JP3829025B2 - 弾性支持装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、互いに相対変位可能に設けられた二つの部材間に配置される弾性支持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
互いに相対変位可能に設けられた二つの部材間に配置される弾性支持装置として、例えば、図44に示されるように、環状の被支持部121bを有する第1部材120と、該第1部材120の板状被支持部121bに略直交する軸状の被支持部111を有し第1部材120に対して少なくとも上記軸状被支持部111の軸線方向に相対変位可能な第2部材110との間に配置される弾性支持装置129は、従来、公知である。
この弾性支持部材129には、略同一軸線上に配列されて少なくとも該軸線方向にそれぞれ弾性変位可能な第1及び第2の中空の弾性支持部129a及び129bと、これら両弾性支持部129a及び129b間に一体的に設けられて上記第1部材120の板状被支持部121bに装着される中間装着部129cとが設けられている。
【0003】
上記弾性支持部材129は、例えばゴム等の所定の弾性特性を備えた材料で製作されており、上記中間装着部129cは両弾性支持部129a,129b間をネック状に絞って形成したものである。
この中間装着部129cは、第1部材120の板状被支持部121に設けられた穴部121hに、その外周部を嵌合させて装着される。
【0004】
上記第1部材120と第2部材110とは、第2部材110の軸状被支持部111が、第1部材120の上記板状被支持部121の穴部121hを挿通するように組み合わされており、上述のようにして中間装着部129cを板状被支持部121に装着することにより、第2部材110の軸状被支持部111が、第1及び第2の弾性支持部129a及び129bの中空内部を挿通した状態で、弾性支持装置129が第1及び第2部材120及び110間に装着される。このとき、第2弾性支持部129bは、上記中間装着部129cと第1部材110のベース面110fとの間に位置することになる。一方、第1弾性支持部129aは、その片側(図44における上側)がフリーで、拘束するものが無い状態である。
【0005】
そして、その後、軸状被支持部111の先端に平板状のエンドプレート112が固定される。これにより、弾性支持装置129は、第1部材110のベース面110fとエンドプレート112との間に挟み込まれてその軸線方向の全長が規制される。また、第1弾性支持部129aは、中間装着部129cと上記エンドプレート112との間に位置することとなる。
このエンドプレート112は、第1弾性支持部129aが圧縮される方向の荷重を受けた際の受圧板(当て板)としての作用と、第1部材120の板状被支持部121が第1部材110のベース面110fから離間する方向の大きな変位が生じた際における弾性支持装置129の抜け止め作用とをなすもので、通常、ピン部材やネジ部材(不図示)を用いて軸状被支持部111の先端に固定される。
【0006】
以上の構成において、第1部材120と第2部材110との相対変位を生じさせる加振力あるいは衝撃荷重が作用した場合には、上記第2弾性支持部129bの弾性範囲内での圧縮変形に伴なう緩衝作用によって、第1部材120の板状被支持部121が第1部材110のベース面110fに近づく向きの(図44における下向きの)振動成分あるいは衝撃荷重を吸収することができる。一方、第1部材120の板状被支持部121が第1部材110の軸状被支持部111の先端のエンドプレート112に近づく向きの(図44における上向きの)振動成分あるいは衝撃荷重については、上記第1弾性支持部129aの弾性範囲内での圧縮変形に伴なう緩衝作用によって吸収することができる。すなわち、入力荷重の向きによって各弾性支持部129a,129bがそれぞれ単独で緩衝作用を行うようになっていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の弾性支持装置129では、中間装着部129cを板状被支持部121に装着することにより、弾性支持装置129を第1及び第2部材120及び110間に装着した後に、軸状被支持部111の先端に別体のエンドプレート112を固定する必要がある。このため、弾性支持装置の組付作業が煩わしく、また、部品点数および組付工数が増加するので、製造コストを抑制する上でも不利である。
【0008】
また、上記従来の弾性支持装置129の場合、最終的な組付状態では、例えば樹脂製あるいは鋼製の第1部材110のベース面110fとエンドプレート112との間に、例えばゴム製の弾性支持装置129を挟み込んでその軸線方向の全長を規制することになる。このため、ある程度以上の温度上昇があった場合には、軸状被支持部111を含んで第1部材110及びエンドプレート112の材料と弾性支持装置129の材料との熱膨脹係数の違いに基づいて、弾性支持装置129の緩衝特性が変化するという問題がある。
【0009】
更に、上記従来の弾性支持装置129では、入力荷重の向きによって各弾性支持部129a,129bがそれぞれ単独で緩衝作用を行うようになっているので、一方向に大きな荷重が作用することが想定される場合には、当該方向の荷重あるいは振動成分を受け持つ側の弾性支持部を特に大きく設定する、或いは当該弾性支持部にスプリングを組み込んで助勢する等の対策を講じる必要があり、弾性支持装置の大型化および構造の複雑化を招くという問題があった。
【0010】
また、更に、上記従来の弾性支持装置129では、軸状被支持部111の先端に平板状のエンドプレート112が固定されており、このエンドプレート112と第1部材110のベース面110fとの間に弾性支持装置129が挟み込まれているので、第1部材120と第2部材110とが相対的に回動する際には、スムースな回動動作を行いにくいという難点もあった。
【0011】
そこで、この発明は、組付作業が容易で、構造も簡単かつコンパクトで、しかも昇温時でも安定した緩衝特性を得ることができ、また、回動動作にも良好に対応することができる弾性支持装置を提供することを、基本的な目的としてなされたものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
このため、本願の請求項1に係る発明(以下、第1の発明という)は、板状の被支持部を有する第1部材と、該第1部材の板状被支持部に支持される軸状の被支持部を有し第1部材に対して少なくとも回動可能で上記軸状被支持部の軸線方向に相対変位可能な第2部材との間に配置される弾性支持装置であって、同一軸線上に配列されて少なくとも該軸線方向にそれぞれ弾性変位可能な第1及び第2の中空の弾性支持部と、上記両弾性支持部間に一体的に設けられて上記第1部材の板状被支持部に装着される第1装着部と、上記第1の弾性支持部の端末側に一体的に設けられ、第1及び第2の弾性支持部の中空内部を挿通する上記第2部材の軸状被支持部に装着される第2装着部と、を備え、該第2装着部は上記第2部材の軸状被支持部の先端部を覆うようにして回動自在に装着されており、この装着状態で上記軸状被支持部の先端部に係合しその先端方向への上記第2装着部の移動を規制する規制部が、上記第1の弾性支持部および第2装着部の少なくとも何れか一方に一体的に設けられ、かつ、上記第1の弾性支持部の圧縮方向に上記第1部材と上記第2部材とが相対変位する際には、上記第1の弾性支持部が圧縮変形し、また、上記第2の弾性支持部の圧縮方向に上記第1部材と上記第2部材とが相対変位する際には、上記第2の弾性支持部が圧縮変形するとともに上記第1の弾性支持部が伸び方向に変形する、ことを特徴としたものである。
この構成においては、上記規制部の作用により、弾性支持装置の装着後に、抜け止め用および受圧板としてのエンドプレートを軸状被支持部の先端に固定する必要がなくなる。
【0013】
また、本願の請求項2に係る発明(以下、第2の発明という)は、上記第1の発明において、上記第2部材の軸状被支持部の先端部は、断面の外縁形状が円形の一部を成すように形成されるとともに、上記第2装着部の内縁形状が円形の一部を成すように形成されていることを特徴としたものである。
この構成においては、第1部材と第2部材との相対的な回動動作が可能になる。
【0014】
更に、本願の請求項3に係る発明(以下、第3の発明という)は、上記第2の発明において、上記第2装着部の内縁部には、その円形の中心を指向する複数の突起部が設けられていることを特徴としたものである。
この構成においては、上記突起部の作用により、第1部材と第2部材との相対的な回動動作がよりスムースなものになる。
【0015】
また、更に、本願の請求項4に係る発明(以下、第4の発明という)は、上記第1〜第4のいずれか一の発明において、上記第2部材が光ディスク装置の装置本体の基部を構成する装置ベースであり、上記第1部材は、上記装置ベースと別体で該装置ベースに対し上下方向へ移動可能または回動可能に支持された部品搭載用ベースであることを特徴としたものである。
この構成においては、かかるタイプの光ディスク装置について、部品搭載用ベースを装置ベースに対して浮動可能な状態で支持することが可能になる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。まず、本実施の形態に係る弾性支持装置が組み込まれた光ディスク装置の構成を説明する。
図1は本実施の形態に係る弾性支持装置が組み込まれた光ディスク装置(以下、ディスク装置あるいは単に装置という。)の組立状態を示す全体斜視図、図2はこのディスク装置の分解斜視図、また、図3および図4はこの図2の斜視図の一部をそれぞれ拡大して示す説明図である。
これらの図に示すように、本実施の形態に係るディスク装置1は、装置1の主要な構成要素に対する取付基部としての装置ベース10と、装置1の駆動機構の大部分を支持する支持部材としてのトラバースベース20とを備えている。上記装置ベース10はその全体形状が平面視で略矩形フレーム状に形成され、図5に示すように、該装置ベース10の内側開口部10Hに上記トラバースベース20が組み付けられている。
【0017】
上記ディスク装置1では、例えばコンパクトディスク(所謂CD)とされた情報記録媒体としてのディスクを載せて移送するトレイ55が、装置ベース10のフレームに沿って図1及び図2における斜め方向に往復移動する。すなわち、装置1内にあるディスクを外部へ引き出す際にはトレイ55が図1及び図2における左斜め下方に移動し、ディスクを外部から装置1内に引き込む(挿入する)際にはトレイ55が図1及び図2における右斜め上方に移動する。
本実施の形態においては、ディスクが(つまりトレイ55が)装置1内から引き出される側(図1及び図2における左斜め下側)をディスク装置1の前側と称し、この逆にディスクが挿入される側(図1及び図2における右斜め上側)をディスク装置の後側と称する。また、図1及び図2における上側及び下側を、装置1の上側及び下側というものとする。
【0018】
上記装置ベース10の後部(図1及び図2における右斜め上側部分)には左右一対のトラバースベース支持軸11が立設されている。上記トラバースベース20の後端の両角部には切欠部21がそれぞれ形成されており、この切欠部21に例えばゴム製の弾性を有するブッシュ29(フローティングブッシュ)がそれぞれ装着されている。
そして、これらフローティングブッシュ29を上記トラバースベース支持軸11にそれぞれ嵌合させることにより、トラバースベース20の後部が、上記左右のトラバースベース支持軸11の先端部の中心を結ぶ水平な直線Lh(図5参照)を中心にして、装置ベース10に対し上下方向へ回動可能に支持されている。
【0019】
また、トラバースベース20の後部は、左右のフローティングブッシュ29を介して、装置ベース10に対し一定範囲内(つまり、上記フローティングブッシュ29の弾性範囲内)で浮動可能な状態(フローティング状態)で支持されている。尚、上記図5においては、トラバースベース支持軸11及び切欠部21を明瞭に表示するために、左右のフローティングブッシュ29の図示は省略されている。
尚、上記装置ベース10が本願請求項に記載した「第2部材」及び「装置ベース」に相当し、トラバースベース20が本願請求項に記載した「第1部材」及び「部品搭載用ベース」に相当している。また、上記フローティングブッシュ29が本願請求項に記載した「弾性支持装置」に相当している。
【0020】
上記フローティングブッシュ29は、図8に詳しく示されるように、一端が閉じられ他端が開口した中空状に一体形成され、その長手方向に配列された(つまり、略同一軸線上に配列された)比較的大径の第1及び第2の緩衝部29a及び29bと、両緩衝部間に位置する比較的小径の装着部29c(第1装着部)とを備えている。上記第1及び第2の緩衝部29a及び29bは、それぞれ、少なくともその軸線方向に弾性変位可能であり、より好ましくは該軸線に直交する方向にもある程度弾性変位可能である。
上記第1装着部29cは、上記両緩衝部29a,29b間がネック状に絞られて形成されており、本フローティングブッシュ29によってフローティング支持されるべき第1部材としてのトラバースベース20に装着される部分である。具体的に説明すれば、該トラバースベース20の後端角部の切欠部21には、所定厚さのブッシュ取付板21bが設けられており、この取付板21bに形成された穴部21hに、上記第1装着部29cの外周部を嵌合させることにより、フローティングブッシュ29がトラバースベース20に装着される。
【0021】
また、上記第1緩衝部29aの端末側には、フローティングブッシュ29の内部空間を閉塞する第2装着部29dが一体的に形成されている。この第2装着部29dは、本フローティングブッシュ29によってフローティング支持されるべき第2部材としての装置ベース10に装着される部分である。
具体的には、上記第1及び第2の緩衝部29a及び29bの中空内部に上記トラバースベース支持軸11を挿通させた上で、該トラバースベース支持軸11の先端部11dを覆うようにして上記第2装着部29dが装着される。
【0022】
上記トラバースベース20を装置ベース10に組み付けた状態では、装置ベース10のトラバースベース支持軸11はトラバースベース20のブッシュ取付板21bに略直交しており、トラバースベース20は装置ベース10に対して少なくともトラバースベース支持軸11の軸線方向に弾性変位可能であり、より好ましくは該軸線に直交する方向にもある程度弾性変位可能である。
上記トラバースベース支持軸11の先端部11dは、縦断面の外縁形状が円形の一部を成すように構成され、この円の直径が軸部11jの幅よりも大きくなるように設定されている。そして、この先端部11dに装着されるフローティングブッシュ29の第2装着部29dも、その縦断面の内縁形状が円形の一部を成すように構成されている。
【0023】
この第2装着部29dの下部または第1緩衝部29aの上部もしくは両者の間(本実施の形態では、第2装着部29dと第1緩衝部29aの連結部分)に、トラバースベース支持軸11の先端部11dに(具体的には、その付け根部分に)係合して第2装着部29dがトラバースベース支持軸11の先端方向へ移動することを規制する規制部29fが設けられている。
この規制部29fは、第2装着部29dと第1緩衝部29aの連結部分の内周部を内側に張り出すように形成されており、その内径寸法は、トラバースベース支持軸11の幅寸法よりも大きく、かつ、先端部11dの外形寸法よりも小さくなるように設定されている。
【0024】
一方、上記第2緩衝部29bの端末側は開口しており、この開口部から上記トラバースベース支持軸11がフローティングブッシュ29内に挿入される。第2緩衝部29bの端末部は、装置ベース10のブッシュ支持面10fに対面している。
そして、より好ましくは、トラバースベース20の後部がフローティングブッシュ29を介して装置ベース10に組み付けられ、トラバースベース20及びそれに搭載された各種部品類の重力のみが作用している標準状態では、第2緩衝部29bの端末部は、ある程度の弾性力をもって上記ブッシュ支持面10fに当接している。
【0025】
尚、上記トラバースベース20側のブッシュ取付板21b,装置ベース10側のトラバースベース支持軸11及びその先端部11dが、それぞれ、本願の請求項に記載した「板状(の)被支持部」,「軸状(の)被支持部」及びその「先端部」に相当している。
また、上記第1及び第2の緩衝部29a及び29b,第1及び第2の装着部29c及び29d並びに規制部29fが、それぞれ、本願の請求項に記載した「第1及び第2の弾性支持部」,「第1及び第2の装着部」並びに「規制部」に相当している。
【0026】
以上の構成において、ディスク装置1の使用時あるいは製作時などにおいて装置1に振動あるいは衝撃が加わり、装置ベース10とトラバースベース20との相対変位を生じさせる加振力あるいは衝撃荷重が作用し、第1緩衝部29aが圧縮される方向(つまり、トラバースベース20の後部が上方に変位し、ブッシュ取付板21bがトラバースベース支持軸11の先端部11dに近づく方向)の荷重が作用した際には、フローティングブッシュ29の上記規制部29fがトラバースベース支持軸11の先端部11dの付け根部分に係合しているので、当該荷重は規制部29fを介してトラバースベース支持軸11の先端部11dによって受け止められる。
【0027】
また、トラバースベース20の後部が上方に大きく変位し、トラバースベース20側のブッシュ取付板21bがトラバースベース支持軸11の先端側へ移動する方向の大きな変位が生じた場合には、上記規制部29fがトラバースベース支持軸11の先端部11dの付け根部分に係合し、その先端方向への第2装着部29dの移動が規制されることにより、フローティングブッシュ29のトラバースベース支持軸11からの抜脱が防止される。
【0028】
従って、従来のように、受圧板としての作用と抜け止め作用とを行わせるためのエンドプレート112(図44参照)を別途に設ける必要は無い。すなわち、フローティングブッシュ29をトラバースベース20と装置ベース10との間に装着した後に、トラバースベース支持軸11の先端に別体のエンドプレート112を固定する必要が無くなり、従来に比して、弾性支持装置としてのフローティングブッシュ29の組付作業が簡略化され、また、部品点数および組付工数が削減できるので、製造コストを抑制する上でも有利になる。
【0029】
また、上記第2装着部29dはトラバースベース支持軸11の先端部11dを覆うようにして装着されているので、フローティングブッシュ29の片側(上記第2装着部29dが設けられる側)はフリーで拘束するものは無い。従って、従来、最終的な組付状態において、第1部材110のベース面110fとエンドプレート112との間に挟み込まれてその軸線方向の全長が規制されていた場合に比べて、弾性支持装置としてのフローティングブッシュ29とそれ以外の部材(例えば樹脂製のブッシュ取付板21d及びトラバースベース支持軸11)との熱膨脹係数の違いによる昇温時の軸線方向の長さ変化の差を小さくすることができ、昇温時でも安定した緩衝特性を得ることができる。
【0030】
上述のように、端末側に第2装着部29dが設けられた第1緩衝部29aが圧縮される方向(つまり、トラバースベース20の後部が上方に変位し、ブッシュ取付板21bがトラバースベース支持軸11の先端部11dに近づく方向)の荷重が作用した際には、この第1緩衝部29aの弾性範囲内での圧縮変形に伴なう緩衝作用により、同方向の振動成分あるいは衝撃荷重が有効に吸収される。換言すれば、この場合には、第1緩衝部29aの弾性範囲内での圧縮変形に伴なう緩衝作用だけが得られる。
【0031】
これに対して、端末側に第2装着部29dが設けられていない第2緩衝部29bが圧縮される方向(トラバースベース20の後部が下方に変位し、上記ブッシュ取付板21bがトラバースベース支持軸11の先端部11dから遠ざかる方向)の荷重が作用した際には、第2装着部29dの頂部がトラバースベース支持軸11の先端部11dによって突き上げられた状態で、上記第1緩衝部29aがその弾性範囲内で伸びるように変形する。
従って、第2緩衝部29bの圧縮変形に伴なう緩衝作用に加えて、第1緩衝部29aの伸び変形に伴なう緩衝作用によっても振動あるいは衝撃吸収を行うことができ、非常に効果的に同方向の振動成分あるいは衝撃荷重を吸収することができる。
【0032】
更に、上記第2装着部29dは、例えばゴム製とされたフローティングブッシュ29の一部であるので弾性に富んでおり、装置ベース10とトラバースベース20との相対移動を生じさせる加振力が作用した場合には、上記第2装着部29dの弾性によって、振動吸収効果および騒音発生の抑制効果を更に高めることができる。
尚、フローティングブッシュ29の上記第2装着部29dは、必ずしもフローティングブッシュ29の内部空間の一端側(上側)を完全に閉塞するものでなくても良い。つまり、上記第2装着部29dは、トラバースベース支持軸11の先端部11dからの突き上げ荷重を受けた際に該先端部11dが突き抜けることがない範囲で開口を有していても良い。
【0033】
以上のように、第2緩衝部29bが圧縮される方向については、第1緩衝部29aが圧縮される方向よりも大きな荷重に耐えることができる。この光ディスク装置1では、後で詳しく説明するように、ディスクの装置1内に対する出し入れ(つまり、アンローディングやローディング)する度に、トラバースベース20を、装置ベース10に対して、その後部を中心にして標準状態から下方に回動させる必要がある。従って、上側の第1緩衝部29aが圧縮される場合よりも、下側の第2緩衝部29bが圧縮される場合の方が遥かに多く、また、作用する荷重も大きい。
【0034】
従って、この光ディスク装置1のトラバースベース20と装置ベース10の間の弾性支持に適用した場合のように、フローティングブッシュ29の一方向に大きな荷重が作用することが想定される場合には、端末側に第2装着部29dの設けられていない上記第2緩衝部29bが圧縮される方向が荷重の作用する方向と一致するように設定することにより、簡単かつコンパクトな構造で容易に対応することができる。
この結果、従来、入力荷重の向きによって各弾性支持部129a,129b(図44参照)がそれぞれ単独で緩衝作用を行うようになっていた場合に比べて、一方向に大きな荷重が作用することが想定される場合でも、弾性支持装置の大型化および構造の複雑化を招くことなく、容易に対応することができるようになる。
【0035】
尚、上記標準状態において第2緩衝部29bの端末部が上記ブッシュ支持面10fに当接していることは、上記第2緩衝部29bによる振動吸収効果を得る上で、必ずしも必須の要件ではない。両者の間にある程度の隙間が生じていても、その隙間に相当する分だけ振動吸収性が低下するだけで、装置ベース10とトラバースベース20との相対移動量が上記隙間を越える場合には、その隙間を越える分に相当するだけ振動吸収効果を発揮することができる。
また、トラバースベース20の前後方向及び左右方向などのベース面に平行な振動成分は、フローティングブッシュ29の横方向における弾性範囲内での変形によって吸収される。
【0036】
上記トラバースベース支持軸11の先端部11dは、前述のように、縦断面の外縁形状が円形の一部を成すように構成されており、これに装着されるフローティングブッシュ29の第2装着部29dも、その縦断面の内縁形状が円形の一部を成すように構成されている。
従って、上記第2装着部29dは(つまりフローティングブッシュ29全体も)、トラバースベース支持軸11の先端部11dの中心C11の周りにスムースに回動することができる。トラバースベース20が装置ベース10に対し上下方向へ回動する際の回動軸線Lh(図5参照)は、左右のトラバースベース支持軸11の先端部11dの中心C11を結ぶ直線である。
【0037】
また、より好ましくは、上記第2装着部29dの内周とトラバースベース支持軸11の先端部11dの外周との間には所定の隙間が設けられており、上記第2装着部29dには複数の突起部29eが形成されている。これら突起部29eは、第2装着部29dの内周の中心を(従って、装着状態ではトラバースベース支持軸11の先端部11dの中心C11を)指向している。
すなわち、フローティングブッシュ29の第2装着部29dは、上記突起部29eを介してトラバースベース支持軸11の先端部11dに装着されており、両者の間には一定の隙間が保持されているので、上記第2装着部29dのトラバースベース支持軸11の先端部11dに対する回動動作をよりスムースなものとすることができる。
【0038】
以上のように、フローティングブッシュ29が第1及び第2の緩衝部29a及び29b並びに第1及び第2の装着部29c及び29d、更には規制部29fを備えているので、トラバースベース20の全体の荷重を支え、かつ上下方向の抜け止め作用を行うとともに、有効に振動成分あるいは衝撃荷重を吸収することができ、省スペースにしかも安価で取り付けの簡単なフローティング装置を提供することが可能となる。また、回転中心部を備えたことで、他に回動中心を設けることなく、かつ正確に回動中心を確保できるのである。
【0039】
一方、図4及び図5から良く分かるように、装置ベース10の内側開口部10Hの前縁部分には、周縁形状が円形の一部をなす凹部12が形成されている。該凹部12の底面中央には枢支軸12sが立設されており、この枢支軸12sに略円筒状の歯車部材30(カムギヤ)の中央ボス部31が回転自在に嵌合されている。該カムギヤ30の底部と装置ベース10の凹部12の底面との間にはコイル状のバネ部材39(フローティングバネ)が介装されている。カムギヤ30は、その中央ボス部31が上記枢支軸12sに挿通され、この枢支軸12sの先端部に例えばゴム製の弾性を有するカラー部材38(フローティングカラー)を介してネジ部材37(ストップスクリュー)が螺着されている。
【0040】
つまり、カムギヤ30は、その上側が上記フローティングカラー38で当て止められ、下側が上記フローティングバネ39で支持され、両弾性部材38,39で上下から挟み込まれた状態で装置ベース10の凹部12内に収納されており、装置ベース10に対して一定範囲内(すなわち、上記フローティングカラー38及びフローティングバネ39の弾性範囲内)で浮動可能な状態(フローティング状態)で支持されている。
【0041】
また、上記フローティングブッシュ29及びフローティングカラー38の材質としては、上述のゴムに限定されるものではなく、例えば軟質の樹脂など、所定の弾性を有するものであれば、他の種々のものを用いることができる。
【0042】
上記カムギヤ30の外周部には、図24〜図29に詳しく示すように、上下方向の(つまり、カムギヤ30の長手方向軸線Lgに平行な)歯筋を有する歯部30g(外周歯部)が設けられるとともに、上下の水平溝部分33a,33cと斜め溝部分33bとを有するカム溝33が形成されている。
また、カムギヤ30の外周部には、歯部30gが刻まれていない欠け歯部34が設けられている。一方、トラバースベース20の前端部には、このカム溝33に摺動自在に係合する突起部20P(図2及び図3参照)が設けられており、トラバースベース20の前部は、この突起部20Pが上記カム溝33に係合することにより、カムギヤ30を介して装置ベース10に支持されている。
【0043】
すなわち、上記トラバースベース20は、図6及び図7に示すように、その後部がフローティングブッシュ29を介して、また、その前部がフローティングカラー38及びフローティングバネ39で支持されたカムギヤ30を介して、装置ベース10に対し一定範囲内(すなわち、上記フローティングブッシュ29, フローティングカラー38及びフローティングバネ39の弾性範囲内)で浮動可能な状態(フローティング状態)で支持されている。
【0044】
このように、上記トラバースベース20は、装置ベース10に対して、従来のように剛構造で(リジッドに)支持されるのではなく、上記各緩衝部材(フローティングブッシュ29, フローティングカラー38及びフローティングバネ39)の弾性範囲内で装置ベース10に対し浮動可能な状態で支持されているので、ディスク装置1に衝撃荷重が加わった場合あるいは振動入力があった場合でも、上記緩衝部材29,38及び39で衝撃あるいは振動を吸収することができ、これら衝撃荷重あるいは振動力が装置ベース10から直接的にトラバースベース20の各機構部品に作用することを防止できる。すなわち、衝撃や振動の作用に対するディスク装置1の耐久性を向上させることができるのである。
【0045】
また、トラバースベース20は上記緩衝部材29,38及び39の弾性範囲内で装置ベース10に対し浮動可能な状態で支持されているので、剛構造で(つまり、リジッド(rigid)に)支持されている場合に比べて、装置ベース10およびトラバースベース20にそれぞれ取り付けられた機構部品について、部品相互の位置関係を浮動可能な範囲で調節することができ、部品製作および組立作業の精度をある程度低く設定することが可能になり、生産性を高めることもできるようになる。
【0046】
上記トラバースベース20の下面側には、第1及び第2の2個の電動モータ3,4(例えば図2及び図3参照)と、これらモータ3,4を駆動制御する制御回路を備えた回路基板2とが固定されている。
一方、トラバースベース20の上面側には、ディスク9(図5〜図7参照)が上面に載置されるターンテーブル5が配置され、このターンテーブル5は第1モータ3(スピンドルモータ)の出力軸3s(図3参照)に連結されている。また、トラバースベース20の上面側には、ディスク9に対する情報信号の書き込み及び記録された情報信号の読み出しの少なくとも何れか一方を行うための光ピックアップ6が取り付けられるとともに、ディスク装置1を作動させるための種々の駆動機構が配置されている。
【0047】
以下、これら駆動機構について説明する。
図3及び図5から良く分かるように、上記トラバースベース20には、前後方向(図5では上下方向)に広がる開口部20Hが形成され、その左右両側には光ピックアップ6の前後方向への移動動作を案内する一対のピックアップガイド溝部22,23が位置している。尚、上記ターンテーブル5は、より好ましくは、これらピックアップガイド溝部22,23及び開口部20Hの前端部近傍もしくはそれよりも前方に位置している。
光ピックアップ6は、その左右の脚部6fが上記ピックアップガイド溝部22,23にそれぞれスライド自在に係合することにより、トラバースベース20に前後方向へ移動可能に支持されている。尚、上記開口部20Hには、光ピックアップ6と回路基板2とを電気的に接続する例えば可撓性の接続部材(例えばフレキシブルプリント配線板:不図示)が挿通している。
【0048】
上記一対のピックアップガイド溝部22,23のうち片側(図3及び図5における右側)のピックアップガイド溝部23の側方には、該ガイド溝部23と平行に伸長するレール部材24(ガイドレール)が配置され、該ガイドレール24にはラック部材40(送りラック)がその長手方向へスライド自在に係合している。この送りラック40には、光ピックアップ6の一端部(図3及び図5における右端部)がネジ部材49(図3参照)によって連結されている。そして、送りラック40がガイドレール24上をスライドすることにより、光ピックアップ6が、上記ガイド溝部22,23で案内されながら、前後方向へ往復移動できるようになっている。
【0049】
上記送りラック40は、図30〜図34に詳しく示すように、その片方の側部(図3及び図5における右側部)に略全長にわたるラック歯41(受動ラック部)が形成され、他方の側部にはその前側部分に所定長さのラック歯42(切換ラック部)が形成されている。
尚、送りラック40の裏面から突出する脚部40fはピックアップガイド溝部23に係合しており、送りラック40が後方(図5における上方へ)へ移動する際には、脚部40fが上記ガイド溝部23の後端壁部に当て止められることにより、送りラック40の後方への移動動作が規制されるようになっている。
【0050】
この送りラック40を駆動して光ピックアップ6を前後方向へ往復移動させるために、トラバースベース20には一群の歯車で構成される歯車列51(ラック駆動歯車列)が配設されている。
このラック駆動歯車列51は、図9〜図13に詳しく示すように、上記第2モータ4の出力軸4s(図3参照)に固着されたモータギヤ4Gと、該モータギヤ4Gと噛み合う大径の入力ギヤ52A(第1トラバース入力ギヤ)及びその上側に一体的に付設された小径の出力ギヤ52B(第1トラバース出力ギヤ)を有する第1トラバースギヤ52と、上記第1トラバース出力ギヤ52Bと噛み合う大径の入力ギヤ53A(第2トラバース入力ギヤ)及びその下側に一体的に付設された小径の出力ギヤ53B(第2トラバース出力ギヤ)を有する第2トラバースギヤ53とで構成されている。そして、上記第2トラバース出力ギヤ53Bが送りラック40の受動ラック部41と噛み合っている。
【0051】
上記第2モータ4が駆動されてモータギヤ4Gが例えば図9〜図13における反時計回り方向に所定の回転速度で回転すると、この回転が上記ラック駆動歯車列51により所定の減速比で減速して出力側に伝達され、最終の出力ギヤ53B(第2トラバース出力ギヤ)は減速された回転速度で反時計回り方向に回転する。
これにより、送りラック40は、予め設定された所定の送り速度でガイドレール24に沿って前方(図9〜図13における下方)に向かって移動する。第2モータ4が上記の場合と逆方向に回転駆動されると、送りラック40の移動方向も上記の場合と逆になる。
【0052】
このように、上記送りラック40は(従って、光ピックアップ6は)、第2モータ4の回転方向を正逆切り換えることによりその移動方向が切り換えられ、前後方向に往復移動できるようになっている。
尚、基本的には上記送りラック40とラック駆動歯車列51とで、光ピックアップ6をディスク9の内周側と外周側との間で往復動可能に移動させる光ピックアップ駆動機構が構成され、これが本願請求項に記載した「光ピックアップ駆動機構」に相当している。また、上記ピックアップガイド溝22,23及びガイドレール24が光ピックアップ6の駆動を助勢している。
【0053】
上記装置ベース10の前部には、トレイ55を、装置1の前面におけるトレイ55へのディスク着脱位置(アンローディング位置)と装置1の内部におけるターンテーブル5へのディスク着脱位置(ローディング位置)との間で往復移動させるトレイ駆動ギヤ56が配置されている。
尚、以下においては、このローディング位置およびアンローディング位置を、適宜、それぞれ「第1位置」および「第2位置」と称する。
【0054】
該トレイ駆動ギヤ56は、トレイ55の裏面に設けられたラック歯55g(トレイラック歯:図19〜図21参照)と噛み合う大径の出力ギヤ56Bと、この出力ギヤ56Bの下側に位置する小径の入力ギヤ56Aとを有している。このトレイ駆動ギヤ56は上記カムギヤ30の側方に位置しており、その入力ギヤ56Aがカムギヤ30の外周歯部30gと噛み合っている。
尚、上記トレイ55とトレイラック歯55gとトレイ駆動ギヤ56とで、ディスク9をターンテーブル5上方のローディング位置(第1位置)と装置1の外部のアンローディング位置(第2位置)との間で往復動可能に移送するディスクローディング機構が構成されている。
【0055】
そして、上記トレイ55を駆動してディスク9をアンローディング位置とローディング位置との間で移送するために、一群の歯車で構成される歯車列61(ローディング駆動歯車列:図9〜図13参照)がトラバースベース20の上面側に設けられている。
このローディング駆動歯車列61は、上記第2モータ4の出力軸4sに固着されたモータギヤ4Gと、該モータギヤ4Gと噛み合う大径の入力ギヤ62A(第1ローディング入力ギヤ)及びその上側に一体的に付設された小径の出力ギヤ62B(第1ローディング出力ギヤ)を有する第1ローディングギヤ62と、上記第1ローディング出力ギヤ62Bと噛み合う大径の入力ギヤ63A(第2ローディング入力ギヤ)及びその上側に一体的に付設された小径の出力ギヤ63B(第2ローディング出力ギヤ)を有する第2ローディングギヤ63と、上記第2ローディング出力ギヤ63Bと噛み合う大径の第3ローディングギヤ64とで構成されている。そして、この第3ローディングギヤ64が上記カムギヤ30の外周歯部30gと噛み合っている。
【0056】
上記カムギヤ30の外周歯部30gの縦断面における歯筋形状は、図29に詳しく示すように、より好ましくは側面視で曲線状をなすように形成されている。この曲線は、トラバースベース20とカムギヤ30とを装置ベース10に組み付けた状態で、トラバースベース20がその後端側を支点にして装置ベース10に対し上下方向へ回動する際(図6および図7参照)に、第3ローディングギヤ64の前端部の回動軌跡Cgに沿った円弧状曲線Cg'の一部をなすように設定されている。
【0057】
従って、トラバースベース20が装置ベース10に対して回動し傾斜した状態(図29における破線表示および図7参照)でも、トラバースベース20上の第3ローディングギヤ64と上記カムギヤ30の外周歯部30gとが、確実かつスムースに噛み合うことができる。尚、このカムギヤ30の外周歯部30gの縦断面における歯筋形状は、カムギヤ30の長手方向の軸線Lgに対して傾斜し上記曲線Cg'に近似した直線状であっても良い。
尚、図6及び図7においては、上記カムギヤ30の外周歯部30gと噛み合う第3ローディングギヤ64を明瞭に表示するために、第2ローディングギヤ63の図示は省略されている。
【0058】
このように、カムギヤ30の外周歯部30gの縦断面における歯筋形状が、上記トラバースベース20の回動動作に伴なって上記ローディング駆動歯車列61の最終出力ギヤである第3ローディングギヤ64が上下方向へ回動する際の回動軌跡に沿った円弧状もしくはこの円弧に近似した直線状に設定されているので、トラバースベース20の回動動作に伴なってローディング駆動歯車列61が上下方向へ回動した場合でも、その最終出力ギヤ64をカムギヤ30の外周歯部30gと確実かつスムースに噛み合わせることができるのである。
尚、基本的には上記ローディング駆動歯車列61とかムギヤ30(具体的にはその外周歯部30g)とで、上記ディスクローディング機構を駆動するローディング駆動機構が構成されている。
【0059】
前述の光ピックアップ6は、ディスク9上において信号が記録されている信号記録範囲よりも更に内周側の所定位置まで移動できるように設定されている。そして、光ピックアップ6が第2モータ4の駆動力によりラック駆動歯車列51を介してディスク9の外周側から内周側に向かって移動して来た際、光ピックアップ6がディスク9の信号記録範囲を越えて上記所定位置に達すると、第2モータ4の駆動力はローディング駆動歯車列61に伝達されるように、その伝達経路が切り換えられるように設定されている。
【0060】
すなわち、図14〜図18に詳しく示すように、トラバースベース20の前部には縦軸20sが立設され、この縦軸20sに動力伝達経路切換用のトリガレバー71が回動可能に枢支されている。また、このトリガレバー71の近傍にはその位置を規制し得るロックレバー73が配置されている。
上記トリガレバー71は、図35〜図37に詳しく示すように、上記縦軸20sに回転可能に嵌合する基部71bと、該基部71bの外周の一部に形成された部分ギヤ71gと、上記カムギヤ30と係合する一対の係合アーム71aとを備えている。また、トリガレバー71の基部71bの外周部には、上記ロックレバー73の爪部73dと係合し得るストッパ部71sが設けられている。
上記部分ギヤ71gは前述の送りラック40の切換ラック部42と噛合可能であり、一方、上記係合アーム71aはカムギヤ30の外周から突出したフック部32に係合可能に設定されている。
【0061】
上記ロックレバー73は、図38から図40に詳しく示すように、トラバースベース20の前端部に嵌合固定される基部73bと、該基部73bから略L字状に伸びるレバー部73aと、上記基部73bから略円弧状に伸びるスプリング部73cとを備えている。上記レバー部73aには、トリガーレバー71のストッパ部71sと係合し得る爪部73dと、上方に突出する突出ピン73pとが一体的に形成されている。また、上記基部73bには、後述する位置決めロッド75の規制ロッド部75sをスライド自在に挿通させる溝部73s(ガイドスロット)が形成されている。
上記送りラック40の裏面側には、図30及び図32から良く分かるように、平面視で屈曲状に形成されたカム溝43が設けられ、該カム溝43の前端側は送りラック40の前方に向かって開かれている。上記ロックレバー73の突出ピン73pは、このカム溝43にスライド自在に係合するようになっている。
【0062】
また、上記装置ベース10とトラバースベース20には、それぞれに取り付けられた機構部品どうしの連係状態を精確に保持するための位置決め機構が設けられている。
すなわち、トラバースベース20の前部には、該トラバースベース20の装置ベース10に対する左右方向の位置決めを行うための位置決め部材75(位置決めロッド)が配設されている。この位置決めロッド75は、図41〜図43に詳しく示すように、トラバースベース20の上面に形成された前後方向のガイド溝26に前後スライド可能に係合する係合基部75bと、該基部75bから前方に伸びる延長受け部75cと、上記係合基部75bおよび延長受け部75cから右方にオフセットした位置で前後方向(図14〜図18における上下方向)に伸びる規制ロッド部75sを備えている。
【0063】
この規制ロッド部75sは、上述のように、上記ロックレバー73の基部73bに形成されたガイドスロット75sに前後方向へスライド自在に挿通されている。また、上記延長受け部75cは、後で詳しく説明するように、組立状態において、その前面部がロックレバー73のスプリング部73cに当接して後方に付勢され、一方、その後面部は送りラック40の前端面に当接可能で、この送りラック40の前方移動に伴なって位置決めロッド75全体が前方へ移動するようになっている。
【0064】
図14〜図18に示されるように、装置ベース10の内側開口部10Hの前縁壁面には、上記位置決めロッド75の規制ロッド部75sを出没可能に嵌合させる位置決め溝13が設けられており、送りラック40が前方へ移動しその移動量が一定以上に達すると、送りラック40の前端面が位置決めロッド75の上記延長受け部75cの後面に当接してこれを押し、係合基部75bが上記ガイド溝26に沿った状態で位置決めロッド75全体が前進する。そして、これに伴なって上記規制ロッド部75sが装置ベース10の位置決め溝13内に嵌入することにより、トラバースベース20の装置ベース10に対する左右方向の位置関係が正確に定められる。
【0065】
一方、トラバースベース20の前端部分における上面には平面視で円弧状のカム溝27(円弧溝)が設けられている。上記カムギヤ30のフック部32の裏面には係合凸部32pが設けられており、この係合凸部32pが上記円弧溝27に係合することにより、トラバースベース20の装置ベース10に対する前後方向の位置規制が行われる。
更に、前述のように、トラバースベース20の前端に設けた突起部20pがカムギヤ30のカム溝33に係合することにより、トラバースベース20の前端部の装置ベース10に対する上下方向の位置関係が正確に定められる。
【0066】
以上により、トラバースベース20の前端部の装置ベース10に対する左右方向,前後方向および上下方向の直交する3方向の位置関係が正確に定められ、装置ベース10とトラバースベース20にそれぞれに取り付けられた機構部品どうしを正確かつ確実に係合させることができる。とりわけ、第2モータ4の駆動力の伝達経路を切り換える際に、装置ベース10に設けられたディスクローディング機構とトラバースベース20に設けられたローディング駆動機構との連係状態を正確に保持できるのである。
【0067】
一方、上記ディスク装置1は、ターンテーブル5と協働してディスク9を挟持するクランパ96が組み付けられたクランプ板95を備えている(図1,図2,図4,図22及び図23参照)。上記クランパ96は、その中心部にマグネット97が組み込まれるとともに、下側のディスク当接面にはフェルト98が貼り付けられている。
上記クランプ板95は、左右両側に設けられた複数の(本実施の形態では前後2個ずつの)取付脚部95fに爪部95dがそれぞれ形成されており、これら爪部95dを装置ベース10の側部に係合させることによって該装置ベース10に組み付けられる。そして、この組付状態でクランパ96の中心をターンテーブル5の回転中心に対し実質的に一致させることができるようになっている。
【0068】
上記クランプ板95は、上記左右両側の取付脚部95fを支持する左右の水平基部95bと、上記クランパ96を支持する略環状の中央ホルダ部95aと、該ホルダ部95aと上記水平基部95bとを連結する水平連結部95cとを備えている。
本実施の形態では、中央ホルダ部95aの左右の根元部と各水平基部95bとの間に切欠部95eが形成されており、上記水平連結部95cの幅は、この切欠部95eに対応する分だけ水平基部95bの幅よりも小さくなっている。つまり、水平連結部95cは、水平基部95bに比べてその剛性が低く上下方向に撓み易くなっている。
従って、ディスク装置1が落下した際など、装置1に大きな衝撃荷重が作用し、ターンテーブル5がクランプ板95に当接した場合でも、該クランプ板95が容易に上下方向に撓むので衝撃荷重を吸収することができ、ターンテーブル5(及びこれに連結されたスピンドルモータ3)が大きな損傷を受けることを有効に防止できる。
【0069】
以上のように構成されたディスク装置1の作動について説明する。
まず、ディスク装置1内にディスク9がローディングされ、該ディスク9に記録された信号を光ピックアップ6によって再生している信号再生状態(図9参照)では、図6に示されるように、トラバースベース20は、その前端の突起部20Pがカムギヤ30のカム溝33における上側の水平溝部33aに嵌合することにより、装置ベース10と略平行に保持されている。
このとき、図14に示されるように、トリガレバー71は、そのストッパ部71sがロックレバー73の爪部73dに係止されるとともに、係合アーム71aがカムギヤ30のフック部32に係合している。この状態では、トリガレバー71は、図9及び図14における時計回り方向の限度まで回動されている。
【0070】
上記の状態で、ディスク9からの信号の再生は、スピンドルモータ3を駆動させてディスク9を載せたターンテーブル5を所定の回転数で回転させながら、光ピックアップ6を再生しようとしている目的の信号トラックの略下方位置に移動させ、この光ピックアップ6に設けられた光学素子(レンズ及びレーザ源などを含む光学系)でディスク9上の信号を読み取ることによって行われる。
ここで、再生しようとしている信号トラックが光ピックアップ6の現在位置の上方に無いとき、あるいは数十本以上の信号トラックにまたがって信号再生を行う場合には、光ピックアップ6をディスク9の内周方向(ディスク装置1の前側方向)および外周方向(ディスク装置1の後側方向)に移動させる必要がある。
【0071】
この光ピックアップ6の移動は光ピックアップ駆動機構によって行われる。すなわち、前述したように、第2モータ4が駆動されてモータギヤ4Gが回転すると、この回転が上記ラック駆動歯車列51により所定の減速比で減速して出力側に伝達され、最終の出力ギヤ53B(第2トラバース出力ギヤ)は減速された回転速度で回転し、送りラック40が(従って、これに連結された光ピックアップ6が)前後方向に移動する。このとき、モータギヤ4Gの回転方向が図9〜図13における反時計回り方向であれば、光ピックアップ6は前方(図9〜図13における下方:ディスク9の内周方向)に向かって移動し、モータギヤ4Gの回転方向がその逆であれば、光ピックアップ6は後方(図9〜図13における上方:ディスク9の外周方向)に向かって移動する。
【0072】
尚、この信号再生状態では、第2モータ4の駆動に伴なってローディング駆動歯車列61も回転することになるが、その最終の出力ギヤである第3ローディングギヤ64の歯部は、カムギヤ30の欠け歯部34に位置し、外周歯部30gとは噛み合わないように設定されている。従って、この信号再生状態で、第2モータ4の駆動力がカムギヤ30に(従って、トレイ駆動ギヤ56に)伝達されることはない。
【0073】
図10及び図15は、ディスク9の信号が記録されている記録位置範囲(信号記録範囲)の最内周部分に記録された信号を再生している状態を示している。この状態では、光ピックアップ6は光ピックアップ駆動機構によって前方へ移動させられて、ディスク9の信号記録範囲の内周端部位置Srまで移動しており、送りラック40の受動ラック部41は、その後端部分がラック駆動歯車列51の最終の出力ギヤ53B(第2トラバース出力ギヤ)と噛み合っている。また、切換ラック部42は、トリガレバー71の部分ギヤ71gにかなり接近している。
【0074】
周知のように、光ディスク9の信号記録範囲は、ディスク規格に基づいて、ディスク9の中心からの距離で定められている。そして、従来のディスク装置では、この信号位置範囲の最内周位置に対応する位置に光ピックアップの位置検出スイッチを設け、光ピックアップが最内周位置に有ること及び最内周位置に移動してきたことを検出し、光ピックアップがそれ以上内周側に移動しないように制御している。
これに対して本実施の形態に係るディスク装置1においては、ディスク9の信号記録範囲の内周端部位置Srを内周端部切り換え位置として、ここに内周検出スイッチ7を設けている。この内周検出スイッチ7は、オフのときには光ピックアップ6が最内周位置に有ること及び最内周位置に移動してきたことを検出する点は従来の光ディスク装置と同じである。しかしながら、オンとしたときには、光ピックアップ6が内周検出スイッチ7を動作させても光ピックアップ6のそれ以上の内周側への移動を規制せず、光ピックアップ6が更に内周側へ移動できるように設定されている点が従来とは異なっている。
【0075】
上記内周検出スイッチ7は、例えば、従来から良く知られた機械式の作動を行うもので、トラバースベース20の上面に対して上下方向に出没可能に設けられ、光ピックアップ6がこの内周検出スイッチ7の上方に達した際には、その下面がスイッチ7に干渉し、スイッチバネ(不図示)の付勢力に抗してこの内周検出スイッチ7をトラバースベース20内に押し下げるようになっている。尚、この内周検出スイッチ7としては、上記の方式のものに限らず、例えば非接触式のものなど、従来から良く知られた種々の構造のものを用いることができる。
【0076】
図11及び図16は、光ピックアップ6が上記内周端部位置Srに移動し内周検出スイッチ7を動作させた後、さらに光ピックアップ6が内周側に移動して来た状態を示したものである。
ここで、図10及び図15の状態と図11及び図16の状態の違い、並びにその状態の移行動作について説明する。
図10及び図15の状態から図11及び図16の状態への光ピックアップ6の移動は、オンとした内周検出スイッチ7が光ピックアップ6により動作させられた図10及び図15の状態から、第2モータ4が更に同じ方向に(反時計周り方向に)回転することによって行われる。
光ピックアップ6が更に内周側に移動することによって、光ピックアップ6を前後動させる送りラック40の切換ラック部42が、トリガレバー71の部分ギヤ71gと噛み合い、トリガレバー71を時計周り方向に回転させる。これに伴なって、トリガレバー71の係合アーム71aがカムギア30のフック部32を反時計回り方向に回動させる。
【0077】
これにより、カムギア30が反時計回り方向に回動し、その外周歯部30gとローディング駆動歯車列61の最終の出力ギヤ64(第3ローディングギヤ)とが噛合い始める。この状態では、まだ、送りラック40の受動ラック部41は、上記ラック駆動歯車列51の最終の出力ギヤ53B(第2トラバース出力ギヤ)と噛み合い状態を保っている。
また、トリガレバー71のストッパ部71sと係合して該トリガレバー71を位置固定していたロックレバー73は、その突出ピン73pが送りラック40のカム溝43に沿って移動することによって回動し、爪部73dによるトリガレバー71の位置固定が解除される。
【0078】
図12および図17は、上記カムギア30がローディング駆動歯車列61の最終の出力ギヤである第3ローディングギア64に噛み合い始めた状態から、更に、この第3ローディングギア64からの駆動力により、カムギア30が反時計回り方向に回動した状態を示している。
この動作も、第2モータ4によりモータギヤ4Gが、光ピックアップ6を内周側に送るときの回転方向と同じく、反時計回り方向に回転することによって行われる。
【0079】
このようなカムギア30の動作により、トリガレバー71は、このカムギア30で規制される位置まで更に時計回り方向に回転し、送りラック40の受動ラック部41と第2トラバース出力ギヤ53Bの噛み合いが外れる位置まで、光ピックアップ6を更なる内周位置(前方位置)まで引き込む。従って、これ以降は、上記モータギヤ4Gがそれ以上反時計回り方向に回転しても、第2モータ4の駆動力が送りラック40に(従って、光ピックアップ6に)伝達されることはない。
また、このとき、ロックレバー73の突出ピン部73pは、送りラック40のカム溝43に案内されてその傾斜部にさしかかり、ロックレバー73のバネ力により反時計回り方向に回動する。そして、トリガレバー71は、カムギア30と完全に離間する位置まで、時計回り方向に回動させられる。
尚、基本的にはトリガレバー71,ロックレバー73及びカムギヤ30(具体的には、そのフック部32及び欠け歯部34)、より詳細には、これらに加えて、送りラック40の切換ラック部42及びカム溝43等で、第2モータ4の駆動力の伝達経路を切り換える動力伝達経路切換機構が構成されている。
【0080】
また、以上のように、送りラック40は、光ピックアップ6を上記ディスク9の信号記録範囲の最内周端部位置Srまで移動させた後さらに内周側の所定位置まで移動可能で、送りラック40が、この内周側の所定位置まで移動することにより、または、この所定位置からディスク外周側へ移動することにより、第2モータ4の駆動力の伝達経路が切り換えられるので、1個のモータ(第2モータ4)の駆動により、光ピックアップ6の信号読み取り動作と第2モータ4の駆動力の伝達経路の切換とを連携して行わせることができる。
更に、信号の再生状態にある光ピックアップ6を、第2モータ4により光ディスク9上の信号記録範囲の内周端部位置Srに移動させた後、さらに回転方向をかえることなく同モータ4をまわしつづけることにより、自動的にターンテーブル5による光ディスク9のクランプの解除、装置外への光ディスク9の排出を行うことができ、従来の光ディスク装置において必要とされていたディスクローディング専用のモータを廃止することができる。そして、装置内で使用するモータの数を減らすことにより、より安価な光ディスク装置を提供することが可能になる。
【0081】
また更に、光ピックアップ6を第2モータ4の駆動によりディスク9上の信号の最内周位置Srに移動させ、内周検出スイッチ7により光ピックアップ6の位置を検出した後、上記第2モータ4の回転方向を変えたり回転を停止させることにより、装置外へディスク9を排出すること無く、同ディスク9の信号の連続した再生や記録を行わせることも可能である。また、更に、従来必要とされていたディスクが装置内に搬入されたことを検出する検出スイッチやディスクのクランプ動作を検出する検出スイッチがなくても、内周検出スイッチ7により上記状態の検出が可能になるため、検出スイッチの数を減らすことができ、より安価な光ディスク装置を提供することも可能になる。
【0082】
本実施の形態では、前述のように、上記トラバースベース20は、その後端部を中心にして上下方向に回動するよう構成されており、前端部の突起部20Pが、カムギア30に形成されたカム溝33に係合している。このカム溝33は、前述のように、上下の水平溝部分33a及び33cと両者をつなぐ斜め溝部分33bとを備えており(図24〜図29参照)、上記突起部20Pがこれら3つの溝部33a〜33cのどの部分と係合するかによって(つまり、カムギヤ30の回動方向及び回動量によって)、トラバースベース20の前端部の上下方向位置が定まる。従って、トラバースベース20は、カムギア30の回動方向及び回動量に応じて、その後端部を中心にして上下方向へ回動することになる。
【0083】
このように、上記トラバースベース20は、その一端側を中心にして装置ベース10に対し上下方向へ回動可能に支持されている。具体的には、ローディング駆動歯車列61からの動力伝達でカムギヤ30が回転させられてトラバースベース20の他端側が昇降させられ、これにより、トラバースベース20がその前端側を中心にして装置ベース10に対し上下方向へ回動させられる。すなわち、1個のモータ(第2モータ4)の駆動により、トラバースベース20の上下方向への回動動作と(従って、ターンテーブル5の昇降動作と)ディスク9の移送動作とを連携して行わせることが可能になるのである。
【0084】
そして、図13及び図18に示すように、カムギア30が更に反時計回り方向に回転すると、トラバースベース20の前端突起部20Pのカム溝33に対する係合位置は、上側水平溝部33aから斜め溝部33bを経て、下側水平溝部33cへと移動するように設定されている。
すなわち、図9及び図14に示した状態では、突起部20Pが上側水平溝33aに係合しており、トラバースベース20は、図6に示すように、装置ベース10に対して平行で両者の上面が略面一となるように維持されている。従って、ディスク9をターンテーブル5上に載置してクランパ96との間で水平に保持することができる。
【0085】
そして、図10〜図13及び図15〜図18に示すように、送りラック40が前方に移動し、その移動量が一定以上に達するとカムギヤ30が回動し始め、トラバースベース20の前端突起部20Pが、カム溝33の斜め溝部33bを経て下側水平溝部33cと係合するようになる。この結果、図7に示すように、トラバースベース20が、その後部を中心に下方へ回動し装置ベース10に対し傾斜する。この状態では、ターンテーブル5が傾斜状態で下方に移動しているので、装置1の外部からディスク9をターンテーブル5の上方へ引き込む際、及びディスク9をターンテーブル9の上方から装置1の外部へ排出する際には、ディスク9がターンテーブル9と干渉することはないようになっている。
【0086】
この場合、カムギヤ30の外周歯部30gは、トラバースベース20が装置ベース10に対して所定位置(トラバースベース20の前端突起部20Pがカム溝33の斜め溝部33bを経て下側水平溝部33cと係合する位置)まで下方へ回動した状態で、ディスクローディング機構のトレイ駆動ギヤ56と噛み合うので、上記トレイ55はトラバースベース20が確実に下方へ回動した状態で駆動される。従って、トレイ駆動時(つまりディスク移送時)、トレイ55が(つまりディスク9が)ターンテーブル5と干渉することを確実に回避することができるのである。
【0087】
尚、上記のようにトラバースベース20が傾斜した状態では(図13及び図18並びに図7参照)、第3ローディングギヤ64も傾斜した状態でカムギヤ30の外周歯部30gと噛み合うことになるが、前述したように(図29参照)、この外周歯部30gは、その縦断面における歯筋形状が曲線状もしくはカムギヤ30の軸線Lgに対して傾斜した形状に設定されているので、両ギヤ64,30gは確実かつスムースに噛み合うことができる。
また、以上のように送りラック40が(つまり光ピックアップ6が)前方へ移動し、トラバースベース20が傾斜動作を行う間、図14〜図18に示すように、送りラック40の前方への移動に伴って該送りラック40の前端部が上記位置決めロッド75の延長受け部75cの後面に当接してこれを前方に押す。これにより、位置決めロッド75の規制ロッド部75sが、ロックレバー73の基部73bのガイドスロット73sに案内された状態で前方へ移動する。そして、前述のように、この規制ロッド部75sが装置ベース10の位置決め溝13内に嵌入することにより、トラバースベース20の装置ベース10に対する左右方向の位置決めが行われる。
【0088】
尚、上記位置決めロッド75の延長受け部75cの前部は、ロックレバー73のスプリング部73cに当接しており、このスプリング部73cによって後方に付勢されている。上記とは逆に送りラック40が後方へ移動する場合には、位置決めロッド75は上記スプリング部73cの付勢力によって後方へ移動させられるようになっている。
更に、トラバースベース20の前端側に設けられた円弧溝27にカムギヤ30のフック部32の係合凸部32pが係合することにより、トラバースベース20が装置ベース10に対して略平行で両者の上面が略面一に維持されている間、両者の前後方向の位置決めが行われている。
【0089】
図19及び図20は、第2モータ4によってモータギヤ4Gを更に同じ方向(反時計回り方向)に回転させ、ローディング駆動歯車列61を介してカムギヤ30を更に反時計回り方向に回動させた状態を示している。図9〜図13に示す状態の間は、トレイ駆動ギヤ56の入力ギヤ56Aはカムギヤ30の外周歯部30gとは噛み合っておらず、その欠け歯部34に対応している。従って、カムギヤ30が回転してもトレイ駆動ギヤ56が回転することはない。
しかし、カムギヤ30が図19及び図20に示される状態まで回動すると、カムギヤ30の外周歯部30gがトレイ駆動ギヤ56の入力ギヤ56Aと噛み合い始め、カムギヤ30の回転によってトレイ駆動ギヤ56が回転させられる。そして、これに伴って、図21に示すように、トレイ駆動ギヤ56の出力ギヤ56B及びこれと噛み合うトレイラック歯55gを介して、トレイ55が前方へ引き出されるようになっている。
【0090】
尚、以上の説明は、トレイ55をディスク装置1の内部から外部に引き出す場合について(つまり、信号再生状態から光ディスク9のクランプ解除およびディスク9の排出の動作について)のものであったが、この逆に、トレイ55をディスク装置1の外部から内部に引き込む場合には、回路基板2に設けられたモータ制御回路によって第2モータ4が以上とは逆方向に回転させられ、モータギヤ4Gが時計回り方向に回転駆動される。これにより、ディスク装置1内への光ディスク9の搬入、ディスク9のクランプそして信号再生状態への移行を、一連の動作として行わせることができる。
【0091】
以上のように、本実施の形態では、装置ベース10と別体でターンテーブル5を取り付けたトラバースベース20が、装置ベース10に対し上下方向へ回動可能に支持されており、1個のモータ(第2モータ4)を正方向(第1回転方向)またはその逆方向へ連続して回転させることにより、光ピックアップ6の移動動作とターンテーブル5の昇降動作とディスク9の移送動作とがこの順序で略連続して、または逆の方向へ逆の順序で略連続して行われるので、ディスク9の出し入れを行う際、ディスク9を上下方向に移動させることなくターンテーブル5との干渉を回避することができる。従って、従来のディスク装置のように、ディスクを持ち上げるディスクホルダを設ける必要は無い。
【0092】
また、ターンテーブル5を取り付けたトラバースベース20を装置ベース10に対し上下方向へ回動させる動作を利用して、ディスク9のターンテーブル5に対する固定(クランプ)及び固定解除を行うことが可能になる。従って、従来のディスク装置のように、クランパ側(チャック板)を上下方向に駆動する必要は無い。
この場合において、光ピックアップ6の移動動作とターンテーブル5の昇降動作とディスク9の移送動作とを1個のモータ(第2モータ4)で行えるので、ターンテーブル回転駆動用の第1モータ3と併せて、合計2個のモータでディスク装置1を作動させることができる。すなわち、モータの使用個数を削減した上で、ディスク装置1の構造をより簡素化し、各構成要素の良好な作動をより安定して得ることができる。
【0093】
本実施の形態によれば、トラバースベース20と装置ベース10との間に装着したフローティングブッシュ29に第1及び第2の緩衝部29a及び29b並びに第1及び第2の装着部29c及び29d、更には規制部29fを設けたことにより、トラバースベース20の全体の荷重を支え、かつ上下方向の抜け止め作用を行うとともに、有効に振動成分あるいは衝撃荷重を吸収することができ、省スペースにしかも安価で取り付けの簡単なフローティング装置を提供することが可能となる。
【0094】
また、回転中心部を備えたことで、他に回動中心を設けることなく、かつ正確に回動中心を確保できる。更に、装置ベース10からトラバースベース20に振動や衝撃荷重が伝達される場合には、これを有効に吸収し、トラバースベース側に振動力や衝撃荷重が直接伝えられて大きな悪影響を及ぼすことを防止できる上、両者間および両者の部品間について、相互の位置関係を浮動可能な範囲で調節することもできる。すなわち、組付作業が容易で、構造も簡単かつコンパクトで、しかも昇温時でも安定した緩衝特性を得ることができ、また、回動動作にも良好に対応することができる弾性支持装置を提供することができるのである。
【0095】
尚、本発明は、以上の実施態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良あるいは設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【0096】
【発明の効果】
本願の第1の発明によれば、第1の弾性支持部の端末側に、第1及び第2の弾性支持部の中空内部を挿通する第2部材の軸状被支持部に装着される第2装着部が一体的に設けられ、該第2装着部は上記軸状被支持部の先端部を覆うようにして回動自在に装着されており、この装着状態で上記軸状被支持部の先端部に係合しその先端方向への上記第2装着部の移動を規制する規制部が、上記第1の弾性支持部および第2装着部の少なくとも何れか一方に一体的に設けられている。
従って、第1部材と第2部材との相対変位を生じさせる加振力あるいは衝撃荷重が加えられ、第2装着部が端末側に設けられた上記第1の弾性支持部が圧縮される方向の荷重が作用した際には、当該荷重は上記規制部を介して上記軸状被支持部の先端部によって受け止められる。また、第1部材の板状被支持部が第2部材の軸状被支持部の先端側へ移動する方向の大きな変位が生じた場合には、上記規制部が軸状被支持部の先端部に係合してその先端方向への第2装着部の移動が規制されることにより、弾性支持装置の上記軸状被支持部からの抜脱が防止される。
従って、従来のように、受圧板としての作用と抜け止め作用とを行わせるためのエンドプレートを別途に設ける必要は無い。すなわち、弾性支持装置を第1及び第2部材間に装着した後に、軸状被支持部の先端に別体のエンドプレートを固定する必要が無くなり、従来に比して、弾性支持装置の組付作業が簡略化され、また、部品点数および組付工数が削減できるので、製造コストを抑制する上でも有利である。
【0097】
また、上記第2装着部は軸状被支持部の先端部を覆うようにして装着されているので、弾性支持装置の片側(上記第2装着部が設けられる側)はフリーで拘束するものは無い。
従って、従来、最終的な組付状態において、第1部材のベース面とエンドプレートとの間に挟み込まれてその軸線方向の全長が規制されていた場合に比べて、弾性支持装置とそれ以外の部材との熱膨脹係数の違いによる昇温時の軸線方向の長さ変化の差を小さくすることができ、昇温時でも安定した緩衝特性を得ることができるようになる。
【0098】
更に、上記第2装着部が端末側に設けられた第1の弾性支持部が圧縮される方向の荷重が作用した際には、この第1の弾性支持部の弾性範囲内での圧縮変形に伴なう緩衝作用だけが得られるのに対して、第2装着部が端末側に設けられていない第2の弾性支持部が圧縮される方向の荷重が作用した際には、この第2の弾性支持部の弾性範囲内での圧縮変形に伴なう緩衝作用に加えて、第2装着部が軸状被支持部の先端部で突き上げられた状態で第1の弾性支持部が弾性範囲内で伸び変形することに伴なう緩衝作用を得ることができる。
従って、第2の弾性支持部が圧縮される方向については、より大きな荷重に耐えることができる。すなわち、一方向に大きな荷重が作用することが想定される場合には、当該方向が上記第2の弾性支持部が圧縮される方向と一致するように設定することにより、簡単かつコンパクトな構造で容易に対応することができる。この結果、従来、入力荷重の向きによって各弾性支持部がそれぞれ単独で緩衝作用を行うようになっていた場合に比べて、一方向に大きな荷重が作用することが想定される場合でも、弾性支持装置の大型化および構造の複雑化を招くことなく、容易に対応することができるようになる。
【0099】
また、本願の第2の発明によれば、基本的には、上記第1の発明と同様の効果を奏することができる。特に、上記第2部材の軸状被支持部の先端部は、断面の外縁形状が円形の一部を成すように形成されるとともに、上記第2装着部の内縁形状が円形の一部を成すように形成されているので、第1部材と第2部材とが相対的に回動する際には、従来、軸状被支持部の先端に平板状のエンドプレートが固定され、このエンドプレートと第1部材のベース面との間に弾性支持装置が挟み込まれていた場合に比べて、はるかにスムースな回動動作を行わせることができる。
この場合、他に回動中心を設ける必要はなく、上記軸状被支持部の先端に第2装着部を装着するだけの簡単な作業で、正確に回動中心を確保することができる。
【0100】
更に、本願の第3の発明によれば、基本的には、上記第2の発明と同様の効果を奏することができる。特に、上記第2装着部の内縁部には、その円形の中心を指向する複数の突起部が設けられているので、軸状被支持部の外周表面と第2装着部の内縁部との間に隙間を設けることができ、第2装着部の軸状被支持部の先端部に対する回動動作をよりスムースなものとすることができる。
【0101】
また、更に、本願の第4の発明によれば、基本的には、上記第1〜第3のいずれか一の発明と同様の効果を奏することができる。特に、上記第2部材が光ディスク装置の装置本体の基部を構成する装置ベースであり、上記第1部材は、上記装置ベースと別体で該装置ベースに対し上下方向へ移動可能または回動可能に支持された部品搭載用ベースであるので、かかるタイプの光ディスク装置において、部品搭載用ベースを装置ベースに対して、浮動可能な状態に支持することが可能になり、装置ベースから部品搭載用ベースに振動や衝撃荷重が伝達される場合には、これを有効に吸収し、部品搭載ベース側に振動力や衝撃荷重が直接伝えられて大きな悪影響を及ぼすことを防止できる。また、両者間および両者の部品間について、相互の位置関係を浮動可能な範囲で調節することができ、部品製作および組立作業の精度をある低度低く設定することが可能になり、生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る弾性支持装置(フローティングブッシュ)が組み込まれたディスク装置の組立状態を示す全体斜視図である。
【図2】 上記ディスク装置の分解斜視図である。
【図3】 図2の一部を拡大して示す説明図である。
【図4】 図2の一部を拡大して示す説明図である。
【図5】 上記ディスク装置のトラバースベースと装置ベースの組立状態を示す平面説明図である。
【図6】 上記トラバースベースの装置ベースに対する支持構造を概略的に示す部分断面側面図である。
【図7】 上記トラバースベースの装置ベースに対する傾斜動作を示す概略的な部分断面側面図である。
【図8】 上記トラバースベースに装着された弾性支持装置(フローティングブッシュ)を拡大して示す縦断面説明図である。
【図9】 上記ディスク装置の駆動機構の動作を示す一連の平面説明図の一つである。
【図10】 上記駆動機構の動作を示す一連の平面説明図の一つである。
【図11】 上記駆動機構の動作を示す一連の平面説明図の一つである。
【図12】 上記駆動機構の動作を示す一連の平面説明図の一つである。
【図13】 上記駆動機構の動作を示す一連の平面説明図の一つである。
【図14】 上記駆動機構の動力伝達経路の切換動作を示す一連の拡大平面説明図の一つである。
【図15】 上記駆動機構の動力伝達経路の切換動作を示す一連の拡大平面説明図の一つである。
【図16】 上記駆動機構の動力伝達経路の切換動作を示す一連の拡大平面説明図の一つである。
【図17】 上記駆動機構の動力伝達経路の切換動作を示す一連の拡大平面説明図の一つである。
【図18】 上記駆動機構の動力伝達経路の切換動作を示す一連の拡大平面説明図の一つである。
【図19】 トレイとトレイ駆動ギヤの係合状態を示す拡大平面説明図である。
【図20】 トレイ格納状態を示す上記ディスク装置の平面説明図である。
【図21】 トレイ引き出し状態を示す上記ディスク装置の平面説明図である。
【図22】 上記ディスク装置のディスククランプ機構を示す拡大平面説明図である。
【図23】 図22のY23−Y23線に沿ったディスククランプ機構の縦断面説明図である。
【図24】 上記駆動機構のカムギヤの平面説明図である。
【図25】 図24のY25−Y25矢印方向から見たカムギヤの側面説明図である。
【図26】 図24のY26−Y26矢印方向から見たカムギヤの側面説明図である。
【図27】 図24のY27−Y27矢印方向から見たカムギヤの側面説明図である。
【図28】 図24のY28−Y28矢印方向から見たカムギヤの側面説明図である。
【図29】 上記カムギヤの縦断面における歯筋形状を示す部分断面説明図である。
【図30】 上記駆動機構の送りラックの平面説明図である。
【図31】 図30のY31−Y31矢印方向から見た送りラックの側面説明図である。
【図32】 上記送りラックの背面説明図である。
【図33】 図30のY33−Y33矢印方向から見た送りラックの側面説明図である。
【図34】 図30のY34−Y34矢印方向から見た送りラックの側面説明図である。
【図35】 図36のY35−Y35矢印方向から見たトリガレバーの側面説明図である。
【図36】 上記駆動機構のトリガレバーの平面説明図である。
【図37】 図36のY37−Y37線に沿ったトリガレバーの縦断面説明図である。
【図38】 上記駆動機構のロックレバーの平面説明図である。
【図39】 図38のY39−Y39矢印方向から見たロックレバーの側面説明図である。
【図40】 図38のY40−Y40矢印方向から見たロックレバーの側面説明図である。
【図41】 図42のY41−Y41矢印方向から見たロックレバーの側面説明図である。
【図42】 上記駆動機構のロックレバーの平面説明図である。
【図43】 図42のY43−Y43矢印方向から見たロックレバーの側面説明図である。
【図44】 従来例に係る弾性支持装置を拡大して示す縦断面説明図である。
【符号の説明】
1…ディスク装置
10…装置ベース
11…トラバースベース支持軸
11d…トラバースベース支持軸の先端部
20…トラバースベース
21b…ブッシュ取付板
29…フローティングブッシュ
29a…第1緩衝部
29b…第2緩衝部
29c…第1装着部
29d…第2装着部
29e…突起部
29f…規制部
Claims (4)
- 板状の被支持部を有する第1部材と、該第1部材の板状被支持部に支持される軸状の被支持部を有し第1部材に対して少なくとも回動可能で上記軸状被支持部の軸線方向に相対変位可能な第2部材との間に配置される弾性支持装置であって、
同一軸線上に配列されて少なくとも該軸線方向にそれぞれ弾性変位可能な第1及び第2の中空の弾性支持部と、
上記両弾性支持部間に一体的に設けられて上記第1部材の板状被支持部に装着される第1装着部と、
上記第1の弾性支持部の端末側に一体的に設けられ、第1及び第2の弾性支持部の中空内部を挿通する上記第2部材の軸状被支持部に装着される第2装着部と、
を備え、該第2装着部は上記第2部材の軸状被支持部の先端部を覆うようにして回動自在に装着されており、この装着状態で上記軸状被支持部の先端部に係合しその先端方向への上記第2装着部の移動を規制する規制部が、上記第1の弾性支持部および第2装着部の少なくとも何れか一方に一体的に設けられ、
かつ、上記第1の弾性支持部の圧縮方向に上記第1部材と上記第2部材とが相対変位する際には、上記第1の弾性支持部が圧縮変形し、また、上記第2の弾性支持部の圧縮方向に上記第1部材と上記第2部材とが相対変位する際には、上記第2の弾性支持部が圧縮変形するとともに上記第1の弾性支持部が伸び方向に変形する、
ことを特徴とする弾性支持装置。 - 上記第2部材の軸状被支持部の先端部は、断面の外縁形状が円形の一部を成すように形成されるとともに、上記第2装着部の内縁形状が円形の一部を成すように形成されていることを特徴とする請求項1記載の弾性支持装置。
- 上記第2装着部の内縁部には、その円形の中心を指向する複数の突起部が設けられていることを特徴とする請求項2記載の弾性支持装置。
- 上記第2部材が光ディスク装置の装置本体の基部を構成する装置ベースであり、上記第1部材は、上記装置ベースと別体で該装置ベースに対し上下方向へ移動可能または回動可能に支持された部品搭載用ベースであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一に記載の弾性支持装置。
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