JP3865476B2 - 潤滑性組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は特定の構造を有するホスファゼニウム化合物を触媒とし、活性水素化合物にプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドならびにブチレンオキサイドから選ばれるアルキレンオキサイドを付加重合して得られたポリオキシアルキレンポリオールを用いる潤滑性組成物に関する。
ポリオキシアルキレンポリオールは軟質および硬質ポリウレタンフォームやエラストマー、塗料、シーリング材、床材、接着剤等のポリウレタン樹脂の原料の他に、潤滑油、脱墨剤、界面活性剤などの原料として広く用いられる。
【0002】
【従来の技術】
プレス機械における油圧装置は、通常油圧ポンプによりゲージ圧で50〜300kgf/cm2(5.0〜29.5MPa)の圧力がかけられるため、油圧ポンプおよび油圧シリンダー部で作動液の漏れが生じ、油圧ポンプの摺動面では摩擦が起こる。これを防止するために、作動液には適度な粘度と潤滑性が必要であり、例えば、水とグリコール類を主体とした潤滑性組成物が使用されている。さらに、面材との摩擦係数を低下させるため、アルコール類にエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加重合したポリオキシアルキレンポリオールが用いられている。これらの潤滑性組成物は水を多く含んでいるため、難燃性タイプに分類される。従来、これらの潤滑性組成物に用いられるポリオキシアルキレンポリオールは水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどを触媒としたアルキレンオキサイドの付加重合により製造されているが、プロピレンオキサイドの付加重合時にその一部が異性化反応し、分子末端にアリル基を有する低分子量のモノオールが副生する。潤滑性組成物に用いられるポリオキシアルキレンポリオールは面材との摩擦係数を低減するため、用途により、その分子量、粘度の高いものが要求されている。また、高温使用時における面材との潤滑性を低下させないために熱安定性能も要求されている。ポリオキシアルキレンポリオールの分子量を増加させようとすると重合開始剤へのアルキレンオキサイドの付加とともに、不飽和基を有した低分子量のモノオールも副生するため、作動液分野等で使用される潤滑性組成物では、好ましい粘度および熱安定性をもったポリオキシアルキレンポリオールの製造が困難であった。
【0003】
ポリオキシアルキレンポリオールの高分子量化において副生する不飽和モノオールを低減するために、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム以外の触媒を用いる方法が提案されている。特開平3−50230号公報では、一般的にアルカリ触媒以外のジエチル亜鉛、塩化鉄、金属ポルフィリン、複金属シアン化物錯体(以下、DMCと略する。)等を触媒、特に、DMCの使用により良好なポリエーテルポリオールが得られることが記載されている。DMCはアルキレンオキサイドのなかでもプロピレンオキサイドの付加重合には優れているが、該触媒ではエチレンオキサイドとの共重合化は不可能である。実施例においても、アルカリ触媒(カリウムアルコラート)存在下でエチレンオキサイドの付加重合を行っている(ポリオールC)。
【0004】
特開平4−214722号公報では、DMCを用いて合成されたポリエーテル類から該触媒を除去する方法、ならびに触媒を失活させた後、アルカリ金属を用いてエチレンオキサイドの重合を行う方法が教示されている。特開平4−214722号公報には、DMCを用いてエチレンオキサイドと他のエポキサイドを共重合させることや、DMCを触媒に用いて得られたポリエーテル類に引き続きエチレンオキサイドを反応させて1級水酸基の割合の高いポリエーテル類を得ることは困難であることが記載されている(5頁 第7欄 14行〜19行)。つまり、DMCではエチレンオキサイドを付加重合するには、一端、該触媒を失活させて次いでアルカリ金属により重合をおこなわなければならないため、操作が煩雑で、しかもエチレンオキサイドブロック共重合体のポリエーテルしか得られない。
【0005】
難燃性の潤滑性組成物は水を多く使用するため、親水基であるオキシエチレン基を有したポリオキシアルキレンポリオールが必要である。本発明者らが調べた範囲では、特開平4−214722号公報の方法によりDMCを用いてエチレンオキサイドの付加重合を行ったが、その使用量が多くなるとエチレンオキサイドのホモポリマーが副生することがわかった。また、オキシエチレン基のブロック共重合ポリオキシアルキレンポリオールでは多量の水を使用する潤滑性組成において、一部該ポリオールと水との水素結合によるゲル化物が生成するため、オキシエチレン基をランダムに共重合する必要がある。潤滑性組成物の高品質化のため、プロピレンオキサイド重合時の副生モノオールが少なく、かつエチレンオキサイドがランダムに共重合されたポリオキシアルキレンポリオールが望まれていた。
【0006】
一方、Macromol.Rapid Commun. 17,143−148(1996)にはポリイミノホスファゼン塩基(t−Bu−P4)を触媒としたオキシラン環の重合に関して記載されている。この化合物は、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)やイミダゾール化合物に類した強塩基性を特徴とするのに対して、本願発明の触媒はホスファゼニウムカチオンと無機あるいは有機アニオンから構成される化合物であり、該文献記載の化合物とは構造ならびに作用が異なる。しかも、該文献中には、本願発明の潤滑性組成物に関する記載はない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、プロピレンオキサイド重合工程での副生モノオール量が少なく、かつエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドから選ばれる少なくとも2種類のアルキレンオキサイドとの共重合ポリオキシアルキレンポリオールを用いた潤滑性組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構造を有するホスファゼニウム化合物を触媒として、活性水素化合物にアルキレンオキサイドの付加重合を行うことにより目的を達成できることを見い出した。
即ち、本発明の第一の目的は、化学式(1)
【0009】
【化3】
〔化学式(1)中のa、b、cおよびdは、それぞれ0〜3の正の整数であるが、a、b、cおよびdの全てが同時に0ではない。Rは同種または異種の炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが互いに結合して環構造を形成する場合もある。化学式(1)中のrは1〜3の整数であってホスファゼニウムカチオンの数を表し、Tr-は価数rの無機アニオンを表す。〕
で表されるホスファゼニウムカチオンと無機アニオンとの塩および活性水素化合物のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩の存在下、
または、化学式(2)
【0010】
【化4】
〔化学式(2)中のa、b、cおよびdは、それぞれ0〜3の整数であるが、a、b、cおよびdの全てが同時に0ではない。Rは同種または異種の炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが互いに結合して環構造を形成する場合もある。Q-はヒドロキシアニオン、アルコキシアニオン、アリールオキシアニオンまたはカルボキシアニオンを表す。〕
で表されるホスファゼニウム化合物を用いて、活性水素化合物にアルキレンオキサイドを付加重合した数平均分子量1,000〜40,000、CPRが5以下で酸化防止剤を0.01〜5重量%含むポリオキシアルキレンポリオールを5〜70重量%含有することを特徴とする潤滑性組成物であり、
本発明の第二の目的は、ポリオキシアルキレンポリオールの付加重合に用いるアルキレンオキサイドが、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイドおよびブチレンオキサイドから選ばれる少なくとも2種類の混合アルキレンオキサイドであることを特徴とする潤滑性組成物である。
【0011】
本発明の第三の目的は、本発明の第一の目的の化学式(1)または化学式(2)のホスファゼニウム化合物を用いてアルキレンオキサイドを付加重合した後の粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物の除去操作をe〜hのいずれかの方法で行うことにより得られるCPRが5以下のポリオキシアルキレンポリオールを用いることを特徴とする本発明の第一の目的の潤滑性組成物である。
e.粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、水を1〜40重量部加えた後、粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物1モルに対して無機酸または有機酸を0.5〜2.5モル使用して50〜130℃でホスファゼニウム化合物を中和する。その後、粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して吸着剤を0.005〜1.5重量部用いて減圧処理を行い、水を留去し、ろ過操作によりホスファゼニウム塩ならびに吸着剤を除去する。
f.粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、ポリオキシアルキレンポリオールに不活性な有機溶剤および水を1〜40重量部加えた後、粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物1モルに対して無機酸または有機酸を0.5〜2.5モル使用して50〜130℃でホスファゼニウム化合物を中和する。その後、粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して吸着剤を0.005〜1.5重量部用いて減圧処理を行い、水および有機溶剤を留去し、ろ過操作によりホスファゼニウム塩ならびに吸着剤を除去する。
g.粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に水50〜200重量部およびポリオキシアルキレンポリオールに不活性な炭化水素系溶剤を1〜200重量部加え分液し、水洗後、減圧処理により水および有機溶剤を留去する。
h.粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に水を20〜200重量部加え15〜100℃以下でイオン交換樹脂と接触させた後、ろ過によりイオン交換樹脂を除き、減圧処理により脱水を行う。
本発明の第四の目的は、本発明の第一の目的で用いる酸化防止剤が2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、tert−ブチルヒドロキシアニソール、4,4’−メチレンビス(2,3−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、N−n−ブチル−p−アミノフェノール、ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、4,4’−テトラメチル−ジアミノジフェニルメタン、α−ナフチルアミン、N−フェニル−α−ナフチルアミン、N,N’−ジサリチルデン−1,2−プロピレンジアミン、フェノチアジン、レシチン、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジラウリルチオプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートから選ばれる少なくとも1種を用いることを特徴とする本発明の第一の目的の潤滑性組成物である。
【0012】
本発明のポリオキシアルキレンポリオールを用いた潤滑性組成物は、水を多く用いる難燃性作動液、ブレーキ液、焼き入れ油、切削油、研磨油およびギヤー油等に使用される。例えば、難燃性作動液の組成はポリオキシアルキレンポリオール8〜30重量部、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の低分子量グリコール類が30〜40重量部、水が35〜50重量部および防かび剤、消泡剤等の添加剤が2〜5重量部である。該作動液中のポリオキシアルキレンポリオールの使用量は少ないが、作動液に求められる粘度指数あるいは面材との摩擦低減効果のためポリオキシアルキレンポリオールは不可欠である。また、本発明のポリオキシアルキレンポリオールを焼き入れ油、切削油等の分野に使用する場合には、ポリオキシアルキレンポリオール30〜55重量部、水が35〜55重量部および錆止め剤、乳化剤等の添加剤が5〜15重量部用いられる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明における化学式(1)または化学式(2)で表されるホスファゼニウム化合物中のホスファゼニウムカチオンはその正電荷が中心のリン原子上に局在する極限構造式で代表されているが、これ以外に無数の無限構造式が描かれ実際にはその正電荷は全体に非局在化している。
【0014】
本発明における化学式(1)や化学式(2)で表されるホスファゼニウムカチオン中のa、b、cおよびdは、それぞれ0〜3の整数である。好ましくは0〜2の整数である。ただし、いずれの場合にも全てが同時に0ではない。より好ましくはa、b、cおよびdの順序に関わらず、(2,1,1,1)、(1,1,1,1)、(0,1,1,1)、(0,0,1,1)または(0,0,0,1)の組み合わせ中の数である。さらに好ましくは、(1,1,1,1)、(0,1,1,1)、(0,0,1,1)または(0,0,0,1)の組み合わせ中の数である。
【0015】
本発明における化学式(1)や化学式(2)で表される塩のホスファゼニウムカチオン中のRは同種または異種の、炭素数1〜10個の炭化水素基であり、具体的には、このRは、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、アリル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、2−ブテニル、1−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチル−1−ブチル、イソペンチル、tert−ペンチル、3−メチル−2−ブチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、4−メチル−2−ペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−ヘプチル、3−ヘプチル、1−オクチル、2−オクチル、2−エチル−1−ヘキシル、1,1−ジメチル−3,3−ジメチルブチル(tert−オクチル)、ノニル、デシル、フェニル、4−トルイル、ベンジル、1−フェニルエチルまたは2−フェニルエチル等の脂肪族または芳香族の炭化水素基から選ばれる。これらのうち、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、tert−ペンチル、tert−オクチル等の炭素数1〜10個の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。
【0016】
また、ホスファゼニウムカチオン中の同一窒素原子上の2個のRが結合して環構造を形成する場合の該窒素原子上の2価の炭化水素基は、4〜6個の炭素原子からなる主鎖を有する2価の炭化水素基であり(環は窒素原子を含んだ5〜7員環となる)、好ましくは例えばテトラメチレン、ペンタメチレンまたはヘキサメチレン等であり、また、それらの主鎖にメチルまたはエチル等のアルキル基が置換したものである。より好ましくは、テトラメチレンまたはペンタメチレン基である。ホスファゼニウムカチオン中の、可能な全ての窒素原子についてこのような環構造をとっていても構わず、一部であってもよい。
【0017】
本発明における化学式(1)中のTr-は価数rの無機アニオンを表す。そして、rは1〜3の整数である。このような無機アニオンとしては、例えばホウ酸、テトラフルオロホウ酸、シアン化水素酸、チオシアン酸、フッ化水素酸、塩酸またはシュウ化水素酸などのハロゲン化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、亜リン酸、ヘキサフルオロリン酸、炭酸、ヘキサフルオロアンチモン酸、ヘキサフルオロタリウム酸および過塩素酸などの無機アニオンが挙げられる。また、無機アニオンとしてHSO4 -、HCO3 -もある。
【0018】
場合によっては、これらの無機アニオンはイオン交換反応により互いに交換することができる。これらの無機アニオンのうち、ホウ酸、テトラフルオロホウ酸、ハロゲン化水素酸、リン酸、ヘキサフルオロリン酸および過塩素酸等の無機酸のアニオンが好ましく、塩素アニオンがより好ましい。
本発明の化学式(1)で表されるホスファゼニウムカチオンと無機アニオンとの塩の合成については、その一般的な例として次のような方法が挙げられる。
(a)五塩化リン1当量と3当量の二置換アミン(HNR2)を反応させ、さらに1当量のアンモニアを反応させた後、これを塩基で処理して化学式(3)
【0019】
【化5】
で表される2,2,2−トリス(二置換アミノ)−2λ5−ホスファゼンを合成する。
(b)このホスファゼン化合物〔化学式(3)〕とビス(二置換アミノ)ホスフォロクロリデート{(R2N)2P(O)Cl}を反応させて得られるビス(二置換アミノ)トリス(二置換アミノ)ホスフォラニリデンアミノホスフィンオキシドをオキシ塩化リンでクロル化し、次いで、これをアンモニアと反応させた後、塩基で処理して、化学式(4)
【0020】
【化6】
で表される2,2,4,4−ペンタキス(二置換アミノ)−2λ5、4λ5−ホスファゼンを得る。
(c)このホスファゼン化合物〔化学式(4)〕を(b)で用いたホスファゼン化合物〔化学式(3)〕の代わりに用い、(b)と同様の操作で反応させることにより、化学式(5)
【0021】
【化7】
〔式中、qは0〜3の整数を表す。qが0の場合は二置換アミンであり、1の場合は化学式(3)の化合物、2の場合は化学式(4)の化合物そして3の場合は(c)で得られたオリゴホスファゼンを表す。〕
で表される化合物のうちのqが3であるオリゴホスファゼンを得る。
(d)異なるqおよび/またはRの化学式(5)の化合物を順次に、または同一のqおよびRの化学式(5)の化合物を同時に、五塩化リンと4当量反応させることにより、化学式(1)でr=1、Tr-=Cl-である所望のホスファゼニウムカチオンと塩素アニオンとの塩が得られる。塩素アニオン以外の無機アニオンの塩を得たい場合には、通常の方法、例えば、アルカリ金属カチオンと所望の無機アニオンとの塩等で処理する方法やイオン交換樹脂を利用する方法等でイオン交換することができる。このようにして化学式(1)で表される一般的なホスファゼニウムカチオンと無機アニオンとの塩が得られる。
【0022】
化学式(1)とともに共存させる活性水素化合物のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩とは、活性水素化合物の活性水素が水素イオンとして解離してアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属イオンと置き換わった形の塩である。そのような塩を与える活性水素化合物としては、アルコール類、フェノール化合物、ポリアミン、アルカノールアミンなどがある。例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール類等の1価のアルコール類、水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等の2価アルコール類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン類、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等の多価アルコール類、グルコース、ソルビトール、デキストロース、フラクトース、蔗糖、メチルグルコシド等の糖類またはその誘導体、エチレンジアミン、ジ(2−アミノエチル)アミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪酸アミン類、トルイレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族アミン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ノボラック、レゾール、レゾルシン等のフェノール化合物等が挙げられる。これらの活性水素化合物は2種以上併用して使用することもできる。さらにこれらの活性水素化合物に従来公知の方法でアルキレンオキサイドを活性水素基1当量あたり約2〜8当量付加重合して得られる化合物も使用できる。
【0023】
これらの活性水素化合物からそれらのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩を得るには、該活性水素化合物とアルカリ金属類もしくはアルカリ土類金属類から選ばれた金属または塩基性アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の化合物とを反応させる通常の方法が用いられる。アルカリ金属類もしくはアルカリ土類金属類から選ばれた金属としては、金属リチウム、金属ナトリウム、金属カリウム、金属セシウム、金属ルビジウム、金属マグネシウム、金属カルシウム、金属ストロンチウムまたは金属バリウム等が挙げられ、塩基性アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の化合物としては、ナトリウムアミド、カリウムアミド、マグネシウムアミドまたはバリウムアミド等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のアミド類であり、n−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、ビニルリチウム、シクロペンタジエニルリチウム、エチニルナトリウム、n−ブチルナトリウム、フェニルナトリウム、シクロペンタジエニルナトリウム、エチルカリウム、シクロペンタジエニルカリウム、フェニルカリウム、ベンジルカリウム、ジエチルマグネシウム、エチルイソプロピルマグネシウム、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジ−tert−ブチルマグネシウム、臭化ビニルマグネシウム、臭化フェニルマグネシウム、ジシクロペンタジエニルマグネシウム、ジメチルカルシウム、カリウムアセチリド、臭化エチルストロンチウム、ヨウ化フェニルバリウム等の有機アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の化合物であり、ナトリウムヒドリド、カリウムヒドリド、カルシウムヒドリド等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のヒドリド化合物であり、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウムまたは水酸化バリウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物であり、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムまたは炭酸バリウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩であり、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素セシウムなどの炭酸水素塩等である。
【0024】
これらのアルカリ金属類もしくはアルカリ土類金属類から選ばれた金属または塩基性アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の化合物は、活性水素化合物の酸性の強さに応じて選ばれる。また、このようにして得られた活性水素化合物のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩が塩基性アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の化合物として作用し、他の活性水素化合物をそのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩となし得る場合もある。
【0025】
複数の活性水素を有する活性水素化合物においては、それらの活性水素の全てが離脱してアルカリ金属類もしくはアルカリ土類金属類から選ばれた金属または塩基性アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の化合物によってアニオンに導かれる場合もあるが、その一部だけが離脱してアニオンとなる場合もある。
これらの活性水素化合物のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩のうち、活性水素化合物のアルカリ金属塩が好ましく、その活性水素化合物のアルカリ金属塩のカチオンは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムから選ばれるカチオンがより好ましい。
【0026】
化学式(1)で表されるホスファゼニウムカチオンと無機アニオンとの塩および活性水素化合物のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩の存在下にアルキレンオキサイドを付加重合させる。この際、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のカチオンと無機アニオンとの塩が副生する。この副生塩が重合反応を阻害する場合は、重合反応に先立ちこれを濾過等の方法で除去しておくこともできる。また、化学式(1)で表される塩と活性水素化合物のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩から導かれる活性水素化合物のホスファゼニウム塩を予め単離し、これの存在下にアルキレンオキサイドを重合させることもできる。
【0027】
予めこの活性水素化合物のホスファゼニウム塩を得る方法としては、化学式(1)で表される塩と活性水素化合物のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩とを反応させるが、その2種類の塩の使用比については目的の塩が生成する限り特に制限はなく、何れかの塩が過剰にあっても特に問題がない。通常、活性水素化合物のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩の使用量は、ホスファゼニウムカチオンと無機アニオンとの塩の1当量に対して、0.2〜5当量であり、好ましくは0.5〜3当量であり、より好ましくは0.7〜1.5当量の範囲である。
【0028】
両者の接触を効果的にするために通常溶媒を用いる。それらの溶媒としては、反応を阻害しなければいかなる溶媒でも構わないが、例えば、水、メタノール、エタノールまたはプロパノール等のアルコール類、アセトンまたはメチルエチルケトン等のケトン類、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンまたはキシレン等の脂肪族または芳香族の炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、オルトジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、酢酸エチル、プロピオン酸メチルまたは安息香酸メチル等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテルまたはトリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトニトリルまたはプロピオニトリル等のニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ヘキサメチルリン酸トリアミドまたは1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の極性非プロトン溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、反応に用いる原料の塩の化学的安定性に応じて選ばれる。好ましくは、ベンゼン、トルエンまたはキシレン等の芳香族炭化水素類であり、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンまたはエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類であり、アセトニトリル等のニトリル類であり、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ヘキサメチルリン酸トリアミドまたは1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の極性非プロトン溶媒等である。溶媒は、単独でも2種以上混合して使用しても良い。原料の塩が溶解していることが好ましいが、懸濁状態でも構わない。この反応の温度は用いる塩の種類、量および濃度等により一様ではないが、通常150℃以下であり、好ましくは−78〜80℃、より好ましくは0〜50℃の範囲である。反応圧力は減圧、常圧および加圧の何れでも実施できるが、好ましくは0.1〜10kgf/cm2(絶対圧、以下同様 9.8〜980kPa)であり、より好ましくは1〜3kgf/cm2(98〜294kPa)の範囲である。反応時間は、通常1分〜24時間の範囲であり、好ましくは1分〜10時間、より好ましくは5分〜6時間である。
【0029】
この反応液から、目的の活性水素化合物のホスファゼニウム塩を単離する場合には、常套の手段を組み合わせた常用の方法が用いられる。目的の塩の種類、用いた2種の原料の塩の種類や過剰率、用いた溶媒の種類や量などにより、その方法は一様ではない。通常、副生するアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のカチオンと無機アニオンとの塩は固体として析出しているので、そのままあるいは若干の濃縮を行った後、濾過や遠心分離等の方法で固液分離してこれを除き、液を濃縮乾固して目的の塩を得ることができる。副生する塩が濃縮してもなお溶解している場合には、そのままあるいは濃縮後に貧溶媒を加え副生塩または目的の塩の何れかを析出させたり、または濃縮乾固後、一方を抽出する等の方法で分離することができる。過剰に使用した方の原料の塩が目的の塩に多量に混入している場合には、そのままあるいは再溶解後に好適な他の溶媒で抽出し、これらを分離することができる。さらに、必要であれば再結晶またはカラムクロマトグラフィー等で精製することもできる。目的の塩は通常中、高粘度の液体または固体として得られる。
【0030】
化学式(1)で表されるホスファゼニウムカチオンと無機アニオンとの塩および活性水素化合物のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩の存在下に、アルキレンオキサイドを付加重合させる。この時、活性水素化合物のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩またはそれから導かれる活性水素化合物のホスファゼニウム塩を構成する活性水素化合物と同種または異種の活性水素化合物を反応系に存在させてもよい。塩を存在させる場合のその量は、特に制限がないが、アルキレンオキサイド1モルに対して、1×10-15〜5×10-1モルであり、好ましくは1×10-7〜1×10-1モルの範囲である。
【0031】
また、これらの塩が溶液で供給される場合に、その溶媒が重合反応を阻害するなら、事前に例えば、減圧下に加熱する等の方法で除くこともできる。
【0032】
化学式(1)で表されるホスファゼニウムカチオンと無機アニオンとの塩および活性水素化合物のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩に、従来公知の開始剤系と併用することは構わない。従来公知の開始剤系とは、活性水素化合物とアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属類の金属または塩基性アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の化合物とを反応させたものである。
但し、従来公知の開始剤系の過度の併用はポリオキシアルキレンポリオール中の総不飽和度(C=C)を上げる要因となるため、その使用量はなるべく少ない方がよい。通常、活性水素化合物1モルに対して1×10-8〜1×10-1モル、好ましくは1×10-5〜1×10-1モル、さらに好ましくは1×10-4〜1×10-2モルの範囲である。
【0033】
本発明のポリオキシアルキレンポリオールの製造方法のもう1つの場合、すなわち、化学式(2)で表されるホスファゼニウム化合物と活性水素化合物の存在下、アルキレンオキサイドを付加重合させてポリオキシアルキレンポリオールを製造する場合について述べる。化学式(2)で表されるホスファゼニウム化合物中のQ-は、ヒドロキシアニオン、アルコキシアニオン、アリールオキシアニオンおよびカルボキシアニオンよりなる群から選ばれるアニオンである。
【0034】
これらのQ-のうち、好ましくは、ヒドロキシアニオンであり、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の脂肪族アルコール類から導かれるアルコキシアニオンであり、例えばフェノール、クレゾール等の芳香族ヒドロキシ化合物から導かれるアリールオキシアニオンであり、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸等から導かれるカルボキシアニオンである。
【0035】
これらのうち、より好ましくは、ヒドロキシアニオン、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノールなどの低沸点アルキルアルコールから導かれるアルコキシアニオン、またはギ酸、酢酸等のカルボン酸から導かれるカルボキシアニオンである。さらに好ましくは、ヒドロキシアニオン、メトキシアニオン、エトキシアニオンおよび酢酸アニオンである。これらのホスファゼニウム化合物は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0036】
化学式(2)で表されるホスファゼニウム化合物の一般的合成法としては、まず前述した化学式(1)で表される塩を合成する方法と同様にして、化学式(1)でr=1、Tr-=Cl-であるホスファゼニウムクロライドを合成する。次いでこのホスファゼニウムクロライドを例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシド、アリールオキシドまたはカルボキシドで処理する方法やイオン交換樹脂を利用する方法等によりその塩素アニオンを所望のアニオンQ-に置き換えることができる。このようにして化学式(2)で表される一般的なホスファゼニウム化合物が得られる。
【0037】
化学式(2)と共存させる活性水素化合物は、活性水素化合物のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩を与える活性水素化合物として先に詳細に述べたものと同一である。
【0038】
化学式(2)で表されるホスファゼニウム化合物と活性水素化合物の存在下、アルキレンオキサイドを付加重合させる本発明の方法においては、通常過剰に用いられる活性水素化合物の過剰分はそのまま残存する。この他に、水、アルコール、芳香族ヒドロキシ化合物またはカルボン酸はホスファゼニウム化合物の種類に応じて副生する。必要であれば、これらの副生物をアルキレンオキサイドの付加重合反応に先だって除去しておく。その方法としては、それらの副生物の物性に応じて、加熱もしくは減圧で留去する方法、不活性気体を通ずる方法または吸着剤を用いる方法などの常用の方法が用いられる。
【0039】
化学式(2)で表されるホスファゼニウム化合物および活性水素化合物に、従来公知の開始剤系と併用することは構わない。従来公知の開始剤系とは先に詳述した化合物である。
但し、従来公知の開始剤系の過度の併用はポリオキシアルキレンポリオール中の総不飽和度(C=C)を上げる要因となるため、その使用量はなるべく少ない方がよい。通常、活性水素化合物1モルに対して1×10-8〜1×10-1モル、好ましくは1×10-5〜1×10-1モル、さらに好ましくは1×10-4〜1×10-2モルの範囲である。
【0040】
ホスファゼニウム化合物の存在下、活性水素化合物へ付加重合させるアルキレンオキサイドとしては、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイドから選ばれる少なくとも2種類の混合アルキレンオキサイドである。これらのうち、好ましくはプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドである。より好ましくはエチレンオキサイドを50重量%以上用いたポリオキシアルキレンポリオールである。
【0041】
ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量は1,000〜40,000である。好ましくは3,000〜35,000である。より好ましくは4,000〜25,000である。ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量が1,000より低いときは面材との摩擦低減効果が少なくなる。40,000より大きくなるとモノオール副生量増加に伴う熱劣化による分子量低下やポリオキシアルキレンポリオールの水への溶解度が低下するため好ましくない。
【0042】
ポリオキシアルキレンポリオールの総不飽和度は0.07meq./g以下が好ましい。より好ましくは0.06meq./g以下であり、最も好ましくは0.05meq./g以下である。ポリオキシアルキレンポリオールの総不飽和度が0.07meq./gより多くなると、含水量が少ない潤滑性組成物として使用する際に高温での熱安定性の低下、あるいは繰り返し使用時において粘度が低下するため、面材との潤滑性が悪化する傾向にある。
【0043】
以上のように構造が制御されたポリオキシアルキレンポリオールの製造は以下の条件を選んで行う必要がある。すなわち、活性水素化合物1モルに対する化学式(1)または化学式(2)で表されるホスファゼニウム化合物は5×10-5〜5モル、好ましくは1×10-4〜5×10-1モル、より好ましくは1×10-3〜1×10-2モルの範囲である。ポリオキシアルキレンポリオールを高分子量化する際には、活性水素化合物に対するホスファゼニウム化合物の濃度を上記範囲内で高めることが好ましい。活性水素化合物1モルに対して化学式(1)または化学式(2)で表されるホスファゼニウム化合物が5×10-5モルより低い場合には、アルキレンオキサイドの重合速度が低下し、ポリオキシアルキレンポリオールの製造時間が長くなる。活性水素化合物1モルに対して化学式(1)または化学式(2)で表されるホスファゼニウム化合物が5モルより多くなると、ポリオキシアルキレンポリオール製造コストに占めるホスファゼニウム化合物のコストが高くなる。
【0044】
また、アルキレンオキサイドの反応温度は15〜130℃、好ましくは40〜120℃、さらに好ましくは50〜110℃の範囲である。アルキレンオキサイドの反応温度を上記範囲内で低い温度で行う場合は、活性水素化合物に対するホスファゼニウム化合物の濃度を先に述べた範囲内で高めることが好ましい。耐圧反応機に仕込んだホスファゼニウム化合物を触媒とする活性水素化合物へのアルキレンオキサイド供給方法は、必要量のアルキレンオキサイドの一部を一括して供給する方法、または連続的にもしくは間欠的にアルキレンオキサイドを供給する方法が用いられる。必要量のアルキレンオキサイドの一部を一括して供給する方法においては、アルキレンオキサイド重合反応初期の反応温度は上記範囲内でより低温側とし、アルキレンオキサイド装入後に次第に反応温度を上昇する方法が好ましい。反応温度が15℃より低い場合には、アルキレンオキサイドの重合速度が低下し、ポリオキシアルキレンポリオールの製造時間が長くなる。反応温度が130℃を越えるとアルキレンオキサイドとしてプロピレンオキサイドを用いた場合、総不飽和度が高くなる。
【0045】
アルキレンオキサイドの反応時の最大圧力は9kgf/cm2(882kPa、絶対圧、以下同様)が好適である。通常、耐圧反応機によりアルキレンオキサイドの反応が行われる。アルキレンオキサイドの反応は減圧状態から開始しても、大気圧の状態から開始してもよい。大気圧状態から反応を開始する場合には、窒素またはヘリウム等の不活性気体存在下で行うことが望ましい。アルキレンオキサイドの最大反応圧力が9kgf/cm2(882kPa)を越えると副生モノオール量が増加する傾向にある。最大反応圧力として好ましくは7kgf/cm2(686kPa)、より好ましくは5kgf/cm2(490kPa)である。アルキレンオキサイドとして、プロピレンオキサイドを用いる場合には、最大反応圧力は5kgf/cm2(490kPa)が好ましい。
【0046】
アルキレンオキサイド付加重合反応に際して、必要ならば溶媒を使用することもできる。使用する場合の溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ペプタン等の脂肪族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類またはジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等である。溶媒を使用する場合には、ポリオキシアルキレンポリオールの製造コストを上げないためにも、製造後に溶媒を回収し再利用する方法が望ましい。
【0047】
ホスファゼニウム化合物を触媒として活性水素化合物にアルキレンオキサイドを付加重合した後の粗製ポリオキシアルキレンポリオールからのホスファゼニウム化合物除去方法について述べる。
e.粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、水を1〜40重量部加えた後、粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物1モルに対して無機酸または有機酸を0.5〜2.5モル使用して50〜130℃でホスファゼニウム化合物を中和する。その後、粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して吸着剤を0.005〜1.5重量部用いて減圧処理を行い、水を留去し、ろ過操作によりホスファゼニウム塩ならびに吸着剤を除去する(酸中和除去法)。
f.粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、ポリオキシアルキレンポリオールに不活性な有機溶剤および水を1〜40重量部加えた後、粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物1モルに対して無機酸または有機酸を0.5〜2.5モル使用して50〜130℃でホスファゼニウム化合物を中和する。その後、粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して吸着剤を0.005〜1.5重量部用いて減圧処理を行い、水および有機溶剤を留去し、ろ過操作によりホスファゼニウム塩ならびに吸着剤を除去する(酸中和除去法)。
g.粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に水単独または水とポリオキシアルキレンポリオールに不活性な炭化水素系溶剤から選ばれる溶媒の混合物を1〜200重量部加え分液し、水洗後、減圧処理により水および有機溶剤を留去する(水洗処理法)。
h.粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に水を20〜200重量部加え15〜100℃以下でイオン交換樹脂と接触させた後、ろ過によりイオン交換樹脂を除き、減圧処理により脱水を行う(イオン交換処理法)。
【0048】
まず、e法、f法(酸中和除去方法)について説明する。本願記載の数平均分子量が高い(数平均分子量5,000〜40,000の範囲)ポリオキシアルキレンポリオールは親水性の水酸基の濃度が低い。アルキレンオキサイドの重合反応において、活性水素化合物に対するホスファゼニウム化合物の使用量が多い場合は、ホスファゼニウム化合物の中和の際に用いる水あるいは有機溶剤の量がポリオキシアルキレンポリオール中からホスファゼニウム化合物濃度を低減するために重要な因子となる。
【0049】
中和の際には、水(e法)またはポリオキシアルキレンポリオールに不活性な有機溶剤と水の混合物(f法)を粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、1〜40重量部用いる。好ましくは1〜30重量部、より好ましくは1.2〜20重量部である。水は必須成分であり、ポリオキシアルキレンポリオールに不活性な有機溶剤および水を用いる際にも該混合溶媒中の水は少なくとも20重量%は必要である。ポリオキシアルキレンポリオール中に親水基であるオキシエチレン基が10モル%以上あるときは水の使用量は少なくてもよい。オキシエチレン基がないときには水の使用量を増加する。1重量部より少ないときは製品中のホスファゼニウム化合物濃度が多くなる。40重量部より多くなると脱水、脱溶媒に費やすエネルギーが多くなる。
【0050】
ポリオキシアルキレンポリオールに不活性な有機溶剤とは、炭化水素系溶剤の中でトルエン、ヘキサン類、ペンタン類、ヘプタン類、ブタン類、低級アルコール類、シクロヘキサン、シクロペンタン、キシレン類などが挙げられる。これらの有機溶剤をポリオキシアルキレンポリオールから留去するには加熱減圧操作により実施する。温度は100〜140℃で減圧度を10mmHgabs.(1330Pa)以下にする方法が好ましい。
【0051】
ホスファゼニウム化合物を中和する際の酸として無機酸または有機酸を使用する。無機酸としては、例えば、リン酸、亜リン酸、塩酸、硫酸、亜硫酸およびそれらの水溶液が挙げられる。有機酸としては、例えば、ギ酸、シュウ酸、コハク酸、酢酸、マレイン酸およびそれらの水溶液が挙げられる。特に、好ましくはリン酸、マレイン酸、シュウ酸であり、水溶液の形態で用いることが良い。これらの酸は粗製ポリオキシアルキレンポリオール中に含まれるホスファゼニウム化合物の1モルに対して0.5〜2.5モル使用する。好ましくは、0.7〜2.4モル、より好ましくは0.9〜2.3モルである。中和は50〜130℃の範囲で実施する。特に好ましくは70〜95℃である。中和時間は反応スケールにもよるが、0.5〜3時間である。ホスファゼニウム化合物1モルに対して酸の量が2.5モルに近いときは酸吸着剤を併用するのが好ましい。0.5モルより少ないときは製品のポリオキシアルキレンポリオールのホスファゼン化合物濃度が高くなる傾向にある。2.5モルより多くなると酸を除去するための吸着剤使用量が多くなる。
【0052】
中和反応終了後、吸着剤を装入する。その際、酸化防止剤である2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)などの酸化防止剤を添加することが好ましい。酸化防止剤は粗製ポリオキシアルキレンポリオールに対して200〜5000ppm用いる。好ましくは300〜4000ppm、より好ましくは350〜2000ppmである。粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して酸およびアルカリ成分を吸着する吸着剤を0.005〜1.5重量部添加する。好ましくは、0.02〜1.2重量部、より好ましくは0.03〜1.1重量部である。吸着剤としては、例えば合成ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、活性白土、酸性白土が用いられる。吸着剤を製造する工程で水酸化ナトリウムによる処理を行っていることから、ナトリウム溶出分が少ない吸着剤が好ましい。具体的な吸着剤としては、トミックスシリーズ、例えば、トミックスAD−600、トミックスAD−700〔富田製薬(株)製〕、キョーワードシリーズ、例えば、キョーワード400、キョーワード500、キョーワード600、キョーワード700〔協和化学工業(株)製〕、MAGNESOL(DALLAS社製)等各種の商品名で市販されている。
【0053】
吸着剤装入後は水または、水と有機溶剤とを減圧条件下で留去する。反応スケールにもよるが、100〜140℃、10mmHgabs.(1330Pa)の条件で3〜12時間行う。その後、ろ過操作により、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行う。その際に、けいそう土、セライトなどのろ過助剤を用いても良い。このような操作により得られるポリオキシアルキレンポリオール中の酸価は0.07mgKOH/g以下である。より好ましくは、0.05mgKOH/g以下である。酸価が0.07mgKOH/gより大きくなるとポリオキシアルキレンポリオールの熱安定性の低下、あるいは該ポリオールを作動液あるいは潤滑油として使用する際に金属類の腐食を誘発する可能性がある。
【0054】
続いて、水洗処理法を説明する。粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に水単独または、水とポリオキシアルキレンポリオールに不活性な炭化水素系溶剤から選ばれる溶媒の混合物を1〜200重量部加え撹拌、分液し、水洗後、減圧処理により該溶媒を留去する。用いる水はイオン交換水、市水が好ましい。水とポリオキシアルキレンポリオールに不活性な有機溶剤との混合溶媒を用いる場合には、該混合溶媒の20重量%以上は水であることが好ましい。水単独または、水と有機溶剤から選ばれる溶媒の混合物を加え、ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物を水に抽出する。2〜30時間静置分液を行い、水を交換する。反応スケールにもよるが、3〜5回の水洗を行う。水洗後は、加熱減圧処理により、脱水、脱溶媒を行う。加熱処理前に前述した酸化防止剤を添加することが好ましい。
【0055】
イオン交換処理法について説明する。粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に水を20〜200重量部加え15〜100℃以下でイオン交換樹脂と接触させた後、ろ過によりイオン交換樹脂を除き、減圧処理により脱水を行う。イオン交換樹脂としては陽イオン交換樹脂が良く、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体のスルホン化物が好ましく用いられる。また、ゲル型とマクロポーラス型のどちらの形態のものも本発明に供することができる。さらにイオン交換樹脂の性質としては、強酸性、弱酸性どちらのものも使用できるが、強酸性イオン交換樹脂が好ましく用いられる。この種の強酸性イオン交換樹脂はレバチットS100、同S109、同SP112、同SP120、同S100LF(以上バイエル社製)、ダイヤイオンSK1B、同PK208、同PK212(三菱化学社製)、ダウエックスHCR−S、50WX1、50WX2(ダウケミカル社製)、アンバーライトIR120、同IR122、同200C(ロームアンドハース社製)等の各種の商標で市販されている。脱水時に前述した酸化防止剤を用いることが好ましい。
【0056】
以上、詳述した方法により粗製ポリオキシアルキレンポリオールからホスファゼニウム化合物の除去操作を行った後のポリオキシアルキレンポリオールのCPR(Controlled Polymerization Rate)は5以下である。好ましくはCPRが3以下のものである。最も好ましくは、CPRが1以下である。CPRが5より大きくなると、ポリオキシアルキレンポリオール中の塩基成分濃度が増加するため、潤滑性組成物として使用する際に金属類の腐食を促進させる。そのため、該分野で使用するポリオキシアルキレンポリオール中の塩基、あるいは酸などのイオン成分は少ないものが好ましい。
【0057】
ポリオキシアルキレンポリオールの品質を安定化させる目的で、上述した精製処理前後に酸化防止剤を添加する。酸化防止剤としては例えば、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、tert−ブチルヒドロキシアニソール、4,4’−メチレンビス(2,3−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、N−n−ブチル−p−アミノフェノール、ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、4,4’−テトラメチル−ジアミノジフェニルメタン、α−ナフチルアミン、N−フェニル−α−ナフチルアミン、N,N’−ジサリチルデン−1,2−プロピレンジアミン、フェノチアジン、レシチン、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジラウリルチオプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートが挙げられる。この中で好ましくは、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、4,4’−テトラメチル−ジアミノジフェニルメタン、フェノチアジン、レシチン、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジラウリルチオプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートである。これらの酸化防止剤は1種類以上併用することもできる。酸化防止剤はポリオキシアルキレンポリオール対して、0.01〜5重量%用いる。好ましくは、0.02〜3重量%であり、最も好ましくは0.03〜2重量%である。酸化防止剤の使用量が0.01重量%より少ないと高温使用時におけるポリオキシアルキレンポリオールの熱安定性が低下する。5重量%より多くなると低温使用時において、酸化防止剤が析出する場合があるので好ましくない。
【0058】
本発明の潤滑性組成物100重量部あたりのポリオキシアルキレンポリオールの使用量は5〜70重量部が好適で、好ましくは8〜60重量部、さらに好ましくは9〜50重量部である。5重量部より少ないと作動液分野に使用する際、要求される粘度指数が低くなる。また、70重量部より多くなると潤滑性組成物の熱安定性が低下する。
【0059】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示し、本発明の態様を明らかにするが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
ポリオキシアルキレンポリオールの合成において、以下のホスファゼニウム化合物をアルキレンオキサイドの触媒として使用した。
ホスファゼニウム化合物(以下、P5NMe2OHと略する。);Fluka社製のテトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスホニウムクロライド{[(Me2N)3P=N]4P+Cl-}をMILL−Q Labo(日本ミリポア・リミテッド製小型超純水装置)により比抵抗値16MΩ−cmに調製した水(以降超純水と略する)により2.5重量%水溶液に調製した。次いで、1N 水酸化ナトリウム水溶液により交換基を水酸基型にしたイオン交換樹脂レバチットMP−500(バイエル社製)を充填したポリカーボネート製円筒状カラムにテトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスホニウムクロライドの2.5重量%水溶液を23℃、SV(SpaceVelocity)0.5(1/hr)でカラム底部より上昇流で通液し、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスホニウムヒドロキシドにイオン交換を行った。更に、該イオン交換樹脂を充填したカラムに超純水を通液し、カラムに残存しているホスファゼニウム化合物の回収を行った。その後、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスホニウムヒドロキシドの水溶液を80℃、減圧度60mmHgabs.(7980Pa)の条件下で2時間、更に80℃、1mmHgabs.(133Pa)の条件で7時間減圧脱水処理を行うことにより、粉末のテトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスホニウムヒドロキシド{[(Me2N)3P=N]4P+OH-}を得た。乾燥後の該化合物の重量測定から求めた収率は98%であった。重水素化ジメチルホルムアミド溶液によるテトラメチルシランを内部標準とした1H−NMR(日本電子製400MHzNMR)の化学シフトは2.6ppm(d,J=9.9Hz、72H)であった。元素分析値はC 38.28、H 9.82、N 29.43、P 19.94(理論値C 38.09、H 9.72、N 29.61、P 20.46)であった。該ホスファゼニウム化合物は化学式(2)においてa、b、c、dの順に(1,1,1,1)で、Rがメチル基であり、Q-がOH-のヒドロキシアニオンである。
【0060】
アルキレンオキサイドとしてプロピレンオキサイドとエチレンオキサイド〔以上、三井東圧化学(株)製〕を使用した。
比較例に用いた水酸化カリウム〔日本曹達(株)製〕の組成は水酸化カリウム純度96.0重量%のものである。複金属シアン化物錯体〔Zn3[Co(CN)6]2・2.48DME・4.65H2O・0.94ZnCl2〕はUSP4,477,589号に従って調整した。触媒を除去した後の精製ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量はゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)により測定を行った。
ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量はGPC用ポリエチレングリコールを用いた検量線により求めた。以下に分析条件を記す。
測定装置:島津製作所製LC−6Aシステム
検出器 :島津製作所製RID−6A 示差屈折計
分離カラム:昭和電工(株)製Shodex GPC KFシリーズ
KF−801,802,802.5,803の4本直列
溶離液 :液体クロマトグラム用テトラヒドロフラン
液流量 :0.8ml/min.
カラム温度:40℃
ポリオキシアルキレンポリオールのCPRはJIS K 1557記載の方法に従って求めた。
【0061】
実施例1
ポリオキシアルキレンポリオールA
攪拌装置、窒素導入管および温度計を装備した500mlの4つ口フラスコにグリセリン1モルに対して0.012モルのP5NMe2OHと0.09モルのトルエンを仕込み、105℃、5mmHgabs.(665Pa)以下の条件で5時間減圧脱水、脱トルエン操作を行った。その後、フラスコ内容物を温度計、圧力計ならびに攪拌機が装着してある内容積2.5リットルのオートクレーブに仕込み、窒素置換後、10mmHgabs.(1330Pa)の減圧状態から最大圧力4kg/cm2 (392kPa)、反応温度80〜95℃の条件でプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの混合アルキレンオキサイドの反応を行った。この時のプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの混合比は重量比で35/65である。予め、耐圧用計量槽〔日東高圧(株)製〕に窒素雰囲気下でエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの計量混合を行い、窒素圧によりオートクレーブへ送液した。グリセリン1モルに対してプロピレンオキサイドを99モル、エチレンオキサイドを242モル量装入し、反応させた。オートクレーブの内圧の変化が無くなった時点で、95℃、10mmHgabs.(1330Pa)以下の条件で未反応モノマーを除去した後、粗製ポリオキシアルキレンポリオールを得た。該粗製ポリオール中のホスファゼニウム化合物1モルに対して2.1モルのリン酸(75.1重量%のリン酸水溶液の形態)ならびに粗製ポリオール100重量部に対して10重量部のイオン交換水を装入し、90℃、2時間の条件で中和反応を行った。その後、該粗製ポリオール100重量部に酸化防止剤である2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(以下、BHTと略する。)を0.15重量部および4,4’−ジラウリルチオジプロピオネートを0.05重量部添加し、減圧下で脱水を行い、オートクレーブの内圧が200mmHgabs.(26.6kPa)の状態で吸着剤AD−600NS〔富田製薬(株)製〕を5000ppm添加し、さらに減圧下で水を留去しながら最終的に105℃、10mmHgabs.(1330Pa)の条件で5時間減圧脱水を行った。窒素により減圧から大気圧状態にした後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙(保持粒径1μ)により減圧ろ過を行い、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った。ホスファゼニウム化合物除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量は14,800で、CPRは0.9であった。
【0062】
比較例1
ポリオキシアルキレンポリオールB
圧力計ならびに攪拌機が装着してある内容積2.5リットルのオートクレーブにグリセリンにプロピレンオキサイドを付加したポリオキシプロピレンポリオールMN1000〔三井東圧化学(株)製〕100重量部に対して0.05重量部の複金属シアン化物錯体〔Zn3[Co(CN)6]2・2.48DME・4.65H2O・0.94ZnCl2〕を添加し、105℃、10mmHgabs.(1330Pa)以下の条件で3時間の減圧脱水を行った。窒素置換後、反応温度85℃、最大反応圧力4kg/cm2 (392kPa)の条件でプロピレンオキサイドの付加反応を行った。プロピレンオキサイドはMN1000 1モルあたり90モル量使用した。未反応プロピレンオキサイドを90℃、10mmHgabs.(1330Pa)の条件で回収し、複金属シアン化物錯体を含有している粗製ポリオキシプロピレンポリオールを得た。該ポリオール100重量部に対して2.22重量部の30重量%のカリウムメチラートのメタノール溶液を添加し、90℃で30分間撹拌した後、脱メタノール反応を90℃、20mmHgabs.(2660Pa)の条件で2時間行った。その後、該ポリオール100重量部に対して水を3重量部とAD−600NS〔富田製薬(株)製〕を5重量部加え、窒素雰囲気下、90℃で2時間撹拌し、次いで、110℃、10mmHgabs.(1330Pa)以下の条件で2時間減圧脱水を行った。その後、アドバンテック東洋株式会社製5Cろ紙(保持粒径1μ)を用いてポリオールの回収を行った。エチレンオキサイドの付加重合を行うため、複金属シアン化物錯体除去後のポリオール100重量部に2.5重量部の30重量%のカリウムメチラートのメタノール溶液を添加し、脱メタノール反応を100℃、10mmHgabs.(1330Pa)以下の条件で3時間行った。窒素置換後、数平均分子量が15,000になるようなエチレンオキサイド量を装入し、反応させた。反応後、減圧処理を行い、粗製ポリオールを得た。この時のプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの仕込み比は重量比で35/65である(実施例1と同じ組成比)。粗製ポリオール中のカリウム1モルに対して1.2モルのリン酸(75.1重量%のリン酸水溶液の形態)ならびに粗製ポリオール100重量部に対して30重量部のイオン交換水を装入し、90℃、2時間の条件で中和反応を行った。その後、酸化防止剤であるBHTを粗製ポリオール100重量部に対して0.15重量部および4,4’−ジラウリルチオジプロピオネートを0.05重量部ならびに吸着剤KW−700SN〔協和化学工業(株)製〕を8000ppm添加し、減圧下、水を留去しながら最終的に105℃、10mmHgabs.(1330Pa)の条件で3時間減圧脱水を行った。窒素により減圧から大気圧状態にした後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙(保持粒径1μ)により減圧ろ過を行い、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った。カリウム除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量は14,400で、CPRは6.2であった。
【0063】
比較例2
ポリオキシアルキレンポリオールC
攪拌装置、窒素導入管および温度計を装備した500mlの4つ口フラスコにグリセリン1モルに対して0.35モルの水酸化カリウムを加え、105℃、7mmHgabs.(931Pa)以下の条件で5時間減圧脱水した。この化合物を温度計、圧力計ならびに攪拌機が装着してある2.5リットルのオートクレーブに仕込み、窒素置換後、10mmHgabs.(1330Pa)の減圧状態から最大圧力4kg/cm2 (392kPa)、反応温度80〜95℃の条件でプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの混合アルキレンオキサイドの反応を行った。この時のプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの混合比は重量比で35/65である。予め、耐圧用計量槽〔日東高圧(株)製〕に窒素雰囲気下でエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの計量混合を行い、窒素圧によりオートクレーブへ送液した。グリセリン1モルに対してプロピレンオキサイドを103.5モル、エチレンオキサイドを250モル量装入し、反応させた。オートクレーブの内圧の降下が認められなくなった時点で、95℃、10mmHgabs.(1330Pa)の条件で未反応モノマーを除去した後、粗製ポリオキシプロピレンポリオールを得た。該粗製ポリオール中のカリウム1モルに対して1.5モルのリン酸(75.1重量%のリン酸水溶液の形態)ならびに粗製ポリオール100重量部に対して35重量部のイオン交換水を装入し、90℃、2時間の条件で中和反応を行った。その後、該粗製ポリオール100重量部に対して酸化防止剤であるBHTを0.15重量部および4,4’−ジラウリルチオジプロピオネートを0.05重量部ならびに吸着剤KW−700SN〔協和化学工業(株)製〕を9000ppm添加し、減圧下、水を留去しながら最終的に105℃、10mmHgabs.(1330Pa)の条件で3時間減圧脱水を行った。窒素により減圧から大気圧状態にした後、アドバンテック東洋株式会社製の5Cろ紙(保持粒径1μ)により減圧ろ過を行い、ポリオキシアルキレンポリオールの回収を行った。カリウム除去操作後のポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量は13,800で、CPRは2.9であった。
【0064】
実施例、比較例で得られたポリオキシアルキレンポリオール(以下、ポリオールと略する。)を以下に示す潤滑性組成に調製し、外観、動粘度および摩擦係数の測定を行った。ポリオールの重合触媒はホスファゼニウム化合物をPZ、水酸化カリウムをKOH、複金属シアン化物錯体はDMCと略する。潤滑性組成物の外観評価は目視により行った。均一状態だと○、ゲル化物が浮遊し不均一状態だと×で評価を行った。動粘度の測定はJIS K 2283に準じて測定を行った。摩擦係数はレオメトリックス社製の粘弾性測定装置RMS−800を用いて測定を行った。測定条件は25℃で、ずり速度は20s-1である。さらに、実施例、比較例で得られたポリオキシアルキレンポリオールを用いて熱安定性試験を行った。ポリオキシアルキレンポリオールをJIS K 2839記載の石油類試験用ガラス容器に秤量する。これらの試料を予め170℃に加熱した回転盤付きオーブンを入れ、24時間回転させながらオーブン内に放置する。試験時間加熱後、試料容器を取り出し、デシケータ内に入れ、暗所で室温まで放冷し、試料および試料容器底部における析出物の有無を透視して調べる。析出物がある場合には×、無い場合には○で評価を行った。熱安定試験の結果を表1に示した。
【0065】
潤滑性組成
イオン交換水 40重量部
エチレングリコール 45重量部
ポリオール 15重量部
エチレングリコールは三井東圧化学(株)製を使用した。
〔表1〕に測定結果を示す。
【0066】
【表1】
【0067】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のホスファゼニウム化合物を触媒としてアルキレンオキサイドを付加重合したポリオキシアルキレンポリオールを含む潤滑性組成物は、多量の水を含む組成においても外観に優れ、かつ動粘度も高く、摩擦係数が小さい。また、本発明のポリオキシアルキレンポリオールは熱安定性にも優れている。
Claims (3)
- 少なくとも水とポリオキシアルキレンポリオールとからなる潤滑性組成物において、化学式(1)
- ポリオキシアルキレンポリオールの付加重合に用いるアルキレンオキサイドが、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイドおよびブチレンオキサイドから選ばれる少なくとも2種類の混合アルキレンオキサイドであることを特徴とする請求項1記載の潤滑性組成物。
- 化学式(1)または化学式(2)のホスファゼニウム化合物を用いてアルキレンオキサイドを付加重合した後の粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物の除去操作をe〜hのいずれかの方法で行うことにより得られるCPRが5以下のポリオキシアルキレンポリオールを用いることを特徴とする請求項1記載の潤滑性組成物。
e.粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、水を1〜40重量部加えた後、粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物1モルに対して無機酸または有機酸を0.5〜2.5モル使用して50〜130℃でホスファゼニウム化合物を中和する。その後、粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して吸着剤を0.005〜1.5重量部用いて減圧処理を行い、水を留去し、ろ過操作によりホスファゼニウム塩ならびに吸着剤を除去する。
f.粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、ポリオキシアルキレンポリオールに不活性な有機溶剤および水を1〜40重量部加えた後、粗製ポリオキシアルキレンポリオール中のホスファゼニウム化合物1モルに対して無機酸または有機酸を0.5〜2.5モル使用して50〜130℃でホスファゼニウム化合物を中和する。その後、粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して吸着剤を0.005〜1.5重量部用いて減圧処理を行い、水および有機溶剤を留去し、ろ過操作によりホスファゼニウム塩ならびに吸着剤を除去する。
g.粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に水50〜200重量部およびポリオキシアルキレンポリオールに不活性な炭化水素系溶剤を1〜200重量部加え分液し、水洗後、減圧処理により水および有機溶剤を留去する。
h.粗製ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に水を20〜200重量部加え15〜100℃でイオン交換樹脂と接触させた後、ろ過によりイオン交換樹脂を除き、減圧処理により脱水を行う。
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