JP3893083B2 - ポリオレフィン系農業用フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐候性、耐久性、耐農薬性に優れ、かつ蜜蜂交配等を利用した作物栽培において制限が少ない農業用フィルムに関するものである。
【0002】
【背景技術】
近年、農業用作物を半促成又は抑制栽培して、その市場性、生産性を高めるため、農業用塩化ビニルフィルム(以下、農ビという)やポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びポリオレフィン系樹脂を主体とした農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム(以下、農ポリ、農酢ビという)などの農業用被覆材による被覆下に有用植物を栽培する、いわゆるハウス栽培やトンネル栽培が盛んに行われている。
【0003】
なかでも、ポリオレフィン系樹脂を主体とした農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムは、密度が塩化ビニル樹脂より小さいために軽く、焼却しても有毒ガスの発生が少なく、更にインフレーション成型法により幅継ぎの為の接着加工を必要としない広幅フィルムが安価に提供できることなどから盛んに利用されるようになってきている。これら、農ポリ、農酢ビ等は、作業性、防塵性および廃棄処理に関して農ビより優位性があるにもかかわらず、透明性、保温性、耐水白化性、およびハウス密着性等が劣り、その改良が課題となっている。
【0004】
さて、この様な農業用ハウスは年々大型化しており、ハウスをフィルムで覆うためのフィルム展張作業は多くの人手を要するようになってきている。その一方で、農業従事者の数は年々減少すると共に高齢化が進行しており、毎年の展張作業に人手を確保することは容易ではない状況にある。この様な状況に鑑み、ハウスに展張するフィルムは展張作業が容易で極力張り替えまでの使用期間の長いフィルム、言いかえれば、2年以上の長寿命を有し、長期間にわたり当初性能を保持できる高性能な農業用フィルムの開発が求められている。この様な要求に対して、フィルムが具備し、長期間保持すべき性能としては、その用途に応じて、例えば透明性、耐農薬性、耐候性などの様々な性能が要求される。従来より、これらの性能を成型品に付与するため、様々な添加剤を含有する樹脂組成物が提案されている。
【0005】
これら農業用フィルムに添加される耐候性改良を目的とした添加剤のうち代表的なものとしてヒンダードアミン系の耐候剤や紫外線吸収剤が挙げられる。
【0006】
これら農業用フィルム中にヒンダードアミン系化合物を耐候剤として含有させた樹脂組成物は広く用いられており、従来、上記農業用フィルムには、一般的にはピペリジン環を1分子中に2つ以上有し、分子量500以上であるヒンダードアミン系耐候剤が挙げられる。既に、ヒンダードアミン系耐候剤は、例えば、特開昭59−86645号公報や特開平2−167350号公報)に開示されているように、樹脂中に少量添加することでポリオレフィン系樹脂の耐候性が著しく向上すると共に、その効果が長期間保たれ、ポリオレフィン系樹脂フィルムの光沢や色調の変化が著しく抑制されることから好ましく使用されている。しかしながら、このようなヒンダードアミン系耐候剤含有樹脂組成物から得られる成形品は、使用時、例えば酸性雨や農薬に曝露される条件でその効果を著しく低下させ、耐酸性、耐農薬性を要求される農業用フィルムなどの用途には満足に使用し得るものではなかった。
【0007】
これに対し更なる効果の持続性を目的としてエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体を添加した農業用フィルム(例えば特開平5−112725号公報及び特開平5−124161号公報等)が考案されている。このエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、その製造方法、分子構造から通常のヒンダードアミン系耐候剤とは明確に区別される(例えば特許第2695971号公報及び特許第2695975号公報)。しかしながら、このエチレン系共重合体は樹脂との相溶性は高く、その添加による耐候性改良効果は認められるものの、高コストである為、添加量を増やすことが難しい等の問題がある。添加量が低い場合、化合物総重量に占めるヒンダードアミン基の割合が、通常のヒンダードアミン系耐候剤と比較して低いため、耐候性改良効果が低く、必ずしも一般的に用いられているとはいえなかった。
【0008】
農業用フィルムとして使用する場合においては、硫黄系、リン酸系、ハロゲン系などの酸性物質からなる農薬が多く使用され、これが作用して例えばヒンダードアミン化合物などはその作用効果が低下し、それが原因となって耐候性が低下する。これら樹脂劣化に伴いフィルムの透明性も悪化するため、これを解決する目的で、例えば、特開昭63−175072号公報には、熱可塑性樹脂に光安定剤であるヒンダードアミン系化合物とハイドロタルサイト類化合物とを配合した、農薬耐性を付与した農業用フィルムが提案されており、特開平8−48822号公報には、立体障害アミンおよび金属酸化物または水酸化物を含有する、耐候性および有害生物防除剤耐性を有するポリオレフィン(コポリマー)フィルムが提案されており、特開平8−224049号公報には、ヒンダードアミン系化合物、ハイドロタルサイト類化合物および紫外線吸収剤を含有し、無機硫黄剤で土壌または植物を処理する施設園芸ハウス・トンネル栽培に用いられることを特徴とするポリオレフィン系樹脂被覆フィルムが提案されているが、未だ満足できる性能のものは得られていない。
【0009】
また、特開2001−2842号公報には、トリアジン系紫外線吸収剤をポリオレフィン系樹脂100重量部に対し0.1〜1.0重量部とヒンダードアミンを側鎖に有するエチレン系共重合体を添加した樹脂組成物が提案されている。しかしながら、該公開公報記載の添加量で農業用として一般的な100μm以上の農業用フィルムを作成した場合、内部での作物栽培、特に蜜蜂交配等に制限が生じることが分かった。
【0010】
通常、ハウス内で作物を栽培する場合、ハウス内の入る光の波長、強度により作物の生成、交配に使用する蜜蜂の活性等が影響を受ける。特に、紫外線透過量は重要であり、紫外線を一定量以上カットしたフィルム被覆下では、蜜蜂の方向感覚が無くなる為、巣に帰ることが出来なくなり、蜜蜂利用による受粉作業には問題がある。
【0011】
一般に、長期耐候性を求められる農業用外張りフィルムはフィルム厚みが100μm以上である。しかし、特開2001−2842号公報記載の樹脂組成物では、具体的には0.5重量部や0.8重量部(樹脂100重量部当たり:80μmのシート)のトリアジン系化合物を含有しており、この処方で長期耐候性に適した厚みのフィルムに適応しても、実際には作物の栽培に制限が生じてしまい、紫外線を必要としない特殊用途以外ではほとんど利用できない。
【0012】
従って、本発明の目的は、農業用フィルムに使用した場合、耐候性、耐久性、耐農薬性に優れ、かつ作物栽培において制限が少ない農業用被覆材用フィルムを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、フィルム総厚みが100μm以上であり、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする農業用フィルムにおいては、ポリオレフィン系樹脂に下記式(1)で示される特定の紫外線吸収剤を一定濃度以下配合すること、又はフィルム厚さと式(1)の紫外線吸収剤の添加量の関係を一定範囲に制御することにより、上記課題の解決、すなわち酸性物質である農薬によるフィルムの劣化を有効に防止しうるとともに、フィルム蜜蜂利用の受粉等の作物栽培性を付与できることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、フィルム総厚みが100μm以上であり、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする農業用フィルムであって、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、下記式(1)で表されるトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤を0.1重量部未満0.001重量部以上含有してなることを特徴とするポリオレフィン系農業用フィルムに存する。
【0015】
【化4】
・・・(1)
【0016】
(式中、R1〜R5は、それぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
【0017】
または、本発明は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする農業用フィルムであって、全フィルムの総厚みをAμm、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対する上記式(1)で表されるトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤の含有量をB重量部とした場合のA×Bの値が、1≦A×B<15の範囲であることを特徴とするポリオレフィン系農業用フィルムに存する。
【0018】
また、本発明は、上記紫外線吸収剤に加え、エチレン(A)と下記式(2)で表される環状アミノビニル化合物(B)との共重合体を2〜10重量部含有してなることを特徴とする、前記ポリオレフィン系農業用フィルムを提供する。
【0019】
【化5】
・・・(2)
【0020】
(式中、R6及びR7は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R8は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0021】
また、本発明は、前記式(1)におけるR1がオクチル基であり、R2〜R5がメチル基である、前記ポリオレフィン系農業用フィルムを提供する。
また、本発明は、前記式(1)におけるR1がヘキシル基であり、R2〜R5が水素原子である、前記ポリオレフィン系農業用フィルムを提供する。
また、本発明は、前記式(2)におけるR6及びR7がそれぞれメチル基であり、R8が水素原子である、前記ポリオレフィン系農業用フィルムを提供する。
また、本発明では、前記紫外線吸収剤に加え、さらに特定のヒンダードアミン系化合物を光安定剤として併用することにより、耐候剤のブリードアウトを抑制したまま耐候性を格段に高めることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に使用されるポリオレフィン系樹脂としては、α−オレフィン系の単独重合体、α−オレフィンを主成分とする異種単量体との共重合体、α−オレフィンと共役ジエンまたは非共役ジエン等の多不飽和化合物、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル等との共重合体などがあげられ、例えば高密度、低密度または直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等が挙げられる。これらのうち、密度が0.910〜0.935の低密度ポリエチレンやエチレン−α−オレフィン共重合体および酢酸ビニル含有量が30重量%以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体が、透明性や耐候性および価格の点から農業用フィルムとして好ましい。
また、本発明において、ポリオレフィン系樹脂の少なくとも一成分としてメタロセン触媒で共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合樹脂を使用することができる。
【0023】
これは、通常、メタロセンポリエチレンといわれているものであり、エチレンとブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテンなどのα−オレフィンとの共重合体であり、例えば下記の(A法)や(B法)により得られる。
(A法)特開昭58−19309号などに記載されている方法、即ちメタロセン触媒、特にメタロセン・アルモキサン触媒、又は、例えば、国際公開公報WO92/01723号明細書等に開示されているような、メタロセン化合物と、メタロセン化合物と反応して安定なイオンとなる化合物からなる触媒、又は、更には、特開平5−295020号、特開平5−295022号などに記載されているような、メタロセン化合物を無機化合物に担持させた触媒などを使用して、主成分のエチレンと従成分の炭素数4〜20のα−オレフィンとを、得られる共重合体の密度が0.880〜0.930g/cm3となるように共重合させる方法である。この重合方法としては、高圧イオン重合法、溶液法、スラリー法、気相法などを挙げることができる。これらの中では高圧イオン重合法で製造するのが好ましい。
【0024】
なお、この高圧イオン重合法とは、特開昭56−18607号、特開昭58−25106号の各公報に記載されているが、圧力が100kg/cm2 以上、好ましくは300〜1500kg/cm2 で、温度が125℃以上、好ましくは150〜200℃の反応条件下に高圧イオン重合法により製造されるものである。
(B法)特開平6−9724号などに記載されているメタロセン触媒成分、有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分、微粒子状担体、および必要に応じて有機アルミニウム化合物触媒成分、イオン化イオン性化合物触媒成分を含む、オレフィン重合用触媒の存在下に、気相、またはスラリー状あるいは溶液状の液相で種々の条件でエチレンとα−オレフィン、具体的には炭素原子数3〜20のα−オレフィンとを、得られる共重合体の密度が0.900〜0.930g/ cm3となるように共重合させる方法。
フィルムの良好な初期透明性及び透明持続性が得られる点では上記(A)法、(B)法に拘泥されることなく、メタロセン化合物を用いて重合されたポリオレフィン系樹脂、即ち、メタロセンポリエチレンを用いることが出来るが、(A)法による樹脂の法が好ましい。
【0025】
これらメタロセンポリエチレンを始めとするポリエチレン樹脂は、温度上昇溶離分別(TREF:Temperature Rising Elution Fractionation)、MFR、密度、分子量分布、その他各種物性の測定によって分類される。
【0026】
温度上昇溶離分別(TREF)による溶出曲線の測定
上記温度上昇溶離分別(Temperature Rising Elution Fractionation:TREF)による溶出曲線の測定は、「Journal of Applied Polymer Science.Vol 126,4, 217−4,231(1981)」、「高分子討論会予稿集2P1C09(昭和63年)」等の文献に記載されている原理に基づいて実施される。得られる微分溶出曲線で特定されるピークのうち、そのピーク温度が20〜100℃、好ましくは40〜80℃の範囲内にあるものが1つであるメタロセンポリエチレンを用いるのが、透明性を得る上で好ましい。なお、該ピーク温度の溶出温度以外の温度において溶出するものが実質的に該溶出曲線に存在することがある。上記溶出曲線のピーク温度内のピークが2つ以上存在すると透明性が劣りやすい。また、存在していない場合にはフィルムがべたつくことになる。
【0027】
本発明のポリオレフィン系樹脂の少なくとも一成分として使用されるエチレン−α−オレフィン共重合体は、以下の物性を示すものである。
メルトフローレート(MFR)
JIS−K7210により測定されたMFRが0.01〜10g/10分、好ましくは0.1〜5g/10分の値を示すものである。該MFRがこの範囲より大きいと成形時にフィルムが蛇行し安定しない。また、該MFRがこの範囲より小さすぎると成形時の樹脂圧力が増大し、成形機に負荷がかかるため、生産量を減少させて圧力の増大を抑制しなければならず、実用性に乏しい。
【0028】
密度
JIS−K7112により測定された密度が0.880〜0.930g/cm3 、好ましくは0.880〜0.920g/cm3 の値を示すものである。該密度がこの範囲より大きいと透明性が悪化する。また、密度がこの範囲より小さいと、フィルム表面のべたつきによりブロッキングが生じ実用性に乏しくなる。
【0029】
分子量分布
ゲルパーミュレーションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は1.5〜3.5、好ましくは1.5〜3.0の値を示すものである。該分子量分布がこの範囲より大きいと機械的強度が低下し好ましくない。該分子量分布がこの範囲より小さいと成形時にフィルムが蛇行し安定しない。
【0030】
本発明で用いられるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂は、酢酸ビニル含有量が10〜25重量%の範囲であり、好ましくは12〜20重量%の範囲である。酢酸ビニル含有量がこの範囲より小さいと、得られるフィルムが硬くなりハウスへの展張時にシワや弛みが出来やすく、防曇性に悪影響が出るため実用性に乏しく、また、酢酸ビニル含有量がこの範囲より大きいと、樹脂の融点が低いためハウス展張時に夏場の高温下でフィルムが弛み、風でばたつきハウス構造体との擦れ等により破れが生じやすくなるため実用性に乏しい。
【0031】
本発明における基材となるポリオレフィン系樹脂組成物は、トリアジン系紫外線吸収剤を含有することを特徴とする。本発明で用いられるトリアジン系紫外線吸収剤は、下記式(1)で表されるトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤である。
【0032】
【化6】
・・・(1)
【0033】
ここで、式(1)中、R1〜R5はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。好ましくはR1〜R5がそれぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基を表す。より好ましくは、R1は炭素数6〜10のアルキル基、特に好ましくはオクチル基又はヘキシル基であり、R2〜R5は水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基、特に好ましくはメチル基又は水素原子である。
更に好ましい具体的な化合物として、前記式(1)におけるR1がオクチル基であり、R2〜R5がメチル基である、化合物(2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール;(サイテックス社製:サイアソーブUV1164))等が挙げられる。又は、前記式(1)にけるR1がヘキシル基であり、R2〜R5が水素原子である、化合物(2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール;(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製TINUVIN1577FF))が挙げられる。
【0034】
上記式(1)において、R1の炭素数が上記範囲未満ではブリードアウトしやすくなるので好ましくなく、上記範囲を超えると耐候性が劣るので好ましくない。R2〜R5の炭素数が上記範囲を超えると耐候性が劣るので好ましくない。
【0035】
上記式(1)で表されるトリアリールトリアジン系紫外線吸収剤の入手方法は特に限定されず、市販のものを使用することができる。
【0036】
本発明のポリオレフィン系農業用フィルム中の、上記式(1)で表されるトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し0.1重量部未満0.001重量部以上、好ましくは0.001〜0.09重量部、更に好ましくは0.01〜0.07重量部である。含有量が上記範囲未満では耐候性改良効果が低く、上記範囲を超えると一般的な農業用フィルムである100μm以上、特に120μm以上、更には140μm以上の農業用フィルムに適応した場合、蜜蜂利用による受粉等の作物栽培性に制限が生じやすい為、特殊用途以外では利用しにくい。
尚、上記の含有量は、農業用フィルムのフィルム全体(ポリオレフィン系樹脂からなるフィルムを意味し、塗布防曇層等の塗布層は除く)中におけるポリオレフィン系樹脂と同じくフィルム全体中におけるトリアジン型紫外線吸収剤の含有量の関係を意味する。
【0037】
または、本願発明においては、農業用フィルムの総厚みをAμm、上記式(1)で表されるトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤のポリオレフィン系樹脂100重量部に対する含有量を、B重量部としたとき、1≦A×B<15、好ましくは、2≦A×B≦13、更に好ましくは3≦A×B≦10の範囲となるようにする。この範囲を超えると、蜜蜂利用による受粉等の作物栽培性に制限が生じる為、特殊用途以外では利用できない。またこの範囲未満であると、本願目的であるフィルムの耐候性を維持することが難しくなる。
この場合も、ポリオレフィン系樹脂の量と、トリアジン型紫外線吸収剤の量は、フィルム全体における量を意味する。
【0038】
本発明において用いられる前記トリアリールトリアジン型紫外線吸収剤は、コスト的な観点から、例えば多層フィルムに使用される場合、必ずしも多層フィルムの全層に含有されている必要はなく、少なくとも1層含有されていればよい。この場合、その1層中におけるポリオレフィン系樹脂に対するトリアリールトリアジンの量は、上記範囲内でなくてもよい。たとえば、一層だけにトリアジン型紫外線吸収剤を、上記範囲より多量となるように配合し、他層には配合しない場合であって、フィルム全体のポリオレフィン系樹脂とトリアジン型紫外線吸収剤が上記重量比の範囲にある態様は、本発明の範囲に属するものであり、好適な態様である。
【0039】
また、このトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤は、通常用いられる一種又は二種以上のその他の紫外線吸収剤と組み合わせて用いることができる。更に、トリアリールトリアジン型紫外線吸収剤を含有しない層に対して、通常用いられる一種又は二種以上の紫外線吸収剤を用いることもできる。トリアリールトリアジン型紫外線吸収剤は、もちろん全層に含有させてもよいが、例えばハウス中間層に含有させ、その他の層には農業用として通常配合される紫外線吸収剤を含有させることもできる。また、同一の層にトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤と農業用として通常配合される紫外線吸収剤を含有させることもできる。その場合は全層にトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤を用いる場合よりコスト的に有利になる。
【0040】
併用可能な農業用として通常配合される紫外線吸収剤は、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5'−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル) ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ第三ブチルフェニル) ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−第三ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'.5'−ジクミルフェニル) ベンゾトリアゾール、2,2'−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリル)フェノール等の2−(2'−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3',5'−ジ第三ブチル−4'−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3',5'−ジ第三ブチル−4'−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2'−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4'−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類等があげられる。これらの紫外線吸収剤は、一種又は二種以上で用いられる。
【0041】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物には、上記式(1)で表されるトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤に加え、さらに光安定剤として、エチレン(A)と下記式(2)で表される環状アミノビニル化合物(B)との共重合体(以下、「エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体」という)を含有させることができる。該エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体もまたブリードアウトしにくく、これを前記式(1)で表される紫外線吸収剤と併用することにより、ブリードアウトを抑制したまま格段に高い耐候性を得ることができる。
【0042】
【化7】
・・・(2)
【0043】
上記式(2)中、R6及びR7は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R8 は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。好ましくは、R6及びR7はそれぞれメチル基であり、R8 は水素原子である。
【0044】
式(2)で表されるビニル化合物(B)は公知であり、公知の方法、例えば特公昭47−8539号、特開昭48−65180号公報等に記載された方法にて合成することができる。
【0045】
式(2)で表されるビニル化合物の代表例としては、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−エチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1−エチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等を挙げることができる。
【0046】
前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体の好ましいものとしては、そのエチレン(A)と環状アミノビニル化合物(B)との和に対する該(B)の割合が0.0005〜0.85モル%、より好ましくは0.001〜0.55モル%であるものが挙げられる。すなわち、本共重合体の好ましいものは、側鎖にヒンダードアミン基を有するビニルモノマー(環状アミノビニル化合物(B))の含有量が少ない割に高い光安定性を有するものである。環状アミノビニル化合物(B)の濃度は0.0005モル%で充分に光安定化効果を発揮し、一方、0.85モル%を超えると実質的に不経済となる傾向にある。
【0047】
また、前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、該共重合体中に(B)が2個以上連続せず、孤立して存在する割合が(B)の総量に対して83%以上、好ましくは90%以上であるものが好ましい。
【0048】
環状アミノビニル化合物(B)の存在確認は、特開平4−80215号公報に記載されている通り、次のようにして行われる。13 C−NMR(例えば日本電子製JNM−GSX270 Spectrometer)にて、公知の方法(例えば、化学同人発行「機器分析のてびき(1)」53〜56頁(1985)参照)に従い、文献記載のポリアクリル酸エチル(朝倉書店発行「高分子分析ハンドブック」969頁(1985)参照)及びエチレン−アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体(Eur. Poly. J.25巻、4号、411〜418頁(1989)参照)の化学シフトを用いて、TMS基準における32.9ppmのピークを孤立したビニルモノマー(B)の分岐点からα位にあるメチレン基によるものとし、35.7ppmのピークを連続した二つのビニルモノマー(B)の分岐点に挟まれたメチレン基によるものと帰属した。これら二つのシグナルを用いて、エチレン(A)とビニルモノマー(B)との共重合体においてビニルモノマー(B)が孤立して存在する割合を、下記計算式によって算出することができる。
【0049】
【数1】
【0050】
上記により見積もった側鎖にヒンダードアミン基を有するビニルモノマーが2個以上連続せず、孤立して存在する割合が、共重合体中のビニルモノマー(B)の総量に対して83%以上であることが好ましい。側鎖にヒンダードアミン基を有するビニルモノマーが2個以上連続せず、孤立して存在する割合が83%未満であると、側鎖にヒンダードアミン基を有するビニルモノマーの含量が少ない割に高い光安定性を有するという特徴が発揮されない場合がある。
【0051】
前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体のMFR(JIS−K6760(190℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した値)は、0.1〜200g/10分、好ましくは0.5〜20g/10分、より好ましくは1〜5g/10分である。MFRが上記範囲未満では、ポリオレフィン系樹脂とのなじみが悪く、ブレンドした場合、フィッシュアイやブツなどフィルム用途での可視欠点の原因となる。一方、MFRが上記範囲を超えると、分子量が大きい共重合体といえども拡散透失によるブリード、ブルーム現象が生起したり、ポリオレフィン系樹脂とブレンドした場合、得られる樹脂組成物の強度低下の原因となる。
【0052】
さらに、前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、GPCを用い、単分散ポリスチレンにて検量線を作成し決定した、重量平均分子量と数平均分子量との比をもって表示されるMw/Mn(Q値)は3〜120の範囲にあることが望ましい。特に好ましい範囲は5〜20である。
【0053】
前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、所要単量体を共重合条件に付すことによって製造されるが、高圧法低密度ポリエチレン製造装置での製造が可能である。通常はラジカル重合で製造され、使用される触媒は遊離基発生開始剤、例えばジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、ケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ハイドロパーオキサイド類、アゾ化合物等が有用である。重合装置はエチレンの高圧ラジカル重合法で一般的に用いられている連続攪拌式槽型反応器又は連続式管型反応器等を使用することができる。重合圧力は1000〜5000kg/cm 2程度、重合温度は100〜400℃程度である。
【0054】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物中における前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体の含有量は、前記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し2〜10重量部、好ましくは2〜6重量部である。この含有量が上記範囲未満では耐候性が劣るので好ましくなく、上記範囲を超えると経済性の点で好ましくない。
【0055】
本発明において用いられる前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、コスト的な観点から、必ずしも多層フィルムの全層に含有されている必要はなく、少なくとも1層含有されていればよい。また、このエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、通常用いられる一種又は二種以上のヒンダードアミン系耐候剤と組み合わせて用いることができる。更に、エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体を含有しない層に対して、通常用いられる一種又は二種以上のヒンダードアミン系耐候剤を用いることもできる。エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、もちろん全層に含有させてもよいが、例えば最内層と最外層(ハウス外面)に含有させ、その他の層には農業用として通常配合されるヒンダードアミン系光安定剤を含有させることもできる。また、同一の層にエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体と農業用として通常配合されるヒンダードアミン系光安定剤を含有させることもできる。その場合は全層にエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体を用いる場合よりコスト的に有利になる。
【0056】
併用可能な農業用として通常配合されるヒンダードアミン系光耐候剤は、分子中に下記式(3)で表されるピペリジン環構造を少なくとも2個以上有しかつ分子量が500以上のヒンダードアミン化合物(以下、「ピペリジン環含有ヒンダードアミン化合物」ともいう)である。ここで、上記ピペリジン環含有ヒンダードアミン化合物のピペリジン環の数が2個未満では十分な耐候性が得られず、また、分子量が500未満では揮発しやすくなり、長期の耐候性を得ることができない。また、上記ピペリジン環含有ヒンダードアミン化合物のピペリジン環の数は2〜50個であることが好ましく、また、分子量は750以上であることが好ましい。
【0057】
【化8】
・・・(3)
【0058】
上記ピペリジン環含有ヒンダードアミン化合物としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、テトラ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、テトラ(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、1,5,8,12−テトラキス〔4,6−ビス{N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミノ}−1,3,5−トリアジン−2−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジメチル縮合物、2−第三オクチルアミノ−4,6−ジクロロ−s−トリアジン/N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン縮合物、N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン/ジブロモエタン縮合物などがあげられる。その他、ピペリジン環のN基にOR基が結合したヒンダードアミン(Rは、炭素数1以上のメチレン基を含む、官能基又はオリゴマー)もあげられる。
使用可能な市販のヒンダードアミン系化合物を例示すれば、TINUVIN770、TINUVIN780、TINUVIN144、TINUVIN622LD、CHIMASSORB119FL、CHIMASSORB944(以上、チバガイギー社製)、サノールLS−765(三共(株)製)、MARK LA−63、MARK LA−68、MARK LA−68、MARK LA−62、MARK LA−67、MARK LA−57(以上、アデカ・アーガス社製)、TINUVIN NOR371(チバ・スペシャルティ−ケミカルズ社製)、アデカスタブLA−900(旭電化社製)等が挙げられる。これらのピペリジン環含有ヒンダードアミン化合物は、一種又は二種以上で用いられる。
上記ピペリジン環含有ヒンダードアミン化合物の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.001〜20重量部、好ましくは0.01〜10重量部である。該含有量が0.001重量部未満では十分な効果が得られず、20重量部よりも多くても効果の向上がみられないばかりか、フィルムの物性を低下させるなどの悪影響を与える。
【0059】
また、本発明の熱可塑性樹脂フィルム中には、通常合成樹脂に使用される各種添加剤を併用することができる。それらの添加剤としては、例えば、赤外線吸収剤(保温剤)、金属の有機酸塩、塩基性有機酸塩および過塩基性有機酸塩、ハイドロタルサイト化合物、エポキシ化合物、β−ジケトン化合物、多価アルコール、ハロゲン酸素酸塩、硫黄系、フェノール系およびホスファイト系などの酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、防霧剤などがあげられる。
【0060】
上記赤外線吸収剤(保温剤)は、赤外線吸収能を有する無機微粒子であり、これらは一種又は二種以上で組み合わせて用いることができる。用いることの出来る無機微粒子は特に制限はないが、成 分:Li,Si,Al,Mg,Caから選ばれた少なくとも1つの原子を含有する無機化合物を用いることが出来る。例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、燐酸リチウム、燐酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸マグネシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、アルミノ珪酸カリウム、アルミノ珪酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、マイカ、ゼオライト、ハイドロタルサイト類化合物、リチウム・アルミニウム複合水酸化物炭酸塩化合物、アルミニウム・リチウム・マグネシウム複合水酸化物炭酸塩化合物、アルミニウム・リチウム・マグネシウム複合水酸化物珪酸塩化合物、マグネシウム・アルミニウム・珪素複合水酸化物、マグネシウム・アルミニウム・珪素複合硫酸塩化合物、マグネシウム・アルミニウム・珪素複合炭酸塩化合物、複数種アニオンを含有する金属複合水酸化物塩等が挙げられる。これらは結晶水を脱水したものであってもよい。
【0061】
上記無機微粒子は天然物であってもよく、また合成品であってもよい。また、上記無機微粒子は、その結晶構造、結晶粒子径などに制限されることなく使用することが可能である。
【0062】
また、上記無機微粒子は、その表面をステアリン酸のごとき高級脂肪酸、オレイン酸アルカリ金属塩のごとき高級脂肪酸金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩のごとき有機スルホン酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステルまたはワックスなどで被覆したものも使用できる。
【0063】
上記金属複合水酸化物塩は、単独または2種以上組み合わせて使用することが出来る。その平均粒子径は好ましくは、0.05〜15μm、より好ましくは0.1〜10μmの範囲である。無機微粒子の平均粒子径が上記範囲より小さいと、樹脂中での分散性が劣りブツ(無機物の2次凝集物)が生成してフィルム外観が悪化すると共に、樹脂との混練時の粉立ちが激しくハンドリング性が劣る。逆に、無機微粒子の平均粒子径が上記範囲より大きいと、透明性で劣ったり押出し機ブレーカースクリーン部で目詰まりが生じ、生産性が悪化する。
【0064】
上記の金属の有機酸塩、塩基性有機酸塩および過塩基性有機酸塩を構成する金属種としては、Li,Na,K,Ca,Ba,Mg,Sr,Zn,Cd,Sn,Cs,Al,有機Snがあげられ、有機酸としては、カルボン酸、有機リン酸類またはフェノール類があげられ、該カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ネオデカン酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、エライジン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、オクチルメルカプトプロピオン酸、安息香酸、モノクロル安息香酸、p−第三ブチル安息香酸、ジメチルヒドロキシ安息香酸、3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、トルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、クミン酸、n−プロピル安息香酸、アセトキシ安息香酸、サリチル酸、p−第三オクチルサリチル酸等の一価カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、メタコン酸、イタコン酸、アコニット酸、チオジプロピオン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、オキシフタル酸、クロルフタル酸等の二価のカルボン酸あるいはこれらのモノエステル又はモノアマイド化合物、ブタントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、メロファン酸、ピロメリット酸等の三価又は四価カルボン酸のジ又はトリエステル化合物などがあげられ、また該有機リン酸類としては、モノまたはジオクチルリン酸、モノまたはジドデシルリン酸、モノまたはジオクタデシルリン酸、モノまたはジ−(ノニルフェニル)リン酸、ホスホン酸ノニルフェニルエステル、ホスホン酸ステアリルエステルなどがあげられ、また、該フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、メチルプロピルフェノール、メチル第三オクチルフェノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、第三ブチルフェノール、n−ブチルフェノール、ジイソブチルフェノール、イソアミルフェノール、ジアミルフェノール、イソヘキシルフェノール、オクチルフェノール、イソオクチルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、第三オクチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフェノール、第三ノニルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、オクタデシルフェノール、シクロヘキシルフェノール、フェニルフェノールフェノール、クレゾール、エチルフェノール、シクロヘキシルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノールなどがあげられる。
【0065】
上記防曇剤については特に制限はないが、公知の種々の非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等を始めとする、多価アルコールと高級脂肪酸類とから成る多価アルコール部分エステル系のものが好適である。このような防曇剤の具体例としては、例えば非イオン系界面活性剤、例えばソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノミリステート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンとアルキレングリコールの縮合物と脂肪酸とのエステルなどのソルビタン系界面活性剤やグリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノパルミテート、グリセリンジパルミテート、グリセリンジステアレート、ジグリセリンモノパルミテート・モノステアレート、トリグリセリンモノステアレート、トリグリセリンジステアレートあるいはこれらのアルキレンオキシド付加物等などのグリセリン系界面活性剤やポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノパルミテート、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテルなどのポリエチレングリコール系界面活性剤やその他トリメチロールプロパンモノステアレートなどのトリメチロールプロパン系界面活性剤やペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレートなどのペンタエリスリトール系界面活性剤、アルキルフェノールのアルキレンオキシド付加物;ソルビタン/グリセリンの縮合物と脂肪酸とのエステル、ソルビタン/アルキレングリコールの縮合物と脂肪酸とのエステル;ジグリセリンジオレートナトリウムラウリルサルフェート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルアミン塩酸塩、ラウリン酸ラウリルアミドエチルリン酸塩、トリエチルセチルアンモニウムイオダイド、オレイルアミノジエチルアミン塩酸塩、ドデシルピリジニウム塩などやそれらの異性体を含むものなどを挙げることができる。
【0066】
上記防霧剤としては、例えばフッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が挙げられ、フッ素系界面活性剤の具体例としては、通常の界面活性剤の疎水基のCに結合したHの代わりにその一部または全部をFで置換した界面活性剤で、特にパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基を含有する界面活性剤である。以上の各種添加剤は、それぞれ1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。パーフルオロアルキル基を有する含フッ素化合物としては、例えば、アニオン系含フッ素界面活性剤、カチオン系含フッ素界面活性剤、両性含フッ素界面活性剤、ノニオン系含フッ素界面活性剤、含フッ素オリゴマーなどがあげられる。
【0067】
上記パーフルオロアルキル基を有する含フッ素化合物の使用量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、好ましくは0.001〜10重量部、更に好ましくは0.01〜5重量部である。該含フッ素化合物の使用量が0.001重量部未満では防霧性効果がほとんど発揮されず、10重量部を超えても効果が飽和されるため好ましくない。
【0068】
また、充てん剤としては、フイルムのベタツキを抑制するために、あるいは保温性をさらに高めるために、例えばシリカ、タルク、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、カオリンクレー、マイカ、アルミナ、炭酸マグネシウム、アルミン酸ナトリウム、導電性酸化亜鉛、リン酸リチウムなどが用いられる。これらの充てん剤は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4'−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール) 、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4,4'−ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2'−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、2,2'−エチリデンビス(4−第二ブチル−6−第三ブチルフェノール) 、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドルキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル) フェノール、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5. 5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、n−オクタデシル3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン等があげられる。
【0070】
上記硫黄系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、ジミリスチル、ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類及びペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類があげられる。
【0071】
上記ホスファイト系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノ(ジノニルフェニル)ビス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ (ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(C 12-15 混合アルキル)−4,4'−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール) ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、2,2'−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)( オクチル) ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4'−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等があげられる。
【0072】
上記着色剤としては例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、アリザリンレーキ、酸化チタン、亜鉛華、群青、パーマネントレッド、キナクリドン、カーボンブラック等を挙げることができる。
【0073】
アンチブロッキング剤としては、珪藻土、合成シリカ、タルク、マイカ、ゼオライト等が挙げられる。これらアンチブロッキング剤は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができ、通常0.01〜0.5重量%の範囲が好ましい。
【0074】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、上述した成分が組合わされて含有してなり、更に本発明の熱可塑性樹脂フィルムに含有することができる下記の任意成分を、必要に応じて含有させることができる。任意成分とは、その他安定剤、耐衝撃性改善剤、架橋剤、充填剤、発泡剤、帯電防止剤、造核剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、難燃剤、螢光剤、防黴剤、殺菌剤、金属不活性剤、離型剤、顔料、加工助剤などを挙げることができる。
【0075】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、各種添加剤を配合するには、各々必要量秤量し、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、単軸又は二軸押出機、ロールなどの配合機や混練機その他従来から知られている配合機、混合機を使用すればよい。このようにして得られた樹脂組成物をフィルム化するには、それ自体公知の方法、例えば、溶融押出し成形法(Tダイ法、インフレーション法を含む)、カレンダー加工、ロール加工、押出成型加工、ブロー成型、インフレーション成型、溶融流延法、加圧成型加工、ペースト加工、粉体成型等の方法を好適に使用することができる。
【0076】
本発明の熱可塑性樹脂フィルム厚みについては、強度やコストの点で0.1〜1mmの範囲のものが好ましく、0.1〜0.5mmのものがより好ましい。この範囲未満では強度的に問題があり、この範囲を超えると成形が困難になる。
【0077】
本発明において基材層にポリオレフィン系樹脂を用いる場合、前記ポリオレフィン系基材の最内層に接して防曇性被膜を形成することができる。
本発明における防曇塗膜としては既に公知の農業用フィルムに用いることができる防曇塗膜を適応することが出来る。好ましくは無機コロイド物質と親水性有機化合物を主成分とした防曇塗膜や無機コロイド物質とアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂を主成分とする防曇塗膜を用いることができる。
【0078】
本発明において用いることができる無機コロイド物質と親水性有機化合物を主成分とする防曇塗膜として、例えば、特公昭63−45432号、特公昭63−45717号、特公昭64−2158号、特許第3094296号等に示されている化合物、たとえばコロイダルシリカ又はアルミナと、界面活性剤の組み合わせを挙げることができる。
【0079】
本発明においてはアクリル系樹脂やウレタン系樹脂と無機質コロイドゾルを主成分とする防曇性被膜も好適に用いることができる。
アクリル系樹脂としては、親水性アクリル系重合体や疎水性アクリル系樹脂が挙げられる。
親水性アクリル系樹脂としては、水酸基含有ビニル単量体成分を主成分(好ましくは60重量%〜99.9重量%。更に好ましくは65重量%〜95重量%)とし、酸基含有ビニル単量体を0.1〜30重量%含有する共重合体、その部分中和物または完全中和物が挙げられる。
疎水性アクリル系樹脂としては、例えば少なくとも合計60重量%(好ましくは80重量%以上)のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類からなる単量体、またはアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類とアルケニルベンゼン類との単量体混合物及び0〜40重量%の共重合しうるα、β−エチレン性不飽和単量体とを、通常の重合条件に従って、例えば乳化剤の存在下に、水系媒質中で乳化重合させて得られる水分散性の重合体または共重合体である疎水性アクリル系樹脂を挙げることができる。
ウレタン系樹脂としては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンの水性組成物、エマルジョンが挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0080】
アクリル系樹脂の製造に用いるアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類としては、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸−n−プロピルエステル、アクリル酸イソプロピルエステル、アクリル酸−n−ブチルエステル、アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、アクリル酸デシルエステル、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル、メタクリル酸−n−プロピルエステル、メタクリル酸イソプロピルエステル、メタクリル酸−n−ブチルエステル、メタクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、メタクリル酸デシルエステル等が挙げられ、一般には、アルキル基の炭素数が1〜20個のアクリル酸アルキルエステル及び/又はアルキル基の炭素数が1〜20個のメタクリル酸アルキルエステルが使用される。
【0081】
アルケニルベンゼン類としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
【0082】
アクリル系樹脂を得るために用いるα、β−エチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等のα、β−エチレン性不飽和カルボン酸類;エチレンスルホン酸等のα、β−エチレン性不飽和スルホン酸類;2−アクリルアミド−2−メチルプロパン酸;α、β−エチレン性不飽和ホスホン酸類;アクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシエチル等の水酸基含有ビニル単量体;アクリロニトリル類;アクリルアマイド類;アクリル酸又はメタクリル酸のグリシジルエステル類等が挙げられる。これら単量体は、単独で用いても、または2種以上の併用でもよいが、疎水性アクリル系樹脂とするためには、0〜40重量%の範囲で、好ましくは0〜20重量%で使用するのが好ましい。使用量が多すぎると、防曇性能を低下させることがあり、好ましくない。
【0083】
アクリル系樹脂は、公知の乳化剤、例えば陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤の中から選ばれる1種もしくは2種以上の存在下、水系媒質中で、乳化重合させる方法、反応性乳化剤を用いて重合させる方法、乳化剤を含有せずオリゴソープ理論に基づいて重合させる方法等によって得ることができる。乳化剤の存在下での重合方法の場合、これら乳化剤は、単量体の仕込み合計量に対し0.1〜10重量%の範囲で使用するのが、重合速度の調整、合成される樹脂の分散安定性の点から好ましい。
【0084】
アクリル系樹脂の製造に好ましく用いられる重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;アセチルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物等が挙げられる。これらは、単量体の仕込み合計量に対して0.1〜10重量%の範囲で使用することができる。
疎水性アクリル系樹脂は、特に、ガラス転移温度が35〜80℃のものを用いるのが好ましい。ガラス転移温度が低すぎると無機質コロイド粒子が数次凝集して不均一な分散状態をとりやすく、高すぎる場合、透明性のある均一な被膜を得るのが困難となりやすい。
【0085】
本発明で用いる無機質コロイドゾルは、疎水性のポリオレフィン系樹脂フィルム表面に塗布することにより、フィルム表面に親水性を付与する機能を果たすものである。
【0086】
無機質コロイドゾルとしては、シリカ、アルミナ、水不溶性リチウムシリケート、水酸化鉄、水酸化スズ、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機質水性コロイド粒子を、種々の方法で、水又は親水性媒体中に分散させた、水性ゾルが挙げられる。中でも好ましく用いられるのは、シリカゾルとアルミナゾルで、これらは、単独で用いても併用しても良い。
【0087】
無機質コロイドゾルとしては、その平均粒子径が5〜100nmの範囲で選ぶのが好ましく、また、この範囲であれば、平均粒子径の異なる2種以上のコロイドゾルを組み合わせて用いても良い。平均粒子径が大きすぎると、被膜が白く失透することがあり、また、平均粒子径が小さすぎると、無機質コロイドゾルの安定性に欠けることがあるため好ましくない。 無機質コロイドゾルは、その配合量をバインダー樹脂の固形分重量に対して、固形分として50〜400重量%にするのが好ましい。すなわち、配合量が少なすぎる場合は、十分な防曇効果が発揮できないことがあり、一方、配合量が多すぎる場合は、防曇効果が配合量に比例して向上しないばかりでなく、塗布後に形成される被膜が白濁化してフィルムの光線透過率を低下させる現象があらわれ、また、被膜が粗雑で脆弱になることがあり、好ましくない。
【0088】
本発明の防曇被膜を形成するための防曇剤組成物を調製するときに、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、高分子界面活性剤等の界面活性剤を添加することができる。
【0089】
これら界面活性剤の添加は、疎水性アクリル系樹脂と無機質コロイドゾルとを容易にかつ速やかに均一に分散することができ、また無機質コロイドゾルと併用することにより、疎水性のポリオレフィン系樹脂フィルム表面に親水性を付与する機能を果たす。界面活性剤の添加量は、アクリル系樹脂の固形分100重量部に対し0.1〜50重量部の範囲で選ぶと良い。界面活性剤の添加量が少なすぎると、アクリル系樹脂及び無機質コロイドゾルが十分に分散するのに時間がかかり、また、無機質コロイドゾルとの併用での防曇効果を十分に発揮しえず、一方界面活性剤の添加量が多すぎると塗布後に形成される被膜表面へのブリードアウト現象により被膜の透明性が低下し、顕著な場合は被膜の耐ブロッキング性の悪化や被膜の耐水性低下を引き起こす場合がある。
【0090】
本発明の防曇被膜を形成するための防曇剤組成物を調製するときに、架橋剤を添加することができる。架橋剤は、アクリル系樹脂同士を架橋させ、被膜の耐水性を向上させる効果がある。架橋剤としては、フェノール樹脂類、アミノ樹脂類、アミン化合物類、アジリジン化合物類、アゾ化合物類、イソシアネート化合物類、エポキシ化合物類、シラン化合物類等が挙げられるが、特にアミン化合物類、アジリジン化合物類、エポキシ化合物類が好ましく使用できる。これら架橋剤は、その添加量がアクリル系樹脂固形分に対して0.1〜30重量%の範囲で使用することができる。
【0091】
本発明に使用される防曇剤組成物には、必要に応じて、液状分散媒を配合することができる。かかる液状分散媒としては、水を含む親水性ないし水混合性溶媒がふくまれ、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、等の1価アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;ベンジルアルコール等の環式アルコール類;セロソルブアセテート類;ケトン類等が挙げられる。これら液状分散媒は単独で用いても併用しても良い。防曇剤組成物は、アクリル系樹脂、無機質コロイドの固形分として一般に0.5〜50重量%の濃度で調製し、これを希釈して使用することが多い。
【0092】
本発明で調製される防曇剤組成物には、更に必要に応じて、消泡剤、可塑剤、造膜助剤、造粘剤、顔料、顔料分散剤等の慣用の添加剤を混合することができる。また、アクリル系樹脂以外のバインダー成分として、たとえばポリエーテル系、ポリカーボネート系、ポリエステル系の水分散性ウレタン樹脂などをアクリル系樹脂の含有量未満の量範囲で混合していてもよい。
【0093】
なお、本発明でいう、アクリル系樹脂被膜のガラス転移温度は、次式により算出した。
【0094】
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+…+Wn/Tgn
ただし、Tgはアクリル系樹脂のガラス転移温度(絶対温度)、Tg1、Tg2、…、Tgnは各成分1、2、…、nのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)、W1、W2、…、Wnは各成分1、2、…、nの重量分率をそれぞれ示す。
【0095】
基体フィルムの表面に防曇性被膜を形成するには、前述の重合にて得られたアクリル系樹脂溶液及び防曇剤組成物をそれぞれドクターブレードコート法、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ロッドコート法、バーコート法、ナイフコート法、ハケ塗り法等それ自体公知の塗布方法を採用し、塗布後乾燥すればよい。塗布後の乾燥方法は、自然乾燥及び強制乾燥のいずれの方法を採用してもよく、強制乾燥方法を採用する場合、通常50〜250℃、好ましくは70〜200℃の温度範囲で乾燥すればよい。加熱乾燥には、熱風乾燥法、赤外線乾燥法、遠赤外線乾燥法等適宜方法を採用すればよく、乾燥速度、安定性を勘案すれば熱風乾燥法を採用するのが有利である。
【0096】
本発明において、基体フィルムの表面に形成させる被膜の厚さは、基体フィルムの1/10以下を目安に選択するとよいが、必ずしもこの範囲に限定されるものではない。被膜の厚さが基体フィルムの1/10より大であると、基体フィルムと被膜とでは屈曲性に差があるため、被膜が基体フィルムから剥離する等の現象がおこりやすく、また、被膜に亀裂が生じて基体フィルムの強度を低下させるという現象が生起し、好ましくない。
【0097】
また、基体フィルムと被膜組成物に由来する被膜との接着性が充分でない場合には、基体フィルムに表面処理を施しておいてもよい。本発明の積層フィルムの表面に施す処理の方法としては、コロナ放電処理、スパッタエッチング処理、ナトリウム処理、サンドブラスト処理等の方法が挙げられる。これら表面処理の中では、塗布層との密着性、作業性、安全性、コスト等の点から、コロナ放電処理が好適である。
【0098】
本発明に係る農業用熱可塑性樹脂フィルムを、実際に使用するにあたっては、防曇被膜の設けられた側をハウス又はトンネルの内側となるようにして展張するのがよい。
【0099】
本発明のポリオレフィン系農業用フィルムは、耐候性安定剤が樹脂表面にブリードアウトしにくいため、長期耐候性に優れ、しかも透明性が損なわれず、表面外観も優れている。特に農業用フィルムでは、耐候性、耐農薬性が優れるだけではなく、蜜蜂を利用した受粉等の作物栽培性も良好で、かかる用途において本発明の効果が特に発揮される。また、該フィルムに防曇塗膜を設けた場合には、ブリードアウトが抑えられ該基材との接着性が低下しないので好ましい。本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を用いたフィルムは、透明でも、梨地でも、半梨地でもよく、ハウス、トンネル、マルチング用、袋掛用等の農業用フィルム(いわゆる農ビ、農ポリ、農サクビ、農PO、硬質フィルム等)の用途に好適に使用することができる。
【0100】
【実施例】
以下、本発明を実施例、比較例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の例に限定されるものではない。
【0101】
(1)積層フィルムの調整(防曇剤練り込みタイプ、防曇塗膜塗布タイプ共に)3層インフレーション成形装置として3層ダイに100mmφ((株)プラ工研製)を用い、押出機はチューブ外内層を30mmφ((株)プラ技研製)2台、中間層を40mmφ((株)プラ技研製)として、外内層押出し機温度180℃、中間層押し出し機温度170℃、ダイス温度180〜190℃、ブロー比2.0〜3.0、引取り速度3〜7m/分、厚さ0.10〜0.15mmにて表−1〜表−6に示した成分からなる3層の積層フィルムを得た。なお、これらのフィルムは、ハウス展張時にチューブの端部を切り開いて使用するため、展開した際に製膜時のチューブ外層が展張時にはハウスの内層(内面)となる。
【0102】
〔配合〕 添加量は各表記載通り。
HP−LDPE:高圧ラジカル法触媒で製造した分岐状ポリエチレン(MFR:1.1g/10分、密度0.920)日本ポリケム製ノバテックLD「YF30」
メタロセンPE:メタロセン触媒で製造したエチレン・αオレフィン共重合体(MFR:2g/10分、密度0.907)日本ポリケム製カーネル「KF270」
EVA▲1▼ :エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量5重量%、MFR2g/10分)
EVA▲2▼ :エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量15重量%、MFR2g/10分)
キマソーブ944:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製光安定剤(特開平10−219004号公報記載)
エチレン・環状アミノビニル共重合体:日本ポリケム(株)製「ノバテックLD・XJ100H」MFR=3g/10分(190℃、JIS−K6760) 密度=0.931g/cm3(JIS−K6760)環状アミノビニル化合物含量=5.1重量%(0.7モル%)孤立して存在する環状アミノビニル化合物の割合=90モル% 融点=111℃
トリアリールトリアジン型紫外線吸収剤▲1▼:R1がオクチル基、R2〜R5がメチル基であるトリアリールトリアジン化合物
トリアリールトリアジン型紫外線吸収剤▲2▼:R1がヘキシル基、R2〜R5が水素原子であるトリアリールトリアジン化合物
【0103】
(2)フィルムの表面処理(防曇塗膜塗布タイプ)
得られたチューブ状フィルムの外層表面を、放電電圧120V、放電電流4.7A、ラインスピード10m/minでコロナ放電処理を行い、JIS−K6768による「濡れ指数」を測定、確認した。
【0104】
(3)防曇性塗膜の形成(防曇塗膜塗布タイプ)
下記に示した主成分(シリカゾル及び/又はアルミナゾル)と熱可塑性樹脂と架橋剤及び液状分散媒とを配合して防曇剤組成物を得た。
【0105】
防曇剤組成物配合は以下の配合とした。
無機質コロイドゾル(コロイダルシリカ) 4.0
熱可塑性樹脂(サンモールSW−131) 3.0
架橋剤(T.A.Z.M) 0.1
分散媒(水/エタノール=3/1) 93
(注)無機質コロイドゾルの配合量は、無機質粒子量で示し熱可塑性樹脂の配合量は重合体固形分量で示す。
コロイダルシリカ:日産化学社製スノーテックス30、平均粒子径15mμ
サンモールSW−131:三洋化成社製アクリルエマルジョン
T.A.Z.M:相互薬工社製アジリジン系化合物
【0106】
(2)で表面処理した基体フィルムの表面に、上記の防曇剤組成物を#5バーコーターを用いて各々塗布した。塗布したフィルムを80℃のオーブン中に1分間保持して、液状分散媒を揮発させ防曇性塗膜を形成した。得られた各フィルムの塗膜の厚みは約1μmであった。
【0107】
防曇剤を練り混んだタイプ(フィルム厚100μm)、防曇性塗膜を設けたタイプ(フィルム厚150μm)各々について次のような物性測定を行った。なお、今回用いた樹脂、添加剤以外の組合せ、又は今回と異なるフィルム厚みでも、その要旨を変えない限り、同様の効果が得られる。実施例及び比較例における各測定法を以下に示す。
【0108】
▲1▼蜜蜂活動性評価
上記、三重県一志郡の圃場に構築したパイプハウスにフィルムを密閉状態になるように展張した。平成13年3月中旬〜平成13年3月下旬1週間(実施例1〜4、比較例1〜9)又は平成13年3月下旬から平成13年4月上旬1週間(実施例5〜7,比較例10〜13)に渡り、上記パイプハウス中に蜜蜂巣箱(3000匹/箱)及び蜜皿を入れた。平均的な値とするために、2日ごとに蜜皿の位置を巣箱から30cm、1m、3mの位置に移し替えた。巣箱間の個体差があるかもしれないので、巣箱による影響を考慮して、期間中平均的に得られた結果を以下のように分類した。(蜜蜂活動性評価)観察結果:別表に示す。但し、蜜蜂の活動度の分類は以下の基準により判断した。
◎ ハウス内一杯に蜜蜂が活動している。
○ ハウス内部分的に活動活発で蜜源にも集まっている。
△ 蜜源には10匹前後いて5匹前後が飛んでいる。
× 蜜源にはいなく2〜3匹が飛んでいる。
×× 全く蜜蜂が出ていない。
【0109】
▲2▼透明性
愛知県海部郡の圃場に構築したパイプハウスに、3層インフレーション成形により得られた積層フィルムの(防曇塗膜を塗布するタイプの場合、ハウス内層側表面に防曇性塗膜を形成(塗工)後)、密閉状態になるように展張した。波長555nmにおける直進光線透過率及び波長325nmにおける全光線透過率を分光光度計(日立製作所製、U3500型)により測定し、その値を示した。
【0110】
▲3▼曇価(HAZE)
3層インフレーション成形により得られた積層フィルムの(防曇塗膜を塗布するタイプの場合、ハウス内層側表面に防曇性塗膜を形成(塗工)後)、HAZE値(曇価)をヘイズメーター(東京電色製:TC−H3DP)により測定し、その値を示した。
【0111】
▲4▼透視性(NAS:狭角透過光特性値)
3層インフレーション成形により得られた積層フィルムの(防曇塗膜を塗布するタイプの場合、ハウス内層側表面に防曇性塗膜を形成(塗工)後)、NAS値(狭角透過光特性値)を視覚透明度試験機(東洋精機製)により測定し、その値を示した。
【0112】
▲5▼初期物性
得られた各積層フィルムの機械的強度をJIS−K6732の測定法に準拠して、温度23℃におけるフィルムの流れ方向(タテ)の引張破断強度及び引張破断伸びを測定し、その数値を示した。
【0113】
▲6▼耐農薬試験(白濁)
上記、三重県一志郡の圃場に構築したパイプハウスにフィルムを密閉状態になるように展張した。また、上記パイプハウス中で硫黄5gを市販の硫黄薫蒸器(商品名:新こなでん)で加熱することによって日中8時間燻蒸処理した。平成12年11月初旬〜平成13年1月初旬(実施例1〜4、比較例1〜9)又は平成13年4月初旬〜平成13年6月初旬(実施例5〜7,比較例10〜13)の約2ヶ月に渡り展張、燻蒸処理したフィルムを、耐候性試験機(The Q−PANEL COMPANY製)に400時間暴露した。これらフィルムの、波長555nmにおける直進光線透過率を分光光度計(日立製作所製、U3500型)により測定し、その値を示した。(耐農薬性評価)。
【0114】
▲7▼耐農薬耐候性(引張伸び)
上記、三重県一志郡の圃場に構築したパイプハウスにフィルムを密閉状態になるように展張した。また、上記パイプハウス中で硫黄5gを市販の硫黄薫蒸器(商品名:新こなでん)で加熱することによって日中8時間燻蒸処理した。平成12年11月初旬〜平成13年1月初旬又は平成13年4月初旬〜平成13年6月初旬(実施例5〜7,比較例10〜13)の約2ヶ月に渡り展張、燻蒸処理したフィルムを、耐候性試験機(The Q−PANEL COMPANY製)に暴露した。各時間においてこれらフィルムの縦方向(樹脂流れ方向)の破断点強伸度を引張り試験(JIS−K6732準拠)により測定し、原点の破断点強伸度に対する保持残率を算出した。(耐農薬性評価)。
【0115】
▲8▼保温性(遠赤外部平均透過率)
遠赤外部平均透過率の測定は、15℃の黒体放射エネルギースペクトルを入射エネルギーとし、これに別途赤外分光器を用いて波長4μm〜25μmの範囲で測定したフィルムの透過率スペクトルを乗じて得られた透過エネルギースペクトルを乗じて得られた透過エネルギースペクトルを積分して透過エネルギーを求め、入射エネルギーで除して透過率とした。透過率の値が小さい程、保温性に優れる。
▲9▼紫外線透過率経時変化
愛知県海部郡の圃場に構築したパイプハウスに、3層インフレーション成形により得られた積層フィルム(防曇と膜を塗布するタイプの場合、ハウス内層側表面に防曇性塗膜を形成(塗工)後)を密閉状態になるように展張した。平成11年8月下旬から平成13年7月下旬に渡り、上記パイプハウスに展張中のフィルムの一部をサンプリングし、その紫外線吸収能(波長325nmにおける全光線透過率)を分光光度計(日立製作所製、U3500型)により測定し、その値を示した。
【0116】
〔実施例1〜7、比較例1〜13〕上記配合、加工法により100μmフィルム(防曇剤練り込みタイプ)及び150μmフィルム(防曇塗膜塗布タイプ)を作成した。ここで得られたフィルムを用いて上記条件により各種試験を行なった。
【0117】
〔実施例1、比較例1〜3〕上記配合により、フィルム厚100μm、層比1/3/1の三層フィルム(防曇剤練り込みタイプ)を作成し、前記方法により蜜蜂活動性、初期透明性、耐農薬試験後の透明性、初期曇価、初期透視性、保温性、初期物性、耐農薬試験後の物性等の測定を行い、各フィルムの評価を行なった。その結果を〔表−1〕に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
〔実施例2,3,4〕上記配合により、フィルム厚150μm、層比1/3/1の三層フィルム(防曇塗膜塗布タイプ)を作成し、前記方法により蜜蜂活動性、初期透明性、耐農薬試験後の透明性、初期曇価、初期透視性、保温性、初期物性、耐農薬試験後の物性等の測定を行い、各フィルムの評価を行なった。その結果を〔表−2〕に示す。
【0120】
【表2】
【0121】
〔比較例4〜6〕前記方法により蜜蜂活動性、初期透明性、耐農薬試験後の透明性、初期曇価、初期透視性、保温性、初期物性、耐農薬試験後の物性等の測定を行い、各フィルムの評価を行なった。その結果を〔表−3〕に示す。
【0122】
【表3】
【0123】
〔比較例7〜9〕前記方法により蜜蜂活動性、初期透明性、耐農薬試験後の透明性、初期曇価、初期透視性、保温性、初期物性、耐農薬試験後の物性等の測定を行い、各フィルムの評価を行なった。その結果を〔表−4〕に示す。
【0124】
【表4】
【0125】
〔実施例5,6、比較例10,11〕上記配合により、フィルム厚150μm、層比1/3/1の三層フィルム(防曇塗膜塗布タイプ)を作成し、前記方法により蜜蜂活動性、初期透明性とその2年展張後の変化、初期紫外線透過率とその2年展張後の変化の測定を行い、各フィルムの評価を行なった。その結果を〔表−5〕に示す。
【0126】
【表5】
【0127】
〔実施例7、比較例12〜13〕上記配合により、フィルム厚100μm、層比1/3/1の三層フィルム(防曇剤練り込みタイプ)を作成し、前記方法により蜜蜂活動性、紫外線遮蔽性、初期物性、耐農薬試験後の物性等の測定を行い、各フィルムの評価を行なった。その結果を〔表−6〕に示す。
【0128】
【表6】
【0129】
以上の結果から明らかなように、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、下記式(1)で表されるトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤を0.1重量部未満0.001重量部以上含有してなることを特徴とする、ポリオレフィン系樹脂組成物を用いた農業用フィルムは、蜜蜂交配等の栽培性、透明性、保温性、耐農薬性等の諸性能において著しく優れたものである(実施例参照)。
【0130】
これに対し、特開平2001−2842号公報記載の樹脂組成物を用いた場合(比較例1,3,7〜9,12)には、耐候性、耐農薬性は良好であるものの、ハウス内で蜜蜂が活動しない為、蜜蜂利用の交配が行えず作物の栽培性に制限が出るため、農業フィルムとして一般に使用できない。一方、本発明に係るトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤を含有しない場合(比較例2,4〜6,13)には、農薬曝露後の物性(引張伸び)、農薬曝露後の光線透過率低下の抑制が不十分である。また、他の紫外線吸収剤を含有した場合(比較例10、11)は、その長期展張後の紫外線透過率の変化が大きい点が問題となる。
【0131】
つまり、本発明の樹脂組成物を農業用フィルムに適応する場合、構成要件であるトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤は0.1重量部未満であることが好ましく、添加しなければ、耐候性、耐農薬性が維持できず、この範囲を超えると、100μm以上、特に140μm以上のフィルム厚にした場合、蜜蜂利用の交配等、作物栽培性に支障をきたす。または、フィルム総厚み(A)と、トリアリールトリアジン型紫外線吸収剤の含有量(樹脂100重量部当たり)(B)の関係A×Bを特定範囲以外にした場合、蜜蜂利用の交配等、作物栽培性に支障をきたす。これらの条件は、本発明の効果を得るためには必要不可欠であり、これらの条件が欠けると、蜜蜂利用の交配等の作物栽培性、透明性、保温性、耐農薬性(強度、透明性)、透視性の低下防止およびそれらの効果の持続性等の性能をバランス良く有した農業用フィルムは得られない。
【0132】
【発明の効果】
本発明のポリオレフィン系農業用フィルムは、耐候性安定剤が樹脂表面にブリードアウトしにくいため、長期耐候性に優れ、しかも透明性が損なわれず、表面外観も優れている。更に、耐候性、耐農薬性が優れるだけではなく、蜜蜂を利用した受粉等の作物栽培性も良好で、本発明の効果が特に発揮される。また、該フィルムに防曇塗膜を設けた場合には、ブリードアウトが抑えられ該基材との接着性が低下しないので好ましい。
Claims (9)
- 全フィルムの総厚みをAμm、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対する上記式(1)で表されるトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤の含有量をB重量部とした場合のA×Bの値が、1≦A×B<15の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のポリオレフィン系農業用フィルム。
- 前記式(2)におけるR6及びR7がそれぞれメチル基であり、R8が水素原子である、請求項3記載のポリオレフィン系農業用フィルム。
- すべてのフィルム層がポリオレフィン系樹脂を主成分とする多層からなる農業用フィルムであって、エチレンと上記式(2)で示される環状アミノビニル化合物との共重合体を含有する層を少なくとも1層と、成分のうち一部/又は全てが上記式(1)で示されるトリアジン系化合物である紫外線吸収剤成分を含有する層を少なくとも1層有してなることを特徴とする請求項3又は4記載のポリオレフィン系農業用フィルム。
- 前記式(1)におけるR1〜R5が、それぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基を表す、請求項1乃至6いずれか1項に記載のポリオレフィン系農業用フィルム。
- 前記式(1)におけるR1がオクチル基であり、R2〜R5がメチル基である、請求項1乃至7いずれか1項に記載のポリオレフィン系農業用フィルム。
- 前記式(1)にけるR1がヘキシル基であり、R2〜R5が水素原子である、請求項1乃至6いずれか1項に記載のポリオレフィン系農業用フィルム。
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