有するCa,Mg,Ce,Zr,Teなどが挙げられ、それらは単独で或いは2種以上を複合添加できるが、それらは合計量で0.03%程度以下に抑えることが望ましい。
また上記基本組成の鍛造用鋼に不可避的に混入してくるAlは、鋼中の酸素量を低減するための脱酸性元素として含まれてくる元素であり、脱酸作用を有効に発現させるには0.001%程度以上含有させることが好ましい。しかし、Alは主にAlNの形でNを固定し、NとV等の配合による強化効果を発現させ難くするばかりでなく、他の多くの元素と結合して非金属介在物や金属間化合物を生成して靭性に悪影響を及ぼすので、0.04%以下に抑えることが望ましい。すなわちV等とNによる強化機構の観点から考えると、AlNを如何に発生させない様にするかがポイントであり、具体的には、Al含有量が0.001%程度と非常に少ない場合には、N含有量が30ppm程度であってもAlNの発生量が少ないため強度向上効果を生じるが、Al含有量が0.03%程度になるとAlNの生成量が多くなるため、強化効果を有効に発現させるにはN含有量を250ppm程度に高めるか、V含量を高めることが必要となる。
またSは、製鉄原料であるコークス由来の硫化物として含まれてくる有害成分であり、特に鋼中でMnSなどの硫化物を形成して疲労特性を劣化させる原因となる。従って、こうした障害を未然に防止するには、S含有量を0.006%以下、より好ましくは0.005%以下に抑えることが望ましい。
更に本発明の鍛造用鋼は、前述した成分組成に加えて、ベイナイトとマルテンサイト主体の金属組織を有しているところに重要な特徴があり、例えばフェライトやパーライトの面積分率が10%を超えるものでは、本発明で意図するレベルの強度を確保できない。ここでベイナイトおよびマルテンサイト主体とは、光学顕微鏡等によって確認することのできる断面組織の大部分がベイナイトとマルテンサイト組織であり、フェライトやパーライトの面積率が10%程度以下であるものを意味する。ちなみに現在のところ、ベイナイトやマルテンサイトの面積率を定量的に評価する方法は確立されていないが、現状でも断面組織写真から経験的にベイナイトとマルテンサイト主体の金属組織であることは確認できる。
そしてこの様なベイナイトとマルテンサイト主体の組織は、前述した化学成分を満たす鋼材を使用し、焼入れ時における870〜500℃の温度域を0.5〜30℃/min程度の平均冷却速度で冷却することによって得ることができる。
本発明にかかる鍛造用鋼の化学成分は上記の通りであり、Ni量を0.7%以下に抑えた鋼種であるにもかかわらず、少量のV,NbまたはTaの少なくとも1種とNを含有せしめ、或いは更に固溶N量の関係を規定することにより、添加合金成分によるコストアップを招くことなく安価でしかも高い強度特性を示す鍛造用鋼を得ることが可能となる。しかもこの鍛造用鋼は焼入れ性においても非常に優れたものであり、後記実施例で明らかにする如くジョミニー試験法によって確認することのできるDI値(水冷で中心部が50%マルテンサイト硬さとなる臨界直径)で30mm以上、より焼入れ性の優れたものでは32mm以上であり、従って鍛造後焼入れ処理により強化して使用されるクランク軸、特に船舶用の如き大型クランク軸用の素材として極めて有効に活用できる。
即ちDI値の高められた本発明の鍛造用鋼は優れた焼入れ性を有しており、クランク軸の如く焼入れ処理後の状態で表層側と心部側の何れも高強度が求められる鍛造製品、例えば直径が150〜1000mmといった大型で質量効果の大きい鍛造製品を得るための素材として極めて有用である。
本発明にかかる上記鍛造用鋼の製法は特に制限がなく、常法に従って高周波溶解炉や電気炉、転炉などを用いて所定化学成分に調整してから鋳造すればよい。また、成分調整後に真空処理を施すことも有効である。鋳造は、大型鍛造用鋼の場合は主としてインゴット鋳造が採用されるが、比較的小型の鍛造材の場合は連続鋳造法を採用することも可能である。なお本発明では、鍛造用鋼中のN含有量を厳密に制御する必要があり、そのための好ましい手段しては、窒化マンガンや窒化クロムの如き窒素含有金属を添加したり窒素ガスを吹込んでN含有量を増大し、またN含有量を減ずる場合は真空脱ガス処理を行なってその条件を適正に制御する方法等を採用すればよい。
また該鍛造用鋼を用いて例えばクランク軸などを製造する方法も特に制限されず、例えば、電気炉などで所定成分組成の鋼を溶製する工程→真空精錬などによりSなどの不純元素やOなどのガス成分を除去する工程→造塊する工程→鋼塊を加熱してから素材鍛造を行なう工程→中間検査の後加熱してクランク軸形状に鍛造する工程→熱処理により均質化すると共に焼入れ処理して硬質化する工程→仕上げ機械加工を行なう工程、を順次実施すればよい。
尚クランク軸への鍛造加工法としては、自由鍛造法(クランクアームとクランクピンを一体としたブロックとして鍛造し、ガス切断および機械加工によってクランク軸形状に仕上る方法)と、R.R.およびT.R.鍛造法(鋼塊の軸心がクランク軸の軸心部となる様に鍛造加工し、中心偏析により特性の劣化を起こし易い部分をクランク軸の全ての軸心部となる様に一体に鍛造加工する方法)が例示されるが、特に後者の鍛造法を採用すれば、シャフト表層側を清浄度の高い部分で占めさせることができ、強度や疲労特性に優れたクランク軸が得られ易いので好ましい。
但し本発明の鍛造用鋼は、その優れた強度特性と低コストであることの利点を生かし、クランク軸以外にも、船舶用の中間軸、推進軸、組立て型クランク軸のスロー、中空素材の如く溶接を施すことのない高強度製品などを鍛造成形するための素材としても有効に活用できる。
次に実験例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実験例
高周波炉を用いて表1,2に示す成分の鍛造用鋼を溶製し、鋳造して直径158〜132×長さ323mmの鋼塊(50kg)を製造した。この際、窒化マンガン添加量および雰囲気ガスを調整することによって鋼中のN量を調整すると共に、所定量のV,NbまたはTaを外部添加することにより、鋼中に所定量のV,Nb,Taを歩留らせた。
得られた各鋼塊の押湯部分を切除し、1230℃で5〜10時間加熱した後、自由鍛造プレス機を用いて高さ比で1/2まで圧縮し、鋼塊中心線を90°回転させて鍛造して90mm×90mm×450mmにまで引き伸ばした後、大気中で放冷した。室温にまで放冷した各素材は、その後、小型シミュレート炉を用いてオーステナイト化処理を施した。なおオーステナイト化処理は、各素材を昇温速度40℃/hrで870℃まで昇温して1時間保持した後、870〜500℃の温度域を平均冷却速度20℃/minで冷却し、焼戻し処理として610℃で13時間保持してから炉冷する方法を採用した。
なお供試材中のN量は、固溶Nと化合物型Nの合計量を示し、その分析は不活性ガス溶解法を採用した。なお固溶N量は、図5に示す如く、電解抽出法により鋼中の析出物を分離した後、インドフェノール吸光光度法を採用して化合物などのN量を測定し、前述の方法によって求めたトータルN量から差し引くことによって求めた。
また、オーステナイト化処理および焼戻し処理後に、各供試材の断面をナイタールでエッチングしてから100倍の光学顕微鏡により2視野以上を撮影し、該写真からフェライトおよびパーライトに分類される領域の面積分率を求めることによって金属組織を調べた。その結果、いずれの実施例、比較例についてもフェライト・パーライトの面積分率はゼロであり、ベイナイト・マルテンサイト主体の組織であることを確認した。
また、得られた各鋼材について、下記の方法で機械的性質と焼入れ性を調べ、表3,4および図1,2に示す結果を得た。
[機械的性質の評価法:室温]
引張試験は、ISO 6892に準拠して行なった。試験片形状はL=5.65√Sとした。シャルピー衝撃試験は、ISO 148に準拠して行ない、試験片形状はISO 148に記載の2mmVノッチを採用した。
[焼入れ性評価法]
ISO 642に記載されたジョミニー試験法に準拠して行なった。試験片形状はフランジ付き試験片とし、水冷で中心部が50%マルテンサイトとなる臨界直径(DI)を求めた。加熱温度は870℃とした。
Figure 0003896365
Figure 0003896365
Figure 0003896365
Figure 0003896365
図1,2は、上記表1〜4に示したデータから、Ni含有量と引張強さの関係およびN量と引張強度の関係を整理して示したグラフであり、図1からは、(V,Nb,Ta)とNを添加することによる強度向上効果は、Ni含有量が0.7%以下の鋼種に対して有効に発揮されること、図2からは、N含有の効果がN量で30ppm以上、より好ましくは40ppm以上、更に確実には50ppm以上で発揮されることを確認できる。またこうしたN含有の効果は、N量が60〜70ppm程度でほぼ飽和状態に達していることから、それ以上の含有、特に100ppmを超える含有は、強度向上という目的からは殆ど無意味であり、むしろ窒化物の増大による靭性劣化が懸念されるので、N量は100ppm以下、より好ましくは80ppm以下に抑えることが望ましいことが分かる。
図3は、上記実験例で得た鍛造用鋼における実施例材と比較材のDI値を対比して示したものであり、実施例材は比較材に比べてDI値も高く、焼入れ性に優れたものであることが分かる。
更に図4は、V含有量と固溶N量が引張強度に与える影響を整理して示したグラフであり、V量と固溶N量の関係が前記式(1)の関係を満たすものは、高レベルの強度特性を発揮することがわかる。なおこの図からも明らかなように、(V,Nb,Taの総和)で0.068%以上を確保できる場合は、固溶N量が実質的にゼロであっても十分は強度特性を確保できることが分かる。
実験で用いた鍛造用鋼のNi含有量と引張強さの関係を示すグラフである。 実験で用いた鍛造用鋼のN含有量と引張強さの関係を示すグラフである。 実施例材と比較材DI値を対比して示すグラフである。 鋼中のV含有量と固溶N量が引張強さに与える影響を整理して示すグラフである。 固溶Nの分析手順を示す図である。

Claims (7)

  1. 大型クランク軸の製造に用いられる高強度鍛造用鋼であって、
    C :0.36〜0.45%(質量%を意味する、以下同じ)、
    Si:0.15〜0.4%、
    Mn:0.8〜1.2%、
    Cr:1.5〜2.5%、
    Mo:0.15〜0.35%、
    V :0.035〜0.17%
    を夫々含むと共に、Ni含有率が0.7%以下(0%を含まない)であり、且つV,Nb,Taよりなる群から選択される少なくとも1種の元素:合計で0.035〜0.35%、N:30〜250ppmを含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、更に下記(1)式の関係を満たし、ベイナイトおよびマルテンサイト主体の組織からなることを特徴とする高強度鍛造用鋼。
    [V,Nb,Taの総和(質量%)]+0.001×固溶N(ppm)≧0.068……(1)
  2. 鋼が、他の成分としてAl:0.001〜0.040%を含むものである請求項1に記載の高強度鍛造用鋼。
  3. 鋼のS含有量が0.006%以下である請求項1または2に記載の高強度鍛造用鋼。
  4. DI値(水冷で中心部が50%マルテンサイトとなる臨界直径)が30mm以上である請求項1〜3のいずれかに記載の高強度鍛造用鋼。
  5. 船舶用大型クランク軸の製造に用いられるものである請求項1〜4のいずれかに記載の高強度鍛造用鋼。
  6. 前記請求項1〜5のいずれかに記載の鋼を鍛造して得たものである大型クランク軸。
  7. 船舶用の大型クランク軸である請求項6に記載のクランク軸。
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