しかしながら、加熱食品を保温するために保温箱や収納容器を用いると設置場所の確保が困難な問題や使用者の経済的負担が大きくなる問題がある。また、食品を移し替える煩雑な作業を必要とし、利便性が悪い問題があった。
本発明は、経済的負担を軽減するとともに場所の確保を容易にして利便性の高い冷蔵庫を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明の冷蔵庫は、冷却装置による冷却とヒータによる加熱とによって、貯蔵物を冷蔵保存または冷凍保存する低温側と加熱食品を保温する高温側とに室内温度を切り替えできる温度切替室を備えた冷蔵庫において、前記温度切替室の室内温度を検知する第1温度検知手段と、前記温度切替室内の空気を循環する送風機とを有し、第1温度検知手段の検知結果に基づいて前記ヒータの容量を可変するとともに、第1温度検知手段の検知温度が所定温度を超えた際に、前記送風機の風量を増加したことを特徴としている。
この構成によると、温度切替室は室温が第1温度検知手段で検知され、温度切替室を昇温して第1温度検知手段の検知温度が設定温度になるとヒータの容量を下げて保温状態になる。また、第1温度検知手段の検知温度が所定温度になると風量を増加して冷却効果が促進される。所定温度は異常高温と判断してヒータ停止や警報等を行う温度よりも低い温度に設定される。
また本発明の冷蔵庫は、冷却装置による冷却とヒータによる加熱とによって、貯蔵物を冷蔵保存または冷凍保存する低温側と加熱食品を保温する高温側とに室内温度を切り替えできる温度切替室を備えた冷蔵庫において、前記温度切替室の室内温度を検知する第1温度検知手段と、前記ヒータに隣接して前記ヒータ近傍の温度を検知する第2温度検知手段と、前記温度切替室内の空気を循環する送風機とを有し、第1温度検知手段の検知結果に基づいて前記ヒータの容量を可変するとともに、第2温度検知手段の検知温度が所定温度を超えた際に、前記送風機の風量を増加したことを特徴としている。この構成によると、第2温度検知手段の検知温度が所定温度になると風量を増加して冷却効果が促進される。
また本発明の冷蔵庫は、冷却装置による冷却とヒータによる加熱とによって、貯蔵物を冷蔵保存または冷凍保存する低温側と加熱食品を保温する高温側とに室内温度を切り替えできる温度切替室を備えた冷蔵庫において、前記温度切替室の室内温度を検知する第1温度検知手段と、前記ヒータに隣接して前記ヒータ近傍の温度を検知する第2温度検知手段と、前記温度切替室内の空気を循環する送風機とを有し、第1温度検知手段の検知結果に基づいて前記ヒータの容量を可変するとともに、第1、第2温度検知手段の検知温度の差が所定温度を超えた際に、前記送風機の風量を増加したことを特徴としている。
この構成によると、温度切替室は室温が第1温度検知手段で検知され、温度切替室を昇温して第1温度検知手段の検知温度が設定温度になるとヒータの容量を下げて保温状態になる。また、第1温度検知手段の検知温度と第2温度検知手段の検知温度との差が所定温度になると風量を増加して冷却効果が促進される。所定温度はヒータ近傍が異常高温と判断してヒータ停止等を行う温度差よりも小さい温度差に設定される。
また本発明の冷蔵庫は、冷却装置による冷却とヒータによる加熱とによって、貯蔵物を冷蔵保存または冷凍保存する低温側と加熱食品を保温する高温側とに室内温度を切り替えできる温度切替室を備えた冷蔵庫において、前記温度切替室の空気を循環する送風機を有し、前記ヒータを前記送風機の循環経路内に設け、前記温度切替室の室内温度を検知する第1温度検知手段と、前記ヒータの上方に隣接して前記ヒータ近傍の温度を検知する第2温度検知手段とを備え、第1温度検知手段の検知結果に基づいて前記温度切替室の室内温度を制御するとともに、第2温度検知手段の検知温度が所定温度よりも高いときに前記ヒータを停止したことを特徴としている。
この構成によると、温度切替室は昇温中の室温が第1温度検知手段で検知され、第1温度検知手段の検知温度が所定温度になるとヒータの容量を下げて保温状態になる。昇温中または保温中に第2温度検知手段の検知温度が所定温度よりも高くなるとヒータが停止される。
また本発明は上記構成の冷蔵庫において、前記ヒータを停止して所定時間経過後に前記送風機を停止したことを特徴としている。この構成によると、送風機による気流によって停止されたヒータが冷却される。
また本発明は上記構成の冷蔵庫において、前記温度切替室の扉の開閉を検知する開閉検知手段を有し、昇温期間または保温期間の前記温度切替室の前記扉が開いたときに前記ヒータを停止し、前記扉を閉じたときに前記ヒータに通電したことを特徴としている。この構成によると、昇温中または高温で保温中の温度切替室の扉が開くと開閉検知手段が検知してヒータが停止される。
また本発明は上記構成の冷蔵庫において、前記温度切替室の扉の開閉を検知する開閉検知手段を有し、前記温度切替室を高温側から低温側へ降温する降温期間に前記送風機を駆動し、前記扉を開いた際に前記送風機を停止させないことを特徴としている。
また本発明は上記構成の冷蔵庫において、前記冷却装置の冷却により貯蔵物を冷凍保存する冷凍室を備え、前記温度切替室を高温側から低温側へ降温する降温期間に、前記冷凍室及び前記温度切替室から流出した空気を前記冷却装置に導いて冷却された空気を前記冷凍室及び前記温度切替室に分岐して送出するとともに、前記冷凍室の設定温度を下げて過冷却状態にしたことを特徴としている。
この構成によると、温度切替室を高温側から低温側に切り替えるとダンパーの開成等によって冷凍室と温度切替室とが連通する。冷凍室及び温度切替室内の空気は冷却装置に導かれ、冷却装置で冷却された空気が冷凍室及び温度切替室に分岐して流入する。温度切替室から流出して冷却された空気は高温のため低温の所定温度まで低下せず、冷凍室は通常の設定温度よりも低い温度になるまで冷却される。
本発明によると、貯蔵物を冷蔵保存または冷凍保存する低温側と加熱食品を保温する高温側とに室内温度を切り替えできる温度切替室を備えたので、加熱食品を保温するための経済的負担を軽減するとともに場所の確保を容易にして利便性の高い冷蔵庫を提供することができる。
また本発明によると、温度切替室の室内温度を検知する第1温度検知手段と、前記温度切替室内の空気を循環する送風機とを有し、第1温度検知手段の検知温度が所定温度を超えた際に送風機の風量を増加したので、温度切替室内が異常高温となる前に風量増加により冷却され、過熱防止される。従って、より安全性を向上できるとともに異常停止等を低減して利便性を向上することができる。
また本発明によると、ヒータ近傍の温度を検知する第2温度検知手段の検知温度が所定温度を超えた際に、送風機の風量を増加したので、ヒータ近傍が異常高温となる前に風量増加により冷却され、過熱防止される。
また本発明によると、温度切替室の室内温度を検知する第1温度検知手段と、ヒータに隣接してヒータ近傍の温度を検知する第2温度検知手段と、温度切替室内の空気を循環する送風機とを有し、第1、第2温度検知手段の検知温度の差が所定温度を超えた際に、送風機の風量を増加したので、温度切替室内を均一な温度分布にすることができる。従って、貯蔵物による閉塞等によりヒータ近傍が異常高温になることを防止することができる。
また本発明によると、温度切替室の空気を循環する送風機を有し、ヒータを送風機の循環経路内に設け、温度切替室の室内温度を検知する第1温度検知手段と、ヒータの上方に隣接してヒータ近傍の温度を検知する第2温度検知手段とを備え、第2温度検知手段の検知によりヒータを停止したので、第1温度検知手段で検知できないヒータ近傍の過熱を防止し、ヒータ及びヒータの周辺の発煙、発火、変形等を防止することができる。従って、容量の大きいヒータを用いても安全性の高い冷蔵庫を実現することができる。
また本発明によると、ヒータを停止して所定時間経過後に送風機を停止したので、送風機による気流によって停止されたヒータが冷却され、ヒータ周辺の過熱を防止することができる。従って、より安全性を向上することができる。
また本発明によると、高温側の温度切替室の扉が開いたときにヒータを停止し、扉を閉じたときにヒータに通電したので、高温のヒータとの接触による火傷を防止し、より安全性を向上することができる。
また本発明によると、温度切替室を高温側から低温側へ降温する降温期間に送風機を駆動し、扉を開いた際に送風機を停止させないので、高温の空気を室外に排気して温度切替室を急速に低温に切り替えることができる。
また本発明によると、温度切替室を高温側から低温側へ降温する降温期間に、冷凍室の設定温度を下げて過冷却状態にしたので、温度の高い空気の流入によって冷凍室が局部的に高温になることを防止し、貯蔵物の鮮度を維持することができる。
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1、図2は一実施形態の冷蔵庫を示す正面図及び右側面図である。冷蔵庫1は、上段に冷蔵室2が配され、中段に温度切替室3及び製氷室4が配される。冷蔵庫1の下段には野菜室5及び冷凍室6が配されている。
冷蔵室2は観音開きの扉を有し、貯蔵物を冷蔵保存する。温度切替室3は中段左側に設けられ、使用者により室温を切り替えられるようになっている。製氷室4は中段右側に設けられ、製氷を行う。野菜室5は下段左側に設けられ、野菜の貯蔵に適した温度(約8℃)に維持される。冷凍室6は下段右側に設けられ、製氷室4に連通して貯蔵物を冷凍保存する。
図3は冷蔵庫1の右側面断面図である。冷凍室6及び製氷室4には貯蔵物を収納する収納ケース11が設けられる。野菜室5及び温度切替室3にも同様の収納ケース11が設けられる。冷蔵室2には貯蔵物を載置する複数の収納棚41が設けられる。冷蔵室2の扉には収納ポケット42が設けられる。これらにより、冷蔵庫1の使い勝手が向上されている。また、冷蔵室2内の下部にはチルド温度帯(約−3℃)に維持されたチルド室23が設けられている。
冷凍室6の背後には冷気通路31が設けられ、冷気通路31内には圧縮機35に接続された蒸発器17が配される。冷蔵室2の背後には冷気通路31と連通する冷気通路32が設けられる。凝縮器、膨張器(いずれも不図示)が接続された圧縮機35の駆動によりイソブタン等の冷媒が循環して冷凍サイクルが運転される。これにより、冷凍サイクルの低温側となる蒸発器17との熱交換により冷気が生成される。従って、圧縮機35及び蒸発器17は凝縮器及び膨張器とともに冷気を生成する冷却装置を構成する。
また、冷気通路31、32内には送風機18、28がそれぞれ配される。詳細を後述するように、蒸発器17で生成された冷気は送風機18の駆動により冷気通路31を介して冷凍室6、製氷室4、チルド室23及び温度切替室3に供給される。また、送風機28の駆動により冷気通路32を介して冷蔵室2及び野菜室5に供給される。
図4は温度切替室3を示す右側面断面図である。温度切替室3の上下面は仕切壁7、8により冷蔵室2及び野菜室5と仕切られる。温度切替室3の前面は回動式の扉9により開閉可能になっている。温度切替室3の背面は背面板33により覆われている。温度切替室3内には引出し式の収納ケース11が配されている。
背面板33の後方には外壁を形成する断熱壁10との間に導入通風路12が設けられている。導入通風路12は温度切替室吐出ダンパ13が設けられ、冷気通路31に連通して蒸発器17(図3参照)で発生した冷気を温度切替室3に導く。また、温度切替室吐出ダンパ13の開閉により導入通風路12から温度切替室3に流入する風量が調整される。
導入通風路12内には、温度切替室吐出ダンパ13と背面板33との間に送風機14が設けられている。送風機14の駆動によって冷気通路31の冷気が容易に温度切替室3に導かれる。また、温度切替室3には送風機14の吸気側に連通する開口部(不図示)が設けられる。これにより、送風機14の駆動すると密閉された温度切替室3内の空気が循環して効率良く攪拌することができる。送風機14を温度切替室3内に設けてもよい。
温度切替室3の背面板33の後方上部にはヒータ15が設けられる。ヒータ15は熱輻射式のガラス管ヒータから成り、背面板33を介して放出される輻射熱により温度切替室3を昇温する。尚、送風機14はヒータ15の表面に向けて送風するように配置されている。これにより、ヒータ15の表面温度を下げて安全性を向上させることができる。
背面板33の背後の下部には温度センサ16(第1温度検知手段)が設けられている。温度センサ16は温度切替室3内の温度を検出して検出信号を制御部(不図示)へ送る。これにより、制御部が温度センサ16の検知結果に基づいてヒータ15、温度切替室吐出ダンパ13、送風機14を制御し、温度切替室3内を設定温度に保持する。
また、ヒータ15の上方には温度センサ24(第2温度検知手段)が隣接して設けられる。温度センサ24はヒータ15を囲むように設けられる背面板33の上面に密着されている。これにより、ヒータ15の輻射熱を受けた空気が上昇することにより最も加熱され易いヒータ15の上方近傍の温度が温度センサ24により検知される。
温度センサ16の上方には温度ヒューズ30が設けられる。温度ヒューズ30は所定の温度まで高温になるとヒータ15の通電を遮断する。
図5は冷蔵庫1の中段付近の正面断面図を示している。冷凍室6の背後の冷気通路31は送風機18の前面上部を開口し、送風機18によって製氷室4に空気が送出される。製氷室4に連通する冷凍室6の下部には冷凍室ダンパ22が設けられる。冷凍室6の後方下部には、冷凍室ダンパ22を介して蒸発器17に空気を導いて冷気通路31に戻る戻り通風路21(図3参照)が設けられている。冷凍室ダンパ22の開閉により冷凍室6から流出する空気の風量が調整される。
冷気通路31の上部は冷蔵室ダンパ27を介して冷気通路32に連通する。また、冷気通路31は分岐され、チルド室ダンパ25を介してチルド室23と連通するとともに、前述のように導入通風路12(図4参照)に連通する。
冷蔵室2の背面下部には冷蔵室流出口(不図示)が開口し、野菜室5には野菜室流入口(不図示)が設けられる。冷蔵室流出口と野菜室流入口とは温度切替室3の背面を通る通路(不図示)により連結され、冷蔵室2と野菜室5が連通している。
温度切替室3の左方下部には温度切替室戻りダンパ20が設けられる。温度切替室3及び野菜室5の背後には、温度切替室戻りダンパ20から下方に延びて戻り通風路21(図3参照)に連通する戻り通風路19が設けられている。温度切替室3内の空気は温度切替室戻りダンパ20を開くことにより戻り通風路19、21を介して蒸発器17に導かれる。また、温度切替室戻りダンパ20の開閉により温度切替室3から出る空気の風量が調整される。尚、野菜室5の背面には戻り通風路19に連通する野菜室流出口(不図示)が設けられる。
図6は冷蔵庫1の冷気の流れを示す冷気回路図である。蒸発器17で生成された冷気は、送風機18の駆動により矢印A(図5参照)に示すように冷気通路31を上昇して製氷室4に送出される。製氷室4に送出された冷気は製氷室4及び冷凍室6を流通し、冷凍室ダンパ22から流出する。そして、戻り通風路21を介して蒸発器17に戻る。これにより、製氷室4及び冷凍室6内が冷却される。
送風機28の駆動により冷気通路31の上部で分岐した冷気は冷蔵室ダンパ27を介して矢印B(図5参照)に示すように冷気通路32を流通し、冷蔵室2に送出される。また、矢印C(図5参照)に示すようにチルド室23に送出される。これらの冷気は冷蔵室2及びチルド室23を流通した後、野菜室5に流入する。野菜室5に流入した冷気は野菜室5内を流通して戻り通路19、21を介して蒸発器17に戻る。これにより、冷蔵室2及び野菜室5内が冷却され、設定温度になると冷蔵室ダンパ27及びチルド室ダンパ23が閉じられる。
また、送風機14の駆動により冷気通路31の上部で分岐した冷気は矢印D(図4、図5参照)に示すように導入通風路12を流通し、温度切替室吐出ダンパ13を介して温度切替室3に流入する。温度切替室3に流入した冷気は温度切替室3内を流通し、温度切替室戻りダンパ20から流出する。そして、矢印E(図5参照)に示すように、戻り通風路19、21を介して蒸発器17に戻る。これにより、温度切替室3内が冷却される。
前述のように、温度切替室3は使用者により室内温度を切り替えることができるようになっている。例えば、冷凍(−15℃)、パーシャル(−8℃)、チルド(−3℃)、冷蔵(3℃)、野菜(8℃)等の各温度帯を使用者が選択できるようになっている。これにより、使用者は所望の温度で貯蔵物を冷凍保存または冷蔵保存できる。室内温度の切り替えは温度切替室吐出ダンパ13を開く量を可変して行うことができる。尚、例えば冷凍の室内温度から冷蔵の室内温度に切り替える際にヒータ15に通電して昇温してもよい。これにより、迅速に所望の室内温度に切り替えることができる。
また、ヒータ15に通電することにより、温度切替室3の室内温度を貯蔵物を冷凍保存または冷蔵保存する低温側から調理済み加熱食品の一時的な保温や温調理等を行う高温側に切り替えることができる。高温側の室内温度は、主な食中毒菌の発育温度が30℃〜45℃であるため、ヒータ容量の公差や温度切替室3内の温度分布等を考慮して50℃以上にするとよい。これにより、雑菌の繁殖を防止できる。また、冷蔵庫に用いられる一般的な樹脂製部品の耐熱温度が80℃であるため、高温側の室内温度を80℃以下にすると安価に実現することができる。
また、食中毒菌を滅菌するためには、例えば腸管出血性大腸菌(病原性大腸菌O157)の場合では75℃で1分間の加熱が必要である。従って、ヒータ容量の公差と温度切替室3内の温度分布とを考慮して高温側の室内温度を80℃にするとより望ましい。
以下は55℃での食中毒菌の減菌に関する試験結果である。試験サンプルは初期状態で大腸菌2.4×103CFU/mL、黄色ブドウ球菌2.0×103CFU/mL、サルモネラ2.1×103CFU/mL、腸炎ビブリオ1.5×103CFU/mL、セレウス4.0×103CFU/mLを含んでいる。この試験サンプルを40分間で3℃から55℃に加温し、55℃で3.5時間保温後、80分間で55℃から3℃に戻して再度各菌の量を調べた。その結果、いずれの菌も10CFU/mL以下(検出せず)のレベルまで減少していた。従って、温度切替室3の高温側の設定温度を55℃としても充分減菌効果がある。
前述したように、ヒータ15は熱輻射式のガラス管ヒータから成っている。ヒータ15を安価なシート状のアルミ蒸着ヒータ等の熱伝導式ヒータにしてもよいが、加温スピードが遅くなる。このため、温度切替室3を高温側に設定した場合に、食中毒菌の発育温度帯である30〜45℃を通過するのに長時間を要し、食品衛生上安全性が低下する。加温スピードを上げるためにヒータの容量を大きくすればよいが、ヒータを貼り付ける周辺部品の耐熱温度(通常約80℃)の制約がある。また、放熱面が広範囲となって温度切替室3の手前付近まで及ぶため、使用者が火傷する危険が生じる。
これに対して熱輻射式のガラス管ヒータは加温スピードが速く、食品衛生上安全である。また、容量を大きくしても占有スペースが小さいため、前述の図4に示すように、温度切替室3の奥部に配置することにより使用者が火傷する危険も少なくなる。従って、ヒータ15を熱輻射式のガラス管ヒータにするとより望ましい。
ヒータ15は加熱食品を保温する高温側の室内温度を維持するのに必要な容量よりも大きな容量で駆動可能になっている。これにより、温度切替室3を低温側から高温側に切り替えて昇温する際に大きな容量で駆動することにより迅速に高温側に切り替えて利便性の高い冷蔵庫1を得ることができる。また、高温側の室内温度に到達するとヒータ15の容量を下げて駆動することにより所定の温度に維持することができる。
ヒータ15の容量は通電率により可変することができる。図7は通電率を可変したヒータ15の制御例を示している。図7(a)の縦軸はヒータ15のオンオフによる印加電圧を示しており、横軸は時間を示している。図7(b)の縦軸は温度切替室3の室内温度を示しており、横軸は時間を示している。
これらの図によると、室内温度を低温側から高温側に切り替えて温度切替室3内が昇温される昇温期間T1ではヒータ15は通電率が100%で駆動される。温度センサ16の検知により高温側の設定温度に到達すると貯蔵物を保温する保温期間T2に移行し、ヒータ15は所定の通電率でオンオフが繰り返され、高温側の温度が維持される。
例えば、消費電力が約190Wで表面積が約10,990mm2のヒータ15を用い、ヒータ15の通電率を100%にして内容積が約0.023m3の温度切替室3を3℃から昇温すると約30分で80℃に到達する。そして、通電率を15%(15秒ON、85秒OFF)で間欠運転することにより温度切替室3を約80℃に保持することができる。尚、送風機14は軸流ファン付モータを用い、送風量が約0.4m3/分で運転している。
この時、保温状態でヒータ15の表面温度は最高でも約250℃となり、可燃性冷媒であるイソブタンの発火点温度(494℃)よりも低い温度に維持される。このため、環境への配慮から冷凍サイクルに封入する冷媒として可燃性冷媒であるイソブタンを用いた場合に、蒸発器17等からイソブタンが漏れてもヒータ15の発熱による爆発等の危険性がない。従って、ユーザにとってより安全な冷蔵庫1を提供できる。
図8は通電率を可変したヒータ15の別の制御例を示している。図8(a)の縦軸はヒータ15のオンオフによる印加電圧を示しており、横軸は時間を示している。図8(b)の縦軸は温度切替室3の室内温度を示しており、横軸は時間を示している。これらの図によると、温度センサ16の検知により所定の温度t1に到達するとヒータ15をオフにし、所定の温度t2に到達するとヒータ15をオンにする。これにより、昇温期間T1では通電率は100%になり、保温期間T2の通電率は一定にならないが昇温期間T1よりも小さい。従って、昇温期間T1の方が保温期間T2よりもヒータ15の容量が大きくなる。
次に、図9、図10はそれぞれ温度切替室3の高温側及び低温側の制御動作を示すフローチャートである。温度切替室3を低温側から高温側に切り替えると図9のステップ#11で温度切替室吐出ダンパ13及び温度切替室戻りダンパ20が閉じられる。ステップ#12では送風機14が駆動される。ステップ#13では所定時間が経過するまで待機してステップ#14でヒータ15が通電され、通電率100%で駆動される。送風機14を駆動して所定時間経過後にヒータ15に通電するので、温度切替室3内に循環気流が発生した状態でヒータ15が通電され、ヒータ15周辺の過熱を防止することができる。
ステップ#15では温度センサ16の検知により温度切替室3内が高温側の設定温度に到達したか否かが判断される。設定温度に到達していない昇温期間T1ではステップ#17に移行する。設定温度に到達した場合はステップ#16でヒータ15の通電率が可変され、ヒータ15の容量が下げられる。これにより、保温期間T2(図7参照)に移行し、ステップ#17に移行する。
ステップ#17では低温側への切り替え操作が行われたか否かが判断される。低温側の切り替え操作が行われた場合はステップ#19で図10のフローチャートが呼び出される。低温側の切り替え操作がない場合はステップ#18に移行して扉9が開かれたか否かが判断される。
扉9が開かれていない場合はステップ#31に移行する。扉9が開かれた場合はステップ#21に移行する。ステップ#21ではヒータ15の通電が停止される。これにより、使用者が高温のヒータ15との接触することによる火傷を防止し、安全性を向上することができる。ステップ#22では所定時間が経過するまで待機して、ステップ#22で送風機14が停止される。ヒータ15を停止して所定時間経過後に送風機14を停止するので、送風機14による気流によって停止されたヒータ15が冷却される。これにより、使用者の火傷を防止するとともにヒータ15周辺の過熱を防止することができる。従って、より安全性を向上することができる。
ステップ#24では扉9が閉じられるまで待機する。扉9が閉じられると、ステップ#25〜#27で送風機14が駆動され、所定時間経過後にヒータ15に通電される。この時、ヒータ15は停止したときの通電率で駆動される。そして、ステップ#31に移行する。
ステップ#31では温度センサ16、24の検知温度が高温の所定温度になったか否かが判断される。この所定温度は、ヒータ15の周辺の発煙、発火、変形等の危険がある異常高温よりも低い温度に設定されている。該所定温度に到達しない場合はステップ#33に移行する。該所定温度に到達した場合はステップ#32で送風機14の回転数を大きくして風量が増加され、ステップ#33に移行する。これにより、温度切替室3が異常高温となる前に風量増加により冷却され、過熱防止される。従って、より安全性を向上できるとともに異常停止等を低減して利便性を向上することができる。
尚、該所定温度到達前に温度センサ16、24の温度差が予め設定した温度差よりも大きくなったときに送風機14の風量を増加してもよい。これにより、ヒータ近傍に貯蔵物が配されたことによる閉塞等によって温度切替室3内の温度分布が大きくなった場合に均一な温度分布にすることができる。従って、ヒータ15近傍が異常高温になることを防止することができる。
ステップ#33ではステップ#32の送風機14の風量増加後に温度センサ16、24の検知温度が所定量低下したか否かが判断される。温度センサ16、24の検知温度が所定量低下しない場合はステップ#35に移行する。温度センサ16、24の検知温度が所定量低下した場合はステップ#34で送風機14の回転数が元に戻されて風量が減少し、ステップ#35に移行する。
ステップ#35では温度センサ16、24の検知温度がヒータ15の周辺の発煙、発火、変形等の危険がある異常高温に到達したか否かが判断される。異常高温に到達した場合はステップ#41でヒータが停止される。ステップ#42では所定時間が経過するまで待機してステップ#43で送風機14が停止される。これにより、ヒータ15周辺を冷却してヒータ15周辺の過熱を防止することができる。そして、ステップ#44で異常を報知してフローチャートを終了する。
温度センサ16、24による異常高温の検知によりヒータ15を停止するので安全性の高い冷蔵庫を得ることができる。また、温度センサ24の検知によってもヒータ15を停止するので、温度切替室3の平均的な温度を検知する温度センサ16では検知できないヒータ15近傍の過熱を防止することができる。
これにより、ヒータ15及びヒータ15の周辺の発煙、発火、変形等を防止することができる。従って、容量の大きいヒータ15を用いても安全性の高い冷蔵庫1を実現することができる。尚、温度センサ16、24の故障等により異常高温が検知されなかった場合には温度ヒューズ30が切断されてヒータ15が停止される。
ステップ#35で異常高温を検知しない場合はステップ#36に移行する。ステップ#36では昇温期間T1か否かが判断される。昇温期間T1の場合はステップ#15に戻り、ステップ#15〜#35が繰り返し行われる。また、保温期間T2の場合はステップ#17に戻り、ステップ#17〜#35が繰り返し行われる。
温度切替室3の室内温度を高温側から低温側に切り替えた場合には図10のフローチャートが呼び出される。ステップ#51では冷凍室6の設定温度が下げられ、冷凍室6が過冷却状態に設定される。温度切替室3の室内温度を高温側から低温側に切り替えた際には温度切替室3から流出して蒸発器17で熱交換した後の冷気の温度が高くなる。
このため、冷凍室6の平均的な温度が設定温度になっていても冷凍室6の冷気の流入口付近が局部的に温度が高くなる。従って、冷凍室6を過冷却状態にして冷凍室6に流入した冷気の温度を速やかに下げるようになっている。これにより、冷凍室6が局部的に高温になることを防止し、貯蔵物の鮮度を維持することができる。尚、冷蔵室2、チルド室23、野菜室5の設定温度を下げてもよい。
ステップ#52ではヒータ52が停止される。ステップ#53では温度切替室吐出ダンパ13及び温度切替室戻りダンパ20が開かれる。ステップ#54では送風機14が駆動される。ステップ#55では温度センサ16の検知による温度切替室3の室内温度が設定温度に到達したか否かが判別される。
温度切替室3の室内温度が設定温度に到達しない場合は高温側から低温側に降温中の降温期間であり、ステップ#57に移行する。ステップ#57では高温側に切り替える操作が行われた否かが判断される。高温側に切り替える操作が行われた場合はステップ#71に移行して、前述の図9のフローチャートが呼び出される。高温側に切り替える操作が行われない場合はステップ#55に戻り、ステップ#55、#57が繰り返し行われる。
ステップ#55の判断により温度切替室3の室内温度が設定温度に到達した場合はステップ#61に移行する。ステップ#61では冷凍室6の設定温度が元に戻される。ステップ#62では温度切替室吐出ダンパ13及び温度切替室戻りダンパ20が閉じられる。温度切替室戻りダンパ20は閉じなくてもよいが、冷気の流出を防ぐために閉じた方が望ましい。これにより、温度切替室3内を冷気が循環して均一な室内温度に維持される。
ステップ#63では温度センサ16の検知により温度切替室3の室内温度が設定された温度範囲内の上限温度になったか否かが判断される。温度切替室3が上限温度になっていない場合はステップ#65に移行する。温度切替室3が上限温度になった場合はステップ#64で温度切替室吐出ダンパ13及び温度切替室戻りダンパ20が開かれ、冷気通路31から温度切替室3に冷気が取り込まれる。
ステップ#65では温度センサ16の検知により温度切替室3の室内温度が設定された温度範囲内の下限温度になったか否かが判断される。温度切替室3が下限温度になっていない場合はステップ#66に移行する。温度切替室3が下限温度になった場合はステップ#62に戻り、温度切替室吐出ダンパ13及び温度切替室戻りダンパ20が閉じられる。
ステップ#66では扉9が開かれたか否かが判断される。扉9が開かれていない場合はステップ#70に移行する。扉9が開かれた場合はステップ#67で送風機14が停止される。これにより、冷気の流出を防止する。ステップ#68では扉9が閉じられるまで待機し、扉9が閉じられるとステップ#69で送風機14が駆動される。尚、ステップ#55、#57から成る降温期間では扉9を開いても送風機14を停止しない。これにより、扉9を開いた際に高温の空気を放出して温度切替室3を迅速に低温にすることができる。
ステップ#70では高温側に切り替える操作が行われた否かが判断される。高温側に切り替える操作が行われた場合はステップ#71に移行して、前述の図9のフローチャートが呼び出される。高温側に切り替える操作が行われない場合はステップ#63に戻り、ステップ#63〜#70が繰り返し行われる。
本実施形態において、野菜室5の流出口にダンパを設けてもよい。これにより、温度切替室3を高温側から低温側に切り替えた際に、該ダンパを閉じて温度切替室3からの熱風が野菜室5に逆流することを防止できる。また、温度切替室3を高温側から低温側へ切り替える際に送風機18が停止されている場合には、冷凍室ダンパ22が閉じられるようになっている。これにより、送風機14の駆動によって冷凍室ダンパ22から冷凍室6内へ熱風が逆流することを防止できる。
本実施形態によると、貯蔵物を冷蔵保存または冷凍保存する低温側と加熱食品を保温する高温側とに室内温度を切り替えできる温度切替室3を備えたので、別途保温庫等を必要とせず経済的負担を軽減するとともに場所の確保を不要にして加熱食品を保温できる利便性の高い冷蔵庫1を提供することができる。