JP3890470B2 - カーボンナノチューブを用いた電子放出素子用電極材料およびその製造方法 - Google Patents

カーボンナノチューブを用いた電子放出素子用電極材料およびその製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カーボンナノチューブを用いた電子放出素子用電極材料およびその製造方法に関する。本発明による電子放出素子用電極材料は、フィールドエミッション型フラットパネルディスプレイの電極として好適である。
【0002】
【従来の技術】
フィールドエミッション(電界電子放出)は、針状エミッタの先端から高密度のトンネル電流を引き出すことにより得られるため、電子ビームは高輝度でそのエネルギー幅も狭い。この性質を利用して、低消費電力・高輝度・高視野角が実現できるフィールドエミッション型フラットパネルディスプレイ(FED)が開発されつつある。
【0003】
カーボンナノチューブは、シリコンやモリブデンで作られたスピント型エミッタやダイヤモンド薄膜などの従来の電子放出素材に比べて、電流密度、駆動電圧、頑健さ、寿命などの特性において総合的に優れており、FED用電子源として現在最も有望と目されている。これは、カーボンナノチューブが大きなアスペクト比(長さと直径の比)と鋭い先端とを持ち、化学的に安定で機械的にも強靱であり、しかも、高温での安定性に優れているなど、電界放出のエミッタ材料として有利な物理化学的性質を備えているからである。
【0004】
カーボンナノチューブを電子源とするFEDパネルの構造を図4に模式的に示す。図4において、(41)(42)は、上下一対のガラス板であり、下側のガラス板(42)の上面に陰極となる電極(43)が貼り付けられ、この陰極(43)にエミッターとなる多数のカーボンナノチューブ(44)が形成されている。また、上側のガラス板(41)の下面には、蛍光層(RGB)(45)が設けられ、この下面に、カーボンナノチューブの先端から放出される電子を受ける陽極となるアルミニウムフィルム(46)が貼り付けられている。また、両電極(43)(46)間には、これらと平行にグリッド(47)が設けられており、グリッド(47)と上ガラス板(41)との間には、グリッド(47)の横方向にのびる複数の支え板(48)がグリッド(47)と同じ間隔で配され、グリッド(47)と下ガラス板(42)との間には、グリッド(47)の縦方向にのびる複数の支え板(49)がグリッド(47)と同じ間隔で配されている。
【0005】
カーボンナノチューブFEDの実現までには、駆動電圧の低減と電子放出の均一化などいくつかの解決すべき課題があるが、スクリーン印刷によりカーボンナノチューブ陰極を形成したFEDパネルが試作されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
スクリーン印刷によりカーボンナノチューブ陰極を形成した上記従来のFEDパネルでは、一本一本のカーボンナノチューブの向きがバラバラであるため、電界を掛けた際に一本一本のカーボンナノチューブにかかる電界が不均一となり、その結果として電界放出が不均一となり、表示画面が粗くかつ輝度が不十分になるという問題があった。
【0007】
スクリーン印刷法に代えて、シリコンやガラスの基板に触媒金属の薄膜をパターニングしておき、それを種結晶としてCVD法によりブラシ状にカーボンナノチューブを成長させ、これを電子放出素子に適用しようとする試みも行われているが、CVD法により成長したブラシ状カーボンナノチューブは互いに絡まり合いつつ横に曲がりながら成長することから、せっかく根元でパターニングにより電気的に絶縁がされていてもブラシ同士が接触してしまい、その結果、パターニングのピッチ幅をせまくできず表示画面が粗くなるという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、大量生産に向きコスト的に有利であり、また、フィールドエミッション型フラットパネルディスプレイの電極として使用した場合に、駆動電圧を低減しかつ表示画面を細かくすることができる、カーボンナノチューブを用いた電子放出素子用電極材料およびその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記問題を解決すべく研究を重ねた結果、カーボンナノチューブを用いた電子放出素子用電極材料を製造するのに、転写法を適用して、導電性フィルムの上にカーボンナノチューブをブラシ状に均等に植え付けるカーボンナノチューブ電子放出素子用電極材料の製造方法を見出した。
【0010】
すなわち、の発明による電子放出素子用電極材料は、基板上の触媒粒子を核として成長させたカーボンナノチューブが延伸可能な導電性フィルム上に所定間隔で転写されることにより形成されており、導電性フィルムは、厚さ5〜2000μmの高分子フィルム中に微粒子状導電体が5〜30重量%分散されたものであることを特徴とするものである。
【0012】
本明細書において、「フィルム」とは、厚さに基づいて規定される狭義のフィルムだけでなく、通常シートと呼ばれる厚手のものも含むこととする。
【0013】
カーボンナノチューブの長さは1〜150μmであることが好ましい。
【0014】
また、カーボンナノチューブ同士の間隔は10〜1000nmであることが好ましい。
【0015】
の発明による電子放出素子用電極材料において、微粒子状導電体としては、カーボンナノチューブ、金属粉末などが例示される。
【0016】
延伸可能な導電性フィルムは、適切な張力を掛けられて引き出され、このフィルム上に基板上のカーボンナノチューブが転写される。基板上のカーボンナノチューブ同士の間隔と導電性フィルム上のカーボンナノチューブ同士の間隔とはほぼ同じであってももちろんよいが、導電性フィルムを適正な値で延伸することにより、導電性フィルム上のカーボンナノチューブ同士の間隔を所要の値に調整することができる。
【0017】
第1の発明による電子放出素子用電極材料の製造方法は、基板上の触媒粒子を核として成長させたカーボンナノチューブを延伸可能な導電性フィルム上に所定間隔で転写し、転写の際の導電性フィルムの温度をその軟化温度以上で溶融温度以下にすることを特徴とするものである。
【0018】
また、第2の発明による電子放出素子用電極材料の製造方法は、基板上の触媒粒子を核として成長させたカーボンナノチューブを、厚さ5〜2000μmの高分子フィルムの表面に電気伝導性金属が被覆された導電性フィルム上に所定間隔で転写し、転写の際の導電性フィルムの温度をその軟化温度以上で溶融温度以下にすることを特徴とするものである。
【0019】
第1の発明による電子放出素子用電極材料の製造方法においては、導電性フィルムの延伸量を調整することによりカーボンナノチューブ同士の間隔を調整することが好ましい。
【0020】
上記第1および第2の発明による電子放出素子用電極材料の製造方法は、次のようにして実施される。
【0021】
カーボンナノチューブを導電性フィルムにフィルム表面に対し実質上垂直方向に転写することが好ましい。
【0022】
電性フィルムの温度をその軟化温度以上で溶融温度以下にして転した後に、導電性フィルムをその軟化温度以下に冷却することが好ましい。
【0023】
本発明による、カーボンナノチューブを用いた電子放出素子用電極材料の製造方法は、連続的に実施することもできる。
【0024】
カーボンナノチューブは、カーボン原子が網目状に結合してできた穴径ナノ(1ナノは10億分の1)メートルサイズの極微細な筒(チューブ)状の物質である。
【0025】
ブラシ状カーボンナノチューブは、公知の方法で作製できる。例えば、シリコン基板の少なくとも片面上に、ニッケル、コバルト、鉄などの金属の錯体を含む溶液をスプレーや刷毛で塗布した後、加熱して形成した皮膜上に、あるいは、クラスター銃で打ち付けて形成した皮膜上に、アセチレン(C)ガスを用いて一般的な化学蒸着法(CVD法)を施すことにより、直径12〜38nmのカーボンナノチューブが多層構造で基板上に垂直に起毛される。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
まず、基板上に触媒粒子を形成し、触媒粒子を核として高温雰囲気で原料ガスからカーボンナノチューブを成長させる。基板は触媒粒子を支持するものであればよく、触媒粒子が濡れにくいものが好ましく、シリコン基板であってよい。触媒粒子はニッケル、コバルト、鉄などの金属粒子であってよい。これらの金属またはその錯体等の化合物の溶液をスプレーや刷毛で基板に塗布し、またはクラスター銃で基板に打ち付け、乾燥させ、必要であれば加熱し、皮膜を形成する。皮膜の厚みは、厚過ぎると加熱による粒子化が困難になるので、好ましくは1〜100nmである。次いでこの皮膜を好ましくは減圧下または非酸化雰囲気中で好ましくは650〜800℃に加熱すると、直径1〜50nm程度の触媒粒子が形成される。カーボンナノチューブの原料ガスとしては、アセチレン、メタン、エチレン等の脂肪族炭化水素が使用でき、とりわけアセチレンガスが好ましい。アセチレンの場合、多層構造で太さ12〜38nmのカーボンナノチューブが触媒粒子を核として基板上にブラシ状に形成される。カーボンナノチューブの形成温度は、好ましくは650〜800℃である。
【0028】
こうして成長させたブラシ状カーボンナノチューブを導電性フィルムに転写する。転写の際、導電性フィルムの温度を導電性フィルムの軟化温度以上で溶融温度以下にすることにより、カーボンナノチューブを導電性フィルムに垂直方向に配向させることが容易になる。また、転写後は、導電性フィルムの温度を軟化温度以下に冷却することにより、カーボンナノチューブを導電性フィルムに固定できる。導電性フィルムとしては、集電体となり得るものでかつ延伸可能なものであればよく、一般に市販されているもの、例えば東レ社製のCF48(成分:PET/ITO (Indium Tin Oxide)/Pd )、東洋紡績社製の300R(#125)などを用いることができる。導電性フィルムの厚みは好ましくは0.01〜1mm、より好ましくは0.05〜0.5mmである。
【0029】
これらの工程(すなわち、基板への触媒の塗布、触媒粒子の形成、化学蒸着法によるブラシ状カーボンナノチューブの成長、カーボンナノチューブの導電性フィルムへの転写、その後のフィルム冷却)は一連の連続工程として行うことができる。
【0030】
前記カーボンナノチューブの構造は単層すなわち単一のチューブであってもよいし、多層すなわち同心状の複数の異径チューブであってもよい。カーボンナノチューブの直径は好ましくは1〜100nmである。
【0031】
CVD法によりブラシ状カーボンナノチューブを作製するためには、種結晶として鉄などの金属触媒が必要であり、触媒上にカーボンナノチューブが成長するため基板とカーボンナノチューブの間の接着力が弱く、またキャパシターなどに使用する場合には酸、アルカリ等の電解液に浸漬されるために、使用中に基板からカーボンナノチューブが剥がれることがある。また、ブラシ状カーボンナノチューブは、互いに絡まり合いながら成長するために、直線性に乏しい。特開平10−203810号公報には直流グロー放電によってカーボンナノチューブを垂直配行させるなどの方法が提案されているが、これは工業的生産には向かない。さらに、ブラシ状カーボンナノチューブは、ブラシの先端面に凹凸があり水平でない。
【0032】
上記のような諸問題を解決するには、転写工程において、基板上に成長させたカーボンナノチューブを導電性フィルムに植え付ける際の導電性フィルムの温度を70〜140℃、好ましくは80〜120℃とし、導電性フィルムに植え付けたカーボンナノチューブから基板を剥がす際の温度を50〜0℃、好ましくは35〜0℃とするのがよい。導電性フィルムは、ポリエチレン層と同層を支持する層を少なくとも含む多層フィルムであることが好ましい。ポリエチレン層を支持する層は、耐熱性フィルムからなることが好ましい。耐熱性フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
【0033】
導電性フィルムは、また、カーボンナノチューブ片を1〜30重量%程度添加することにより導電性を付与したポリエチレンフィルムであってもよい。このカーボンナノチューブ片含有フィルムを用いて得られる電子放出素子用電極材料は、導電性フィルムがITO(Indium Tin Oxide)、Ag、Cuなどの金属を含んでいないために酸、アルカリなどに対する耐食性に優れているという利点を有する。導電性フィルムは、転写面にITO、Ag、Cuなどの金属層を有するポリエチレン層からなり、かつ無数の貫通孔が開けられた多孔性導電性フィルムであってもよく、この場合に、導電性フィルムは、カーボンナノチューブ片を1〜30重量%程度添加することにより導電性を付与したポリエチレンフィルムからなり、かつ無数の貫通孔が開けられたものであってもよい。この多孔性導電性フィルムを用いて得られるカーボンナノチューブ電子放出素子用電極材料は、導電性フィルムがITO、Ag、Cuなどの金属を含んでいないために酸、アルカリなどに対する耐食性に優れているという利点を有する。
【0034】
さらに、本発明により作製したカーボンナノチューブは、電界電子エミッタとして非常に優れた特性を有することが明らかとなった。すなわち、近年電子放出素材としてのカーボンナノチューブは、シリコンやモリブデンなどのマイクロエミッタに比べて、真空の制約が緩いこと、高い電流密度が得られること、頑健であることなど優れた特徴を有しているが、シリコン基板に成長したブラシ状カーボンナノチューブを使用すると、カーボンナノチューブの成長方向に対して垂直な方向においてもカーボンナノチューブが互いに絡まり合っているために電気が通じやすく電子を取り出す際の電圧が高いという問題があった。それに対して、本発明によると、カーボンナノチューブ同士が絡まらないために成長方向と垂直な方向において電気が通じにくく(導電性が悪く)、その結果として低い電界を掛けた場合にもカーボンナノチューブの先端から電子が放出しやすくなった。さらに、基材となったフィルムは延伸性を有するので、適当な倍率で延伸するとさらにカーボンナノチューブの間隔が広がり電子放出素子として最適な構造となった。
【0035】
つぎに、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
【0036】
実施例1
(第一工程)
厚さ0.5mmの低抵抗N型半導体シリコン基板上に、Fe錯体の溶液をスプレーで塗布したのち、220℃に加熱することにより鉄の皮膜を生成させた。
【0037】
(第二工程)
基板上の鉄皮膜を化学蒸着装置に入れた。カーボンナノチューブの原料ガスとしてアセチレンを流量30ml/min、温度約720℃、時間15分、化学蒸着装置内に流した。この加熱により鉄皮膜は粒子化し、得られた触媒粒子を核としてブラシ状カーボンナノチューブが生成し、徐々に成長した。成長したカーボンナノチューブは、太さ12nmの多層構造であり、長さは50μmであった。
【0038】
(第三工程)
得られたブラシ状カーボンナノチューブを、フィルム軟化温度以上かつ溶融温度以下(例えば100〜300℃)に加熱した厚さ0.2mmの導電性フィルム(東レ社製のCF48)に、先端から押し付けることにより、カーボンナノチューブを導電性フィルムにフィルム表面に対し実質上垂直に転写した。
【0039】
(第四工程)
転写により、ブラシ状カーボンナノチューブを植え付けた導電性フィルムをその軟化温度以下に冷却した。こうして、カーボンナノチューブ電極を得た。
【0040】
実施例2
この実施例では実施例1の工程を連続的に実施してカーボンナノチューブ電極を得る方法を示す。
【0041】
(第一工程)
図1において、駆動ドラム(1) と従動ドラム(2) によって送り速度12m/hで回転される無端ベルト(3) (厚さ0.5mmの低抵抗N型半導体シリコン基板で構成)の上側上流部の触媒付着ゾーンにおいて、無端ベルト(3) の上面にFe錯体の溶液をスプレー(4) で塗布したのち、220℃に加熱することにより、無端ベルト(3) 上に触媒粒子(12)を100nm間隔で散在するように形成させた。
【0042】
(第二工程)
無端ベルト(3) 上の触媒粒子(12)を触媒付着ゾーン下流の化学蒸着ゾーンへ送った。化学蒸着ゾーンは、ベルト方向に移動方向に約2mの長さを有する加熱炉(5) と、その内部にて無端ベルト(3) の下に配された加熱器(7) とからなる。化学蒸着ゾーンにおいて、カーボンナノチューブの原料ガスとしてアセチレンガスを加熱炉(5) の頂部から流量30ml/minで加熱炉(5) 内へ流入し、無端ベルト(3) 上の触媒粒子(12)を下から熱媒体を循環する加熱器(7) で温度約720℃に加熱した。各触媒粒子が加熱炉(5) を通過する時間は15分であった。触媒粒子(12)が加熱炉(5) 内を移動するに連れて、触媒粒子(12)を核としてその上にブラシ状のカーボンナノチューブ(11)が生成し、上向きに伸びて来た。成長したカーボンナノチューブは、太さ12nmの多層構造であり、長さは50μmであった。
【0043】
(第三工程)
無端ベルト(3) 上の各触媒粒子(12)のカーボンナノチューブ(11)がベルトの移動により化学蒸着ゾーンから従動ドラム(2) の位置、すなわち転写ゾーンへ達し、従動ドラム(2) の外側を回るに伴い徐々に横に倒れる時、カーボンナノチューブ(11)をその先端から厚さ0.2mmの導電性フィルム(8) に押し付けた。導電性フィルム(8) (東レ社製のCF48)は、フィルム供給装置(9) から下向きに送られ、加熱器(10)で軟化温度以上かつ溶融温度以下(例えば100〜300℃)に加熱されている。こうして導電性フィルム(8) にカーボンナノチューブ(11)を押し付けることにより、カーボンナノチューブ(11)を触媒粒子(12)から導電性フィルム(8) にフィルム表面に対し実質上垂直に転写した。
【0044】
(第四工程)
転写によりブラシ状カーボンナノチューブを植え付けた導電性フィルム(8) を、加熱器(10)の下に設けられた冷却器(13)でその軟化温度以下(例えば常温)に冷却した。こうして得られたカーボンナノチューブ電極を巻取ドラム(6) に巻き取った。
【0045】
実施例3
(第一工程)
実施例1と同じ操作を行った。
【0046】
(第二工程)
実施例1と同じ操作を行った。
【0047】
(第三工程)
第二工程で得られた、厚さ0.5mmの低抵抗N型半導体シリコン基板上のブラシ状カーボンナノチューブ(11)を、95℃に加熱した多層導電性フィルムに、先端から押し付けることにより、カーボンナノチューブを導電性フィルムにフィルム表面に対し実質上垂直に植え付けた。多層導電性フィルムは、図2に示すように、転写面側から、厚さ0.01〜0.03μmのITO(Indium Tin Oxide)層(21)、厚さ0.05〜0.5μmのプライマ層(22)、厚さ20〜50μmのポリエチレン層(23)および厚さ50〜180μmのポリエチレンテレフタレート層(24)からなる。ポリエチレンテレフタレート層は、他の耐熱性フィルムからなるものであってもよい。
【0048】
(第四工程)
カーボンナノチューブを植え付けた後、導電性フィルムを25℃に冷却した後、ブラシ状カーボンナノチューブを導電性フィルムに残して同チューブから低抵抗N型半導体シリコン基板を剥がした。こうして、カーボンナノチューブを基板から導電性フィルムに転写し、カーボンナノチューブ電極を得た。
【0049】
この電極のカーボンナノチューブは、低抵抗N型半導体シリコン基板上に成長した際(すなわち転写前)は直径が10〜20nm、長さは10〜50μmであったが、転写後の長さは120μm程度に伸びており、フィルムに対して垂直であった。これは、カーボンナノチューブとフィルムの密着力が大きく、第四工程でシリコン基板を剥がす際にカーボンナノチューブが引っ張り力を受けて約2.4倍に伸びたものと考えられる。
【0050】
実施例4
転写工程において、基板上に成長させたカーボンナノチューブを導電性フィルムに植え付ける際の導電性フィルムの温度を表1に示すように変化させ、また、導電性フィルムに植え付けたカーボンナノチューブから基板を剥がす際の温度を表1に示すように変化させ、実施例3の操作を繰り返した。
【0051】
得られたカーボンナノチューブ電極の転写率、垂直度および密着性を評価した。これらをまとめて表1に示す。
【0052】
【表1】
Figure 0003890470
【0053】
表1中、◎は良好、○は80%程度、△は50%程度、×は不良を示す。
【0054】
表1から分かるように、基板上に成長させたカーボンナノチューブを導電性フィルムに植え付ける際の導電性フィルムの温度を70〜140℃にし、導電性フィルムに植え付けたカーボンナノチューブから基板を剥がす際の温度を50〜0℃の範囲にすると、カーボンナノチューブと基板との密着性が良くてカーボンナノチューブの剥がれがなく、直線性に優れ、かつブラシの先端面が凹凸なく水平であるカーボンナノチューブ電子放出素子用電極材料が得られる。
【0055】
実施例5
(第一工程)
実施例1と同じ操作を行った。
【0056】
(第二工程)
実施例1と同じ操作を行った。
【0057】
(第三工程)
第3図において、第二工程で得られた、厚さ0.5mmの低抵抗N型半導体シリコン基板上のブラシ状カーボンナノチューブ(11)を、95℃に加熱した厚さ0.2mmの導電性フィルム(31)に、先端から押し付けることにより、フィルム表面に対し実質上垂直に植え付けた。この導電性フィルム(31)は、カーボンナノチューブ片(32)を15重量%程度添加することにより導電性を付与したポリエチレンフィルムである。
【0058】
(第四工程)
カーボンナノチューブを植え付けた後、導電性フィルムを25℃に冷却した後、ブラシ状カーボンナノチューブを導電性フィルムに残して同チューブから低抵抗N型半導体シリコン基板を剥がした。こうして、カーボンナノチューブを基板から導電性フィルムに転写し、カーボンナノチューブ電極を得た。
【0059】
この電極のカーボンナノチューブも、実施例3と同様に、同チューブが低抵抗N型半導体シリコン基板に成長した際の長さ50μmから120μmに伸びており、フィルムに対して垂直であった。本実施例によるカーボンナノチューブ電極は導電性フィルムがITO、Ag、Cuなどの金属を含んでいないために酸、アルカリなどに対する耐食性に優れているという利点を有する。
【0060】
実施例6
実施例5で作製したカーボンナノチューブ電極を電界放出型ディスプレー(field emission display)として使用した場合の電子放出特性について測定した。本方法で作成した電極は、既述のように真っ直ぐ伸びており、カーボンナノチューブの長さは約120μmであった。また、カーボンナノチューブの間隔は、100nmであった。
【0061】
電子放出特性は、以下のように測定した。すなわち、カーボンナノチューブ電極を陰極とし、陽極にはITO(indium tin oxide)をコーティングしたガラス基板を用いた。両極間の間隔は、130μm、圧力は6.7×10−7Torrであった。印加電圧を0〜1000Vの間で掛けることにより電流密度と電圧との関係を測定した。10mA/cmの電流密度において、300Vという低い電圧を示した。
【0062】
比較例
実施例6と比較のために、実施例1の第2工程で作製したガラス基板に成長させたブラシ状カーボンナノチューブにより電子放出特性を測定した。実施例6と同じ装置を使用して同じ条件で電流密度と電圧の関係を測定したところ、10mA/cmの電流密度において、400Vであった。実施例1の第2工程で作製したガラス基板に成長させたブラシ状カーボンナノチューブの長さは50μmであり、カーボンナノチューブが互いに絡まり合っていた。また、カーボンナノチューブ間の間隔は、100nmであった。
【0063】
実施例7
実施例6により作製したカーボンナノチューブ電極をXYの両軸にそれぞれ約2倍ずつ延伸させた。その結果、カーボンナノチューブ間の間隔は、200nmとなった。この延伸工程を経たカーボンナノチューブ電極を用いて電子放出特性を実施例6と同じ条件で測定した結果、10mA/cmの電流密度において、250Vであった。比較例,実施例6,実施例7の順番で電圧が低下していったのは、この順番でカーボンナノチューブ同士の接触が少なくなり、カーボンナノチューブの成長方向に直角な方向の導電性が次第に低下したために、カーボンナノチューブからの電子放出が起こりやすくなったためと考えられる。
【0064】
実施例8
実施例3により作製したカーボンナノチューブ電極を実施例6と同じ装置を使用して同じ条件で電子放出特性を測定した。その結果、10mA/cmの電流密度において、300Vであった。すなわち、多層導電性フィルムを使用しても実施例6と同じ結果が得られた。
【0065】
実施例9
実施例8で作製したカーボンナノチューブ電極をXYの両軸にそれぞれ約1.2倍ずつ延伸させた。この延伸工程を経たカーボンナノチューブ電極を用いて電子放出特性を実施例6と同じ条件で測定した結果、10mA/cmの電流密度において、280Vであった。すなわち、多層導電性フィルムを使用した場合においても、実施例7と同様の結果が得られた。
【0066】
なお、実施例6から9までと比較例の結果を表2にまとめて示す。表2において、CNTはカーボンナノチューブを意味している。
【0067】
【表2】
Figure 0003890470
【0068】
【0069】
【発明の効果】
本発明のカーボンナノチューブを用いた電極材料によると、駆動電圧を低減しかつ表示画面を細かくすることができる。またこの発明によるカーボンナノチューブ電極材料の製造方法は、大量生産に向き、コスト的に有利な方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 カーボンナノチューブ電極の連続的な製造方法を示す概略図である。
【図2】 多層導電性フィルムの層構成を示す断面図である。
【図3】 導電性フィルムの構成を示す断面図である。
【図4】 FEDパネルの構造を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
(1) :駆動ドラム
(2) :従動ドラム
(3) :無端ベルト(基板)
(4) :スプレー
(5) :加熱炉
(6) :巻取ドラム
(7) :加熱器
(8) :導電性フィルム
(9) :フィルム供給装置
(10):加熱器
(11):カーボンナノチューブ
(12):触媒粒子
(13):冷却器

Claims (5)

  1. 基板上の触媒粒子を核として成長させたカーボンナノチューブが延伸可能な導電性フィルム上に所定間隔で転写されることにより形成されており、導電性フィルムは、厚さ5〜2000μmの高分子フィルム中に微粒子状導電体が5〜30重量%分散されたものであることを特徴とする、カーボンナノチューブを用いた電子放出素子用電極材料。
  2. 基板上の触媒粒子を核として成長させたカーボンナノチューブを延伸可能な導電性フィルム上に所定間隔で転写し、転写の際の導電性フィルムの温度をその軟化温度以上で溶融温度以下にすることを特徴とする、カーボンナノチューブを用いた電子放出素子用電極材料の製造方法。
  3. 基板上の触媒粒子を核として成長させたカーボンナノチューブを、厚さ5〜2000μmの高分子フィルムの表面に電気伝導性金属が被覆された導電性フィルム上に所定間隔で転写し、転写の際の導電性フィルムの温度をその軟化温度以上で溶融温度以下にすることを特徴とする、カーボンナノチューブを用いた電子放出素子用電極材料の製造方法。
  4. カーボンナノチューブを導電性フィルムにフィルム表面に対し実質上垂直方向に転写することを特徴とする、請求項または記載の電子放出素子用電極材料の製造方法。
  5. 転写の後に、導電性フィルムをその軟化温度以下に冷却することを特徴とする、請求項のいずれかに記載の電子放出素子用電極材料の製造方法。
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