JP3826452B2 - 高分子電解質とその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はイオン伝導性の高分子電解質とその製造法に関する。さらに詳しくは、本発明はリチウムイオンをはじめとするアルカリ金属イオン系の伝導性キャリアを含有することにより高いイオン伝導性を発揮し、かつ成膜性、機械的強度、柔軟性にも優れた高分子電解質とその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体電解質を用いて全固体系の電池を構成した場合、従来型電池の問題点の一つである電池内の内容物の漏液がなくなり、電池の安全性および信頼性が向上し、また、電池の薄型化、積層化も可能となる。そのため、固体電解質は電池その他の電気化学的デバイス材料として注目されている。
【0003】
ところで、固体電解質として要求される特性としては、一般的に
(a)イオン導電性が高く、電子伝導性がないこと、
(b)薄く成形できるように成膜性が優れていること、
(c)可撓性に優れていること、
等が挙げられる。
【0004】
また、固体電解質の種類としては無機材料からなるものと有機材料からなるものの大きく二種類に分けられる。このうち無機材料からなる固体電解質は比較的イオン伝導性は高いが、結晶体であるために機械的強度が乏しく、可撓性のある膜に加工することが困難であり、そのためにデバイスに応用する場合には著しく不利となっている。
【0005】
これに対して、有機高分子からなる高分子電解質は可撓性のある薄膜に成膜することが可能であり、また成形した薄膜には高分子固有の柔軟性により優れた機械的性質を付与することが可能となる。そのため、高分子電解質から成る薄膜は、電極−高分子電解質間のイオン電子交換反応過程で生じる体積変化にも柔軟に適応させることも可能となる。このような理由から、高分子電解質は高エネルギー密度電池、特に薄型電池の電解質材料として有望視されている。また、従来からの有機溶媒を基調とする非水電解液よりも難燃化が図れることから、電池を大型化した場合の安全性確保に関しても大きく貢献できるものとして有望視されている。
【0006】
このような高分子電解質としては、ポリエーテル構造を有するポリエチレンオキサイド[(−CH2CH2O−)n、nは1以上の整数:以下PEOと略す]とLi塩やNa塩等のアルカリ金属塩との複合体が高いアルカリ金属イオン伝導性を示すことが知られており、この複合体をはじめとして種々の高分子電解質でのイオン伝動機構や分子構造等の理論的研究、あるいは電池等の電気化学デバイスへの応用研究が活発に進められている。
【0007】
ところで、高分子電解質におけるイオン伝導性は高分子マトリックス中のアルカリ金属イオンが、高分子マトリックス中の無定形部分において選択的にイオン化し、高分子中の配位性原子と相互作用しながらマットリクス内を電界に沿って拡散移動することによって達成されると考えられている。例えば、PEOとアルカリ金属塩からなる複合体膜においては、アルカリ金属イオンと主鎖中の誘電率の高いエーテル結合部の酸素と相互作用しながら、熱による分子鎖のセグメント運動によってイオン伝動が示されるようになると考えられている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、高分子電解質は一般的に無機材料からなる固体電解質に比べ、室温近傍でのイオン導電率が小さいという問題点を有している。さらに、イオン導電率を向上させようとすると、逆に成膜性や可撓性が低下するという問題点を有している。
【0009】
例えば、PEOとアルカリ金属塩との複合体膜の場合、その構成有機高分子の分子量が10000程度では、成膜性に優れ、イオン導電率も100℃以上では10-3〜10-4Scm-1程度の比較的高い値を有する。しかし、この複合体膜は結晶性であるために60℃以下の温度では急激に導電率は低下し、室温では10-7Scm-1程度以下という非常に低い値を示す。このため、いわゆる室温を使用温度領域とする通常の電池の材料として組み入れることが不可能となってくる。そこで、化学式(2)に示すように、PEOの末端水酸基をウレタン架橋させるためにジイソシアネートを反応させたり、あるいはエステル架橋を形成させることによって、複合体膜の結晶性を抑制させる試みがなされている。
【化2】
【0010】
この架橋構造は無定形高分子のイオン導電率を大きく低下させることなく機械的特性を向上させるために手段として非常に有効である。しかしながら、このような手段でも十分な成果を得るには至っていない。
【0011】
一方、複合体膜の構成有機高分子PEOの分子量を10000以下にすることによって室温近傍の温度領域でイオン導電率を向上させることができるが、この場合には成膜性が著しく低下し、フィルム化が困難となる。
【0012】
また、イオン導電率を向上させるためにアルカリ金属塩の含有濃度を高くした場合には、複合体膜のガラス転移点Tgも上がってしまい、そのためにイオン導電性が低下してしまう。このようにキャリア体の密度の増加と導電率の増加を同時に達成することはできない。
【0013】
他の高分子電解質としては、上述のPEOおよびアルカリ金属塩を用いた複合体膜の類似化合物で、化学式(3)
【化3】
で示されるように、側鎖にPEO構造を有するアクリル系およびメタクリル系の有機高分子が知られている。また、化学式(4)
【化4】
で示されるように、側鎖にPEO構造を有し、主鎖として−P=N−からなるポリホスファゼン系の有機高分子や、化学式(5)
【化5】
で示されるように、側鎖にPEO構造を有し、主鎖として−Si−O−からなるシロキサン系の有機高分子が知られている。
【0014】
これらの有機高分子とアルカリ金属塩からなる高分子電解質のイオン導電率は〜10−5Scm−1程度であり、PEOとアルカリ金属塩からなる複合体膜に比べてやや改善されているが、実用上はまだ不十分である。また、成膜性や可撓性も十分なものとはなっていない。
【0015】
一方、前述のような有機高分子と金属塩とからなる高分子(固体)電解質以外に、有機高分子と金属塩とさらに金属塩を溶解する有機溶媒とからなる高分子電解質が開発されている。言い換えると前述の高分子電解質に有機溶媒をさらに膨潤させたものである。なお、この際、有機溶媒を膨潤しても高分子自体が溶解してしまうことがないように、活性放射線、光、電子戦、加熱などによって架橋させるなどの改良も施されている。
【0016】
これらは一般に有機溶媒を含まない高分子(固体)電解質に比べて、導電率は〜10−3S/cm程度と非常に高いものが得られる。さらに、有機溶媒は高分子中に膨潤され、高分子ゲルを形成するようになるため、圧力をかけても液体成分が染み出ることもなく、比較的良好な膜性を有する。
【0017】
しかしながら、従来の有機溶媒と金属塩からなる電解液に比べ、その導電率は低く、さらに機械的強度の高いものが求められているのが実情である。
【0018】
本発明の課題は、このような従来技術の問題点を解決しようとするものであり、室温付近でも高いイオン導電性を発揮し、かつ成膜性、機械的強度、柔軟性にも優れた高分子電解質を得ることである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは5員環状カーボネート基を官能基とする構造を側鎖の一部として有する有機高分子が本発明の課題を解決する材料として有望と考えた。
すなわち、前記有機高分子は5員環状カーボネート官能基を含有するために、従来技術に比べて高密度でキャリアイオンを含有させることができ、さらにその官能基が主鎖よりもより快活なセグメント運動する側鎖部にあるために、低温状態でも結晶化しにくく、そのため無定形状態を保持することによる十分なセグメント運動を確保することができる特長を有することを知見した。
【0020】
そして、この5員環状カーボネート基を官能基とする構造を側鎖の一部として有する有機高分子を高分子電解質の構成材料として使用することにより、本発明の課題が達成できることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0021】
また、本発明は、5員環状カーボネート基を官能基とする構造を側鎖の一部として有する有機高分子とアルカリ金属塩とからなる高分子(固体)電解質に有機溶媒を少量加えたことを特徴とする高分子電解質である。
【0022】
本発明において使用する有機高分子としては、化学式(1)
【化1】
で示されるポリ[4−(1−プロペニルオキシメチル)−1,3−ジオキサン−2−オン](通称ポリ(プロペニル−プロピレンカーボネート−エーテル)、以下PPpPCEと略す)を使用する。
【0023】
ポリ(プロペニル−プロピレンカーボネート−エーテル)は、例えばカチオン重合法や配位重合法などを用いることにより容易に得ることができる。このような5員環状カーボネート基を官能基とする構造を側鎖の一部として有する有機高分子を用いることにより、高分子電解質中にキャリアイオンを高濃度で含有させた状態においても高イオン伝導性を実現でき、さらに良好な成膜性をおよび可撓性を同時に実現することができる。
【0024】
さらに、有機溶媒を少量これに膨潤させることにより、成膜性を低下させることなく、より一層の高伝導性を実現することができる。
【0025】
本発明の5員環状カーボネート基を官能基とする構造を側鎖の一部として有する有機高分子の平均分子量は、低すぎると固体とならず、成膜が低下してしまい、また高すぎても有機溶媒に溶けにくくなり、さらに柔軟性が低下する。そこで、本発明の有機高分子の平均分子量は103〜106の範囲とすることが望ましい。
【0026】
また、本発明において使用する5員環状カーボネート基を官能基とする構造を側鎖の一部として有する有機高分子を単独で用いるだけでなく、これらと相溶性のある他の高分子とブレンドすることにより得られるポリマーブレンドを使用することもできる。
【0027】
このような他の高分子としては、例えばPEOや化学式(2)〜(5)で示される有機高分子、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの従来から高分子電解質に用いられてきた有機高分子、また5員環状カーボネート基を官能基とする構造を有する類似高分子や鎖状カーボネート基を介し、直鎖または分岐メチレンにより結合した有機高分子などを使用することができる。ブレンドの割合としては、必要な導電率やフィルムの柔軟性などに応じて適宜選択することができる。
【0028】
本発明における高分子電解質を構成する金属塩としては従来の高分子電解質に用いられているものも使用可能であり、例えばリチウム塩ではLiBr、LiI、LiSCN、LiBF4、LiAsF6、LiCIO4、LiCF3SO3、LiPF6、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3などが挙げられる。また、これらのリチウム塩のアニオンと、リチウム塩以外のアルカリ金属塩、例えばカリウム、ナトリウムなどの塩を使用することもできる。この場合、塩としては複数の塩を同時に使用してもよい。
【0029】
高分子電解質を構成する金属塩と有機高分子の比率は、使用する金属塩の種類や有機高分子の誘導体の種類などにより異なるが、有機高分子の全構成モノマーユニット当たりの金属塩の分子比(モル比)を[塩の金属イオン]/[monomer unit]で表した場合に
[塩の金属イオン]/[monomer unit]=0.02〜0.8
の範囲とすることが好ましい。この比が低すぎると導電率が低下してしまい、高すぎると塩の析出による成膜性が低下する。
【0030】
本発明の高分子電解質は、常法により製造することができるが、好ましくは、以上のような有機高分子と金属塩とを、溶媒に均一に溶解させることによって得られる。
【0031】
一般に、本発明の高分子電解質は膜の形態で使用するが、成膜する方法は常法によることができる。例えば、有機系のキャスト溶媒に有機高分子と金属塩とを溶解し、この溶液を平坦な基板に広げ、溶媒を蒸発させることにより複合体フィルムを得るというキャスト法により成膜することができる。この場合、キャスト溶媒としては高分子および金属塩ともに溶解させることができる溶媒、例えばジメチルホルムアミド(DMF)やN−メチルピロリドン(NMP)、プロピレンカーボネート(PC)など適度に極性を有する有機溶媒を適宜しようすることができる。
【0032】
また、本発明の有機溶媒を膨潤した高分子電解質は常法によって得ることができる。例えば、前述の手法によって得られた高分子電解質フィルムを有機溶媒中に浸し、所定量の有機溶媒を含んだ時点で引き上げる様な方法や、キャスト溶媒を完全に蒸発させず、適当量の溶媒を残存させた状態で使用する方法などが挙げられる。
【0033】
ここに用いる有機溶媒としては、前記のキャスト溶媒として用いたものや、一般的にリチウム系の非水電解液として用いられているような、エチレンカーボネート(EC)、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)など適宜使用することが可能であり、さらにこれら有機溶媒を同時に複数使用することも可能である。
【0034】
有機溶媒の含有量に関しては必ずしも限定されるものではないが、含有量が高くなるほど導電率も高くなる傾向が見られるものの、ある量以上含有されると膜性(自己支持性)が低下し、粘着体の様相を呈するようになる。したがって、使用目的に合致する膜性と導電率とにより選択することが可能となる。なお、有機高分子の平均分子量が高くなるほど、有機溶媒の含有量が高くなっても膜性の低下が抑えられる傾向が見られることから、本発明の有機溶媒を含む高分子電解質の場合には高分子の平均分子量が高いほど導電率が高いものが得られる。
【0035】
本発明の高分子電解質は、5員環状カーボネート基を官能基とする構造を側鎖の一部として有する有機高分子を含有するので、キャリアイオンとなる金属塩を高濃度で高分子電解質中に含有させることが可能となる。したがって、高イオン導電性と成膜性および可撓性を同時に実現することが可能となる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
実施例1
[ポリ(プロペニル−プロピレンカーボネート−エーテル)(PPpPCE)の合成]
三方活せんを付した300mlのガラス反応容器にジクロロメタン100ml、プロペニル−プロピレンカーボネート−エーテル20gを秤取し、−78℃に冷却する。これに0.1mol/リットルの濃度のBF3O(C2H5)2のジクロロメタン溶液を2.5ml加える。3時間の反応の後、反応溶液に冷却したエタノールを添加して重合を停止させ、大量の冷却したエタノールに反応溶液を注いで生成した白色の高分子を沈澱させる。エタノールで十分に洗浄し、減圧乾燥によって高分子を精製する。
【0037】
その結果、収率はほぼ100%で所期の有機高分子を得た。この有機高分子をFT−IRおよびCDCl3中1H−NMRで同定し、確認した。
【0038】
またこの有機高分子の平均分子量はモノマーの仕込み濃度、反応時間で抑制することが比較的容易であり、種々の条件で作製した有機高分子の平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したが、その結果平均分子量は1×103〜1×106程度であった。
【0039】
[高分子固体電解質フィルムの作製]
上記方法で得られた有機高分子PPpPCEを十分に脱水したDMF中に添加し、十分に撹拌して均一溶液とし、さらに撹拌しながらLiClO4を有機高分子の全構成モノマーに対して、[Li+]/[monomer unit]=0.7となるように加え、さらに完全に溶解するまでしばらく撹拌を続ける。その後、孔径0.45μmのフィルターを通し、不溶物を除去し、キャスト法により成膜した。すなわち、溶液を底面が平滑なテフロン製シャーレに移し入れ、窒素雰囲気下、40〜60℃の温度範囲で設定された恒温器中で溶媒を蒸発させ、さらに真空加熱下で溶媒を完全に除去し、乾燥させ、高分子電解質フィルムを得た。
【0040】
こうして得られた高分子電解質フィルムは可撓性に富んだ無色〜淡黄色のフィルムであり、その膜厚は目的に応じ、適宜作製することができるが、導電率を評価するものとしては50〜150μmのものを用いた。
【0041】
[イオン導電率の評価]
上記方法で得られた高分子電解質フィルムのイオン導電率の評価を次のように行った。
すなわち、高分子電解質フィルムを白金電極あるいはリチウム金属電極で圧着し、数時間、90℃で加熱保存することによって、電極/フィルム/電極の各接触が十分に保たれるようにする。その後、定電圧複素インピーダンス法により得られた半円弧部からイオン導電率を解析的に算出した。
【0042】
なお、これらの測定は温度可変式の恒温装置の中に評価セルを入れ、任意の温度で約1時間要して定常状態にした後に行った。この場合、得られる複数個の疑似半円弧成分を電極を白金、リチウム金属に代え、またそれらの電極面積を代えることにより高分子固体電解質中のイオン導電に寄与する抵抗部を帰属した。
【0043】
このとき測定で用いた交流振幅電圧は30〜100mV程度に設定し、交流の周波数帯域は10−2〜107Hzで行った。上記のようにして−10〜90℃の領域で求められた導電率の温度依存性について図1に示す。
【0044】
図1の結果から、本発明の高分子電解質フィルムは従来のPEOおよび他の有機高分子とアルカリ金属塩との複合体フィルムに比べて、室温近傍の温度領域における導電率が著しく高いことが確認できた。また、成膜性、機械的強度および柔軟性も十分なものであった。
【0045】
実施例2〜5
LiClO4の添加量を図2のように変える以外は実施例1と同様にして、PPpPCEによる高分子電解質を作製し、−10〜90℃の領域で求められた導電率依存性について図1に示す。
【0046】
図1から明らかなように、LiClO4の添加量が[Li+]/[monomer unit]=0.3以下の低濃度の場合、導電率は低いという傾向がある。
【0047】
一方、[Li+]/[monomer unit]=0.5〜1.0で得られた高分子電解質フィルムは柔軟性に富んだ、良好なフィルムであり、導電率は著しく増加する傾向を示す。さらに、LiClO4の添加量が[Li+]/[monomer unit]=1.0よりも多くなると、キャスト溶媒を完全に除去して得られたフィルムは金属塩の析出による懸濁がおこり、金属塩と有機高分子が相溶したものが得られない。さらに、この懸濁した状態のフィルムは、導電率が低下してしまうだけでなく、柔軟性および機械的強度が著しく低下する。
【0048】
したがって、この系では[Li+]/[monomer unit]=0.1〜1.0の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは[Li+]/[monomer unit]=0.5〜1.0であることが望ましい。
【0049】
実施例6〜13
実施例1に示したLiClO4の代わりに図2に示したリチウム、ナトリウム又はカリウムなどのアルカリ金属塩を用いて、それぞれのもので[M+]/[O−CO−O unit]になるように塩を添加した高分子電解質を作製し、30℃における導電率を求めた。この結果を図2に示し、ここに実施例1のLiClO4の結果も合わせて示す。
【0050】
図2から明らかなように、アルカリ金属塩を代えても得られた高分子固体電解質の導電率が極度に低下することなく、従来の高分子固体電解質のイオン導電率と比較して、室温(30℃)においても高い値を示す。なお、いずれも成膜性の低下は見られなかった。
【0051】
実施例14〜16
実施例1のPPpPCEにLiClO4を[Li+]/[monomer unit]=0.7となるように含有させた高分子電解質にプロピレンカーボネート(PC)を添加したものを作製した。PCの添加量はPPpPCEとLiClO4とからなる高分子電解質の重量に対して0.1倍、0.5倍及び1.0倍となるようにし、−10〜90℃の領域で求められた導電率の温度依存性について測定した結果を図3に示す。
【0052】
図3から明らかなように、PCの添加量が多くなるにしたがって、導電率は高くなるとともに、低温側での導電率の低下も小さくなる。しかしながら、添加量が多くなると高温で固体状態を保持できず、溶解してしまい、流動性をもってしまう。したがって、使用目的とする温度領域と膜の状態とに合う状態で、PCの添加量が多い方が望ましい。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の高分子固体電解質と比較して、室温付近でも高いイオン導電性を発揮し、かつ成膜性、機械的強度及び柔軟性にも優れた高分子固体電解質を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 PPpPCE/LiClO4系高分子固体電解質における塩濃度を変化された時の導電率の温度依存性を示す図である。
【図2】 PPpPCE系高分子固体電解質におけるアルカリ金属塩毎の導電率を示す図である。
【図3】 PPpPCE系高分子固体電解質におけるpPC含有量を変化させた場合の導電率の温度依存性を示す図である。
Claims (6)
- 金属塩がアルカリ金属の塩である請求項1記載の高分子電解質。
- 金属塩と有機高分子との構成割合が、有機高分子の全構成モノマーあたりの金属イオンのモル比([金属イオン]/[monomer unit])が0.02〜0.80であることを特徴とする請求項1記載の高分子電解質。
- 高分子電解質とその電解質が可溶である有機溶媒を含むことを特徴とする請求項1記載の高分子電解質。
- 電解質が可溶な有機溶媒はその構造中に酸素原子または窒素原子を少なくとも一つ以上有するものであり、これら有機溶媒は単独もしくは複数種の混合溶媒であることを特徴とする請求項4記載の高分子電解質。
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