JP3872580B2 - ボールベアリングおよびその組立方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は回転部材を固定部に対して回転自在に軸支するために用いるボールベアリングおよびその組立方法に関し、特に回転部材の一部を内輪としたボールベアリングおよびその組立方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のボールベアリングは、一般に回転部材や回転軸を固定部側である保持部材の保持孔内に回転または回動自在に軸支するために用いられる。この種のボールベアリングにおいて、内輪を回転部材の一部に一体に設けたものが従来から知られている。
【0003】
このようなボールベアリングは、回転部材の一部に設けた内輪部分に外輪を嵌装させるとともに、その間に複数個のボールを組込み、ボールを内、外輪間の環状隙間内に周方向に所定間隔をおいて等配させて配置し、しかる後各ボール間の空隙を保つ保持器を組付けることにより組立てられている。
【0004】
上述したボールベアリングの組立てにおいて、回転部材が軸部材である場合には、この軸部材を貫通させた状態で保持する孔部を有する組立用治具を用いている。すなわち、この組立用治具上で上方に突出する回転部材の内輪部分に外輪を嵌装し、この外輪を内輪に対し一側に片寄らせて偏心状態とし、内輪と外輪との間の間隙を部分的に広げ、この部分から複数個のボールを組込み、外輪を内輪に対し同心上に位置させることにより、内、外輪間にボールを介在させる。そして、片寄っているボールを、内、外輪間の環状間隙内で所定間隔をおいて位置させ、等配した配置状態となるようにし、しかる後各ボール間の空隙を保つ爪部を有する保持器を組付けている。
【0005】
このようなボールベアリングは、たとえばラックピニオン式の動力舵取装置において回転型流路切換弁(ロータリバルプ)の外側弁部材であるスリーブを一体に形成したピニオン軸を固定部であるステアリングボディに回転自在に保持させるために用いられている。そして、上述したピニオン軸の端部を内輪とするボールベアリングを用いることにより、このピニオン軸をステアリングボディに回転自在に軸支することが考えられている。このような構成によれば、小型化が望まれているステアリングボディ内に径方向のスペースが必要となるボールベアリングの組込みが比較的容易に行える。
【0006】
このような動力舵取装置において回転式流路切換弁を構成する外側弁部材であるスリーブを一体に形成したピニオン軸には、装置作動時に大きな負荷が作用して曲げ変形を生じることがある。そして、内側弁部材であるロータとの間で芯ずれや片当たりを生じ、円滑なバルブ作動が得られないという問題を招くおそれがあり、確実な軸支状態を期待できるボールベアリングを用いることが一般的である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した従来のボールベアリングでは、内輪となる回転部材の外周側に外輪を嵌装し、その間に複数個のボールを組込んで介在させるにあたって、ボールを内、外輪間の所定の箇所に介在させる作業が難しいという不具合があった。
【0008】
上述した動力舵取装置における回転型流路切換弁においては、外側弁部材であるスリーブを有するピニオン軸が、長尺な軸部材であってしかもその外周部には大径部や小径部、その他の溝加工、ギア加工が施されている。このようなピニオン軸の軸端部を内輪とするボールベアリングを組立てるには、ピニオン軸を略垂直状態で組立用治具に保持させ、内輪部分に外輪を嵌装させるとともに、その外輪を一側に片寄らせて内、外輪間の間隙を広げ、その広げた部分から複数個のボールを組込むとともに、外輪を内輪と同心上に位置するように移動させ、さらにボールを所定の等配した位置に移動させるという作業が必要となるが、この組立てに熟練を要するという問題があった。
【0009】
これを詳述すると、上述したボールベアリングの組立てにあたって、内輪と一側に片寄らせた外輪との間の隙間からボールを組込むと、ボールが内輪と外輪との間で必要以上の位置ずれを起こし、ボールが脱落してしまうことがあった。すなわち、上述したように外輪を一側に片寄らせて内、外輪間の隙間にボールを組込んだときに、内輪の外周面と外輪の内周面とに形成されている環状溝によるボール保持溝の溝側縁のエッジよりもボール、特にボールの中心が下方に落下してしまう。そして、このような状態となると、外輪を内輪と同心に位置するように移動させることができず、またたとえ移動させても、ボールを内、外輪のボール保持溝内に保持させることができない。
【0010】
したがって、上述したように回転部材の一部を内輪とするボールベアリングの組立ては、内、外輪間へのボールの組込みやボールのボール保持溝への保持に細心の注意を要し煩雑であり、作業性も悪く、近年望まれている自動組立化を図るうえで問題が多かった。
【0011】
また、上述したボールの脱落は、内、外輪間にボールを組込むために外輪を内輪に対して偏心させたときに、その偏心量が必要以上に大きいことにも起因する。これは、内、外輪間にボールを組込むためには、ボール径よりも大きい間隙が必要であるが、単純に外輪を偏心させると、外輪はその内周面が内輪の外周面に当接するまで偏心可能であって、各部の径寸法にもよるがボール径よりも大きく偏心して、ボールが内、外輪間を隙間を通過してしまうからである。
【0012】
このような組立時における作業性の問題は、ラックピニオン式動力舵取装置における回転型流路切換弁の外側弁部材(スリーブ)を兼ねるピニオン軸のように形状が複雑であって、たとえば内輪となる部分に近接してシールリングを介装するためのつば部が突設されているときのように、通常のボールベアリングの組立てとは異なり、ボールを一方向からしか組込むことができない場合に顕著にあらわれる。
【0013】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、固定部となる本体ボディの保持孔内に組込む組込み部品の一つである回転部材の一部を内輪とし、これにボールと外輪とを組付けることによりボールベアリングを構成するにあたって、このボールベアリングの組立作業が簡単に行え、その自動組立化も図ることができ、たとえばラックピニオン式動力舵取装置の回転型流路切換弁を構成する回転部材の軸受部材として適用することができるボールベアリングおよびその組立方法を得ることを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
このような目的に応えるために本発明に係るボールベアリングは、回転部材の一部を内輪とし、その外周部に外輪を嵌装させるとともに、これら内、外輪間に複数個のボールを介在させることによって構成したボールベアリングであって、前記内輪は、外周側にボール保持溝を有し、このボール保持溝は一体的に形成され、前記外輪は、内周面にボール保持溝を有し、このボール保持溝は一体的に形成され、前記内輪は、この内輪の前記ボール保持溝の軸方向外側であって、径方向外側に突出する段部を有し、前記内輪と前記外輪とを偏心させ、軸方向一方側からこの内輪と外輪の間に前記ボールを挿入可能な状態のとき、前記段部と前記外輪との径方向隙間は、前記ボールの直径より小さいことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るボールベアリングの組立方法は、回転部材の一部を内輪とし、その外周部に外輪を嵌装させるとともに、これら内、外輪間に複数個のボールを介在させることにより構成したボールベアリングの組立方法であって、前記内輪は、外周側にボール保持溝を有し、このボール保持溝は一体的に形成され、前記外輪は、内周面にボール保持溝を有し、このボール保持溝は一体的に形成され、前記内輪は、この内輪の前記ボール保持溝の軸方向外側であって、径方向外側に突出する段部を有し、前記段部は、前記内輪と前記外輪とを偏心させ、軸方向一方側からこの内輪と外輪の間に前記ボールを挿入可能な状態のとき、この段部と前記外輪との径方向隙間が前記ボールの直径よりも小さくなるように形成され、前記回転部材を貫通させて保持する孔部を有しこの孔部から突出する内輪の外周部に嵌装する外輪を孔縁部分に載置するとともにこれら内、外輪間の環状空隙に複数個のボールを等配して配置させるためのエア吹き出し口を有するボールベアリング組立用治具を用いて行われる。すなわち、この組立用治具の孔部に回転部材を貫通させて保持させ、この孔部から突出する内輪の外周部に外輪を嵌装させて孔縁部分に載置するとともに、前記内輪に対し前記外輪を偏心させて内、外輪間の一部の間隙を広げ、この部分から複数個のボールを組込んだ後、前記エア吹き出し口からエアを吹き出すことにより、前記内、外輪間の空隙内で各ボールを等配した位置に移動させ、しかる後各ボール間の間隔を保持する保持器を差し込むものである。
【0016】
ここで、上述した組立用治具の前記内輪と外輪との間の環状間隙に対向する部分であって、この環状間隙内に等配されるボールを所定箇所に動かすためのエア吹き出し口は、前記内、外輪間の環状間隙内で所定箇所に位置付けられるボール間の周方向の空隙にエアを吹き出すように開口している。また、前記ボール間の周方向の空隙に臨む二つのエア吹き出し口は、前記ボールの両側にエアを吹き出す二つのエア吹き出し口よりも小さい間隙をおいて前記組立用治具に設けられている。
【0017】
本発明によれば、回転部材の一部に一体に設けた内輪の外周部に外輪を嵌装させ、この外輪を一側に片寄らせて内、外輪間の間隔をあけ、その部分から複数個のボールを組込む。このとき、内輪の一部に形成した段部によりボールの中心が内、外輪間で厚み方向の略中央から必要以上の位置ずれを生じさせないようにすることができる。しかる後、外輪を内輪に対し同心上に位置させ、さらにボールを所定の空隙をおいて等配させることにより、ボールベアリングを組立てることができる。
【0018】
また、本発明によれば、内輪を一体に設けた回転部材を貫通させて保持する孔部とこの孔縁部分に開口しボールを所定箇所に導くためのエア吹き出し口とを有する組立用治具を用いることにより、内、外輪間へのボールの組込みや内、外輪間でボールを等配させて配置することを簡単に行え、その自動組立化を図ることができる。
【0019】
ここで、ボールベアリングは、たとえばラックピニオン式動力舵取装置においてピニオン軸のスタブ軸側の端部における軸支部を、ステアリングボディに回転自在に軸支するために用いられる。
また、回転部材とは、たとえばラックピニオン式動力舵取装置のピニオン軸に一体または一体的に設けた回転型流路切換弁のスリーブをいうが、これに限らない。
固定部とは、たとえばラックピニオン式動力舵取装置のピニオン軸に一体または一体的に設けた回転式流路切換弁のスリーブを回転自在に軸支するステアリングボディをいうが、これに限らない。
【0020】
内輪の外周面に設けた段部とはたとえば内輪の外周面の一部に突設した環状突部をいうが、これに限らない。
ボールベアリングの組立用治具として、内、外輪間の環状空隙において複数個のボールを等配させて配置させるためのエア吹き出し口を有するものを用いているが、これに限らない。
ボールを所定の空隙をおいて位置付けるために間隔保持機能を有する保持器を用いているが、これに限らない。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1ないし図5は本発明に係るボールベアリングおよびその組立方法をラックピニオン式動力舵取装置に適用した一つの実施の形態を示す。これらの図において、本発明を適用するラックピニオン式動力舵取装置の一例を図4および図5を用いて説明する。
【0022】
図4中全体を符号1で示すものはラックピニオン式動力舵取装置におけるパワーステアリング本体部である。2は図示しない舵取ハンドルに連結される入力軸としての円筒状のスタブ軸、3はピニオン軸、4はスタブ軸2の一端に一端を固定され、かつ他端方向(図の左方向)に延在し、他端(内方端)をピニオン軸3に連結したトーションバーである。トーションバー4の延在方向には、円筒状のロータ11がトーションバー4を覆うように配置されている。
【0023】
このロータ11は、スタブ軸2と一体的に形成することにより一体的に接続され、このロータ11の外周には、一端をピニオン軸3に一体的に形成することにより一体的に接続したスリーブ12が配置され、ロータ11とスリーブ12との間に回転形流路切換弁10が形成されている。なお、ピニオン軸3には、図示しない舵取りリンク機構を構成するラック5上のラック歯5aと噛合するピニオン歯3aが設けられている。
【0024】
ロータ11のスタブ軸2から離れた外周端とピニオン軸3に一体的に接続された部分に近いスリーブ12の内壁との間に、トーションバー4のねじれにより所定角度範囲内での相対的な回動変位を許容するフェイルセーフ機構として突部および溝部からなるセーフティスプライン部6が設けられている。
【0025】
トーションバー4は、内方端がピニオン軸3側に圧入固定されており、外方端はスタブ軸2内を貫通してスタブ軸2の外方端(右端)側にまで延設されてこのスタブ軸2の舵取りハンドル側とのカップリング用セレーション部2a部分において、トーションバー4と全周溶接等の溶着手段により一体的に接続されている。このような全周溶接での連結では、穴加工やピンの打ち込みが不要となるぱかりか、シール部材としてのOリングも不要となる。
【0026】
7はパワーステアリング本体部を構成するステアリングボディであって、後述する回転型流路切換弁10のバルブハウジングを兼ねた一体の構造により構成されている。
なお、前記両軸2,3は、後述する軸受やボディ7で直接受けることによる軸支部により回転可能に支持され、かつ適宜の位置にはオイルシールが介装されている。
【0027】
前記ステアリングボディ7の内部には、図5(a),(b)に示すように、上述したスタブ軸2、トーションバー4、ピニオン軸3をスタブ軸2側の一端から他端に向かって段階的に内径が小さくなるように形成した段付き孔8が組込み空間として形成されている。このような段付き孔8内には、ロータ11を有するスタブ軸2、トーションバー4、スリーブ12を有するピニオン軸3による組立体が組込まれ、このピニオン軸3の三箇所を、後述するようにボールベアリング21、ブッシュ22、さらにボディ7への直接の軸支部により軸支することによって、全体が回動可能に軸支されている。
【0028】
図5中23aはピニオン軸3の先端部を軸支する軸支部23を構成する孔部、27aは後述するオイルシール27を保持する孔部、22aはブッシュ22を軸支する孔部、10aは回転型流路切換弁10のスリーブ12を保持する孔部、21aはボールベアリング21を保持する孔部、25bは後述するプラグ部材25の孔部、25cはプラグ部材25のねじ込み用ねじ部で、孔部23aから順次径が大きくなるように段付き孔8として形成されている。
【0029】
この実施の形態では、上述した組込み空間としての段付き孔8を、ステアリングボディ7の一端側からの穴開け加工で形成しており、これら複数の径の異なる孔部を、精度よく完全な同心度を保って形成することができ、しかもその加工も簡単に行える。さらに、このように一方向に開口している段付き孔8に対して、内部への組込み部品を組立てた状態で組込むことにより、組立性の面で優れ、しかもこの組立状態において、各部材の同心性を確保することができる。
【0030】
前記ステアリングボディ7内の組込み空間8には、スタブ軸2に連結されかつ回転型流路切換弁10を構成するロータ11とピニオン軸3の一端に一体的に連結されたスリーブ12が対向するように同一軸線上に配置されている。これらのロータ11およびスリーブ12の相対的な回転変位(トーションバー4のよじれによる)によって、図示しないオイルポンプP、オイルタンクTとパワーシリンダ左、右室CL,CRとの間の流路切換えを行うことは広く知られている通りである。そして、この流路切換動作を行うために、互いに対向して摺接するロータ11の外周面とスリーブ12の内周面には、それぞれ周方向に所定間隔をおいて複数の通路溝がバルブ溝として凹設されるとともに、複数の流体供給孔および流体排出孔が適宜の個所に穿設することによって形成され、これら通路溝等の選択的な連通、遮断により油圧回路が必要に応じて切換え制御される。
【0031】
図中15,16はオイルポンプPからの圧油が流入する入りポートおよびオイルタンクTに圧油を還流させる戻りポート、17A,17Bはパワーシリンダの左、右シリンダ室CL,CRに接続される左、右出カボートで、上述した流路切換弁10の舵取り操作に伴なう回転変位で、これらのポート間での油圧通路を任意に連通、遮断し、図示しないパワーシリンダでの操舵補助力の発生を制御することも、広く知られている通りである。
【0032】
上述したような回転型流路切換弁10を構成するスリーブ12はピニオン軸3に一体に設けられ、このピニオン軸3は、このピニオン軸3に連結されたスリーブ12の両端部において、ステアリングボディ7に転がり軸受であるボールベアリング21と、プッシュ22により軸支されている。上述したピニオン軸3の小径な先端部3bは、ステアリングボディ7内に形成されたくぼみである軸支部23によって軸支され、この軸支部23とピニオン軸3との間の軸受け間隙は、ピニオン軸3の曲げ許容応力内であって、スリーブ12の両端部における軸受21,22(ボールベアリング、ブッシュ)による軸支部での軸受隙間よりも僅かに大きくなるように設定されている。
【0033】
前記ボールベアリング21は、ピニオン軸3に一体かつピニオン軸3から離れたスリーブ12の端部に形成した小径筒状部12aを内輪とし、その外周側に外輪21bを嵌装するとともに複数個のボール21cを介在させて組合わせた構造のものである。図中25は、ステアリングボディ7において、組込み空間8の開口端(スタブ軸2側)に螺合して組付け固定されているセット部材としてのプラグ部材であり、このプラグ部材25の内方端がボールベアリング21の外輪21bに突き当てられ、ボディ7の孔部21aによって形成した段部との間で係止されている。
【0034】
前記プラグ部材25には、スタブ軸2と一体のロータ11を貫通させた状態で保持する開口が開けられ、この開口部分には、オイルシール26を保持する保持溝25aが形成されている。そして、このオイルシール26によりスタブ軸2に一体的に形成されたロータ11は、ボディ7内に回動可能な状態で挿入され、かつシールされている。一方、前記ピニオン軸3と一体に形成されたスリーブ12のブッシュ22が配置された位置よりピニオン歯3a寄りの部分にもオイルシール27が設けられている。そして、これらのオイルシール26,27間には、作動油が充満されている。したがって、ロータ11の一端を支持するプッシュ22は、この作動油中に配置されているから軸受性能や耐久性の面で優れている。
【0035】
前記ブッシュ22を保持する孔部22aを切換弁10のスリーブ12を保持する孔部10aよりもわずかに小径に形成したのは、これらの組立て体をボディ7内に組込む際に、ブッシュ22により切換弁10を構成するスリーブ12を回動可能に保持する孔部10aの内面が傷つかないようにするためである。勿論、このような問題がなければ、同一径で形成してもよい。
【0036】
前述した構成によれぱ、弁作動上で最も問題となるスリーブ12の両端部の軸支部(21,22)によってピニオン軸3をステアリングボディ7に軸支しているので、このスリーブ12の部分での変形が少なく、弁作動が円滑であり、これにより滑らかな操舵フィーリングを得ることができる。特に、ピニオン軸3に曲げカのような軽負荷が作用しても、スリーブ12の部分での曲げ変形はなく、操舵補助力を得るための回転型流路切換弁10の弁作動を円滑に行える。また、ピニオン軸3のピニオン歯3aの部分に大負荷が作用しても、スリーブ12の部分への影響を緩和することができ、ピニオン歯3aへの負荷の作用の如何にかかわらず、スリーブ12部分での弁の作動を円滑に行うことができる。
【0037】
さらに、前記回転型流路切換弁10を構成するスリーブ12がピニオン軸3に一体に設けられているから、構成部品点数が少なく、加工個所も少なく、加工、組立作業が容易で、構造も簡単となる。このようにすれば、ピニオン軸3とスリーブ12との間に、作動時に問題となるがたがなく、しかも剛性においても優れているという利点もある。さらに、従来一般的であった装置構造のように、スリーブ12とピニオン軸3を別体として作り、その後両者を連結部を介して連結したときに、連結部の存在によって径方向に大型化したり、バルブハウジング部をステアリングボディ7と別体に構成することで部品点数が増えたり、加工、組立作業が煩雑となったりすることもない。
【0038】
ピニオン軸3やスタブ軸2を組込むステアリングボディ7内の組込み空間となる段付き孔8を、スタブ軸2側にのみ開口ししかも先端に向って段階的に小径となる形状で形成しているため、これを一方向のポーリング加工によって内径加工が行えるとともに、組込み作業も一方向からの組込み、装着、圧入等によって簡単に行えることから、自動組立化も可能である。
【0039】
この実施の形態では、ピニオン軸3にスリーブ12を一体に形成しており、しかもこのスリーブ12をピニオン軸3の大径部と同一径寸法で形成していることから、ステアリングポディ7とバルブボディとを一体に形成できるとともに、小型化も図れる。さらに、このようなピニオン軸3とスリーブ12とのストレートな構造によれぱ、その内部に組込むロータ11の形状をスタブ軸2と同一径によるストレート形状で形成でき、スタブ軸2の加工性を向上させることもできる。また、上述したように、ピニオン軸3の先端部3bを、前述した軸受21,22よりも僅かに大きな軸受隙間をもつ軸支部23によって軸支しているから、ピニオン軸3の全体にわたっての支持強度は確保でき、耐久性上も問題はない。
【0040】
このような構成では、スリーブ12を一体に設けたピニオン軸3は、見かけ上、スリーブ12の両端の二つの軸受21,22とピニオン軸先端部3bの軸支部23との三点で支持されているが、たとえば軽負荷時には現実的にはスリーブ12の両端側での二点支持となるから、特に直進走行時付近でのバルブ作動を円滑に行える。
【0041】
このようなピニオン軸3の先端部3bでの軸支部23における軸受隙間が大きく、ピニオン歯3aの部分での弾性的な自由度が大きいことから、ラック歯5aとのギア噛合い時にギアの加工精度が悪くてもこれを吸収することができ、しかも噛合いを円滑に行えるので、滑らかな操舵フィーリングを得ることができる。なお、このようなギアの精度上からの噛合い隙間は構成部品間でのがたではないので、操舵時やキックバック時に打音を発生するという問題もない。また、ピニオン軸3の先端部3bの軸支部23は、操舵フィーリングに影響の少ない大負荷時にのみ機能するので、比較的高価なニードルベアリングではなく、プッシュやステアリングボディ7で直接受けることによる軸受構造であっても操舵フィーリングが損なわれない。
【0042】
上述した実施の形態では、ステアリングボディ7への片側からの穴穿けによって組込み空間8を形成していることから、これに組込む部材の同心性を確保でき、その組立ても容易である。さらに、この実施の形態では、ピニオン軸3のスリーブ12の内周部に、ボディ7で直接受けることによる軸支状態でスタブ軸2に一体にロータ11を軸支しており、これによりロータ11とスリーブ12との同心性を確保した状態で、これらをボディ7に回動自在に支持させることができる。
【0043】
この場合に、このようなロータ11の外周面とスリーブ12の内周面との摺接面の少なくともいずれか一方の面(特にスリーブ12の内周面)に、摩擦低減処理を施すとよい。このような摩擦低減処理としては、たとえば低温侵硫処理、リン酸マンガン塩処理、ガス軟窒化処理、テフロン分散型無電解ニッケルリン複合メッキ処理、二硫化モリブデン焼付処理、テフロンコーティング処理、プラズマCVDによるセラミックス系硬化皮膜処理が考えられ、そのいずれかを行うとよい。
【0044】
上述した摩擦低減処理のなかで、低温侵硫処理は、液中の化学反応により薄いFeS膜を形成することができる皮膜形成のための表面熱処理の一つであって、寸法精度や形状精度が得やすく、面精度も粗材のレベルを維持できるという利点がある。このようなロータ11とスリーブ12とは相対的には僅かな角度だけ回動するものであり、このような表面処理を施す構成とすると、別の軸受を設ける場合に比べてコスト面で有利である。
【0045】
本発明によれば、上述したような構造を有するラックピニオン式動力舵取装置1において、回転型流路切換弁10のスリーブ12を兼ねるピニオン軸3の軸端部(小径筒状部12a)をステアリングボディ7に軸支するボールベアリング21の組立構造を改善している。
すなわち、この実施の形態では、回転部材であるピニオン軸3の小径筒状部12aを内輪とし、その外側に外輪21bを嵌装して配置させるとともに、これらの内、外輪12a,21b間に複数個(この実施の形態では12個)のボール21cを介在させることにより構成されている。
【0046】
このような構造のボールベアリング21において、上述した小径筒状部12aにおけるスリーブ12寄りの基端部(端部に近接する部分)に組立時におけるボール21cのずれを防ぐ手段としていやや大径となる環状突部からなる環状段部50を形成している。この環状段部50の先端側への張り出し長さは、図1と従来例である図9に示すように、ボールベアリング21の組立時の作業性を配慮して決定されている。
【0047】
これを詳述すると、上述したボールベアリング21は、スタブ軸2(ロータ11)とトーションバー4を嵌挿したスリーブ12を、その小径筒状部12aが上向きになるような状態で貫通させて保持する組立用治具60を用いる。そして、内輪となる小径筒状部12aを中心として、外輪12bを嵌装し、かつ平面方向において一側寄りに片寄らせることにより偏心させて位置する。この状態で、図1(a)や図2(a)に示すように複数個(12個)のボール21cを、内輪12aと外輪21bとの間に形成される三日月状の間隙に順次入れ込む。
【0048】
その後、図1(a)、図2(a)中に白抜き矢印で示すように、外輪21bを偏心状態から平面方向に移動させ、内輪12aを中心とする位置(同心上に位置する)まで移動する。このとき、ボール21bは内輪の外周面と外輪の内周面とに形成された環状のボール保持溝21e,21fに嵌り込み、図2(b)中で実線で示すような状態となる。しかる後、ボール21cを周方向に当配させて位置させた後、図1(b)および図3に示すように、ボール21c間の空隙を保つ機能をもつ保持器21dを嵌め込み、ボール21cが周方向に移動しないようにすることにより、ボールベアリング21の組立てが終了する。
【0049】
このようなボールベアリング21の組立時において、上述した段部50がないと、ボール21cの球心が前記環状のボール保持溝21e,21fの縁部よりも図9中で下方に落下し、組立用治具60の面上で支持される場合がある。このような状態となると、何らかの工具を治具面側から差し込み、ボール21cを浮かせて球心が前記縁部よりも上方に位置するようにしなければならない。すなわち、このようにしないと、外輪21bを平面方向に動かし、ボール21cを所定箇所にはめ込ませることができない可能性が多い。
【0050】
これに対し、本発明によれば、図1(a)に示すように、ボール21cの球心が、環状のボール保持溝21e,21fの縁部(エッジ部)よりも常に上方に位置させることが可能である。したがって、この状態において、外輪21bを平面方向に動かすと、ボール21cは軽い力で環状のボール保持溝21e,21f内に簡単に押上げられて導かれ、常に適正な状態で組立てることができる。また、上述した環状段部50は、図1(a)で示すように、内輪に対しての外輪21bの必要以上の偏心を防ぐストッパとしても機能することになる。
【0051】
このような構成によれば、ピニオン軸3のスリーブ12という一部の組込み部品に形成した小径筒状部12aを内輪とし、その外周部に環状くぼみを形成し、その外周側に外輪21bを嵌装するとともに、ボール21cを介在させた状態で組付けることによりボールベアリング21を構成するにあたって、組立作業が簡単に行え、その自動組立化も図ることができる。
【0052】
図6(a),(b)および図7は本発明に係るボールベアリング21の組立方法の一つの実施の形態を示すものであり、前述した実施の形態と同一または相当する部分には同一番号を付して詳細な説明は省略する。
【0053】
本発明に係るボールベアリングの組立方法では、回転部材であるピニオン軸3の一部(先端筒状部)を内輪12aとし、その外周部に外輪21bを嵌装させるとともに、これら内、外輪12a,21b間に複数個のボール21cを介在させることにより構成したボールベアリング21を組立てるにあたって、ピニオン軸3を貫通させて保持する孔部60aを有しこの孔部60aから突出する内輪12aの外周部に嵌装する外輪21bを孔縁部分に載置するとともにこれら内、外輪12a,21b間の環状空隙に複数個(ここでは12個)のボール21cを等配して配置させるための複数個(ここでは24個)のエア吹き出し口61を有するボールベアリング組立用治具60を用いて行っている。
【0054】
そして、この組立用治具60の孔部60aにピニオン軸3を貫通させて保持させ、この孔部60aから突出する内輪12aの外周部に外輪21bを嵌装させて孔縁部分に載置するとともに、前記内輪12aに対し前記外輪21bを偏心させて内、外輪12a,21b間の一部の間隙を広げ、この部分から複数個のボール21cを組込み、外輪21bを内輪12aと同心上に位置するように移動させた後、前記エア吹き出し口61からエアを吹き出すことにより、前記内、外輪12a,20間の空隙内で各ボール21cを等配した位置に移動させることがきわめて簡単に行える。しかる後、各ボール21c間の間隔を保持する保持器21dを差し込むことで、ボールベアリング21の組立てがきわめて簡単に行えるから、自動組立化が図れる。
【0055】
上述した組立用治具60の前記内輪12aと外輪21bとの間の環状間隙に対向する部分であって、この環状間隙内に等配されるボール21cを所定箇所に動かすためのエア吹き出し口61は、内、外輪12a,21b間の環状間隙内で所定箇所に位置付けられるボール21c間の周方向の空隙にエアを吹き出すように開口している。エア吹き出し口61は、ボール21a間の周方向の空隙に臨む二つのエア吹き出し口61,61間の間隔aが、図7に示すように、ボール21cの両側にエアを吹き出す二つのエア吹き出し口61,61間の間隔bよりも小さい関係をもつように組立用治具60に設けられている。
これらのエア吹き出し口61,61による間隔a,bとボール径Bとの関係は、a<B<bの関係となる。
【0056】
すなわち、上述したエア吹き出し口61によれば、内、外輪12a,21b間で一側に偏って位置しているボール21cの一つが所定の位置(間隔bの関係にある吹き出し口61,61間)に位置すると、隣接するボール21cが次の間隔bの関係にある吹き出し口61,61間に位置し、以後順次隣接するボール21cが徐々に適切な位置に案内されて等配した位置に位置付けられることになる。このようなエア吹き出し口61からのエアによるボール21cの動きは、実際には瞬時に行われる。また、これら複数個のエア吹き出し口61からのエアの吹き出しは同時に行っても、あるいは片側から順次吹き出すようにしてもよい。
【0057】
図8(a),(b),(c)は上述したエア吹き出し口61の組立用治具60への形成状態の変形例であり、これら各図の吹き出し口61の形状でも、上述した実施の形態と同等の作用効果が得られることは明らかである。
【0058】
なお、本発明は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、ラックピニオン式動力舵取装置のパワーステアリング本体部1等のようにボールベアリング21を用いる種々の分野における様々な機器、装置に適用できることはいうまでもない。
【0059】
たとえば上述した実施の形態では、ピニオン軸3(スリーブ12)のスタブ軸2側の端部12aを小径筒状部として形成し、この小径筒状部の外周部にボール保持溝21eを形成することにより、この部分をボールベアリング21の内輪とした場合を説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0060】
すなわち、上述したピニオン軸3の端部をスリーブ12の外径寸法と同径あるいは大径に形成し、その外周部にボール保持溝となる環状くぼみを形成し、この部分をボールベアリング21の内輪とし、外輪21bを嵌装し、これらを偏心させた状態でボール21cの組込みを行うように構成するとよい。さらに、この組立時において、ボール21cの脱落を防ぐ環状段部50(またはこれに類する係止手段)を適宜の位置、すなわちピニオン軸3の内輪となる小径筒状部12aに近接する部分に形成したりしてもよく、場合によっては外輪21b側の内周面に形成してもよい。
【0061】
また、上述した実施の形態では、ラックピニオン式動力舵取装置を全体にわたって見直し、構造を簡素化し、加工、組立性を向上させるとともに、コスト低減を図れる構造としているが、これに限定されない。たとえばスタブ軸2や回転型流路切換弁10を構成するロータ11の構造や支持構造、ロータ11とスリーブ12による回転型流路切換弁10でのバルブ溝や流体圧通路の形状、構造、さらにはラック5やその支持構造等を適宜変更してもよい。
【0062】
さらに、ピニオン軸3のスリーブ12において、ピニオン歯3a側に位置する軸中央の軸支部には、プッシュ22に限らず、ニードルペアリングやボディ7で直接受けることによる軸受構造を採用してもよい。また、ピニオン軸3のピニオン歯3aよりも先端部3bでの軸支部23には、ボディ7で直接受けることによる軸受構造を例示したが、プッシュやニードルベアリングによる軸受構造でもよい。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るボールベアリングによれば、回転部材の一部を内輪としてボールベアリングを構成するにあたって、回転部材による内輪のボール保持溝に近接する外周面に、ボールベアリングの組立時に内輪とその外周側に偏心させた外輪との間の隙間から組込むボールの位置ずれを防ぐ環状突部などによる段部を設けたことにより、簡単な構成であるにもかかわらず、以下のような優れた効果を奏することができる。
【0064】
本発明によれば、回転部材の一部に一体に設けた内輪の外周部に外輪を嵌装させ、この外輪を一側に片寄らせて内、外輪間の間隔をあけ、その部分から複数個のボールを組込む際に、内輪の一部に形成した段部によりボールの中心が内、外輪間で厚み方向の略中央から必要以上の位置ずれを生じさせないようにすることができる。しかる後、外輪を内輪に対し同心上に位置させ、さらにボールを所定の空隙をおいて等配させることにより、ボールベアリングを簡単に組立てることができる。
【0065】
したがって、このような本発明によれば、たとえばラックピニオン式動力舵取装置の回転型流路切換弁を構成する回転部材の軸受部材としてのボールベアリングを組立てるにあたっての組立性を大幅に向上させることができる。
【0066】
また、本発明に係るボールベアリングの組立方法によれば、内輪を一部に有する回転部材を貫通させて保持する孔部を有しこの孔部から突出する内輪の外周部に嵌装する外輪を孔縁部分に載置するとともにこれら内、外輪間の環状空隙に複数個のボールを等配して配置させるためのエア吹き出し口を有するボールベアリング組立用治具を用いているので、内、外輪間に複数個のボールを組込んだ後、エア吹き出し口からエアを吹き出すだけで、各ボールを内、外輪間の空隙内で等配した位置に移動させることがきわめて簡単にしかも確実に行える。
【0067】
したがって、本発明によれば、内、外輪間へのボールの組込みや内、外輪間でボールを等配させて配置することを簡単に行え、その自動組立化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るボールベアリングおよびその組立方法の一つの実施の形態を示し、(a),(b)はボールベアリングの組立て状態を示す要部断面図である。
【図2】 (a),(b)は図1のボールベアリングの組立状態を説明するための平面図である。
【図3】 ボールベアリングにおいてボール間に介在させる保持機能を有する保持器を示す図である。
【図4】 本発明に係るボールベアリングおよびその組立方法を適用したラックピニオン式動力舵取装置の装置本体部を説明する断面図である。
【図5】(a)は図4のステアリングボディの組込み空間である段付き孔を示す断面図、(b)はそのV−V線断面図である。
【図6】 本発明に係るボールベアリングおよびその組立方法の別の実施の形態を示し、(a)は図1に対応する要部断面図、(b)は図2に対応する平面図である。
【図7】 図6におけるボールベアリング組立用治具に設けたエア吹き出し口を説明するために要部を展開した断面図である。
【図8】 (a),(b),(c)は図7の変形例を示す断面図である。
【図9】 従来のボールベアリングの組立時の不具合を説明するための要部断面図である。
【符号の説明】
1…ラックピニオン式動力舵取装置におけるパワーステアリング本体部、2…スタブ軸、3…ピニオン軸(回転部材)、3a…ピニオン歯、3b…先端部、4…トーションバー、5…ラック、5a…ラック歯、7…ステアリングボディ、8…組込み空間、10…回転型流路切換弁、11…ロータ、12…スリーブ(回転部材)、12a…小径筒状部(内輪)、15,16…入りポートおよび戻りポート、17A,17B…左、右出力ポート、21…ボールベアリング(軸支部としての軸受)、21a…ボディ側の孔部、21b…外輪、21c…ボール、21d…保持器、21e,21f…ボール保持溝、22…ブッシュ(軸支部としての軸受)、23…軸支部、25…プラグ部材、26,27…オイルシール、50…段部(環状突部による)、60…ボールベアリング組立用治具、61…エア吹き出し口、P…オイルポンプ、T…オイルタンク、CL,CR…パワーシリンダ左、右室。
Claims (5)
- 回転部材の一部を内輪とし、その外周部に外輪を嵌装させるとともに、これら内、外輪間に複数個のボールを介在させることによって構成したボールベアリングにおいて、
前記内輪は、外周側にボール保持溝を有し、このボール保持溝は一体的に形成され、
前記外輪は、内周面にボール保持溝を有し、このボール保持溝は一体的に形成され、
前記内輪は、この内輪の前記ボール保持溝の軸方向外側であって、径方向外側に突出する段部を有し、
前記内輪と前記外輪とを偏心させ、軸方向一方側からこの内輪と外輪の間に前記ボールを挿入可能な状態のとき、前記段部と前記外輪との径方向隙間は、前記ボールの直径より小さい
ことを特徴とするボールベアリング。 - 請求項1記載のボールベアリングにおいて、
前記段部を、前記内輪の外周面の一部に突設した環状突部により構成したことを特徴とするボールベアリング。 - 回転部材の一部を内輪とし、その外周部に外輪を嵌装させるとともに、これら内、外輪間に複数個のボールを介在させることにより構成したボールベアリングの組立方法であって、
前記内輪は、外周側にボール保持溝を有し、このボール保持溝は一体的に形成され、
前記外輪は、内周面にボール保持溝を有し、このボール保持溝は一体的に形成され、
前記内輪は、この内輪の前記ボール保持溝の軸方向外側であって、径方向外側に突出する段部を有し、
前記段部は、前記内輪と前記外輪とを偏心させ、軸方向一方側からこの内輪と外輪の間に前記ボールを挿入可能な状態のとき、この段部と前記外輪との径方向隙間が前記ボールの直径よりも小さくなるように形成され、
前記回転部材を貫通させて保持する孔部を有しこの孔部から突出する内輪の外周部に嵌装する外輪を孔縁部分に載置するとともにこれら内、外輪間の環状空隙に複数個のボールを等配して配置させるためのエア吹き出し口を有するボールベアリング組立用治具を用い、
この組立用治具の孔部に回転部材を貫通させて保持させ、この孔部から突出する内輪の外周部に外輪を嵌装させて孔縁部分に載置するとともに、前記内輪に対し前記外輪を偏心させて内、外輪間の一部の間隙を広げ、この部分から複数個のボールを組込んだ後、
前記エア吹き出し口からエアを吹き出すことにより、前記内、外輪間の空隙内で前記各ボールを等配した位置に移動させ、
しかる後各ボール間の間隔を保持する保持器を差し込むことを特徴とするボールベアリングの組立方法。 - 請求項3記載のボールベアリングの組立方法において、
前記組立用治具の前記内輪と外輪との間の環状間隙に対向する部分であって、この環状間隙内に等配されるボールを所定箇所に動かすためのエア吹き出し口を、前記内、外輪間の環状間隙内で所定箇所に位置付けられるボール間の周方向の空隙にエアを吹き出すように開口させていることを特徴とするボールベアリングの組立方法。 - 請求項3または請求項4記載のボールベアリングの組立方法において、
前記ボール間の周方向の空隙に臨む二つのエア吹き出し口を、前記ボールの両側にエアを吹き出す二つのエア吹き出し口よりも小さい間隙をおいて前記組立用治具に設けたことを特徴とするボールベアリングの組立方法。
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