JP3830721B2 - 分散補償光ファイバ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は分散補償光ファイバに関し、1.3μm用シングルモード光ファイバに代表される1.53〜1.63μm帯から選択された使用波長帯よりも短波長側に零分散波長を有するシングルモード光ファイバを用いて1.53〜1.63μm帯から選択された使用波長帯で光信号を伝送する際に生じる波長分散、および分散スロープを補償するものである。
【0002】
【従来の技術】
エルビウム添加光ファイバ増幅器(以下、Er添加光ファイバ増幅器と略記する)の実用化により、1.55μm帯波長において、超長距離無再生中継などの光増幅器を用いた光通信システムが既に商用化されている。また、Er添加光ファイバ増幅器の利得波長特性がより平坦化されているL−band帯(1.57μm〜1.63μm)においても、光通信システムの実用化の準備が進められている。
また、通信容量の増大に伴い、異なる波長を備えた複数の光を同時に伝送する波長多重伝送の開発が急速に進められ、商用化されている。今後の光通信システムにおいては、波長帯域の広帯域化、波長多重数の増加が急激に進むと考えられる。
【0003】
波長多重伝送においては、使用する帯域において、伝送路(シングルモード光ファイバ)の波長分散が小さく、分散スロープ(横軸に波長、縦軸に波長分散をとったときの曲線の傾き)ができるだけ小さいことが好ましい。分散スロープが大きくなると、各波長間の波長分散値の差が大きくなり、伝送特性が劣化するからである。
【0004】
一方、伝送路として1.3μm用シングルモード光ファイバを用いた1.3μm帯シングルモード光ファイバ網は世界中に既に構築されている。1.3μm用シングルモード光ファイバは、1.3μm付近における波長分散が零であるため、この光ファイバ網を用いて1.55μm帯の伝送を行うと、約+17ps/nm/kmの波長分散が生じ、伝送特性が大きく劣化する。
また、1.3μm用シングルモード光ファイバは、一般に1.55μm帯において、正の分散スロープを有している。そのため、波長多重伝送を行うと、各波長間の波長分散値がばらつき、伝送特性が劣化する。
【0005】
そこで、1.3μm用シングルモード光ファイバの波長分散と分散スロープを同時に補償する分散スロープ補償型の分散補償光ファイバが提案され、すでに商用化も進んでいる。
この分散補償光ファイバは、1.55μm帯で大きな負の波長分散と負の分散スロープを有し、1.3μm用シングルモード光ファイバと適切な長さで接続することによって、この1.3μm用シングルモード光ファイバにおいて生じた正の波長分散と分散スロープを相殺できるものである。したがって、1.3μm用シングルモード光ファイバとこの分散補償光ファイバとを組み合わせて光通信システムを構築すれば、1.55μm帯の波長多重伝送を行っても高速通信が可能となる。
【0006】
分散スロープ補償型の分散補償光ファイバとしては、図1に示したようなW型屈折率分布形状を有するものが提案されている。
この屈折率分布形状においては、中心に設けられた高屈折率のセンタコア1と、その外周上に設けられたこのセンタコア1よりも低屈折率のサイドコア2とからコアが構成されている。そして、このサイドコア2の外周上にはこのサイドコア2よりも高屈折率で、かつ前記センタコア1よりも低屈折率のクラッド4が設けられている。
通常、センタコア1はゲルマニウム添加石英ガラス、サイドコア2はフッ素添加石英ガラス、クラッド4は純粋石英ガラスから構成されている。ゲルマニウム、フッ素は、純粋石英ガラスの屈折率をそれぞれ上昇、下降させる作用を備えたドーパントである。
【0007】
このW型屈折率分布形状について、クラッド4を基準(零)にしたときのセンタコア1とサイドコア2のそれぞれの比屈折率差Δ1、Δ2や、センタコア1の半径aとサイドコア2の半径bとの比率を調節することによって、波長分散と、分散スロープを補償する機能が得られる。
W型屈折率分布形状は従来、分散シフト光ファイバなどの他の用途にも適用されてきたが、このように波長分散と分散スロープを補償するためには、Δ1を他の伝送用のシングルモード光ファイバに適用する場合よりも大きく設計する必要がある。
【0008】
また、図2に示したようにセグメントコア型屈折率分布形状を有する分散スロープ補償型の分散補償光ファイバも開発されている。
この屈折率分布形状においては、中心に設けられた高屈折率のセンタコア11と、その外周上に設けられたこのセンタコア11よりも低屈折率のサイドコア12と、このサイドコア12の外周上に設けられたこのサイドコア12よりも高屈折率で、かつ前記センタコア11よりも低屈折率のリングコア13とからコアが構成されている。そして、このリングコア13の外周上に、このリングコア13よりも低屈折率で、かつ前記サイドコア12よりも高屈折率のクラッド14が設けられている。
【0009】
このセグメントコア型屈折率分布形状においては、W型屈折率分布形状に、さらにリングコア13が設けられた構成となっているため、より曲げ損失が小さく、波長多重伝送に適した負の分散スロープが得られるという利点がある。また、Aeff(有効コア断面積)を、より拡大することができるため、非線形効果を抑制することができるという効果がある。
波長多重伝送においては、そもそも伝送する光信号のパワーが大きいため、伝送の途中でEr添加光ファイバ増幅器によって光信号を増幅すると、光信号のパワーが急激に増加する。その結果、非線形効果が生じ、伝送特性が劣化する。
非線形学効果の大きさは、
n2/Aeff
で表される。ここで、n2は光ファイバの非線形屈折率である。n2は材料に固有の値であり、石英系の光ファイバでは大きく低減させることは困難であるため、非線形効果を抑制するためにはAeffの拡大が有効である。セグメントコア型屈折率分布形状においては、設計条件によっては比較的容易に20μm2 以上のAeffが得られる。
【0010】
一般に、センタコア11はゲルマニウム添加石英ガラス、サイドコア12はフッ素添加石英ガラス、リングコア13はゲルマニウム添加石英ガラス、クラッド14は純粋石英ガラスから構成されている。
【0011】
このセグメントコア型屈折率分布形状においては、クラッド14を基準(零)にしたときのセンタコア11とサイドコア12とリングコア13のそれぞれの比屈折率差Δ11、Δ12、Δ13と、センタコア11の半径aとサイドコア12の半径bとリングコア13の半径cの比率を調節することにより、波長分散と分散スロープを同時に補償することができる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、従来の分散スロープ補償型の分散補償光ファイバにおいては、クラッド4、14は純粋石英ガラスから形成されていた。
純粋石英ガラスは、ゲルマニウム、フッ素などのドーパントを添加すると粘度が低くなり、軟化点が低下する傾向がある。また、同一温度における粘度も低下する。石英系光ファイバの代表的な線引き温度付近である1900℃における粘度の測定例を図8に示す。このような傾向により、クラッド4、14は、その内側に配置されている、ドーパントが添加されたセンタコア1、11、サイドコア2、12、およびリングコア13よりも軟化温度が高く、また硬化温度も高い。
【0013】
したがって、分散補償光ファイバを製造するにおいて、円柱状のファイバ母材を、その長さ方向が鉛直方向になるように配置し、このファイバ母材の下端を加熱すると、まず、センタコア1、11、サイドコア2、12、リングコア13となる部分が軟化し、ついでクラッド4、14となる部分が軟化し、線引きされる。
線引きされた分散補償光ファイバは、下方から引張応力が印加されている状態で、その温度が徐々に下がる。そして、クラッド4、14が先に硬化し、ついで内側のセンタコア1、11、サイドコア2、12、およびリングコア13が硬化する。
このとき、これらクラッド4、14の内側の部分は、先に硬化したクラッド4、14との間に粘度の差を生じ、クラッド4、14によって引き留められ、線引きによって印加されている応力と逆方向にも応力が印加された状態となる。その結果、内部に応力が残留した状態で硬化する。そして、この残留応力が大きいと、屈折率変化による特性のずれが生じたり、伝送損失の劣化が生じたりする。
【0014】
そのため、線引き時において、溶融したガラスが硬化するときに、コアとクラッドとの界面付近のクラッド4、14に印加される引張応力や、同様にこの界面付近のコア1、11に印加される圧縮応力を相殺させるために、予め高張力(低温)で線引きを行い、前記応力を低下させることが行われている。
しかしながら、線引き温度が低温になりすぎると分散補償光ファイバの機械的な強度が低下するという問題がある。よって、実質的にはファイバ強度が許容される範囲で線引きを行っていた。
【0015】
一般的な光ファイバにおいてもこのような硬化時のコアとクラッドとの粘度差に起因する現象が生じる。しかし、W型屈折率分布形状を備えた分散スロープ補償型の分散補償光ファイバにおいては、上述のように負の波長分散と分散スロープを得るために比屈折率差Δ1が伝送用シングルモード光ファイバに比べて大きな値に設定されている。また、セグメントコア型屈折率分布形状を備えた分散スロープ補償型の分散補償光ファイバにおいても、波長分散の値などによっては比屈折率差Δ11を他の伝送用シングルモード光ファイバに比べて大きな値に設定することが必要となる場合がある。
大きな比屈折率差Δ1、Δ11を実現するためには、センタコア1、11に添加するドーパントの添加量を多くする必要がある。そしてドーパントの添加量が多くなる程、軟化温度および硬化温度が低下する。よって、センタコア1、11とクラッド4、14との軟化温度および硬化温度の差が大きくなりやすく、このような問題が生じやすかった。
そのため、実用可能な機械的な強度を確保するためには、伝送損失の向上に限界があり、低損失のものを得ることが困難となる場合があった。
【0016】
本発明は前記事情に鑑てなされたもので、低損失の分散スロープ補償型の分散補償光ファイバが得られる技術を提供することを課題とする。
具体的にはセンタコア1、11の比屈折率差Δ1、Δ11が大きい分散スロープ補償型の分散補償光ファイバを製造するにあたり、低損失のものを提供できる技術を提供することを課題とする。
さらに機械的な強度を考慮した線引き温度でも、低損失の分散スロープ補償型の分散補償光ファイバが得られる技術を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明においては以下のような解決手段を提案する。第1の発明は、センタコアと、このセンタコアの外周上に設けられ、かつこのセンタコアよりも低屈折率のサイドコアと、このサイドコアの外周上に設けられ、このサイドコアよりも高屈折率で、かつ前記センタコアよりも低屈折率のリングコアと、このリングコアの外周上に設けられ、かつこのリングコアよりも低屈折率で、前記サイドコアよりも高屈折率のクラッドとからなるセグメントコア型屈折率分布形状を備え、前記センタコアと、前記サイドコアと、前記リングコアと、前記クラッドが、それぞれゲルマニウム、アルミニウム、リン、フッ素から選ばれる少なくとも1種または2種以上のドーパントを添加した石英ガラスからなり、前記センタコア、前記サイドコア、および前記リングコアにおいて、半径と、前記クラッドに対する比屈折率差を、それぞれ(a、Δ11)、(b、Δ12)、(c、Δ13)としたとき、Δ11が0.65〜1.4%、Δ12が−0.3〜−0.5%、Δ13が0.5〜0.6%、b/aが2.1〜4.0、c/aが2.8〜5.0であり、1.53〜1.63μmから選択された使用波長帯において、有効コア断面積が20.1μm 2 以上、伝送損失が0.23〜0.40dB/km、曲げ損失が38.5dB/m以下、波長分散が−89〜−18.4ps/nm/kmであり、かつ、実質的にシングルモード伝搬可能なカットオフ波長を有し、前記使用波長帯よりも短波長の零分散波長を有するシングルモード光ファイバの波長分散を零に補償できる長さで、このシングルモード光ファイバを補償したときの分散スロープの補償率が、80〜120%であり、この分散スロープの補償率は、波長分散が17ps/nm/km、分散スロープが0.060ps/nm2 /kmである1.3μm帯シングルモードファイバに対するものであることを特徴とする分散補償光ファイバである。第2の発明は、第1の発明の分散補償光ファイバにおいて、クラッドの純粋石英ガラスを基準とした比屈折率差が−0.05〜−0.4%であることを特徴とする分散補償光ファイバである。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の分散補償光ファイバは、図1、図2に示したW型屈折率分布形状もしくはセグメントコア型屈折率分布形状を備えているものである。以下、図1、図2を利用して説明する。
センタコア1、11およびリングコア部3は、屈折率を上昇させる作用を備えたドーパントを添加した石英ガラス、サイドコア2、12は屈折率を低下させる作用を備えたドーパントを添加した石英ガラスから形成されている。屈折率を上昇させる作用を備えたドーパントは、ゲルマニウム(Ge)が代表的である。ゲルマニウムはGeO2として添加される。また、屈折率を低下させる作用を備えたドーパントとしてはフッ素(F)が代表的である。
なお、センタコア1、11、サイドコア2、12、リングコア13およびクラッド4、14に添加するドーパントはゲルマニウム、アルミニウム(Al)、リン(P)、フッ素から選ばれる少なくとも1種、あるいは2種以上のドーパントが用いられ、所望の屈折率によってその種類や添加量が適宜選択される。
【0019】
本発明の分散補償光ファイバにおいては、クラッド4、14がドーパントを添加した石英ガラスから形成されている。このドーパントは屈折率を低下させる作用を備えたものであり、上述のようにフッ素が代表的である。その結果、クラッド4、14の軟化温度は、純粋石英ガラスよりも低くなる。つまり、Δ1、Δ11、Δ2、Δ12、Δ13の基準(零)の屈折率は、純粋石英ガラスの屈折率よりも低くなる。
したがって、クラッド4、14よりも高い屈折率を備えたセンタコア1、11およびリングコア13においては、ドーパントの添加量が従来よりも少なくなる。そして、純粋石英ガラスからなるクラッド4、14を基準とした場合よりも、センタコア1、11、およびリングコア13において、ドーパントの添加による軟化温度および硬化温度の低下を小さくすることができる。また、図8に示したように各層の1900℃付近における粘度差も小さくすることができる。
【0020】
従来は、純粋石英ガラスからなるクラッド4、14と、多量のドーパントが添加されたセンタコア1、11との間の軟化温度および硬化温度の差が特に問題となっていたが、本発明においては、クラッド4、14の軟化温度および硬化温度が低下し、かつ、センタコア1、11の軟化温度および硬化温度が上昇するため、これらの間の軟化温度および硬化温度の差が小さくなり、線引き温度における粘度差も小さくなる。その結果、分散補償光ファイバの機械的な強度が保証できる線引き温度で線引きしても、線引き後にクラッド4、14の内側の部分、特にセンタコア1、11に残留する応力を小さくすることができ、これに起因する伝送損失の劣化を小さくすることができる。
【0021】
クラッド4、14は、純粋石英ガラスを基準(零)にした比屈折率差が−0.05〜−0.4%、好ましくは−0.05〜−0.3%に設定されていると好ましい。−0.05%よりも大きく、零に近いと、ドーパントの添加量が小さく、十分に軟化温度および硬化温度を低下させることができない。−0.4%よりも小さくなると、Δ2のドーパント添加量が多くなり、伝送損失が劣化する場合がある。
センタコア1、11、サイドコア2、12、リングコア13、およびクラッド4、14の、それぞれのドーパントの添加量は、それぞれの比屈折率差などによって適宜設定されるものである。
【0022】
本発明の分散補償光ファイバは、VAD法、MCVD法、PCVD法などの公知の方法によって、各層にドーパントを添加した円柱状のファイバ母材を製造し、このファイバ母材の長さ方向が鉛直方向になるように配置し、このファイバ母材の下端を加熱して線引きすることによって得られる。
【0023】
一般にファイバ母材の外径は30〜80mm、分散補償光ファイバの外径は80〜125μmである。また、本発明の分散補償光ファイバの線引き時の加熱温度は1800〜2100℃、線引き速度は100〜300m/minとされる。また、このときの線引張力は100〜200gとされる。この条件であれば、実用可能な機械的な強度が得られる。
本発明の分散補償光ファイバは、センタコア1、11からクラッド4、14までの全ての部分がドーパントが添加された石英ガラスからなり、軟化温度および硬化温度が低いため、従来の純粋石英ガラスからなるクラッド4、14を備えたものよりも、ファイバ母材の加熱温度を低くすることができる。
【0024】
なお、実際の分散補償光ファイバの屈折率形状はなだらかな曲線状になり、図1、図2に示したもののように、各構成部分の境界がはっきりしていない。よって、後述するように、予めΔ2、Δ12などの構造パラメータの値を設定した上で、実際の製造時には、光学特性をモニタして微調整しながら製造すると好ましい。
【0025】
このように本発明においては、クラッド4、14をドーパントを添加した石英ガラスから形成することにより、センタコア1、11とクラッド4、14との軟化温度および硬化温度の差を小さくして、線引き時にセンタコア1、11とクラッド4、14との粘度の差を小さくすることができる。
その結果、線引き後にセンタコア1、11などに残留する応力を小さくすることができ、実用可能な機械的な強度が得られる温度で線引きしても、伝送損失の劣化を低減することができる。
【0026】
W型屈折率分布形状もしくはセグメントコア型屈折率分布形状を備えた分散補償光ファイバにおいては、それぞれ、Δ2、Δ3、およびb/aまたは、Δ12、Δ13、b/a、およびc/aを適切に設定することにより、波長分散、分散スロープ、さらには曲げ損失などの好ましい特性を実現することができる。
特にセグメントコア型屈折率分布形状においては、上述のようにAeffを20μm2 以上に拡大することができ、非線形効果の抑制の観点から好ましい。
【0027】
本発明の分散補償光ファイバの使用波長帯は1.53〜1.63μmの範囲から選択される。例えばEr添加光ファイバ増幅器の増幅波長帯によって、1.53〜1.57μm、1.57〜1.63μm、両者を合わせた1.53〜1.63μmなどが適宜選択される。
また、本発明の分散補償光ファイバの使用波長帯における波長分散は、−150〜−10ps/nm/kmとされる。−10ps/nm/kmよりも大きく、零に近い場合は、使用長さが長くなり、不都合である。−150ps/nm/kmよりも小さいものは特性が劣化しやすく製造が困難である。
【0028】
本発明の分散補償光ファイバは、1.3μm用シングルモード光ファイバのように、前記使用波長帯において正の波長分散を有する伝送用のシングルモード光ファイバの波長分散および分散スロープを補償することを目的としている。
よって、本発明の分散補償光ファイバが補償対象とする伝送用のシングルモード光ファイバは、1.3μm用シングルモード光ファイバのみならず、この使用波長帯よりも短波長側に零分散波長を有し、この零分散波長の長波長側で波長分散が大きくなるシングルモード光ファイバが含まれる。このようなシングルモード光ファイバは、通常正の分散スロープを有している。
【0029】
本発明の分散補償光ファイバの分散スロープは、組み合わせる伝送用のシングルモード光ファイバの波長分散を零にできる長さの分散補償光ファイバを用いてこのシングルモード光ファイバを補償するとき、補償率が80〜120%であると好ましい。この範囲内であると分散スロープを十分に補償することができ、良好な波長多重伝送特性が得られる。
【0030】
この補償率は以下のようにして求める。
使用波長帯において、伝送用のシングルモード光ファイバの単位長さ当たりの波長分散と分散スロープの絶対値をそれぞれd1(ps/nm/km)、s1(ps/nm2/km)、分散補償光ファイバの単位長さ当たりの波長分散と分散スロープの絶対値をそれぞれd2(ps/nm/km)、s2(ps/nm2/km)とする。
伝送用のシングルモード光ファイバの波長分散と分散スロープは正の値、分散補償光ファイバの波長分散と分散スロープは負の値である。
【0031】
まず、単位長さの伝送用のシングルモード光ファイバを補償できる分散補償光ファイバの長さはd1/d2で表される。
この長さにおける分散補償光ファイバの分散スロープはd1/d2*s2となる。そして、この長さの分散補償光ファイバによる単位長さ当たりの伝送用のシングルモード光ファイバの分散スロープの補償率は、(d1/d2*s2)/s1*100となる。
【0032】
このように分散スロープの補償率は、使用波長帯における補償対象の伝送用のシングルモード光ファイバの波長分散と分散スロープ、および分散補償光ファイバ自体の波長分散と分散スロープによって変化するため、目的とする使用波長帯や伝送用のシングルモード光ファイバにあわせて分散補償光ファイバを設計する必要がある。
【0033】
また、曲げ損失は、使用波長帯において、曲げ直径(2R)が20mmの条件の値をいうものとする。本発明の分散補償光ファイバにおいては、使用波長帯における曲げ損失が40dB/m以下であると好ましい。40dB/mをこえると、敷設時などに付与されるわずかな曲げなどによって伝送特性が劣化する場合がある。
【0034】
図1に示したW型屈折率分布形状において、Δ1は通常1.5〜3.0%、好ましくは2.0〜3.0%、さらに好ましくは2.0〜2.5%の範囲とされる。1.5%未満の場合は、負の分散スロープを設定したときにシングルモード伝搬が困難となる場合があり、3.0%をこえると線引き速度などの製造条件によっては機械的な強度が低下する場合がある。
一方、図2に示したセグメントコア型屈折率分布形状を備えた分散補償光ファイバにおいては、Δ11の値は他の構造パラメータなどとの関係から相対的に決定され、上述のW型屈折率分布形状のΔ1の数値範囲よりも広範囲となる。
本発明者らはセグメントコア型屈折率分布形状を備えた分散補償光ファイバについて、Δ11、Δ12およびΔ13と半径a、半径bおよび半径cの関係を網羅的に計算し、波長分散とAeffとの関係を求めた。そして具体的には例えばΔ11が0.5〜3.0%、Δ12が−0.5〜−0.2%、Δ13が0.1〜1.0%、b/aが2.0〜5.0、cがbよりも0.5〜2.5大きい範囲で計算を行って実用的な構造を求めた。図3はこのときの結果を波長分散とAeffとの関係で表したグラフであって、Aeffが17μm2以上、2m法におけるカットオフ波長が1.7μm以下、曲げ損失が40dB/m以下で、かつ代表的な1.3μm帯シングルモード光ファイバ(波長分散+17ps/nm/km、分散スロープ+0.060ps/nm2/km)に対する補償率が100±10%以内のものをプロットしている。スロープ補償率は、使用波長範囲において、できるだけ100%に近い方が望ましいことは当然であるが、システムの要求性能、コストなども考慮して±20%以内であれば使用可能な場合がある。このようにΔ11が0.5〜3.0%という広い範囲から選択されていてもほぼ好ましい光学特性を実現することができる。
なお、分散補償光ファイバとしては、単にAeffが大きければよいというものではなく、伝送用のシングルモード光ファイバと組み合わせた光通信システム全体の波長分散が小さく、かつ非線形効果を抑制する観点からAeffが大きいことが望ましい。さらに製造制御性に優れている、すなわち製造時に構造パラメータが多少変化しても光学特性が変化しにくいと望ましい。
したがって、図3に示したグラフから本発明の好ましい範囲のAeffと波長分散、曲げ損失を満足するもので、かつ、伝送用光ファイバと組み合わせたときの波長分散、分散補償率や製造制御性が良好なものを選択すると好ましい。
【0035】
また、Δ2、Δ12、Δ13、b/a、およびc/aの値は特に限定するものではないが、以下の範囲を満足するように設定すると好ましい。
Δ2、Δ12は−0.3〜−0.7%とされる。−0.3%よりも大きい場合は分散スロープ補償率が小さくなり、−0.7%よりも小さくなると伝送損失が劣化する場合がある。
Δ13は+0.3〜+1.5%とされる。+0.3%よりも小さいと、リングコア13を設けた効果が得られず、分散スロープ補償率の低下やAeff拡大効果の低下が生じる場合があり、1.5%よりも大きいと所望の波長分散補償効果が得られない場合がある。
【0036】
bはb/aの値によって異なるが、2.0〜6.0μmとされる。6.0μmをこえると波長分散の絶対値が小さくなり、2.0μm未満の場合は曲げ損失が劣化する。また、b/aは2.1〜4.0とされる。この範囲外の場合はサイドコア2、12を設けた効果が得られない。cはc/aの値によって異なるが、6.0〜10.0μmとされる。10.0μmをこえると波長分散の絶対値が小さくなり、6.0μm未満の場合は曲げ損失が劣化する。また、c/aは2.8〜5.0とされる。この範囲外の場合はリングコア13を設けた効果が得られない。
【0037】
図4〜図7は、W型屈折率分布形状において、使用波長1.55μmにおいて、それぞれΔ2を−0.30%、−0.40%、−0.45%、−0.50%に固定し、bとb/aを変化させたときの波長分散と分散スロープおよび曲げ損失の関係を示したグラフである。Δ1は全て2.3%である。
グラフ中に示されている直線Sは、使用波長1.55μmにおいて、この分散補償光ファイバが1.3μm帯シングルモード光ファイバの波長分散を零に補償できる長さで、分散スロープを100%補償できるときの波長分散と分散スロープとの関係を示しており、この直線Sに近い程理想的な補償効果が得られる。
【0038】
また、グラフ中にはb/aの比率を一定としてbの値を変化させたときの点が、b/aの比率ごとにまとめて示されている。
例えば図4中のb/a=2.5を示す□は、bを2.4〜3.1μmの範囲で、0.1μm間隔で変化させた際の分散スロープと波長分散の値を示している。bの値が小さくなるにしたがって波長分散の絶対値が大きくなる傾向があるため、このグラフ中の□のうち、最も波長分散の絶対値が小さいものは、bを前記範囲の上限値付近に設定したときの値を示し、最も波長分散の絶対値が大きいものは、bを前記範囲の下限値付近に設定したときの値を示している。
【0039】
また、曲げ損失はグラフ中に曲線、あるいは数値で示されている。
曲げ損失は等高線状になっており、波長分散の絶対値が大きくなるにしたがって大きくなる傾向がある。
例えば、図4のグラフより、b/aを4.0〜4.5の範囲にすると、bが4μm付近のときに、波長1550nmにおいて波長分散が−100〜−120ps/nm/km、分散スロープが−0.3ps/nm2/kmの値をとり、絶対値の大きな負の波長分散と、負の分散スロープとを備えた分散スロープ補償型の分散補償光ファイバが得られることがわかる。
【0040】
本発明の分散補償光ファイバを設計するにおいては、使用波長帯のうちの最も長い波長を使用波長とし(長波長の方が曲げ損失が大きくなるので、より安全サイドで計算する)、図4〜6に示したグラフを作成し、波長分散と分散スロープとの関係から、その使用波長帯におけるΔ2とb/aの好ましい範囲を決定するとともに、曲げ損失について40dB/m以下の値が得られる条件を決定する。
【0041】
使用波長帯の波長幅が通常の波長多重伝送で用いられる20〜40nm程度であれば、実際の設計時には、使用波長帯の範囲内の任意の値、例えば使用波長帯の上限値、または中心値で分散スロープが十分に補償されていれば、使用波長帯における波長毎の波長分散のばらつきを抑制することができる。
好ましくは使用波長帯の範囲の中心の値についてこのようなグラフを作成し、この波長において条件を満足する設計条件を求める。曲げ損失に関しては使用波長帯の上限値での値も確認すると好ましい。
図2に示したセグメントコア型屈折率分布形状においても同様である。セグメントコア型屈折率分布形状の場合は、特にAeffについてもシミュレーションを行い、20μm2 以上の値が得られるように設計すると好ましい。
【0042】
なお、使用波長帯や伝送用のシングルモード光ファイバの波長分散および分散スロープによって、分散補償光ファイバに要求される波長分散と分散スロープの値が異なるため、本発明の分散補償光ファイバにおいては、一概にΔ2、Δ12、Δ13、a、b、cおよびb/a、c/aの好ましい数値範囲を定めることは困難である。
よって、本発明においては、使用波長帯における波長分散、分散スロープの補償率および曲げ損失の値を限定することによって発明を特定することとした。
【0043】
【実施例】
以下、本発明を実施例を示して詳しく説明する。
(比較例1)
図1に示したW型屈折率分布形状を備えた分散補償光ファイバを製造した。
まず、VAD法によってGeO2添加コアSiO2クラッド(クラッド径/コア径=4.0)構造をもつ円柱状の多孔質体を作製した。ただし、ここでいうコア、クラッドは、実際の分散補償光ファイバにおけるコアとクラッドに対応したものではなく、2層構造の各層を示す便宜的な名称である。つまり、中心の部分をコア(センタコア1となる部分)、その外周上の部分をクラッド(サイドコア2となる部分)と称している。
【0044】
この多孔質体を、およそ1000℃の雰囲気において、Heと塩素系ガスで脱水処理し、その後、He5l/min SiF41l/minの雰囲気でフッ素添加および透明ガラス化を同時に行ってロッドとした。
このロッドを延伸してコア母材とし、その周りにクラッド用のSiO2からなる多孔質体を外付けし、およそ1000℃の雰囲気において、Heと塩素系ガスで脱水処理し、さらにHe雰囲気で透明ガラス化して、外径50mmの円柱状のファイバ母材とした。
【0045】
そして、このファイバ母材を線引きして、外径125μmの分散補償光ファイバを製造した。このとき線引き速度は300m/min、線引張力は400g、加熱温度は1850℃とした。この分散補償光ファイバは強度が不十分で、線引き時に断線が生じた。また、得られた分散補償光ファイバにおいては、1%の伸びを与えたプルーフ試験において5km以上の分散補償光ファイバを得ることができなかった。
【0046】
(実施例1)
比較例1と同様にしてファイバ母材を製造した。
そして、このファイバ母材を線引きして、外径125μmの分散補償光ファイバを製造した。このとき線引き速度は300m/min、線引張力は300g、加熱温度は1950℃とした。
この分散補償光ファイバの1.55μmにおける光学特性を表1に示した。なお、コア半径(サイドコア2の半径)bは4.12μmであった。
また、表中のスロープ補償率とは、代表的な1.3μm帯シングルモード光ファイバ(波長分散+17ps/nm/km、分散スロープ+0.060ps/nm2/km)に対するスロープ補償率である。
【0047】
【表1】
【0048】
(実施例2)
図1に示したW型屈折率分布形状を備えた分散補償光ファイバを製造した。
まず、実施例1と同様にして多孔質体を作製した。
この多孔質体を、およそ1000℃の雰囲気において、Heと塩素系ガスで脱水処理し、その後、He3l/min SiF4 2l/minの雰囲気でフッ素添加および透明ガラス化を同時に行ってロッドを製造した。
【0049】
このロッドを延伸してコア母材とし、その周りにクラッド用のSiO2からなる多孔質体を外付けし、およそ1000℃の雰囲気において、Heと塩素系ガスで脱水処理し、さらに、He6l/min SiF4 0.1cc/minの雰囲気でフッ素添加および透明ガラス化を同時に行って、外径50mmの円柱状のファイバ母材とした。
このファイバ母材のクラッドとなる部分の屈折率は、純粋石英に対して、マイナス0.08%であった。
【0050】
そして、このファイバ母材を線引きして、外径125μmの分散補償光ファイバを製造した。このとき線引き速度は300m/min、線引張力は250g、加熱温度は2000℃とした。
この分散補償光ファイバの1.55μmにおける光学特性を表2に示した。なお、コア半径bは4.12μmであった。
また、表中のスロープ補償率とは、実施例1と同様に代表的な1.3μm帯シングルモード光ファイバ(波長分散+17ps/nm/km、分散スロープ+0.060ps/nm2/km)に対するスロープ補償率である。
【0051】
【表2】
【0052】
(実施例3)
図1に示したW型屈折率分布形状を備えた分散補償光ファイバを製造した。
まず、VAD法によって、GeO2添加コアSiO2クラッド(クラッド径/コア径=4.0)構造をもつ円柱状の多孔質体を作製した。
この多孔質体を、およそ1000℃の雰囲気において、Heと塩素系ガスで脱水処理し、その後、He 2l/min SiF4 3l/minの雰囲気で、フッ素添加および透明ガラス化を同時に行ってロッドを形成した。
【0053】
このロッドを延伸してコア母材とし、その周りにクラッド用のSiO2からなる多孔質体を外付けし、およそ1000℃の雰囲気において、Heと塩素系ガスで脱水処理し、さらに、He 5l/min SiF4 20cc/minの雰囲気でフッ素添加および透明ガラス化を同時に行って、外径50mmの円柱状のファイバ母材とした。
このファイバ母材のクラッドとなる部分の屈折率は、純粋石英に対してマイナス0.2%であった。
【0054】
そして、このファイバ母材を線引きして、外径125μmの分散補償光ファイバを製造した。このとき線引き速度は300m/min、線引張力は200g、加熱温度は2050℃とした。
この分散補償光ファイバの1.55μmにおける光学特性を表3に示した。なお、コア半径bは4.12μmであった。
また表中のスロープ補償率とは、実施例1と同様に代表的な1.3μm帯シングルモード光ファイバ(波長分散+17ps/nm/km、分散スロープ+0.060ps/nm2/km)に対するスロープ補償率である。
【0055】
【表3】
【0056】
これらの実施例1〜3においては、クラッドにおけるフッ素の添加量以外は同じ条件で分散補償光ファイバを製造した。上述の結果より、波長分散、分散スロープの補償効果はいずれも同等であったが、クラッドのフッ素の添加量が多いほど、伝送損失が小さい結果となった。
したがって、クラッドをドーパントを添加した石英ガラスから形成することによって、良好な伝送特性が得られ、長距離伝送を行うシステムに適した分散スロープ補償型の分散補償光ファイバを提供できることが明らかとなった。
なお、いずれの分散補償光ファイバも、それぞれの線引きの条件では、機械的な強度に問題はなかった。
【0057】
(比較例2)
図2に示したセグメントコア型屈折率分布形状を備えた分散補償光ファイバを製造した。
まず、実施例1と同様にして多孔質体を製造した。ただし、クラッド径/コア径=3.0とした。
この多孔質体をおよそ1000℃の雰囲気においてHeと塩素系ガスで脱水処理し、その後、He5l/min SiF4 1l/minの雰囲気でフッ素添加および透明ガラス化を同時に行った。このロッドを延伸してコア母材とし、その周りにリングコア部用とクラッディング用のSiO2 −GeO2とSiO2からなる多孔質体をそれぞれ外付けし、およそ1000℃の雰囲気においてHeと塩素系ガスで脱水処理し、さらに、He雰囲気で透明ガラス化して中間母材を作製した。さらにSiO2からなる多孔質体を外付けし、およそ1000℃の雰囲気においてHeと塩素系ガスで脱水処理し、さらに、He雰囲気で透明ガラス化して、外径50mmのファイバ母材を得た。
【0058】
そして、このファイバ母材を線引きして、外径125μmの分散補償光ファイバを製造した。このとき線引き速度は300m/min、線引張力は300g、加熱温度は1950℃とした。
この分散補償光ファイバの1.55μmにおける光学特性を表4に示した。なおコア半径(リングコア13の半径)cは7.0μmであった。
また、表中のスロープ補償率とは、代表的な1.3μm帯シングルモード光ファイバ(波長分散+17ps/nm/km、分散スロープ+0.060ps/nm2/km)に対するスロープ補償率である。
【0059】
【表4】
【0060】
(実施例4)
比較例2と同様にして多孔質体を製造した。
この多孔質体を、およそ1000℃の雰囲気においてHeと塩素系ガスで脱水処理し、その後、HeとSiF4流量を所望の比屈折率差が得られる雰囲気で、フッ素添加および透明ガラス化を同時に行ってロッドを製造した。
【0061】
このロッドを延伸してコア母材とし、その周りにリングコア部用、およびクラッド用のSiO2−GeO2、SiO2からなる多孔質体をそれぞれ外付けし、およそ1000℃の雰囲気において、Heと塩素系ガスで脱水処理した。その後、He 5l/min、SiF4 200cc/minの雰囲気で、フッ素添加および透明ガラス化を同時に行った。
さらにSiO2からなる多孔質体を外付けし、およそ1000℃の雰囲気においてHeと塩素系ガスで脱水処理し、さらに、He5l/min SiF4 200cc/minの雰囲気でフッ素添加および透明ガラス化を同時に行って、外径50mmのファイバ母材を得た。
このファイバ母材のクラッドとなる部分の屈折率は、純粋石英に対してマイナス0.2%であった。
【0062】
そして、このファイバ母材を線引きして、外径125μmの分散補償光ファイバを製造した。このとき線引き速度は300m/min、線引張力は200g、加熱温度は2050℃とした。
この実施例4においては、同様の方法で構造パラメータの異なる3種の分散補償光ファイバを製造した。各々の構造パラメータと、1.55μmにおける光学特性を表5に示した。なおコア半径cは7.0〜7.8μmであった。
また、表中のスロープ補償率とは、代表的な1.3μm帯シングルモード光ファイバ(波長分散+17ps/nm/km、分散スロープ+0.060ps/nm2/km)に対するスロープ補償率である。
【0063】
【表5】
【0064】
クラッドを純粋石英ガラスから形成した比較例2の分散補償光ファイバと比べて、実施例4の分散補償光ファイバは、いずれも伝送損失が小さかった。
したがって、クラッドをドーパントを添加した石英ガラスから形成することによって、良好な伝送特性が得られ、長距離伝送を行うシステムに適した分散スロープ補償型の分散補償光ファイバを提供できることが明らかとなった。
なお、いずれの分散補償光ファイバも、それぞれの線引きの条件では、機械的な強度に問題はなかった。
【0065】
【発明の効果】
以上のように、本発明の分散補償ファイバは、全ての部分、特にクラッドをドーパントを添加した石英ガラスから形成することにより、センタコアとクラッドとの軟化温度および硬化温度の差を小さし、線引き時に線引き温度のおける粘度差を小さくすることができる。
その結果、線引き後にセンタコアなどに残留する応力を小さくすることができ、実用可能な機械的な強度が得られる温度で線引きしても、伝送損失の劣化を低減することができ、分散スロープ補償型の分散補償光ファイバであり、かつ低損失のものを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】分散補償光ファイバの屈折率分布形状の一例として、W型屈折率分布形状を示したグラフである。
【図2】分散補償光ファイバの屈折率分布形状の一例として、セグメントコア型屈折率分布形状を示したグラフである。
【図3】セグメントコア型屈折率分布形状の分散補償光ファイバにおいて、構造パラメータを変化させたときの波長分散とAeffの関係を示したグラフである。
【図4】Δ2を−0.30%に固定した場合において、bとb/aを変化させたときの波長分散と分散スロープと、曲げ損失の関係を示したグラフである。
【図5】Δ2を−0.40%に固定したときの図2と同様のグラフである。
【図6】Δ2を−0.45%に固定したときの図2と同様のグラフである。
【図7】Δ2を−0.50%に固定したときの図2と同様のグラフである。
【図8】石英系光ファイバの代表的な線引き温度付近である1900℃における粘度の測定例を示したグラフである。
【符号の説明】
1、11…センタコア、2、12…サイドコア、13…リングコア、4、14…クラッド。
Claims (2)
- センタコアと、このセンタコアの外周上に設けられ、かつこのセンタコアよりも低屈折率のサイドコアと、このサイドコアの外周上に設けられ、このサイドコアよりも高屈折率で、かつ前記センタコアよりも低屈折率のリングコアと、このリングコアの外周上に設けられ、かつこのリングコアよりも低屈折率で、前記サイドコアよりも高屈折率のクラッドとからなるセグメントコア型屈折率分布形状を備え、
前記センタコアと、前記サイドコアと、前記リングコアと、前記クラッドが、それぞれゲルマニウム、アルミニウム、リン、フッ素から選ばれる少なくとも1種または2種以上のドーパントを添加した石英ガラスからなり、
前記センタコア、前記サイドコア、および前記リングコアにおいて、半径と、前記クラッドに対する比屈折率差を、それぞれ(a、Δ11)、(b、Δ12)、(c、Δ13)としたとき、Δ11が0.65〜1.4%、Δ12が−0.3〜−0.5%、Δ13が0.5〜0.6%、b/aが2.1〜4.0、c/aが2.8〜5.0であり、
1.53〜1.63μmから選択された使用波長帯において、有効コア断面積が20.1μm 2 以上、伝送損失が0.23〜0.40dB/km、曲げ損失が38.5dB/m以下、波長分散が−89〜−18.4ps/nm/kmであり、かつ、実質的にシングルモード伝搬可能なカットオフ波長を有し、
前記使用波長帯よりも短波長の零分散波長を有するシングルモード光ファイバの波長分散を零に補償できる長さで、このシングルモード光ファイバを補償したときの分散スロープの補償率が、80〜120%であり、この分散スロープの補償率は、波長分散が17ps/nm/km、分散スロープが0.060ps/nm2 /kmである1.3μm帯シングルモードファイバに対するものであることを特徴とする分散補償光ファイバ。 - 請求項1に記載の分散補償光ファイバにおいて、クラッドの純粋石英ガラスを基準とした比屈折率差が−0.05〜−0.4%であることを特徴とする分散補償光ファイバ。
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