JP3840846B2 - 縦配列ヘッドを用いた印刷 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、複数色のドットを形成するための印刷ヘッドを用いてカラー印刷を行う技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
印刷ヘッドが主走査方向と副走査方向に走査しながらドットの記録を行う印刷装置としては、シリアルスキャン型プリンタやドラムスキャン型プリンタ等がある。この種のプリンタ、特にインクジェットプリンタ、における画質向上のための技術の一つとして、米国特許第4,198,642号や特開昭53−2040号公報に開示された「インターレース方式」と呼ばれる技術や、特開平3−207665号公報に開示された「オーバーラップ方式」又は「マルチスキャン方式」と呼ばれる技術などがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、画質を向上させる点で好ましいドット記録方式は、印刷ヘッドにおけるノズルアレイの配列に応じて異なる。従って、従来とは異なる印刷ヘッドを有する印刷装置に対しては、従来とは異なるドット記録方式を適用することが好ましい。
【0004】
この発明は、従来技術における上述の課題を解決するためになされたものであり、特定の印刷ヘッドに適したドット記録方式を用いて印刷を行う技術を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明では、第1と第2のドット形成要素アレイが副走査方向に沿って並列に配列された印刷ヘッドを用いる。第1のドット形成要素アレイは、複数の有彩色ドット形成要素群が、副走査方向に沿って所定の順序で配列されたものである。第2のドット形成要素アレイは、ブラックドットを形成するためのブラックドット形成要素群が、第1のドット形成要素アレイと並列に形成されたものである。ブラックドット形成要素群は、各有彩色ドット形成要素群よりも多数のドット形成要素を含んでいる。モノクロ印刷の際には、第2のドット形成要素アレイのみを用いて、印刷媒体上の記録実行領域の中間部分において第1の記録方式に従ってドットの記録を実行するとともに、記録実行領域の後端近傍において第1の記録方式に比べて副走査送り量が小さい第2の記録方式に従ってドットの記録を実行する。一方、カラー印刷の際には、第1と第2のドット形成要素アレイを用いて、記録実行領域の中間部分および後端近傍の両方において共通する第3の記録方式に従ってドットの記録を実行する。また、第1のドット形成要素アレイはイエロードットを形成するためのイエロードット形成要素群を含んでおり、第1のドット形成要素アレイにおいては、印刷媒体上の任意の位置において、イエロードットが他の有彩色ドットよりも後に形成されるように複数の有彩色ドット形成要素群の配列順序が決定されている。また、複数の有彩色ドット形成要素群は互いに等しい数のドット形成要素をそれぞれ備えている。また、上記印刷装置は、比較的高い精度で副走査送りを行う第1の副走査駆動機構と、少なくとも前記第1の副走査駆動機構による副走査送りが終了した後に、比較的低い精度で副走査送りを行う第2の副走査駆動機構と、を備えていてもよい。この際、カラー印刷の際に、印刷媒体の後端近傍において第1の副走査駆動機構による副走査送りが実行されずに第2の副走査駆動機構によって副走査送りが実行されるときには、主走査時に形成されるドットの半数以上がイエロードットで占められるように各形成要素アレイの動作を制御する。
【0006】
モノクロ印刷時に、印刷媒体の後端近傍において印刷媒体の中間部分よりも副走査送り量が小さい記録方式が適用される理由は、次の通りである。一般に、印刷に実際に使用される1色当たりのノズル数(「使用ノズル数」と呼ぶ)が大きいと、印刷媒体の下端近傍において有効な記録を実行できない範囲(記録不可範囲)が大きくなり、有効な記録を実行できる範囲(有効記録範囲)が小さくなる傾向にある。ブラックドット形成要素群は、各有彩色ドット形成要素よりも多くのドット形成要素を含んでいるので、モノクロ印刷時には印刷媒体の下端近傍における記録不可範囲がカラー印刷時よりも大きい。そこで、モノクロ印刷時には印刷媒体の下端近傍において、中間部分よりも副走査送り量の小さな記録方式を適用することによって、有効記録範囲を拡張することができる。一方、カラー印刷時には、モノクロ印刷時よりも1色当たりの使用ノズル数が少ないので、中間部分と同じ記録方式を適用しても、有効記録範囲を十分確保することができるので、印刷媒体の中間部分および後端近傍の両方において、共通する記録方式を用いてドットの記録を実行する。このように、本発明では、特定の印刷ヘッドを用いて、カラー印刷とモノクロ印刷にそれぞれ適した印刷を実行することができる。さらに、印刷媒体の後端近傍においては、第1の副走査駆動機構による副走査送りが行われず、第2の副走査駆動機構によって副走査送りが行われるので、送り精度は比較的低くなる。しかし、イエロードットは比較的目立ち難いので、イエロードットが半数以上を占めるようにすることによって、副走査の送り精度が低いことによる画質の劣化を緩和できる。
【0007】
なお、カラー印刷の際に、印刷媒体の後端近傍において第1の副走査駆動機構による副走査送りが実行されずに第2の副走査駆動機構によって副走査送りが実行されるときには、主走査時にイエロードットのみが形成されるように各形成要素アレイの動作を制御するようにしてもよい。
【0008】
この構成によれば、送り精度が低い領域における画質の劣化をより緩和することができる。
【0009】
なお、カラー印刷の際に、ブラックドットに関しては、第1のドット形成要素アレイ内の複数の有彩色ドット形成要素群の中で最も早く印刷媒体上でのドット形成が実行可能となる特定の有彩色ドット形成要素群において使用されるドット形成要素と同じ副走査位置に存在するドット形成要素のみを用いてブラックドットを形成することが好ましい。
【0010】
こうすれば、印刷媒体上の各位置において、ブラックドットが他の色のドットよりも早い時期に形成されるので、ブラックドットの滲みを防止して、彩度の高いカラー画像を得ることができる。
【0011】
さらに、モノクロ印刷の際には、記録実行領域の先端近傍において、第1の記録方式に比べて副走査送り量が小さい第4の記録方式に従ってドットの記録を実行してもよい。また、カラー印刷の際には、記録実行領域の先端近傍において、記録実行領域の中間部分および後端近傍と共通する第3の記録方式に従ってドットの記録を実行するようにしてもよい。
【0012】
こうすれば、モノクロ印刷では記録実行領域の先端近傍において有効記録範囲を拡張することができる。一方、カラー印刷ではドットの記録を簡略化することが可能である。
【0013】
本発明の具体的な態様としては、印刷装置および印刷方法、これらの装置または方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号等の種々の態様を取りうる。
【0014】
【発明の実施の形態】
A.装置の全体構成:
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。図1は、本発明の一実施例としてのカラーインクジェットプリンタ20の主要な構成を示す概略斜視図である。このプリンタ20は、用紙スタッカ22と、図示しないステップモータで駆動される紙送りローラ24と、プラテン板26と、キャリッジ28と、ステップモータ30と、ステップモータ30によって駆動される牽引ベルト32と、キャリッジ28のためのガイドレール34とを備えている。キャリッジ28には、多数のノズルを備えた印刷ヘッド36が搭載されている。
【0015】
印刷用紙Pは、用紙スタッカ22から紙送りローラ24によって巻き取られて、プラテン板26の表面上を副走査方向へ送られる。キャリッジ28は、ステップモータ30により駆動される牽引ベルト32に牽引されて、ガイドレール34に沿って主走査方向に移動する。主走査方向は、副走査方向に垂直である。
【0016】
図2は、プリンタ20の電気的な構成を示すブロック図である。プリンタ20は、ホストコンピュータ100から供給された信号を受信する受信バッファメモリ50と、印刷データを格納するイメージバッファ52と、プリンタ20全体の動作を制御するシステムコントローラ54とを備えている。システムコントローラ54には、キャリッジモータ30を駆動する主走査駆動ドライバ61と、紙送りモータ31を駆動する副走査駆動ドライバ62と、印刷ヘッド36を駆動するヘッド駆動ドライバ63とが接続されている。
【0017】
ホストコンピュータ100のプリンタドライバ(図示せず)は、ユーザの指定した記録方式(後述する)に基づいて、印刷動作を規定する各種のパラメータ値を決定する。このプリンタドライバは、さらに、これらのパラメータ値に基づいて、その記録方式で印刷を行うための印刷データを生成して、プリンタ20に転送する。転送された印刷データは、一旦、受信バッファメモリ50に蓄えられる。プリンタ20内では、システムコントローラ54が、受信バッファメモリ50から印刷データの中から必要な情報を読取り、これに基づいて、各ドライバ61,62,63に対して制御信号を送る。
【0018】
イメージバッファ52には、受信バッファメモリ50で受信された印刷データを色成分毎に分解して得られた複数の色成分のイメージデータが格納される。ヘッド駆動ドライバ63は、システムコントローラ54からの制御信号に従って、イメージバッファ52から各色成分のイメージデータを読出し、これに応じて印刷ヘッド36に設けられた各色のノズルアレイを駆動する。
【0019】
B.印刷ヘッドの構成:
図3は、印刷ヘッド36の下部に設けられたアクチュエータ40の底面に形成されたノズルの配列を示す説明図である。アクチュエータ40の底面には、それぞれ副走査方向に沿った一直線上に配列されたカラーノズル列とブラックノズル列とが形成されている。なお、「アクチュエータ」とは、ノズルと、インク吐出のための駆動素子(例えばピエゾ素子やヒータ)とを含むインク吐出機構を意味する。通常、1つのアクチュエータのノズル部分は、セラミックス成形によって一体として形成される。1つのアクチュエータ内に2列のノズル列を形成するようにすれば、ノズル同士を精度良く配置することが可能なので、画質を向上させることができる。なお、本明細書においては、「ノズル列」を「ノズルアレイ」とも呼ぶ。
【0020】
ブラックノズル列は、48個のノズル#K1〜#K48を有している。これらのノズル#K1〜#K48は、副走査方向に沿って一定のノズルピッチkで配置されている。このノズルピッチkは、6ドットである。但し、ノズルピッチkは、印刷媒体P上のドットピッチに、2以上の任意の整数を乗じた値に設定することができる。なお、ノズルピッチkの単位である「ドット」は、印刷媒体上に形成されるドットの副走査方向に沿った最小ピッチを意味している。
【0021】
カラーノズル列は、イエロー用ノズル群40Yと、マゼンタ用ノズル群40Mと、シアン用ノズル群40Cとを含んでいる。なお、この明細書では、有彩色インク用のノズル群を「有彩色ノズル群」とも呼ぶ。イエロー用ノズル群40Yは、15個のノズル#Y1〜#Y15を有しており、これらの15個のノズルのピッチは、ブラックノズル列のノズルピッチkと同じである。これは、マゼンタ用ノズル群40Mやシアン用ノズル群40Cも同じである。なお、イエロー用ノズル群40Yの下端のノズル#Y15と、マゼンタ用ノズル群40Mの上端のノズル#M1との間の「×」マークは、その位置にノズルが形成されていないことを示してしている。従って、イエロー用ノズル群40Yの下端のノズル#Y15と、マゼンタ用ノズル群40Mの上端のノズル#M1との間隔は、ノズルピッチkの2倍である。これは、マゼンタ用ノズル群40Mの下端のノズル#M15と、シアン用ノズル群40Cの上端のノズル#C1との間隔についても同様である。換言すれば、イエロー用とマゼンタ用とシアン用の各ノズル群同士の間隔は、ノズルピッチkの2倍の値に設定されている。
【0022】
カラーノズル群40Y、40M、40Cのノズルは、ブラックノズル列40Kのノズルと同じ副走査位置に配置されている。但し、ブラックノズル列40Kの48個のノズル#K1〜#K48の中で、16番目と32番目と48番目のノズル#K16,#K32,#K48に対しては、対応する位置に有彩色インク用のノズルが設けられていない。
【0023】
印刷時には、キャリッジ28(図1)とともに印刷ヘッド36が主走査方向に移動している間に、各ノズルからインク滴が吐出される。但し、記録方式によっては、すべてのノズルが常に使用されるとは限らず、一部のノズルのみが使用される場合もある。
【0024】
C.副走査駆動機構の構成:
図4は、印刷用紙Pを搬送する副走査駆動部を示す概念図である。副走査駆動部は、給紙側に備えられた第1の副走査駆動機構25と、排紙側に備えられた第2の副走査駆動機構27とを有している。第1の副走査駆動機構25は、給紙ローラ25aと従動ローラ25bとで構成されている。第2の副走査駆動機構27は、排紙ローラ27aとギザローラ27bとで構成される。これらのローラ25a,25b,27a,27bは、紙送りモータ31(図2)の回転が、図示しないギヤトレインを介して伝達されることによって駆動される。印刷の開始時には、印刷用紙Pは給紙側(図4の右側)から第1の副走査駆動機構25のローラ25a,25bに挟持されて、両ローラの回転により搬送される。印刷用紙Pの先端が第2の副走査駆動機構27のローラ27a,27bに挟持されると、これらのローラによっても排紙側に送られるようになる。また、印刷用紙Pの後端が第1の副走査駆動機構25の挟持点(ローラ25a,25bによって挟持される点)を通過した後は、第2の副走査駆動機構27のみによって印刷用紙Pが搬送される。印刷用紙Pには、プラテン26上で印刷ヘッド36により画像が記録される。
【0025】
なお、このプリンタにおいては、紙送りの精度は、給紙側の第1の副走査駆動機構25の方が、排紙側の第2の副走査駆動機構27よりも高い。従って、印刷用紙Pの後端が第1の副走査駆動機構25の挟持点を通過した後に、第2の副走査駆動機構27のみによって紙送りが行われる場合には、送り量の精度が第1の副走査駆動機構25によって搬送される場合に比べて低くなる。
【0026】
図4において、符号「40W」は、副走査方向に沿ったノズル列の全幅を示しており、符号「WLP」は、イエロー用ノズル群40Yの幅を示している。なお、この幅WLPは、後述する低精度領域の幅に相当する。符号「WB」は、第1の副走査駆動機構25の挟持点から、ノズル列の後端までの距離を示している。なお、本明細書において、印刷用紙やノズル列の先端と後端は、紙送り方向(副走査方向)に従って定義されている。また、紙送り方向や副走査方向は、副走査時に、印刷用紙Pがプリンタ20に対して相対的に移動してゆく方向として定義されている。なお、「先端」を「上端」と呼び、また、「後端」を「下端」と呼ぶこともある。
【0027】
D.通常の記録方式の基本的条件:
本発明の実施例に用いられている記録方式を説明する前に、以下ではまず、通常の記録方式の基本的な条件について説明する。なお、本明細書においては、「記録方式」と「ドット記録方式」と「印刷方式」とは同義語である。
【0028】
図5は、通常のドット記録方式の基本的条件を示すための説明図である。図5(A)は、4個のノズルを用いた場合の副走査送りの一例を示しており、図5(B)はそのドット記録方式のパラメータを示している。図5(A)において、数字を含む実線の丸は、各パスにおける4個のノズルの副走査方向の位置を示している。ここで、「パス」とは1回分の主走査を意味している。丸の中の数字0〜3は、ノズル番号を意味している。4個のノズルの位置は、1回の主走査が終了する度に副走査方向に送られる。但し、実際には、副走査方向の送りは紙送りモータ31(図2)によって用紙を移動させることによって実現されている。
【0029】
図5(A)の左端に示すように、この例では副走査送り量Lは4ドットの一定値である。従って、副走査送りが行われる度に、4個のノズルの位置が4ドットずつ副走査方向にずれてゆく。各ノズルは、1回の主走査中にそれぞれのラスタ上のすべてのドット(「画素」とも呼ぶ)を記録対象としている。なお、本明細書では、1本のラスタ(「主走査ライン」とも呼ぶ)上の全ドットを記録対象とするために必要な主走査の回数を、「スキャン繰り返し数s」と呼ぶ。
【0030】
図5(A)の右端には、各ラスタ上のドットを記録するノズルの番号が示されている。なお、ノズルの副走査方向位置を示す丸印から右方向(主走査方向)に伸びる破線で描かれたラスタでは、その上下のラスタの少なくとも一方が記録できないので、実際にはドットの記録が禁止される。一方、主走査方向に伸びる実線で描かれたラスタは、その前後のラスタがともにドットで記録され得る範囲である。このように実際に記録を行える範囲を、以下では有効記録範囲(または「有効印刷範囲」、「印刷実行領域」、「記録実行領域」)と呼ぶ。
【0031】
図5(B)には、このドット記録方式に関する種々のパラメータが示されている。ドット記録方式のパラメータには、ノズルピッチk[ドット]と、使用ノズル個数N[個]と、スキャン繰り返し数sと、実効ノズル個数Neff[個]と、副走査送り量L[ドット]とが含まれている。
【0032】
図5の例では、ノズルピッチkは3ドットである。使用ノズル個数Nは4個である。なお、使用ノズル個数Nは、実装されている複数個のノズルの中で実際に使用されるノズルの個数である。スキャン繰り返し数sは、一回の主走査において(s−1)ドットおきに間欠的にドットを形成することを意味している。例えば、スキャン繰り返し数sが2のときには、一回の主走査において1ドットおきに間欠的にドットが形成される。スキャン繰り返し数sは、各ラスタ上のすべてのドットを記録するために使用されるノズルの数にも等しい。図5の場合には、スキャン繰り返し数sは1である。実効ノズル個数Neff は、使用ノズル個数Nをスキャン繰り返し数sで割った値である。この実効ノズル個数Neff は、一回の主走査で記録され得るラスタの正味の本数を示しているものと考えることができる。
【0033】
図5(B)の表には、各パスにおける副走査送り量Lと、その累計値ΣLと、ノズルのオフセットFとが示されている。ここで、オフセットFとは、最初のパス1におけるノズルの周期的な位置(図5では4ドットおきの位置)をオフセットが0である基準位置と仮定した時に、その後の各パスにおけるノズルの位置が基準位置から副走査方向に何ドット離れているかを示す値である。例えば、図5(A)に示すように、パス1の後には、ノズルの位置は副走査送り量L(4ドット)だけ副走査方向に移動する。一方、ノズルピッチkは3ドットである。従って、パス2におけるノズルのオフセットFは1である(図5(A)参照)。同様にして、パス3におけるノズルの位置は、初期位置からΣL=8ドット移動しており、そのオフセットFは2である。パス4におけるノズルの位置は、初期位置からΣL=12ドット移動しており、そのオフセットFは0である。3回の副走査送り後のパス4ではノズルのオフセットFは0に戻るので、3回の副走査を1サイクルとして、このサイクルを繰り返すことによって、有効記録範囲のラスタ上のすべてのドットを記録することができる。
【0034】
図5の例からも解るように、ノズルの位置が初期位置からノズルピッチkの整数倍だけ離れた位置にある時には、オフセットFはゼロである。また、オフセットFは、副走査送り量Lの累計値ΣLをノズルピッチkで割った余り(ΣL)%kで与えられる。ここで、「%」は、除算の余りをとることを示す演算子である。なお、ノズルの初期位置を周期的な位置と考えれば、オフセットFは、ノズルの初期位置からの位相のずれ量を示しているものと考えることもできる。
【0035】
スキャン繰り返し数sが1の場合には、有効記録範囲においてラスタの抜けや重複が無いようにするためには、以下のような条件を満たすことが必要である。
【0036】
条件c1:1サイクルの副走査送り回数は、ノズルピッチkに等しい。
【0037】
条件c2:1サイクル中の各回の副走査送り後のノズルのオフセットFは、0〜(k−1)の範囲のそれぞれ異なる値となる。
【0038】
条件c3:副走査の平均送り量(ΣL/k)は、使用ノズル数Nに等しい。換言すれば、1サイクル当たりの副走査送り量Lの累計値ΣLは、使用ノズル数Nとノズルピッチkとを乗算した値(N×k)に等しい。
【0039】
上記の各条件は、次のように考えることによって理解できる。隣接するノズルの間には(k−1)本のラスタが存在するので、1サイクルでこれら(k−1)本のラスタ上で記録を行ってノズルの基準位置(オフセットFがゼロの位置)に戻るためには、1サイクルの副走査送りの回数はk回となる。1サイクルの副走査送りがk回未満であれば、記録されるラスタに抜けが生じ、一方、1サイクルの副走査送りがk回より多ければ、記録されるラスタに重複が生じる。従って、上記の第1の条件c1が成立する。
【0040】
1サイクルの副走査送りがk回の時には、各回の副走査送りの後のオフセットFの値が0〜(k−1)の範囲の互いに異なる値の時にのみ、記録されるラスタに抜けや重複が無くなる。従って、上記の第2の条件c2が成立する。
【0041】
上記の第1と第2の条件を満足すれば、1サイクルの間に、N個の各ノズルがそれぞれk本のラスタの記録を行うことになる。従って、1サイクルではN×k本のラスタの記録が行われる。一方、上記の第3の条件c3を満足すれば、図5(A)に示すように、1サイクル後(k回の副走査送り後)のノズルの位置が、初期のノズル位置からN×kラスタ離れた位置に来る。従って、上記第1ないし第3の条件c1〜c3を満足することによって、これらのN×k本のラスタの範囲において、記録されるラスタに抜けや重複を無くすることができる。
【0042】
なお、スキャン繰り返し数sとしては、2以上の任意の整数値を使用することができる。例えば、スキャン繰り返し数sが2のときには、あるラスタ上の1回目の主走査では奇数番目のドット位置が記録対象となり、2回目の主走査では偶数番目のドット位置が記録対象となる。以下では、スキャン繰り返し数sが2以上のドット記録方式を「オーバーラップ方式」と呼ぶ。
【0043】
オーバーラップ方式では、上述した第1ないし第3の条件c1〜c3は、以下の条件c1’〜c3’のように書き換えられる。
【0044】
条件c1’:1サイクルの副走査送り回数は、ノズルピッチkとスキャン繰り返し数sとを乗じた値(k×s)に等しい。
【0045】
条件c2’:1サイクル中の各回の副走査送り後のノズルのオフセットFは、0〜(k−1)の範囲の値であって、それぞれの値がs回ずつ繰り返される。
【0046】
条件c3’:副走査の平均送り量{ΣL/(k×s)}は、実効ノズル数Neff (=N/s)に等しい。換言すれば、1サイクル当たりの副走査送り量Lの累計値ΣLは、実効ノズル数Neff と副走査送り回数(k×s)とを乗算した値{Neff ×(k×s)}に等しい。
【0047】
上記の条件c1’〜c3’は、スキャン繰り返し数sが1の場合にも成立する。従って、条件c1’〜c3’は、スキャン繰り返し数sの値に係わらず、ドット記録方式に関して一般的に成立する条件である。すなわち、上記の3つの条件c1’〜c3’を満足すれば、有効記録範囲において、記録されるドットに抜けや重複が無いようにすることができる。但し、オーバーラップ方式(スキャン繰り返し数sが2以上の場合)を採用する場合には、同じラスタを記録するノズルの記録位置を互いに主走査方向にずらすという条件も付加される。
【0048】
なお、記録方式によっては、部分的なオーバーラップが行われる場合もある。「部分的なオーバーラップ」とは、1つのノズルで記録されるラスタと、複数のノズルで記録されるラスタとが混在しているような記録方式のことを言う。このような部分的なオーバーラップを用いた記録方式においても、実効ノズル数Neff を定義することができる。例えば、4個のノズルのうちで、2個のノズルが協力して同一のラスタを記録し、残りの2個のノズルはそれぞれ1本のラスタを記録するような部分的なオーバーラップ方式では、実効ノズル数Neff は3個である。このような部分的なオーバーラップ方式の場合にも、上述した3つの条件c1’〜c3’が成立する。
【0049】
なお、実効ノズル数Neff は、一回の主走査で記録され得るラスタの正味の本数を示しているものと考えることもできる。例えば、スキャン繰り返し数sが2の場合には、2回の主走査で使用ノズル数Nと等しい本数のラスタを記録することができるので、一回の主走査で記録することができるラスタの正味の本数は、N/s(すなわちNeff )に等しい。
【0050】
図5の例では副走査送り量Lが4ドットの一定値に設定されていたが、この代わりに、複数の異なる送り量を組み合わせたものを使用することも可能である。この場合にも、上述した条件c1’〜c3’を満足するように走査パラメータを設定すれば、記録されるドットに抜けや重複が無いようようにすることができる。
【0051】
E.上端処理と下端処理における記録方式の考え方:
図6は、印刷用紙の上端近傍における記録方式の考え方を示す説明図である。なお、本明細書では、印刷用紙の上端近傍における特別な印刷処理を「上端処理」と呼び、また、印刷用紙の下端近傍における特別な印刷処理を「下端処理」と呼ぶ。
【0052】
前述した図5に示されているように、印刷用紙の上端近傍には、有効にドット記録を実行できない範囲(記録不可範囲)が存在する。そこで、上端処理では、副走査送り量をより小さな値に設定することによって、記録不可範囲を減少させ、有効記録範囲を増加させている。具体的には、図6(A)に示す上端処理では副走査送り量Lを2ドットに設定しており、この値は、図5に示した通常の記録方式における副走査送り量L(=4ドット)よりも小さい。この結果、有効記録範囲が図5(A)の場合に比べて4ラスタ分増加していることが解る。
【0053】
なお、図6(A)の4パス目では、0番ノズルと1番ノズルがドット記録を実行していない。この理由は、4パス目において0番ノズルと1番ノズルによる記録対象となるラスタが、既にパス1において2番ノズルと3番ノズルによる記録対象となっているからである。
【0054】
図6(B)には上端処理における走査パラメータが示されている。これらの走査パラメータは、上述した通常の記録方式における条件c1’〜c3’を満足していない。この理由は、図6(A)に示されているように、上端処理では、使用ノズルによる記録対象となるラスタが重複してしまうことが許容されているからである。
【0055】
一般には、上端処理で採用される記録方式では、印刷用紙の中間領域(上端近傍と下端近傍を除く領域)で採用される記録方式よりも副走査送り量が小さな値に設定されており、これによって有効記録範囲を拡張している。また、下端処理においても同様に、印刷用紙の中間領域で採用される記録方式よりも副走査送り量が小さな値を用いた記録方式が適用され、これによって、有効記録範囲を拡張している。なお、下端処理の考え方も上端処理とほぼ同様なので、ここではその詳細な説明は省略する。
【0056】
なお、中間領域において変則送り(複数の異なる送り量を使用する送り方)が採用される場合もある。また、上端処理や下端処理においても、変則送りを採用することが可能である。これらの場合には、上端処理における副走査送り量の平均値が、中間領域処理における副走査送り量の平均値よりも小さな値に設定される。下端処理についても同様である。「副走査送り量が小さい」という文言は、このような場合も含む広い意味を有している。
【0057】
F.実施例における記録方式の適用の考え方:
図7は、本実施例のカラー印刷時とモノクロ印刷時における記録方式の適用の考え方を示す説明図である。図7(A),(B)に示されているように、印刷用紙P上には印刷が実際に実行される印刷実行領域PAが設定される。但し、カラー印刷時の印刷実行領域と、モノクロ印刷時の印刷実行領域とは必ずしも同一ではない。
【0058】
モノクロ印刷時には、図7(A)に示すように、印刷実行領域PAの中間領域には中間領域処理用の記録方式が適用される。この中間領域処理用の記録方式は、上述した条件c1’〜c3’を満足するものであり、記録されるドットに抜けや重複が無いような記録方式である。印刷実行領域PAの上端近傍と下端近傍では、上端処理用および下端処理用の記録方式がそれぞれ適用される。一方、カラー印刷時には、図7(B)に示すように、印刷実行領域PAの全域にわたって同一の記録方式が適用される。この記録方式は、上述した条件c1’〜c3’を満足するものであり、記録されるドットに抜けや重複が無いような記録方式である。なお、図7(A),(B)に示した各記録方式の具体的な内容は後述する。
【0059】
本実施例において、モノクロ印刷時とカラー印刷時において記録方式の適用を変更した理由は以下の通りである。図3に示したように、本実施例の印刷ヘッドでは、ブラックノズルの個数(48個)は、各有彩色ノズルの個数(15個)の約3倍である。モノクロ印刷時には、48個のブラックノズルのほとんどすべてを使用して印刷が実行される。一方、カラー印刷時には、CMYKの各色に関して同数のノズルが使用される。従って、図5で説明した走査パラメータの中の使用ノズル数Nに関しては、モノクロ印刷時の使用ノズル個数は、カラー印刷時の使用ノズル数の約3倍になる。ところで、図5で説明した記録不可範囲は、使用ノズル数が多いほど大きくなる傾向にある。本実施例では、モノクロ印刷の方がカラー印刷よりも使用ノズル数Nが多いので、モノクロ印刷の方が記録不可範囲が大きくなる。そこで、モノクロ印刷においては、上端処理と下端処理を行って記録不可範囲を縮小し、有効記録範囲を拡張することが好ましい。一方、カラー印刷においては、記録不可範囲が比較的小さいので、上端処理や下端処理を行う必要性が小さい。上端処理や下端処理を行わなければ、そのための特別な印刷処理が不要なので、全体の印刷処理が簡単になるという利点がある。
【0060】
このように、本実施例では、モノクロ印刷とカラー印刷のいずれかの印刷モードが選択されると、その印刷モードにそれぞれ適した記録方式に従って印刷が実行される。
【0061】
G.カラー印刷の記録方式の具体例:
図8は、実施例においてカラー印刷に適用される記録方式の走査パラメータを示す説明図である。この記録方式では、ノズルピッチkが6ドット、スキャン繰り返し数sが1、使用ノズル個数Nが13個である。図8の下部の表には、1回目から7回目までの各パスに関するパラメータが示されている。この表では、各パスに関して、そのパスの直前に実行される副走査の送り量Lと、その累積値ΣLと、オフセットFと、が示されている。副走査送り量Lは13ドットの一定値である。このように、副走査送り量Lが一定値である記録方式(走査方式)を「定則送り」と呼ぶ。なお、副走査送り量Lとして異なる複数の値の配列を用いる変則送りの記録方式を採用することも可能である。図8の走査パラメータは、上述した条件c1’〜c3’を満足している。
【0062】
図9は、本実施例のカラー印刷において使用されるノズルを示す説明図である。図9のアクチュエータ40は図3に示すものと同じであるが、カラー印刷時には、48個のブラックノズルのうちの約1/3のノズルのみが使用される。図9において、本実施例のカラー印刷時に使用されるノズルは白丸で示されており、一方、使用されないノズルは黒丸で示されている。すなわち、有彩色インクについては、各色の15個のノズルのうちの最初の13個のノズルがそれぞれ使用される。また、ブラックインクについては、シアン用の使用ノズル#C1〜#C13と同じ副走査位置にある13個のノズルのみが使用される。このように、4つのインクについて、それぞれ同じ数のノズルを使用すれば、各インクに共通する走査パラメータに従って走査を実行することによって、各インクのドットを抜けや重複無く形成することができる。
【0063】
なお、本明細書では、使用されるノズルで構成される各インク用のノズル群を「使用ノズル群」とも呼ぶ。また、アクチュエータ40に設けられている各インク用のノズル群を「実装ノズル群」とも呼ぶ。
【0064】
各インクの使用ノズルとしては、ノズルピッチkで連続して並んでいるものが選択される。また、イエロー用の使用ノズル群の下端のノズル#Y13と、マゼンタ用の使用ノズル群の上端のノズル#M1との間隔は、4k(すなわち24ドット)である。同様に、マゼンタ用の使用ノズル群の下端のノズル#M13と、シアン用の使用ノズル群の上端のノズル#C1との間隔も、4kである。
【0065】
図10は、本実施例のカラー印刷時の各パスにおいて有効記録範囲内の各ラスタラインを記録するノズルを示す説明図である。パス1では、シアン用の3つのノズル#C11〜#C13が、1番目と7番目と13番目の有効ラスタライン上のドット記録をそれぞれ実行する。なお、「有効ラスタライン」とは、有効記録範囲内のラスタラインのことを意味する。なお、図10では、ノズル番号の先頭の符号「#」が省略されている。また、斜線が付されているノズルは不使用ノズルを示している。符号「×」は、隣接する実装ノズル群の中間のノズルの存在しない位置を示している。
【0066】
パス2では、印刷用紙上におけるアクチュエータ40の記録対象位置が、パス1から副走査方向に13ドット分移動する。本実施例ではノズルピッチkは6なので、この副走査送り後のノズル位置のオフセットF(送り量Lの累積値ΣLをkで除した余り)は1ドットである。従って、パス2においては、見かけ上、パス1で記録対象となったラスタラインよりも1本下のラスタラインが記録対象となるように見える。もちろん、実際には、13本下のラスタラインが記録対象となっている。なお、本実施例のカラー印刷では、副走査送り量Lが13ドットの一定値なので、副走査送りが1回行われる毎に、記録対象となるラスタラインの位置が1本ずつ下に移動するように見える。
【0067】
シアンインクに関しては、以下に説明するように、6番目と7番目のラスタラインの間の位置Cmis において副走査送り誤差の累積値が最も大きくなる。6番目のラスタラインはパス6において記録され、一方、7番目のラスタラインはパス1において記録される。従って、7番目のラスタラインを記録するパス1と、6番目のラスタラインを記録するパス6との間には、副走査送りが5回行われる。従って、6番目と7番目のラスタラインの間には、5回分の副走査送り誤差が累積される。同様に、12番目と13番目のラスタラインの間にも、シアンインクに関して5回分の副走査送り誤差が累積される。
【0068】
上述と同様な考察により、マゼンタインクに関しては、7番目と8番目のラスタラインの間の位置Mmis において、副走査送り誤差の累積値が比較的大きくなることが解る。また、イエローインクに関しては、9番目と10番目のラスタラインの間の位置Ymis において、副走査送り誤差の累積値が比較的大きくなる。なお、以下では、副走査送り誤差の累積値が比較的大きな位置を、「誤差累積位置」と呼ぶ。
【0069】
以上の説明から理解できるように、本実施例のカラー印刷では、誤差累積位置が各有彩色インク毎に異なり、一致することが無い。誤差累積位置では、バンディング(主走査方向に伸びる筋状の画質劣化部分)が発生しやすい傾向にある。しかし、本実施例によれば、誤差累積位置が各有彩色インク毎に異なっているので、これらの位置におけるバンディングを目立たなくすることができる。
【0070】
なお、副走査方向に沿って隣接するノズル群に関して誤差累積位置がなるべく一致しないようにするためには、一般に、隣接する使用ノズル群の間の間隔が、ノズルピッチkのM倍(Mは2以上の整数)となるように、使用ノズルを選択することが好ましい。
【0071】
但し、副走査方向に沿って隣接する使用ノズル群の間の間隔は、更に以下のように設定することが好ましい。図11は、図5に示した通常の記録方式における等価的なノズル位置を示す説明図である。図5でも説明したように、スキャン繰り返し数sが1の時には、1サイクルの走査はk回の副走査送りを含む。従って、1サイクル分の副走査送りにおけるノズル群の移動量はN×kラスタである。図11には、1サイクル目から3サイクル目までの各サイクルにおけるノズル群の初期位置が示されている。これらの3つのノズル群位置からは、同じ記録動作が実行されるので、これらの位置は互いに等価である。1サイクル目の初期位置における下端のノズルと、2サイクル目の初期位置における上端のノズルとの間隔は、kドットである。また、1サイクル目の初期位置における下端のノズルと、3サイクル目の初期位置における上端のノズルとの間隔は、(N×k+k)ドットである。図示は省略されているが、1サイクル目の初期位置における下端のノズルと、4サイクル目の初期位置における上端のノズルとの間隔は、(2×N×k+k)ドットであることが解る。一般には、1サイクル目の初期位置のノズル群の下端のノズルと、他の等価なノズル群の上端のノズルとの間の間隔は、(N×n+1)kドットと書き表せる。ここで、nは0以上の任意の整数である。
【0072】
図11に示すような等価的なノズル群位置に、異なるインクの使用ノズル群を配置してしまうと、それらのインクに関する誤差累積位置は互いに一致する。このような場合を避けるために、隣接する使用ノズル群の間の間隔は、(N×n+1)kドット以外の値(Nは使用ノズル数、nは1以上の任意の整数)に設定することが好ましい。ここで、nを0以上ではなく1以上としたのは、上述したように隣接する使用ノズル群の間の間隔をノズルピッチkのM倍(Mは2以上の整数)に設定すると、n=0の場合が除外されるからである。
【0073】
上述したカラー印刷用の記録方式は、さらに以下のような特徴も有している。前述した図9から解るように、ブラックノズル列40Kは、主走査時にカラーノズル列に先行するので、カラー印刷の際には、ブラックドットが他のインクのドットよりも先に印刷用紙上に形成される。また、カラーノズル列に関しては、副走査方向に沿って、シアン用ノズル群40C,マゼンタ用ノズル群40M,イエロー用ノズル群40Yの順に配列されており、有彩色のドットはこの順序で形成される。さらに、ブラック用の使用ノズル群としては、副走査方向の後端に存在するシアン用の使用ノズル群と同じ副走査位置に存在するノズルのみが使用される。
【0074】
以上のようなアクチュエータ40の特徴から、本実施例のカラー印刷においては、次のような種々の利点が生じる。第1の利点は、ブラックドットが、他のインクのドットよりも先に形成される点である。仮に他のインクのドットの後にブラックドットを形成すると、ブラックインクが滲んでしまい、カラー画像の彩度が低下してしまう傾向にある。特に、ブラックインクとイエローインクとが互いに滲むと、彩度が顕著に低下する傾向にある。そこで、図9のように使用ノズル群を選択することによって、印刷実行領域内の任意の位置においてブラックドットを他のインクのドットよりも先に形成するようにすれば、カラー画像の彩度を向上させることができる。
【0075】
第2の利点は、印刷実行領域内の任意の位置において、イエロードットが他のインクのドットの後に形成される点である。図9から理解できるように、印刷用紙Pが副走査方向に搬送されると、印刷実行領域PA内の任意の位置においては、まず、ブラックドットとシアンドットがこの順に形成され、次にマゼンタドットが形成され、最後にイエロードットが形成される。ところで、図4に示したように、印刷用紙Pの後端が第1の副走査駆動機構25の挟持点(ローラ25a,25bの接点)を通過した後では、副走査送りは比較的低精度の第2の副走査駆動機構27のみで行われる。この結果、以下に説明するように、イエロー用ノズル群40Yの幅WLPと同じ幅を有する低精度領域においてイエロードットを形成する際には、副走査送りが比較的低精度で行われることにある。
【0076】
図12は、印刷用紙Pの後端に存在する低精度領域LPAとアクチュエータ40との関係を示す説明図である。印刷実行領域PAの後端に存在する低精度領域LPAにおいてイエロードットが形成されるときには、第2の副走査駆動機構27によって比較的低い精度で副走査送りが行われる。ここで、「低精度領域LPA」とは、副走査送り精度が低い領域、という意味である。なお、低精度領域LPAの幅は、副走査方向に沿って測ったイエロー用ノズル群40Yの幅に等しい。
【0077】
図12の時点では、低精度領域LPA内におけるブラックドットとマゼンタドットとシアンドットの形成は終了している。従って、図12の時点以降では、低精度領域LPAにおいてイエロードットのみが形成される。しかし、一般に、イエロードットは、他の3色のドットよりも目立たないという性質がある。このため、副走査送り精度が低く、イエロードットの位置が多少ずれても、画質をあまり劣化させることはない。すなわち、本実施例のカラー印刷では、第2の副走査駆動機構27のみによって副走査送りが行われるときに、低精度領域LPAにおいてイエロードットのみを形成するので、低精度領域LPAにおいても画質があまり劣化しないという利点がある。
【0078】
但し、低精度な副走査送りによる画質の劣化を抑制するという意味からは、低精度領域LPAにおいてイエロードットのみが形成されるように限定する必要はなく、なるべく他の色のドットが形成されないようにすればよい。例えば、低精度な副走査送りが行われるときには、形成されるドットの半数以上がイエロードットで占められるように、各ノズルの動作を制御することが好ましい。
【0079】
なお、図5(B)では、カラー印刷時には上端処理を行わないこととしていたが、上端処理は実行するようにしてもよい。換言すれば、カラー印刷時においては、少なくとも印刷実行領域の中間領域と後端近傍とにわたって、共通する同一の記録方式を適用すればよい。この理由は、印刷用紙の上端近傍においては、上述したような低精度領域LPAにおいてイエロードットを形成することの利点が存在しないからである。
【0080】
H.モノクロ印刷の記録方式の具体例:
図13は、本実施例のモノクロ印刷時の中間領域処理における走査パラメータを示す説明図である。この記録方式では、ノズルピッチkが6ドット、スキャン繰り返し数sが1、使用ノズル個数Nが47である。
【0081】
図13の下部の表には、1回目から7回目までの各パスに関するパラメータが示されている。副走査送り量Lとしては、47ドットの一定値が使用されている。なお、副走査送りとしては変則送りを採用することも可能である。図13の走査パラメータも、上述した条件c1’〜c3’を満足している。図14は、モノクロ印刷時の中間領域処理の各パスにおいて有効記録範囲内の各ラスタラインを記録するノズルを示している。
【0082】
図15は、本実施例のモノクロ印刷時の上端処理における走査パラメータを示す説明図である。図15の下部の表に示されているように、パス1からパス6までが上端処理に相当する。上端処理では副走査送り量Lとして5ドットの一定値が使用されている。
【0083】
図16および図17は、モノクロ印刷時の上端処理の各パスにおいて有効記録範囲内の各ラスタラインを記録するノズルを示している。図16には有効記録範囲の1番目から55番目までのラスタにが示されており、図17には有効記録範囲の256番目から306番目までのラスタが示されている。なお、図16と図17において、ノズル番号が記載された矩形に「×」印が付されているものは、そのノズルを使用しないことを意味している。上端処理の主走査であるパス1からパス5までは、中間領域処理で使用される47個の使用ノズルのうちの一部は使用されていないことが解る。
【0084】
図18は、モノクロ印刷時の上端処理の各パスにおいて各ノズルが記録を担当するラスタ番号を示す説明図である。この図において「n/a」と記載されているのは、そのパスではそのノズルが使用されないことを意味している。例えば、パス1では、#1〜#4のノズルと#13〜#47のノズルが使用されていない。また、上端処理においては、実際に使用されるノズルの数は、パス毎に調整されている。一方、パス7以降の中間領域処理では、常に47個のノズルが使用されている。このような上端処理を行うことによって、図6で説明したように、有効記録範囲を拡張することが可能である。
【0085】
図19は、本実施例のモノクロ印刷時の下端処理における走査パラメータを示す説明図である。図19の下部の表において、パス0は最後の主走査を意味している。また、例えばパス−11は最後のパス0の11回前のパスであることを意味している。パス−5からパス0までの6回のパスが下端処理に相当する。下端処理の最初のパス−5では副走査送り量Lが15ドットに設定されているが、パス−4からパス0までは副走査送り量Lが5ドットの一定値に設定されている。
【0086】
図20および図21は、モノクロ印刷時の上端処理の各パスにおいて有効記録範囲内の各ラスタラインを記録するノズルを示している。図21において、ラスタ番号が0であるラスタは、印刷実行領域の下端のラスタである。他のラスタに付されているマイナスのラスタ番号は、下端のラスタから数えて何番目であるかを示している。
【0087】
図22は、モノクロ印刷時の下端処理の各パスにおいて各ノズルが記録を担当するラスタ番号を示す説明図である。下端処理においても、実際に使用されるノズルの数と位置は、パス毎に調整されている。このような下端処理を行うことによって、有効記録範囲を拡張することが可能である。
【0088】
以上のように、モノクロ印刷時には使用ノズル個数Nが比較的多いので上端処理と下端処理を行い、一方、使用カラー印刷時には使用ノズル個数Nが比較的少ないので上端処理と下端処理を省略している。こうすることによって、カラー印刷時において処理を簡略化しつつ、十分な有効記録範囲(印刷実行領域)を確保することが可能である。特に、本実施例では、複数種類の有彩色のドットのなかで、イエロードットを最後に形成するようにしたので、印刷用紙の下端近傍において下端処理を行わないことに起因する画質の劣化を緩和することが可能である。
【0089】
I.アクチュエータの変形例:
図23は、アクチュエータの第1の変形例を示す説明図である。このアクチュエータ41は、図3に示したアクチュエータ40のカラーノズル列の上方に淡マゼンタノズル群40LMが追加し、また、ブラックノズル列40Kの上方に淡シアンノズル群40LCを追加したものである。従って、左側の第1のノズル列には、それぞれ15個のノズルで構成された4つの有彩色ノズル列40C,40M,40Y,40LMが、副走査方向に沿って、ノズルピッチkの2倍の間隔2kで配列されている。また、右側の第2のノズル列には、48個のノズルで構成されたブラックノズル列40Kと、15個のノズルで構成された淡シアンノズル列とが、副走査方向に沿って、ノズルピッチkの2倍の間隔2kで配列されている。
【0090】
なお、淡マゼンタインクは、通常のマゼンタインクとほぼ同じ色相を有し、通常のマゼンタインクよりも濃度が低いインクである。淡シアンインクも同様である。なお、通常のマゼンタインクおよび通常のシアンインクを、「濃マゼンタインク」および「濃シアンインク」と呼ぶこともある。
【0091】
図23に示すアクチュエータ41を用いた場合にも、図3に示すアクチュエータ40を用いた場合と同じ記録方式に従ってカラー印刷やモノクロ印刷を実行することができる。このアクチュエータ41を使用すれば、図3のアクチュエータ40を使用したときの上述の利点や効果に加えて、カラー印刷物の画質をより高めることが可能であるという利点がある。
【0092】
なお、図3と図23の例から解るように、本発明においては、印刷ヘッドとして、それぞれ異なる色のドットを形成するための複数の有彩色ノズル群が副走査方向に配列された第1のノズル列と、ブラックノズル群を含み第1のノズル列に並列に配列された第2のノズル列と、を有するものを使用することが可能である。また、ブラックノズル群のノズルの個数は、1色分の有彩色ノズル群のノズル個数よりも多ければよい。この理由は、モノクロ印刷時の印刷速度を向上させることができるからである。なお、この意味からは、ブラックノズル群のノズルの個数を、1色分の有彩色ノズル群のノズル個数の2倍以上に設定することが好ましい。
【0093】
図24は、アクチュエータの第2の変形例を示す説明図である。このアクチュエータ42は、図23に示したアクチュエータ41における淡シアンノズル群40LCと、イエローノズル群40Yの位置を交換したものである。このアクチュエータ42を用いた場合にも、図3や図23に示すアクチュエータ40,41を用いた場合と同じ記録方式に従ってカラー印刷やモノクロ印刷を実行することができる。なお、この第2変形例から理解できるように、有彩色ノズル列の副走査方向の後端部には、イエローノズル群が配置されている必要は無く、他のノズル群が配置されていてもよい。但し、いずれの場合にも、比較的インク濃度の低いノズル群(イエロー,淡シアン,淡マゼンタ等)のいずれかが、有彩色ノズル列の副走査方向の後端部に配置されていることが好ましい。
【0094】
図25は、アクチュエータの第3の変形例を示す説明図である。このアクチュエータ43は、図3に示したアクチュエータ40のカラーノズル列とブラックノズル列40Kとを、それぞれ千鳥状に2列に配列したものである。例えば、ブラックノズル列40Kでは、奇数番目のノズル#K1,#K3…#K47が左側の列に配置され、偶数番目のノズル#K2,#K4…#K48は右側の列に配置されている。3つの有彩色ノズル群40Y,40M,40Cにおいても同様に、それぞれ千鳥状にノズルが配列されている。このように、千鳥状にノズルが配列されている場合にも、3つの有彩色ノズル群40Y,40M,40Cが、副走査方向に沿って一直線上に配列されていることには変わりはない。すなわち、この明細書では、「複数のノズル群が副走査方向に沿って一直線上に配列されている」という文言は、ノズル群同士が全体として一直線上に沿って配列されていればよく、各ノズル群を構成する複数のノズルは必ずしも一直線上に配列されている必要は無い。
【0095】
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0096】
(1)印刷装置によっては、主走査方向のドットピッチ(記録解像度)と、副走査方向のドットピッチとを異なる値に設定できるものがある。この場合には、主走査方向に関係するパラメータ(例えばラスタライン上の画素ピッチ)は、主走査方向のドットピッチによって定義され、一方、副走査方向に関係するパラメータ(例えばノズルピッチkや副走査送り量L)は、副走査方向のドットピッチによって定義される。
【0097】
(2)この発明はドラムスキャンプリンタにも適用可能である。尚、ドラムスキャンプリンタでは、ドラム回転方向が主走査方向、キャリッジ走行方向が副走査方向となる。また、この発明は、インクジェットプリンタのみでなく、一般に、複数のドット形成要素アレイを有する印刷ヘッドを用いて印刷媒体の表面に記録を行う印刷装置に適用することができる。ここで、「ドット形成要素」とは、インクジェットプリンタにおけるインクノズルのように、ドットを形成するための構成要素を意味する。このような印刷装置としては、例えばファクシミリ装置や、コピー装置などがある。
【0098】
(3)上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、システムコントローラ54(図2)の機能の一部をホストコンピュータ100が実行するようにすることもできる。
【0099】
このような機能を実現するコンピュータプログラムは、フロッピディスクやCD−ROM等の、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された形態で提供される。ホストコンピュータ100は、その記録媒体からコンピュータプログラムを読み取って内部記憶装置または外部記憶装置に転送する。あるいは、通信経路を介してプログラム供給装置からホストコンピュータ100にコンピュータプログラムを供給するようにしてもよい。コンピュータプログラムの機能を実現する時には、内部記憶装置に格納されたコンピュータプログラムがホストコンピュータ100のマイクロプロセッサによって実行される。また、記録媒体に記録されたコンピュータプログラムをホストコンピュータ100が直接実行するようにしてもよい。
【0100】
この明細書において、ホストコンピュータ100とは、ハードウェア装置とオペレーションシステムとを含む概念であり、オペレーションシステムの制御の下で動作するハードウェア装置を意味している。コンピュータプログラムは、このようなホストコンピュータ100に、上述の各部の機能を実現させる。なお、上述の機能の一部は、アプリケーションプログラムでなく、オペレーションシステムによって実現されていても良い。
【0101】
なお、この発明において、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例としてのカラーインクジェットプリンタ20の主要な構成を示す概略斜視図。
【図2】プリンタ20の電気的な構成を示すブロック図。
【図3】アクチュエータ40の底面に形成されたノズルの配列を示す説明図。
【図4】印刷用紙Pを搬送する副走査駆動機構を示す側断面図。
【図5】中間領域処理に適したドット記録方式の基本的条件を示すための説明図。
【図6】印刷用紙の上端近傍における記録方式の考え方を示す説明図。
【図7】カラー印刷時とモノクロ印刷時における記録方式の適用の考え方を示す説明図。
【図8】実施例のカラー印刷における走査パラメータを示す説明図。
【図9】実施例のカラー印刷に使用されるノズルを示す説明図。
【図10】実施例のカラー印刷の各パスにおいて有効記録範囲内の各ラスタラインを記録するノズルを示す説明図。
【図11】等価的なノズル位置を示す説明図。
【図12】印刷用紙Pの後端に存在する低精度領域LPAとアクチュエータ40との関係を示す説明図。
【図13】本実施例のモノクロ印刷の中間領域処理における走査パラメータを示す説明図。
【図14】モノクロ印刷時の中間領域処理の各パスにおいて有効記録範囲内の各ラスタラインを記録するノズルを示す説明図。
【図15】本実施例のモノクロ印刷時の上端処理における走査パラメータを示す説明図。
【図16】モノクロ印刷時の上端処理の各パスにおいて有効記録範囲内の各ラスタラインを記録するノズルを示す説明図。
【図17】モノクロ印刷時の上端処理の各パスにおいて有効記録範囲内の各ラスタラインを記録するノズルを示す説明図。
【図18】モノクロ印刷時の上端処理の各パスにおいて各ノズルが記録を担当するラスタ番号を示す説明図。
【図19】本実施例のモノクロ印刷時の下端処理における走査パラメータを示す説明図。
【図20】モノクロ印刷時の下端処理の各パスにおいて有効記録範囲内の各ラスタラインを記録するノズルを示す説明図。
【図21】モノクロ印刷時の下端処理の各パスにおいて有効記録範囲内の各ラスタラインを記録するノズルを示す説明図。
【図22】モノクロ印刷時の下端処理の各パスにおいて各ノズルが記録を担当するラスタ番号を示す説明図。
【図23】アクチュエータの第1変形例を示す説明図。
【図24】アクチュエータの第2変形例を示す説明図。
【図25】アクチュエータの第3変形例を示す説明図。
【符号の説明】
20…カラーインクジェットプリンタ
22…用紙スタッカ
24…紙送りローラ
25…第1の副走査駆動機構
25a…給紙ローラ
25b…従動ローラ
26…プラテン板
27…第1の副走査駆動機構
27a…排紙ローラ
27b…ギザローラ
28…キャリッジ
30…キャリッジモータ
31…紙送りモータ
32…牽引ベルト
34…ガイドレール
36…印刷ヘッド
40…アクチュエータ
50…受信バッファメモリ
52…イメージバッファ
54…システムコントローラ
61…主走査駆動ドライバ
62…副走査駆動ドライバ
63…ヘッド駆動ドライバ
100…ホストコンピュータ
Claims (9)
- 印刷媒体の表面にドットを記録することによって印刷を行う印刷装置であって、
前記印刷媒体上にドットを形成するための複数のドット形成要素を含む印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドと前記印刷媒体の少なくとも一方を駆動して主走査を行う主走査駆動部と、
前記主走査の最中に前記印刷ヘッドに含まれる複数のドット形成要素のうちの少なくとも一部を駆動してドットの形成を行わせるヘッド駆動部と、
前記印刷ヘッドと前記印刷媒体の少なくとも一方を駆動して副走査を行う副走査駆動部と、
印刷動作の制御を行う制御部と、を備え、
前記印刷ヘッドは、
イエロードットを形成するためのイエロードット形成要素群を含む複数の有彩色ドット形成要素群が、副走査方向に沿って所定の順序で配列された第1のドット形成要素アレイと、
ブラックドットを形成するためのブラックドット形成要素群が、前記第1のドット形成要素アレイと並列に配列されている第2のドット形成要素アレイと、を備えており、
前記ブラックドット形成要素群は、各有彩色ドット形成要素群よりも多数のドット形成要素を含んでおり、
前記第1のドット形成要素アレイに関しては、前記印刷媒体上の任意の位置において、イエロードットが他の有彩色ドットよりも後に形成されるように前記複数の有彩色ドット形成要素群の配列順序が決定されているとともに、前記複数の有彩色ドット形成要素群は互いに等しい数のドット形成要素をそれぞれ備えており、
前記副走査駆動部は、
比較的高い精度で副走査送りを行う第1の副走査駆動機構と、
少なくとも前記第1の副走査駆動機構による副走査送りが終了した後に、比較的低い精度で副走査送りを行う第2の副走査駆動機構と、
を備えており、
前記制御部は、
モノクロ印刷の際には、前記第2のドット形成要素アレイのみを用いて、前記印刷媒体上の記録実行領域の中間部分において第1の記録方式に従ってドットの記録を実行するとともに、前記記録実行領域の後端近傍において前記第1の記録方式に比べて副走査送り量が小さい第2の記録方式に従ってドットの記録を実行し、
カラー印刷の際には、前記第1と第2のドット形成要素アレイを用いて、前記記録実行領域の前記中間部分および前記後端近傍の両方において共通する第3の記録方式に従ってドットの記録を実行するとともに、前記印刷媒体の後端近傍において前記第1の副走査駆動機構による副走査送りが実行されずに前記第2の副走査駆動機構によって副走査送りが実行されるときには、主走査時に形成されるドットの半数以上がイエロードットで占められるように各ドット形成要素アレイの動作を制御することを特徴とする印刷装置。 - 請求項1記載の印刷装置であって、
前記制御部は、
前記カラー印刷の際に、前記印刷媒体の後端近傍において前記第1の副走査駆動機構による副走査送りが実行されずに前記第2の副走査駆動機構によって副走査送りが実行されるときには、主走査時にイエロードットのみを形成するように各ドット形成要素アレイの動作を制御する、印刷装置。 - 請求項1または2記載の印刷装置であって、
前記制御部は、
前記カラー印刷の際に、ブラックドットに関しては、前記第1のドット形成要素アレイ内の前記複数の有彩色ドット形成要素群の中で最も早く前記印刷媒体上でのドット形成が実行可能となる特定の有彩色ドット形成要素群において使用されるドット形成要素と同じ副走査位置に存在するドット形成要素のみを用いてブラックドットを形成する、印刷装置。 - 請求項1ないし3のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記制御部は、
前記モノクロ印刷の際には、前記記録実行領域の先端近傍において、前記第1の記録方式に比べて副走査送り量が小さい第4の記録方式に従ってドットの記録を実行し、
前記カラー印刷の際には、前記記録実行領域の先端近傍において、前記記録実行領域の前記中間部分および前記後端近傍と共通する前記第3の記録方式に従ってドットの記録を実行する、印刷装置。 - 印刷ヘッドを有する印刷装置を用いて印刷媒体の表面にドットを記録することによって印刷を実行する印刷方法であって、
(a)カラー印刷を行うか、モノクロ印刷を行うか、を選択する工程と、
(b)前記工程(a)における選択に従って印刷を実行する工程と、を備え、
前記印刷ヘッドは、
イエロードットを形成するためのイエロードット形成要素群を含む複数の有彩色ドット形成要素群が、副走査方向に沿って所定の順序で配列された第1のドット形成要素アレイと、
ブラックドットを形成するためのブラックドット形成要素群が、前記第1のドット形成要素アレイと並列に配列されている第2のドット形成要素アレイと、を備えており、
前記ブラックドット形成要素群は、各有彩色ドット形成要素群よりも多数のドット形成要素を含んでおり、
前記第1のドット形成要素アレイに関しては、前記印刷媒体上の任意の位置において、イエロードットが他の有彩色ドットよりも後に形成されるように前記複数の有彩色ドット形成要素群の配列順序が決定されているとともに、前記複数の有彩色ドット形成要素群は互いに等しい数のドット形成要素をそれぞれ備えており、
前記印刷装置は、
比較的高い精度で副走査送りを行う第1の副走査駆動機構と、
少なくとも前記第1の副走査駆動機構による副走査送りが終了した後に、比較的低い精度で副走査送りを行う第2の副走査駆動機構と、
を備えており、
前記工程(b)は、
(i)前記モノクロ印刷の際に、前記第2のドット形成要素アレイのみを用いて、前記印刷媒体上の記録実行領域の中間部分において第1の記録方式に従ってドットの記録を実行するとともに、前記記録実行領域の後端近傍において前記第1の記録方式に比べて副走査送り量が小さい第2の記録方式に従ってドットの記録を実行する工程と、
(ii)前記カラー印刷の際に、前記第1と第2のドット形成要素アレイを用いて、前記記録実行領域の前記中間部分および前記後端近傍の両方において共通する第3の記録方式に従ってドットの記録を実行するとともに、前記印刷媒体の後端近傍において前記第1の副走査駆動機構による副走査送りが実行されずに前記第2の副走査駆動機構によって副走査送りが実行されるときには、主走査時に形成されるドットの半数以上がイエロードットで占められるように各ドット形成要素アレイの動作を制御する工程と、
を備える印刷方法。 - 請求項5記載の印刷方法であって、
前記工程(ii)において、前記カラー印刷の際に、前記印刷媒体の後端近傍において前記第1の副走査駆動機構による副走査送りが実行されずに前記第2の副走査駆動機構によって副走査送りが実行されるときには、主走査時にイエロードットのみを形成するように各ドット形成要素アレイの動作を制御する、印刷方法。 - 請求項5または6記載の印刷方法であって、
前記工程(ii)は、
前記カラー印刷の際に、ブラックドットに関しては、前記第1のドット形成要素アレイ内の前記複数の有彩色ドット形成要素群の中で最も早く前記印刷媒体上でのドット形成が実行可能となる特定の有彩色ドット形成要素群において使用されるドット形成要素と同じ副走査位置に存在するドット形成要素のみを用いてブラックドットを形成する工程を含む、印刷方法。 - 請求項5ないし7のいずれかに記載の印刷方法であって、
前記工程(ii)は、前記モノクロ印刷の際には、前記記録実行領域の先端近傍において、前記第1の記録方式に比べて副走査送り量が小さい第4の記録方式に従ってドットの記録を実行する工程を含み、
前記工程(iii)は、前記カラー印刷の際には、前記記録実行領域の先端近傍において、前記記録実行領域の前記中間部分および前記後端近傍と共通する前記第3の記録方式に従ってドットの記録を実行する工程を含む、印刷方法。 - 印刷ヘッドを有する印刷装置を備えたコンピュータに印刷を実行させるためのコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記印刷ヘッドは、
イエロードットを形成するためのイエロードット形成要素群を含む複数の有彩色ドット形成要素群が、副走査方向に沿って所定の順序で配列された第1のドット形成要素アレイと、
ブラックドットを形成するためのブラックドット形成要素群が、前記第1のドット形成要素アレイと並列に形成されている第2のドット形成要素アレイと、を備えており、
前記ブラックドット形成要素群は、各有彩色ドット形成要素群よりも多数のドット形成要素を含んでおり、
前記第1のドット形成要素アレイに関しては、前記印刷媒体上の任意の位置において、イエロードットが他の有彩色ドットよりも後に形成されるように前記複数の有彩色ドット形成要素群の配列順序が決定されているとともに、前記複数の有彩色ドット形成要素群は互いに等しい数のドット形成要素をそれぞれ備えており、
前記印刷装置は、
比較的高い精度で副走査送りを行う第1の副走査駆動機構と、
少なくとも前記第1の副走査駆動機構による副走査送りが終了した後に、比較的低い精度で副走査送りを行う第2の副走査駆動機構と、
を備えており、
前記コンピュータプログラムは、
前記モノクロ印刷の際に、前記第2のドット形成要素アレイのみを用いて、前記印刷媒体上の記録実行領域の中間部分において第1の記録方式に従ってドットの記録を実行するとともに、前記記録実行領域の後端近傍において前記第1の記録方式に比べて副走査送り量が小さい第2の記録方式に従ってドットの記録を実行する機能と、
前記カラー印刷の際に、前記第1と第2のドット形成要素アレイを用いて、前記記録実行領域の前記中間部分および前記後端近傍の両方において共通する第3の記録方式に従ってドットの記録を実行するとともに、前記印刷媒体の後端近傍において前記第1の副走査駆動機構による副走査送りが実行されずに前記第2の副走査駆動機構によって副走査送りが実行されるときには、主走査時に形成されるドットの半数以上がイエロードットで占められるように各ドット形成要素アレイの動作を制御する機能と、
を前記コンピュータに実現させるコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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