JP3893742B2 - 車両用空調装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乗員がルーバフィンを操作することによりルーバフィンのスイングの開始および停止を制御することが可能なスイングルーバ装置を備えた車両用空調装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、特開平9−52518号公報においては、空調ユニットのフェイス吹出口から吹き出す空調風の吹出方向を変更する複数のルーバフィンをアクチュエータで駆動することで、自動的にスイングさせるようにしたスイングルーバ装置を備えた車両用空調装置(第1従来例)が知られている。
【0003】
また、特開平7−237434号公報においては、スイングルーバ装置専用のON、OFFスイッチを押すことにより、ルーバフィンの作動を開始したり、あるいはルーバフィンの作動を停止したりするようにしたスイングルーバ装置を備えた車両用空調装置(第2従来例)が知られている。さらに、例えばスイング範囲を冷房熱負荷に応じて変更させる等の高度な制御を行うことが可能なスイングルーバ装置には、複数のルーバフィンの位置を検出するためのポテンショメータが設けられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、少なくとも4個の前席側フェイス吹出口、2個の中席側フェイス吹出口および2個の後席側フェイス吹出口が設けられている1BOXカー等の車両において、各フェイス吹出口のスイングルーバ装置を個別に制御するには、すなわち、各スイングルーバ装置をスイングさせたり、スイングを停止したりするには、各スイングルーバ装置毎にON、OFFスイッチが必要となり、コスト面およびデザイン面で大変無理が生じるという問題があった。
【0005】
ここで、第1従来例のような制御では、吹出口から車室内に吹き出される空調風の吹出方向の制御中に、乗員が向けたい場所にルーバフィンを向けたとしても、またすぐに予め定められた制御パターンでルーバフィンが動いてしまい、空調風の吹出方向を乗員の好みの吹出方向にすることができないという問題が生じている。
第2従来例では、乗員がある方向にルーバフィンを向けたいと思った時、先ずスイングルーバ装置専用のON、OFFスイッチを切り、その後に、ルーバフィンを所望の方向に向けるという手順をふむ必要があり、分かり難く、面倒であった。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、既存の吹出状態検出手段を利用することにより、専用のスイッチを設けることなく、吹出状態可変手段の作動開始や吹出状態可変手段の作動停止を制御することのできる車両用空調装置を提供することを目的とする。
また、乗員が吹出状態を変更するための操作を乗員に分かり易く理解させることができ、一度の簡単な操作で乗員が好む空調風の吹出方向、吹出風量または吹出位置等の吹出状態に固定することのできる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明によれば、アクチュエータの作動を継続することにより吹出状態可変手段の位置が変化している場合には、空調ダクトの吹出口から車室内に吹き出される空調風の吹出方向が変更されると共に、吹出状態検出手段にて検知する吹出状態可変手段の位置が連続して変化する。このようなときに、吹出状態検出手段にて検知する吹出状態可変手段の位置が変化しない場合には、乗員が吹出状態可変手段を操作して吹出状態可変手段の移動を止めていると吹出状態制御手段が判断することによりアクチュエータの作動を停止させる。それによって、専用のスイッチを設けることなく、吹出状態可変手段の往復方向への移動を停止させることができるだけでなく、吹出状態可変手段の作動を止めたいという乗員の意志をそのまま実現できるので、コスト面、デザイン面および操作面で満足することができるものとなる。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、吹出状態検出手段にて検知する吹出状態可変手段の位置の変化速度が設定速度以下に低下した場合には、乗員が吹出状態可変手段を操作して吹出状態可変手段の移動を止めていると吹出状態制御手段が判断することによりアクチュエータの作動を停止させる。それによって、請求項1に記載の発明と同様な効果を達成することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明によれば、アクチュエータの作動が停止することにより吹出状態可変手段の位置が変化していない場合には、空調ダクトの吹出口から車室内に吹き出される空調風の吹出方向が一定の方向を向くと共に、吹出状態検出手段にて検知する吹出状態可変手段の位置が変化しない。このようなときに、吹出状態検出手段にて検知する吹出状態可変手段の位置が変化した場合には、乗員が吹出状態可変手段を操作して吹出状態可変手段の位置を動かしていると吹出状態制御手段が判断することによりアクチュエータの作動を開始させる。それによって、専用のスイッチを設けることなく、吹出状態可変手段の往復方向への移動を開始させることができるだけでなく、吹出状態可変手段の作動を止めたいという乗員の意志をそのまま実現できるので、コスト面、デザイン面および操作面で満足することができるものとなる。
【0010】
請求項4に記載の発明によれば、吹出状態検出手段にて検知する吹出状態可変手段の位置が1往復分だけ変化した場合には、乗員が吹出状態可変手段を操作して吹出状態可変手段の位置を動かしていると吹出状態制御手段が判断することによりアクチュエータの作動を開始させる。それによって、請求項3に記載の発明を精度良く実現し、同様な効果を達成することができる。
請求項5に記載の発明によれば、設定時間以内で、且つ吹出状態検出手段にて検知する吹出状態可変手段の位置が往復方向に設定範囲以上変化した場合には、乗員が吹出状態可変手段を操作して吹出状態可変手段の位置を動かしていると吹出状態制御手段が判断することによりアクチュエータの作動を開始させる。それによって、請求項3に記載の発明を精度良く実現し、同様な効果を達成することができる。
【0011】
請求項7に記載の発明によれば、アクチュエータの作動を継続することにより吹出状態可変手段の位置が変化している場合には、空調ダクトの吹出口から車室内に吹き出される空調風の吹出方向、吹出風量または吹出位置等の吹出状態が変更されると共に、吹出状態検出手段にて検知する吹出状態可変手段の位置が連続して変化する。このようなときに、空調風の吹出状態を変更するために乗員が吹出状態可変手段を直接操作すると、乗員操作判断手段にて吹出状態可変手段を乗員が操作したものと判断される。このように、吹出状態可変手段を乗員が操作したものと判断した場合に、アクチュエータの作動を停止させることで、乗員が好む空調風の吹出状態に固定することができる。
以上のように、乗員が吹出状態可変手段を操作するのみという一度の簡単な操作で、乗員が好む空調風の吹出状態に固定することができるので、吹出状態を変更する操作を乗員に非常に分かり易く理解させることができる。
【0012】
請求項8に記載の発明によれば、アクチュエータの作動を継続している時、吹出状態検出手段にて検知する吹出状態可変手段の位置の変化速度が目標変化速度と異なる場合に、乗員が吹出状態可変手段を直接操作したと判断する。それによって、請求項7に記載の発明と同様な効果を達成することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
〔第1実施形態の構成〕
図1ないし図14は本発明の第1実施形態を示したもので、図1は車両用空調装置の全体構成を示した図で、図2は車両用空調装置を搭載した車両の車室内を示した図である。
【0014】
本実施形態の車両用空調装置は、主として車両100の前部座席側の乗員(運転席の乗員および助手席の乗員:第1の乗員)を空調するための第1空調ゾーンを温度調節する第1空調ユニット1と、主として車両100の後部、中間座席側の乗員(中間座席の乗員:第2の乗員および後部座席の乗員:第3の乗員)を空調するための第2空調ゾーンを温度調節する第2空調ユニット2と、第1、第2空調ユニット1、2の空調機能部品を制御する空調制御装置(以下エアコンECUと言う)6とを備える。なお、本実施形態の車両100は、1BOXカーで、前部座席(フロントシート:以下前席と略す)101、中間座席(セカンドシート:以下中席と略す)102および後部座席(サードシート:以下後席と略す)103を備えている。
【0015】
第1空調ユニット1は、車両100の車室内の最前方に配置されており、車室内に空気を導くための第1空調ダクト10を有している。この第1空調ダクト10の空気最上流側には、車室内に開口した内気導入口10aと、車室外と連通した外気導入口10bと、これらの内気導入口10aと外気導入口10bとの開口状態(所謂内外気モード)を切り替える内外気切替ドア11が設けられている。そして、この内外気切替ドア11は、駆動手段としてのサーボモータ11aによって駆動される。これによって、第1空調ユニット1は、第1空調ダクト10内に取り入れられる空気が内気100%である内気循環モードと、外気100%である外気導入モードが切替可能となっている。
【0016】
第2空調ユニット2は、車両100の車室内の最後方に配置されており、車室内に空気を導くための第2空調ダクト20を有している。この第2空調ダクト20の空気最上流側には、車室内に開口した内気導入口20aが設けられており、上述の第1空調ダクト10とは異なり第2空調ダクト20内に取り込まれる空気は内気のみとなり、常に内気循環モードとなる。ここで、上述の第1空調ユニット1が、外気導入モードである場合は、図2に示したように、第1空調ダクト10から空調風が吹き出されると、この空調風の吹出に伴って、例えば車室内最後方に位置するリヤパッケージトレー(図示せず)で開口し、車室外と連通した排出孔20bから車室内の空気が排出されることになる。
【0017】
そして、第1、第2空調ダクト10、20との内部にて、それぞれ通過する空気を温度調節するのであるが内部構成はほぼ同様であるため一緒に説明する。第1、第2空調ダクト10、20の内気導入口10a、20aの空気下流側部位には、各第1、第2空調ダクト10、20内に空気流を発生させる空気流発生手段である第1、第2送風機12、22が配設されている。これらの第1、第2送風機12、22は、それぞれ駆動手段としての電動モータ12a、22aにて駆動される。
【0018】
そして、第1、第2空調ダクト10、20内の、第1、第2送風機12、22の空気下流側には、通過する空気を冷却する空気冷却手段としての第1、第2エバポレータ(冷媒蒸発器)13、23が各空気通路全体を塞ぐように配設されている。これらの第1、第2エバポレータ13、23は、車両100に搭載された冷凍サイクル(図示せず)の一構成部品である。
【0019】
この冷凍サイクルは、車両100に搭載されたエンジンの回転動力を受けて冷媒を高温高圧のガス冷媒とするコンプレッサ(冷媒圧縮機)と、このコンプレッサより吐出されたガス冷媒を凝縮液化させるコンデンサ(冷媒凝縮器)と、このコンデンサより流入した液冷媒を減圧膨張する第1、第2膨張弁(減圧手段)と、この膨張弁より流入した冷媒を蒸発気化させる上述の第1、第2エバポレータ13、23とからなる周知の構成である。
【0020】
なお、本実施形態の冷凍サイクルは、コンデンサと膨張弁との間に、並列に第1、第2エバポレータ13、23が接続されており、各第1、第2エバポレータ13、23の冷媒上流側には、それぞれの冷媒の流れを断続する第1、第2電磁弁(図示せず)が設けられており、これらの第1、第2電磁弁の開閉状態によって第1、第2エバポレータ13、23に冷媒が供給されるか否かが決定される。第1、第2エバポレータ13、23と第1、第2電磁弁との間には、上述の第1、第2膨張弁が接続されている。
【0021】
そして、第1、第2空調ダクト10、20内の、第1、第2エバポレータ13、23の空気下流側には、車室内に吹き出される空気の吹出温度を調節する第1、第2温度調節手段が配設されている。第1、第2温度調節手段は、空気加熱手段である第1、第2ヒータコア14、24と、第1、第2ヒータコア14、24を通過する空気量と第1、第2ヒータコア14、24を迂回する空気量との風量割合を調節することで第1、第2エバポレータ13、23を通過した空気の加熱量を調節する加熱量調節手段である第1、第2エアミックス(A/M)ドア15、25とから構成されている。第1、第2ヒータコア14、24は、エンジンの冷却水を熱源とし、冷却水温度に応じた加熱能力を得ることができる。また、第1、第2A/Mドア15、25は、それぞれ駆動手段としてのサーボモータ15a、25aによって駆動される。
【0022】
次に、第1、第2空調ダクト10、20の空気最下流側には、上述の空調機能部品によって温度調節された空調風を車室内に吹き出すための吹出口が設けられている。この吹出口は、第1空調ユニット1と第2空調ユニット2とでその形成位置が異なることから2つに分けて説明する。
【0023】
先ず、第1空調ダクト10の空気最下流側には、車室内の最前方のインストルメントパネル104内で、車室内の異なる位置に向かって空調風を吹き出すための第1吹出口(前席側吹出口)が配設されている。具体的には、車両100の前席側の乗員の上半身(頭胸部)に向かって空調風(主に冷風)を吹き出すための4個の前席側フェイス(FACE)吹出口16(図3参照)と、車両100のフロントウインドガラスの内面に向かって空調風(主に温風)を吹き出すためのデフロスタ(DEF)吹出口17(図3参照)と、車両100の前席側の乗員の下半身(足元部)に向かって空調風(主に温風)を吹き出すための2個の前席側フット(FOOT)吹出口18とが第1吹出口の一例として挙げられる。
【0024】
なお、4個の前席側FACE吹出口16は、インストルメントパネル104の車両幅方向の中央部で開口した運転席側、助手席側センタFACE吹出口と、車両幅方向の最も両端側に配置された運転席側、助手席側サイドFACE吹出口とからなる。これらのうち4個の前席側FACE吹出口16および2個の前席側FOOT吹出口18は、第1吹出口開閉手段としての第1吹出口切替ドア19によって、その開口状態(所謂吹出口モード)が調節される。そして、この第1吹出口切替ドア19は、駆動手段としてのサーボモータ19aによって駆動される。
【0025】
これによって、第1空調ユニット1は、4個の前席側FACE吹出口16のみを開口させるフェイス(FACE)モード、2個の前席側FOOT吹出口18のみを開口させるフット(FOOT)モード、および4個の前席側FACE吹出口16と2個の前席側FOOT吹出口18の両方を開口させるバイレベル(B/L)モード等の吹出口モードが切替可能となる。
【0026】
一方、第2空調ダクト20の空気最下流側には、第2吹出口として、車両100の中席側、後席側の乗員の上半身(頭胸部)に向かって空調風(主に冷風)を吹き出すための4個の中席側、後席側フェイス(FACE)吹出口26、27と、車両100の中席側、後席側の乗員の下半身(足元部)に向かって空調風(主に温風)を吹き出すための4個の中席側、後席側フット(FOOT)吹出口28とが配設されている。
【0027】
4個の中席側、後席側FACE吹出口26、27は、例えば車両100の中席102および後席103に対応した中席側、後席側の天井部の、中席側、後席側の車両幅方向の両側に設けられている。また、4個の中席側、後席側FOOT吹出口28は、例えば車両100の中席102の下部で、車両100のフロア近傍で開口するように設けられており、上述の中席側、後席側FACE吹出口26、27と同様に車両幅方向の両側に設けられている。あるいは、中席102の下部に設けられている。
【0028】
これらの中席側、後席側FACE吹出口26、27および中席側、後席側FOOT吹出口28は、第2吹出口開閉手段として第2吹出口切替ドア29によって、その開口状態(所謂吹出口モード)が調節される。そして、この第2吹出口切替ドア29は、駆動手段としてのサーボモータ29aによって駆動される。これによって、第2空調ユニット2は、4個の中席側、後席側FACE吹出口26、27のみを開口させるフェイス(FACE)モード、4個の中席側、後席側FOOT吹出口28のみを開口させるフット(FOOT)モード、および4個の中席側、後席側FACE吹出口26、27と4個の中席側、後席側FOOT吹出口28の両方を開口させるバイレベル(B/L)モード等の吹出口モードが切替可能となる。
【0029】
次に、4個の中席側、後席側FACE吹出口26、27に設置される吹出状態可変装置を図1、図4ないし図6に基づいて説明する。ここで、図4は吹出状態可変装置の全体構成を示した図である。
【0030】
吹出状態可変装置は、4個の中席側、後席側フェイス(FACE)グリル30内にそれぞれ設けられている。なお、4個の中席側、後席側FACEグリル30内に形成される空気通路は、それぞれ上述の4個の中席側、後席側FACE吹出口26、27として利用される。そして、4個の中席側、後席側FACEグリル30内には、左右方向揺動機構(図5参照)および上下方向揺動機構(図6参照)がそれぞれ設けられている。
【0031】
各左右方向揺動機構は、4個の中席側、後席側FACEグリル30内において左右方向に複数列設された吹出方向可変手段としてのルーバフィン31と、このルーバフィン31を、支点を中心にして車両100の前後方向および前後方向に対して左右方向(水平方向)に所定の揺動範囲(スイング範囲、ルーバ角度:例えば0°〜120°)にて揺動運動(スイング)させるリンクレバー32と、アームプレート33を介してリンクレバー32を前後方向および左右方向に往復運動させるアクチュエータとしてのルーバモータ31aとから構成されている。なお、複数のルーバフィン31は、本発明の吹出状態可変手段に相当するもので、4個の中席側、後席側FACE吹出口26、27から吹き出される空調風の吹出方向をそれぞれ前後方向および左右方向に変更する。
【0032】
各上下方向揺動機構は、4個の中席側、後席側FACEグリル30内において上下方向に複数列設された吹出方向可変手段としてのルーバフィン34と、このルーバフィン34を、支点を中心にして車両100の前後方向に対して上下方向に所定の揺動範囲(スイング範囲、ルーバ角度:例えば0°〜120°)にて揺動運動(スイング)させるリンクレバー35と、アームプレート36を介してリンクレバー35を上下方向に往復運動させるアクチュエータとしてのルーバモータ34aとから構成されている。なお、複数のルーバフィン34は、本発明の吹出状態可変手段に相当するもので、4個の中席側、後席側FACE吹出口26、27から吹き出される空調風の吹出方向を上下方向に変更する。
【0033】
次に、エアコンECU6を図1、図4ないし図6に基づいて説明する。エアコンECU6は、本発明の吹出状態制御手段に相当するもので、内部にCPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータが設けられている。このエアコンECU6は、各センサからのセンサ信号が図示しない入力回路によってA/D変換された後に、マイクロコンピュータに入力されるように構成されている。そして、エアコンECU6は、車両100のイグニッションスイッチ(図示せず)またはアクセサリースイッチ(図示せず)がONされることにより、車両100に搭載されたバッテリから給電され、演算処理が可能となる。
【0034】
エアコンECU6の入力端子には、第1空調ユニット1および第2空調ユニット2の空調制御に必要であり、第1空調ゾーンおよび第2空調ゾーンの空調状態に影響を及ぼす空調環境因子を検出する各種センサが電気的に接続されている。具体的には、車室外の空気温度(以下外気温度と言う)を検出する外気温度センサ61と、エンジンの冷却水の温度(以下冷却水温度と言う)を検出する冷却水温度センサ62と、主として第1空調ゾーン内に進入する日射量を検出する日射センサ63と、第1、第2空調ゾーン内の空気温度(以下第1、第2内気温度と言う)を検出する第1、第2内気温度センサ64、65とが電気的に接続されている。
【0035】
さらに、第1、第2エバポレータ13、23を通過した直後の空気温度(以下第1、第2エバ後温度と言う)を検出する第1、第2エバ後温度センサ66、67と、4個の中席側、後席側FACE吹出口26、27から吹き出される空調風の吹出方向を検出する4個の左右方向位置センサ68および4個の上下方向位置センサ69と、第1、第2空調ゾーン内の空気温度を所望の温度(以下第1、第2設定温度と言う)に設定する第1、第2温度設定器71、72とが電気的に接続されている。
【0036】
4個の左右方向位置センサ68は、本発明の吹出状態検出手段に相当するもので、ルーバフィン31の左右方向の現在位置を検知することにより、ルーバフィン31の左右方向のルーバ角度(検出角度)を検出するルーバ角度検出手段であると共に、前席側FACE吹出口16から吹き出される空調風の左右方向の風向を検出する風向検出手段であり、左右方向揺動機構近傍にそれぞれ設けられている。具体的には、4個の左右方向位置センサ68は、図5に示したように、リンクレバー32と一体的に左右方向に往復移動する可動接点68a、およびこの可動接点68aの移動により分圧比を変える抵抗素子68b等よりなるポテンショメータである。
【0037】
4個の上下方向位置センサ69は、本発明の吹出状態検出手段に相当するもので、ルーバフィン34の上下方向の現在位置を検知することにより、ルーバフィン34の上下方向のルーバ角度(検出角度)を検出するルーバ角度検出手段であると共に、中席側、後席側FACE吹出口26、27から吹き出される空調風の上下方向の風向を検出する風向検出手段であり、上下方向揺動機構近傍にそれぞれ設けられている。具体的には、4個の上下方向位置センサ69は、図6に示したように、リンクレバー35と一体的に上下方向に往復移動する可動接点69a、およびこの可動接点69aの移動により分圧比を変える抵抗素子69b等よりなるポテンショメータである。
【0038】
第1温度設定器71は、上述のインストルメントパネル104上に設置されており、このインストルメントパネル104上にはその他に第1空調ゾーンを自動的に温度調節するように指令するエアコンAUTOボタン73、吹出口モードを切り替える吹出口切替スイッチ(図示せず)、内外気モードを切り替える内外気切替スイッチ(図示せず)、および第1空調ユニット1の作動を停止させるOFFスイッチ等が設置されている。
【0039】
第2温度設定器72は、温度設定手段に相当するもので、車両100の後席側で、例えば天井部分に配設されたコントローラ(図示せず)またはリモートコントローラ(図示せず)の操作パネル上に設置されており、この操作パネル上にはその他に第2空調ゾーンを自動的に温度調節するように指令するエアコンAUTOボタン74、吹出口モードを切り替える吹出口切替スイッチ(図示せず)、および第2空調ユニット2の作動を停止させるOFFスイッチ(図示せず)等が設置されている。
【0040】
一方、エアコンECU6の出力端子には、上述のサーボモータ11a、電動モータ12a、22a、図示しないコンプレッサの電磁クラッチ、冷凍サイクルの第1、第2電磁弁、サーボモータ15a、19a、25a、29a、4個のルーバモータ31aおよび4個のルーバモータ34aが電気的に接続されている。つまり、エアコンECU6は、上述の入力端子から取り入れられた空調情報に基づいて、演算処理を行い、所望の空調状態となるように出力端子から制御信号を出力し、上記各空調機能部品を制御する。これによって、この車両用空調装置は自動的に車室内の温度、内外気モードの切り替え、吹出口モードの切り替え、空調風の吹出方向の変更、空調風の吹出方向の揺動範囲の変更および送風量を自動コントロールする。
【0041】
〔第1実施形態の空調制御方法〕
次に、本実施形態のエアコンECU6による空調制御方法を、図1ないし図14に基づいて簡単に説明する。ここで、図7はエアコンECU6の制御プログラムの一例を示したフローチャートである。
【0042】
先ず、データやフラグなどの初期化(リセット)を行う(ステップS1)。
次に、第1、第2温度設定器71、72から空調情報としてそれぞれ第1空調ゾーンの第1設定温度Tset(Fr)および第2空調ゾーンの第2設定温度Tset(Rr)を読み込み、一時的にRAMに記憶する(第1、第2温度設定手段:ステップS2)。
【0043】
上述の各センサから、第1空調ゾーンの空調処理に必要な外気温度TAM、第1内気温度TR(Fr)、日射量TS、第1エバ後温度TE(Fr)および冷却水温度TWと、第2空調ゾーンの空調処理に必要な第2内気温度TR(Rr)および第2エバ後温度TE(Rr)とを読み込み、一時的にRAMに記憶する(ステップS3)。なお、外気温度TAM、日射量TSおよび冷却水温度TWは第2空調ゾーンの空調処理にも必要である。
【0044】
次に、4個の中席側、後席側FACEグリル30に組み付けられた左右方向位置センサ68にて検出されるルーバフィン31の現在位置、および上下方向位置センサ69にて検出されるルーバフィン34の現在位置を読み込む(吹出状態検出手段:ステップS4)。
次に、下記に示す数1の式に基づいて、第1空調ユニット1の吹出口から吹き出される空調風の第1目標吹出温度TAO(Fr)を算出する(第1目標吹出温度決定手段:ステップS5)。
【0045】
【数1】
TAO(Fr)=Kset(Fr)・Tset(Fr)−KR(Fr)・TR(Fr)−KAM(Fr)・TAM−KS(Fr)・TS+C(Fr)
ここで、Kset(Fr)、KR(Fr)、KAM(Fr)、KS(Fr)はそれぞれ第1設定温度Tset(Fr)、第1内気温度TR(Fr)、外気温度TAMおよび日射量TSの補正ゲインであり、C(Fr)は補正定数である。
【0046】
次に、上述のステップS5にて算出されたTAO(Fr)に基づいて図8の特性図から第1空調ユニット1の内外気モードを決定する(ステップS6)。なお、図8中、SWIは内外気切替ドア11の目標開度であり、本実施形態においては内気導入口10aを全開し、外気導入口10bを全閉する場合を目標開度SWI=0%とし、内気導入口10aを全閉し、外気導入口10bを全開する場合を目標開度SWI=100%とする。
【0047】
次に、上述のステップS5にて算出されたTAO(Fr)に基づいて図9の特性図から第1空調ユニット1の吹出口モードを決定する(ステップS7)。
次に、第1空調ユニット1の第1送風機12の送風量を決定する。実際には、上述のステップS5にて算出されたTAO(Fr)に基づいて図10の特性図から電動モータ12aに印加されるブロワ電圧(V)を決定する(ステップS8)。
【0048】
次に、下記に示す数2の式に基づいて、第2空調ユニット2の吹出口から吹き出される空調風の第2目標吹出温度TAO(Rr)を算出する(第2目標吹出温度決定手段:ステップS9)。
【0049】
【数2】
TAO(Rr)=Kset(Rr)・Tset(Rr)−KR(Rr)・TR(Rr)−KAM(Rr)・TAM−KS(Rr)・TS+C(Rr)
ここで、Kset(Rr)、KR(Rr)、KAM(Rr)、KS(Rr)はそれぞれ第2設定温度Tset(Rr)、第2内気温度TR(Rr)、外気温度TAMおよび日射量TSの補正ゲインであり、C(Rr)は補正定数である。
【0050】
次に、上述のステップS9にて算出されたTAO(Rr)に基づいて図11の特性図から第2空調ユニット2の吹出口モードを決定する(ステップS10)。
次に、図13のルーチンが起動して、スイングルーバ制御を行う。具体的には、第2空調ユニット2の4個の中席側、後席側FACE吹出口26、27、つまり4個の中席側、後席側FACEグリル30の吹出状態可変装置の制御状態を決定する(ステップS11)。
次に、第2空調ユニット2の第2送風機22の送風量を決定する。実際には、上述のステップS9にて算出されたTAO(Rr)に基づいて図12の特性図から電動モータ22aに印加されるブロワ電圧(V)を決定する(ステップS12)。
【0051】
次に、上述のステップS5およびステップS9にて算出されたTAO(Fr)、TAO(Rr)に基づいて第1、第2A/Mドア15、25の各目標開度θ(Fr)、θ(Rr)を下記の数3の式および数4の式から算出する(ステップS13)。
【0052】
【数3】
【数4】
【0053】
次に、上述のステップS4〜ステップS13にて決定または算出された空調制御状態となるように、上記の各種空調機能部品に制御信号を出力する(ステップS14)。
次に、所定の制御周期時間(τ)が経過したか否かを判定する(ステップS15)。この判定結果がYESの場合には、ステップS2にリターンされ、その判定結果がNOの場合には、制御周期時間(τ)の経過を待つ。
【0054】
次に、エアコンECU6によるスイングルーバ制御を図13に基づいて説明する。ここで、図13はエアコンECU6によるスイングルーバ制御を示したフローチャートである。このフローチャートは、各中席側、後席側FACEグリル30の吹出状態可変装置のルーバフィン31毎に行われる。なお、ルーバフィン34の制御は、図13のフローチャートと似通っているため説明を省略する。
【0055】
先ず、オートフラグFが立っているか否かを判定する(ステップS21)。この判定結果がNOの場合には、ルーバモータ31aが作動(ON)中であるか否かを判定する(ステップS22)。この判定結果がYESの場合には、マニュアルスイングを行う。具体的には、所定のスイング範囲(例えば往復120°)でルーバフィン31に揺動運動を与えるようにルーバモータ31aの作動を開始(ON)する(ステップS23)。
【0056】
また、ステップS22の判定結果がNOの場合には、マニュアルストップを実行する。具体的には、中席側、後席側の乗員の居る位置にルーバフィン31を向けた状態でルーバモータ31aの作動を停止(OFF)する(ステップS24)。
次に、エアコンAUTOボタン74が押されたか否かを判断する(ステップS25)。この判断結果がNOの場合には、オートフラグFを倒す(ステップS26)。その後に、図13のルーチンを抜ける。
また、ステップS25の判定結果がYESの場合には、オートフラグFを立てる(ステップS27)。その後に、図13のルーチンを抜ける。
【0057】
また、ステップS21の判定結果がYESの場合には、第2内気温度TR(Rr)が所定温度α(例えば30℃)以上の高温であるか否かを判定する(ステップS28)。この判定結果がNOの場合には、車室内に進入する日射量TSが所定の日射量β(例えば500W/m2 )以上の高日射量であるか否かを判定する(ステップS29)。この判定結果がNOの場合には、オートスイングを実行する。具体的には、中席側、後席側の乗員の居る位置を中心にして所定のスイング範囲(例えば往復120°)でルーバフィン31に揺動運動を与えるようにルーバモータ31aを作動(ON)させる(ステップS30)。
【0058】
次に、設定時間(例えば1秒間)以内で、左右方向位置センサ68の検出角度θが所定角度A(例えば7°)以下であるか否かを判定する(ステップS31)。この判定結果がNOの場合には、図13のルーチンを抜ける。
また、ステップS31の判定結果がYESの場合には、ステップS24に進む。
また、ステップS28の判定結果がYESの場合、あるいはステップS29の判定結果がYESの場合には、オートストップを実行する。具体的には、中席側、後席側の乗員の居る位置にルーバフィン31を向けた状態でルーバモータ31aの作動を停止(OFF)する(ステップS32)。
【0059】
次に、設定時間(例えば3秒間)以内で、且つ左右方向位置センサ68の検出角度θが所定角度B(例えば15°)以上であるか否かを判定する(ステップS33)。この判定結果がNOの場合には、図13のルーチンを抜ける。
また、ステップS33の判定結果がYESの場合には、ステップS23に進む。
【0060】
〔第1実施形態の作用〕
次に、本実施形態の車両用空調装置の作用を図1ないし図14に基づいて簡単に説明する。
【0061】
例えば第1空調ユニット1の吹出口モードがFACEモード(B/Lモードでも良い)の場合には、第1送風機12の作用によって内気導入口10aから第1空調ダクト10内に吸い込まれた内気が第1エバポレータ13で例えば4℃程度まで冷やされた後に、第1A/Mドア15の開度に応じて第1ヒータコア14を通過する空気量が調節されて、前席側の乗員が設定した第1設定温度Tset(Fr)に応じた最適な温度の空調風となる。その後に、空調風(冷風)は、第1空調ダクト10の最下流側端で開口した4個の前席側FACE吹出口16から、車両100の車室内の前席側の第1空調ゾーン内に吹き出される。特に冷風は、第1空調ゾーン内の前席側の乗員の上半身(頭胸部)に向けて吹き出される。
【0062】
一方、第2空調ユニット2の吹出口モードがFACEモード(B/Lモードでも良い)の場合には、第1空調ユニット1と同様にして、第2送風機22の作用によって内気導入口20aから第2空調ダクト20内に吸い込まれた内気が第2エバポレータ23で例えば4℃程度まで冷やされた後に、第2A/Mドア25の開度に応じて第2ヒータコア24を通過する空気量が調節されて、中席側、後席側の乗員が設定した第2設定温度Tset(Rr)に応じた最適な温度の空調風となる。その後に、空調風(冷風)は、第2空調ダクト20の最下流側端で開口した4個の中席側、後席側FACE吹出口26、27から、車両100の車室内の後席側の第2空調ゾーン内に吹き出される。特に冷風は、第2空調ゾーン内の中席側、後席側の乗員の上半身(頭胸部)に向けて吹き出される。
【0063】
ここで、各中席側、後席側FACEグリル30の吹出状態可変装置のルーバフィン31のルーバ制御を図14の作動説明図を基に説明する。
先ず、オートモードの時には、第2内気温度TR(Rr)が所定温度α(例えば30℃)以上の高温時、あるいは日射量TSが所定の日射量β(例えば500W/m2 )以上の高日射時の場合、ルーバフィン31を中席側、後席側の乗員の居る位置に向けた状態でルーバフィン31を停止させ、それ以外の条件では中席側、後席側の乗員の居る位置を中心に左右方向に所定のスイング範囲(例えば30°)にてルーバフィン31をスイングするように制御される。このとき、前者の状態でルーバフィン31のスイングが停止している時をオートストップ、後者の状態でルーバフィン31が所定のスイング範囲(例えば30°)にてスイングしている時をオートスイングと定める。
【0064】
今、ルーバフィン31がオートストップ中の場合には、通常はルーバモータ31aがルーバフィン31を駆動しておらず、よって左右方向位置センサ68の検出角度θにも変化はない。しかし、ここで中席側、後席側の乗員がルーバフィン31をスイングさせることを望んで、任意のルーバフィン31を指で左右方向に1回スイング操作したとする。なお、エアコンECU6は、左右方向位置センサ68の検出角度θを1秒間に5回検出可能であるとする。
【0065】
具体的には、例えば中席側の乗員が中席102の右側に座っているとして、右側の中席側FACE吹出口26のルーバフィン31が中席側の乗員に向けて右50°で止まっていたとすると、中席側の乗員が指で1回スイング操作する前までエアコンECU6は、ルーバフィン31が右50°で停止していたことを記憶している。中席側の乗員が例えば0.4秒かかって右に30°ルーバフィン31を動かし、0.6秒かかって左に45°ルーバフィン31を手動操作したとすると、エアコンECU6はルーバモータ31aが止まっているにも拘らず、左右方向位置センサ68から50°、65°、80°、65°、50°、35°の検出角度θを検出することになる。
【0066】
そして、エアコンECU6は、予め設定時間(例えば3秒間)以内に、左右方向位置センサ68の検出角度θに所定角度A(例えば15°)以上の変化があったことを検出した時を判定値としていたとすると、その変化を検出することにより中席側の乗員がルーバフィン31をスイングさせたい(スイング操作した)と判断する。これにより、オートスイングの時と同じスイング範囲(例えば30°)でそのルーバフィン31がマニュアルスイングを開始する。なお、ルーバフィン34の上下方向のスイングについても同様である。また、マニュアルストップにおいても同様である。
【0067】
次に、ルーバフィン31がオートスイング中の場合には、ルーバフィン31のスイングスピードがほぼ一定であるため、例えば往復120°スイングしているルーバフィン31が12秒かけて1回スイングしているとすると、エアコンECU6は1回のルーバフィン31の位置検出毎に2度の変化を検出することになる。1秒間では10°の変化を検出するはずである。これは延べのルーバ角度を演算するため、たまたまルーバフィン31のスイング端で1秒後に同じ位置になったとしても10°変化したと考える。
【0068】
具体的には、例えば中席側の乗員が中席102の右側に座っているとして、右側の中席側FACE吹出口26のスイングしているルーバフィン31を止めたいと思い、指でルーバフィン31を押さえた場合には、すなわち、指でスイングをストップさせた場合には、ルーバモータ31aが動いているにも拘らず、左右方向位置センサ68の検出角度θが変化しないことになる。このとき、エアコンECU6は、予め設定時間(例えば1秒間)以内の検出角度θの変化が所定角度B(例えば7°)以下の時を中席側の乗員がルーバフィン31を止めたい(スイングストップ操作した)と判断する。これにより、ルーバフィン31のスイングを停止する。なお、ルーバフィン34の上下方向のスイングについても同様である。また、マニュアルスイングにおいても同様である。
【0069】
そして、エアコンECU6は、図14の作動説明図に示したように、マニュアルスイング中に、中席側、後席側の乗員が指でルーバフィン31のスイングをストップしたと判断した場合には、マニュアルストップに移行する。また、エアコンECU6は、図14の作動説明図に示したように、マニュアルストップ中に、中席側、後席側の乗員が指でルーバフィン31を1回スイングしたと判断した場合には、マニュアルスイングに移行する。
【0070】
〔第1実施形態の効果〕
以上のように、本実施形態の吹出状態可変装置では、エアコンECU6によりルーバモータ31a、34aの作動状態(ON/OFF状態)と左右方向位置センサ68の検出角度および上下方向位置センサ69の検出角度を検出することにより、各吹出状態可変装置のルーバフィン31、34のオートストップからマニュアルスイングへの移行、各吹出状態可変装置のルーバフィン31、34のオートスイングからマニュアルストップへの移行、各吹出状態可変装置のルーバフィン31、34のマニュアルスイングからマニュアルストップへの移行、および各吹出状態可変装置のルーバフィン31、34のマニュアルストップからマニュアルスイングへの移行を任意に実行することができる。
【0071】
したがって、本実施形態の吹出状態可変装置は、各ルーバフィン31、34を高度な制御を行うための既存の左右方向位置センサ68および上下方向位置センサ69を利用することにより、専用のON、OFFスイッチを設けることなく、ルーバフィン31、34の制御を行うことができるので、部品点数が減少することにより製品コストを低減でき、デザイン面および操作面で非常に満足なものとすることができる。
また、吹出状態可変装置を中席側、後席側FACE吹出口26、27だけではなく、前席側FACE吹出口16に設ける等、吹出状態可変装置の取付箇所が増えれば増える程、上述の効果が更に向上する。
【0072】
〔第2実施形態の構成〕
図15ないし図20は本発明の第2実施形態を示したもので、図15は車両のインストルメントパネルを示した図で、図16はエアコン操作パネルを示した図である。
【0073】
本実施形態では、インストルメントパネル104の車両幅方向の中央部で開口した運転席側(ドライバー側:以下Dr側と言う)、助手席側(パッセンジャー側:以下Pa側と言う)センタFACE吹出口16a、16bと、車両幅方向の最も両端側に配置されたDr側、Pa側サイドFACE吹出口16a、16bとからなる。そして、吹出状態可変装置は、4個のDr側、Pa側FACEグリル30a、30b内にそれぞれ設けられている。
【0074】
そして、4個のDr側、Pa側FACEグリル30a、30b内には、ルーバフィン31およびルーバモータ31a等から構成される左右方向揺動機構(図5参照)、およびルーバフィン34およびルーバモータ34a等から構成される上下方向揺動機構(図6参照)がそれぞれ設けられている。なお、本実施形態の第1空調ユニット1は、車両の車室内の一方側のDr側空調ゾーンと車両の車室内の他方側のPa側空調ゾーンとの温度調節を互いに独立して行うことが可能なエアコンユニットである。
【0075】
本実施形態のエアコン操作パネル70には、第1、第2温度設定器71、72、自動制御を指令するAUTOスイッチ73a、制御停止を指令するOFFスイッチ74a、第1、第2送風機12、22の風量レベルを設定するブロワスイッチ75、Dr側とPa側の温度制御を独立に行わせるDUALスイッチ76、吹出口モードを切り替えるMODEスイッチ77、冷凍サイクルの運転および運転停止を指令するA/Cスイッチ78、吸込口モードを切り替えるR/Fスイッチ79、フロントウインドの曇りを防止するためのFrDEFスイッチ80、リヤウインドの曇りを防止するためのRrDEFスイッチ81、および吹出状態可変装置を作動させるためのルーバ操作パネル82等が配設されている。これらの各種スイッチ類は、遠隔操作を行うリモートコントローラに設置しても良い。
【0076】
上記のうちルーバ操作パネル82には、吹出状態可変装置の作動モード切替スイッチ83と、切り替えられた作動モードに応じて点灯する5個のLCDと、Dr側の吹出状態可変装置のみを作動させるDr側押しボタン84と、Pa側の吹出状態可変装置のみを作動させるPa側押しボタン85と、Dr側,Pa側の吹出状態可変装置の両方を作動させるMATCH押しボタン86とが設置されている。
【0077】
なお、作動モード切替スイッチ83は、回すことにより、吹出状態可変装置の作動を停止する「STOP」、吹出状態可変装置の作動を自動制御(オートルーバ制御)する「AUTO」、後部座席側空調ゾーンへの配風量を増やす「Rr」、ルーバ左右方向揺動機構のみを作動させる「R−L/SWING」、ルーバ上下方向揺動機構のみを作動させる「U−D/SWING」等の各作動モードに切り替えることができる。ここで、87は各Dr側、Pa側センタFACE吹出口16a、16bを開閉するシャッタ機構(図示せず)を手動操作するための操作レバーであり、88は乗員が手動操作によりルーバフィン31、34の向きを変更するための摘みである。
【0078】
〔第2実施形態の空調制御方法〕
次に、本実施形態のエアコンECU6による空調制御方法を、図15ないし図20に基づいて説明する。ここで、図17はエアコンECU6の制御プログラムの一例を示したフローチャートである。
【0079】
先ず、データやフラグなどの初期化(リセット)を行う(ステップS31)。次に、データを読み込む。すなわち、各スイッチからのスイッチ信号や各センサからのセンサ信号を入力する(ステップS32)。
次に、上記のような記憶データおよび下記の数5の式、数6の式に基づいて、Dr側の目標吹出温度TAO(Dr)、およびPa側の目標吹出温度TAO(Pa)を演算する(ステップS33)。
【数5】
【数6】
【0080】
但し、Tset(Dr)およびTset(Pa)は、それぞれDr側空調ゾーンの設定温度、Pa側空調ゾーンの設定温度を表し、TR、TAM、TSは、それぞれ内気温度、外気温度、車室内への日射量を表す。Kset、KR、KAM、KS、Kd(Dr)およびKd(Pa)は、それぞれ温度設定ゲイン、内気温度ゲイン、外気温度ゲイン、日射量ゲイン、Dr側、Pa側空調ゾーンの温度差補正ゲインを表す。なお、Ka(Dr)、Ka(Pa)は、それぞれ外気温度TAMがDr側空調ゾーンおよびPa側空調ゾーンの各空調温度に及ぼす影響度合を補正するゲインを表し、CD(Dr)、CD(Pa)は上記影響度合に応じた定数、Cは補正定数を表す。ここで、Ka(Dr)、Ka(Pa)、CD(Dr)、CD(Pa)といった値は、車両の形や大きさ、第1空調ユニット1の吹出方向等様々なパラメータで変化する。
【0081】
次に、上記のステップS33で求めたDr側の目標吹出温度TAO(Dr)およびPa側の目標吹出温度TAO(Pa)に基づいて第1、第2送風機12、22に印加するブロワ制御電圧VAを演算する(ステップS34)。具体的には、上記のブロワ制御電圧VAは、目標吹出温度TAO(Dr)、TAO(Pa)にそれぞれ適合したブロワ制御電圧VA(Dr)、VA(Pa)を図18の特性図に基づいて求めると共に、それらのブロワ制御電圧VA(Dr)、VA(Pa)を平均化処理することにより得ている。
次に、上記のステップS33で求めたDr側の目標吹出温度TAO(Dr)およびPa側の目標吹出温度TAO(Pa)と、図19の特性図に示した目標吹出温度に対する吹出口モード特性とに基づいてDr側空調ゾーンおよびPa側空調ゾーンの各吹出口モードを決定する(ステップS35)。具体的には、吹出口モードの決定においては、上記の目標吹出温度TAO(Dr)、TAO(Pa)が低い温度から高い温度にかけて、FACEモード、B/Lモード、FOOTモードおよびF/Dモードとなるように決定されている。
【0082】
次に、Dr側A/Mドアの開度SW(Dr)(%)およびPa側A/Mドアの開度SW(Pa)(%)を演算する(ステップS36)。なお、このような開度SW(Dr)および開度SW(Pa)の演算は、Dr側の目標吹出温度TAO(Dr)およびPa側の目標吹出温度TAO(Pa)と、第1、第2エバ後温度センサ66、67にて検出したエバ後温度(TE)と、冷却水温度センサ62にて検出した冷却水温度(TW)と、下記の数7の式および数8の式とに基づいて行われる。
【数7】
SW(Dr)={TAO(Dr)−TE}×100/(TW−TE)
【数8】
SW(Pa)={TAO(Pa)−TE}×100/(TW−TE)
【0083】
次に、日射強度、日射方向、内気温度と設定温度との温度偏差、外気温度等の空調熱負荷に基づいて、各FACEグリルのルーバフィン31、34の目標揺動範囲(目標スイング範囲)を決定する(目標揺動範囲決定手段:ステップS37)。
次に、日射強度、日射方向、内気温度と設定温度との温度偏差、外気温度等の空調熱負荷に基づいて、各FACEグリルのルーバフィン31、34の目標揺動速度(目標スイング速度)を決定する(目標揺動速度決定手段:ステップS38)。
次に、図20のルーチンが起動して、各FACEグリルの風向制御を行う(吹出方向制御手段:ステップS39)。
【0084】
次に、決定されたブロワ制御電圧VAとなるように第1、第2送風機12、22に出力信号を送る。また、決定された吹出口モードとなるようにサーボモータ19a、29aを通電制御する。さらに、決定された開度SW(Dr)および開度SW(Pa)となるようにサーボモータ15a、25aを通電制御する。そして、決定された目標スイング範囲および目標スイング速度となるようにルーバモータ31a、34aに制御信号を送る(吹出状態制御手段:ステップS40)。
次に、ステップS41で所定の制御周期時間(τ)が経過した後に、ステップS32の処理に戻る。
【0085】
次に、エアコンECU6によるスイングルーバ風向制御を図20に基づいて説明する。ここで、図20はエアコンECU6によるスイングルーバ風向制御を示したフローチャートである。
【0086】
先ず、図20のルーチンが起動すると、吹出状態可変装置に制御指令を出す作動モード切替スイッチ83の操作位置が「AUTO」ポジションまたは「U−D/SWING」ポジションに例えば1秒間以上止めたか否かを判定する(ステップS51)。この判定結果がNOの場合には、ステップS53に進む。
【0087】
また、ステップS51の判定結果がYESの場合には、上下スイング可フラグを1とし、上下方向の風向制御を許可する(ステップS52)。具体的には、ルーバフィン34を上下方向にスイングさせてDr側センタFACE吹出口16aから車室内に吹き出す空調風の上下方向の風向(吹出方向)を変化させるようにルーバモータ34aに信号が送られる。
次に、上下スイング可フラグが1であるか否かを判定する(ステップS53)。このステップS53の判定結果がNOの場合には、上下方向の風向制御を禁止する。具体的には、Dr側センタFACE吹出口16aのルーバフィン34の移動を停止するようにルーバモータ34aの作動を停止する(ステップS54)。その後に、図20のルーチンを抜ける。
【0088】
また、ステップS53の判定結果がYESの場合には、空調風の上下方向の風向を上下方向位置センサ(ポテンショメータ)69にて検知したルーバフィン34の現在位置と前回の位置とからルーバフィン34の位置の変化量、つまりルーバフィン34の位置の変化速度を算出する(吹出状態検出手段:ステップS55)。
次に、乗員による上下方向の風向変更操作が行われたか否かを判定する(乗員操作判断手段:ステップS56)。具体的には、空調風の風向が所定のスイング範囲でスイング中の場合には、上下方向位置センサ69の検出値の変化量がルーバフィン34aの作動速度から考えて、あまりにも少ない、または、多い時、乗員による上下方向の風向変更操作があったものと判断する。すなわち、ルーバフィン34の位置の変化速度が目標変化速度(図17のフローチャートのS38で決定した目標スイング速度)と所定値以上異なる場合に、乗員による上下方向の風向変更操作があったものと判断する。
【0089】
このステップS56の判定結果がYESの場合には、上下スイング可フラグを0とし、上下方向の風向制御を禁止する(ステップS57)。その後に、ステップS54に進む。
また、ステップS56の判定結果がNOの場合には、ルーバフィン34の移動を自動制御するオートルーバ制御または上下方向ルーバ制御を行う(ステップS58)。その後に、図20のルーチンを抜ける。
【0090】
〔第2実施形態の効果〕
以上のように、本実施形態では、ルーバフィン31、34のスイング作動中に、空調風の吹出方向を変更するために乗員がルーバフィン31、34を直接操作すると、乗員が風向変更操作があったものと判断される。このように、乗員が風向変更操作があったものと判断した場合に、ルーバモータ31a、34aの作動を停止させることで、乗員が望む空調風の吹出方向となるようにルーバフィン31、34を向けた状態で固定することができる。
以上のように、乗員がルーバフィン31、34を直接操作するのみという一度の簡単な操作で、乗員が望む空調風の吹出方向となるようにルーバフィン31、34を向けた状態で固定することができるので、吹出方向を変更する操作(風向変更操作)を乗員に非常に分かり易く理解させることができる。
【0091】
なお、本実施形態では、Dr側センタFACE吹出口16aのルーバフィン34の上下方向の風向制御を例として説明したが、Dr側サイドFACE吹出口16aのルーバフィン34、Pa側センタFACE吹出口16bのルーバフィン34およびPa側サイドFACE吹出口16bのルーバフィン34の上下方向の風向制御も同様に制御することにより、同様な効果を達成することができる。
また、Dr側センタFACE吹出口16aのルーバフィン31、Dr側サイドFACE吹出口16aのルーバフィン31、Pa側センタFACE吹出口16bのルーバフィン31およびPa側サイドFACE吹出口16bのルーバフィン31の左右方向の風向制御も同様に制御することにより、同様な効果を達成することができる。
【0092】
〔第3実施形態〕
図21は本発明の第3実施形態を示したもので、エアコン操作パネルを示した図である。
【0093】
本実施形態では、アクチュエータ(ルーバモータ)としてステッピングモータを用い、しかもDr側、Pa側FACEグリル30a、30bの周囲に、スイングスイッチ89a、89b、90a、90bを設け、そのスイングスイッチ89a、89b、90a、90bの上方向指示または下方向指示および左方向指示または右方向指示により、ステッピングモータに信号を送り、上下方向にDr側、Pa側センタ、サイドFACE吹出口16a、16bから吹き出される空調風の吹出方向を変えている場合には、そのスイングスイッチ89a、89b、90a、90bの入力があったかどうかで判断している。
【0094】
〔第4実施形態〕
図22は本発明の第4実施形態を示したもので、エアコン操作パネルを示した図である。
【0095】
本実施形態では、Dr側とPa側とにそれぞれルーバ操作パネル82を設けている。そして、Dr側、Pa側のルーバ操作パネル82には、Dr側、Pa側センタFACE吹出口16a、16bの吹出状態可変装置とDr側、Pa側サイドFACE吹出口16a、16bの吹出状態可変装置とを独立して制御できるように、センタルーバスイッチ91とサイドルーバスイッチ92とがそれぞれ設けられている。
【0096】
〔第5実施形態〕
図23および図24は本発明の第5実施形態を示したもので、図23は吹出状態可変装置を示した図である。
【0097】
本実施形態の吹出状態可変装置は、複数のルーバ201、ルーバモータ202、リンクプレート203およびリンクレバー204等から構成されている。ルーバ201は、FACE吹出口205を形成するFACEグリル206に回転自在に支持された回転軸207を中心として回動可能に設けられ、回転軸207と反対側の上端部に図示上方へ突出するピン208を具備している。
ルーバモータ202は、出力軸(図示せず)の先端外周にギヤ209が固定されている。リンクプレート203は、FACEグリル206の上部に配されて、その一端部にルーバモータ202のギヤ209と噛み合うラック210を具備し、出力軸の回転に伴ってFACEグリル206の前後にスライド可能に設けられている。また、リンクプレート203には、複数本(ルーバ201の個数と同じ)のリンク溝211が形成されている。
リンクレバー204は、リンクプレート203の動きをルーバ201に伝達するもので、ルーバ201と同じ個数だけ設けられ、リンクプレート203のリンク溝211に嵌合するピン212と、ルーバ201に具備されたピン208が嵌合するガイド溝213とが形成されている。
【0098】
本実施形態では、ルーバモータ202の出力軸が回転してリンクプレート203がFACEグリル206上を前方へ移動すると、図24(a)に示したように、各リンクレバー204を介して各ルーバ201の向きがそれぞれ乗員方向を向いた位置に駆動される。これにより、センタFACEグリル206とサイドFACEグリル206より空調風が乗員方向へ集中的に吹き出される(集中モード)。
一方、ルーバモータ202の出力軸が逆回転してリンクプレート203がFACEグリル206上を後方へ移動すると、図24(b)に示したように、各リンクレバー204を介して各ルーバ201の向きが外側へ拡がるように駆動される。これにより、センタFACEグリル206とサイドFACEグリル206より吹き出される空調風がそれぞれ拡散される(拡散モード)。
この吹出状態可変装置によれば、集中モードを選択することで空調風を集中的に乗員に向けることができる。また、拡散モードを選択すれば、空調ゾーン内に広く空調風を当てることができると共に、乗員への空調風の配風量を減らすこともできる。
【0099】
〔第6実施形態〕
図25は本発明の第6実施形態を示したもので、吹出状態可変装置を示した図である。
本実施形態の吹出状態可変装置は、ケース221と、このケース221に対して回動自在に組み付けられたドラム222と、このドラム222に取り付けられたルーバ223等から構成されている。この吹出状態可変装置は、ケース221に対しドラム222を回動させることにより、ドラム222と一体的にルーバ223の向きが変化して空調風の吹出方向を変えることができる。
【0100】
〔第7実施形態〕
図26ないし図30は本発明の第7実施形態を示したもので、図26および図27(a)は吹出状態可変装置を示した図である。
本実施形態の吹出状態可変装置は、細長い円筒状態に設けられたルーバ本体301と、このルーバ本体301を回転駆動するルーバモータ302とを備えている。ルーバ本体301には、図27(b)に示したように、回転中心より偏心した位置に一定幅の円弧状を成す空気通路301aが形成されている。
この吹出状態可変装置は、例えば図28に示したように、1BOXカー等の車両303の空気吹出口304(図27(a)参照)に取り付けて使用することができる。
【0101】
ルーバ本体301は、ルーバモータ302により回転駆動されることで、空気吹出口304より吹き出される空調風の吹出方向を上下方向の任意の方向に選択できる。例えば図29(a)に示す位置では、主に乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すことができる。また、図29(b)に示す位置では、主に乗員の下半身に向けて空調風を吹き出すことができる。そして、図29(c)に示す位置では、車両303の天井方向に向けて空調風を吹き出すことができる。さらに、図29(d)に示す位置では、空気吹出口304を閉塞することができる。
【0102】
また、ルーバ本体301をスイングさせると、図30(a)〜図30(c)に示したように、ルーバ本体301のスイング幅に応じて、空気吹出口304より吹き出される空調風を所定のスイング範囲で吹き出すことができる。
したがって、本実施形態においても、ルーバ本体301を乗員が直接操作することにより、ルーバモータ302の作動を開始したり、ルーバモータ302の作動を停止したりすることができる。これにより、空調風の吹出方向を乗員の希望する吹出方向に固定することができる。
【0103】
〔第8実施形態〕
図31ないし図34は本発明の第8実施形態を示したもので、図31は吹出状態可変装置を示した図である。
本実施形態の吹出状態可変装置は、空調風の吹出領域を車幅方向で変更できるもので、FACE吹出口307を形成するケース308に対し回転自在に取り付けられた回転バルブ309を備えている。ケース308には、背面に接続された2本の送風ダクト310より空調風が供給される。ケース308の前面には、格子状のFACEグリル311が取り付けられている。
回転バルブ309は、両端に取り付けられた調整ダイヤル312、および図示しないバルブモータによって回転位置を調整することができ、例えば図32(a)〜図32(c)および図33(a)〜図33(c)に示したように、回転バルブ309の回転位置によりFACE吹出口307の開口状態を変更することにより、空調風の吹出領域を車幅方向で変更することができる。
【0104】
したがって、本実施形態においても、回転バルブ309を乗員が調整ダイヤル312を直接操作することにより、バルブモータの作動を開始したり、バルブモータの作動を停止したりすることができる。これにより、空調風の吹出領域を乗員の希望する吹出領域に固定することができる。
また、図34(a)〜図34(e)に示したように、回転バルブ309の形状を変更することで多様な吹出状態を得ることが可能である。なお、この回転バルブ309を第7実施形態のルーバ本体301として使用することもできる。
【0105】
〔他の実施形態〕
本実施形態では、吹出口から吹き出される空調風の吹出状態を変更する吹出状態可変手段として、空調風の吹出方向または配風量(吹出風量)を変更する吹出方向可変手段または吹出風量可変手段を使用した例を説明したが、吹出状態可変手段として、空調風の吹出位置(吹出高さ、吹出幅)を変更する吹出位置可変手段を使用しても良い。
【0106】
また、ルーバ駆動手段としてステッピングモータを用い、乗員がスイッチを操作することによってステッピングモータにパルスが送られ、ルーバの向きが変わる場合には、直接ルーバの位置を検出できるわけではないが、パルスの数をカウントすることによりルーバ移動量を演算できるため、ポテンショメータの代わりに吹出状態検出手段として利用できる。この場合には、スイッチ以外では乗員がルーバを操作できないようにすることが望ましい。
【0107】
本実施形態では、第1空調ユニット1と第2空調ユニット2とを空調制御するために、共通の日射センサ63を使用したが、第1空調ゾーンと第2空調ゾーンとのそれぞれに日射センサを配置し、これらの日射センサにて検出された日射量に基づいて、第1空調ユニット1と第2空調ユニット2とのそれぞれを空調制御しても良い。
【0108】
本実施形態では、本発明を1BOXカー等の車両100に搭載される車両用空調装置に適用した例を説明したが、本発明をバス車両や鉄道車両等の大型車両に搭載される車両用空調装置に使用しても良い。
本実施形態では、ルーバフィン31、34のスイング範囲を一定のスイング範囲となるようにオートルーバ制御したが、空調ゾーン内の冷房熱負荷が小さければ小さい程、目標位置(オートスイングの中心位置)を中心とした、ルーバフィン31、34の揺動範囲(スイング範囲)を広く設定するようにしても良い。
【0109】
本実施形態では、4個の中席側、後席側FACEグリル30を車両100の天井部の、中席側、後席側の車両幅方向の両側に固定したが、各グリルを左右方向に回動自在に支持された状態で格納部材に取り付けても良く、また各グリルを上下方向に回動自在に支持された状態で格納部材に取り付けても良い。この場合には、グリル本体を吹出状態可変手段としてスイングさせるようにしても良い。
本実施形態では、左右方向に一文字状にスイングするルーバフィン31と、上下方向に一文字状にスイングするルーバフィン34とを設けたが、何れか一方でも良い。また、吹出状態可変手段として、8の字型、∞の字型や×の字型にスイングするルーバフィンを設けても良い。
【0110】
本実施形態では、中席側の乗員が中席102の右側(一方側)に座っているとして、右側の中席側FACE吹出口26のルーバフィン31をスイングさせたい時、あるいはスイングを止めたい時に、そのルーバフィン31に触れてスイング操作したり、ストップさせることでその右側の中席側FACE吹出口26のルーバフィン31のみの揺動状態を変更するようにした。しかし、一方側の中席側FACE吹出口26のルーバフィン31をスイング操作またはストップしたら一方側だけでなく、他方側(左側)の中席側FACE吹出口26のルーバフィン31もスイングしたり、ストップしたりするように一方側のルーバフィン31の揺動状態に連動させるようにしても良い。なお、後席側FACE吹出口27においても上記と同様に左右側のルーバフィン31を連動させても良く、前席側FACE吹出口16に吹出状態可変装置を設けた場合も同様である。また、ルーバフィン34についても同様である。さらに、前席側、中席側または後席側の乗員に向けて空調風を吹き出すことが可能な吹出口が3個以上ある場合も同様である。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両用空調装置の全体構成を示した構成図である(第1実施形態)。
【図2】車両用空調装置を搭載した車両の車室内を示した概略図である(第1実施形態)。
【図3】車両のインストルメントパネルを示した正面図である(第1実施形態)。
【図4】吹出状態可変装置の全体構成を示した概略図である(第1実施形態)。
【図5】左右方向揺動機構の構成を示した概略図である(第1実施形態)。
【図6】上下方向揺動機構の構成を示した概略図である(第1実施形態)。
【図7】エアコンECUの制御プログラムの一例を示したフローチャートである(第1実施形態)。
【図8】TAO(Fr)と内外気モードとの関係を表す特性図である(第1実施形態)。
【図9】TAO(Fr)と吹出口モードとの関係を表す特性図である(第1実施形態)。
【図10】TAO(Fr)とブロワ電圧との関係を表す特性図である(第1実施形態)。
【図11】TAO(Rr)と吹出口モードとの関係を表す特性図である(第1実施形態)。
【図12】TAO(Rr)とブロワ電圧との関係を表す特性図である(第1実施形態)。
【図13】スイングルーバ制御を示したフローチャートである(第1実施形態)。
【図14】吹出状態可変装置の作動説明図である(第1実施形態)。
【図15】車両のインストルメントパネルを示した正面図である(第2実施形態)。
【図16】エアコン操作パネルを示した正面図である(第2実施形態)。
【図17】エアコンECUの制御プログラムの一例を示したフローチャートである(第2実施形態)。
【図18】目標吹出温度に対するブロワ制御電圧特性を示した特性図である(第2実施形態)。
【図19】目標吹出温度に対する吹出口モード特性を示した特性図である(第2実施形態)。
【図20】エアコンECUによるスイングルーバ風向制御を示したフローチャートである(第2実施形態)。
【図21】エアコン操作パネルを示した正面図である(第3実施形態)。
【図22】エアコン操作パネルを示した正面図である(第4実施形態)。
【図23】吹出状態可変装置を示した斜視図である(第5実施形態)。
【図24】(a)、(b)は吹出状態可変装置の作動説明図である(第5実施形態)。
【図25】吹出状態可変装置を示した断面図である(第6実施形態)。
【図26】吹出状態可変装置を示した斜視図である(第7実施形態)。
【図27】(a)は吹出状態可変装置を示した断面図で、(b)はルーバ本体を示した断面図である(第7実施形態)。
【図28】吹出状態可変装置の取付位置を示した車両の模式図である(第7実施形態)。
【図29】(a)〜(d)は吹出状態可変装置の作動説明図である(第7実施形態)。
【図30】(a)〜(c)は空調風のスイング範囲を示した模式図である(第7実施形態)。
【図31】吹出状態可変装置を示した分解斜視図である(第8実施形態)。
【図32】(a)〜(c)は吹出状態可変装置の作動説明図である(第8実施形態)。
【図33】(a)〜(c)は吹出状態可変装置の作動説明図である(第8実施形態)。
【図34】(a)〜(e)は回転バルブの変形例を示した斜視図である(第8実施形態)。
【符号の説明】
2 第2空調ユニット(空調ユニット)
6 エアコンECU(吹出状態制御手段)
20 第2空調ダクト(空調ダクト)
26 中席側FACE吹出口(吹出口)
27 後席側FACE吹出口(吹出口)
30 中席側、後席側FACEグリル
31 ルーバフィン(吹出状態可変手段)
34 ルーバフィン(吹出状態可変手段)
68 左右方向位置センサ(吹出状態検出手段)
69 上下方向位置センサ(吹出状態検出手段)
31a ルーバモータ(アクチュエータ)
34a ルーバモータ(アクチュエータ)
Claims (8)
- (a)車室内に空調風を吹き出すための吹出口を有する空調ダクトと、
(b)前記吹出口から車室内に吹き出される空調風の吹出方向、吹出風量または吹出位置等の吹出状態を変更することが可能な吹出状態可変手段と、
(c)この吹出状態可変手段を揺動させるアクチュエータと、
(d)前記吹出状態可変手段の位置を検知して空調風の吹出状態を検出する吹出状態検出手段と、
(e)前記アクチュエータの作動を継続している時、前記吹出状態検出手段にて検知する前記吹出状態可変手段の位置が変化しない場合に、前記アクチュエータの作動を停止させる吹出状態制御手段と
を備えた車両用空調装置。 - 請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記吹出状態制御手段は、前記吹出状態検出手段にて検知する前記吹出状態可変手段の位置の変化速度が設定速度以下に低下した場合に、前記アクチュエータの作動を停止させることを特徴とする車両用空調装置。 - (a)車室内に空調風を吹き出すための吹出口を有する空調ダクトと、
(b)前記吹出口から車室内に吹き出される空調風の吹出方向、吹出風量または吹出位置等の吹出状態を変更することが可能な吹出状態可変手段と、
(c)この吹出状態可変手段を往復方向に駆動するアクチュエータと、
(d)前記吹出状態可変手段の位置を検知して空調風の吹出状態を検出する吹出状態検出手段と、
(e)前記アクチュエータの作動が停止している時、前記吹出状態検出手段にて検知する前記吹出状態可変手段の位置が変化した場合に、前記アクチュエータの作動を開始させる吹出状態制御手段と
を備えた車両用空調装置。 - 請求項3に記載の車両用空調装置において、
前記吹出状態制御手段は、前記吹出状態検出手段にて検知する前記吹出状態可変手段の位置が1往復分だけ変化した場合に、前記アクチュエータの作動を開始させることを特徴とする車両用空調装置。 - 請求項3に記載の車両用空調装置において、
前記吹出状態制御手段は、設定時間以内で、且つ前記吹出状態検出手段にて検知する前記吹出状態可変手段の位置が往復方向に設定範囲以上変化した場合に、前記アクチュエータの作動を開始させることを特徴とする車両用空調装置。 - 請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
前記吹出状態可変手段は、前記吹出口を形成するグリル内に移動自在に取り付けられた複数のルーバフィンであり、
前記アクチュエータは、前記複数のルーバフィンを少なくとも車両の左右方向または上下方向にスイングさせるルーバモータであることを特徴とする車両用空調装置。 - (a)車室内に空調風を吹き出すための吹出口を有する空調ダクトと、
(b)前記吹出口から車室内に吹き出される空調風の吹出方向、吹出風量または吹出位置等の吹出状態を変更することが可能な吹出状態可変手段と、
(c)この吹出状態可変手段を揺動させるアクチュエータと、
(d)前記吹出状態可変手段の位置を検知して空調風の吹出状態を検出する吹出状態検出手段と、
(e)この吹出状態検出手段にて検知した前記吹出状態可変手段の位置の変化に基づいて、前記吹出状態可変手段を乗員が操作したか否かを判断する乗員操作判断手段を有し、
前記アクチュエータの作動を継続している時、前記乗員操作判断手段にて前記吹出状態可変手段を乗員が操作したと判断した場合に、前記アクチュエータの作動を停止させる吹出状態制御手段と
を備えた車両用空調装置。 - 請求項7に記載の車両用空調装置において、
前記乗員操作判断手段は、前記アクチュエータの作動を継続している時、前記吹出状態検出手段にて検知する前記吹出状態可変手段の位置の変化速度が目標変化速度と異なる場合に、乗員が前記吹出状態可変手段を直接操作したと判断することを特徴とする車両用空調装置。
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