JP3858140B2 - 金属板ラミネート用樹脂フィルムおよびラミネート金属板並びにその製造方法 - Google Patents

金属板ラミネート用樹脂フィルムおよびラミネート金属板並びにその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、加工性、耐衝撃性に優れ、過酷な成形加工に耐え得る金属板ラミネート用樹脂フィルムおよびラミネート金属板並びにその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、薄肉深絞り缶のごとき過酷な成形を強いられる金属缶用材料としては、成形性、耐衝撃性、食品衛生性、耐食性、フレーバー性等の観点から、主としてポリエチレンテレフタレート系樹脂が用いられている(特開昭59−232852号公報など)。ポリエチレンテレフタレートフィルムが元来有する、食品衛生性や耐フレーバー性に加えて、フィルムの結晶配向を、ラミネート技術等で制御することにり、諸性能が缶の要求性能を満たし得る領域へ設計される(特開平5−269920号公報、特開平6−320669号公報)。この技術は、現状の加工レベルにおいては、適応可能である。
【0003】
しかしながら、当該分野では、年々、材料のゲージダウンが進行しており、この傾向は今後も続くと思われる。これは、今後、さらに厳しい加工度が要求されるということに他ならない。然るに、現行のポリエチレンテレフタレートの系では、より厳しい加工に供した場合、加工性と耐衝撃性を両立させることが困難である。具体的には、加工性と耐衝撃性は、樹脂層の結晶配向度(面配向)に大きく依存するファクターであるからである。樹脂層中に結晶配向成分が増えると、結晶部で塑性変形が阻害され、加工度が劣る。この為、加工性の観点からは、結晶配向量は少ないほど良い。一方、衝撃を受けた場合、この結晶部分は、割れの進行を食い止める部位として働く。したがって、耐衝撃性の観点からは結晶配向量は多いほど良い。この為、加工性と耐衝撃性は、両特性の許容領域となるよう結晶配向を調節し、設計される。両特性の両立域は、今後の加工度の上昇に対して余裕を持っていない状況である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この様な状況下、より高加工度に耐え得るラミネート金属板の開発が切に望まれている。本発明は、その解決手段を提供するものであり、加工性、耐衝撃性、加工後密着性に優れた金属板ラミネート用樹脂フィルムおよびラミネート金属板並びにその製造方法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート系樹脂)の元来持つ加工性の良さを失わずに、より厳しい加工に耐え得る樹脂層の構造を検討した。その結果、ガラス転移点が実用温度域下限(4℃)よりも低い樹脂をポリエステル樹脂中に混合することで、結晶配向に頼ることなく、耐衝撃性の向上が可能であることを見出した。結晶配向で耐衝撃性を担わなくて良い分、必要以上に結晶配向量を高める必要性が無く、高加工性を実現できる。
【0006】
耐衝撃性が問題となるのは特に低温度領域である。飲料缶、食料缶などの金属缶は、流通過程で冷蔵されるケースがある。そのような環境下で缶が落下などにより衝撃を受けた場合、樹脂層が損傷を受け、下地が露出することが具体的な問題点となる。衝撃を受けたポリエステル樹脂フィルムラミネート金属板の樹脂層の破壊断面は、脆性破壊の様相を呈している。これは、ポリエステル樹脂のガラス転移点が冷蔵温度に比較して高い温度域にあるためであり、いわゆる割れるのである。衝撃による急激な変形に伴うエネルギーを吸収する部位がフィルム中に存在すれば、耐衝撃性は、著しく改善されるはずである。
【0007】
本発明者らは、ポリエステル樹脂中に様々な樹脂を混合させ、試験を繰り返した。その結果、単純に割れの伝播を食い止め得る堅い物質(例えば粒状シリカ)を混合した系では、割れのエネルギーを吸収しきれない為、粒界を割れが伝播し、結果として耐衝撃性の向上は認められなかった。一方、ガラス転移点が冷蔵温度より低い樹脂を混在させた系では、耐衝撃性の向上が顕著に認められた。これは、ガラス転移点が冷蔵温度以下の樹脂は、割れのエネルギーを弾性変形によって、ある程度吸収する為であると考えられる。破壊断面は、多くの部位で割れが止まり、結果として、破壊断面は、さながら延性破壊の様相を呈していた。
【0008】
また、単純にポリエステル樹脂層とガラス転移点が3℃以下の樹脂層を積み重ねたものは、層間剥離や加工性などの点で支障をきたす。したがって、ガラス転移点が3℃以下の樹脂は、ポリエステル樹脂中に分散している必要がある。
【0009】
また、金属板と接する樹脂層を、エチレンテレフタレート及び/またはエチレンイソフタレートを基本骨格としたポリエステル樹脂層とすることで、充分な加工後密着性を確保できる。
【0010】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
【0011】
(1)エチレンテレフタレート及び/またはエチレンイソフタレートを基本骨格としたポリエステル樹脂に、ガラス転移点が3℃以下で平均粒子径が0.01〜5μmの粒状樹脂を分散させた混合樹脂からなり、該混合樹脂中に該粒状樹脂が体積比率で3〜50vol%の範囲で混合されている有機樹脂層をB層、エチレンテレフタレート及び/またはエチレンイソフタレートを基本骨格としたポリエステル樹脂層をA層としたとき、B層/A層の2層構造を有するフィルムであって、B層の膜厚が10〜40μmかつA層の膜厚が5〜30μmであり、また金属板にラミネートする際、B層が最外層になるよう設計された金属板ラミネート用樹脂フィルム(第1発明)。
【0012】
(2)B層のガラス転移点が3℃以下の樹脂が、ポリオレフィンであることを特徴とする前記(1)に記載の金属板ラミネート用樹脂フィルム(第2発明)。
【0013】
(3)ポリオレフィンが、ポリプロピレンであることを特徴とする前記(2)に記載の金属板ラミネート用樹脂フィルム(第3発明)。
【0014】
(4)金属板の少なくとも一方の表面に、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂フィルムを被覆したことを特徴とするラミネート金属板(第4発明)。
【0015】
(5)樹脂フィルムが、顔料を5〜40wt%含有することを特徴とする前記(4)に記載のラミネート金属板(第5発明)。
【0016】
(6)樹脂フィルムのフィルム面と平行な方向の面配向係数が0.01未満であることを特徴とする前記(4)または(5)に記載のラミネート金属板(第6発明)。
【0017】
(7)金属板が、表面に付着量50〜200mg/m2の金属クロム層と、金属クロム換算の付着量が3〜30mg/m2のクロム酸化物層を有する電解クロメート処理鋼板であることを特徴とする前記(4)〜(6)のいずれかに記載のラミネート金属板(第7発明)。
【0018】
(8)前記(4)〜(7)のいずれかに記載のラミネート金属板を製造するにあたり、A層のポリエステル樹脂の融点−70℃〜融点+30℃の範囲に加熱した金属板に、樹脂フィルムをラミネートすることを特徴とするラミネート金属板の製造方法(第8発明)。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明のエチレンテレフタレート及び、またはエチレンイソフタレートを基本骨格としたポリエステル樹脂とは、基本骨格部分がポリエステル中、60mol%以上を占めており、その他の部位で、酸成分が、各種の芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸を任意に共重合しても良い。具体的には、例えば、2,6−ナフタリンジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、アジピン酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セパシン酸、ドデカジオン酸、trans−1,4−シクロヘキ酸ジカルボン酸などである。また、グリコール成分も、各種の脂肪族ジオール、芳香族ジオールを共重合しても良い。具体的には、例えば、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、trans−1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、p−キシレングリコール、cis−1,4−シクロヘキサンジメチル、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどである。
【0020】
第1発明に記載するように、混合するガラス転移点が3℃以下の樹脂は、耐衝撃性向上の観点、その他の諸特性に悪影響を与えないという観点から、平均粒子径が0.01〜5μmφ、混合樹脂中の体積比率が3〜50vol%の範囲にあることが必要である。また、さらに望ましくは、平均粒子径が0.05〜0.5μmφ、体積比率が5〜20vol%の範囲が良い。平均粒子径、体積比率の下限値は、耐衝撃性の向上に有効に寄与するという観点から規定され、上限値は、加工性に悪影響を与えないという観点から規定される。また、ガラス転移点が3℃以下であるのは、流通過程での金属缶の冷蔵温度が4℃である為、ガラス転移点が冷蔵温度より低い3℃以下の樹脂を混在させることによって耐衝撃性を向上できるためである。
【0021】
本発明のガラス転移点が3℃以下の樹脂は、特に限定されるものではないが、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸n−プロピル、ポリアクリル酸イソブチル、ポリアクリル酸n−ブチル、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリブタジエン、ポリアセタールなどである。また、ガラス転移点が3℃以下の樹脂は、1種でも良いし、2種以上混合しても良い。
【0022】
また、本発明の効果を妨げない限り、相溶化剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、耐侯剤を添加しても良い。それぞれの添加剤を加えることにより、それぞれの公知の効果が得られ、用途に応じて、より好ましいものを提供できる。
【0023】
A層の膜厚が5〜30μmの範囲に設定される理由は、上限値、下限値とも経済的な理由である。上限は単に、必要とする樹脂量が多く必要であるからであり、下限値は、極薄膜フィルムの製膜の費用の観点で、経済的に不利であるからである。また、B層の膜厚が10〜40μmと規定されるのは、上限が経済的な理由、下限は、耐衝撃性、加工性の観点から規定される。
【0024】
第2発明において、ガラス転移点が3℃以下の樹脂をポリオレフィンと規定したのは、加工性の観点から、より好ましい樹脂種であるからであり、さらに第3発明で、ポリオレフィンをポリプロピレンと規定したのは、もっとも好ましい樹脂種であるからである。
【0025】
前記したB層/A層の2層構造を有するフィルムは、共にポリエステルを基本としているので、層間剥離の点、加工性の点で全く不都合を生じない。この2層構造のフィルムをB層が最外層になるようにして金属板にラミネートすると、加工性、耐衝撃性、加工後密着性に優れたラミネート金属板が得られる。
【0026】
第5発明において、顔料を5〜40wt%に規定したのは、下限値が顔料の効果の下限であり、上限は、加工に影響を与えない範囲の上限値であるためである。顔料はA層とB層の一方の層あるいは双方に含有されていても構わないが、最外層になるB層に含有させた方が、より効果的である。
【0027】
顔料の種類は特に限定されるものではないが、本発明の効果を妨げない限り、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、エアロジル、二酸化チタン、亜鉛華、グロスホワイト、アルミナホワイト、炭酸マグネシウム、カーボンブラック、マグネタイト、コバルトブルー、ベンガラ等を適宜使用し、金属ラミネート板あるいは、金属缶を好ましい色調に仕上げることが可能となる。
【0028】
第6発明において、樹脂フィルムのフィルム面と平行な方向の面配向係数を0.01未満と規定したのは、この範囲のものは特に加工性が優れるためである。面配向係数の上昇に伴い加工度は劣ってくる。これは、先述したように配向結晶が塑性変形を妨げる為であるが、本発明の面配向係数の範囲であれば、実質的に加工度に影響を与えないレベルである。
【0029】
また、第6発明の面配向係数の領域でも、従来技術に比較して、充分優れる耐衝撃性を有するが、要求性能に応じて、意図的に面配向係数を0.01超えに上げ、さらに優れた耐衝撃性を得ることも可能である。
【0030】
本発明の金属板は特に限定されないが、成形性の点で鉄やアルミニウムなどを素材とする金属板が好ましい。鉄を素材とする金属板の場合、その表面に接着性や耐腐食性を改良する為、無機酸化物被膜層、例えばクロム酸処理、リン酸処理、クロム酸/リン酸処理、電解クロム酸処理、クロメート処理、クロムクロメート処理などで代表される化成処理被覆層を設けてもよい。また、展延性金属メッキ層、例えばニッケル、スズ、亜鉛、アルミニウム、砲金、真ちゅうなどのメッキ層を設けてもよい。スズメッキの場合0.5〜15mg/m2、ニッケルまたはアルミニウムの場合1.8〜20g/m2のメッキ量を有するものが好ましい。
【0031】
鉄を素材とする金属板の場合、第7発明に規定する電解クロメート処理鋼板が、フィルムとの密着性、耐食性、製造コストの観点から特に好ましい。第7発明において、金属クロム層の金属クロム量の下限を50mg/m2と規定したのは、50mg/m2以上になると耐食性、加工後密着性がより優れるからであり、上限を200mg/m2に規定したのは、200mg/m2超えでは耐食性、加工後密着性の向上効果が飽和し、逆に製造コスト上昇するからである。クロム酸化物中のクロム量の金属クロム換算量の下限を3mg/m2と規定したのは、3mg/m2未満になると密着性がより優れるからであり、上限を30mg/m2に規定したのは30mg/m2を超えると色調が悪化するからである。
【0032】
第8発明において、金属板の加熱温度の下限を金属板との密着側になるA層のポリエステル樹脂の融点Tm−70℃と設定したのは、下限値未満では、金属板との密着力が十分でないためであり、上限値をポリエステル樹脂の融点Tm+30℃と設定したのは、フィルム層がラミネートロールに融着してしまうためである。
【0033】
また、本発明のラミネート金属板の製造方法は、第8発明のようなフィルムラミネート法に限定されるものではなく、一般的な樹脂押出し法などで製造しても良い。
【0034】
さらに本発明の効果を妨げない限り、プライマー層を金属板との密着層として設けても良い。本発明のラミネート金属板は、樹脂層と金属板の一次密着性、加工後密着性とも優れたものであるが、より厳しい腐食環境、あるいはより高い密着性が要求される環境下では、プライマー層を設けて、要求に応じた特性を付与できる。例えば、金属缶として使用する場合、より腐食性の強い内容物を充填すると、樹脂層を通して、内容物が金属板との界面に侵入し、金属板を腐食させ、フィルムとの密着性が劣化する可能性もある。このような場合、適切なプライマー層を設けることにより樹脂の剥離を防ぐことが可能となる。
【0035】
プライマーの種類は特に限定されるものではないが、公知のプライマー層を用いることにより、公知の効果が発現される。また、プライマー層の形成方法は特に限定されるものではないが、金属板にプライマー塗料を塗布−乾燥、あるいは、本発明のフィルムにプライマー塗料を塗布−乾燥してもよく、あるいは金属板にプライマーフィルムをラミネートしても良いし、さらには、本発明のフィルムとプライマー層を貼り合わせたフィルムをラミネートしても良い。
【0036】
本発明のラミネート金属板は、絞り成形やしごき成形によって製造されるツーピース金属缶の内面被覆用に好適に使用することができる。また、ツーピース缶の蓋部分、あるいはスリーピース缶の胴、蓋、底の被覆用としても良好な金属接着性、成形性を有するため好ましく使用することができる。
【0037】
前記フィルムを被覆したラミネート金属板は、加工性、耐衝撃性、加工後密着性に優れるので、材料のゲージダウンが進み、特に過酷な成形を強いられる薄肉深絞り缶用途へ使用する材料として好適である。
【0038】
【実施例】
通電加熱方式で加熱した、TFS(厚さ0.18mm、テンパー度DR9、金属クロム層80mg/m2、クロム酸化物層15mg/m2(金属クロム換算))の両面に、膜厚8〜45μmのB層と膜厚20μmのA層を積層したB層/A層の2層構造の樹脂フィルムをA層が金属板側になるようにして熱圧着した後、または膜厚25μmのB層のみの樹脂フィルムを熱圧着した後、水中急冷する熱接着法でラミネート金属板を得た。供試フィルムを表1および表2、ラミネート条件を表3に示す。
【0039】
前記で得たラミネート金属板の面配向係数を調査した。また、前記で得たラミネート金属板を、製缶加工し、歪み取り熱処理を施して供試缶を作製し、製缶した缶体のフィルムの加工性、耐衝撃性を調査した。調査方法の詳細を以下に記載する。
【0040】
(1)製缶加工
ラミネート金属板を、以下の条件で第一段絞り、再絞りを行い薄肉化深絞り缶を得た。
・第一段絞り
ブランク径…150〜160mm
1段絞り …絞り比:1.65
・再絞り
第1次再絞り…絞り比:1.25
第2次再絞り…絞り比:1.25
再絞り工程のダイスコーナー部の曲率半径:0.4mm
再絞り時のしわ押さえ加重…4000kg
・缶胴部の平均薄肉化率
成形前のラミネート金属板の厚さに対し40〜55%
【0041】
(2)歪取り熱処理
製缶加工に伴い導入されたフィルムの加工歪をフィルム融点−15℃の熱環境下で30秒間加熱保持した後に急冷した。
【0042】
(3)フィルム加工性評価
フィルムの損傷を伴うことなく製缶加工できる限界によって、下記のごとく評点をつけた。
限界加工度(薄肉化率) 評点
薄肉化率40%の成形不可 : 1 (劣)
薄肉化率40%まで成形可 : 2 ↑
薄肉化率45%まで成形可 : 3
薄肉化率50%まで成形可 : 4 ↓
薄肉化率55%まで成形可 : 5 (優)
【0043】
(4)耐衝撃性評価
歪取り熱処理を施した缶体(薄肉化率40%)にネック加工を施し、缶体中に、水を充填して蓋を取りつけ巻き締めた後、缶底にポンチで衝撃を与えた。次に蓋をあけ、缶内部に、被衝撃部が浸るように、3%食塩水を充填し、2分浸漬後、液中に浸した白金電極と缶金属部に6Vの負荷をかけ、さらに5分後の電流値を読みとり、以下のように評価した。
試験結果 評価
電流値が10mA以上 :×
電流値が1mA以上〜10mA未満:○
電流値が1mA未満 :◎
【0044】
(5)加工後密着性評価
歪取り熱処理を施した缶体(薄肉化率45%)の缶壁を開口部から、鋼板とフィルムの180°方向にピール試験し、剥離強度を測定した。剥離強度が4kg/20mm以上を合格とした。
【0045】
(6)面配向係数測定
アッベ屈折計を用い、光源はナトリウム/D線、中間液はヨウ化メチレン、温度は25℃の条件で屈折率を測定して、フイルム面の金属板長手方向の屈折率Nx、フィルム面の金属板幅方向の屈折率Ny、フィルムの厚み方向の屈折率Nzを求め、下式から面配向係数Nsを算出した。
面配向係数(Ns)=(Nx+Ny)/2−Nz
【0046】
(7)融点(Tm)測定方法
A層のポリエステル樹脂を結晶化させ、示差走査熱量計(パーキン・エルマー社製DSC−2型)により、10℃/minの昇温速度でポリエステル樹脂の融点を測定した。
調査結果を表3に示す。
【0047】
【表1】
Figure 0003858140
【0048】
【表2】
Figure 0003858140
【0049】
【表3】
Figure 0003858140
【0050】
表1〜3から以下のことが判る。
発明例1〜4は、B層のエチレンテレフタレートとエチレンイソフタレートの共重合比を変えたフィルムであり、これを本発明のラミネート条件でラミネートした発明例20〜23は、成形性、耐衝撃性とも極めて良好である。
【0051】
発明例23〜27は、発明例4のフィルムをラミネート条件を本発明の範囲内で振ったものであり、成形性、耐衝撃性とも極めて良好である
【0052】
発明例5〜7は、混合するガラス転移点が3℃以下の樹脂の粒径を、本発明の範囲内で振ったものである。これを本発明のラミネート条件でラミネートした発明例28〜30は、良好な加工性、耐衝撃性を示した。発明例5は、混合する樹脂の粒径が下限に近いために耐衝撃性向上に対する寄与度が低低いため、これをラミネートした発明例28は、耐衝撃性の評価が○となっている。また、発明例6、7は、本発明の範囲の粒径であるが、特に望ましい範囲を外れるので、これをラミネートした発明例29、30は、加工性の評価が4となっている。
【0053】
一方、比較例5のフィルムは、混合する樹脂の粒径が本発明の下限を下回る為、これをラミネートした比較例20は、耐衝撃性に劣る。また、比較例6は、本発明の粒径の範囲の上限を超えているので、これをラミネートした比較例21は、加工性に劣る。
【0054】
発明例8、9は、フィルムのB層の膜厚を本発明の範囲で振ったものである。これを、本発明のラミネート方法でラミネートした発明例31、32は、いずれも良好な性能を示す。発明例9は、B層の膜厚が本発明の下限に近い為、これをラミネートした発明例32は、発明例31に比べて、加工性、耐衝撃性とも、若干劣る。
【0055】
一方、比較例7は、B層の膜厚が本発明の膜厚の下限を下回っている為、これをラミネートした比較例22は、加工性、耐衝撃性とも劣る。
【0056】
発明例10、11は、混合するガラス転移点が3℃以下の樹脂の体積比率を、本発明の範囲内で振ったものである。これを本発明のラミネート条件でラミネートした発明例33、34は、良好な加工性、耐衝撃性を示した。発明例10は、混合する樹脂の体積比率が本発明の下限に近いために耐衝撃性向上に対する寄与度が低く、これをラミネートした発明例33は、耐衝撃性の評価が○となっている。また、発明例11は、本発明の範囲の体積比率であるが、特に望ましい範囲を外れるので、これをラミネートした発明例34は、成形性の評点が4となっている。
【0057】
一方、比較例8のフィルムは、B層に混合する樹脂の体積比率が本発明の下限を下回る為、これをラミネートした比較例23は、耐衝撃性に劣る。また、比較例9は、B層に混合する樹脂の体積比率が本発明の上限を超えているので、これをラミネートした比較例24は、加工性に劣る。
【0058】
発明例12は、2軸延伸法で製膜した本発明のフィルムであり、これをラミネートした発明例35、36は、いずれも良好な性能を示す。発明例35は、フィルムのフィルム面と平行な方向の面配向係数が0.015であり、加工性が若干劣る。しかしながら、本実施例の評価法より厳しい耐衝撃性試験を行った結果、面配向係数が低いものと比較して耐衝撃性が若干上回ることも確認された。発明例36は、第6発明の範囲の面配向係数を持つものであり、加工性、耐衝撃性とも極めて良い。
【0059】
発明例13、14、19は、混合樹脂がポリプロピレン以外のポリオレフィンであり、これをラミネートした発明例37、38、43は、混合樹脂がポリプロピレンのフィルムをラミネートした発明例23と比較すると加工性が若干劣るものの、充分良好な加工性、耐衝撃性を有する。また、発明例15〜18、20は、ポリオレフィンではないが、ガラス転移点が3℃以下の本発明の範囲にある樹脂を用いた例である。これらのフィルムをラミネートした発明例39〜42、44は、加工性は、若干劣るものの、良好な加工性、耐衝撃性を有する。
【0060】
一方、比較例10〜13は混合樹脂のガラス転移点が、本発明の範囲を外れる為、これをラミネートした比較例25〜28は、耐衝撃性が劣る。
【0061】
また、比較例1〜4は、エチレンテレフタレートとエチレンイソフタレートの共重合比を変えたフィルム単身で、本発明の樹脂を混合しない例である。これをラミネートした比較例16〜19は、加工性は優れるものの、耐衝撃性が劣っている。
【0062】
比較例14は、A層がポリプロピレンの例であり、これをラミネートした比較例29は、加工後密着性が劣っている。また、B層のみのフィルム(比較例15)をラミネートした比較例30は、加工後密着性が劣っている。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、加工性、耐衝撃性、加工後密着性に優れた金属板ラミネート用樹脂フィルムおよびラミネート金属板並びにその製造方法が得られる。
【0064】
本発明のラミネート金属板は、絞り成形やしごき成形によって製造されるツーピース金属缶用途に好適に使用することができる。また、ツーピース缶の蓋部分、あるいはスリーピース缶の胴、蓋、底用鋼板と好ましく使用することができる。
【0065】
また、本発明のラミネート金属板は、材料のゲージダウンが進み、特に過酷な成形を強いられる薄肉深絞り缶用途へ使用する材料としても好適である。

Claims (8)

  1. エチレンテレフタレート及び/またはエチレンイソフタレートを基本骨格としたポリエステル樹脂に、ガラス転移点が3℃以下で平均粒子径が0.01〜5μmの粒状樹脂を分散させた混合樹脂からなり、該混合樹脂中に該粒状樹脂が体積比率で3〜50vol%の範囲で混合されている有機樹脂層をB層、エチレンテレフタレート及び/またはエチレンイソフタレートを基本骨格としたポリエステル樹脂層をA層としたとき、B層/A層の2層構造を有するフィルムであって、B層の膜厚が10〜40μmかつA層の膜厚が5〜30μmであり、また金属板にラミネートする際、B層が最外層になるよう設計された金属板ラミネート用樹脂フィルム。
  2. B層のガラス転移点が3℃以下の樹脂が、ポリオレフィンであることを特徴とする請求項1に記載の金属板ラミネート用樹脂フィルム。
  3. ポリオレフィンが、ポリプロピレンであることを特徴とする請求項2に記載の金属板ラミネート用樹脂フィルム。
  4. 金属板の少なくとも一方の表面に、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂フィルムを被覆したことを特徴とするラミネート金属板。
  5. 樹脂フィルムが、顔料を5〜40wt%含有することを特徴とする請求項4に記載のラミネート金属板。
  6. 樹脂フィルムのフィルム面と平行な方向の面配向係数が0.01未満であることを特徴とする請求項4または5に記載のラミネート金属板。
  7. 金属板が、表面に付着量50〜200mg/m2の金属クロム層と、金属クロム換算の付着量が3〜30mg/m2のクロム酸化物層を有する電解クロメート処理鋼板であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のラミネート金属板。
  8. 請求項4〜7のいずれかに記載のラミネート金属板を製造するにあたり、A層のポリエステル樹脂の融点−70℃〜融点+30℃の範囲に加熱した金属板に、樹脂フィルムをラミネートすることを特徴とするラミネート金属板の製造方法。
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