JP3825069B2 - ヒト表皮角化細胞賦活剤 - Google Patents

ヒト表皮角化細胞賦活剤 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、アルギン酸オリゴ糖又はその塩を有効成分として含むヒト表皮角化細胞賦活剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒト表皮角化細胞の無血清培地による培養系が確立され、最近ではヒト表皮角化細胞の培養を目的とした細胞培養キットが販売されており〔例えば、(株)森永生科学研究所製、倉敷紡績(株)製、極東製薬工業(株)製〕、皮膚関連の研究技術は大きく進歩している。また、無血清培地を用いることにより、血清中に含まれる不明な成分を考慮する必要がなく、基礎的な研究を行いやすくなった。しかも、コストの削減、ロット差の解消、及び品質等の維持管理が容易となった。
【0003】
その結果、種々の分野で無血清培地を利用した研究開発が進められており、特に、皮膚科領域では、創傷ややけど等の皮膚治療を目的とした臨床応用へと発展しようとしている。このような技術的進歩に伴い、皮膚治療の分野では、培養によって得られた皮膚を用いた治療が注目されている。即ち、重症やけど等を負ったため自力では皮膚を再生できない患者等に対する治療において、患者自身の皮膚断片を培養して表面積の大きい皮膚をつくり、これを移植するというものである。この治療の対象としては、例えば、体表70%以上に及ぶやけどや、広範囲のアザ、やけど後の痕跡等を負った患者が挙げられる。外国では、体表98%に及ぶやけどを負った患者に培養表皮の移植を行い、治療が成功した例もある。
【0004】
しかし、治療に用いる患者自身の皮膚の培養期間が2〜3週間と長くかかること、又は培養を植え継ぐ回数 (継代数) を4回以上行うことは困難であることが依然として解決すべき問題点として残されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、皮膚の細胞の培養に要する培養時間を短縮でき、しかも、培養細胞の継代数を増加させることにより、目的とする皮膚の細胞を確実に多く得ることが可能なヒト表皮角化細胞賦活剤を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に基づいて鋭意研究を行った結果、アルギン酸オリゴ糖又はその塩を無血清培養系に添加した培地でヒト表皮角化細胞を培養することにより、上記諸問題を解決し、さらに培養細胞システムの構築(ヒトの皮膚を保管・保存し、いつでも利用可能な状態にできる皮膚バンクを確かなものとすること)が期待されるほどの増殖活性が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、アルギン酸オリゴ糖又はその塩を有効成分として含むヒト表皮角化細胞賦活剤である。ここで、アルギン酸オリゴ糖又はその塩としては、アルギン酸又はその塩をアルテロモナス属に属する微生物の菌体又はその処理物で処理したものが挙げられる。また、アルギン酸オリゴ糖又はその塩は、分子量1,000 以下のものであるが、アルギン酸オリゴ糖又はその塩における2糖〜5糖の割合は、80〜100重量%である。
【0008】
さらに、本発明は、ヒト表皮角化細胞用無血清培地に添加してヒト表皮角化細胞を増殖させるための、又は、やけど、創傷若しくはアザの治療のための、前記記載のヒト表皮角化細胞賦活剤である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の有効成分であるアルギン酸オリゴ糖又はその塩は、アルギン酸又はその塩に、アルテロモナス属に属する微生物が生産するアルギン酸又はその塩の分解酵素、即ちアルギン酸リアーゼを作用させて得ることができる。アルギン酸とは、D−マンヌロン酸とL−グルロン酸を構成糖とする多糖類の一つであり、その塩としては、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、又はその混合物が挙げられる。また、アルギン酸オリゴ糖の塩としては、例えば、アルギン酸ナトリウムオリゴ糖、アルギン酸カリウムオリゴ糖、又はその混合物が挙げられる。
【0009】
先ず、本発明の有効成分であるアルギン酸オリゴ糖又はその塩を得るために用いられるアルギン酸リアーゼを生産する微生物について説明する。
かかる微生物としては、アルテロモナス属に属する微生物が挙げられ、アルテロモナス エスピー No.1786を例示することができる。
アルテロモナス エスピー No.1786は、魚介類の腸及びその内容物よりアルギン酸ナトリウムを唯一の炭素源としてスクリーニングを実施した結果、カブトガニの腸より分離されたものであり、その形態学的性質及び生理学的性質は下記の表1に示す通りである。
【0010】
【表1】
Figure 0003825069
【0011】
上記表1に示す菌株の性質に基づいて清水らの方法〔海洋微生物研究法、学会出版センター、 228〜239 (1985)参照〕に従って同定を試みた結果、上記微生物 (本菌株) は、アルテロモナス属に属することが判明した。尚、本菌株は、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に、FERM P-11685として寄託されている。
【0012】
上記表1に示す性質を有する菌株を培養し、得られた培養物から通常の精製手法によってアルギン酸リアーゼを分離精製する。
培地としては、例えば、アルギン酸ナトリウム(10g)、人工海水〔塩化ナトリウム 300mM、塩化カリウム10mM、硫酸マグネシウム(7水和物)50mM、塩化カルシウム(2水塩)10mMを含有〕、クエン酸鉄アンモニウム10g/100ml 脱塩水、リン酸水素二カリウム(3水和物)7.5g/100ml 脱塩水、塩化アンモニウム20g/100ml 脱塩水及び1M トリス−塩酸緩衝液を含む培地組成が挙げられる。
【0013】
培養は、例えば、凍結乾燥菌体アルテロモナス・エスピー No.1786株を2回前培養 (20℃、1日) 後、本培養 (25℃、1日) を行う。
このようにして上記微生物を培養することによって、アルギン酸リアーゼが蓄積された培養上清又は微生物を含む培養物が得られる。次に、該培養物を材料にして、蛋白質の分離、精製に用いられる方法によりアルギン酸リアーゼを得ることができる。例えば、上記培養液から分画分子量500,000 限外濾過膜 (ロミコン社製) により菌体を取り除いて粗アルギン酸リアーゼ溶液とするほか、更に、該粗アルギン酸リアーゼ溶液について、塩析法、遠心分離法、各種クロマトグラフィー、電気泳動等を適当に組み合わせて精製を行ってもよい。各種クロマトグラフィーとしては、疎水、ゲルろ過、イオン交換、逆相、アフィニティークロマトグラフィー等が挙げられる。また、精製品の純度及びその分子量の確認のため、SDS(ラウリル硫酸ナトリウム)ポリアクリルアミドゲル電気泳動等を用いることもできる。
【0014】
このようにして得られたアルギン酸リアーゼの酵素的性質は次の通りである。▲1▼作用:アルギン酸又はその塩を基質として上記微生物の生産するアルギン酸リアーゼを反応させた時、反応生成物であるアルギン酸オリゴ糖又はその塩の二重結合に由来する特異吸収波長である230nm における吸光度の増加、及び生じるオリゴ糖による還元力の増加が確認された。
【0015】
▲2▼至適pH:上記微生物の生産するアルギン酸リアーゼは、pH7.0〜7.5の範囲で相対活性量が高く、相対活性量が最大になるpH7.0が至適pHである。▲3▼至適温度及び熱安定性:上記微生物の生産するアルギン酸リアーゼは、45〜55℃の範囲で高くなる。
▲4▼酵素活性:下記組成の反応液を用い、アルギン酸ナトリウムとアルギン酸リアーゼを50℃にて10分間反応させ、生成したオリゴ糖量をネルソン・ソモギー法により測定することにより、アルギン酸リアーゼの酵素活性を測定できる。この酵素活性は、1μmoleのマンニュロン酸に相当するアルギン酸ナトリウムオリゴ糖を生成する酵素量を1単位として示す。酵素活性測定には、アルギン酸カリウムを用いても良い。
(反応液の組成)
・0.5%アルギン酸ナトリウム(和光純薬製) を含む0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液 (pH7.0) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.45ml
・酵素液・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.05ml
尚、本発明のアルギン酸オリゴ糖又はその塩を製造するためには、上記本菌株を通常の変異手段を適用して得られる変異株であってアルギン酸リアーゼ産生能を有する菌株を培養して得られるアルギン酸リアーゼも使用することができる。
【0016】
原料のアルギン酸又はその塩は若干のカルシウムを含有するため、それらを用いて製造したアルギン酸オリゴ糖又はその塩にもカルシウムが含まれている可能性がある。カルシウムは表皮角化細胞の角質化(分化) を促す物質として知られ、カルシウムが存在すると十分に増殖する前に角質化してしまうため、増殖段階の培地からカルシウムを除く必要がある。そこで、本発明のアルギン酸オリゴ糖又はその塩について、脱塩及び脱カルシウム処理を行うのが好ましい。該処理には電気透析装置 (旭化成工業(株) 製、商品名、マイクロアシライザー) 等を用いることが好ましい。
【0017】
次に、原料のアルギン酸又はその塩に、前記アルギン酸リアーゼを反応させてアルギン酸オリゴ糖又はその塩を得る。
尚、この場合、アルギン酸又はその塩とアルギン酸リアーゼとの反応温度は45〜55℃、反応時のpHが7.0〜7.5の条件で行うのが好ましく、50℃、pH7.0の条件で行うのが更に好ましい。
【0018】
本発明のアルギン酸オリゴ糖又はその塩としては、2糖〜5糖を中心とした分子量1,000 以下のものが挙げられ、アルギン酸オリゴ糖又はその塩における2糖〜5糖の割合は80〜100重量%である。
以上のようにして得られるアルギン酸オリゴ糖又はその塩の活性成分は、そのまま本発明のヒト表皮角化細胞賦活剤として用いることができ、凍結乾燥、噴霧乾燥、熱風乾燥等の方法で乾燥しておくことができる。
【0019】
本発明のヒト表皮角化細胞賦活剤は、例えば、患者から得られた表皮細胞を培養して増殖させることを目的として用いることができる。また、市販されている正常ヒト表皮角化細胞培養キットに本発明のヒト表皮角化細胞賦活剤を添加して培養液を調製し、これを用いて細胞の増殖を促進させることができる。この場合、培地に含めるヒト表皮角化細胞賦活剤の有効量は、0.001 〜100 mg/ml、好ましくは0.01〜0.1 mg/mlである。
【0020】
また、本発明のヒト表皮角化細胞賦活剤を医薬として適用する場合は、ヒト表皮角化細胞賦活作用により、各種疾患又は症状を治療又は改善する目的であれば、特に対象を限定しない。例えば、やけど、創傷又はアザ等に対する治療を特異目的として用いることができる。また、投与する方法は非経口により行い、その投与形態としては、クリーム剤、軟膏、パップ剤等が挙げられる。また、その投与量は動物か人間かによって、また、年齢、投与経路、投与回数により異なり、広範囲に変えることができる。この場合、本発明のヒト表皮角化細胞賦活剤の有効量と適切な希釈剤及び薬理学的に使用し得る担体との組成物として投与される有効量は、0.01〜100mg/cm2 皮膚/日であり、1日1回から数回に分けて2日以上投与される。
【0021】
本発明のヒト表皮角化細胞賦活剤を非経口投与する場合、安定剤、緩衝剤、保存剤、等張化剤等の添加剤を含有させることもできる。
本発明において、アルギン酸オリゴ糖又はその塩がヒト表皮角化細胞賦活剤として有効であることを裏付ける薬理試験を以下に述べる。
〔ヒト表皮角化細胞増殖試験〕
(株)森永生科学研究所製の正常ヒト表皮角化細胞培養キットを用い、ヒト表皮角化細胞の増殖に及ぼす本発明の増殖賦活剤としての効果を調べるため、以下の試験を行った。
【0022】
〔試験例1〕
凍結した正常ヒト表皮角化細胞を融解後、表皮角化細胞用無血清培地で培養し、さらに2回継代した。そして、3回目の継代時に上記の無血清培地に濾過滅菌したアルギン酸カリウムオリゴ糖 (濃度1mg/ml)を加え、経時的に細胞数を計測するとともに、細胞の増殖の様子を形態学的に観察した。尚、アルギン酸カリウムオリゴ糖を加えなかったものを対照として比較した。
【0023】
その結果、図1に示す通り、アルギン酸カリウムオリゴ糖含有培養基(「○」)では、対照培養基(「●」)と比較して、顕著な細胞増加が認められた。一方、アルギン酸カリウムオリゴ糖の添加直後、6時間後及び48時間後における細胞の増殖の様子をそれぞれ図2、図3及び図4に写真として示した。対照培養基(写真上段)に比較して、アルギン酸カリウムオリゴ糖含有培養基(写真下段)の方が細胞数が多いのは写真からも明らかである。以上より、アルギン酸カリウムオリゴ糖を加えることによってヒト表皮角化細胞の増殖活性を高めることができた。
【0024】
〔試験例2〕
凍結した正常ヒト表皮角化細胞を融解後、表皮角化細胞用無血清培地に濾過滅菌したアルギン酸ナトリウムオリゴ糖を添加した培地(0.01、0.10、1.00mg/ml)で培養し、セミ・コンフルエント(付着細胞が培養器の面積の約80%を占める状態)に達したところで継代を行った。セミ・コンフルエントに達する時間及び継代数を検討し、細胞の様子を形態学的に観察した。尚、アルギン酸ナトリウムオリゴ糖を加えなかったものを対照として比較した。
【0025】
表2にそれぞれの継代数におけるセミ・コンフルエント達成時間を示した。
【0026】
【表2】
Figure 0003825069
【0027】
アルギン酸ナトリウムオリゴ糖含有培養基では、継代に適した状態であるセミ・コンフルエントになる時間が継代数4回以降徐々に長くなったものの、10回の継代でも細胞の増殖が可能であった。これに対して、対照培養基では、6回目の継代で増殖は認められず、継代できなかった。図5に継代数6回の細胞数の経時的変化を示した。アルギン酸ナトリウムオリゴ糖含有培養基では、0.01(「●」)、0.10(「▲」)、1.00(「■」)mg/ml のいずれの濃度においても4日でセミ・コンフルエントに達し、継代を行うことができたが、対照培養基(「○」)では、7日間培養しても増殖は認められず、継代できない状態になった。通常、継代数4回以降は、細胞の増殖活性は衰え、正常な状態は期待できない上に、6回以上の継代はできないが、アルギン酸ナトリウムオリゴ糖の添加により細胞の増殖活性が高められ、10回継代しても細胞が増殖可能であることが確認できた。継代数6回の対照培養基の培養7日目の細胞の形態学的様子を図6に、継代数6〜10回までのアルギン酸ナトリウムオリゴ糖含有培養基のセミ・コンフルエントに達した細胞の形態学的様子をそれぞれ図7〜11に写真として示した。写真から明らかな通り、対照培養基(図6)では6回目の継代で増殖しなくなったのに対して、アルギン酸ナトリウムオリゴ糖を添加した培養基(図7〜11)では、継代数に関係なく正常な増殖を維持することができることがわかった。
【0028】
以上より、本発明のヒト表皮角化細胞賦活剤は、継代数の少ない細胞の増殖活性を高めて培養期間を短縮できるだけでなく、4回以上の継代により増殖活性が衰えた細胞の賦活化にも効果があり、継代数を増加させることがわかった。
【0029】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。
〔実施例1〕 アルギン酸塩オリゴ糖の製造
(1) アルギン酸リアーゼの調製
(培地組成)
・アルギン酸ナトリウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 g
・人工海水*1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1000 ml
・Fe stock*2・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 ml
・Pi stock*3・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 ml
・NH4 stock*4・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 ml
・1M トリス−塩酸緩衝液 (pH7.8)・・・・・・・・・・・・・・ 50 ml
────────────────────────────────────
*1:人工海水:塩化ナトリウム 300mM、塩化カリウム10mM、硫酸マグネシウム (7水和物) 50mM、塩化カルシウム (2水塩) 10mM
*2:Fe stock:クエン酸鉄アンモニウム 10g/100ml 脱塩水
*3:Pi stock:リン酸水素二カリウム (3水和物) 7.5g/100ml 脱塩水
*4:NH4 stock:塩化アンモニウム 20g/100ml 脱塩水
上記組成の培地を用い、凍結乾燥菌体アルテロモナス・エスピー No.1786株を2回前培養 (20℃、1日) 後、本培養 (25℃、1日) を行った。その結果、酵素活性が培養液1ml当たり、0.90単位であるアルギン酸リアーゼ培養液が生産された。
【0030】
上記培養液から分画分子量500,000 限外濾過膜 (ロミコン社製) により菌体を取り除いて粗アルギン酸リアーゼ溶液とした。
(2) アルギン酸カリウムオリゴ糖の製造
アルギン酸カリウム (10.0kg) を90Lの脱塩水に溶解後、上記(1)で得られた粗アルギン酸リアーゼ溶液 (50,000U) を加え、40℃で20時間攪拌しながら反応させた。反応液を除蛋白、脱塩後、凍結乾燥してアルギン酸カリウムオリゴ糖粉末を4.2kg得た。
【0031】
尚、同様にしてアルギン酸ナトリウム、又はアルギン酸ナトリウムとアルギン酸カリウムとの混合物を用いれば、アルギン酸ナトリウムオリゴ糖、又はアルギン酸ナトリウムオリゴ糖とアルギン酸カリウムオリゴ糖との混合物が得られる。
(3) カルシウムを含まないアルギン酸塩オリゴ糖の製造
上記(2)で製造したアルギン酸カリウムオリゴ糖 (40.0g) を電気透析装置 (旭化成工業 (株) 製、商品名、マイクロアシライザー) に供してカルシウムイオンを除去し、精製アルギン酸カリウムオリゴ糖 (39.5g) を得た。そのオリゴ糖を精製前後で元素レベルで比較した。その結果を表3に示す。その結果からカルシウムを除去できたことが確認された。
【0032】
【表3】
Figure 0003825069
【0033】
尚、同様にしてカルシウムを含まないアルギン酸ナトリウムオリゴ糖も調製することができる。
〔実施例2〕 ヒト表皮角化細胞賦活剤を含む培養液の調製
(1) 正常ヒト表皮角化細胞用培地(I)
森永生科学研究所製角化細胞用無血清基礎液体培地の基礎液体培地250mlに、付属の牛脳下垂体抽出液2.0ml及び上皮成長因子2.5μgを添加混合し、完全液体培地を調製する。実施例1(3)で製造したアルギン酸ナトリウムオリゴ糖を濾過滅菌処理した後、完全液体培地へ濃度1mg/培地mlとなるように添加し、本発明のヒト表皮角化細胞賦活剤を含む培養液を得た。
【0034】
(2) 正常ヒト表皮角化細胞用培地(II)
(株)森永生科学研究所製角化細胞用無血清基礎液体培地の基礎液体培地250mlに、付属の牛脳下垂体抽出液2.0ml及び上皮成長因子2.5 μgを添加混合し、完全液体培地を調製する。実施例1(3)で製造したアルギン酸カリウムオリゴ糖を濾過滅菌処理した後、完全液体培地へ濃度1mg/培地mlとなるように添加し、本発明のヒト表皮角化細胞賦活剤を含む培養液を得た。
【0035】
〔参考例1〕
本参考例は、本発明のアルギン酸カリウムオリゴ糖の重合度の分析例を示すものである。
重合度の決定は、薄層クロマトグラフィー (TLC) により行った。
まず最初に、標準物質としてアルギン酸ナトリウムを1Nトリルオロ酢酸で 100℃、24時間で加水分解して調製した。尚、標準物質としてアルギン酸カリウムを用いても良い。
【0036】
TLCは、以下のような条件で行った。
薄層プレート:シリカゲル60HPTLCプレート (メルク社製)
展開溶媒:1−ブタノール/酢酸/水 (5/2/3)
発色試薬:ジフェニルアミン−アニリン−リン酸試薬
上記アルギン酸ナトリウム加水分解物 (標準物質) をTLCに供したところ、6つのスポットが得られた。6つのスポットのうち、一番移動度の大きいスポットは、D−マンニュロン酸 (シグマ社製D−マンニュロン酸ラクトンをアルカリ処理してラクトン環をはずしたもの、Rf値0.38、DP=1) と一致した。さらに、他のスポットに関して、Bio-Gel P-2 (1.5×46cm、0.1M酢酸緩衝液 (pH4.0) で溶出) でゲル濾過して、精製オリゴ糖を得た。この精製オリゴ糖について、ウロン酸量 (オルシノール鉄塩酸法、Brown;Arch. Biochem., 11, 269-278 (1946)) と還元糖類 (ソモギーネルソン法、Somogyi;J.Biol. Chem., 195, 19-23(1952) 、Nelson;J.Biol. Chem., 153, 375-380(1944)) を測定し、ウロン酸量/還元糖量により重合度 (DP) を算出したところ、それぞれ2、3、4、5、6となった。
【0037】
そして、これらの6種の精製オリゴ糖 (D−マンニュロン酸を含む) を用いて、薄層クロマトグラフィーにおける相対移動度 (Rf/1−Rf) の対数値と重合度 (DP) との関係を検討した結果、直線性の検量線が得られた(図12)。
図12中、「●」はアルギン酸ナトリウム加水分解物(標準物質)、「○」はアルギン酸オリゴ糖(a、b、c、d)を示す。
【0038】
次に、実施例1(2)の方法で調製したアルギン酸カリウムオリゴ糖を、DEAE GLASS(ナカナイテスク社製) を用いたNaClによる0から2Mグラジエント溶出により高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供し、フラクションコレクターで分画した (特開平4−266896号公報参照) 。この溶出パターンを図13に示す。230nm に吸収のある画分である1〜8(以下、それぞれ「P−1」、「P−2」、・・・「P−8」とする)のうち、主な画分であるP−2、P−3、P−5、P−8を回収し、それぞれの画分を Bio-Gel P-2(バイオラッド社製) を充填したカラムを用いて脱塩 (特開平4−169188号公報参照) した後凍結乾燥し、TLCに供した。その結果、図14に示すような薄層クロマトグラムが得られた。図14において、Oは原点を示す。MはD−マンニュロン酸、Sはアルギン酸ナトリウムの酵素分解オリゴ糖、2は、P−2画分、3はP−3画分、5は、P−5画分、8は、P−8画分を示す。また、a、b、c、dはRf値を算出したスポットを示す。
【0039】
図14の薄層クロマトグラムからわかるように、各サンプルとも1スポットにならなかった。そこで、主なスポットのRf値を求め、図12に示した検量線の上にプロットし、重合度を検討した。その結果、分画したオリゴ糖 (P−2、P−3、P−5、P−8) の重合度は、主に2〜5であることが明らかになった。
すなわち、アルギン酸カリウムオリゴ糖は、重合度2〜5の混合物であった。
【0040】
本発明のアルギン酸カリウムオリゴ糖の構造の例を図15に示した。(a) は重合度2、(b) は重合度3、(c) は重合度4、(d) は重合度5のオリゴ糖をそれぞれ示している。構成糖はD−マンニュロン酸及びL−グルロン酸であるが、ホモ型、ヘテロ型どちらの場合もあり、「-COOR」基のRとしては、H、Na又はKの各場合がある。
【0041】
【発明の効果】
本発明により、ヒト表皮角化細胞の培養系をより安定化させ、実用的に利用可能な4回以上の継代を可能にするヒト表皮角化細胞賦活剤が提供される。
本発明のヒト表皮角化細胞賦活剤は、継代数の少ない細胞の増殖活性を高めて培養期間を短縮できるだけでなく、継代を繰り返して増殖能力の著しく衰えた細胞の不活化にも効果があり、10回以上継代しても増殖が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】ヒト表皮角化細胞増殖試験の結果を示す図である。
【図2】ヒト表皮角化細胞における生物の形態を示す写真である。
【図3】ヒト表皮角化細胞における生物の形態を示す写真である。
【図4】ヒト表皮角化細胞における生物の形態を示す写真である。
【図5】継代を6回繰り返したヒト表皮角化細胞の増殖試験の結果を示す図である。
【図6】ヒト表皮角化細胞における生物の形態を示す写真である。
【図7】ヒト表皮角化細胞における生物の形態を示す写真である。
【図8】ヒト表皮角化細胞における生物の形態を示す写真である。
【図9】ヒト表皮角化細胞における生物の形態を示す写真である。
【図10】ヒト表皮角化細胞における生物の形態を示す写真である。
【図11】ヒト表皮角化細胞における生物の形態を示す写真である。
【図12】アルギン酸ナトリウムオリゴ糖の重合度と相対移動度の対数値との関係を示す図である。
【図13】アルギン酸カリウムオリゴ糖のHPLCの結果を示す図である。
【図14】アルギン酸カリウムオリゴ糖の薄層クロマトグラムを示す図である。
【図15】アルギン酸塩オリゴ糖の構造の例を示す模式図である。

Claims (6)

  1. 下記の一般式( a )〜( d
    Figure 0003825069
    (式中、
    Figure 0003825069
    は、マンニュロン酸又はグルロン酸を表し、 R は水素、ナトリウム又はカリウムを表す)
    によって表されるアルギン酸オリゴ糖又はその塩を有効成分として含むヒト表皮角化細胞賦活剤。
  2. アルギン酸オリゴ糖又はその塩が、アルギン酸又はその塩をアルテロモナス属に属する微生物の菌体又はその処理物で処理したものである、請求項1記載のヒト表皮角化細胞賦活剤。
  3. アルギン酸オリゴ糖又はその塩が、分子量1,000以下のものである、請求項1記載のヒト表皮角化細胞賦活剤。
  4. アルギン酸オリゴ糖又はその塩における2糖〜5糖の割合が80〜100重量%である、請求項3記載のヒト表皮角化細胞賦活剤。
  5. ヒト表皮角化細胞用無血清培地に添加してヒト表皮角化細胞を増殖させるための、請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒト表皮角化細胞賦活剤。
  6. やけど、創傷又はアザの治療のための、かつ非経口投与用の、請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒト表皮角化細胞賦活剤。
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