JP3879625B2 - インクジェット記録用インク - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、普通紙に記録してもフェザリングの防止とブリーディングの防止とを両立して鮮明な記録物を得ることができるインクジェット記録用インクに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、静電吸引方式;圧電素子等を用いてインクに機械的振動又は変位を与える方式;インクを加熱することにより気泡を発生させ、この時に発生する圧力を利用する方式等のインク吐出方式によりインク小滴を形成し、それらの一部又は全部を紙等の被記録材に付着させて記録を行うものである。このようなインクジェット記録方式に使用するインクジェット記録用インクとしては、各種の水溶性染料又は顔料を、水又は水と水溶性有機溶剤とからなる液媒体に溶解又は分散させたものが使用されている。
【0003】
このようなインクジェット記録用インクには、長時間にわたって良好な記録を行うために、粘度、表面張力及び密度等の特性値が適当な値であること;記録装置のノズル、オリフィスでの目詰まりを防止し、安定して吐出するために熱等により析出物が生じたり、物性値が変化したりしないこと;記録画像が耐水性、耐光性等に優れていること等が必要とされる。
【0004】
一般的なインクジェット記録用インクを用いてインクジェットプリンターにより記録を行う際には、にじみのない良好な印字品質を得るために、インクジェット専用紙を用いる事も少なくない。しかし、近年では、ランニングコスト、環境への配慮からインクジェット専用紙に記録するよりも普通紙への記録需要が高まってきている。また、家庭及びオフィス向け市場では、モノクロよりもカラーでの記録の方が圧倒的に需要が高いことから、カラーインクジェットプリンターが主流となっており、普通紙に良好な印字品質でカラーでの記録を行えることが求められている。
【0005】
しかし、普通紙への印字品質は未だ充分でなく、その主な要因として2つの要因を挙げることができる。ひとつはフェザリングといわれる問題であり、インクが記録紙中に浸透する際に、記録紙の表面に沿って不均一ににじみ、画像部のエッジがギザギザになってしまって、シャープな画像部のエッジが得られないというものである。もうひとつは、ブリーディングといわれる問題であり、異なる色の境界部分で異なる色のインク同士が混合し、双方のインクがにじんでしまい、印字品質が悪化するというものである。
【0006】
これに対して、従来、フェザリング及びブリーディングを防止して印字品質を改善するための多くの手法が用いられている。
フェザリングを防止するための一般的な手法としては、表面張力を高くする方法が広く知られており、例えば、特開平8−259864号公報には、インクの表面張力を40mN/m以上にして、にじみを抑制し、フェザリングを防止する技術が開示されている。しかし、この方法では、インクの紙への浸透が遅くなるため、紙面上においてブリーディングが起こりやすくなってしまう。
【0007】
一方、ブリーディングを防止するための一般的な手法としては、浸透剤としてジエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテルをインクに配合したり、界面活性剤を配合したりする方法が広く用いられており、例えば、特開平8−283631号公報には、インクに特定の浸透剤と界面活性剤とを配合し、表面張力を下げて紙内部への浸透性を高め、ブリーディングを防止する技術が開示されている。しかし、この方法では、フェザリングが起こりやすくなってしまう。
【0008】
このように、従来のインクジェット記録用インクでは、普通紙において、フェザリングの防止とブリーディングの防止とを両立することが困難であるという問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、普通紙に記録してもフェザリングの防止とブリーディングの防止とを両立して鮮明な記録物を得ることができるインクジェット記録用インクを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、自己分散型微粒子状着色剤、界面活性剤及び水を含有するインクジェット記録用インクであって、表面張力を縦軸にし、前記界面活性剤の濃度を横軸にしたときに、前記表面張力と前記界面活性剤の濃度との相関を、変曲点を1つ有し、前記変曲点の両側に曲率の極大点を1つずつ有する相関曲線として表すことができるものであり、かつ、前記界面活性剤を低濃度側の前記曲率の極大点における濃度よりも高い濃度で含有するインクジェット記録用インクである。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明のインクジェット記録用インクは、自己分散型微粒子状着色剤を含有する。
上記自己分散型微粒子状着色剤は、顔料又は着色樹脂微粒子の表面に分散性を付与する官能基を有するものであり、一般的に骨格部の主成分は疎水性の炭化水素等で構成され、表面の一部に−SO3 −基、−COO−基等が存在する。上記自己分散型微粒子状着色剤は、粒子自体の表面がδ−に帯電し、その電気的反発により自ら分散する。
一般的に顔料や着色樹脂粒子を溶媒中で安定に分散するためには、界面活性剤等の分散剤が使用される。これらの分散剤はインクが紙に浸透する作用を助長し、不均一なにじみの要因となるが、本発明のインクジェット記録用インクは、自己分散型微粒子状着色剤を用いることにより、分散剤を含有する必要がないので、不均一なにじみを防ぐことができる。なお、一般に分散剤として用いられている界面活性剤と本発明のインクジェット記録用インクに用いられる界面活性剤とはインク中における作用が異なる。
上記自己分散型微粒子状着色剤としては特に限定されず、市販されているものとしては、例えば、CABO−O−JET200、CABO−O−JET300(以上、Cabot社製)等を挙げることができる。
【0012】
本発明のインクジェット記録用インクは、一般に分散剤として用いられている界面活性剤よりも上記自己分散型微粒子状着色剤と強い相互作用を示す界面活性剤を含有することにより、表面張力を縦軸にし、上記界面活性剤の濃度を横軸にしたときに、上記表面張力と上記界面活性剤の濃度との相関を、変曲点を1つ有し、上記変曲点の両側に曲率の極大点を1つずつ有する相関曲線として表すことができるものである。
上記変曲点を1つ有し、上記変曲点の両側に曲率の極大点を1つずつ有する相関曲線の例を図1に示した。
図1において、上記変曲点は、相関曲線上の1で示される点であり、表面張力の低下量を上記界面活性剤の濃度の増加量で除することによって得られる表面張力の低下率が極大値を示す点であり、上記相関曲線の傾きが最大となる点である。また、上記相関曲線の曲率の極大点とは、上記相関曲線の曲がりが最大となる点であり、図1において、相関曲線上の2で示される、変曲点よりも低濃度である第1の極大点と、相関曲線上の3で示される、変曲点よりも高濃度である第2の極大点とがある。
上記相関曲線は、本発明のインクジェット記録用インクにおける表面張力と上記界面活性剤の濃度との相関を示すものであり、第1の極大点と第2の極大点とにより3つの領域に分けることができる。
すなわち、上記界面活性剤の濃度が、第1の極大点における濃度よりも低濃度の領域を低濃度領域とし、第1の極大点における濃度よりも高濃度であって第2の極大点おける濃度よりも低濃度である領域を中濃度領域とし、第2の極大点における濃度よりも高濃度である領域を高濃度領域とすると、本発明のインクジェット記録用インクは、低濃度領域において、上記表面張力の低下率が小さく、中濃度領域において、上記表面張力の低下率が大きく、高濃度領域において、上記表面張力の低下率が小さい。
【0013】
上記界面活性剤と自己分散型微粒子状着色剤とが同時にインク中に含まれるときに、上記界面活性剤がδ+に帯電し、自己分散型微粒子状着色剤がδ−に帯電することにより、上記界面活性剤は一般に分散剤として用いられている界面活性剤よりも自己分散型微粒子状着色剤と強い相互作用を示し、上記界面活性剤には、空気との界面であるインク液表面に移動しようとする力よりも、電気的引力により自己分散型微粒子状着色剤に接近しようとする力が大きく働く。そして、自己分散型微粒子状着色剤に接近した上記界面活性剤は、疎水性である自己分散型微粒子状着色剤側に疎水基を向け、液相側に親水基を向けるので、自己分散型微粒子状着色剤は親水基により覆われた状態になる。自己分散型微粒子状着色剤は、上記界面活性剤と強い相互作用を示すことから、親水基により覆われた状態で紙に付着し、親水基が紙の主成分である親水性セルロースに絡みつくことにより、紙面上で移動しにくくなり、フェザリング及びブリーディングによる不均一なにじみを低減することができる。
【0014】
ここで、上記低濃度領域では、上記界面活性剤はインク液表面に移動するよりも微粒子状着色剤の表面を覆いやすい性質を持つため、上記界面活性剤の濃度の上昇に対して、インク液表面における界面活性剤の増加量は小さく、表面張力の低下率は小さくなる。上記中濃度領域では、上記界面活性剤は既に微粒子状着色剤を覆い尽くしており、それ以上の上記界面活性剤の濃度の上昇に対しては、上記界面活性剤はインク液表面に移動して表面張力を急激に下げ、表面張力の低下率は大きくなる。上記高濃度領域では、上記界面活性剤がインク液表面を覆い尽くして表面張力は安定しているので、上記界面活性剤の濃度の上昇に対して再び表面張力の低下率は小さくなる。
【0015】
本発明のインクジェット記録用インクにこのような性質を与える界面活性剤としては、下 記一般式(1)で表されるアルキルアミンエチレンオキシド付加物が挙げられる。
【0016】
【化2】
【0017】
R1は、炭素数8〜18のアルキル基を表し、x+y=5〜15の整数を表す。
【0018】
上記アルキルアミンエチレンオキシド付加物は、窒素原子に2つの親水性のエチレンオキシド基と1つの疎水性のアルキル基とが結合したものであり、水に溶けると、有機塩基として働き、プロトンが付加してδ+に帯電する。上記アルキルアミンエチレンオキシド付加物は、親水性のエチレンオキシド基が長いので、紙の主成分である親水性セルロースに絡みつき易く、紙面でのフェザリングによる不均一なにじみを効果的に低減することができる。市販されているものとしては、例えば、エソミンC/15、エソミンS/25、エソミンT/15、エソミンC/25(以上、ライオン社製)等を挙げることができる。
【0019】
本発明のインクジェット記録用インクは、上記界面活性剤を上記第1の極大点における濃度よりも高い濃度で含有する。上記第1の極大点における濃度よりも高い濃度で含有することにより、本発明のインクジェット記録用インク中の微粒子状着色剤は界面活性剤によって覆い尽くされており、普通紙に記録した場合でも微粒子状着色剤は紙面上で移動しにくいため、ラインエッジはシャープになり、ブリーディングは生じにくくなる。好ましくは、上記第2の極大点における濃度よりも高い濃度で含有する。上記第2の極大点における濃度よりも高い濃度で含有することにより、インクの表面張力は充分に低下しているため紙に対するインク溶媒の浸透速度が早く、紙面上の異なる色の境界部分において液体インク同士の接する時間が更に短縮されるため、ラインエッジはシャープなままでブリーディングを更に低減して、フェザリングの防止とブリーディングの防止とを両立させることができる。
また、上記界面活性剤の配合量の好ましい上限は、本発明のインクジェット記録用インクの全量に対して3重量%である。3重量%を超えると、蒸発等によりインク中の水分量が減ったときに、析出や乾固等の問題を生じることがある。
【0020】
本発明のインクジェット記録用インクは、水を含有する。
上記水としては、脱イオン水(純水)であることが好ましい。
上記水の配合量は、本発明のインクジェット記録用インク全量に対して40重量%以上であることが好ましい。40重量%未満であると、通常時のインク粘度を正常に噴射可能な低粘度に保つことができないことがある。
【0021】
本発明のインクジェット記録用インクは、更に、記録ヘッドの先端部におけるインクの乾固を防止するために水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。
上記水溶性有機溶剤としては特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール等のアルキレングリコール類;グリセリン;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン類等を挙げることができる。これらの水溶性有機溶剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0022】
上記水溶性有機溶剤の配合量は、本発明のインクジェット記録用インク全量に対して5〜40重量%であることが好ましい。5重量%未満であると、湿潤作用が不充分となり、蒸発等でインク中の水分量が減ったときに、析出や乾固等の問題を生じることがある。40重量%を超えると、インクが必要以上に増粘して、噴射不能となったり、記録紙上での乾燥が極端に遅くなったりする等の問題を生じることがある。より好ましくは7〜40重量%、更に好ましくは10〜30重量%である。
【0023】
本発明のインクジェット記録用インクの基本構成は以上の通りであるが、必要に応じて、浸透剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、pH調整剤、防腐防カビ剤等を含有してもよい。
【0024】
本発明のインクジェット記録用インクは、インクジェット記録時にインク中の自己分散型微粒子状着色剤が界面活性剤の親水基により覆われた状態で紙に着弾し、自己分散型微粒子状着色剤を覆う界面活性剤の親水基が紙の主成分である親水性セルロースに絡みつくことにより、普通紙に記録してもフェザリングの防止とブリーディングの防止とを両立して鮮明な記録物を与えることができる。特に、界面活性剤の濃度が高いときには、紙に対するインク溶媒の浸透が早いので、ブリーディングをより効果的に防止することができる。
【0025】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0026】
<実施例1>
着色剤として、自己分散型微粒子状着色剤であるCABO−O−JET300を使用し、界面活性剤として、一般式(1)で表されるアルキルアミンエチレンオキシド付加物であるエソミンC/15を使用した。
下記材料を充分に攪拌混合した後、2.5μmのメンブランフィルターでろ過し、下記組成からなるインクジェット記録用インク1を調製した。インクジェット記録用インク1は、界面活性剤の濃度が第1の極大点における濃度よりも高く、表面張力が52.3mN/mであった。
(インクジェット記録用インク1)
CABO−O−JET300(キャボット社製、カーボンブラック分散体、顔料濃度15重量%、残部純水) 33.3重量%
グリセリン 25重量%
ジエチレングリコールジエチルエーテル 0.5重量%
エソミンC/15(ライオン社製、アルキルアミンエチレンオキシド付加物系界面活性剤) 0.25重量%
純水 40.95重量%
【0027】
<実施例2>
着色剤として、自己分散型微粒子状着色剤であるCABO−O−JET300を使用し、界面活性剤として、一般式(1)で表されるアルキルアミンエチレンオキシド付加物であるエソミンC/15を使用した。
下記材料を充分に攪拌混合した後、2.5μmのメンブランフィルターでろ過し、下記組成からなるインクジェット記録用インク2を調製した。インクジェット記録用インク2は、界面活性剤の濃度が第2の極大点における濃度よりも高く、表面張力が31.9mN/mであった。
(インクジェット記録用インク2)
CABO−O−JET300(キャボット社製、カーボンブラック分散体、顔料濃度15重量%、残部純水) 33.3重量%
グリセリン 25重量%
ジエチレングリコールジエチルエーテル 0.5重量%
エソミンC/15(ライオン社製、アルキルアミンエチレンオキシド付加物系界面活性剤) 0.4重量%
純水 40.8重量%
【0028】
<実施例3>
着色剤として、自己分散型微粒子状着色剤であるCABO−O−JET200を使用し、界面活性剤として、一般式(1)で表されるアルキルアミンエチレンオキシド付加物であるエソミンS/25を使用した。
下記材料を充分に攪拌混合した後、2.5μmのメンブランフィルターでろ過し、下記組成からなるインクジェット記録用インク3を調製した。インクジェット記録用インク3は、界面活性剤の濃度が第1の極大点における濃度よりも高く、表面張力が53.2mN/mであった。
(インクジェット記録用インク3)
CABO−O−JET200(キャボット社製、カーボンブラック分散体、顔料濃度20重量%、残部純水) 25重量%
グリセリン 25重量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 0.5重量%
エソミンS/25(ライオン社製、アルキルアミンエチレンオキシド付加物系界面活性剤) 0.15重量%
純水 49.35重量%
【0029】
<実施例4>
着色剤として、自己分散型微粒子状着色剤であるCABO−O−JET200を使用し、界面活性剤として、一般式(1)で表される界面活性剤であるエソミンS/25を使用した。
下記材料を充分に攪拌混合した後、2.5μmのメンブランフィルターでろ過し、下記組成からなるインクジェット記録用インク4を調製した。インクジェット記録用インク4は、界面活性剤の濃度が高濃度領域であり、表面張力が31.8mN/mであった。
(インクジェット記録用インク4)
CABO−O−JET200(キャボット社製、カーボンブラック分散体、顔料濃度15重量%、残部純水) 25重量%
グリセリン 25重量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 0.5重量%
エソミンS/25(ライオン社製、アルキルアミンエチレンオキシド付加物系界面活性剤) 0.3重量%
純水 49.2重量%
【0030】
<比較例1>
着色剤として、自己分散型微粒子状着色剤であるCABO−O−JET300を使用し、界面活性剤として、一般式(1)で表されるアルキルアミンエチレンオキシド付加物であるエソミンC/15を使用した。
下記材料を充分に攪拌混合した後、2.5μmのメンブランフィルターでろ過し、下記組成からなるインクジェット記録用インク5を調製した。インクジェット記録用インク5は、界面活性剤の濃度が低濃度領域であり、表面張力が58.2mN/mであった。
(インクジェット記録用インク5)
CABO−O−JET300(キャボット社製、カーボンブラック分散体、顔料濃度15重量%、残部純水) 33.3重量%
グリセリン 25重量%
ジエチレングリコールジエチルエーテル 0.5重量%
エソミンC/15(ライオン社製、アルキルアミンエチレンオキシド付加物系界面活性剤) 0.1重量%
純水 41.1重量%
【0031】
<比較例2>
着色剤として、自己分散型微粒子状着色剤であるCABO−O−JET300を使用し、界面活性剤として、一般式(2)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルであるサンノニックDO−90を使用した。
下記材料を充分に攪拌混合した後、2.5μmのメンブランフィルターでろ過し、下記組成からなるインクジェット記録用インク6を調製した。インクジェット記録用インク6は、界面活性剤の濃度に対応した3つの濃度領域を有さず、表面張力が31.0mN/mであった。
【0032】
【化3】
【0033】
R2は炭素数12〜14のアルキル基を表す。
【0034】
(インクジェット記録用インク6)
CABO−O−JET300(キャボット社製、カーボンブラック分散体、顔料濃度15重量%、残部純水) 33.3重量%
グリセリン 25重量%
ジエチレングリコールジエチルエーテル 0.5重量%
サンノニックDO−90(三洋化成社製) 0.4重量%
純水 40.8重量%
【0035】
<比較例3>
着色剤として、自己分散型微粒子状着色剤であるCABO−O−JET300を使用し、界面活性剤として、一般式(2)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルであるサンノニックDO−90を使用した。
下記材料を充分に攪拌混合した後、2.5μmのメンブランフィルターでろ過し、下記組成からなるインクジェット記録用インク7を調製した。インクジェット記録用インク7は、界面活性剤の濃度に対応した3つの濃度領域を有さず、表面張力が47.5mN/mであった。
(インクジェット記録用インク7)
CABO−O−JET300(キャボット社製、カーボンブラック分散体、顔料濃度15重量%、残部純水) 33.3重量%
グリセリン 25重量%
ジエチレングリコールジエチルエーテル 0.5重量%
サンノニックDO−90(三洋化成社製) 0.1重量%
純水 41.1重量%
【0036】
<比較例4>
着色剤として、微粒子状着色剤であるカーボンブラックMA−7を使用し、界面活性剤として、一般式(1)で表されるアルキルアミンエチレンオキシド付加物であるエソミンC/15を使用した。なお、スチレン−無水マレイン酸共重合体は一般的に顔料の分散剤として用いられる水溶性のポリマーである。
下記材料の混合液を、粉砕メディアとして0.3mm径ジルコニアビーズを用いてパールミル(商品名、アシザワ社製)にて分散処理を行い、次に遠心分離機にかけて粗大粒子を除去した後、2.5μmのメンブランフィルターでろ過し、下記組成からなるインクジェット記録用インク8を調製した。インクジェット記録用インク8は、界面活性剤の濃度に対応した3つの濃度領域を有さず、表面張力が30.6mN/mであった。
(インクジェット記録用インク8)
カーボンブラックMA−7(三菱化学社製) 5重量%
スチレン−無水マレイン酸共重合体(分子量1万、酸価175) 3重量%
グリセリン 20重量%
ジエチレングリコールジエチルエーテル 0.5重量%
エソミンC/15(ライオン社製、アルキルアミンエチレンオキシド付加物系界面活性剤) 0.35重量%
純水 71.15重量%
【0037】
<比較例5>
着色剤として、微粒子状着色剤を使用せずにカラーインデックスナンバー・ダイレクトブラック168を使用し、界面活性剤として、一般式(1)で表される界面活性剤であるエソミンS/25を使用した。
下記材料を充分に攪拌混合した後、2.5μmのメンブランフィルターでろ過し、下記組成からなるインクジェット記録用インク9を調製した。インクジェット記録用インク9は、界面活性剤の濃度に対応した3つの濃度領域を有さず、表面張力が35.0mN/mであった。
(インクジェット記録用インク9)
カラーインデックスナンバー・ダイレクトブラック168(黒色染料)5重量%
グリセリン 25重量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 4.0重量%
エソミンS/25(ライオン社製、アルキルアミンエチレンオキシド付加物系界面活性剤) 0.2重量%
純水 65.8重量%
【0038】
インクジェット記録用インク1、2、5と同じ材料からなるインクジェット記録用インク、インクジェット記録用インク3、4と同じ材料からなるインクジェット記録用インク、インクジェット記録用インク6、7と同じ材料からなるインクジェット記録用インク、インクジェット記録用インク8と同じ材料からなるインクジェット記録用インク、及び、インクジェット記録用インク9と同じ材料からなるインクジェット記録用インクそれぞれについて、界面活性剤及び水の濃度を変えながらインクジェット記録用インクの表面張力を測定して求めた相関曲線を、インクジェット記録用インクの表面張力を縦軸にとり、界面活性剤の濃度を横軸にとって、図2〜6に示し、値を表1に示した。
【0039】
【表1】
【0040】
<評価>
実施例1〜4及び比較例1〜5で作製したインクジェット記録用インク1〜9について、記録ヘッド内のインクにピエゾ素子の振動による圧力を与えて液滴を発生させ、記録を行うオンデマンドタイプのマルチヘッド(噴射ノズル径40μm、駆動電圧30V、周波数10kHz)を有する記録装置により、記録紙としてゼロックス4200紙(ゼロックス社製)を用いて、以下の評価を行った。
【0041】
(1)フェザリング評価
背景無しで単色により文字及び罫線を含む印字を行い、文字及び罫線部分を目視観察し、以下の基準で評価を行った。
(フェザリング評価基準)
◎・・・フェザリングがほとんどなく、文字が鮮明であった。
○・・・僅かにフェザリングが発生したが、文字は充分に判読できた。
△・・・明らかにフェザリングが発生したが、文字は判読できた。
×・・・フェザリングが発生したため、文字の判読が困難であった。
【0042】
(2)ブリーディング評価
下記組成のイエローインクにより形成した背景色に重ねて、文字及び罫線を含む印字を行い、背景色と文字及び罫線の色との境界部分でのにじみを目視観察し、以下の基準で評価を行った。
(イエローインク)
ダイレクトイエロー132 5重量%
グリセリン 20重量%
ジエチレングリコール 5重量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 1.5重量%
純水 68.5重量%
(ブリーディング評価基準)
◎・・・ブリーディングがほとんどなく、背景の無しの場合と比較して文字の鮮明さは同程度であった。
○・・・僅かにブリーディングが発生したが、文字は充分に判読できた。
△・・・明らかにブリーディングが発生したが、文字は判読できた。
×・・・ブリーディングが発生したため、文字の判読が困難であった。
【0043】
実施例1〜4及び比較例1〜5で作製したインクジェット記録用インク1〜9の評価結果をまとめて表2に示した。
【0044】
【表2】
【0045】
表2に示したように、実施例1〜4で作製したインクジェット記録用インクを用いて記録を行った場合には、フェザリングの防止とブリーディングの防止とを両立してシャープで鮮明な優れた印字品質の記録物を得ることができた。特に、実施例2、4で作製したインクジェット記録用インクを用いて記録を行った場合には、インクの表面張力が充分に低く、紙に対するインク溶媒の浸透速度が充分に速かったので、ブリーディングを特に効果的に防止できた。
一方、比較例1〜5作製したインクジェット記録用インクを用いて記録を行った場合には、フェザリングにより不均一なにじみがみられたり、ブリーディングにより異なる色の境界部分が不鮮明であったりして、フェザリングの防止及び/又はブリーディングの防止において問題があった。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、普通紙に記録してもフェザリングの防止とブリーディングの防止とを両立して鮮明な記録物を得ることができるインクジェット記録用インクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のインクジェット記録用インクにおける表面張力と界面活性剤の濃度との相関を表す相関曲線の模式図である。
【図2】 インクジェット記録用インク1、2、5と同じ材料からなるインクジェット記録用インクについて、界面活性剤及び水の濃度を変えながらインクジェット記録用インクの表面張力を測定して求めた相関曲線を示す図である。
【図3】 インクジェット記録用インク3、4と同じ材料からなるインクジェット記録用インクについて、界面活性剤及び水の濃度を変えながらインクジェット記録用インクの表面張力を測定して求めた相関曲線を示す図である。
【図4】 インクジェット記録用インク6、7と同じ材料からなるインクジェット記録用インクについて、界面活性剤及び水の濃度を変えながらインクジェット記録用インクの表面張力を測定して求めた相関曲線を示す図である。
【図5】 インクジェット記録用インク8と同じ材料からなるインクジェット記録用インクについて、界面活性剤及び水の濃度を変えながらインクジェット記録用インクの表面張力を測定して求めた相関曲線を示す図である。
【図6】 インクジェット記録用インク9と同じ材料からなるインクジェット記録用インクについて、界面活性剤及び水の濃度を変えながらインクジェット記録用インクの表面張力を測定して求めた相関曲線を示す図である。
【符号の説明】
1 変曲点
2 第1の極大点
3 第2の極大点
Claims (2)
- 自己分散型微粒子状着色剤、界面活性剤及び水を含有するインクジェット記録用インクであって、
表面張力を縦軸にし、前記界面活性剤の濃度を横軸にしたときに、前記表面張力と前記界面活性剤の濃度との相関を、変曲点を1つ有し、前記変曲点の両側に曲率の極大点を1つずつ有する相関曲線として表すことができるものであり、かつ、前記界面活性剤を低濃度側の前記曲率の極大点における濃度よりも高い濃度で含有するものであり、
前記界面活性剤は、一般式(1)で表されるアルキルアミンエチレンオキシド付加物である
ことを特徴とするインクジェット記録用インク。
- 前記界面活性剤の配合量が、前記インクジェット記録用インクの全量に対して3重量%以下であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用インク。
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