JP3824993B2 - 薄膜の製造方法およびスパッタリング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は薄膜の製造方法およびスパッタリング装置に係り、特にスパッタを行うことにより、所望の膜厚分布をもつ薄膜を基板上に形成するための薄膜の製造方法およびスパッタリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から基板上に薄膜を形成した光学部品や電子部品等がある。このような光学部品や電子部品のなかには、基板上の膜厚分布を均一ではなく、一定の方向に向けて増加または減少するように変化させた薄膜(以下「傾斜膜厚薄膜」という)を利用したものがある。例えば、液晶プロジェクタに用いられるダイクロイックミラーでも、傾斜膜厚薄膜の利用が試みられている。
【0003】
図21は、ダイクロイックミラーが用いられる液晶プロジェクタの光学系の概略を説明する図である。図21に示すように、液晶プロジェクタの光学系は、光発生部310と、光分離部320と、光変調部330と、光合成部340と、投写部350とから構成されている。光分離部320には、ダイクロイックミラー321と反射鏡322とが配置され、ダイクロイックミラー321によって、光発生部310からの光が赤,緑,青の光束R,G,Bに分離される。光束R,G,Bに分離された光束は、光変調部330で所望の映像を生成するために変調される。そして、光変調部330で変調された光束R,G,Bが、光合成部340で合成されて、所望の映像が生成され、生成された映像が投写部350で拡大される。
【0004】
このように、ダイクロイックミラー321は、光発生部310からの光を赤,緑,青の光束R,G,Bに分離するものである。液晶プロジェクタで鮮明な映像を映し出すためには、ダイクロイックミラー321で反射する光と、透過する光の波長領域が鮮明に分かれていることが好ましい。ところが、液晶プロジェクタの小型化のために光発生部310と、光分離部320との距離を近づけると、ダイクロイックミラー321で反射する光と、透過する光の波長領域を鮮明に分けることができない場合が生じることがある。つまり、光発生部310と、光分離部320との距離が近づくと、ダイクロイックミラー321の光発生部310から近い側(一端側)と遠い側(他端側)とで、ダイクロイックミラー321に対する光発生部310からの光の入射角度に微妙な差異が生じて、反射する光の波長にずれが生じる場合がある。
【0005】
そこで、この不都合を解消するために、ダイクロイックミラー表層の薄膜の光学特性を、ダイクロイックミラーの一端側から他端側に向けて徐々に変化させることが試みられている。具体的には、傾斜膜厚薄膜をダイクロイックミラーに用いて光学膜厚に傾斜をもたせ、ダイクロイックミラーに対する光の入射角度のずれに伴う反射光の波長のずれを膜厚の傾斜によって補正することが行なわれる。
このような傾斜膜厚薄膜を形成するための薄膜形成技術については、例えば、斜め蒸着技術が知られている。
【0006】
図22は、従来の蒸着技術である斜め蒸着技術を説明した図である。薄膜を形成する技術として一般的によく知られている蒸着技術では、図22(A)のように、蒸着源201を中心とした略球面上の基板保持装置202に複数の基板204を配置することで(図中左側の3枚の基板204で例示する)、各基板204と蒸着源201の距離を等しくするとともに、基板保持装置202を回転させながら蒸着を行うことで、各基板204に均一な膜厚の薄膜を形成させている。
【0007】
これに対して、斜め蒸着技術では、図22(A)のように、各基板205を蒸着源201に対して斜めに傾けた状態で基板保持装置202に配置して(図中右側の3枚の基板205で例示する)、蒸着源201から基板205一端側までの距離D1と、蒸着源201から基板205の他端側までの距離D2に変化を与えて、基板205上に傾斜膜厚薄膜を形成させている。
【0008】
傾斜膜厚薄膜を形成するための技術としては、この斜め蒸着技術の他にも、特許文献1,特許文献2に記載されているようなマスク蒸着技術も知られている。
図23は、従来の蒸着技術であるマスク蒸着技術を説明した図である。図23(A)に示すように、マスク蒸着技術は、特殊形状の遮蔽板(マスク)203を基板204と蒸着源201の間に配置して、マスク203を駆動(例えば回転)させながら蒸着を行い、所望の膜厚分布をもった薄膜を形成するものである。
【0009】
【特許文献1】
特開平7−138740号公報(第2−4頁、図1)
【特許文献2】
特開平2−73974号公報(第2−4頁、第1図)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般的な蒸着法により薄膜を作成する場合には、蒸着源と基板との間に、ある程度の間隔をとる必要がある。一般的には、蒸着源と基板との間隔は500mm〜1000mmである。そのため、斜め蒸着法において、基板205を傾けて基板保持装置202に保持させたとしても、蒸発源201から基板205の一端側までの距離D1と、蒸発源201から基板205の他端側までの距離D2との差は、蒸着源と基板との間の距離に比べて僅かな差でしかなく、基板の大きさに対して膜厚の傾斜の度合いが弱い薄膜しか製造できないという問題があった。
【0011】
そのため、例えば、液晶プロジェクタの小型化を達成するためには、ダイクロイックミラーにおける膜厚の傾斜の度合いを強くすることが求められるが、従来の蒸着法では十分な膜厚の傾斜を備えた傾斜膜厚薄膜を作成することができなかった。
【0012】
また、従来の蒸着技術では、基板保持装置202を回転(公転)させたり、基板204自体を回転(自転)させたりしながら蒸着が行なわれることがよくあるが、このような場合に、従来のマスク蒸着法を採用しようとすると、基板保持装置202に多数配設された各基板204の配置や、基板204の公転や自転に対応するように、マスク203の形状やマスク203の駆動装置等を設計するのは、マスク203の形状等が複雑に成らざるを得ず困難であった。
【0013】
特に、図22(B)や図23(B)に示すように、蒸着源201を複数設けて薄膜を形成する場合には、各蒸着201の蒸発物質によって蒸発の速度や分布が異なり、それらを考慮しながら、各基板204の位置に対応してマスク203の形状等を設計するのは極めて困難であるという問題があった。また、複数の蒸着201に異種の蒸発物質を用いて、異なる物質から構成される薄膜を積層させて薄膜を形成する場合には、複数の蒸着源201に対して、共通の形状のマスク203を用いたり、マスク203の設置位置を共通にしていたりしたため、異なる物質から構成されるそれぞれの層で膜厚分布を独立に調整することが難しく、精密な膜厚分布を各層で得ることが難しいという問題があった。
【0014】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、膜厚の傾斜の度合いが強い薄膜を簡易に製造するための薄膜の製造方法およびスパッタリング装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、請求項1に係る発明によれば、真空槽内に第1の成膜プロセスゾーンと第2の成膜プロセスゾーンとを互いに空間的に分離させてスパッタにより薄膜を形成させる薄膜の製造方法であって、形成する薄膜の膜厚を均一にするための補正板と形成する薄膜に所望の膜厚分布を与えるための遮蔽板とを前記基板と第1の成膜プロセスゾーンに配設された第1のターゲットとの間に設けて、前記基板と前記補正板及び前記遮蔽板とを相対移動させながらスパッタを行うことで前記基板上に薄膜を形成させる工程と、前記補正板と前記遮蔽板とを前記基板と前記第2の成膜プロセスゾーンに配設された第2のターゲットとの間に設けて、前記基板と前記補正板及び前記遮蔽板とを相対移動させながらスパッタを行うことで前記基板上に薄膜を形成させる工程とを備えることにより解決される。
【0016】
このように、空間的に分離された第1の成膜プロセスゾーンと第2の成膜プロセスゾーンとそれぞれに、形成する薄膜の膜厚を均一にするための補正板と形成する薄膜に所望の膜厚分布を与えるための遮蔽板とを設けてスパッタを行っているため、第1の成膜プロセスゾーンと第2の成膜プロセスゾーンとで、それぞれにおけるスパッタの影響を受けることなく、第1の成膜プロセスゾーンと第2の成膜プロセスゾーンとそれぞれに設けられた遮蔽板の形状に応じた膜厚分布を備える薄膜を形成することが可能となる。したがって、第1の成膜プロセスゾーンで形成する薄膜と、第2の成膜プロセスゾーンで形成する薄膜と、それぞれの薄膜の膜厚分布を、独立に、且つ精度良く調整することができる。
【0017】
上記課題は、請求項2に係る発明によれば、真空槽内に成膜プロセスゾーンと反応プロセスゾーンとを互いに空間的に分離させてスパッタにより薄膜を形成させる薄膜の製造方法であって、前記成膜プロセスゾーンに配設されたターゲットに対して、スパッタを行うことで基板上に金属或いは不完全反応物からなる中間薄膜を形成させる中間薄膜形成工程と、前記反応プロセスゾーンで、前記中間薄膜を構成する前記金属或いは前記不完全反応物と反応性ガスの活性種とを反応させて最終薄膜を形成させる膜組成変換工程と、を備え、前記中間薄膜形成工程では、形成する薄膜の膜厚を均一にするための補正板と形成する薄膜に所望の膜厚分布を与えるための遮蔽板とを前記基板と前記ターゲットとの間に設けて、前記基板と前記補正板及び前記遮蔽板とを相対移動させながら前記中間薄膜を形成させ、前記膜組成変換工程では、前記最終薄膜の膜厚を前記中間薄膜からなる薄膜の膜厚よりも増加させることにより解決される。
【0018】
このように、中間薄膜形成工程において、形成する薄膜の膜厚を均一にするための補正板と形成する薄膜に所望の膜厚分布を与えるための遮蔽板とを、基板とターゲットとの間に設けて、基板と補正板及び遮蔽板とを相対移動させながら中間薄膜を形成することで、遮蔽板の形状に応じた膜厚分布を備える中間薄膜を形成することが可能となるとともに、膜組成変換工程でさらに中間薄膜の膜厚分布に変化を与えることができる。したがって、膜厚の傾斜の度合いが強い薄膜を簡易に製造することができる。
0019
上記課題は、請求項に係る発明によれば、真空槽内に成膜プロセスゾーンと反応プロセスゾーンとを互いに空間的に分離させてスパッタにより薄膜を形成させる薄膜の製造方法であって、前記第1の成膜プロセスゾーンに配設された第1のターゲットに対して、スパッタを行うことで基板上に第1の金属或いは第1の不完全反応物からなる第1中間薄膜を形成させる第1中間薄膜形成工程と、前記反応プロセスゾーンで、前記第1中間薄膜を構成する前記第1の金属或いは前記第1の不完全反応物と反応性ガスの活性種とを反応させて第1の最終薄膜を形成させる第1膜組成変換工程と、前記第2の成膜プロセスゾーンに配設された第2のターゲットに対して、スパッタを行うことで前記第1最終薄膜の上に第2の金属或いは第2の不完全反応物からなる第2中間薄膜を形成させる第2中間薄膜形成工程と、前記反応プロセスゾーンで、前記第2中間薄膜を構成する前記第2の金属或いは前記第2の不完全反応物と反応性ガスの活性種とを反応させて前記第2の最終薄膜を形成させる第2膜組成変換工程と、を備え、前記第1中間薄膜形成工程では、形成する薄膜の膜厚を均一にするための補正板と形成する薄膜に所望の膜厚分布を与えるための遮蔽板とを前記基板と前記第1のターゲットとの間に設けて、前記基板と前記補正板及び前記遮蔽板とを相対移動させながら前記第1中間薄膜を形成させ、前記第2中間薄膜形成工程では、前記補正板と前記遮蔽板とを前記基板と前記第2のターゲットとの間に設けて、前記基板と前記補正板及び前記遮蔽板とを相対移動させながら前記第2中間薄膜を形成させ、前記第1膜組成変換工程では、前記第1最終薄膜の膜厚を前記第1中間薄膜からなる薄膜の膜厚よりも増加させ、前記第2膜組成変換工程では、前記第2最終薄膜の膜厚を前記第2中間薄膜からなる薄膜の膜厚よりも増加させることにより解決される。
0020
このように、第1中間薄膜形成工程と第2中間薄膜形成工程において、形成する薄膜の膜厚を均一にするための補正板と形成する薄膜に所望の膜厚分布を与えるための遮蔽板とを、基板とターゲットとの間に設けて第1中間薄膜と第2中間薄膜を形成することで、遮蔽板の形状に応じた膜厚分布を備える第1中間薄膜及び第2中間薄膜を形成することが可能となるとともに、前記第1膜組成変換工程及び前記第2膜組成変換工程でさらに第1中間薄膜及び第2中間薄膜の膜厚分布に変化を与えることができる。したがって、膜厚の傾斜の度合いが強い薄膜を簡易に製造することができる。
0021
また、空間的に分離された第1の成膜プロセスゾーンと第2の成膜プロセスゾーンとで行われる第1中間薄膜形成工程と第2中間薄膜形成工程において、補正板と遮蔽板とを、基板とターゲットとの間に設けて第1中間薄膜と第2中間薄膜を形成するため、第1中間薄膜形成工程では、第2の製膜プロセスゾーンのターゲットから発生するスパッタ原子の影響を考慮することなく、第1中間薄膜形成工程における遮蔽板の形状に応じた膜厚分布を備える第1中間薄膜を形成することが可能となる。また、第2中間薄膜形成工程では、第1の製膜プロセスゾーンのターゲットから発生するスパッタ原子の影響を考慮することなく、第2中間薄膜形成工程における遮蔽板の形状に応じた膜厚分布を備える第2中間薄膜を形成することが可能となる。したがって、第1の成膜プロセスゾーンで形成する第1中間薄膜と、第2の成膜プロセスゾーンで形成する第2中間薄膜と、それぞれの薄膜の膜厚分布を、独立に、且つ精度良く調整することができる。
0022
このとき、請求項に係る発明において、請求項に係る発明のように、前記第1中間薄膜と前記第1最終薄膜の膜厚の比が、前記第2中間薄膜と前記第2最終薄膜の膜厚の比とほぼ一致するように、前記第1中間薄膜形成工程と前記第2中間薄膜形成工程の少なくとも一方において前記反応性ガスを導入しながら前記第1中間薄膜及び前記第2中間薄膜を形成させると好適である。
0023
このように、第1中間薄膜形成工程と第2中間薄膜形成工程の少なくとも一方において反応性ガスを導入しながら薄膜を形成することで、第1中間薄膜と第2中間薄膜の組成を所望の組成にすることができ、膜厚分布を揃えることが可能となる。
0024
上記課題は、請求項に係る発明によれば、真空槽内の第1の成膜プロセスゾーンに配置された第1のターゲットと第2の成膜プロセスゾーンに配置された第2のターゲットに対してスパッタを行うことで基板上に薄膜を形成させるスパッタリング装置であって、前記第1の成膜プロセスゾーンと前記第2の成膜プロセスゾーンとを、互いに空間的に分離する仕切手段と、前記真空槽内に配された、前記基板を保持するための基板ホルダ及びスパッタ電極と、該スパッタ電極と前記基板ホルダとの間に固定された、形成する薄膜の膜厚を均一にするための補正板及び形成する薄膜に所望の膜厚分布を与えるための遮蔽板と、前記基板を前記補正板と前記遮蔽板に対して相対的に移動させるために前記基板ホルダを駆動する基板ホルダ駆動手段と、を備え、前記スパッタ電極と前記補正板と前記遮蔽板とが、前記第1の成膜プロセスゾーン及び前記第2の成膜プロセスゾーンにそれぞれ配置され、前記補正板及び前記遮蔽板は、前記スパッタ電極と前記基板ホルダとの間に配置されたことにより解決される。
0025
これにより、空間的に分離された第1の成膜プロセスゾーンと第2の成膜プロセスゾーンとそれぞれに、形成する薄膜の膜厚を均一にするための補正板及び形成する薄膜に所望の膜厚分布を与えるための遮蔽板を設けているため、第2の製膜プロセスゾーンのターゲットから発生するスパッタ原子の影響を考慮することなく、第1の成膜プロセスゾーンに配置する遮蔽板の形状を設計することが可能となる。また、第1の製膜プロセスゾーンのターゲットから発生するスパッタ原子の影響を考慮することなく、第2の成膜プロセスゾーンに配置する遮蔽板の形状を設計することが可能となる。したがって、複数のターゲットを用いて所望の膜厚分布を有する薄膜を製造する際に、補正板及び遮蔽板の形状等の設計が極めて容易になる。
0026
上記課題は、請求項に係る発明によれば、真空槽内の成膜プロセスゾーンに配設されたターゲットに対してスパッタを行うことで基板上に中間薄膜を形成させ、前記真空槽内の反応プロセスゾーンにおいて前記中間薄膜と電気的に中性な反応性ガスの活性種とを反応させて薄膜を形成するスパッタリング装置であって、前記真空槽内に配された、前記基板を保持する基板ホルダと、前記成膜プロセスゾーン及び前記反応プロセスゾーンとを、互いに空間的に分離する仕切手段と、前記成膜プロセスゾーンに配されたスパッタ電極と、該スパッタ電極と前記基板ホルダとの間に固定された、形成する薄膜の膜厚を均一にするための補正板、及び形成する薄膜に所望の膜厚分布を与えるための遮蔽板と、前記反応プロセスゾーンに連結された、前記活性種を発生するための活性種発生手段と、前記基板を前記成膜プロセスゾーンに面する位置と前記反応プロセスゾーンに面する位置との間で搬送するために前記基板ホルダを駆動する基板ホルダ駆動手段と、を備えたことにより解決される。
0027
このように、形成する薄膜の膜厚を均一にするための補正板と形成する薄膜に所望の膜厚分布を与えるための遮蔽板とを、スパッタ電極と基板ホルダとの間に設けることで、遮蔽板の形状に応じた膜厚分布を備える薄膜を成膜プロセスゾーンにおいて形成することが可能となるとともに、遮蔽板の形状を変更することで、製造する薄膜の膜厚分布を容易に変更することができる。また、成膜プロセスゾーンにおいて形成した薄膜を、反応プロセスゾーンにおいて活性種で反応させて、成膜プロセスゾーンにおいて形成した薄膜の膜厚分布に変化を与えることが可能となる。したがって、膜厚の傾斜の度合いが強い薄膜を簡易に製造することができる。
0028
このとき、請求項に係る発明において、請求項に係る発明のように、前記仕切手段は、少なくとも2つの前記成膜プロセスゾーンを、互いに空間的に分離すると好適である。
0029
これにより、空間的に分離された2つの成膜プロセスゾーンそれぞれに補正板及び遮蔽板を設けているため、一方の製膜プロセスゾーンのターゲットから発生するスパッタ原子の影響を考慮することなく、他方の成膜プロセスゾーンに配置する遮蔽板の形状を設計することが可能となる。すなわち、2つの成膜プロセスゾーンそれぞれに配置されるターゲットの材料や、それぞれでの成膜条件に応じて、それぞれに配置される補正板及び遮蔽板の形状を変更することができる。したがって、複数のターゲットを用いて所望の膜厚分布を有する薄膜を製造する際に、補正板及び遮蔽板の形状等の設計が極めて容易になる。
0030
このとき、請求項7に係る発明において、請求項に係る発明のように、前記少なくとも2つの前記成膜プロセスゾーンそれぞれに連結された、前記反応性ガスを導入するためのガス導入手段を備えると好適である。
0031
これにより、各成膜プロセスゾーンにそれぞれ反応性ガスを導入することが可能となり、各成膜プロセスゾーンで形成する薄膜の組成を所望の組成とすることができる。
0032
このとき、請求項乃至いずれかに係る発明において、請求項に係る発明のように、前記基板ホルダは、円筒状または中空の多角柱状であり、前記基板は前記基板ホルダの外周面に保持され、前記基板ホルダ駆動手段は、前記基板ホルダを回転駆動させると好適である。
0033
これにより、基板ホルダの外周面に保持させた多数の基板に対して、スパッタによる薄膜を形成することができる。したがって、薄膜の生産量を増加することができる。
0034
【発明の実施の形態】
本発明は、スパッタを行うことで基板上に薄膜を形成するための、薄膜の製造方法及びスパッタリング装置に関する発明である。以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する部材,部材の配置等は本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
0035
本実施形態では、目的とする膜厚を得るために、目的の膜厚よりもかなり薄い薄膜を基板上に繰り返して形成して目的の膜厚の薄膜を形成する。本実施形態では、平均0.01〜1.5nmの膜厚の薄膜を繰り返し形成して、目的とする数〜数百nm程度の膜厚の薄膜を形成している。本発明は、2極スパッタ,3極スパッタ,4極スパッタ,マグネトロンスパッタ,ECRスパッタ,バイアススパッタ等、公知の種々のスパッタを行うことにより実施することが可能である。
0036
図1および図2は、本実施形態のスパッタリング装置について示す説明図であり、図1が理解の容易のために一部断面を取った上面図、図2が図1の線A−B−Cに沿った側面図である。本実施形態では、スパッタの一例であるマグネトロンスパッタを行うスパッタリング装置を用いているが、これに限定されるものでなく、マグネトロン放電を用いない2極スパッタ等、他の公知のスパッタを行うスパッタリング装置を用いることもできる。
0037
本実施形態のスパッタリング装置1は、真空槽11と、薄膜を形成させる基板を真空槽11内で保持するための基板ホルダ13と、基板ホルダ13を駆動するための基板ホルダ駆動手段としてのモータ17と、薄膜を形成する空間である第1の成膜プロセスゾーン20,第2の成膜プロセスゾーン40,反応プロセスゾーン60を形成するための仕切手段としての仕切壁12,14,16と、スパッタ電極としてのマグネトロンスパッタ電極21a,21b,41a,41bと、交流電源23,43と、形成する薄膜の膜厚を均一にするための補正板35(図4,図5参照)と、形成する薄膜に所望の膜厚分布を与えるための遮蔽板36(図4,図5参照)と、活性種を発生するための活性種発生手段としての活性種発生装置61と、を主要な構成要素としている。なお、煩雑を避けるべく図1,図2において、補正板35、遮蔽板36の記載を省略している。
0038
真空槽11は、公知のスパッタリング装置で通常用いられるようなステンレス製で、略直方体形状を備える中空体である。真空槽11の形状は中空の円柱状であってもよい。真空槽11の底面には、排気用の配管が接続され、この配管には、図2に示すように、真空槽11内を排気するための真空ポンプ15が接続されている。この真空ポンプ15と図示しないコントローラとにより、真空槽11内の真空度が調整できるように構成されている。
0039
基板ホルダ13は、真空槽11内の略中央に配置されている。基板ホルダ13の形状は円筒状であり、その外周面に複数の基板を保持する。基板ホルダ13の形状は円筒状ではなく、中空の多角柱状であってもよい。基板ホルダ13は、真空槽11から電気的に絶縁されている。これにより、基板における異常放電を防止することが可能となる。基板ホルダ13は、円筒の筒方向の中心軸線Zが真空槽11の上下方向になるように真空槽11内に配設される。基板ホルダ13は、真空槽11内の真空状態を維持した状態で、真空槽11の上部に設けられたモータ17によって中心軸線Zを中心に回転駆動される。
0040
基板ホルダ13の外周面には、基板Sを基板ホルダ13に保持するための基板保持手段13aが設けられている。図3は、基板保持手段13aを説明する断面説明図である。図3の上下方向が、スパッタリング装置1の上下方向(中心軸線Zの方向)である。本実施形態では、基板保持手段13aは、基板を挟持するためのチャック部(不図示)を備えたステンレス製の台座であり、基板ホルダ13にボルト等により固定される。
0041
基板保持手段13aには基板Sが収納される凹部13bが設けられ、凹部13bは上下方向に一列に形成されている。本実施形態では、一列に6つの凹部13bを備えるが、この数は基板Sの大きさや、基板ホルダ13の大きさに等によって変更される。基板Sは、チャック部(不図示)で挟持された状態で基板保持手段13aの凹部13bに保持される。チャック部にはネジや、板ばね等が用いられる。このような基板保持手段13aは、基板ホルダ13の外周の周方向に沿って複数列設けられているため、多数の基板Sを、基板ホルダ13の中心軸線Zに沿った方向(上下方向)に所定間隔を保ちながら整列させた状態で、基板ホルダ13の外周面に保持することができる。
0042
本実施形態では、基板Sの薄膜を形成させる面(以下「膜形成面」という)と膜形成面の反対の面(以下「基板裏面」という)とが平行である平板状の基板Sを用いることとして、基板保持手段13aを構成する台座の形状は、基板Sを保持したときに、凹部13bの基板裏面と対向する面が、基板ホルダ13の中心軸線Zと垂直な方向を向くように形作られている。このため、基板Sの膜形成面が基板ホルダ13の中心軸線Zと垂直な方向を向くようになっている。
0043
第1の成膜プロセスゾーン20と第2の成膜プロセスゾーン40と反応プロセスゾーン60は、真空槽11内に固定された仕切壁12,14,16によって形成されている。成膜プロセスゾーンとしての第1の成膜プロセスゾーン20は仕切壁12で囲繞された状態で形成され、成膜プロセスゾーンとしての第2の成膜プロセスゾーン40は仕切壁14で囲繞された状態で形成され、反応プロセスゾーン60は仕切壁16で囲繞された状態で形成されている。
0044
本実施形態では、第1の成膜プロセスゾーン20と第2の成膜プロセスゾーン40が、基板ホルダ13を挟んで対向する位置に形成されるように仕切壁12,14が真空槽11に固定さている。また、反応プロセスゾーン60は、第1の成膜プロセスゾーン20(または第2の成膜プロセスゾーン40)が形成された位置から、基板ホルダの回転軸を中心に円周上に約90度回転した位置に形成されるように仕切壁16が真空槽11に固定されている。そして、第1の成膜プロセスゾーン20と第2の成膜プロセスゾーン40と反応プロセスゾーン60は、お互いに仕切壁12,14,16によって空間的に分離された状態で形成されている。
0045
モータ17によって基板ホルダ13が回転駆動されると、基板ホルダ13に保持された基板Sが、第1の成膜プロセスゾーン20に面する位置と第2の成膜プロセスゾーン40に面する位置と反応プロセスゾーン60に面する位置との間で搬送されることになる。これにより、基板Sは、後述の第1の成膜プロセスゾーン20に配置されるターゲット29a,29bや、第2の成膜プロセスゾーン40に配置されるターゲット49a,49bや、補正板35,遮蔽板36に対して相対的に移動することになる。
0046
なお、本実施形態における仕切壁12,14,16は、向かい合う1対の面が開口した筒状の直方体であり、ステンレス製である。仕切壁12,14,16は、真空槽11の側壁と基板ホルダ13との間に、真空槽11の側壁から基板ホルダ13の方向へ立設した状態で固定され、このとき仕切壁12,14,16の一方の開口した側が真空槽11の側壁に当接し、他方の開口した側が基板ホルダ13に面するように真空槽内に固定される。仕切壁12,14,16には、それぞれ不図示の水冷用の配管が取り付けられて、仕切壁12,14,16を冷却できるように構成されている。
0047
第1の成膜プロセスゾーン20,第2の成膜プロセスゾーン40のそれぞれには、ガス導入手段としてのマスフローコントローラ25,45が、配管を介して連結されている。このマスフローコントローラ25,45は、不活性ガスとしてのアルゴンガスを貯留するスパッタガスボンベ27,47、反応性ガスを貯留する反応性ガスボンベ79に接続されている。この反応性ガスは、反応性ガスボンベ79から、マスフローコントローラ25,45で制御して、配管を通して成膜プロセスゾーン20,40に導入可能に構成されている。反応性ガスとしては、例えば酸素ガス,窒素ガス,弗素ガス,オゾンガス等が考えられる。
0048
第1の成膜プロセスゾーン20には、基板ホルダ13の外周面に対向するように、真空槽11の壁面にマグネトロンスパッタ電極21a,21bが配置されている。このマグネトロンスパッタ電極21a,21bは、不図示の絶縁部材を介して接地電位にある真空槽11に固定されている。マグネトロンスパッタ電極21a,21bは、トランス24を介して、交流電源23に接続され、交番電界が印加可能に構成されている。マグネトロンスパッタ電極21a,21bには、第1のターゲットとしてのターゲット29a,29bが保持される。ターゲット29a,29bの形状は平板状であり、ターゲット29a,29bの基板ホルダ13の外周面と対向する面が、基板ホルダ13の中心軸線Zと垂直な方向を向くように保持される。
0049
第2の成膜プロセスゾーン40には、基板ホルダ13の外周面に対向するように、真空槽11の壁面にマグネトロンスパッタ電極41a,41bが配置されている。このマグネトロンスパッタ電極41a,41bは、不図示の絶縁部材を介して接地電位にある真空槽11に固定されている。マグネトロンスパッタ電極41a,41bは、トランス44を介して、交流電源43に接続され、交番電界が印加可能に構成されている。マグネトロンスパッタ電極41a,41bには、第2のターゲットとしてのターゲット49a,49bが保持される。ターゲット49a,49bの形状は平板状であり、ターゲット49a,49bの基板ホルダ13の外周面と対向する面が、基板ホルダ13の中心軸線Zと垂直な方向を向くように保持される。
0050
図4及び図5は、第1の製膜プロセスゾーン20に配置される補正板35及び遮蔽板36の配置状態を説明するための説明図である。図4は、基板ホルダ13からマグネトロンスパッタ電極21a,21bの方向をのぞんだときの説明図である。図4の上下方向が、スパッタリング装置1の上下方向(中心軸線Zの方向)である。図5は、図4のD−D断面で見たときの説明図である。
0051
補正板35及び遮蔽板36は、マグネトロンスパッタ電極21a,21bに保持されるターゲット29a,29bから発生するスパッタ原子が、基板ホルダ13の方向へ向かう量を調整するものである。なお、スパッタ原子とは、ターゲット29a,29b,49a,49bに対するスパッタによって、ターゲット29a,29b,49a,49bから発生する、ターゲット29a,29b,49a,49bを構成する原子または原子の集団である。
0052
本実施形態では、補正板35及び遮蔽板36は、仕切壁12の内壁面に固定されている。本実施形態のスパッタリング装置1では、スパッタを行うターゲットとして10mm程度の厚みのものを用いることとして、ターゲット29a,29bと基板ホルダ13との距離d1を80mm、ターゲット29a,29bと補正板35との距離d2を72mm、ターゲット29a,29bと遮蔽板36との距離d2を65mmとしている。
0053
補正板35は、スパッタを行うことにより基板Sに形成する薄膜の膜厚を均一にする役目を果たす。補正板35は、扇形状を備える板状体であり、仕切壁12の左右の内壁面に、左右対称に1枚ずつ、扇形状の曲線を形成する稜線が向かい合うように固定される。基板ホルダ13からマグネトロンスパッタ電極21a,21bの方向をのぞんだとき、補正板35によってターゲット29a,29bの一部が隠れるように配置される。このように、仕切壁12に扇形状を備える補正板35を固定することで、ターゲット29aから発生する基板ホルダ13の方向へ向かうスパッタ原子の量を規制して、基板Sに堆積するスパッタ原子の量が、基板S全面にわたって均一となるようにすることができる。これを図4,図5と図6で説明する。
0054
図6は、補正板35及び遮蔽板36と基板Sとが、基板ホルダ13の回転駆動によって相対的に移動する様子を説明する図であり、マグネトロンスパッタ電極21a,21bから基板ホルダ13の方向をのぞんだ説明図である。図6の上下方向が、スパッタリング装置1の上下方向(中心軸線Zの方向)である。基板ホルダ13を、基板ホルダ13の中心軸線Zを中心に回転させると、基板ホルダ13の外周面に上下方向に連なって配列された基板Sが、マグネトロンスパッタ電極21a,21b側からみて左右方向に移動する。図6中の矢印が、基板Sが移動する方向を示している。
0055
上下方向に長いターゲット29a,29bに対してスパッタを行うと、補正板35,遮蔽板36がない場合には、基板ホルダ13へ向かうスパッタ原子の量は、基板ホルダ13の上下方向の中心付近(以下、単に「中心付近」という)で多くなる。したがって、中心付近に保持される基板Sに、より多くのスパッタ原子が堆積し、中心付近に保持される基板Sに形成される薄膜の膜厚と、上側,下側の方に保持される基板Sに形成される薄膜の膜厚との間で、ばらつきが生じてしまう。また、同じ1つの基板Sに形成する薄膜でも、膜形成面の上端付近に形成される膜の膜厚と、下端付近に形成される膜の膜厚との間でばらつきが生じてしまう。
0056
そこで、扇形状を備える補正板35を配設して、基板ホルダ13へ向かうスパッタ原子のうち、中心付近を通過しようとするスパッタ原子の量を規制して、基板Sに堆積するスパッタ原子の量を、各基板Sの基板全面にわたって均一になるようにして、膜厚のばらつきを解消している。基板Sが左右方向(図6の矢印の方向)に相対的に移動すると、ターゲット29a,29b側から見て中心付近に位置する基板Sが補正板35により遮蔽される時間は、上側或いは下側に位置する基板Sが補正板35により遮蔽される時間よりも長くなる。
0057
中心付近を長い時間遮蔽することで、その分基板ホルダ13の中心付近へ向かうスパッタ原子の量を減らして、中心付近の膜厚を、補正板35を設けない時よりも相対的に薄くする。これにより、補正板35を設けない場合には膜厚が厚くなってしまう中心付近の膜厚を、補正板35を設けることで薄くして、基板の上下方向でばらつきのない均一な厚さの薄膜を形成させることができる。
0058
遮蔽板36は、スパッタを行うことにより基板Sに形成する薄膜に所望の膜厚分布を与える役目を果たす。遮蔽板36は、板状体であり、製造しようとする薄膜の膜厚分布に応じた形状を備える。図4に示した例では、遮蔽板36は、菱形が上下方向(基板ホルダ13の中心軸線Z方向)に連なった形状をしている。このように遮蔽板36を菱形が連なった形状とすることで、基板Sの膜形成面上端から膜形成面下端にかけて膜厚が線形に変化する薄膜を作成することができる。これを、図4,図5と図6で説明する。
0059
遮蔽板36を菱形が連なった形状として、その菱形の各斜辺に対応する位置に基板Sを配置すれば、基板Sが左右方向(図6の矢印の方向)に相対的に移動した場合に、ターゲット29a,29b側から見て基板Sが遮蔽板36により遮蔽される時間に、各基板Sの上端側と下端側とで差を生じさせることができる。ターゲット29a,29b側から見て基板Sが遮蔽板36により遮蔽される時間が短い方が、より多くのスパッタ原子がターゲット29a,29bから基板Sに到達し、より厚い膜厚の薄膜を基板Sに形成させることができることになる。
0060
ところで、上述のように、補正板35の作用により、基板Sには均一な膜厚の薄膜が形成されるようになっている。したがって、補正板35を設けて、さらに遮蔽板36を設ければ、上下方向の膜厚のばらつきに影響されることなく、ターゲット29a,29bから見て基板Sが遮蔽板36により遮蔽される時間、すなわち、遮蔽板36の左右方向の幅に直接対応した膜厚の薄膜を基板Sに形成させることができる。
0061
本実施形態では、遮蔽板36の形状を菱形が連なった形状としているため、その菱形の斜辺に対応する位置に各基板Sを配置すれば、基板Sの上端側から下端側にかけて膜厚が線形的に変化する薄膜を作成することができるのである。
0062
なお、本実施形態では、遮蔽板36の形状を菱形が連なった形状とすることで、基板Sの上端側から下端側にかけて膜厚が線形的に変化する薄膜を作成することができるが、基板Sの上端側から下端側にかけて膜厚が線形的に変化する薄膜を作成する場合の遮蔽板36の形状はこれに限られない。
0063
図7は、遮蔽板36の形状を三角形が連なった形状とした場合の、補正板35及び遮蔽板36と基板Sとが、基板ホルダ13の回転駆動によって相対移動する様子を説明するもので、マグネトロンスパッタ電極21a,21bから基板ホルダ13の方向をのぞんだ説明図である。図7の上下方向が、スパッタリング装置1の上下方向(中心軸線Zの方向)である。遮蔽板36の形状を菱形が連なった形状とした場合と同様に、三角形の斜辺に対応する位置に各基板Sを配置すれば、基板Sの上端側から下端側にかけて膜厚が線形的に変化する薄膜を作成することができるのである。
0064
なお、遮蔽板36の形状を三角形が連なった形状とした場合には、三角形の横方向に突き出した頂点部分で遮蔽板36の左右方向の幅が急激に変化する(上下方向に非対称に変化する)。このように遮蔽板36の左右方向の幅が急激に変化する部分があると、ターゲットから上下方向で斜めに飛び出すスパッタ原子の影響を受けて、その近傍で形成されるの薄膜の膜厚のコントロールが難しくなる。
0065
したがって、遮蔽板36の形状を菱形が連なった形状とした場合と、三角形が連なった形状とした場合とを比較した場合には、ターゲットから上下方向で斜めに飛び出すスパッタ原子の影響を受けにくい、遮蔽板36の形状を菱形が連なった形状の遮蔽板36を用いる方が好適である。ターゲットから上下方向で斜めに飛び出すスパッタ原子の影響を受けにくければ、上下で隣り合っている基板Sの間隔をつめて配置することができ、多くの基板Sを基板ホルダ13に保持したり、より大きな基板Sを基板ホルダ13に保持したりでき、製造コストの面から好ましいからである。
0066
また、遮蔽板36の形状を菱形が連なった形状以外にすれば、その形状に応じた膜厚分布を備える薄膜を容易に製造することができる。例えば、図8は、遮蔽板36の形状を丸形が上下方向に連なった形状とした場合の、補正板35及び遮蔽板36と基板Sとが、基板ホルダ13の回転駆動によって相対移動する様子を説明するもので、基板ホルダ13からマグネトロンスパッタ電極21a,21bの方向をのぞんだときの説明図である。図8の上下方向が、スパッタリング装置1の上下方向(中心軸線Zの方向)である。図8に示すように、遮蔽板36の形状を丸形が上下方向に連なった形状とした場合には、基板Sの上端側から下端側にかけて膜厚が放物線状に変化する薄膜を作成することができる。
0067
このように、補正板35と遮蔽板36を設けたスパッタリング装置1において薄膜を製造すれば、スパッタリング装置では、蒸着装置よりも基板とターゲットの間の距離が狭く、また、基板よりも十分に大きなターゲットのほぼ全面からスパッタ原子を発生させて薄膜を形成するため、基板とターゲットの間に所望の膜厚分布に応じた形状の遮蔽板36を配置することで、所望の膜厚分布を備える薄膜を精度よく製造することができる。
0068
特に、本実施形態のスパッタリング装置1によれば、補正板35を設けて各基板Sの位置によらずに各基板Sで膜厚が均一になるようにしたうえで、遮蔽板36の形状によって所望の膜厚分布を備える薄膜を形成するため、遮蔽板36の形状を変更することで、製造する薄膜の膜厚分布を容易に変更することができる。
また、遮蔽板36の形状の設計では、各基板Sの位置による膜厚の差を考慮することがなく、所望の膜厚分布をもつ薄膜を作成するための遮蔽板36の形状を簡易に設計することができる。
0069
さらに、本実施形態のような、所謂カルーセル型のスパッタリング装置であるスパッタリング装置1では、1度に多数の基板Sを基板ホルダ13に保持できるため生産効率がよく、基板ホルダの径を大きくすれば、量産も容易である。
0070
なお、ターゲット29a,29bと補正板35、ターゲット29a,29bと遮蔽板36との距離をできるだけ近づけることで、作成する薄膜の膜厚分布の再現性・精度がよくなる。
0071
第1の製膜プロセスゾーン20に設けた補正板35,遮蔽板36とは別に、第2の成膜プロセスゾーン40にも補正板35,遮蔽板36が設けられる。このときも、第1の製膜プロセスゾーン20を形成する仕切壁12に、マグネトロンスパッタ電極21a,21bや基板ホルダ13に対する補正板35と遮蔽板36が固定されたのと同様に、第2の成膜プロセスゾーン40を形成する仕切壁14に、マグネトロンスパッタ電極41a,41bや基板ホルダ13に対する補正板35と遮蔽板36を固定する。
0072
この場合、第1の製膜プロセスゾーン20に配置する補正板35や遮蔽板36の形状と、第2の製膜プロセスゾーン40に配置する補正板35や遮蔽板36の形状とは、必ずしも同一の形状である必要はなく、ターゲット29a,29b,49a,49bの材料や、第1の製膜プロセスゾーン20,第2の製膜プロセスゾーン40それぞれの成膜条件などに応じて変更することができる。
0073
このように、真空槽11内に第1の製膜プロセスゾーン20と第2の成膜プロセスゾーン40とを形成し、第1の製膜プロセスゾーン20と第2の成膜プロセスゾーン40と、それぞれに補正板35及び遮蔽板36を配置すれば、第1の製膜プロセスゾーン20に配置されるターゲット29a,29bに対しては、第1の製膜プロセスゾーン20に配置された補正板35及び遮蔽板36が対応し、第2の製膜プロセスゾーン40に配置されるターゲット49a,49bに対しては、第2の製膜プロセスゾーン40に配置された補正板35及び遮蔽板36が対応することになる。
0074
このため、第1の製膜プロセスゾーン20で薄膜を形成する際に、第2の製膜プロセスゾーン40のターゲット49a,49bから発生するスパッタ原子の影響を考慮することなく、第1の製膜プロセスゾーン20に配置する補正板35及び遮蔽板36の形状を設計することができる。また、第2の製膜プロセスゾーン40で薄膜を形成する際に、第1の製膜プロセスゾーン20のターゲット29a,29bから発生するスパッタ原子の影響を考慮することなく、第2の製膜プロセスゾーン40に配置する補正板35及び遮蔽板36の形状を設計することができる。したがって、複数のターゲットを用いて所望の膜厚分布を有する薄膜を製造する際に、補正板35及び遮蔽板36の形状等の設計が極めて容易になる。
0075
なお、図示は省略しているが、第1の製膜プロセスゾーン20におけるターゲット29a,29bと基板ホルダ13との間や、第2の製膜プロセスゾーン40におけるターゲット49a,49bと基板ホルダ13との間には、ターゲット29a,29b,49a,49bと基板ホルダ13との間を遮断または開放するように可動するプレスパッタシールドが配置されている。このプレスパッタシールドは、スパッタを開始する時に、スパッタが安定して行われるようになるまでターゲット29a,29b,49a,49bと基板ホルダ13との間を遮断し、スパッタが安定して行われるようになった後にターゲット29a,29b,49a,49bと基板ホルダ13との間を開放することにより、スパッタが安定してから基板へスパッタ原子を堆積するためのものである。
0076
反応プロセスゾーン60の真空槽11の壁面には、開口が形成され、この開口には、活性種発生手段としての活性種発生装置61が連結されている。
0077
活性種発生装置61は、ラジカル源とも呼ばれ、反応性ガスプラズマを発生させる石英管からなる反応性ガスプラズマ発生室63と、反応性ガスプラズマ発生室63に巻回されたコイル状の電極65と、マッチングボックス67と、マッチングボックス67を介してコイル状の電極65に接続された高周波電源69と、マスフローコントローラ77と、マスフローコントローラ77を介して接続された反応性ガスボンベ79と、を備える。
0078
活性種発生装置61の反応性ガスプラズマ発生室63で放電により生じるプラズマは、プラズマイオン、電子、ラジカル、励起状態のラジカル、原子、分子等を構成要素とする。
0079
反応性ガスプラズマ発生室63と真空槽11との間には、グリッド81が配設されている。このグリッド81は、反応性ガスプラズマ中の活性種であるラジカル、励起状態のラジカル、原子、分子などが選択的ないし優先的に反応プロセスゾーン60に導かれるように構成されている。そして、荷電粒子である電子、イオンはグリッド81の通過を阻止され反応プロセスゾーン60に漏出しない。この機能は、グリッド81の表面で、プラズマ中のイオンと電子との間に電荷交換が行なわれて中和されることにより生じるものである。
0080
なお、ここで、ラジカルとは、遊離基(ratical)であり、一個以上の不対電子を有する原子または分子である。また、励起状態(excite state)とは、エネルギーの最も低い安定な基底状態に対して、それよりもエネルギーの高い状態のことをいう。
0081
グリッド81としては、マルチ・アパーチャ・グリッド、マルチ・スリット・グリッドを用いることができる。図9は、マルチ・アパーチャ・グリッド101を示す平面図である。マルチ・アパーチャ・グリッド101は、金属あるいは絶縁物からなる平板からなり、直径0.1〜3.0mm程度の穴103が無数に穿設されている。
0082
図10は、マルチ・スリット・グリッドを示す平面図である。マルチ・スリット・グリッド111は、金属あるいは絶縁物からなる平板からなり、幅0.1〜1.0mm程度のスリットが無数に設けられている。グリッド101,111には、冷却管105,115が配設され、水冷による冷却可能に構成されている。
0083
反応性ガスボンベ79からマスフローコントローラ77を介して酸素ガスなどの反応性ガスが、反応性ガスプラズマ発生室63に供給され、マッチングボックス67を介して高周波電源69からの高周波電力が、コイル状の電極65に印加されると、反応性ガスのプラズマが反応性ガスプラズマ発生室63内に発生するように構成されている。
0084
また、図1、図2に示したように、外部磁石71が、反応性ガスプラズマ発生室63の外側に配置され、また内部磁石73が、反応プロセスゾーン60内のグリッド81の外側に配置されている。この外部磁石71,内部磁石73は、プラズマ発生部に20〜300ガウスの磁場を形成することにより高密度プラズマを発生させ、活性種発生効率を高めるという機能を有する。なお、本実施形態では、外部磁石71,内部磁石73の双方を配設しているが、外部磁石71,内部磁石73のいずれか一方を配設するように構成してもよい。
0085
以下に、上述の本実施形態のスパッタリング装置1を用いて薄膜を製造する方法について、酸化ケイ素(SiO)と酸化ニオブ(Nb)を積層させた薄膜を製造する場合を例として説明する。はじめに、酸化ケイ素の薄膜を形成する工程を説明し、次に酸化ニオブの薄膜を形成する工程を説明する。
0086
(酸化ケイ素の薄膜を形成する工程)
まず、基板S、ターゲット29a,29b,49a,49bをスパッタリング装置1に配置する。基板Sは、基板保持手段13aによって基板ホルダ13に保持する。ターゲット29a,29b,49a,49bは、それぞれマグネトロンスパッタ電極21a,21b,41a,41bに保持する。ターゲット29a,29bの材料としてケイ素(Si)を、ターゲット49a,49bの材料としてニオブ(Nb)を用いる。金属としてのケイ素,ニオブは、それぞれ本発明の第1の金属,第2の金属に相当するものである。
0087
次に、真空槽11内を所定の圧力に減圧し、モータ17を作動させて、基板ホルダ13の回転を開始する。その後、真空槽11内の圧力が安定した後に、成膜プロセスゾーン20内の圧力を、1.0×10−1〜1.3Paに調整する。
0088
次に、第1の成膜プロセスゾーン20内に、スパッタ用の不活性ガスであるアルゴンガスおよび反応性ガスとしての酸素ガスを、スパッタガスボンベ27、反応性ガスボンベ79からマスフローコントローラ25で流量調整して導き、成膜プロセスゾーン20内のスパッタを行うための雰囲気を調整する。このとき第1の成膜プロセスゾーン20に導入するアルゴンガスの流量は、約300sccmである。第1の成膜プロセスゾーン20に導入する酸素ガスの流量を、後述のように所望の値に調整する。なお、流量の単位としてのsccmは、0℃,1atmにおける、1分間あたりの流量を表すもので、cm/minに等しい。
0089
次に、交流電源23からトランス24を介して、マグネトロンスパッタ電極21a,21bに周波数1〜100KHzの交流電圧を印加し、ターゲット29a,29bに、交番電界が掛かるようにする。これにより、ある時点においてはターゲット29aがカソード(マイナス極)となり、その時ターゲット29bは必ずアノード(プラス極)となる。次の時点において交流の向きが変化すると、今度はターゲット29bがカソード(マイナス極)となり、ターゲット29aがアノード(プラス極)となる。このように一対のターゲット29a,29bが、交互にアノードとカソードとなることにより、プラズマが形成され、カソード上のターゲットに対してスパッタを行う。
0090
スパッタを開始する時には、スパッタが安定して行われるようになるまでターゲット29a,29bと基板ホルダ13との間をプレスパッタシールドで遮断し、スパッタが安定して行われるようになった後にターゲット29a,29bと基板ホルダ13との間を開放する。これにより、スパッタが安定してから基板Sへスパッタ原子を堆積させることができる。
0091
スパッタを行っている最中には、アノード上には非導電性あるいは導電性の低いケイ素不完全酸化物,酸化ケイ素等が付着する場合もあるが、このアノードが交番電界によりカソードに変換された時に、これらケイ素不完全酸化物等がスパッタされ、ターゲット表面は元の清浄な状態となる。
0092
そして、一対のターゲット29a,29bが、交互にアノードとカソードとなることを繰り返すことにより、常に安定なアノード電位状態が得られ、プラズマ電位(通常アノード電位とほぼ等しい)の変化が防止され、基板Sの膜形成面に安定してケイ素不完全酸化物が形成される。
0093
このように、第1の成膜プロセスゾーン20においてスパッタを行うことにより、中間薄膜としての、ケイ素或いはケイ素不完全酸化物からなる第1中間薄膜を基板Sの膜形成面に形成する。ケイ素不完全酸化物は、本発明における不完全反応物としての第1の不完全反応物であり、酸化ケイ素SiOの構成元素である酸素が欠乏した不完全な酸化ケイ素SiOx(x<2)のことである。
0094
第1中間薄膜を構成する物質の組成は、第1の成膜プロセスゾーン20に導入する酸素ガスの流量を調整することで決定する。
図11は、本実施形態におけるスパッタリング装置1で実験した結果を示しているもので、第1の成膜プロセスゾーン20に導入する酸素ガスの流量と、第1中間薄膜を構成するケイ素不完全酸化物SiOx(x<2)の化学量論係数xとの関係を示している。
0095
図11の横軸が導入する酸素ガスの流量を、縦軸(左側の数値軸)がケイ素不完全酸化物SiOx(x<2)の組成を表す酸化ケイ素の化学量論係数xを示している。図11に示すように、導入する酸素ガスの流量を大きくするにしたがって、化学量論係数xの値が大きくなる関係にある。
0096
本実施形態では、図11に基づいて、ケイ素或いは所望の化学量論係数xのケイ素不完全酸化物が基板Sの膜形成面に形成するように、導入する酸素ガスの流量を所望の値に調整して、第1の成膜プロセスゾーン20でスパッタを行う。スパッタを行っている最中は、基板ホルダ13を所定の回転速度で回転駆動させて基板Sを移動させながら、基板Sの膜形成面にケイ素或いはケイ素不完全酸化物からなる第1中間薄膜を形成させる。
0097
さらに、本実施形態では、マグネトロンスパッタ電極21a,21bと基板ホルダ13との間に補正板35及び遮蔽板36が設けられているため、上述のように、遮蔽板36の形状に応じた膜厚分布の第1中間薄膜を形成させることができる。
0098
第1の成膜プロセスゾーン20で、基板Sの膜形成面にケイ素或いはケイ素不完全酸化物からなる第1中間薄膜を形成させることで、本発明の中間薄膜形成工程としての第1中間薄膜形成工程を行った後には、基板ホルダ13の回転駆動によって基板Sを、第1の成膜プロセスゾーン20に面する位置から反応プロセスゾーン60に面する位置に搬送する。
0099
反応プロセスゾーン60には、反応性ガスボンベ79から反応性ガスとしての酸素ガスを導入する。コイル状の電極65に、100KHz〜50MHzの高周波電力を印加し、活性種発生装置61によりプラズマを発生させる。なお、反応プロセスゾーン60の圧力は、0.7×10−1〜1.0Paに維持する。反応性ガスプラズマ発生室63内のプラズマ中には、荷電粒子である酸素ガスイオン,電子と、電気的に中性な反応性ガスの活性種であるラジカル・励起状態のラジカル,原子,分子とが存在する。そのうち、後者の電気的に中性な反応性ガスの活性種を、グリッド81により、選択的ないし優先的に反応プロセスゾーン60に導く。
0100
そして、基板ホルダ13が回転して、ケイ素或いはケイ素不完全酸化物から構成される第1中間薄膜が形成した基板Sが反応プロセスゾーン60に面する位置に搬送されてくると、反応プロセスゾーン60では、第1中間薄膜を構成するケイ素或いはケイ素不完全酸化物を酸化反応させる工程を行う。すなわち、ケイ素或いはケイ素不完全酸化物を酸素ガスの活性種により完全に酸化反応させて、酸化ケイ素(SiO)に変換させる。
0101
本実施形態では、反応プロセスゾーン60で、第1中間薄膜を構成するケイ素或いはケイ素不完全酸化物を酸化反応させて酸化ケイ素(SiO)に変換させることで、酸化ケイ素から構成される最終薄膜としての第1最終薄膜を形成する。これにより、本発明の膜組成変換工程としての第1膜組成変換工程を行う。
0102
この反応プロセスゾーン60における第1膜組成変換工程では、第1最終薄膜の膜厚が第1中間薄膜の膜厚よりも厚くなるように、第1最終薄膜を形成する。
すなわち、第1中間薄膜を構成するケイ素或いはケイ素不完全酸化物SiOx(x<2)を酸化ケイ素(SiO)に変換することにより第1中間薄膜を膨張させ、第1最終薄膜の膜厚を第1中間薄膜の膜厚よりも厚くする。
0103
図11に、第1中間薄膜形成工程で第1の成膜プロセスゾーン20に導入する酸素ガスの流量と、第1中間薄膜に対する第1最終薄膜の膜厚の増加率(=(第1最終薄膜の膜厚)/(第1中間薄膜の膜厚))との関係を示す。図11の横軸が導入する酸素ガスの流量を、縦軸(右側の数値軸)が膜厚の増加率を示している。
0104
図11に示すように、第1中間薄膜形成工程で第1の成膜プロセスゾーン20に導入する酸素ガスの流量を減少させて、ケイ素不完全酸化物の化学量論係数xの値を小さくするにしたがって、膜厚の増加率が大きくなる関係にある。すなわち、ケイ素不完全酸化物の組成(化学量論係数xの値)によって、第1中間薄膜に対する第1最終薄膜の膜厚の増加率が決定する。言い換えれば、本実施形態によれば、上述の第1中間薄膜形成工程で、第1の成膜プロセスゾーン20に導入する酸素ガスの流量を調整することで、第1中間薄膜を構成するケイ素不完全酸化物の化学量論係数xを決定して(xを0とするなら、第1中間薄膜はケイ素から構成される)、第1中間薄膜に対する第1最終薄膜の膜厚の増加率を決定することができる。
0105
例えば、第1中間薄膜形成工程で、第1の成膜プロセスゾーン20に20sccmの酸素ガスを導入しながら第1中間薄膜を形成させれば、化学量論係数xが0.16のケイ素不完全酸化物から構成される第1中間薄膜が形成され、反応プロセスゾーン60における第1膜組成変換工程では、第1中間薄膜に対する第1最終薄膜の膜厚の増加率を1.4とすることができる。
0106
本実施形態では、第1中間薄膜形成工程で、補正板35及び遮蔽板36を備えたスパッタリング装置1を用いて第1中間薄膜を基板Sに形成させているため、第1膜組成変換工程を行う前に、既に基板Sの膜形成面には所定の膜厚分布を備える第1中間薄膜が形成している。この状態で第1膜組成変換工程を行うことで、第1中間薄膜における膜厚分布をさらに変化させることができる。
0107
例えば、10mmの長さをもつ基板Sを、長さ方向が基板ホルダ13の上下方向を向くように基板ホルダ13に保持した場合に、第1中間薄膜形成工程で、基板Sの膜形成面の上端側に0.3nm、下端側に0.4nmの膜厚の第1中間薄膜を形成させる。この場合、10mmの長さをもつ基板Sの膜形成面の上端側から下端側に向けて形成される薄膜の膜厚の傾斜は、0.1nm/10mm、である。この第1中間薄膜に対して増加率1.4の第1膜組成変換工程を行うと、膜形成面の上端側に0.42nm、下端側に0.56nmの膜厚の第1最終薄膜が形成される。すなわち、第1最終薄膜における膜形成面の上端側から下端側に向けての膜厚の傾斜を0.14nm/10mmに変えることができる。
0108
つまり、本実施形態によれば、スパッタを行うだけで生成された第1中間薄膜よりも、スパッタを行うだけで生成された第1中間薄膜をさらに反応ガスで反応させた第1最終薄膜の膜厚の傾斜を強くするこができる。
0109
本実施形態では、以上説明した第1中間薄膜形成工程と、第1膜組成変換工程とを、基板Sを搭載した基板ホルダ13を回転させながら繰り返すことにより、第1の成膜プロセスゾーン20におけるケイ素或いはケイ素不完全酸化物(SiOx(x<2))の基板上への形成と、反応プロセスゾーン60におけるケイ素或いはケイ素不完全反応物の酸化ケイ素(SiO)への変換が繰り返され、所望の膜厚で、基板Sの膜形成面上端側から下端側に向けての膜厚の傾斜を強くした酸化ケイ素(SiO)の薄膜を形成することができる。
0110
(酸化ニオブの薄膜を形成する工程)
第2の成膜プロセスゾーン40内の圧力は、1.0×10−1〜1.3Paに調整される。マスフローコントローラ45で流量を調整しながら、スパッタリングガスボンベ47から不活性ガスとしてのアルゴンガスを、反応性ガスボンベ79から反応性ガスとしての酸素ガスを、成膜プロセスゾーン40に導入する。このときの成膜プロセスゾーン20に導入するアルゴンガスの流量は約300sccmである。第2の成膜プロセスゾーン40に導入する酸素ガスの流量を、後述のように所望の値に調整する。
0111
次に、交流電源43から周波数1〜100KHzの交流電圧を印加し、ターゲット49a,49bに、交番電界掛けて、スパッタを行う。スパッタを開始する時には、スパッタが安定して行われるようになるまでターゲット49a,49bと基板ホルダ13との間をプレスパッタシールドで遮断し、スパッタが安定して行われるようになった後にターゲット49a,49bと基板ホルダ13との間を開放する。これにより、スパッタが安定してから基板Sへスパッタ原子を堆積させることができる。
0112
上述の酸化ケイ素の薄膜を形成する工程を行った後に、基板ホルダ13の回転駆動によって基板Sを、反応プロセスゾーン60に面する位置から第2の成膜プロセスゾーン40に面する位置に搬送する。そして、第2の成膜プロセスゾーン40においてスパッタを行うことにより、中間薄膜としての、ニオブ或いはニオブ不完全酸化物からなる第2中間薄膜を、基板Sの膜形成面に既に形成している第1最終薄膜に積層するように形成する(以下の酸化ニオブの薄膜を形成する工程の説明においては、表現の冗長を避けるために、基板Sの膜形成面に第2中間薄膜を形成することとして説明する)。ニオブ不完全酸化物は、本発明における不完全反応物としての第2の不完全反応物であり、酸化ニオブNbの構成元素である酸素が欠乏した不完全な酸化ニオブNbOx(x<2.5)のことである。
0113
第2中間薄膜を構成する物質の組成は、第2の成膜プロセスゾーン40に導入する酸素ガスの流量を調整することで決定する。
図12は、本実施形態におけるスパッタリング装置1で実験した結果を示しているもので、第2の成膜プロセスゾーン40に導入する酸素ガスの流量と、第2中間薄膜を構成するニオブ不完全酸化物NbOx(x<2.5)の化学量論係数xとの関係を示している。
0114
図12の横軸が導入する酸素ガスの流量を、縦軸(左側の数値軸)がニオブ不完全酸化物NbOx(x<2.5)の組成を表す酸化ニオブの化学量論係数xを示している。図12に示すように、導入する酸素ガスの流量を大きくするにしたがって、化学量論係数xの値が大きくなる関係にある。
0115
本実施形態では、図12に基づいて、ニオブ或いは所望の化学量論係数xのニオブ不完全酸化物が基板Sの膜形成面に形成するように、導入する酸素ガスの流量を所望の値に調整して、第2の成膜プロセスゾーン40でスパッタを行う。スパッタを行っている最中は、基板ホルダ13を所定の回転速度で回転駆動させて基板Sを移動させながら、基板Sの膜形成面にニオブ或いはニオブ不完全酸化物からなる第2中間薄膜を形成させる。
0116
さらに、本実施形態では、マグネトロンスパッタ電極41a,41bと基板ホルダ13との間に補正板35及び遮蔽板36が設けられているため、上述のように、遮蔽板36の形状に応じた膜厚分布の第2中間薄膜を形成させることができる。
0117
第2の成膜プロセスゾーン40で、基板Sの膜形成面にニオブ或いはニオブ不完全酸化物からなる第2中間薄膜を形成させることで、本発明の中間薄膜形成工程としての第2中間薄膜形成工程を行った後には、基板ホルダ13の回転駆動によって基板Sを第2の成膜プロセスゾーン40に面する位置から反応プロセスゾーン60に面する位置に搬送する。
0118
反応プロセスゾーン60には、上述の酸化ケイ素の薄膜を形成する工程と同様に、反応性ガスボンベ79から反応性ガスとしての酸素ガスを導入し、コイル状の電極65に高周波電力を印加し、活性種発生装置61によりプラズマを発生させ、反応プロセスゾーン60の圧力を維持する。そして、電気的に中性な反応性ガスの活性種を、グリッド81により、選択的ないし優先的に反応プロセスゾーン60に導く。
0119
そして、基板ホルダ13が回転して、ニオブ或いはニオブ不完全酸化物から構成される第2中間薄膜が形成した基板Sが反応プロセスゾーン60に面する位置に搬送されてくると、反応プロセスゾーン60では、第2中間薄膜を構成するニオブ或いはニオブ不完全酸化物を酸化反応させる工程を行う。すなわち、ニオブ或いはニオブ不完全酸化物を酸素ガスの活性種により完全に酸化反応させて、酸化ニオブ(Nb)に変換させる。
0120
本実施形態では、反応プロセスゾーン60で、第2中間薄膜を構成するニオブ或いはニオブ不完全酸化物を酸化反応させて酸化ニオブ(Nb)に変換させることで、酸化ニオブから構成される最終薄膜としての第2最終薄膜を形成する。これにより、本発明の膜組成変換工程としての第2膜組成変換工程を行う。
0121
この反応プロセスゾーン60における第2膜組成変換工程では、第2最終薄膜の膜厚が第2中間薄膜の膜厚よりも厚くなるように、第2最終薄膜を形成する。
すなわち、第2中間薄膜を構成するニオブ或いはニオブ不完全酸化物NbOx(x<2.5)を酸化ニオブ(Nb)に変換することにより第2中間薄膜を膨張させ、第2最終薄膜の膜厚を第2中間薄膜の膜厚よりも厚くする。
0122
図12に、第2中間薄膜形成工程で第2の成膜プロセスゾーン40に導入する酸素ガスの流量と、第2中間薄膜に対する第2最終薄膜の膜厚の増加率(=(第2最終薄膜の膜厚)/(第2中間薄膜の膜厚))との関係を示す。図12の横軸が導入する酸素ガスの流量を、縦軸(右側の数値軸)が増加率を示している。
0123
図12に示すように、第2中間薄膜形成工程で第2の成膜プロセスゾーン40に導入する酸素ガスの流量を減少させて、ニオブ不完全酸化物の化学量論係数xの値を小さくするにしたがって、膜厚の増加率が大きくなる関係にある。すなわち、ニオブ不完全酸化物の組成(化学量論係数xの値)によって、第2中間薄膜に対する第2最終薄膜の膜厚の増加率が決定する。言い換えれば、本実施形態によれば、上述の第2中間薄膜形成工程で、第2の成膜プロセスゾーン40に導入する酸素ガスの流量を調整することで、第2中間薄膜を構成するニオブ不完全酸化物の化学量論係数xを決定して(xを0とするなら、第2中間薄膜はニオブから構成される)、第2中間薄膜に対する第2最終薄膜の膜厚の増加率を決定することができる。
0124
例えば、第2中間薄膜形成工程で、第2の成膜プロセスゾーン40に30sccmの酸素ガスを導入しながら第2中間薄膜を形成させれば、化学量論係数xが0.08のニオブ不完全酸化物から構成される第2中間薄膜が形成され、反応プロセスゾーン60における第2膜組成変換工程では、第2中間薄膜に対する第2最終薄膜の膜厚の増加率を1.4とすることができる。
0125
本実施形態では、上述の第1中間薄膜形成工程と同様に、第2中間薄膜形成工程で、補正板35及び遮蔽板36を備えたスパッタリング装置1を用いて第2中間薄膜を基板Sに形成させているため、第2膜組成変換工程を行う前に、既に基板Sには所定の膜厚分布を備える第2中間薄膜が形成している。
0126
そして、本実施形態によれば、上述の第1膜組成変換工程と同様に、第2中間薄膜形成工程の後に第2膜組成変換工程を行うことで、スパッタだけで生成された第2中間薄膜よりも、スパッタだけで生成された第2中間薄膜をさらに反応ガスで反応させた第2最終薄膜の膜厚の傾斜を強くするこができる。
0127
本実施形態では、以上説明した第2中間薄膜形成工程と、第2膜組成変換工程とを、基板Sを搭載した基板ホルダ13を回転させながら繰り返すことにより、第2の成膜プロセスゾーン40におけるニオブ或いはニオブ不完全酸化物(NbOx(x<2))の基板上への形成と、反応プロセスゾーン60におけるニオブ或いはニオブ不完全反応物の酸化ニオブ(Nb)への変換が繰り返され、所望の膜厚で、基板Sの膜形成面上端側から下端側に向けての膜厚の傾斜を強くした酸化ニオブ(Nb)の薄膜を形成することができる。
0128
以上に説明した、酸化ケイ素の薄膜を形成する工程と、酸化ニオブの薄膜を形成する工程を行うことで、基盤Sの上に、酸化ケイ素(SiO)と酸化ニオブ(Nb)を積層させた薄膜を製造することができる。また、酸化ケイ素の薄膜を形成する工程と、酸化ニオブの薄膜を形成する工程を繰り返すことで、酸化ケイ素(SiO)と酸化ニオブ(Nb)の積層の数も増やすことができる。
0129
さらに、本実施形態では、上述の第1膜組成変換工程における、第1中間薄膜に対する第1最終薄膜の膜厚の増加率と、上述の第2膜組成変換工程における、第2中間薄膜に対する第2最終薄膜の膜厚の増加率と、が一致するように、上述の第1中間薄膜形成工程で第1の成膜プロセスゾーン20に導入する酸素ガスの流量と、上述の第2中間薄膜形成工程で第2の成膜プロセスゾーン40に導入する酸素ガスの流量とを調整するとよい。
0130
すなわち、第1中間薄膜に対する第1最終薄膜の膨張率と、第2中間薄膜に対する第2最終薄膜の膨張率を、ともにYとなるようにする場合を考える。この場合には、第1中間薄膜形成工程で、第1中間薄膜に対する第1最終薄膜の膨張率がYになる組成の第1の不完全反応物が形成するように反応性ガスの流量を調整し、第2中間薄膜形成工程でも、第2中間薄膜に対する第2最終薄膜の膨張率がYになる組成の第2の不完全反応物が形成するように反応性ガスの流量を調整する。
0131
図13は、図11及び図12の実験結果に基づいて、中間薄膜形成工程で成膜プロセスゾーンに導入する酸素ガスの流量と、中間薄膜に対する最終薄膜の膜厚の増加率(=(最終薄膜の膜厚)/(中間薄膜の膜厚))との関係を示している。図13の横軸が導入する酸素ガスの流量を、縦軸が膜厚の増加率を示している。
0132
図13によれば、膨張率の値を1.4で一致させる場合には、酸化ケイ素の薄膜を形成する際の第1中間薄膜形成工程では酸素ガスの流量を20sccmとして、酸化ニオブの薄膜を形成する際の第2中間薄膜形成工程では酸素ガスの流量を30sccmとすればよい。他にも、以下の例が実験結果から考えられる。
0133
膨張率の値を1.5で一致させる場合には、第1中間薄膜形成工程で酸素ガスの流量を17.5sccmとして、第2中間薄膜形成工程で酸素ガスの流量を22.5sccmとすればよい。
膨張率の値を1.7で一致させる場合には、第1中間薄膜形成工程で酸素ガスの流量を0sccmとして、第2中間薄膜形成工程で酸素ガスの流量を15sccmとすればよい。
0134
このように、第1膜組成変換工程と第2膜組成変換工程における膨張率が、ほぼ一致するように、第1中間薄膜形成工程や第2中間薄膜形成工程の少なくとも一方において酸素ガスを導入しながら第1中間薄膜及び第2中間薄膜を形成させることで、基板S上に形成する第1最終薄膜と第2最終薄膜との膜厚分布(傾斜の度合い)を揃える事ができる。
0135
以上のように形成される薄膜の膜厚分布は、遮蔽板36の形状を変化させ、中間薄膜形成工程で成膜プロセスゾーンに導入する酸素ガスの流量を調整することで、所望の分布にすることができる。
0136
勿論、第1膜組成変換工程と第2膜組成変換工程における膨張率を異ならせるように、中間薄膜形成工程で成膜プロセスゾーンに導入する酸素ガスの流量を調整して、傾斜の度合いの異なる薄膜を積層させることもできる。
0137
図14,図15は、本実施形態のスパッタリング装置1及び薄膜の製造方法を用いて薄膜を製造した場合の実験結果を示すものである。図14は、遮蔽板36を菱形が連なった形状とし、膨張率の値を1.4になるように酸素ガスの流量を調整して薄膜を形成した場合に形成できる薄膜の膜厚分布を示している。図15は、遮蔽板36を丸形が連なった形状とし、膨張率の値を1.4になるようにする酸素ガスの流量を調整して薄膜を形成した場合に形成できる薄膜の膜厚分布を示している。図14,図15の横軸は上下方向の位置を、縦軸(左の数値軸)は遮蔽板36の横方向の幅を、縦軸(右の数値軸)は製造される膜厚を表している。
0138
図14をみれば、遮蔽板36の菱形の形状に応じて、膜厚が線形的に変化する薄膜を製造できることがわかる。また、図15をみれば、遮蔽板36の丸形の形状に応じて、膜厚が放物線状に変化する様子がわかる。
0139
以下に、本実施形態により、酸化ケイ素(SiO)と、酸化にオブ(Nb)とが積層した薄膜を形成した場合の作動条件を示す。
(1)ケイ素のスパッタリング条件
投入電力:7.0kW
基板温度:室温
成膜プロセスゾーン内圧力:1.3Pa
印加交流電圧周波数:40KHz
基板ホルダ回転数:100rpm
第1中間薄膜の厚さ:0.2〜0.6nm
(2)ニオブのスパッタリング条件
投入電力:5.0kW
基板温度:室温
成膜プロセスゾーン内圧力:1.3Pa
印加交流電圧周波数:40KHz
基板ホルダ回転数:100rpm
第2中間薄膜の厚さ:0.1〜0.4nm
(3)活性種発生装置の駆動条件
装置:図1,図2に示した誘導結合型プラズマ発生源
投入電力:2.0kW
圧力:6.5×10−1Pa
0140
上記実施形態は、例えば、以下の(a)〜(i)のように、改変することもできる。
(a)上記実施形態の基板保持手段13aでは、凹部13bの基板裏面と対向する面が基板ホルダ13の中心軸線Zと垂直な方向を向くように形作られているが、平板状の基板Sの膜形成面をターゲットに対して傾けた状態で、基板Sを保持することが可能なように、基板保持手段13aの凹部13bの形状を工夫してもよい。
0141
図16は、基板保持手段13aの別の実施形態を説明する断面説明図である。
図16の上下方向が、スパッタリング装置1の上下方向(中心軸線Zの方向)である。図16の基板保持手段13a'では、基板Sを収容する凹部13b'の、基板裏面と対向する面が基板ホルダ13の外周面と垂直な方向から上又は下に傾けた方向を向くように形作られている。
0142
このように、凹部13b'の、基板裏面と対向する面が基板ホルダ13の外周面と垂直な方向から上又は下に傾けた方向を向くように形作り、平板状の基板Sの膜形成面をターゲットに対して傾けた状態で、基板Sを保持するようにすることで、基板ホルダ13に保持される基板Sの膜形成面上端からマグネトロンスパッタ電極21a,21b,41a,41b(ターゲット29a,29b,49a,49b)までの距離と、基板Sの膜形成面下端からマグネトロンスパッタ電極21a,21b,41a,41b(ターゲット29a,29b,49a,49b)までの距離とに差を設けるように、基板Sを保持できる。
0143
そして、基板保持手段13a'を備えるスパッタリング装置を用いて、上記実施形態で説明した、中間薄膜を形成させる工程を行えば、基板Sの膜形成面上端と膜形成面下端とで、マグネトロンスパッタ電極21a,21b,41a,41b(ターゲット29a,29b,49a,49b)までの距離に差を設けて、基板Sの膜形成面をターゲットに対して傾けた状態で、中間薄膜を基板上に形成させることができる。このように、基板Sの膜形成面上端と膜形成面下端とで差を設けながら中間薄膜を形成させることで、マグネトロンスパッタ電極21a等(ターゲット29a等)までの距離が近い基板Sの膜形成面上端側では、形成する膜厚の厚い中間薄膜を、マグネトロンスパッタ電極21a等(ターゲット29a等)までの距離が遠い基板Sの膜形成面下端側では、形成する膜厚の薄い中間薄膜を形成することができ、基板Sの膜形成面上端から膜形成面下端にかけて、膜厚が線形的に変化する中間薄膜を形成させることができる。
0144
基板保持手段13a'を用いたスパッタリング装置では、基板とターゲットの間隔が、蒸着装置における基板と蒸着源との間隔に比べて狭いため、基板の薄膜が形成される面をターゲットに対して傾けた状態で基板を保持することで、基板とターゲットの間隔が最も狭いところの距離と、最も広いところの距離の差を、基板とターゲットの距離に対して十分に確保することが可能となる。したがって、蒸着装置に比べて、膜厚の傾斜が強い薄膜を製造することができる。
0145
なお、補正板35と基板保持手段13a'を用いれば、遮蔽板36を設けなくても、製造する薄膜の膜厚に強い傾斜をもたせることができるが、補正板35及び遮蔽板36を設けたうえで、基板保持手段13a'を用いれば、膜厚の傾斜がより強い中間薄膜を基板Sに形成させることができる。そして、いずれの場合でも、最終薄膜を形成させる工程を行うことで、膜厚の傾斜をよりいっそう強くした薄膜を製造することができる。
0146
また、空間的に分離された第1の成膜プロセスゾーン20と第2の成膜プロセスゾーン40とで、基板Sの膜形成面をターゲットに対して傾けた状態で、基板Sを保持した状態で第1中間薄膜と第2中間薄膜を形成するため、第1中間薄膜形成工程では、第2の製膜プロセスゾーン40のターゲット49a,49bから発生するスパッタ原子の影響を考慮することなく、その傾きに応じた膜厚分布を備える第1中間薄膜を形成することが可能となる。また、第2中間薄膜形成工程では、第1の製膜プロセスゾーン20のターゲット29a,29bから発生するスパッタ原子の影響を考慮することなく、その傾きに応じた膜厚分布を備える第2中間薄膜を形成することが可能となる。したがって、複数のターゲットを用いて所望の膜厚分布を有する薄膜を製造する際に、基板Sの膜形成面をターゲットに対して傾ける角度の設計が極めて容易になる。
0147
勿論、基板保持手段13a'における凹部13b'の、基板裏面と対向する面が基板ホルダ13の外周面と垂直な方向から右又は左に傾けた方向を向くように形作ってもよい。
0148
(b) 本実施形態のスパッタリング装置1には、成膜プロセスゾーンとして、第1の成膜プロセスゾーン20と第2の成膜プロセスゾーン40とを備えるが、これに限定されるものではなく、成膜プロセスゾーンを第1の成膜プロセスゾーン20だけの1つにしたり、または3つ以上備えるように構成したりしてもよい。成膜プロセスゾーンを3つ以上備える場合には、第1の成膜プロセスゾーン20の位置から、基板ホルダの中心軸線Zを中心に円周上に所定角度ずつ回転した位置に2つ目以降の成膜プロセスゾーンを配置するように構成すればよい。
0149
(c)上記実施形態は、第1中間薄膜形成工程と、第1膜組成変換工程と、第2中間薄膜形成工程と、第2膜組成変換工程と、をこの順番に行い薄膜を形成するものであるが、第1中間薄膜形成工程と第2中間薄膜形成工程とを行った後に、反応プロセスゾーンで、第1中間薄膜を構成する第1の金属或いは第1の不完全反応物及び第2中間薄膜を構成する第2の金属或いは第2の不完全反応物と反応性ガスの活性種とを反応させて薄膜を形成させるように構成してもよい。
0150
また、反応プロセスゾーン60と同様の反応プロセスゾーン60'を、基板ホルダ13を挟んで反応プロセスゾーン60に対向する位置に形成して、第1の成膜プロセスゾーン20、反応プロセスゾーン60、第2の成膜プロセスゾーン40、反応プロセスゾーン60'の順に基板が面するように基板ホルダ13を回転駆動させて、基板ホルダ13が1回転する間に、第1中間薄膜形成工程と、第1膜組成変換工程と、第2中間薄膜形成工程と、第2膜組成変換工程とを、この順に行うようにしてもよい。
0151
また、第1膜組成変換工程と、第2膜組成変換工程とを行わずに、第1中間薄膜形成工程と、第2中間薄膜形成工程とによって薄膜を形成してもよい。
これらの場合にも、次の(d)で説明するように、ターゲット29a,29b,49a,49bの材料を種々変更できる。
0152
(d)上記実施形態では、ターゲット29a,29bの材料としてケイ素を、ターゲット49a,49bの材料としてニオブを用いているが、これに限定されるものでなく、これらの酸化物を用いることもできる。また、アルミニウム(Al),チタン(Ti),ジルコニウム(Zr),スズ(Sn),クロム(Cr),タンタル(Ta),テルル(Te),鉄(Fe),マグネシウム(Mg),ハフニウム(Hf),ニッケル・クロム(Ni−Cr),インジウム・スズ(In−Sn)などの金属を用いることができる。また、これらの金属の化合物,例えば、Al,TiO,ZrO,Ta,HfO等を用いることもできる。勿論、ターゲット29a,29b,49a,49bの材料を全て同じにして、例えば、本発明の第1の金属と、第2の金属とを同一の金属としてもよい。
0153
これらのターゲットを用いた場合、反応プロセスゾーン60における反応性ガスの活性種の曝露により、Al,TiO,ZrO,Ta,SiO,Nb,HfO,MgF等の光学膜ないし絶縁膜、ITO等の導電膜、Feなどの磁性膜、TiN,CrN,TiCなどの超硬膜とされる。TiO,ZrO,SiOのような絶縁性の金属化合物は、金属(Ti,Zr,Si)に比べスパッタリング速度が極端に遅く生産性が悪いので、特に本発明のデュアル・マグネトロンスパッタリング法が有効である。
0154
(e)上記実施形態では、ターゲット29aとターゲット29b、ターゲット49aとターゲット49bは同一の材料で構成されているが、異種の材料で構成してもよい。同一の金属ターゲットを用いた場合は、上述のように、スパッタを行うことによって単一金属の不完全反応物が基板に形成され、異種の金属ターゲットを用いた場合は合金の不完全反応物が基板に形成される。
0155
(f)上記実施形態では、図1に示すように、成膜プロセスゾーン20,40と反応プロセスゾーン60とに、同一の反応性ガスボンベ79から反応性ガスを導入するように構成しているが、これに限定されるものでなく、成膜プロセスゾーン20,40と、反応プロセスゾーン60とに、異なるガスボンベを連結し、同じ元素を有する、異なるガスを導入することも可能である。
0156
(g)上述の実施形態では、第1の成膜プロセスゾーン20,第2の成膜プロセスゾーン40,反応プロセスゾーン60に反応性ガスとして酸素を導入しているが、その他に、オゾン,一酸化二窒素(NO)等の酸化性ガス、窒素等の窒化性ガス、メタン等の炭化性ガス、弗素,四弗化炭素(CF)等の弗化性ガスなどを導入することもできる。なお、第1の成膜プロセスゾーン20,第2の成膜プロセスゾーン40に、窒素ガスを導入する場合、導入するガス流量は、不活性ガスとしてのアルゴンガス300sccm,窒素ガス9〜60sccmとするとよい。
0157
(h)上記実施形態では、反応性ガスプラズマ部として、図1,図2に示すように、反応性ガスプラズマ発生室の外部または内部に電極を設けた誘導結合型プラズマ源を用いているが、次に説明するように、反応性ガスプラズマ発生室内にコイル電極を配置した誘導結合型プラズマ源(下記(1))、容量結合型プラズマ源(下記(2))、誘導結合・容量結合混在型プラズマ源(下記(3))などを用いることもできる。
0158
(1)図17に示したプラズマ源:円盤状の石英ガラス等の誘電体からなる反応性ガスプラズマ発生室63の大気側に渦巻き状(蚊取り線香状)の渦巻状電極91を配置し、この渦巻状電極91に100KHz〜50MHzの高周波電力を印加してプラズマを発生させる誘導結合型プラズマ発生源。図17(B)は渦巻状電極91の平面の概略説明図である。
0159
(2)図18に示したプラズマ源:反応性ガスプラズマ発生室63の内部に平板状の電極93を配置し、この平板状電極93に100KHz〜50MHzの高周波電力を印加してプラズマを発生させる容量結合型プラズマ発生源。
0160
(3)図19に示したプラズマ源:反応性ガスプラズマ発生室63の内部にコイル状電極95または渦巻状電極を配置し、これら電極に100KHz〜50MHzの高周波電力を印加して誘導結合型プラズマと容量結合型プラズマとが混存するプラズマを発生されるプラズマ発生源。等を用いることができる。また、コイルの形状等を調整することにより、ヘリコン波プラズマ源とし、プラズマ中における活性種の発生効率を高めることもできる。
0161
(i)上記実施形態では、所謂カルーセル型のスパッタ装置を用いているが、これに限定されるものではない。例えば、図20に示すようなスパッタ装置でもよい。図20は本発明の他の実施形態のスパッタリング装置について示す説明図である。装置構成は全体として真空槽としての成膜室121、その前後の基板ロード室123、および基板アンロード室125から構成される。各室はそれぞれ個別の排気系を有し、RPはロータリーポンプを、TMPはターボモレキュラーポンプを示す。各室間はゲートバルブ131,133を介して連結されている。
基板ロード室123はゲートバルブ135ないしは開閉扉により大気に開放可能であり、基板アンロード室125はゲートバルブ137ないしは開閉扉により大気に開閉可能である。すなわち、各室は圧力的に隔離され各々独自の排気系を有し、また、ゲートバルブ131,133を通して基板ホルダ143を搬送することができる。
0162
基板141を搭載した基板ホルダ143がゲートバルブ135を介して基板ロード室123に搬入され、基板ロード室123がロータリーポンプにより真空に引かれて、加熱等の必要による前処理を受ける。すなわち、基板ロード室123は、基板ホルダの脱着・排気・必要による前処理の機能を行う室である。この処理終了後に、基板ホルダ143は、成膜室121に搬送される。成膜室121で、基板141に薄膜が形成される。なお、煩雑を避けるべく図面上では、成膜室121における基板ホルダ143のみを一点鎖線で示し、基板141の図示を省略した。
0163
成膜室121には仕切手段としての仕切壁151,161,171によって、第1の成膜プロセスゾーン153,第2の成膜プロセスゾーン163,反応プロセスゾーン173が形成されている。第1の成膜プロセスゾーン153には第1のターゲット155a,155bが、第2の成膜プロセスゾーン163には第2のターゲット165a,165bが配置されている。反応プロセスゾーン173には活性種発生装置が接続されている。成膜室121における成膜処理は、基板ホルダ143が水平板状である点を除いて、上記実施形態で説明した、スパッタリング装置1を用いて薄膜を製造する方法と同様である。
0164
成膜処理が終了した基板ホルダ143は基板アンロード室125に搬送され、必要に応じて後処理を受けた後、ゲートバルブ137を介して外部に取り出される。すなわち、基板アンロード室125は、基板ホルダの脱着・排気・必要による後処理を行う室である。
0165
以上に記載した実施形態から把握できる特許請求の範囲に記載した発明以外の技術的思想を以下(A),(B)に記載する。
(A) ターゲットに対してスパッタを行うことで基板上に薄膜を形成させる薄膜の製造方法であって、形成する薄膜の膜厚を均一にするための補正板と形成する薄膜に所望の膜厚分布を与えるための遮蔽板とを前記基板と前記ターゲットとの間に設けて、前記基板と前記補正板及び前記遮蔽板とを相対移動させながらスパッタを行うことで前記基板上に薄膜を形成させることを特徴とする薄膜の製造方法。
0166
このような薄膜の製造方法によれば、形成する薄膜の膜厚を均一にするための補正板と形成する薄膜に所望の膜厚分布を与えるための遮蔽板とをスパッタ電極と基板ホルダとの間に設けて、基板と補正板及び遮蔽板とを相対移動させながらスパッタを行うため、遮蔽板の形状に応じた膜厚分布を備える薄膜を形成することが可能となるとともに、遮蔽板の形状を変更することで、製造する薄膜の膜厚分布を容易に変更することができる。そして、遮蔽板の形状を変更することで、所望の膜厚分布を備える薄膜の製造が極めて容易になる。
0167
) 真空槽の中に配置されたターゲットに対してスパッタを行うことで基板上に薄膜を形成させるスパッタリング装置であって、前記真空槽内に配された、前記基板を保持するための基板ホルダ及びスパッタ電極と、該スパッタ電極と前記基板ホルダとの間に固定された、形成する薄膜の膜厚を均一にするための補正板及び形成する薄膜に所望の膜厚分布を与えるための遮蔽板と、前記基板を前記補正板及び前記遮蔽板に対して相対的に移動させるために前記基板ホルダを駆動する基板ホルダ駆動手段と、を備えたことを特徴とするスパッタリング装置。
0168
このようなスパッタリング装置によれば、形成する薄膜の膜厚を均一にするための補正板と形成する薄膜に所望の膜厚分布を与えるための遮蔽板とをスパッタ電極と基板ホルダとの間に設けることで、遮蔽板の形状に応じた膜厚分布を備える薄膜を形成することが可能となるとともに、遮蔽板の形状を変更することで、製造する薄膜の膜厚分布を容易に変更することができる。
0169
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、第1の成膜プロセスゾーンと第2の成膜プロセスゾーンに配置される複数のターゲットを用いて所望の膜厚分布を有する薄膜を製造する際に、第1の製膜プロセスゾーン,第2の製膜プロセスゾーンそれぞれに配置される遮蔽板の形状等を、ターゲットの材料や成膜条件などに応じて変更することができるため、第1の成膜プロセスゾーンで形成する薄膜と、第2の成膜プロセスゾーンで形成する薄膜と、それぞれの薄膜の膜厚分布を独立に、且つ精度良く調整することができる。
0170
また、本発明によれば、膜厚の傾斜の度合いが強い薄膜を簡易に製造することができる。
さらに、本発明によれば、基板上に形成する第1最終薄膜と第2最終薄膜との膜厚分布を所望の膜厚分布で揃えることが可能となる。
0171
さらにまた、本発明によれば、第1の成膜プロセスゾーンと第2の成膜プロセスゾーンに配置される複数のターゲットを用いて所望の膜厚分布を有する薄膜を製造する際に、補正板及び遮蔽板の形状等の設計が極めて容易になる。
また、本発明によれば、前記基板ホルダの外周面に保持させた多数の基板に対して、スパッタリングにより薄膜を形成することができ、基板ホルダの外周を大きくすれば、容易に薄膜の生産量を増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スパッタリング装置について示す説明図である。
【図2】本発明で用いられる装置の実施例を示す、図1の線A−B−Cに沿った断面図である。
【図3】基板保持手段を説明する断面説明図である。
【図4】補正板と遮蔽板を説明する図である。
【図5】補正板と遮蔽板を説明する図であり、図4のD−D断面で見たときの説明図である。
【図6】補正板及び遮蔽板と基板Sとが相対的に移動する様子を説明する説明図である。
【図7】補正板及び遮蔽板と基板Sとが相対的に移動する様子を説明する説明図である。
【図8】補正板及び遮蔽板と基板Sとが相対的に移動する様子を説明する説明図である。
【図9】マルチ・アパーチャ・グリッドを示す平面図である。
【図10】マルチ・スリット・グリッドを示す平面図である。
【図11】実験結果を示す図である。
【図12】実験結果を示す図である。
【図13】実験結果を示す図である。
【図14】実験結果を示す図である。
【図15】実験結果を示す図である。
【図16】基板保持手段を説明する断面説明図である。
【図17】プラズマ源の構成例を示す説明図である。
【図18】プラズマ源の構成例を示す説明図である。
【図19】プラズマ源の構成例を示す説明図である。
【図20】スパッタリング装置について示す説明図である。
【図21】液晶プロジェクタの光学系の概略を説明する図である。
【図22】従来の蒸着技術である斜め蒸着技術を説明した図である。
【図23】従来の蒸着技術であるマスク蒸着技術を説明した図である。
【符号の説明】
1 スパッタリング装置
11 真空槽
12,14,16,151,161,171 仕切壁
13,143 基板ホルダ
13a,13a' 基板保持手段
13b,13b' 凹部
15 真空ポンプ
17 モータ
20,153 第1の成膜プロセスゾーン
21a,21b,41a,41b マグネトロンスパッタ電極
23,43 交流電源
24,44 トランス
25,45,77 マスフローコントローラ
27,47 スパッタガスボンベ
29a,29b,155a,155b 第1のターゲット
35 補正板
36 遮蔽板
40,163 第2の成膜プロセスゾーン
49a,49b,165a,165b 第2のターゲット
60,173 反応プロセスゾーン
61,175 活性種発生装置
63 反応性ガスプラズマ発生室
65 電極
67 マッチングボックス
69 高周波電源
71 外部磁石
73 内部磁石
79 反応性ガスボンベ
81 グリッド
91 渦巻状電極
93 平板状電極
95 コイル状電極
101 マルチ・アパーチャ・グリッド
103 穴
105,115 冷却管
111 マルチ・スリット・グリッド
121 成膜室
123 基板ロード室
125 基板アンロード室
131,133,135,137 ゲートバルブ
141,204,205,S 基板
201 蒸着
202 基板保持装置
203 マスク
310 光発生部
320 光分離部
321 ダイクロイックミラー
322 反射鏡
330 光変調部
340 光合成部
350 投写部

Claims (9)

  1. 真空槽内に第1の成膜プロセスゾーンと第2の成膜プロセスゾーンとを互いに空間的に分離させてスパッタにより薄膜を形成させる薄膜の製造方法であって、
    形成する薄膜の膜厚を均一にするための補正板と形成する薄膜に所望の膜厚分布を与えるための遮蔽板とを前記基板と第1の成膜プロセスゾーンに配設された第1のターゲットとの間に設けて、前記基板と前記補正板及び前記遮蔽板とを相対移動させながらスパッタを行うことで前記基板上に薄膜を形成させる工程と、前記補正板と前記遮蔽板とを前記基板と前記第2の成膜プロセスゾーンに配設された第2のターゲットとの間に設けて、前記基板と前記補正板及び前記遮蔽板とを相対移動させながらスパッタを行うことで前記基板上に薄膜を形成させる工程とを備えることを特徴とする薄膜の製造方法。
  2. 真空槽内に成膜プロセスゾーンと反応プロセスゾーンとを互いに空間的に分離させてスパッタにより薄膜を形成させる薄膜の製造方法であって、
    前記成膜プロセスゾーンに配設されたターゲットに対して、スパッタを行うことで基板上に金属或いは不完全反応物からなる中間薄膜を形成させる中間薄膜形成工程と、
    前記反応プロセスゾーンで、前記中間薄膜を構成する前記金属或いは前記不完全反応物と反応性ガスの活性種とを反応させて最終薄膜を形成させる膜組成変換工程と、を備え、
    前記中間薄膜形成工程では、形成する薄膜の膜厚を均一にするための補正板と形成する薄膜に所望の膜厚分布を与えるための遮蔽板とを前記基板と前記ターゲットとの間に設けて、前記基板と前記補正板及び前記遮蔽板とを相対移動させながら前記中間薄膜を形成させ、
    前記膜組成変換工程では、前記最終薄膜の膜厚を前記中間薄膜からなる薄膜の膜厚よりも増加させることを特徴とする薄膜の製造方法。
  3. 真空槽内に成膜プロセスゾーンと反応プロセスゾーンとを互いに空間的に分離させてスパッタにより薄膜を形成させる薄膜の製造方法であって、
    前記第1の成膜プロセスゾーンに配設された第1のターゲットに対して、スパッタを行うことで基板上に第1の金属或いは第1の不完全反応物からなる第1中間薄膜を形成させる第1中間薄膜形成工程と、
    前記反応プロセスゾーンで、前記第1中間薄膜を構成する前記第1の金属或いは前記第1の不完全反応物と反応性ガスの活性種とを反応させて第1の最終薄膜を形成させる第1膜組成変換工程と、
    前記第2の成膜プロセスゾーンに配設された第2のターゲットに対して、スパッタを行うことで前記第1最終薄膜の上に第2の金属或いは第2の不完全反応物からなる第2中間薄膜を形成させる第2中間薄膜形成工程と、
    前記反応プロセスゾーンで、前記第2中間薄膜を構成する前記第2の金属或いは前記第2の不完全反応物と反応性ガスの活性種とを反応させて前記第2の最終薄膜を形成させる第2膜組成変換工程と、を備え、
    前記第1中間薄膜形成工程では、形成する薄膜の膜厚を均一にするための補正板と形成する薄膜に所望の膜厚分布を与えるための遮蔽板とを前記基板と前記第1のターゲットとの間に設けて、前記基板と前記補正板及び前記遮蔽板とを相対移動させながら前記第1中間薄膜を形成させ、
    前記第2中間薄膜形成工程では、前記補正板と前記遮蔽板とを前記基板と前記第2のターゲットとの間に設けて、前記基板と前記補正板及び前記遮蔽板とを相対移動させながら前記第2中間薄膜を形成させ、
    前記第1膜組成変換工程では、前記第1最終薄膜の膜厚を前記第1中間薄膜からなる薄膜の膜厚よりも増加させ、
    前記第2膜組成変換工程では、前記第2最終薄膜の膜厚を前記第2中間薄膜からなる薄膜の膜厚よりも増加させることを特徴とする薄膜の製造方法。
  4. 前記第1中間薄膜と前記第1最終薄膜の膜厚の比が、前記第2中間薄膜と前記第2最終薄膜の膜厚の比とほぼ一致するように、前記第1中間薄膜形成工程と前記第2中間薄膜形成工程の少なくとも一方において前記反応性ガスを導入しながら前記第1中間薄膜及び前記第2中間薄膜を形成させることを特徴とする請求項に記載の薄膜の製造方法。
  5. 真空槽内の第1の成膜プロセスゾーンに配置された第1のターゲットと第2の成膜プロセスゾーンに配置された第2のターゲットに対してスパッタを行うことで基板上に薄膜を形成させるスパッタリング装置であって、
    前記第1の成膜プロセスゾーンと前記第2の成膜プロセスゾーンとを、互いに空間的に分離する仕切手段と、
    前記真空槽内に配された、前記基板を保持するための基板ホルダ及びスパッタ電極と、
    該スパッタ電極と前記基板ホルダとの間に固定された、形成する薄膜の膜厚を均一にするための補正板及び形成する薄膜に所望の膜厚分布を与えるための遮蔽板と、
    前記基板を前記補正板と前記遮蔽板に対して相対的に移動させるために前記基板ホルダを駆動する基板ホルダ駆動手段と、を備え、
    前記スパッタ電極と前記補正板と前記遮蔽板とが、前記第1の成膜プロセスゾーン及び前記第2の成膜プロセスゾーンにそれぞれ配置され、
    前記補正板及び前記遮蔽板は、前記スパッタ電極と前記基板ホルダとの間に配置されたことを特徴とするスパッタリング装置。
  6. 真空槽内の成膜プロセスゾーンに配設されたターゲットに対してスパッタを行うことで基板上に中間薄膜を形成させ、前記真空槽内の反応プロセスゾーンにおいて前記中間薄膜と電気的に中性な反応性ガスの活性種とを反応させて薄膜を形成するスパッタリング装置であって、
    前記真空槽内に配された、前記基板を保持する基板ホルダと、
    前記成膜プロセスゾーン及び前記反応プロセスゾーンとを、互いに空間的に分離する仕切手段と、
    前記成膜プロセスゾーンに配されたスパッタ電極と、
    該スパッタ電極と前記基板ホルダとの間に固定された、形成する薄膜の膜厚を均一にするための補正板、及び形成する薄膜に所望の膜厚分布を与えるための遮蔽板と、
    前記反応プロセスゾーンに連結された、前記活性種を発生するための活性種発生手段と、
    前記基板を前記成膜プロセスゾーンに面する位置と前記反応プロセスゾーンに面する位置との間で搬送するために前記基板ホルダを駆動する基板ホルダ駆動手段と、を備えたことを特徴とするスパッタリング装置。
  7. 前記仕切手段は、少なくとも2つの前記成膜プロセスゾーンを、互いに空間的に分離することを特徴とする請求項に記載のスパッタリング装置。
  8. 前記少なくとも2つの前記成膜プロセスゾーンそれぞれに連結された、前記反応性ガスを導入するためのガス導入手段を備えることを特徴とする請求項に記載のスパッタリング装置。
  9. 前記基板ホルダは、円筒状または中空の多角柱状であり、
    前記基板は前記基板ホルダの外周面に保持され、
    前記基板ホルダ駆動手段は、前記基板ホルダを回転駆動させることを特徴とする請求項乃至いずれかに記載のスパッタリング装置。
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