JP3886613B2 - 成形体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂(A)と、特定の化学構造を有する透明化剤(B)を含有するポリ乳酸系樹脂成形体であって、前記ポリ乳酸系樹脂(A)と前記透明化剤(B)の合計重量を基準として、前記ポリ乳酸系樹脂(A)を94〜99重量%、及び、前記透明化剤(B)を6〜1重量%含有し、かつ、lmm厚のヘイズ値が30%以下であることと等価である透明性及びビカット軟化点が100〜160℃であることに相当する耐熱性を併有することを特徴とするポリ乳酸系樹脂成形体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、汎用プラスチックは使用後廃棄する際、ゴミの量を増すうえに、自然環境下で殆ど分解されないために、埋設処理しても、半永久的に地中に残留し、また投棄されたプラスチック類により、景観が損なわれ海洋生物の生活環境が破壊されるなどの問題が起こっている。
これに対し、熱可塑性で分解性を有するポリマーとして、ポリ乳酸のようなポリヒドロキシカルボン酸や、ポリブチレンサクシネートのような脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸から誘導される脂肪族ポリエステル等が開発されてきた。
これらのポリマーの中には、動物の体内で数カ月からl年以内に100%分解し、また、土壌や海水中に置かれた場合、湿った環境下では数週間で分解を始め、約1年 から数年で消滅し、さらに分解生成物は、人体に無害な乳酸と二酸化炭素と水になるという特性を有していることから、医療用材料や汎用樹脂の代替物として注目をあびつつある。
【0003】
一方、近年、エレクトロニクス、メカトロニクス、オプトエレクトロニクス、レーザー(光通信、CD−ROM、CD−R、LDNDVD)光磁気記録等も含む。)、液晶、光学、オフィスオートメーション(OA)、ファクトリーオートメーション等の分野における技術開発の飛躍的進展に伴い、透明なプラスチックフィルムの需要が増し、その用途も飛躍的に拡大しつつある。
その用途の具体例としては、例えば、オーバーへッドプロジェクター用フィルム、製版用フィルム、トレーシングフィルム、食品ラッピングフィルム、農業用フィルム等の用途が挙げられる。
高機能な用途の具体例としては、例えば、透明導電性フィルム(例えば、コンピューター入力用画面タッチパネル等)、熱線反射フィルム、液晶ディスプレー用フィルム、液晶ディスプレー用偏光フィルム、PCB(プリント回路基盤)等が挙げられる。
【0004】
従来これらの用途に、ガラス、アクリル(ポリメチルメタクリレート、PMMA)、ポリカーボネート(PC)等の可撓性(フレキシビリティー)の低い硬質なフィルムが使用されてきたが、最近は、これらの用途においても、可撓性、成形容易性、耐熱性等に優れた透明フィルムでの代替が必要とされる傾向にある。このような代替需要の一部には、ポリエチレンテレフターレート(PET)フィルムで応じることが可能である。
しかしながら、例えば、分解性が要求されるような用途には、PETでは問題となる場合がある。
このような背景から、透明フィルムの技術分野においては、透明性/耐熱性(結晶性)/分解性を併有する透明フィルムの果たす意義は大きいことが予想される。 ところで、分解性、熱可塑性ポリマーであるポリ乳酸や乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸及び/又は脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸のコポリマー等の脂肪族ポリエステルの成形体(例えば、3次元的形状を有するボ卜ル等の成形品、2次元的形状を有する未延伸のフィルムやシート、1次元的形状を有する未延伸のフィラメントや糸)は、通常、成形直後は、非晶性であり、光を散乱する原因となる光の波長と同程度以上の大きさの結晶が殆ど存在しないので透明である。
しかしながら、この透明な成形体は、通常、非晶性であるがゆえに、耐熱性に劣る。
【0005】
例えば、非晶性ポリ乳酸容器は、透明性に優れているが耐熱性が低く、熱湯又は電子レンジを使用することができず、用途が限定されていた。
このため、耐熱性を向上させるために、成形加工時に結晶化温度付近に保持した金型内に充填するか、又は成形後に非晶性の成形品を熱処理(アニール)する等の熱処理して、結晶化度をあげると、通常、光を散乱する原因となる光の波長と同程度以上の大きさの結晶(例えば、球晶)が急速に成長して、結晶を可視光の波長以上の大きさまで成長せしめ、成形体は不透明となってしまう。
【0006】
このように、従来の技術によったのでは、ポリ乳酸や乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸及び/又は脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸のコポリマー等のポリ乳酸系樹脂成形体に、透明性と結晶性を同時に付与することは、あたかも二律背反のごとく、困難であり、さらにはポリ乳酸系樹脂成形体に、透明性と結晶性(耐熱性)を併有するものはないのが実情であった。
【0007】
一方、汎用樹脂に関する技術分野においては、透明核剤(透明化結晶核剤)を添加することにより、球晶の成長を制御し、成形体に透明性を同時に付与する技術が知られている。透明化剤は、結晶について、「大きさ」における過大な成長を抑制する作用、「数」における増大作用、「結晶化速度」における促進作用等があるとされている。
その具体例としては、例えば、ポリプロピレン樹脂にソルビトール誘導体を添加してポリプロピレン樹脂成形体に透明性を付与する技術や、ポリエチレンテレフ夕レートの結晶化速度を促進するため、テレフタル酸とレゾルシンを主な構成単位とする芳香族ポリエステル微粉末を添加する方法等を挙げることができる。
しかしながら、脂肪族ポリエステルに関する技術分野おいては、透明核剤により、結晶について、「大きさ」において過大な成長を抑制し、「数」において増大させ、「結晶化速度」において促進させ、ひいては、成形体に透明性と結晶性を同時に付与する技術は知られていない。
【0008】
[透明核剤の作用メカニズム]
結晶性樹脂成形体における透明核剤による透明性発現のメカニズムは必ずしも明かではない。また、本発明は、特定のメカニズムや仮説に拘束されるものではない。透明核剤を添加して、結晶性樹脂成形体の透明化を図る場合には、通常、結晶成長の条件(例えば、結晶化温度、結晶化時間等)を、適切に設定する必要がある。結晶性樹脂成形体における透明核剤による透明性発現のメカニズムは、例えば、以下のようなモデルにより説明することも可能である。
【0009】
▲1▼ 透明核剤を添加しない結晶性樹脂成形体のモデル
透明核剤を添加せずに、樹脂成形体を結晶化した場合には、透明核剤を添加した場金と比較して、結晶成長の足がかりとなる結晶核が少ないので、相対的に少数の球晶が生成し、結果として、ひとつひとつの球晶の大きさは相対的に圧倒的に大きなものとなってしまう。すなわち、単位体積当たりについて、透明核剤を添加した場合と比較すると、同じ結晶化度であっても、大きな結晶が相対的に少数生成し、結果として、可視光の波長と同程度以上の大きさの結晶が生成するため、可視光を散乱して直進させないため、透明核剤を添加しない結晶性樹脂成形体は、不透明となってしまう。
【0010】
▲2▼ 透明核剤を添加した結晶性樹脂成形体のモデル
透明核剤を添加して、樹脂成形体を結晶化した場合には、透明核剤が結晶成長の足がかかりとなる結晶核となるので、透明核剤を添加しない場合と比較して、相対的に圧倒的多数の結晶が生成し、結果として、ひとつひとつの結晶の大きさは、相対的に圧倒的に小さなものとすることができる。
すなわち、単位体積当たりについて、透明核剤を添加しない場合と比較すると、同じ結晶化度であっても、小さな結晶が相対的に圧倒的多数生成し、結果として、可視光の波長よりもかなり小さな形状の結晶が生成するため、可視光を散乱せずに直進させるため、透明核剤を添加した結晶性樹脂成形体を、透明とすることができる。
【0011】
[脂肪族ポリエステルの透明核剤]
本発明者らは、ポリ乳酸系樹脂の成形体に、透明性と結晶性を同時に発現せしめることは、極めて有意義な解決課題であると想到した。本発明者らによるこのような問題の所在の把握は、従来、当業者によっては、まったく認識されてこなかった。
本発明者らは、このような観点から、実際にポリ乳酸や乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸及び/又は脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸のコポリマー等のポリ乳酸系樹脂に、透明核剤として、ポリプロピレン樹脂用の透明核剤であるソルビトール誘導体や、リン系の核剤、タルク、シリカ、乳酸カルシウムあるいは安息香酸ナトリウム等を使用して射出成形を試みたが、これらのみでは、これらポリ乳酸系樹脂成形体に、透明性と結晶性を同時に付与せしめることはできなかった。
このように、ポリ乳酸や乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸及び/又は脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸のコポリマー等のポリ乳酸系樹脂に関しては、一般的な射出成形、ブロー成形、圧縮成形等の成形技術において、成形時又は成形の前後において、公知公用の透明核剤を用いても、透明性と結晶性(耐熱性)を同時発現することは困難であった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、透明性と結晶性(耐熱性)とを同時に有する、ポリ乳酸をはじめとするポリ乳酸系樹脂成形体を得ることを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の化学構造を有する化合物をポリ乳酸系樹脂に添加し、成形時又は成形後に、成形体を結晶化させることにより、透明性と結晶性(耐熱性)を併有する成形体が得られることを見い出だし、本発明を完成するに至った。本発明は、以下の[1]〜[10]に記載した事項により特定される。
【0014】
[1] ポリ乳酸系樹脂(A)と、一般式(1)[化1]で表される化合物群から選択された少なくとも一種の透明化剤(B)を含有するポリ乳酸系樹脂成形体であって、前記ポリ乳酸系樹脂(A)と前記透明化剤(B)の合計重量を基準として、前記ポリ乳酸系樹脂(A)を94〜99重量%、及び、前記透明化剤(B)を6〜1重量%含有し、かつ、lmm厚のヘイズ値が30%以下であることと等価である透明性及びビカット軟化点が100〜160℃であることに相当する耐熱性を併有することを特徴とするポリ乳酸系樹脂成形体。
【0015】
【化3】
(一般式(1)において、R1 、R2 は炭素原子数1〜30の飽和、不飽和炭化水素で、直鎖状、分岐状の炭化水素基であり、nは、1〜4の整数である。)
[2] ポリ乳酸系樹脂が、
ポリ乳酸、ポリ乳酸ブロックとポリブチレンサクシネートブロックを有する共重合体、ポリ乳酸ブロックとポリカプロン酸ブロックを有する共重合体からなる群から選択された少なくとも一種である[1]に記載したポリ乳酸系樹脂成形体。
【0016】
[ 3 ] 一般式(1)[化1]で表される化合物群から選択された少なくとも一種の透明化剤(B)が、ジイソデシルアジペートである [ 1 ] 又は [ 2 ] に記載したポリ乳酸系樹脂成形体。
[ 4 ] ポリ乳酸系樹脂(A)と、一般式(1)[化2]で表される化合物群から選択された少なくとも一種の透明化剤(B)を含有するポリ乳酸系樹脂成形体の製造方法であって、前記ポリ乳酸系樹脂(A)と前記透明化剤(B)の合計重量を基準として、前記ポリ乳酸系樹脂(A)を94〜99重量%、及び、前記透明化剤(B)を6〜1重量%含有するポリ乳酸系樹脂組成物を成形するに際し、成形時又は成形後に熱処理することを特徴とする、lmm厚のヘイズ値が30%以下であることと等価である透明性及びビカット軟化点が100〜160℃であることに相当する耐熱性を併有することを特徴とするポリ乳酸系樹脂成形体の製造方法。
【0017】
【化4】
(一般式(1)において、R 1 、R 2 は炭素原子数1〜30の飽和、不飽和炭化水素で、直鎖状、分岐状の炭化水素基であり、nは、1〜4の整数である。)
【0018】
[ 5 ] 熱処理方法が、ポリ乳酸系樹脂組成物を一旦溶融した後、ポリ乳酸系樹脂組成物の結晶化開始温度から結晶化終了温度迄の温度範囲に保温された金型内に充填し結晶化させることを特徴とする、 [ 4 ] に記載した製造方法。
[ 6 ] 熱処理方法が、ポリ乳酸系樹脂組成物の溶融物を、金型内で冷却固化して非晶性成形体を得た後、その成形体をポリ乳酸系樹脂(A)のガラス転移温度から融点迄の温度範囲で結晶化することを特徴とする、 [ 4 ] に記載した製造方法。
[ 7 ] 熱処理方法が、ポリ乳酸系樹脂組成物の非晶性成形体を得た後、その成形体をポリ乳酸系樹脂(A)のガラス転移温度から融点迄の温度範囲で結晶化することを特徴とする、 [ 4 ] に記載した製造方法。
【0019】
[ 8 ] ポリ乳酸系樹脂が、ポリ乳酸、ポリ乳酸ブロックとポリブチレンサクシネートブロックを有する共重合体、ポリ乳酸ブロックとポリカプロン酸ブロックを有する共重合体からなる群から選択された少なくとも一種である、 [ 6 ] 乃至 [ 7 ] の何れかに記載した製造方法。
[ 9 ] 一般式(1)[化2]で表される化合物群から選択された少なくとも一種の透明化剤(B)が、ジイソデシルアジペートである [ 4 ] 乃至 [ 8 ] の何れかに記載した製造方法。
【0020】
[10] [ 4 ] 乃至 [ 9 ] の何れかに記載した製造方法により得られた、lmm厚のヘイズ値が30%以下であることと等価である透明性及びビカット軟化点が、100〜160℃であることに相当する耐熱性を併有するポリ乳酸系樹脂成形体。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
[ポリ乳酸系樹脂]
本発明において、ポリ乳酸系樹脂とは、ポリ乳酸、乳酸とヒドロキシカルボン酸のコポリマー(例えば、乳酸とグリコール酸のコポリマー、乳酸とカプロン酸のコポリマー、ポリ乳酸とポリカプロン酸のブロックコポリマー等)、乳酸及び脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸のコポリマー(例えば、乳酸とブタンジオールとコハク酸及びアジピン酸のコポリマー、乳酸とエチレングリコール及びブタンジオールとコハク酸のコポリマー、ポリ乳酸とポリブチレンサクシネートのブロックコポリマー等)、及びそれらの混合物を包含する。又、混合物の場合、相溶化剤を含有してもよい。ポリ乳酸系樹脂がコポリマーの場合、コポリマーの配列の様式は、ランダム共重合体、交替共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれの様式でもよい。さらに、これらは少なくとも一部が、キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート等のような多価イソシアネートやセルロース、アセチルセルロースやエチルセルロース等のような多糖類等の架橋剤で架橋されたものでもよく、少なくとも一部が、線状、環状、分岐状、星形、三次元網目構造、等のいずれの構造をとってもよく、何ら制限はない。
【0022】
本発明のポリ乳酸系樹脂において、ポリ乳酸、特にポリ−L−乳酸、ポリカプロン酸、特にポリ−ε−カプロン酸、ポリ乳酸とポリ−6−ヒドロキシカプロン酸のブロックコポリマー、特にポリ−L−乳酸とポリ−6−ヒドロキシカプ口ン酸のブロックコポリマー、ポリ乳酸とポリブチレンサクシネートのブロックコポリマー、特にポリ−L−乳酸とポリブチレンサクシネートのブロックコポリマーが好ましい。
【0023】
[脂肪族ヒドロキシカルボン酸]
本発明においてポリ乳酸系樹脂を構成する脂肪族ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、例えば、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシ酩酸、4−ヒドロキシ酩酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酪、6−ヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。これらは一種類又は二種類以上の混合物であってもよい。また脂肪族ヒドロキシカルボン酸が不斉炭素を有する場合、L体、D体、及びその混合物、すなわち、ラセミ体であってもよい。
【0024】
[脂肪族多価カルボン酸及びその無水物]
本発明においてポリ乳酸系樹脂を構成する脂肪族多価カルボン酸の具体例としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸等及びその無水物等が挙げられる。これらは一種類又は二種類以上の混合物であってもよい。
【0025】
[脂肪族多価アルコール]
本発明においてポリ乳酸系樹脂を構成する脂肪族多価アルコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、l,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらは一種類又は二種類以上の混合物であってもよい。
【0026】
[多糖類]
多糖類の具体例としては、例えば、セルロース、硝酸セルロース、酢酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロイド、ビスコースレーヨン、再生セルロース、セロハン、キュプラ、銅アンモニアレーヨン、キュプロファン、ベンベルグ、ヘミセルロース、デンプン、アミロペクチン、デキストリン、デキストラン、グリコーゲン、ペクチン、キチン、キトサン、アラビアガム、グァーガム、ローカストビーンガム、アカシアガム、等、及びこれらの誘導体が挙げられるが、特にアセチルセルロース、エチルセルロースが好的に用いられる。
これらは、一種類又は二種類以上の混合物であってもよい。
【0027】
[ポリ乳酸系樹脂の分子量]
本発明において使用するポリ乳酸系樹脂の分子量は、目的とする用途、例えば包装材及び容器などの成形体にした場合に、実質的に充分な機械物性を示すものであれば、その分子量は、特に制限されない。
ポリ乳酸系樹脂の分子量としては、一般的には、重量平均分子量として、1〜500万が好ましく、3〜300万がより好ましく、5〜200万がより好ましく、7〜100万がさらに好ましく、9〜50万が最も好ましい。
一般的には、重量平均分子量がl万より小さい場合、機械物性が充分でなかったり、逆に、分子量が500万より大きい場合、取扱いが困難となったり不経済となったりする場合がある。
本発明において使用するポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量及び分子量分布は、その製造方法において、溶媒の種類、触媒の種類及び量、反応温度、反応時間
、共沸により留出した溶媒の処埋方法、反応系の溶媒の脱水の程度等の反応条件を適宜選択することにより所望のものに制御することができる。
【0028】
[ポリ乳酸系樹脂の製造方法]
本発明のポリ乳酸系樹脂の製造方法は、特に制限されない。
例えば、ポリ乳酸及び構造単位に乳酸を有するポリ乳酸系樹脂の製造方法の具体例としては、特開平6−65360号に開示されている方法を参考した、後述の製造例2に示すような方法が挙げられる。
すなわち、乳酸及び/又は乳酸以外のヒドロキシカルボン酸を、あるいは脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を、有機溶媒及び触媒の存在下、そのまま脱水縮合する直接脱水縮合法である。
構造単位に乳酸を有するポリ乳酸系樹脂の製造方法の他の参考例としては、例えば、特開平7−173266号に開示されている方法を参考した、後述の製造例3〜6に示すような方法が挙げられる。
すなわち、少なくとも2種類のポリ乳酸系樹脂のホモポリマーを重合触媒の存在下、共重合並びにエステル交換反応させる方法である。
ポリ乳酸の製造方法の他の具体例としては、例えば、米国特許第2,703,316号に開示されている方法を参考にした、後述の製造例1に示すような方法が挙げられる。
すなわち、乳酸及び/又は乳酸以外のヒドロキシカルボン酸を、一旦、脱水し環状二量体とした後に、開環重合する間接重合法である。
【0029】
[透明化剤]
本発明において使用される透明化剤は、一般式(1)[化5]で示される脂肪酸エステル類である。
【0030】
【化5】
(一般式(1)において、R1 、R2 は炭素原子数1〜30の飽和、不飽和炭化水素で、直鎖状、分岐状の炭化水素基であり、nは、1〜4の整数である。)
本発明方法における脂肪酸エステル類の具体例としては、ジメチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等があげられる。特に、ジイソデシルアジペートが好ましい。
【0031】
[透明化剤の添加量]
透明化剤のポリ乳酸系樹脂への添加量は、ポリ乳酸系樹脂組成物に対して1〜6重量%になるように添加でき、好ましくは、1.5〜5.5重量%、さらに好ましくは2.0〜5.0重量%である。
1重量%より小さいと、透明化剤としての効果が不十分となる場合があり、逆に6重量%より大きくなると、透明化剤としての効果は得られなくなるばかりか、結晶化した際に透明性が悪くなったりする等、外観や物性(剛性)に変化を来す場合がある。
【0032】
[無機添加剤]
本発明の製造方法により製造する成形体には、成形体の透明性を損なわない限り、結晶化速度の向上、耐熱性の向上、機械物性の向上、耐ブロッキング性の向上等の諸物性を改善するために無機添加剤を添加することもできる。
無機添加剤の具体例としては、例えば、タルク、カオリナイト、SiO2、クレー等が挙げられるが、成形体の透明性を損なわないように適宜、条件(添加量、粒子サイズ)を選択する必要がある。成形体の透明性を保持する為には、一般的に可視光の波長よりも実質的に小さな粒子サイズを選択することが推奨される。
【0033】
より具体的には、耐ブロッキング性の物性改良を目的とした場合、例えば、粒径が1〜50nmのSiO2等が透明性を損なうことなく好適に用いられる。
本発明の製造方法において、成形時の金型内での結晶化や生成した成形体の熱処理による結晶化などの成形加工時の結晶化速度をさらに向上させることを目的とした場合、SiO2成分を10重量%以上含む結晶性の無機物が好ましく、具体的には、タルクTM−30(富士タルク社製)、カオリンJP−100(土屋カオリン社製)、NNカオリンクレー(土屋カオリン社製)、カオリナイトASP−170(富士タルク社製)、カオリンUW(エンゲルハード社製)、タルクRF(富士タルク社製)等が挙げられる。この場合、粒径が小さく、樹脂と溶融混練した場合に凝集することなく良好に分散するものが好適に用いられる。
【0034】
[無機添加剤の添加量]
無機添加剤の添加量は、成形体の透明性を極端に損なわない程度の量が好ましく、ポリ乳酸系樹脂組成物100重量部に対して、30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下、最も好ましくはl重量%以下が好適である。
【0035】
本発明の製造方法により製造する成形体には、さらに、成形体の透明性を損なわない限り、各種エラストマー(SBR、NBR、SBS型3元ブロック共重合体熱可塑性エラストマー等)や添加剤(可塑剤、顔料、安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、離型剤、滑剤、染料、抗菌剤)、フィラー(耐衝撃性コア/シェル型粒子、インパクトモディフアイアー等)、顔料(メタリック顔料、パール顔料)を目的や用途に応じて適宜使用することができる。
【0036】
[成形加工法]
<混合・混練・捏和>
本発明において、ポリ乳酸系樹脂と一般式(1)[化5]で示される化合物群から選択された少なくとも一種の透明化剤を、混合・混練・捏和してポリ乳酸系樹脂組成物を製造する方法は、公知公用の混練技術、例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー等で各原料を混合させたり、又、さらに押出機等を用いて溶融したポリマーに液注入させながら混練させる方法を採用することができる。
【0037】
< 成形 >
以下に、本発明の目的とする透明性と結晶性を併有する成形体を製造する方法について説明する。
本発明は、前述したポリ乳酸系樹脂樹脂組成物を成形時、又は成形後に結晶化させることで、透明性と結晶性を併有する成形体を製造する方法である。
成形方法としては、一般に射出成形、押出成形、ブロー成形、インフレーション成形、異形押出成形、射出ブロー成形、真空圧空成形、紡糸等の通常の方法が挙げられるが、本発明で示す樹脂組成物においては、いずれの成形方法にも適応でき、何ら制限はない。
本発明では、ポリ乳酸系樹脂組成物を、成形時、又は成形後において、成形体を何らかの方法(例えば、熱処理)で結晶化させる必要がある。その具体例としては、例えば、成形時に該組成物の溶融物を金型内に充填し、金型内でそのまま結晶化させる方法(以下、金型内結晶化法という)、及び該組成物の非晶性の成形体を熱処理する方法(以下、後結晶化法という)を挙げることができる。この金型内結晶化法及び後結晶化法では、成形体を結晶化する際の最適の温度条件は異なる。
【0038】
▲1▼ 金型内結晶化法における結晶化の温度条件
金型内結晶化法の場合、金型の設定温度条件は、該組成物の示差走査熱量分析における降温時の結晶化開始温度から、結晶化終了温度までの温度範囲が好ましく、結晶化ピークの頂点付近の温度がより好ましい。結晶化開始温度より高い温度では、結晶化速度が著しく小さくなり、生産性、操作性が悪くなったり、さらには結晶化しなくなり、目的とする成形体が得られない場合があり、逆に結晶化終了温度より低い温度では結晶化速度が著しく小さく、目的とする成形体が得られない場合がある。この方法では、金型内の保持時間は、該組成物によっても異なるが、金型内で、成形体が十分に結晶化するにたる時間以上であれば、特に制限はない。
【0039】
▲2▼ 後結晶化法における結晶化の温度条件
一方、後結晶化法の場合、金型の設定温度条件は、該組成物のガラス転移温度(Tg)から融点(Tm)までの温度範囲、より好ましくは(Tg+5℃)から(Tm−20℃)、さらに好ましくは(Tg+l0℃)から(Tm−30℃)最も好ましくは(Tg+15℃)から(Tm−40℃)までの温度範囲がよい。設定温度がTmより高い場合は、短時間で結晶化させても透明性を損ねたり、形状が歪んだりする場合があり、さらに長時間加熱すると融解する場合がある。逆にTgより低い温度では、結晶化速度が著しく小さく、目的とする結晶性の成形体が得られない場合がある。この方法では成形体を熱処理する時間は、組成物により異なるが、成形体が十分に結晶化するに足る時間以上であれば、特に制限されない。
【0040】
< 透明性と結晶性を併有する成形体を製造する方法の態様 >
以下に、本発明に係る、成形体に透明性と結晶性を同時に付与することができる成形体の成形方法の態様を説明する。
【0041】
▲1▼ 射出成形 (金型内結晶化法)
射出成形(金型内結晶化法)においては、例えば、後述する製造例2で得られたポリ乳酸に透明化剤を添加し組成物のペレットの溶融物を、結晶化開始温度から結晶化終了温度の温度範囲内に保持された金型内に充填し保持することにより、本発明で目的とする透明性と結晶性を併有する成形体を成形することができる。
【0042】
▲2▼ 射出成形 (後結晶化法)
射出成形(後結晶化法)においては、例えば、上記▲1▼に示したペレットを用いて金型温度20℃で成形して得られた非晶性な成形体を、Tg(58℃)からTm(165℃)の温度範囲内の雰囲気下に保持したり、又は適当な熱媒体と接触させることにより、本発明で目的とする透明性と結晶性を併有する射出成形体を成形することができる。
【0043】
▲3▼ 押出成形 (後結晶化法)
押出成形(後結晶化法)においては、例えば、上記▲1▼に示したペレットを、一般的なTダイ押出成形機で成形した非晶性のフィルムやシートを、Tg(58℃)からTm(165℃)の範囲内に保持されたオーブン(加熱炉)中や温水中に連続的に通過させ熱処理したり、あるいはバッチ的に熱処理したりすることにより、本発明で目的とする透明性と結晶性を併有するシートやフィルムを成形することができる。
【0044】
▲4▼ ブロー成形(後結晶化法)
ブロー成形(後結晶化法)においては、上記▲1▼に示したペレットを、一般的なブロー成形機で溶融して金型に充填することにより非晶性な予備成形体を得た後、得られた予備成形体をオーブン(加熱炉)中で加熱した後に、Tg(58℃)からTm(165℃)の範囲内に保持された金型内に入れて、圧力空気を送出してブローすることにより、本発明で目的とする透明性と結晶性を併有するブローボトルを成形することができる。
ここで、圧力空気として、高温[例えば、室温(25℃)以上からTm(165℃以下の温度]のものを用いると、成形体の結晶化に要する時間を短縮することができる。
【0045】
▲5▼ 真空成形・真空圧空成形(金型内結晶化法)
上記▲3▼と同様な方法により成形した非晶性なフィルムを、一般的な真空成形機により、結晶化開始温度から結晶化終了温度の範囲内に保持された金型内で真空成形又は真空圧空成形することにより、本発明で目的とする透明性と結晶性を併有する成形体を成形することができる。
ここで、圧力空気として、高温[例えば、室温(25℃)以上からTm(165℃以下の温度]のものを用いると、成形体の結晶化に要する時間を短縮することができる。
【0046】
▲6▼ 真空成形・真空圧空成形(結晶性フィルムの真空成形)
上記▲3▼と同様な方法により成形した結晶性のフィルムを、真空圧空成形することにより、本発明で目的とする透明性と結晶性を併有する成形体を成形することができる。
以上のような成形方法により成形して得られた本発明のポリ乳酸系樹脂成形体は、結晶性と透明性を併有し、高い耐熱性を有する。
【0047】
本発明において、ポリ乳酸系樹脂成形体が透明性を有するということは、厚みがlmmの該成形体と新聞を重ねた場合に、該成形体を介して新聞の文字を認識できる程度の透明性を有することを意味し、厚みがlmmの該成形体のヘイズが30%以下であることを意味する。
本発明において、ポリ乳酸系樹脂成形体が耐熱性であるということは、X線回折法により測定された結晶化度が10%以上であることを意味する。
つまり、耐熱性であるということは、ビカット軟化点(ビカット軟化温度)測定(ASTM D1525)において、ビカット軟化点(ビカット軟化温度)が、100〜160℃であることを意味する。
本発明の製造方法により、結晶化度が10%以上であり、厚みがlmmにおいてヘイズが30%以下の結晶性(耐熱性)と透明性を併有するポリ乳酸系樹脂成形体が得られる。
本発明の製造方法により、結晶化度が30%以上であっても、厚みがlmmにおいてヘイズが30%以下、20%以下、15%以下、さらには10%以下の結晶性(耐熱性)と透明性を併有するポリ乳酸系樹脂成形体が得られる。
【0048】
本発明の透明性、結晶性(耐熱性)及び分解性を有するポリ乳酸系樹脂成形体は、公知、公用の成形法で得られる射出成形品、フィルム、袋、チューブ、シート、カップ、ボトル、トレー、糸等を包含し、その形状、大きさ、厚み、意匠等に関して何ら制限はない。
具体的には、本発明の成形体は、食品包装用袋、食器やフォーク、スプーン、乳製品や清涼飲料水及び酒類等用のボトル、ラップフィルム等の食品用の容器、トレイ、ボトル及びフィルム、化粧品容器、ゴミ袋、かさ、(粘着)テープ、エアーマット、漂白剤用の容器、液体洗剤類用のボトル等の日用雑貨品、テント、防水シート等のレジャー用品、医療器具、医療材料、医薬品等の容器や包装材品、つり糸、魚網、農業用品の容器や包装材及びカプセル、肥料用の容器や包装材及びカプセル、種苗用の容器や包装材及びカプセル、農園芸用フィルム、製品包装用フィルム、オーバーヘッドプロジェク夕一用フィルム、熱線反射フィルム、液晶ディスプレー用フィルム等に用いることができる。
【0049】
この他、本発明の方法で得られるフィルムやシートは、紙や他のポリマー等の他の材質のシートと、接着剤や熱融着によるラミネートや貼り合わせ等により、多層構造の積層体とすることもできる。
特に、従来、ポリ乳酸やポリ乳酸ブロックとポリブチレンサクシネートブロックを有する共重合体のような透明性に優れているポリ乳酸系樹脂の非晶性のフィルムを、例えば、紙等に熱ラミネーションした場合、ラミネーション時の熱により、結晶化し、不透明になるという問題があった。
したがって、透明性が要求される用途の場合、熱ラミネーション時の熱処理条件を限定したり、接着剤を用いるラミネーション方法が好ましく用いられ、さらには、透明性と耐熱性を要求される用途の場合は、該樹脂組成物を用いることはできなかった。
しかしながら、本発明の透明化剤を含むそれらの樹脂組成物を用いた場合、例えば、透明な非晶性フィルムをそのまま紙等に熱ラミネーシヨンし、紙等への貼り合わせと該組成物の結晶化を同時に行ってもよい。
また、一旦熱ラミネーションした積層体をさらに熱処理して結晶化させてもよい。いずれの条件下でも、その透明性を維持し、さらには、耐熱性を付与した積層体を得ることができる。
【0050】
【実施例】
以下に製造例、実施例及び比較例等を示し、本発明を詳述する。
なお、本出願の明細書における合成例、実施例、比較例、態様等の記載は、本発明の内容の理解を支援するための説明であって、その記載は本発明の技術的範囲を狭く解釈する根拠となる性格のものではない。
【0051】
A.製造例
実施例及び比較例において使用するポリ乳酸系樹脂の製造方法を以下に示す。なお、文中に部とあるのはいずれも重量基準である。
また、重合体の平均分子量(重量平均分子量Mw)はポリスチレンを標準としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより以下の条件で測定した。
▲1▼ 装置 :島津LC−IOAD
▲2▼ 検出器:島津RID−6A
▲3▼ カラム:日立化成GL−S350DT−5、GL−S370DT−5
▲4▼ 溶 媒:クロロホルム
▲5▼ 濃 度:l%
▲6▼ 注入量:20μ1
[製造例1] < ポリマーA(ポリL−ラクタイド)の製造>
L−ラタタイド100重量部及びオクタン酸第一錫0.01部と、ラウリルアルコール0.03部を、攪拌機を備えた肉厚の円筒型ステンレス製重合容器へ封入し、真空で2時間脱気した後窒素ガスで置換した。この混合物を窒素雰囲気下で攪拌しつつ200℃で3時間加熱した。温度をそのまま保ちながら、排気管及びガラス製受器を介して真空ポンプにより徐々に脱気し反応容器内を3mmHgまで減圧にした。脱気開始からl時間後、モノマーや低分子量揮発分の留出がなくなったので、容器内を窒素置換し、容器下部からポリマーをストランド状に抜き出してペレット化し、L−ラクタイドのホモポリマー(ポリマーA)を得た。収率は78%、重量平均分子量Mwは、13.6万であった。
【0052】
[製造例2] < ポリマーB(ポリL−乳酸)の製造>
Dien−Starkトラップを設置した100リットルの反応器に、90%L−乳酸10kgを150℃/50mmHgで3時間攪拌しながら水を留出させた後、錫末6.2gを加え、150℃/30mmHgでさらに2時間攪拌してオリゴマー化した。このオリゴマーに錫末28.8gとジフェニルエーテル21.1kgを加え、150℃/35mmHg共沸脱水反応を行い、留出した水と溶媒を水分離器で分離して溶媒のみを反応器に戻した。2時間後、反応器に戻す有機溶媒を46kgのモレキュラシーブ3Aを充填したカラムに通してから反応器に戻るようにして、150℃/35mmHgで40時間反応を行い、重量平均分子量14.6万のポリ乳酸の溶液を得た。この溶液に脱水したジフェニルエーテル44kgを加え、希釈した後40℃まで冷却して、析出した結晶を瀘過し、l0kgのn−ヘキサンで3回洗浄して60℃/50mmHgで乾燥した。この粉末を0.5N−HCl12kgとエタノールl2kgを加え、35℃でl時間攪拌した後瀘過し、60℃/50mmHgで乾燥して、白色粉末のポリ乳酸6.lkg(収率85%)を得た。このポリ乳酸(ポリマーB)の重量平均分子量Mwは、14.5万であった。
【0053】
[製造例3]< コポリマーC(ポリブチレンサクシネート/ポリ乳酸共重合体)の製造>
1,4−ブタンジオール50.5gとコハク酸66.5gにジフェニルエーテル293.0g)金属錫2.02gを加え、130℃/140mmHgで7時間系外に水を留出しながら加熱攪拌しオリゴマー化した。これに、Dean−Stark trapを取り付け、140℃/30mmHgで8時間共沸脱水を行いその後、モレキュラーシーブ3Aを40g充填した管を取り付け、留出した溶媒がモレキュラーシーブ管中を通って反応器に戻るようにし、130℃/17mmHgで49時間攪拌した。その反応マスを600mlのクロロホルムに溶かし、4リットルのアセトンに加え再沈した後、HClのイソプロピルアルコール(以下IPAと略す)溶液(HCl濃度0.7wt%)で0.5時間スラッジングし(3回)、IPAで洗浄してから減圧下60℃で6時間乾燥し、ポリブチレンサクシネート(以下PSBと略す)を得た。このポリマーの重量平均分子量Mwは、11.8万であった。
得られたポリブチレンサクシネート80.0gに、製造例2と同様な方法で得られたポリ乳酸120.0g(重量平均分子量Mwは2.0万)、ジフェニルエーテル800g)金属錫0.7gを混合し、再び130℃/17mmHgで20時間脱水縮合反応を行った。反応終了後、製造例2と同様に後処理を行い、ポリブチレンサクシネートとポリ乳酸とのコポリマー188g(収率94%)を得た。このポリブチレンサクシネートとポリ乳酸とのコポリマー(コポリマーC)の重量平均分子量Mwは14.0万であった。
【0054】
[製造例4] < コポリマーD(ポリブチレンサクシネート/ポリ乳酸共重合体)の製造>
ポリブチレンサクシネート40.0g(重量平均分子量Mwは11.8万)、ポリ乳酸160.0g(重量平均分子量Mwは5.0万)を用いた他は、製造例3と同様な方法で行った結果、ポリブチレンサクシネートとポリ乳酸とのコポリマー(コポリマーD)を得た。収率は96%、重量平均分子量Mwは13.6万であった。
【0055】
[製造例5]<コポリマーE(ポリブチレンサクシネート/ポリ乳酸共重合体)の製造>
ポリブチレンサクシネート20.0g(重量平均分子量Mwは11.8万)、ポリ乳酸180.0g(重量平均分子量Mwは10.0万)を用いた他は、製造例3と同様な方法で行った結果、ポリブチレンサクシネートとポリ乳酸とのコポリマー(コポリマーE)を得た。収率は94%、重量平均分子量Mwは14.2万であった。
【0056】
[製造例6]<コポリマーF(ポリカプロン酸/ポリ乳酸共重合体)の製造>
乳酸のかわりに、6−ヒドロキシカプロン酸を用いた他は製造例2と同様な方法で反応を行った結果、ポリカプロン酸(重量平均分子量Mwは15.0万)を得た。次に得られたポリカプロン酸20.0gとポリ乳酸180.0g(重量平均分子量Mwは10.0万)を用い製造例4と同様な方法で行い、ポリカプロン酸とポリ乳酸とのコポリマ(コポリマーF)を得た。収率は92%、重量平均分子量Mwは15.3万であった。
【0057】
B.評価方法
[物性の評価]
製造例1〜6で得たポリ乳酸系樹脂組成物を用いて製造した成形体の物性の評価条件は、以下のとおりである。
▲1▼ 透明性 (ヘイズ)
JIS K−6714に従い、東京電色製Haze Meterを使用して測定した。
【0058】
▲2▼ 結晶化度
X線回折装置(理学電機製、Rint1500型)にて成形後の試験片を測定し、得られたチャートの結晶ピーク面積の総面積に対する比率を求めた。
▲3▼ 耐熱性 [ビカット軟化温度(ASTM−D1525)]
荷重1kgfの条件で成形後の試験片を測定。
【0059】
▲4▼ 結晶化開始温度、結晶化終了温度
示差走査熱量分析装置(島津製作所製、DSC−50)にて成形体を一旦溶融した後、10℃/minの条件下で降温した時の結晶化ピークが認められた温度を結晶化開始温度、結晶化ピークが認められなくなった温度を結晶化終了温度とした。
【0060】
▲5▼ ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)
示差走査熱量分析装置(島津製作所製、DSC−50)にて成形体を10℃/minの条件下で昇温した時のゴム状に変わる点をガラス転移点(Tg)、融解ピークの頂点を融点(Tm)とした。
【0061】
C.実施例及び比較例
以下の実施例において、成形体を熱処理している場合、金型内結晶化操作で降温時に結晶化している場合は、降温時の結晶化開始温度以下から結晶化終了温度以上である範囲内に設定し、又成形後熱処理操作で昇温時に結晶化している場合は、ガラス転移温度以上から融点以下である温度範囲内に設定した。
【0062】
[実施例1〔射出成形〕]
製造例2で得られたポリ乳酸95重量部、透明化剤としてジイソデシルアジペート5重量部をヘンシェルミキサーで充分に混合した後、押出機シリンダー設定温度170〜210℃の条件にてペレット化した。該ペレットを日本製鋼所製JSW−75射出成形機、シリンダー設定温度180〜200℃の条件にて溶融し、設定温度30℃の金型に充填し、冷却時間は30秒としてl.0mm厚の透明な平滑な平板成形体を得た。この平板の透明性(ヘイズ)は2%、結晶化度は0%、ビカット軟化点は58℃であった。
この平板を乾燥機中で120℃/5minで熱処理した。得られた平板の透明性(ヘイズ)は6%、結晶化度40%、ビカット軟化点は150℃であった。結果を表−1[表1]に示す。
【0063】
[実施例1−2〜1−6〔射出成形〕]
ポリマー、透明化剤の添加量を表−1[表1]に示すように変更した以外は、実施例1−1と同様にして行い、それぞれ得られた平板の透明性(ヘイズ)、結晶化度、ビカット軟化点を測定した。結果を表−1[表1]に示す。
【0064】
[比較例1−1〜1−6〔射出成形〕]
透明化剤のジイソデシルアジペートを除いた他は、実施例1と同様な方法で行った。それぞれ得られた平板の透明性(ヘイズ)、結晶化度、ビカット軟化点を測定した。結果を表−2[表2]に示す。
【0065】
[実施例2−1〔ブロー成形〕]
ポリマーとして製造例2で得られたポリ乳酸、透明化剤としてジイソデシルアジペート5重量%をヘンシェルミキサーで充分に混合した後、押出機シリンダー設定温度170〜210℃の条件にてペレット化した。該ペレットを射出ブロー成形機(日精ASB機械製、ASB−50)、シリンダー設定温度180〜200℃の条件にて溶融し、設定温度20℃の金型(A)に充填、冷却時間は30秒、2.0mm肉厚の予備成形体(有底パリソン)を得た。得られたパリソンを加熱炉中にてパリソン温度を120℃に加熱し、さらに温度を120℃に保持した金型(B) に入れ、圧力空気の圧力4kgf/cm2の条件下で、たて倍率
2倍、よこ倍率2倍にし、内容積500mlの容器を得た。得られた容器(厚み0.5mm)の透明性(ヘイズ)は3%(lmm厚のヘイズに換算すると7%)、結晶化度は43%、ビカット軟化点は150℃であった。
【0066】
[比較例2−1〔ブロー成形〕]
透明化剤(ジイソデシルアジペート)を除いた以外は、実施例4と同様な方法で行った。得られた容器(厚み0.5mm)の透明性(ヘイズ)は75%(lmm厚のヘイズに換算すると80%)、結晶化度は45%、ビカット軟化点は150℃であった。
【0067】
[比較例2−2〔ブロー成形〕]
パリソン温度を55℃、金型(B)温度を30℃にした以外は、実施例4−1と同様な方法で行った。得られた容器(厚み0.5mm)の透明性(ヘイズ)は1.3%(lmm厚のヘイズ値に換算すると3%)、結晶化度は0%、ビカット軟化点は59℃であった。
【0068】
[実施例3−1〔押出成形〕]
ポリマーとして製造例1で携られたポリ乳酸、透明化剤としてジイソデシルアジペート5重量%をヘンシェルミキサーで充分に混合した後、押出機シリンダー設定温度170〜210℃の条件にてペレット化した。該ペレットをTダイ50mmΦ押出機(フロンティア製、ダイ幅400mm)シリンダー設定温度180〜200℃の条件にて溶融し、ダイ温度185℃にて透明な0.5mm厚のシートを得た。このシート(厚み0.5mm)の透明性(ヘイズ)は1%(lmm厚のヘイズ値に換算すると2%)、結晶化度は0%であった。
さらに、このシートを熱風乾燥機(温度100℃、滞留時間2min)に連続して通過させて熱処埋した。得られたシートの透明性は3%(lmm厚のヘイズに換算すると8%)、結晶化度は40%であった。
【0069】
[比較例3−1〔押出成形〕]
透明化剤のジイソデシルアジペートを除いた他は実施例5−1と同様な方法で行った。得られたシートの透明性(ヘイズ)は73%(lmm厚のヘイズに換算すると84%)、結晶化度は39%であった。
【0070】
[比較例3−2〔押出成形〕]
実施例3−1で得られたシート(厚み0.5mm)ヘイズ値は1%、結晶化度は0%)を熱風乾燥機中で温度55℃で20min間熱処理した。得られたシート(厚み0.5mm)の透明性(ヘイズ)は1%(lmm厚のヘイズに換算すると2%)、結晶化度は0%であった。
【0071】
[実施例4−1〔インフレーション成形〕]
製造例4で得られた重合体(ポリブチレンサクシネートとポリ乳酸とのコポリマー)を用い、透明化剤としてジイソデシルアジペート5重量部を、ヘンシェルミキサーで充分に混合した後、押出機シリンダー設定温度170〜210℃の条件にてペレット化した。
該べレットをインフレーション成形機(川田製作所製、45mmΦ)シリンダー設定温度165〜180℃の条件にて溶融し、ダイ温度170℃、膨張比(BUR)2.5にて折径250mm)厚み0.05mm、のインフレーションフィルムを得た。このフィルムの透明性(ヘイズ)は0.5%(lmm厚のヘイズに換算すると3%)、結晶化度は0%であった。
さらに、得られたフィルムを温水中(温度85℃、滞留時間2min)で熱処埋した。このフィルム(厚み0.05mm)の透明性(ヘイズ)は0.7%(lmm厚のヘイズに換算すると5%)、結晶化度は35%であった。
【0072】
[比較例4−1〔インフレーション成形〕]
透明化剤(ジイソデシルアジペート)を除いた以外は、実施例4−1と同方法で行った。得られたシート(厚み0.5mm)の透明性(ヘイズ)は43%(lmm厚のヘイズに換算すると70%)、結晶化度は34%であった。
【0073】
[実施例5−1〔異型押出成形〕]
ポリマーとして製造例2で得られたポリ乳酸、透明化剤としてジイソデシルアジペート5重量%をヘンシェルミキサーで充分に混合した後、押出機シリンダー設定温度170〜210℃の条件にてぺレット化した。該ペレットを異型ダイ40mmΦ押出機(フロンティア製、ダイ形状は四角の中空)シリンダー設定温度180〜200℃の条件にて溶融し、ダイ温度175℃にて押出し、真空装置付サイジングボックス(冷却温度30℃)内で成形し、肉厚0.5mm、外寸法40mm×30mmの中空成形体を得た。この中空体の透明性(ヘイズ)は1.5%(lmm厚のヘイズに換算すると2%)、結晶化度は0%であった。
さらに、中空体を熱風乾燥機(温度100℃)滞留時間2min)に連続して通過させて熱処理し、中空体を得た。得られた中空体(厚み0.5mm)の透明性(ヘイズ)は3.5%(lmm厚のヘイズに換算すると8%)、結晶化度は41%であった。
【0074】
[比較例5−1〔異型押出成形〕]
透明化剤(ジイソデシルアジペート)を除いた他は実施例8と同様な方法行った。得られたシート(厚み0.5mm)の透明性(ヘイズ)は71%(lmm厚のヘイズに換算すると77%)、結晶化度は40%であった。
【0075】
[実施例6−1〔真空・圧空成形−1;結晶化させたシートの成形〕]
ポリマーとして製造例2で得られたポリ乳酸、透明化剤としてジイソデシルアジペート5重量%をヘンシェルミキサーでよく混合した後、押出機シリンダー設定温度170〜210℃の条件にてペレット化した。該べレットをTダイ50mmΦ押出機(フロンティア製、ダイ幅400mm)シリンダー設定温度180〜200℃の条件にて溶融し、ダイ温度185℃にて厚み0.25mmのシー卜を得た。
このシート(厚み0.25mm)の透明性(ヘイズ)は1.0%(lmm厚のヘイズに換算すると2%)、結晶化度は0%であった。さらに、このシートを熱風乾燥機(温度100℃)滞留時間2min)に連続して通過させて熱処理した。得られたシート(厚み0.25mm)の透明性(ヘイズ)は2.5%(lmm厚のヘイズに換算すると7%)、結晶化度は38%であった。
【0076】
次いで、このシートを長径146mm、短径100mm、深さ30mmの楕円形金型を備えた真空圧空成形機を使用し、加熱温度120℃、保持時間30秒で軟化させ、金型温度60℃に設定した上記楕円形金型に圧空圧力4kgf/cm2で、10秒間真空密着(減圧度50mmHg)させて成形体を得た。成形体の透明性(ヘイズ)は3%(lmm厚のヘイズに換算すると8%)、結晶化度は40%であった。
【0077】
[実施例6−2〔真空・圧空成形−2;非結晶シートを型内で結晶化〕]
実施例6−1で得られた厚み0.25mmのシート(ヘイズ値は0%、結晶化度は0%)を用い、長径146mm、短径100mm、深さ30mmの楕円形金型を備えた真空圧空成形機を使用し、加熱温度85℃)保持時間40秒で軟化さ せ、金型温度を100℃に設定した上記楕円形金型に圧空圧力1kgf/cm2で、1分間真空密着(減圧度50mmHg)させて成形体を得た。
成形体の透明性(ヘイズ)は3%(lmm厚のヘイズに換算すると8%)、結晶化度は41%であった。
【0078】
[比較例6−1]
透明化剤(ジイソデシルアジペート)を除いた以外は、実施例6−2と同様な方法で行った。得られた成形体の透明性(ヘイズ)は73%(lmm厚のヘイズに換算すると82%)、結晶化度は42%であった。
【0079】
[比較例6−2]
金型温度を55℃にした以外は、実施例6−2と同様な方法で行った。得られた成形体(厚み0.25mm)の透明性(ヘイズ)はl%(lmm厚のヘイズに換算すると2%)、結晶化度は0%であった。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【発明の効果】
本発明により、透明性と結晶性(耐熱性)とを同時に有する、ポリ乳酸系樹脂成形体を提供することができる。
Claims (8)
- ポリ乳酸系樹脂(A)と、ジイソデシルアジペートからなる透明化剤(B)を含有するポリ乳酸系樹脂成形体であって、
前記ポリ乳酸系樹脂(A)と前記透明化剤(B)の合計重量を基準として、前記ポリ乳酸系樹脂(A)を94〜99重量%、及び、前記透明化剤(B)を6〜1重量%含有し、かつ、
1mm厚のヘイズ値が30%以下であることと等価である透明性と、結晶化度が30%以上であり、ビカット軟化点が100〜160℃であることに相当する耐熱性とを併有することを特徴とするポリ乳酸系樹脂成形体。 - ポリ乳酸系樹脂が、ポリ乳酸、ポリ乳酸ブロックとポリブチレンサクシネートブロックを有する共重合体、ポリ乳酸ブロックとポリカプロン酸ブロックを有する共重合体からなる群から選択された少なくとも一種である請求項1に記載したポリ乳酸系樹脂成形体。
- ポリ乳酸系樹脂(A)と、ジイソデシルアジペートからなる透明化剤(B)を含有するポリ乳酸系樹脂成形体の製造方法であって、
前記ポリ乳酸系樹脂(A)と前記透明化剤(B)の合計重量を基準として、前記ポリ乳酸系樹脂(A)を94〜99重量%、及び、前記透明化剤(B)を6〜1重量%含有するポリ乳酸系樹脂組成物を成形するに際し、成形時又は成形後に熱処理することを特徴とする、
1mm厚のヘイズ値が30%以下であることと等価である透明性と、結晶化度が30%以上であり、ビカット軟化点が100〜160℃であることに相当する耐熱性とを併有することを特徴とするポリ乳酸系樹脂成形体の製造方法。 - 熱処理方法が、ポリ乳酸系樹脂組成物を一旦溶融した後、ポリ乳酸系樹脂組成物の結晶化開始温度から結晶化終了温度迄の温度範囲に保温された金型内に充填し結晶化させることを特徴とする、請求項3に記載した製造方法。
- 熱処理方法が、ポリ乳酸系樹脂組成物の溶融物を、金型内で冷却固化して非晶性成形体を得た後、その成形体をポリ乳酸系樹脂(A)の(ガラス転移温度Tg+15℃)から(
融点Tm−40℃)迄の温度範囲で結晶化することを特徴とする、請求項3に記載した製造方法。 - 熱処理方法が、ポリ乳酸系樹脂組成物の非晶性成形体を得た後、その成形体をポリ乳酸系樹脂(A)の(ガラス転移温度Tg+15℃)から(融点Tm−40℃)迄の温度範囲で結晶化することを特徴とする、請求項3に記載した製造方法。
- ポリ乳酸系樹脂が、ポリ乳酸、ポリ乳酸ブロックとポリブチレンサクシネートブロックを有する共重合体、ポリ乳酸ブロックとポリカプロン酸ブロックを有する共重合体からなる群から選択された少なくとも一種である、請求項3乃至6の何れかに記載した製造方法。
- 請求項3乃至7の何れかに記載した製造方法により得られた、1mm厚のヘイズ値が30%以下であることと等価である透明性と、結晶化度が30%以上であり、ビカット軟化点が100〜160℃であることに相当する耐熱性とを併有するポリ乳酸系樹脂成形体。
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