JP3839624B2 - 複室容器 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、例えば輸液剤、腹膜透析液等の液体を収納する複室容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば輸液に際し、2種以上の液体(薬液)を混合して使用する場合、初めからそれらを混合してバッグ内に保存しておくと、経時的に変質、劣化する場合がある。
【0003】
そのため、樹脂製シート材で構成されたバッグの途中を帯状に融着して仕切り部を形成し、この仕切り部によりバッグ内を2つの室(空間)に仕切り、2種の液体をそれぞれの室に分けて収納し、必要時(例えば輸液直前)に仕切り部を剥離(開封)して両室内の液体同士を混合し、使用する複室容器が開発されている。現在、この種の複室容器としては、大塚製薬社製・アミノトリパ2号、日本ヘキストマリオンルセル社製・ピーエヌツイン3号等の輸液バッグが存在する。これらは、用時に剥離でき、また、仕切り部の剥離防止部材を必要としない容器とするために、通常、仕切り部の剥離強度を0.98N/20mm幅(0.10kgf/20mm幅)以上とし、かつ仕切り部にてバッグを2つに折りたたむ形で包装している。
【0004】
これらのバッグを用時に剥離するときは、バッグを包材から取り出し、仕切り部で折りたたまれた状態を開いて机上に置き、一室を手等で加圧して行うが、輸送中の剥離を防ぐ目的で前述の値より仕切り部のシール強度が高めに設定されているため、仕切り部の剥離(開封)には大きな力が必要であり、開封の操作性が悪い。
【0005】
特に、近年普及しつつある在宅医療に関しては、高齢者や体力が衰えた患者自身がバッグの仕切り部の剥離(開封)操作を行なうため、この操作を容易に行なえるようにすることは重要な課題である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、輸送や保管中等に誤って仕切り部を剥離し、液漏れを生じる可能性が少なく、必要時には簡単な操作で仕切り部を剥離、開封することができる複室容器を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、以下の本発明により解決される。
【0008】
仕切り部の剥離は、容器内圧力がシート表面の張力に変換され、その内剥離シール部に垂直方向に働くシート張力によって生じる。容器の置き方により、仕切り部が剥離するときの剥離強度は変わらないが、容器の置き方により、容器形状が変われば、容器内圧力が小さくても、仕切り部に剥離に必要なシート張力が加わることに着目し、鋭意検討の結果、できる限り柔軟なシート素材を用い、容器を懸垂したときに、仕切り部の容器形状が大きな曲率半径をとる容器とすることにより、容器を水平に置き加圧した時および包装されている輸送や保管時には仕切り部が剥離しにくく、懸垂して上室を加圧すると容易に剥離する複室容器を発明した。具体的には、下記(1)〜(5)の本発明により達成される。
【0009】
(1) 可撓性を有するシート材で構成され、内部が前記シート材を融着することにより形成された仕切り部を介して液体を収納する第1の空間と、第2の空間とに仕切られた複室容器であって、
前記シート材の5%モジュラス値が20〜60kgf/cm2であり、
前記第1の空間の容量は、前記第2の空間の容量以上でかつ200〜2000mlであり、
使用時には、前記第1の空間に液体が収納されかつ前記第1の空間が前記第2の空間より上方となるように鉛直に懸垂した状態(以下「起立姿勢」と言う)で、前記第1の空間を加圧し、前記仕切り部の少なくとも一部を剥離して前記第1の空間と前記第2の空間とを連通させるように使用され、
前記起立姿勢においては、前記液体の水頭圧により前記第1の空間側の前記仕切り部付近のシート材が膨らむように変形し、当該シート材同士が前記仕切り部を介して互いに反対方向へ引っ張られてこれらのなす角度が鈍角となり、
前記第1の空間に液体が収納されかつ水平に載置した状態(以下「水平状態」と言う)における前記第1の空間に対応する部分の最大厚さをT1、前記起立姿勢における前記第1の空間に対応する部分の最大厚さをT2としたとき、1.2≦T2/T1≦3.0なる条件を満足し、
前記水平状態において、前記第1の空間を加圧して前記仕切り部が剥離し始めるときの前記第1の空間の圧力(水頭圧を除いた圧力)をP1、前記起立姿勢において、前記第1の空間を加圧して前記仕切り部が剥離し始めるときの前記第1の空間の圧力(水頭圧を除いた圧力)をP2としたとき、0.3≦P2/P1≦0.8なる条件を満足することを特徴とする複室容器。
【0010】
(2) 前記仕切り部の少なくとも一部は、複室容器の前記第1の空間に対応する部分を圧迫することにより剥離可能な弱シール部で構成されている上記(1)に記載の複室容器。
【0011】
(3) 前記仕切り部のシール強度は、0.15〜4.0kgf/20mm幅である上記(1)または(2)に記載の複室容器。
【0014】
(4) 前記シート材の構成材料は、ポリプロピレンにエラストマーをブレンドし柔軟化した軟質樹脂である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の複室容器。
【0015】
(5) 前記シート材の構成材料は、ポリプロピレンとスチレン−ブタジエン共重合体とを含み、これらをポリマーブレンドしたものである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の複室容器。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の複室容器を添付図面に示す好適実施例に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の複室容器の実施例を示す部分断面正面図、図2は、本発明の複室容器を水平に載置した状態を示す断面側面図、図3は、本発明の複室容器を懸垂した状態を示す断面側面図、図4は、本発明の複室容器を水平に載置し、押圧して第1の空間を加圧した状態を示す断面側面図、図5は、本発明の複室容器を懸垂し、押圧して第1の空間を加圧した状態を示す断面側面図、図6は、本発明の複室容器を懸垂し、押圧して仕切り部が剥離した状態を示す断面側面図である。なお、図1中の上側を「基端」、下側を「先端」として説明する。
【0019】
図1に示すように、本発明の複室容器1は、内部に液体を収納する第1の空間3と第2の空間4とを有する軟質材料で構成されたバッグ2と、排出口6とを有している。
【0020】
バッグ2は、可撓性を有する軟質材料からなるシート材を筒状(チューブ状)に成形(例えばインフレーション成形)し、その両端部を融着(熱融着、高周波融着等)または接着によりシールして袋状としたものである。バッグ2の基端側のシール部22および先端側のシール部24は、それぞれ、所望の形状に裁断されている。
【0021】
バッグ2の基端側のシール部22のほぼ中央部には、複室容器1をハンガー等に吊り下げるための孔(吊り下げ部)23が設けられている。
【0022】
このバッグ2の図1中上下方向の途中には、仕切り部5が形成されており、バッグ2の内部は、この仕切り部5により第1の空間3と、第2の空間4とに仕切られている。両空間3、4には、それぞれ、組成の異なる液体30、40が収納されている。この場合、液体30と液体40とは、例えばブドウ糖輸液製剤とアミノ酸輸液製剤のように、それらの成分同士が互いに反応(変質、劣化)し易いものとされる。
【0023】
使用されるまでは、液体30と液体40を混合せずに分けて保存し、使用に際し、仕切り部5を剥離(開封)して第1の空間3と第2の空間4とを連通させ、液体30と液体40を混合する。これにより、液体30、40の変質、劣化等を防止し、目的とする薬効をより確実に得ることができる。
【0024】
また、pH調整が必要な液体、例えば腹膜透析液とそれを中性にするpH調整剤とを別個に、すなわち第1の空間3および第2の空間4のそれぞれに収納しておくことで、かかる液体の変質、分解、劣化、着色、変色、沈殿物の発生等を防止することができる。
【0025】
なお、本発明において、液体30、40は、特に限定されず、例えば生理食塩水、電解質溶液、リンゲル液、高カロリー輸液、ブドウ糖液、注射用水、腹膜透析液、経口栄養剤等、いかなるものであってもよい。
【0026】
仕切り部5は、バッグ2のシート材25を帯状に融着(または接着)して得られたものである。この仕切り部5は、例えばバッグ2の第1の空間3側の部分を手で押圧(圧迫)し、第1の空間3の内圧を高めることにより剥離する程度の弱シール部で構成されている。これにより、特別の器具等を用いず、簡単な作業で仕切り部5による遮断を解除し、両空間3、4内の液体同士を混合することができる。
【0027】
なお、仕切り部5の全部が弱シール部で構成されている場合に限らず、仕切り部5の一部が弱シール部で構成されていてもよい。また、例えば仕切り部5の帯の幅に差異を設ける等の方法により剥離強度に差を持たせ、剥離し易い部分と剥離し難い部分とを設けてもよい。
【0028】
このようなバッグ2のシート材25は、可撓性、柔軟性に富むものが使用される。
【0029】
従来のバッグ10に用いられているシート材11は、比較的硬質のものが多く、柔軟性に乏しいものであった。そのため、図7に示すように、バッグ10を水平に載置した状態(バッグ10を保管する際の典型的な姿勢)で、押圧力が加えられ第1の空間12内が加圧されると、シート材11の変形が少ないため、加圧によって生じるシート材11の張力は、仕切り部14を垂直に剥離させる力(ベクトル)としては弱くなる。
【0030】
一方、図8に示すように、バッグ10を鉛直状態(起立姿勢)にし、バッグの上側を手で押圧して仕切り部14を剥離(開封)する際には、第1の空間12内の液体の水頭圧(バッグ10を水平状態にしていたときに比べて高い水頭圧)が仕切り部14付近のシート材11に作用するが、シート材11が比較的硬質であり、その変形が少なく、特に、仕切り部14を中心としたシート材11同士の開き角度がそれほど増大しないため、仕切り部14を剥離(開封)するのに必要な圧力は、専らバッグ10を手で押圧(圧迫)する時の圧力と大差ない。
【0031】
以上より、比較的硬質のシート材11で構成された従来のバッグ10は、保管中等に誤って押圧力が作用した場合に仕切り部14が剥離(開封)し、液漏れが生じないよう設定された仕切り部14を、使用時に剥離する際に大きな力を要し、操作性が劣る。
【0032】
これに対し、本発明におけるバッグ2のシート材25は、可撓性、柔軟性に富むものである。図4に示すように、バッグ2を水平に載置した状態(バッグ2を保管する際の典型的な姿勢)では、従来のバッグと同様に仕切り部5付近のシート材25同士の角度が鋭角であり、押圧によって生じるシート材25の張力は、仕切り部5を剥離させる垂直方向のベクトルとしては弱い。すなわち、仕切り部5を剥離させるのに必要な押圧力は大きい。
【0033】
一方、図3、図5に示すように、バッグ2を鉛直状態(起立姿勢)とし、バッグ2の上側を手で押圧して仕切り部5を剥離(開封)しようとする際には、第1の空間3内の液体30の水頭圧(バッグ2を水平状態にしていたときに比べて高い水頭圧)が仕切り部5付近のシート材25に作用するが、シート材25が柔軟性に富むものであるため、手による押圧力を作用させる前の状態でも、当該水頭圧の作用によって第1の空間3の先端側、特に仕切り部5付近のシート材25が膨らむように変形し(図3参照)、シート材25同士が仕切り部5を介して互いに反対方向に引っ張られ、これらのなす角度が鈍角となる。
【0034】
そして、図5に示すように、この状態からバッグ2に押圧力を作用させ、第1の空間3内を加圧すると、仕切り部5付近のシート材25同士に作用する互いに反対方向のシート張力A、Bが増大し、剥離するためのベクトルとして有効に働く。次に、仕切り部5が剥離し、第1の空間3と第2の空間4とが連通し、第1の空間3内の液体30が第2の空間4内に流入し、液体40と混合される。
【0035】
このように、柔軟性に富むシート材25で構成されたバッグ2は、保管中等に誤って押圧力が作用した場合でも、仕切り部14が剥離(開封)し難く、液漏れが防止される。また、使用に際し液体30と液体40とを混合するときには、仕切り部5を比較的小さな圧力で剥離(開封)することができ、操作性に優れる。従って、病院等の医療機関において医師や看護婦が行なう場合は勿論のこと、例えば在宅医療において高齢者や体力が衰えた患者でも、バッグ2の仕切り部5の剥離(開封)操作を容易かつ確実に行なうことができる。
【0036】
このようなシート材25の可撓性、柔軟性は、以下に述べるような程度のものとされる。
【0037】
図2に示すように、第1の空間3に液体30が収納されたバッグ2(複室容器1)を水平に載置した状態における第1の空間3に対応する部分の最大厚さをT1とし、図3に示すように、第1の空間3に液体30が収納されたバッグ2(複室容器1)を孔23にて鉛直に懸垂した状態における第1の空間3に対応する部分の最大厚さをT2としたとき、1.2≦T2/T1≦3.0を満足するようなもの、より好ましくは1.4≦T2/T1≦3.0を満足するようなものである。
【0038】
T2/T1が前記下限値未満であると、シート材25の柔軟性が不十分となり、前述したような効果が十分に発揮されない。また、T2/T1が前記上限値を超えると、シート材25の強度が不足し、破損を生じ易くなる。
【0039】
また、図4に示すように、第1の空間3に液体30が収納されたバッグ2(複室容器1)を水平に載置した状態において、押圧力を加えて第1の空間3を加圧し、仕切り部5が剥離し始めるときの第1の空間3の圧力(水頭圧を除いた圧力)をP1、図5に示すように、第1の空間3に液体30が収納されたバッグ2(複室容器1)を孔23にて鉛直に懸垂した状態において、第1の空間3を加圧して仕切り部5が剥離し始めるときの第1の空間3の圧力(水頭圧を除いた圧力)をP2としたとき、0.3≦P2/P1≦0.8を満足するようなもの、より好ましくは0.4≦P2/P1≦0.7を満足するようなものである。
【0040】
P2/P1が前記下限値未満であると、シート材25の強度が不足し、破損を生じ易くなる。また、P2/P1が前記上限値を超えると、シート材25の柔軟性が不十分となり、前述したような効果が十分に発揮されない。
【0041】
なお、第1の空間3の圧力P1、P2を水頭圧を除いた圧力としたのは、次の理由による。第1の空間3内の液体30の液面が仕切り部より高いとそれに伴って水頭圧も増大するが、この場合には、仕切り部5の剥離に有利に働くため、水頭圧を除いた圧力で比較することにより、水頭圧の依存性を排除して、容器の特徴を示した。
【0042】
本発明の複室容器1では、シート材25の材質(構成材料のポリマー組成、分子量、可塑材等の添加剤)、シート材25の厚さ、シート材25の強度、弾性、シート材25の仕切り部5付近の形状、寸法等の条件を適宜組合せて選択することにより、以上のような条件を満足することができる。
【0043】
シート材25の弾性は、特に限定されないが、5%モジュラス値が20〜60kgf/cm2であるのが好ましく、20〜35kgf/cm2であるのがより好ましい。この5%モジュラス値が小さ過ぎると、シート材25の強度低下をもたらし、シート材25の厚さを比較的厚くする等の必要が生じる。また、この5%モジュラス値が大き過ぎると、前述したような効果が十分に発揮されないことがある。
【0044】
また、液体30、40の変質、劣化をより有効に防止するために、シート材25は、ガス透過性ができるだけ低いもの(ガスバリア性を有するもの)が好ましい。
【0045】
このようなシート材25に使用できる材料(樹脂材料)としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の各種熱可塑性エラストマーあるいはこれらを任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)が挙げられる。これらの樹脂材料は、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ滅菌)に耐えられる耐熱性、耐水性を有している点でも好ましい。
【0046】
シート材25の構成材料として特に好ましいものに、ポリエチレンまたはポリプロピレンに、スチレン−ブタジエン共重合体やスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体等のエラストマーをブレンドし柔軟化した軟質樹脂を挙げることができる。この材料は、高強度で柔軟性に富み、耐熱性(特に滅菌時の耐熱性)、耐水性が高い他、加工性が特に優れ、製造コストの低減を図れる点で好ましい。
【0047】
さらに、内部の液体30、40の品質保持のために、バッグ2に酸素バリア性や遮光性等を付与するためにアルミ箔等のフィルムをさらに積層することも可能である。
【0048】
また、酸素バリア性付与のために、バッグ2の表面に酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等の酸化物からなる蒸着膜等の薄膜を形成することも可能である。この場合でも、バッグ2の透明性を維持することができ、内部の視認性が確保される。
【0049】
バッグ2を構成するシート材25の厚さは、特に限定されず、シート材25の材質等の他の条件によって異なるが、通常は、0.2〜0.5mm程度であるのが好ましく、0.25〜0.35mm程度であるのがより好ましい。
【0050】
また、バッグ2の容量は、内部に収容する液体30、40の種類等によって異なるが、通常は、第1の空間3および第2の空間4のそれぞれの容量(容積)が、100〜5000ml程度であるのが好ましく、200〜2000ml程度であるのがより好ましい。
【0051】
また、第1の空間3の容量と第2の空間4の容量の大小関係は、特に限定されないが、第1の空間3の容量が第2の空間4の容量以上であるのが好ましい。これにより、第1の空間3を手で加圧し易くなり、仕切り部5を開封したときの液体30の第2の空間4への移動による混合が容易に行われる。
【0052】
仕切り部5の弱シール部のシール強度(剥離強度)は、特に限定されないが、通常は、0.15〜4.0kgf/20mm幅であるのが好ましく、0.3〜2.5kgf/20mm幅であるのがより好ましい。シール強度がこの範囲未満であると、輸送や保管中等に誤って仕切り部5が剥離し易くなり、また、シール強度がこの範囲を超えると、仕切り部5を剥離(開封)する際の操作性が低下する。
【0053】
このような仕切り部5の形成は、例えば次のような方法、条件により行なうことができる。すなわち、仕切り部5は、金型温度が好ましくは90〜140℃、より好ましくは100〜120℃、シール圧力が好ましくは2〜12kgf/cm2、より好ましくは3.5〜7.5kgf/cm2、シール時間が好ましくは1〜10秒、より好ましくは2〜5秒でヒートシールすることができる。なお、ここで挙げた方法、条件は、一例であり、これに限定されるものではない。
【0054】
バッグ2の先端部には、第2の空間4に連通する排出口(口部)6が設けられている。この排出口6は、少なくとも液体を排出する機能を有するものであり、筒状(特に円筒状)の管体(内筒)61と、管体61の外側に設置された外筒62とを備えている。
【0055】
管体61および外筒62の先端には、弾性材料で構成された弾性体(栓体)63が設置され、その上からキャップ(弾性体支持部材)64を冠着することにより弾性体63を管体61および外筒62の先端に圧着した構成となっている。
【0056】
キャップ64の基端部は、外筒62の途中の外周に設けられたフランジ部65に嵌合または螺合し、固定される。
【0057】
弾性体63は、瓶針、カヌラ針等の針管(図示せず)を刺通可能なものであり、必要時にこの針管を刺通して、複室容器1内の液体40または液体30と液体40の混合液体を取り出すこと、あるいは複室容器1内に薬液等を混注することができる。また、弾性体63は、自己閉塞性を有し、針管を弾性体63から抜き取った後は、その穿刺孔が閉塞し、薬液の漏れを防止する。
【0058】
弾性体63の構成材料としては、可撓性を有する高分子材料が好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等の熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマー)、天然ゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴムのような各種ゴム材料等の弾性材料、あるいはこれらのうちの任意の2以上を組み合わせたもの(ブレンド、積層体等)が挙げられる。
【0059】
キャップ64は、リング状をなし、外筒62の先端部に対し、例えば、螺合、嵌合、カシメ、接着、融着等の方法により固定されている。キャップ64の構成材料としては、特に限定されず、例えば各種樹脂材料、金属材料等が挙げられる。
【0060】
外筒62は、バッグ2の先端部のシール部24において、シート材25、25間に挟持、融着されて固定されている。これにより、外筒62のバッグ2に対する固定を容易かつ確実に行うことができ、また、外筒62とシート材25との接合性、密着性(密封性)が高いため、液漏れ等も確実に防止することができる。また、複室容器1の製造、組み立てが容易であるという利点もある。
【0061】
管体61および外筒62の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ABS樹脂等が挙げられる。
【0062】
なお、このような排出口(または混注口)は、複数個設置されていてもよい。また、第1の空間3に連通する同様の排出口(または混注口)が設けられていてもよい。
【0063】
以上、本発明の複室容器を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではい。
【0064】
【実施例】
(実施例1)
シート材として、ポリプロピレンとスチレン−ブタジエン共重合体とを6:4の重量比で配合(ポリマーブレンド)した軟質樹脂をインフレーション成形により筒体に成形したものを用い、所望パターンに熱融着および裁断し、排出口を装着して、図1に示す形状の本発明の複室容器を製造した。
【0065】
この複室容器の第1の空間にブドウ糖液:1600ml、第2の空間に電解質液:400mlを封入し、オートクレーブ滅菌を施した。この時のシート材厚さ、5%モジュラス値、容器長、容器幅、仕切り部のシール条件、仕切り部のシール強度、オートクレーブ滅菌条件を表1に示す。
【0066】
第1の空間および第2の空間にそれぞれ液体が充填された当該複室容器に対し、前述した方法で、最大厚さT1、T2、圧力P1、P2を測定し、さらに、これらよりT2/T1、P2/P1を求めた。その結果を下記表1に示す。
【0067】
なお、圧力P1、P2の測定は、キーエンス社製・油圧デジタル圧力センサー(AP−80A)を用いた。
【0068】
(実施例2、3)
仕切り部のシール条件、オートクレーブ滅菌条件等を、それぞれ、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にした。
【0069】
(実施例4)
シート材として、ポリプロピレンとエチレン−ブテン共重合体とスチレン−ブタジエン共重合体とを5:2:3の重量比で配合(ポリマーブレンド)した軟質樹脂を用い、実施例1と同様にして複室容器を製造し、評価した。その条件を表1に示す。
【0070】
(比較例1)
市販の輸液バッグである大塚製薬社製・アミノトリパ2号を用意した。この輸液バッグは、第1の空間に糖・電解質液:1200ml、第2の空間にアミノ酸液:600mlが封入されている。
【0071】
前記と同様の方法で、最大厚さT1、T2、圧力P1、P2を測定し、さらに、これらよりT2/T1、P2/P1を求めた。その結果を下記表1に示す。
【0072】
(比較例2)
市販の輸液バッグである日本ヘキストマリオンルセル社製・ピーエヌツイン3号を用意した。この輸液バッグは、第1の空間に糖・電解質液:800ml、第2の空間にアミノ酸液:400mlが封入されている。
【0073】
前記と同様の方法で、最大厚さT1、T2、圧力P1、P2を測定し、さらに、これらよりT2/T1、P2/P1を求めた。その結果を下記表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
表1に示すように、実施例1〜3の複室容器は、いずれも、比較例1、2に比べ、T1とT2の乖離がある程度大きく、また、P1とP2の乖離がある程度大きい。そのため、例えば保管中、搬送中等、複室容器の姿勢が水平な状態では、仕切り部が剥離し難く、液漏れを防止することができる一方、複室容器を起立姿勢とした状態では、より小さな圧力で簡単に仕切り部を剥離(開封)して第1の空間と第2の空間とを連通させ、液体を混合させることができる。
【0076】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の複室容器によれば、例えば保管中、搬送中等の必要時以外に仕切り部が誤って剥離し、第1の空間と第2の空間とが連通することが防止されるので、薬液の安定性が保持され、安全性が高い。
【0077】
そして、必要時には、簡単な操作で、第1の空間と第2の空間とを連通させることができ、例えばそれらの空間に収納されている異なる液体同士を混合することができる。
【0078】
特に、複室容器の外部から両空間を連通させることができるため、迅速に液の調製を行なうことができる。また、このような液体の調製時に液体が外気に触れないため、細菌や異物の混入のおそれがなく、薬液の調製を安全に行うことができる。
【0079】
以上のことから、本発明の複室容器は、病院等の医療機関において医師や看護婦が使用する場合は勿論のこと、例えば在宅医療において高齢者や体力が衰えた患者が使用する場合にも適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複室容器の実施形態を示す部分断面正面図である。
【図2】本発明の複室容器を水平に載置した状態を示す主要部の断面側面図である。
【図3】本発明の複室容器を懸垂した状態を示す主要部の断面側面図である。
【図4】本発明の複室容器を水平に載置し、押圧して第1の空間を加圧した状態を示す主要部の断面側面図である。
【図5】本発明の複室容器を懸垂し、押圧して第1の空間を加圧した状態を示す主要部の断面側面図である。
【図6】本発明の複室容器を懸垂し、押圧して仕切り部が剥離した状態を示す主要部の断面側面図である。
【図7】従来の複室容器を水平に載置し、押圧して第1の空間を加圧した状態を示す主要部の断面側面図である。
【図8】従来の複室容器を懸垂し、押圧して第1の空間を加圧した状態を示す主要部の断面側面図である。
【符号の説明】
1 複室容器
2 バッグ
22 シール部
23 孔
24 シール部
25 シート材
3 第1の空間
4 第2の空間
30、40 液体
5 仕切り部
6 排出口
61 管体
62 外筒
63 弾性体
64 キャップ
65 フランジ部
10 従来のバッグ
11 シート材
12 第1の空間
13 第2の空間
14 仕切り部
Claims (5)
- 可撓性を有するシート材で構成され、内部が前記シート材を融着することにより形成された仕切り部を介して液体を収納する第1の空間と、第2の空間とに仕切られた複室容器であって、
前記シート材の5%モジュラス値が20〜60kgf/cm 2 であり、
前記第1の空間の容量は、前記第2の空間の容量以上でかつ200〜2000mlであり、
使用時には、前記第1の空間に液体が収納されかつ前記第1の空間が前記第2の空間より上方となるように鉛直に懸垂した状態(以下「起立姿勢」と言う)で、前記第1の空間を加圧し、前記仕切り部の少なくとも一部を剥離して前記第1の空間と前記第2の空間とを連通させるように使用され、
前記起立姿勢においては、前記液体の水頭圧により前記第1の空間側の前記仕切り部付近のシート材が膨らむように変形し、当該シート材同士が前記仕切り部を介して互いに反対方向へ引っ張られてこれらのなす角度が鈍角となり、
前記第1の空間に液体が収納されかつ水平に載置した状態(以下「水平状態」と言う)における前記第1の空間に対応する部分の最大厚さをT1、前記起立姿勢における前記第1の空間に対応する部分の最大厚さをT2としたとき、1.2≦T2/T1≦3.0なる条件を満足し、
前記水平状態において、前記第1の空間を加圧して前記仕切り部が剥離し始めるときの前記第1の空間の圧力(水頭圧を除いた圧力)をP1、前記起立姿勢において、前記第1の空間を加圧して前記仕切り部が剥離し始めるときの前記第1の空間の圧力(水頭圧を除いた圧力)をP2としたとき、0.3≦P2/P1≦0.8なる条件を満足することを特徴とする複室容器。 - 前記仕切り部の少なくとも一部は、複室容器の前記第1の空間に対応する部分を圧迫することにより剥離可能な弱シール部で構成されている請求項1に記載の複室容器。
- 前記仕切り部のシール強度は、0.15〜4.0kgf/20mm幅である請求項1または2に記載の複室容器。
- 前記シート材の構成材料は、ポリプロピレンにエラストマーをブレンドし柔軟化した軟質樹脂である請求項1ないし3のいずれかに記載の複室容器。
- 前記シート材の構成材料は、ポリプロピレンとスチレン−ブタジエン共重合体とを含み、これらをポリマーブレンドしたものである請求項1ないし3のいずれかに記載の複室容器。
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